(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Bが0.1質量%以下、Siが0.5質量%以下の割合で含有されているNi−Crを主成分とする合金材料を溶加材として溶接されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の合金被覆ボイラ部品。
前記ボイラチューブの端部と、この端部から15〜500mm離間した位置との間に亘る領域を端部領域とし、当該端部領域の金属母材の外周面に第1合金材料による溶着被覆が施されていることを特徴とする請求項4に記載の合金被覆ボイラ部品。
板材が両側に位置するように板材と管材とが交互に連結されてなるパネル形状の金属母材の少なくとも一面に、合金材料による被覆が施されていることを特徴とする請求項6に記載の合金被覆ボイラ部品。
前記管材の端部と、この端部から15〜500mm離間した位置との間に亘る領域を端部領域とし、この端部領域の少なくとも一面に第1合金材料による溶着被覆が施され、
前記板材の端部と、この端部から15〜500mm離間した位置との間に亘る領域を端部領域とし、この端部領域の少なくとも一面に第1合金材料による溶着被覆が施され、
前記ボイラ火炉パネルの両側の板材を含む領域を端部領域とし、この端部領域の少なくとも一面に第1合金材料による溶着被覆が施され、
前記端部領域以外の非端部領域の金属母材の少なくとも一面に第2合金材料による溶着被覆が施されていることを特徴とする請求項7に記載の合金被覆ボイラ部品。
前記第1合金材料におけるBの含有割合が1.8質量%以上2.4質量%以下であり、前記第1合金材料におけるSiの含有割合が3.6質量%以上4.0質量%以下であり、前記第1合金材料におけるCの含有割合が0.2質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の合金被覆ボイラ部品。
【背景技術】
【0002】
先ず、ボイラチューブの例でいうと、ボイラの稼働温度が昨今よりも低く、また、炉内のエロージョンおよびコロージョン環境もさほど厳しくなかった時代には、機械特性に関する高温での使用可能性を配慮したボイラ用鋼管(低合金鋼管)を、そのままで用いるというのが一般的な使用形態であった。また、耐食性が要求される用途にはステンレス管、さらにはチタン管も用いられてきたが、高価であるため、多用されることはなかった。
【0003】
近年、ゴミ焼却熱を回収利用する形式のボイラが増え、そのため、特に燃焼煤塵によるエロージョン(摩耗)の問題が生じており、この問題への対策として、耐摩耗性に優れた合金の溶射被覆を施す仕様が多用され始めている。
但し、上記の合金被覆は、たとえばHVOF(High Velocity Oxygen Fuel)またはプラズマ溶射機により溶射形成したままの被覆(未溶融被覆)であり、溶射後に再溶融処理の施された自溶合金被覆の適用は稀である。
【0004】
ボイラチューブへの自溶合金の溶着被覆(溶射後に再溶融処理の施された自溶合金被覆)の適用が稀である理由は、ボイラチューブを溶接して使用する際に、溶接作業時の急速な局部昇温によって溶着被覆に熱衝撃割れが生じやすく、そのため、チューブ全体を高温予熱した上で、高温のチューブを溶接でつなぎ合わせるという、法外な難作業が要請されるからである。
しかしながら昨今のボイラにおいては、エロージョンばかりではなくコロージョン(腐食)の問題が、ゴミ焼却発電における効率化のための高温燃焼要請に伴って重大化してきており、ボイラへの溶着被覆の適用が益々切望される状況に至っている。
【0005】
その一例として、特許文献1には、ボイラチューブに自溶合金の溶着被覆を適用する構成が開示されている。そして、ここでは、ボイラチューブの端部に50mm程度の未溶射部を設け、この部分を接合代とする構成(同文献の第3頁第4欄第15〜16行)が採用されている。この未溶射部には、溶接のあと、被覆の代りにプロテクタ材を嵌装する処置がとられている(同文献の第4欄24〜26行)。上記処理は、優れた耐エロージョン性を具えるプロテクタ材(たとえばアルミナ製)の特注、あるいは、狭隘なボイラ内での嵌装作業を要することから、材工共の高コストならびに資材の前倒し調達を要する。
【0006】
次に、ボイラ火炉パネルの場合には、それが上述したように管材と板材とを交互に配した複合構成であることや、大寸法(例えば0.5m×6m)であることから、上記プロテクタに相当する実用的な補助部材の使用は更に難題であり、また、溶射後の再溶融処理に伴う複雑な形状歪の問題がある(例えば特許文献2および特許文献3参照)。
【0007】
耐エロージョンおよび耐コロージョン性に優れた合金材料の溶着被覆が保護すべき金属母材の全域に施され、しかも、溶接作業時の急速な局部昇温によっても、溶着被覆に熱衝撃割れを生じさせない合金被覆ボイラ部品(ボイラチューブおよびボイラ火炉パネル)として、本出願人は、溶接に供される端部を含む端部領域(溶接作業時に熱衝撃割れが生じうる急速昇温領域)において、融点降下元素であるB(ボロン)およびSi(シリコン)
の含有量を抑制したNi−Cr合金材料(Bの含有割合が0.1質量%以下、Siの含有割合が0.5質量%以下)による被覆が施され、端部領域以外の領域(急速昇温領域以外の残部領域)においては、BおよびSiを各々1〜5質量%含有するNi−Cr合金材料による被覆が施された合金被覆ボイラ部品を提案している(特許文献4参照)。
【0008】
特許文献4に記載された合金被覆ボイラ部品は、保護すべき金属母材の全域にNi−Cr合金材料による被覆が施されているので、良好な耐久性および耐食性を有している。
また、端部領域(溶接作業時に熱衝撃割れが生じうる急速昇温領域)に施された被覆は、BおよびSiの含有量が抑制されていることによって耐熱衝撃性が向上している。このため、溶接作業時の急速な局部昇温によっても、被覆に熱衝撃割れは生じない(耐熱衝撃性に優れている)。
また、BおよびSiの含有量を抑制したNi−Cr合金材料によって端部領域に施された被覆は硬度が低いものとなる(BまたはSiとCrとの反応による高硬度の析出物の生成が抑制される)ために、熱衝撃だけでなく、機械的衝撃に対しても耐性(耐衝撃性)を有することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献4に記載された合金被覆ボイラ部品において、端部領域(急速昇温領域)に施された溶着被覆を得るための合金材料は、融点降下元素であるBおよびSiの含量が抑制されている(Bの含量が0.1質量%以下、Siの含量が0.5質量%以下)ために、その融点は1500℃以上になり、端部領域以外の領域に施される溶着被覆を得るための合金材料(BおよびSiの各々の含量が1〜5質量%)の融点と比較して相当に高いものである。
【0011】
このため、端部領域(急速昇温領域)では、端部領域以外の領域で行っている被覆形成手段(溶射−再溶融処理)を採用することができず、端部領域での被覆の形成は溶接肉盛で行わざるを得ない。
【0012】
上記のように、端部領域と、端部領域以外の領域とで、被覆の形成方法が異なることは製造効率上きわめて不利である。
また、溶接肉盛を行う場合には、金属母材の温度が1500℃程度に達するために、金属母材に歪み(溶接歪み)が生じるおそれがある。
【0013】
このため、端部領域を含むすべての領域における被覆を、溶射−再溶融処理によって形成することができ、しかも、端部領域に形成された被覆の耐熱衝撃性および耐衝撃性が良好である合金被覆ボイラ部品の開発が望まれている。
【0014】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の目的は、保護すべき金属母材の全域(端部領域および非端部領域)において、溶射−再溶融処理により形成することができる溶着被覆を有し、端部領域に形成されている溶着被覆の耐熱衝撃性および耐衝撃性に優れた合金被覆ボイラ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明の合金被覆ボイラ部品は、合金材料による被覆が金属母材に施され、端部において溶接される合金被覆ボイラ部品であって、
前記端部およびその近傍を含む端部領域の金属母材には、
B が1.5質量%以上2.5質量%以下、
Siが3.5質量%以上4.0質量%以下、
C が0.4質量%以下、
Crが12.0質量%以上17.0質量%以下
の割合で含有され、残部がNiおよび不可避不純物である第1合金材料による溶着被覆が施され、
前記端部領域以外の非端部領域の金属母材には、
B が2.5質量%より多く4.0質量%以下、
Siが4.0質量%より多く5.0質量%以下、
C が0.5質量%以上0.9質量%以下、
Crが12.0質量%以上17.0質量%以下
の割合で含有され、残部がNiおよび不可避不純物である第2合金材料による溶着被覆が施されていることを特徴とする。
【0016】
(2)本発明の合金被覆ボイラ部品において、第1合金材料および第2合金材料の各々による溶着被覆の厚さが0.3〜3.0mmであることが好ましい。
(3)また、本発明の合金被覆ボイラ部品は、Bが0.1質量%以下、Siが0.5質量%以下の割合で含有されているNi−Crを主成分とする合金材料を溶加材として溶接されることが好ましい。
【0017】
(4)本発明の合金被覆ボイラ部品は、チューブ状の金属母材の外周面に、合金材料(第1合金材料または第2合金材料)による被覆が施されているボイラチューブであることが好ましい。
(5)この場合において、前記ボイラチューブの端部(両端部)と、この端部から15〜500mm離間した位置との間に亘る領域を端部領域とし、当該端部領域の金属母材の外周面に第1合金材料による溶着被覆が施されていることが好ましい。
【0018】
(6)本発明の合金被覆ボイラ部品は、ボイラ火炉パネルであることが好ましい。
(7)この場合において、板材が両側に位置するように板材と管材とが交互に連結されてなるパネル形状の金属母材の少なくとも一面に合金材料(第1合金材料または第2合金材料)による被覆が施されていることが好ましい。
(8)この場合において、前記管材の端部(両端部)と、この端部から15〜500mm離間した位置との間に亘る領域を端部領域とし、この端部領域の少なくとも一面(パネル形状の少なくとも一面)に第1合金材料による溶着被覆が施され、
前記板材の端部(両端部)と、この端部から15〜500mm離間した位置との間に亘る領域を端部領域とし、この端部領域の少なくとも一面に第1合金材料による溶着被覆が施され、
前記ボイラ火炉パネルの両側の板材を含む領域を端部領域とし、この端部領域の少なくとも一面に第1合金材料による溶着被覆が施され、
前記端部領域以外の非端部領域の金属母材の少なくとも一面(第1合金材料による溶着被覆が施されている、パネル形状の少なくとも一面)に第2合金材料による溶着被覆が施されていることが好ましい。
(9)この場合において、板材が両側に位置するように板材と管材とが交互に連結されてなるパネル形状の金属母材の一面に合金材料(第1合金材料または第2合金材料)による被覆が施されていることが好ましい。
(10)この場合において、前記管材の端部(両端部)と、この端部から15〜500mm離間した位置との間に亘る領域を端部領域とし、この端部領域の一面(パネル形状の一面)に第1合金材料による溶着被覆が施され、
前記板材の端部(両端部)と、この端部から15〜500mm離間した位置との間に亘る領域を端部領域とし、この端部領域の一面に第1合金材料による溶着被覆が施され、
前記ボイラ火炉パネルの両側の板材を含む領域を端部領域とし、この端部領域の一面に第1合金材料による溶着被覆が施され、
前記端部領域以外の非端部領域の金属母材の一面(パネル形状の一面)に第2合金材料による溶着被覆が施されていることが好ましい。
(11)本発明の合金被覆ボイラ部品において、前記第1合金材料におけるBの含有割合が1.8質量%以上2.4質量%以下であり、前記第1合金材料におけるSiの含有割合が3.6質量%以上4.0質量%以下であり、前記第1合金材料におけるCの含有割合が0.2質量%以下であることが好ましい。
(12)また、前記第1合金材料におけるCrの含有割合が14.5質量%以上16.5質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の合金被覆ボイラ部品は、端部領域を含めた保護すべき金属母材の全域において、溶射−再溶融処理により形成することができる自溶合金による溶着被覆を有しているので、高い効率で製造することができる。また、被覆形成のために溶接肉盛を行う必要がないので、製造するときに、金属母材に溶接歪みなどを生じるおそれがない。
また、端部領域に形成されている溶着被覆は、良好な耐熱衝撃性および耐衝撃性を有しているので、溶接作業時の急速な局部昇温によっても熱衝撃割れが生じにくく、機械的衝撃に対しても割れが生じにくい。
更に、本発明の合金被覆ボイラ部品は、耐久性および耐食性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のボイラ部品について詳細に説明する。
本発明のボイラ部品は、Ni−Crを主成分とする合金材料による被覆(被膜)が金属母材に施され、端部において溶接される合金被覆ボイラ部品である。
【0022】
本発明のボイラ部品においては、金属母材の端部領域と非端部領域とで被覆を構成する合金材料(自溶合金)が異なる。
【0023】
<端部領域・非端部領域>
ここに、「端部領域」は、端部(溶接部)および端部の近傍を含む領域であり、端部の溶接に伴って急速に昇温する領域である。端部領域の範囲は金属母材の形状(ボイラ部品の形態)などによって異なる。
例えば、ボイラチューブにおいては、端部と、この端部から15〜500mm離間した位置との間に亘る領域を端部領域とすることができる。
また、板材が両側に位置するように、板材と管材とが交互に連結されてなるボイラ火炉パネルにおいては、(1)管材の端部と、この端部から15〜500mm離間した位置との間に亘る領域、(2)板材の端部と、この端部から15〜500mm離間した位置との間に亘る領域、(3)両側に位置する板材を含む領域(両側に位置する板部の各々に溶接されている管材の一部を含んでいてもよい)を端部領域とすることができる。
また、「非端部領域」は、保護すべき金属母材において端部領域以外の領域である。
【0024】
<第1合金材料>
金属母材の端部領域には、B(ホウ素)が1.5質量%以上2.5質量%以下、Si(ケイ素)が3.5質量%以上4.0質量%以下、C(炭素)が0.4質量%以下、Cr(クロム)が12.0質量%以上17.0質量%以下の割合で含有され、残部がNi(ニッケル)および不可避不純物である第1合金材料による溶着被覆が施される。
【0025】
第1合金材料は、Bを1.5質量%以上、Siを3.5質量%以上の割合で含有するNi−Cr自溶合金である。
第1合金材料の融点は、例えば1050〜1100℃となり、この程度の融点を有する合金であれば、溶射被膜の再溶融処理に伴う金属母材の歪みを回避することができるので、溶射−再溶融処理によって被覆を施すことが可能になる。
この結果、端部領域を含めて保護すべき金属母材の全域における溶着被覆を溶射−再溶融処理により形成することができるので、高い効率で合金被覆ボイラ部品を製造することができる。
【0026】
また、Bの含有割合は2.5質量%以下であり、Siの含有割合は4.0質量%以下であって、後述する第2合金材料におけるBおよびSiの含有量と比較して少量である(BおよびSiの含有量がある程度抑制されている)ことにより、第1合金材料により形成される溶着被覆は良好な耐熱衝撃性を有するものとなる。このため、溶接作業時の急速な局部昇温によっても端部領域に施された第1合金材料による溶着被覆に熱衝撃割れが生じにくい。
また、BおよびSiの含有量がある程度抑制され、Cの含有割合も0.4質量%以下であるため、溶着被覆の硬度が十分に低いものとなって(例えば、HV≦400)、耐衝撃
性が向上するため、ボイラ部品の溶接時や取付時に機械的衝撃を受けても、当該溶着被覆に割れが生じにくい。
【0027】
第1合金材料におけるBの含有割合は、1.5質量%以上2.5質量%以下とされ、好ましくは1.8質量%以上2.4質量%以下とされる。
Bの含有割合が1.5質量%未満では、得られる合金材料の融点を十分に降下させることができず、当該合金材料の溶射被膜を再溶融させようとすると金属母材に歪みが生じるため、当該合金材料を使用して溶射−再溶融処理による被覆を施すことができない。
一方、Bの含有割合が2.5質量%を超える合金材料によっては、耐熱衝撃性および耐衝撃性の良好な溶着被覆を端部領域に形成することが困難となる。
【0028】
第1合金材料におけるSiの含有割合は、3.5質量%以上4.0質量%以下とされ、好ましくは3.6質量%以上4.0質量%以下とされる。
Siの含有割合が3.5質量%未満では、得られる合金材料の融点を十分に降下させることができず、当該合金材料の溶射被膜を再溶融させようとすると、金属母材の歪みが生じるため、当該合金材料を使用して溶射−再溶融処理による被覆を施すことができない。
一方、Siの含有割合が4.0質量%を超える合金材料によっては、耐熱衝撃性および耐衝撃性の良好な溶着被覆を端部領域に形成することが困難となる。
【0029】
第1合金材料におけるCの含有割合は、0.4質量%以下とされ、好ましくは0.2質量%以下とされる。
Cの含有割合が0.4質量%を超える合金材料によっては、耐衝撃性の良好な低硬度の溶着被覆を端部領域に形成することが困難となる。
【0030】
更に、第1合金材料には、特定の割合でCrが含有されているので、これによって端部領域に形成される溶着被覆は、耐食性にも優れたものとなる。
第1合金材料におけるCrの含有割合は、12.0質量%以上17.0質量%以下とされ、好ましくは14.5質量%以上16.5質量%以下とされる。
Crの含有割合が12.0質量%未満の合金材料によっては、耐食性の良好な溶着被膜を端部領域に形成することができない。
【0031】
<第2合金材料>
金属母材の非端部領域には、Bが2.5質量%より多く4.0質量%以下、Siが4.0質量%より多く5.0質量%以下、Cが0.5質量%以上0.9質量%以下、Crが12.0質量%以上17.0質量%以下の割合で含有され、残部がNiおよび不可避不純物である第2合金材料による溶着被覆が施される。
【0032】
第2合金材料は、Bを2.5質量%より多く4.0質量%以下の割合で含有し、Siを4.0質量%より多く5.0質量%以下の割合で含有するNi−Cr自溶合金である。
第2合金材料の融点は、例えば1000〜1050℃となり、このように低い融点を有する合金であれば、溶射−再溶融処理を効率的に行うことができる。
【0033】
なお、第2合金材料は、2.5質量%を超える割合でBを含有し、4.0質量%を超える割合でSiを含有することから、この第2合金材料により形成される溶着被覆は、第1合金材料により形成されるものと比較して耐熱衝撃性に劣るものである。
しかし、第2合金材料による溶着被覆は、溶接作業時においても急速な昇温を生じない(熱衝撃を与えない)非端部領域に施されているので、溶接作業時であっても、この溶着被覆には熱衝撃割れが生じにくい。
【0034】
また、第2合金材料は、B、SiおよびCがある程度高い割合で含有されているので、
第2合金材料により形成される溶着被覆は、硬度が高く(例えば、HV=600〜700程度)、第1合金材料により形成される溶着被覆と比較して耐衝撃性に劣る。
しかし、第2合金材料による溶着被覆が施される非端部領域は、ボイラ部品の溶接時や取付時においても機械的衝撃を受けにくいため、割れが生じにくい。
【0035】
第2合金材料におけるBの含有割合は、2.5質量%より多く4.0質量%以下とされる。Bの含有割合が2.5質量%以下では、効率的な溶射−再溶融処理を行うことができない。
一方、Bの含有割合が4.0質量%を超える合金材料によっては、非端部領域に形成される溶着被覆の耐熱衝撃性および耐衝撃性の低下を招く。
【0036】
第2合金材料におけるSiの含有割合は、4.0質量%より多く5.0質量%以下とされる。Siの含有割合が4.0質量%以下では、効率的な溶射−再溶融処理を行うことができない。
一方、Siの含有割合が5.0質量%を超える合金材料によっては、非端部領域に形成される溶着被覆の耐熱衝撃性および耐衝撃性の低下を招く。
【0037】
第2合金材料におけるCの含有割合は、0.5質量%以上0.9質量%以下とされる。
Cの含有割合が0.9質量%を超える合金材料によっては、形成される溶着被覆の硬度が過大となり、非端部領域における耐衝撃性が損なわれる。
【0038】
更に、第2合金材料には、特定の割合でCrが含有されているので、これによって非端部領域に形成される溶着被覆は、耐食性にも優れたものとなる。
第2合金材料におけるCrの含有割合は、12.0質量%以上17.0質量%以下とされる。
Crの含有割合が12.0質量%未満の合金材料によっては、耐食性の良好な溶着被膜を非端部領域に形成することができない。
【0039】
好適な第2合金材料としては、JIS H 8303に規定された組成のニッケル自溶合金材料、ISO14920に規定された組成のニッケル自溶合金材料を挙げることができる。
【0040】
<ボイラ火炉パネル>
図1Aおよび
図1Bに示すボイラ火炉パネル10(本発明の合金被覆ボイラ部品)は、予め工場で鋼製パネル11(金属製母材)に、第1合金材料による被覆(以下、「第1合金被覆」と略記する)15と、第2合金材料による被覆(以下、「第2合金被覆」と略記する)16とを溶射−再溶融処理によって溶着させたものであり、火炉ハウジングの組上げに際して複数枚を連ねて隣り合う端部同士を溶接するようになっている。すなわち、鋼製パネル11(板材−管材複合パネル)には、冷却水路付の火炉ハウジングの基本単位をなすべく、冷却水路をなす管部12(管材)と連結部をなす板部13(板材)とを交互に配して溶接等にて密に連結したものであり、さらに、耐エロージョンおよび耐コロージョンのため、火炉内壁となる一面(要保護部)には、溶接される部分を除いて全域に合金材料(第1合金材料または第2合金材料)による溶着被覆が形成されている。
【0041】
溶着被覆は、端部領域における第1合金被覆15と、非端部領域における第2合金被覆16とに分けられている。
第1合金被覆15が施される端部領域としては、
(1)管部12の端部と、この端部から15〜500mm離間した位置との間に亘る領域(図中、C1で示す幅を有する帯状領域)、
(2)板部13の端部と、この端部から15〜500mm離間した位置との間に亘る領域
(図中、C2で示す幅を有する領域)、
(3)両側に位置する板部13を含む領域(図中、C3で示す幅を有する帯状領域。なお、両側に位置する板部13の各々に溶接されている管部12の一部を含んでいてもよい)を設定することができる。
なお、管部12の端部領域の幅C1と、板部13の端部領域の幅C2とは同じ大きさであってもよい。
【0042】
板部13の端部領域には、幅0.5〜2mm程度の細い切込み14が形成されている。これは、管部12の溶接目合わせ用の撓ませ代を確保するためである。
管部12の端面には、溶接開先となる大きな面取り・テーパも施されている。
【0043】
第1合金被覆15を構成する第1合金材料は、Ni−Crを主成分とし、融点降下元素であるBおよびSiを一定の割合で含有することにより自溶性を有するが、溶接作業時の熱衝撃や種々の機械的衝撃で割れないように、Bの含有割合を2.5質量%以下、Siの含有割合を4.0質量%以下に抑えている。
第1合金被覆15の厚さは0.3〜3.0mmとされ、好ましくは1.0〜2.0mm程度である。
【0044】
第2合金被覆16を構成する第2合金材料は、Ni−Crを主成分とし、溶射処理と、再溶融処理とで能率良く施工するために、Bの含有割合を2.5質量%より多く4.0質量%以下とし、Siの含有割合を4.0質量%より多く5.0質量%以下としている。
第2合金被覆16の厚さは0.3〜3.0mmとされ、好ましくは1.0〜2.0mm程度である。
【0045】
この実施形態のボイラ火炉パネル10について、その製造工程を、図面(
図2〜
図5)を引用して説明する。
【0046】
ボイラ火炉パネル10は、板部13と管部12とが交互に連結されてなる鋼製パネル11(金属母材)の端部領域の一面に第1合金被覆15を形成するとともに、非端部領域の一面に第2合金被覆16を形成し、更に端部形状を仕上げることにより製造することができる。
【0047】
図2に示すように、鋼製パネル11は、鋼材からなる管部12と板部13とを交互に溶接等にて連結したものであり、板部13が両側に位置している。
鋼製パネル11のサイズとしては、長さ(L)が1000〜9000mm程度、幅(W)が300〜500mm程度、管部12の径は30〜80mm程度、管部12の厚さは5.0〜7.0mm程度、板部13の厚さは3〜9mm程度である。
【0048】
図3に示すように、第1合金被覆15は、鋼製パネル11の端部領域の一面に形成される。なお、先端部の50〜150mm程度が、作業中の固定保持等のために被覆処理されることなく残されることがあるが、その場合、最後の端部形状仕上時には切り落とされる。
図3(a)に示すように、管部12における第1合金被覆15の形成領域の幅(同図においてC1’で示す)は、第2合金被覆との重複(ラップ)部分を確保するために、端部領域の幅(
図1においてC1で示す)より広くなっている。
また、管部12に挟まれた板部13における第1合金被覆15の形成領域の幅(
図3においてC2’で示す)も、第2合金被覆との重複部分を確保するために、端部領域の幅(
図1においてC2で示す)より広くなっている。
なお、パネルの両側に位置する板部13における第1合金被覆15の形成領域の幅(
図3(a)においてC3’で示す)は、
図1においてC3で示す端部領域の幅と等しいが、
第1合金被覆15の形成領域の幅をさらに広くすること、すなわち、パネルの両側に位置する板部13に連結されている管部12の一部にまで第1合金被覆15を形成することも可能である。
【0049】
第1合金被覆15は、溶射−再溶融処理によって形成される。溶射−再溶融処理としては、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、端部領域への第1合金材料の溶射処理、次いで、第1合金材料の溶射被膜の再溶融処理が行われる。なお、必要に応じて、被処理面(端部領域の一面)にショットブラストなどの表面清浄処理を施してもよい。
第1合金材料の溶射処理によって形成された溶射被膜は、1050〜1100℃程度の温度で再溶融して緻密な溶着被覆(第1合金被覆15)となる。
【0050】
図4に示すように、第2合金被覆16は、鋼製パネル11の非端部領域の一面に形成される。
第2合金被覆16は、第1合金被覆15の形成方法と同様に、溶射−再溶融処理によって形成される。溶射−再溶融処理としては従来公知の方法を採用することができる。具体的には、第1合金被覆15のマスキング、非端部領域への第2合金材料の溶射処理、次いで、第2合金材料の溶射被膜の再溶融処理が行われる。なお、必要に応じて、被処理面(非端部領域の一面)にショットブラストなどの表面清浄処理を施してもよい。
第2合金材料の溶射処理によって形成された溶射被膜は、1000〜1050℃程度の温度で再溶融して緻密な溶着被覆(第2合金被覆16)となる。
また、第1合金被覆15および第2合金被覆16の好ましい形成方法として、端部領域に第1合金材料を溶射処理し、次いで、非端部領域に第2合金材料を溶射処理し、その後、端部領域および非端部領域に形成された溶射被膜の再溶融処理を行う方法を挙げることができる。
なお、溶射被膜の再溶処理工程においては、第1合金被覆15の溶射被膜に対する処理温度(1050〜1100℃程度)と、第2合金被覆16の溶射被膜に対する処理温度(1000〜1050℃程度)とを適宜切り換えるように温度制御する。
【0051】
第1合金被覆15のマスキングは、例えば金属薄板等の遮蔽板又は耐熱マスキングテープを用いて行われる。また、第1合金被覆15と第2合金被覆16との間に隙間ができて母材が露出しないよう、第1合金被覆15と第2合金被覆16が一部で重複するようにマスキングを行う。そのような重層部分では、急峻な段差が現出しないよう、両被覆の厚みにテーパを付けると良い。
【0052】
第1合金被覆15および第2合金被覆16を形成するための溶射処理および再溶融処理は、公知の装置を用いて一般的な手法で行われる。
すなわち、自溶合金である第1合金材料および第2合金材料の溶射は、公知の溶射装置を用いて一般的な溶射法で能率よく行うことができる。
また、再溶融処理についても、基本的には、公知の高周波誘導加熱装置を用いて一般的な移動加熱法(例えば、
図4(c)および(e)に示すように、誘導コイル40を移動する方法)で能率よく行うことができる。
【0053】
鋼製パネル11の一面(端部領域および非端部領域)に、第1合金被覆15および第2合金被覆16を形成した後、
図5に示すように、鋼製パネル11の先端の未被覆部が切り落とされる。これはプラズマ切断などで行われ、同時に又は別の時に、切込み14も形成される。さらに、他のボイラ火炉パネル10との溶接に備えて、管部12の先端に面取り加工が施される。
こうして、端部の仕上げも終えると、一枚のボイラ火炉パネル10が完成する。また、同様にして能率良く次々にボイラ火炉パネル10が製造されると、それらは工場や倉庫な
どに蓄積され保管される。
上記のように、このボイラ火炉パネル10の製造工程においては、すべての溶着被覆(第1合金被覆15および第2合金被覆16)を溶射−再溶融処理により形成することができるので、溶接肉盛を併用する製造工程と比較して製造効率が格段に優れている。
【0054】
次に、この実施形態のボイラ火炉パネル10について、その使用形態を、図面(
図6)を引用して説明する。
ボイラ火炉パネル10は複数枚が溶接されてボイラ火炉に組み込まれるので、ここでは、ボイラ火炉パネル10同士を長さ方向に連結する(互いの管部12の内腔を連通させる)ように溶接する溶接工程を説明する。
【0055】
この溶接工程は、位置決め(目合わせ)工程と、管端溶接工程と、板部溶接工程とからなり、その順で各工程の処理が接合対象ボイラ火炉パネル10対の溶接部20に施される。
図6(a)に示すように、位置決め工程では、溶接部20となる管部12の先端同士を対向させた状態で、両ボイラ火炉パネル10を固定する。その後、各管端対向状態に位置ずれがあれば、そして、その位置ずれが、ボイラ火炉パネル10の製造時(第1合金被覆15および第2合金被覆16の形成時)などで生じた僅かなものであれば、切込み14に小さな楔を打ち込む等のことを行って、対向管端の位置整合を採る。
【0056】
次に、
図6(b)に示すように、管端溶接工程では、ボイド等の生じないように、また加熱しすぎないように、管内面側から管外面側へ何回かに分けて環状の溶接が行われる。図示の例では、五層に分かれており、管の中空に臨む溶接層21の環状溶接から始めて、管肉に埋もれる溶接層22の環状溶接が続き、さらに、管外周に露呈する三列の超合金溶接層23,24,25が一巡ずつ順に施工される。
【0057】
この管端溶接工程で使われる溶加材(超合金溶接層23,24,25の形成に使われる溶加材)としては、Bが0.1質量%以下、Siが0.5質量%以下の割合で含有されているNi−Crを主成分とする合金材料が好ましい。
なお、管の中空に臨む溶接層(溶接層21に相当する溶接層)および管肉に埋もれる
溶接層(溶接層22に相当する溶接層)を、炭素鋼(たとえば、50kg/mm
2 級の溶接棒)により形成することもでき、これによりコストダウンを図ることができる。
【0058】
ここで、ボイラ火炉パネル10の端部領域に形成されている第1合金被覆15は、非端部領域に形成されている第2合金被覆16と比較して、BおよびSiの含有量が少なく、耐熱衝撃性に優れている(熱衝撃割れ感受性がない)ので、溶接作業時において端部領域が急速に昇温しても、第1合金被覆15には熱衝撃割れが生じない。従って、第1合金被覆15を損なうことなく、容易かつ的確に溶接作業を行うことができる。
【0059】
なお、ボイラ火炉パネル10の非端部領域に形成されている第2合金被覆16は、第1合金被覆15と比較して耐熱衝撃性に劣る(熱衝撃割れ感受性がある)ものであるが、溶接作業時においても急速に昇温しない(熱衝撃を与えない)非端部領域に施されているので、第2合金被覆16においても熱衝撃割れが生じない。従って、第2合金被覆16を損なうことなく、容易かつ的確に溶接作業を行うことができる。
【0060】
次に、板部溶接工程では、図示は割愛したが、溶接される板部13における少なくとも双方の切込み14を覆うサイズの当て板が、両ボイラ火炉パネル10の板部13に亘って、溶接される。当て板の溶接は、鋼製パネル11の他面(すなわち、第1合金被覆15の非形成面・火炉外壁面,保護不要面)側から行われる。切込み14の幅が狭く当て板の付け替えが容易なことから、切込み14の内側は母材のままで、すなわち、鋼製パネル11が露呈したままで工程を終えてもよいが、前記溶加材(Bが0.1質量%以下、Siが0
.5質量%以下の割合で含有されているNi−Crを主成分とする合金材料)を用いた溶接施工にて切込み14を埋めても良い。また、板部13は、管部12と違って、ボイラ構築後の補修が行いやすい(ボイラ外からの補修でも一応の目的が達成される)ので、パネル端部板や当て板の板厚を厚くして長寿命化した上で合金被覆を省略するといった手法を採用してもよい。
【0061】
このようにして、複数のボイラ火炉パネル10を、その長さ方向に連結することにより、
図1B(f)に示したような、冷却水路付の火炉ハウジングを構成することができる。
そのような火炉ハウジングにあっては、内壁全面が又は内壁面のうち要保護部については全域が緻密な合金被覆にて覆われるので、耐エロージョンおよびコロージョン性が格段に向上する。
【0062】
また、複数のボイラ火炉パネル10を、各々の両側に位置する板部13を溶接部として、前記溶加材を用いて、その幅方向に連結することもできる。
そして、ボイラ火炉パネル10には、両側に位置する板部13を含む領域を端部領域として、耐熱衝撃性に優れた第1合金被覆15を形成しているので、ボイラ火炉パネル10の幅方向に連結させるための溶接工程においても、両側に位置する板部13を含む端部領域に形成された第1合金被覆15には熱衝撃割れが生じない。
【0063】
図8は、
図1Aおよび
図1Bに示したものとは構造の異なるボイラ火炉パネル(本発明の合金被覆ボイラ部品)を示している。なお、
図8において、
図1Aおよび
図1Bに示したボイラ火炉パネル10と同一の構成要素には、同一の符号を用いている。
図8に示すボイラ火炉パネル18は、その一面および他面において、溶接される部分を除いた全域に合金材料(第1合金材料または第2合金材料)による溶着被覆が形成されている。
すなわち、このボイラ火炉パネル18は、板部13と管部12とが交互に連結されてなる鋼製パネル11(金属母材)の端部領域の一面および他面の各々に第1合金被覆15が形成されているとともに、非端部領域の一面および他面の各々に第2合金被覆16が形成されている。
このボイラ火炉パネル18は、両面が要保護部となるようなパネル(例えば、第1燃焼室と第2燃焼室とを仕切る境界パネル)などとして好適に使用することができる。
【0064】
<ボイラチューブ>
図7(a)に示すボイラチューブ80、81、82(本発明の合金被覆ボイラ部品)は、チューブ状の鋼材(金属母材)の外周面に合金材料による被覆が施されてなる。
ボイラチューブ80、81、82には、各々の端部領域(図中、C4で示す幅を有する帯状領域)の外周面において第1合金被覆85が形成されているとともに、各々の非端部領域の外周面において第2合金被覆86が形成されている。
ここに、ボイラチューブ80、81、82の端部領域は溶接により急速に昇温する領域であり、端部領域の幅C4としては、例えば15〜500mmである。
ボイラチューブ80、81、82の外径は30〜100mm程度であり、ボイラチューブ82の長さは2000〜10000mm程度である。
第1合金被覆85は、第1合金材料を用いた溶射−再溶融処理により、チューブ状の鋼材の端部領域の外周面に形成されている。一方、第2合金被覆86は、第2合金材料を用いた溶射−再溶融処理により、チューブ状の鋼材の非端部領域の外周面に形成されている。
【0065】
ボイラチューブ80、81、82は、チューブ状の鋼材(金属母材)の端部領域の外周面に第1合金被覆85を形成するとともに、非端部領域の外周面に第2合金被覆86を形成し、更に端部形状を仕上げることにより製造することができる。
第1合金被覆85および第2合金被覆86を形成するための溶射処理および再溶融処理は、公知の装置を用いて一般的な手法で行われる。
すなわち、自溶合金である第1合金材料および第2合金材料の溶射は、公知の溶射装置を用いて一般的な溶射法で能率よく行うことができる。
また、再溶融処理としては、高周波誘導加熱装置に接続した誘導コイルを端部領域に嵌装・遊嵌し、誘導加熱して溶射被膜を再溶融する公知の方法を挙げることができる。なお、再溶融処理とともに曲げ加工を行ってもよい。
上記のように、ボイラチューブ80、81、82の製造工程においては、すべての溶着被覆(第1合金被覆85および第2合金被覆86)を溶射−再溶融処理により形成することができるので、溶接肉盛を併用する製造工程と比較して製造効率が格段に優れている。
【0066】
ボイラチューブ80、81、82は、各々について溶接開先の形成など所要の管端処理を行った後、
図7(b)に示すように、溶接部83,84でボイラチューブ80、81、82の先端同士を対向させた状態で、ボイラチューブ80、81、82を固定する。
その後、上述した溶加材(Bが0.1質量%以下、Siが0.5質量%以下の割合で含有されているNi−Crを主成分とする合金材料からなる溶加材)を用い、管端同士の溶接を行う。このボイラチューブの管端溶接は、上述した管部12の管端溶接と同様である。
【0067】
そして、ボイラチューブ80、81、82の端部領域に形成されている第1合金被覆85は、非端部領域に形成されている第2合金被覆86と比較して、BおよびSiの含有量が少なく、耐熱衝撃性に優れている(熱衝撃割れ感受性がない)ので、溶接によって端部領域が急速に昇温しても、第1合金被覆85には熱衝撃割れが生じない。また、耐熱衝撃性に劣る(熱衝撃割れ感受性がある)第2合金被覆86は、溶接によって急速に昇温しない非端部領域に施されているので、第2合金被覆86においても熱衝撃割れが生じない。従って、第1合金被覆85および第2合金被覆89を損なうことなく、容易かつ的確に溶接作業を行うことができる。