特許第5701317号(P5701317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5701317-衝撃削岩機及びドリルリグ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701317
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】衝撃削岩機及びドリルリグ
(51)【国際特許分類】
   B25D 17/22 20060101AFI20150326BHJP
   E21B 21/00 20060101ALI20150326BHJP
   E21B 21/02 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   B25D17/22
   E21B21/00 Z
   E21B21/02
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-548914(P2012-548914)
(86)(22)【出願日】2010年12月6日
(65)【公表番号】特表2013-516336(P2013-516336A)
(43)【公表日】2013年5月13日
(86)【国際出願番号】SE2010051339
(87)【国際公開番号】WO2011084093
(87)【国際公開日】20110714
【審査請求日】2013年12月4日
(31)【優先権主張番号】1050006-4
(32)【優先日】2010年1月11日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】398056193
【氏名又は名称】アトラス コプコ ロツク ドリルス アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン,ウルフ
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−030645(JP,A)
【文献】 実開平04−100819(JP,U)
【文献】 特開昭60−262608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 17/00 − 17/22
E21B 21/00 − 21/02
B28D 1/26
B28D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面ヘッド(1)を有し、かかる正面ヘッド(1)内にフラッシュハウジング(26)及びフラッシュコネクタ(25)を備える衝撃削岩機において、
フラッシュハウジング(26)のまわりの正面ヘッド(1)に防錆素材のシース(31)が配置され、フラッシング媒体が正面ヘッド(1)に接触することなくフラッシュコネクタ(25)を通ってフラッシュハウジング(26)に入り込むことができ、
また、軸アダプタ(22)と軸アダプタ(22)用停止リング(30)とを有し、さらにシース(31)が停止リング(30)と接触しないよう配置されていること
を特徴とする衝撃削岩機。
【請求項2】
フラッシュコネクタ(25)がシース(31)の孔に入るように接続されることを特徴とする請求項1に記載の衝撃削岩機。
【請求項3】
フラッシュコネクタ(25)がフラッシュハウジング(26)に入らないように接続されることを特徴とする請求項2に記載の衝撃削岩機。
【請求項4】
請求項1〜の何れか一項に記載の衝撃削岩機を備えていることを特徴とするドリルリグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の序文による衝撃削岩機及びかかる削岩機を備えたドリルリグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
衝撃削岩機は、カバーを備え、そのカバー内でピストンは前方及び後方に移動して軸アダプタに衝撃を与える。さらに、回転モーターからの回転が軸アダプタに伝えられる。次いで、衝撃エネルギー及び回転は、軸アダプタから一つ或いは幾つかのドリルロッド及びドリルビットを介して岩盤へ伝えられ、それにより孔が形成される。
【0003】
削岩中破壊され遊離した掘削屑は、連続して孔から運び出されなければならない。これは、例えば削岩機の正面ヘッドからフラッシュコネクタ及びフラッシュハウジングを通って軸アダプタに導入される空気或いは水によるフラッシング媒体を用いて実行される。フラッシング媒体は軸アダプタにある通路及びドリルロッドを通り、最終的にはドリルビットを通って孔に向かって外に放出され、それによって掘削屑はドリルロッドと孔の端部との間の空間を通って流れ出る。この手順の一例は特許文献1に見ることができる。
【0004】
削岩機の正面ヘッドは多くの場合、優れた機械特性を有し機械的負荷に耐える肌焼鋼から製造されている。さらに肌焼鋼は比較的安価でしかも加工し易い。しかし肌焼鋼の一つの欠点は錆び易いことであり、肌焼鋼は水などのフラッシング媒体に対する耐性に乏しいことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2009/148375
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、衝撃削岩機は正面ヘッドを有し、その正面ヘッドにフラッシング媒体用フラッシュハウジング及びフラッシュコネクタが設けられている。フラッシュハウジングのまわりで正面ヘッドに防錆素材のシースを設けることによって、フラッシング媒体は正面ヘッドに接触することなくフラッシュコネクタを通ってフラッシュハウジングに入り込むことができる。
【0007】
当然のことであるが、シースの役割は錆による腐食を止めることに尽きる。正面ヘッドの残りの部分は、安価で加工し易く優れた機械特性をもつ伝統的な肌焼鋼によって製造することができる。このように本発明は、肌焼鋼の現実的な特性と防錆素材の錆止め効果とを兼ね備えている。加えて、比較的困難である防錆素材の加工は最小限に抑えられ、防錆構成要素は比較的小さい付属部品である。フラッシュコネクタ及びシースは、削岩機の停止リングからの高い衝撃力に晒されることはなく、従って機械的にそんなに強くなくてよい。
【0008】
本発明の一態様によれば、フラッシュコネクタは、フラッシュコネクタがシースにある孔を通って入りこむようにフラッシュハウジングに接続される。フラッシュコネクタはフラッシュハウジングには入らずシースに入るため、回転によって着脱するフラッシュハウジングを問題なく使用可能である。
【0009】
本発明は、好ましい実施形態及び添付図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】特許文献1による削岩機の正面ヘッドを示す断面図。
図2】第二の削岩機の正面ヘッドを示す断面図。
図3】本発明による削岩機の正面ヘッドを示す断面図。
図4】本発明によるフラッシュハウジング及びシースを示す外観図。
図5】正面ヘッドに装着した本発明によるシースの断面を示す外観図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、特許文献1による削岩機の正面ヘッド1を示している。軸アダプタ2は正面ヘッド1に配置されている。軸アダプタ2はピストン4及び回転モーター(図示していない)から衝撃エネルギー、回転及び送り力を、一つ或いは幾つかのドリルロッド(図示していない)及びドリルビット(図示していない)を介して岩盤に伝達する。
【0012】
停止リング10は、軸アダプタ2を保護するために配置されている。例えばドリルビットが岩盤中の空洞に遭遇したりまたドリルロッドを繋ぐスレッドを打ち壊す必要があるためにドリルビットが岩盤の代わりに空気に衝撃を与える空撃ちの場合、停止リング10は、軸アダプタ2が軸方向に動き過ぎるのを防ぎ、それによって破損の危険を低減させている。
【0013】
軸アダプタ2はまた、穿孔中形成される掘削屑を注ぎ落すためにドリルロッド及びドリルビットを介して岩盤に空気或いは水等のフラッシング媒体を送るためのフラッシング通路3を備えている。
【0014】
フラッシング媒体は、フラッシュコネクタ5及びフラッシュハウジング6を通って軸アダプタ2に導入される。フラッシュコネクタ5及びフラッシュハウジング6は、ステンレス鋼で製造され、第一の密封部材7によって正面ヘッド1との接触から密封されており、第二の密封部材8によって軸アダプタ2との接触から密封されている。領域9は、第一の密封部材7の間に位置し、フラッシング媒体は正面ヘッド1と接触するようにされる。正面ヘッド1は、機械的負荷によく耐えしかも比較的安価で加工し易い肌焼鋼によって製造するのが望ましい。しかし、肌焼鋼は錆による腐食への耐性があまり良くなく、このことは、フラッシング媒体が水或いはその他の浸食性フラッシング媒体である場合、例えば領域9で錆による腐食が起こることを意味している。
【0015】
この場合の選択肢は、完全な正面ヘッド1をステンレス鋼で製造することである。ステンレス鋼は錆付きにくい一方で、素材は非常に脆弱でしかも機械的な負荷の耐性に乏しく、ひび割れ発生の危険を孕んでいる。削岩機の停止リング10からの衝撃力は、多くの場合正面ヘッド1で発生する。さらに、ステンレス鋼は高価でしかも特に正面ヘッド1のような大きなシェル状構成要素の場合には加工するのにさらなる困難が伴う。防錆正面ヘッドは、例えば肌焼鋼から製造された正面ヘッドに要求された上述の削岩機の残りの部分との接続全体を介した補強が必要になる。
【0016】
図2は、正面ヘッド11を備えた削岩機を示している。フラッシング媒体は、フラッシュコネクタ15及びフラッシュハウジング16を通って軸アダプタ12に導入される。フラッシュハウジング16は、密封部材17によって正面ヘッド11との接触から密封されている。フラッシング媒体が正面ヘッド11と接触するのを避けるために、フラッシュコネクタ15は所定の距離、フラッシュハウジング16に入り込む。これに伴う一つの不利益は、フラッシュコネクタ15及びフラッシュハウジング16両者を一つに組み合わせるため、それらの寸法を正確に製造する必要があり、製造コストを割高にしてしまうことにある。さらに、寸法は動作中摩耗で変化する。このことは、特に衝撃発生時にフラッシュコネクタ15とフラッシュハウジング16との間の接続が増え続ける負荷量の一部を吸収しなければならないということを意味している。これはフラッシュハウジングに亀裂や破損をもたらす危険を孕んでいる。
【0017】
特許文献1による削岩機は、フラッシュハウジングが着脱時に回転する設計であるため、このような解決策では問題が生じる。
【0018】
本発明による削岩機の解決策は図3図5に示され、上述のすべての問題点を解決する。正面ヘッド21は、優れた機械特性を有する肌焼鋼或いは類似の材料から製造されている。軸アダプタ22及び停止リング30は、従来通り正面ヘッド21内部に設けられている。
【0019】
フラッシング媒体は、正面ヘッド21内に押圧されてフラッシュハウジング26を包囲する防錆シース31を通って、防錆フラッシュハウジング26に接続される防錆フラッシュコネクタ25を介して削岩機内に導入される。ここで「防錆」とは、ステンレス鋼だけを指すものではなく、プラスチック等の別の防錆素材であっても良い。フラッシュコネクタ25は、この目的のために配置された孔39内に所定の距離、シース31内に入り込む。特定の削岩機ではフラッシュコネクタ25の配置を削岩機の右側或いは左側のどちらにするのが望ましいかを選べるよう構成しても良い。この場合は当然ながらシース31は二つの孔39を有する。図5参照。
【0020】
第一の密封部材32は、フラッシュコネクタ25とシース31との間を密封するために、フラッシュコネクタ25の溝に設けられる。第二の密封部材33は、シース31と正面ヘッド21との間を密封するためにシース31の溝に設けられる。第三の密封部材34は、フラッシュハウジング26とシース31及び場合によっては正面ヘッド21との間を密封するためにフラッシュハウジング26の溝に設けられる。これは、通常の状況においては、フラッシング媒体が正面ヘッド21において錆による腐食を受け易い肌焼鋼と接触するようにならないような仕方で実行される。さらに、第四の密封部材28は、軸アダプタ22との密封を形成するためにフラッシュハウジング26内に設けられる。
【0021】
シース31は、多数の外観のうちの一つであり得る。機械的負荷を避けるために、シース31が停止リング30までの全長に亘って伸びていないこと、しかも正面ヘッド21がシース31と停止リング30との間にフランジ35を備えて、フランジ35が停止リング30からの負荷を吸収するようにするのが適切である。
【0022】
漏れを検知できるようにするために、その中にフラッシング媒体が現れると密封が漏れていることを示す前部表示孔36及び後部表示孔37が設けられている。シース31が表示孔36、37の領域内に存在するほど長いか否かは現実的な大きな意義を有するものではない。シース31が表示孔36、37の領域の一部内に存在するほど長い場合、シース31それ自体は当然ながらフラッシング媒体の漏れを通過させるために表示孔38を有する必要がある。着脱を簡潔にするためと同時に、シース31が効果的な仕方で所定位置に維持されるのを保証する一方でシース31が図3図5に示されているように前部表示孔36の領域に存在するほど長ければそれが最も単純である。
【0023】
このように、フラッシュコネクタ25及びシース31は、削岩機の停止リング30からの高い衝撃力に晒されることがなく、それほど機械的に強い必要はない。またフラッシュハウジング26は、フラッシュハウジング26と停止リング30との間に入り込む正面ヘッド21の一部分を介して或いはフラッシュハウジング26と停止リング30との間に小さな遊びを設けることによって衝撃力から保護することができる。
【0024】
フラッシュハウジング26が回転によって着脱することを示す図3図5に示された例によれば、フラッシュコネクタ25はシース31に入り込むがフラッシュハウジング26には入り込まないので、フラッシュハウジング26を問題なく使用可能である。しかも当然ながら本発明は、使用されるフラッシュハウジングの型式に依存せずに使用することができる。
【0025】
さらに、フラッシュコネクタ25、フラッシュハウジング26及びシース21が比較的小さい付属部品であるために困難を伴う防錆素材の加工は最小限に留められる。
【0026】
このようにシース31の目的は、当然のことであるが単に錆による腐食から保護することであり、正面ヘッド21の残りの部分は、安価で加工し易く優れた機械特性を有する伝統的な肌焼鋼で製造することができる。このように本発明は、肌焼鋼の現実的な特性と防錆素材の錆止め効果とを兼ね備えている。
【0027】
上述の削岩機は、通常ドリルリグで使用可能である。
【0028】
当然ながら本発明は、上述の例に制限するものではなく、添付の特許請求の範囲内で変更可能である。
【符号の説明】
【0029】
1、11、21 正面ヘッド
2、12、22 軸アダプタ
3 フラッシング通路
4 ピストン
5、15、25 フラッシュコネクタ
6、16、26 フラッシュハウジング
7、17 密封部材
8 密封部材
9 領域
10、30 停止リング
28 第四の密封部材
31 シース
32 第一の密封部材
33 第二の密封部材
34 第三の密封部材
36 前部表示孔
37 後部表示孔
38 表示孔
39 孔
図1
図2
図3
図4
図5