特許第5701319号(P5701319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5701319ヒドリドシランをオリゴマー化する方法、該方法により製造可能なオリゴマー及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701319
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】ヒドリドシランをオリゴマー化する方法、該方法により製造可能なオリゴマー及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/04 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
   C01B33/04
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-554288(P2012-554288)
(86)(22)【出願日】2011年2月16日
(65)【公表番号】特表2013-520389(P2013-520389A)
(43)【公表日】2013年6月6日
(86)【国際出願番号】EP2011052256
(87)【国際公開番号】WO2011104147
(87)【国際公開日】20110901
【審査請求日】2014年2月13日
(31)【優先権主張番号】102010002405.8
(32)【優先日】2010年2月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヴィーバー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス パッツ
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト シュテュッツェル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ツェレ
(72)【発明者】
【氏名】ニコル ブラウシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヤネッテ クラット
(72)【発明者】
【氏名】ユタ ヘッスィング
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−260729(JP,A)
【文献】 特開昭63−225517(JP,A)
【文献】 特開昭61−106411(JP,A)
【文献】 特表2008−536784(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/003729(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドリドシランをオリゴマー化する方法であって、
− ヒドリドシランとして実質的に少なくとも1種のシリコン原子最大20個を有する非環状ヒドリドシランを包含する組成物を、
− 触媒の不在下で
− 235℃より小さい温度で熱により反応させる、
ヒドリドシランをオリゴマー化する方法。
【請求項2】
前記方法が液相法であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種のヒドリドシランを包含する前記組成物が、Mw≦500g/モルの質量平均分子量を有するヒドリドシラン混合物を包含する組成物であることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のヒドリドシランを包含する前記組成物が、
i) 一般式Sin2n+2(n≧3及びX=F、Cl、Br及び/若しくはI)の少なくとも1種のハロゲンシランと
ii) 一般式NRR'aR''bc(a=0若しくは1、b=0若しくは1、及びc=0若しくは1、及び
【化1】
[式中、
aa) − R、R'及び/若しくはR''は、−C1〜C12−アルキル、−C1〜C12−アリール、−C1〜C12−アラルキル、−C1〜C12−アミノアルキル、−C1〜C12−アミノアリール及び/若しくは−C1〜C12−アミノアラルキルであり、
及び/又は
− 2つ若しくは3つの基R、R'及びR''は、c=0の場合に一緒になって、N含有の環式若しくは二環式のヘテロ脂肪族若しくはヘテロ芳香族の系を形成し、
− ただし、少なくとも1つの基R、R'若しくはR''は−CH3ではなく、
及び/又は
bb) − R及びR'及び/若しくはR''(c=1の場合)は、−C1〜C12−アルキレン、−C1〜C12−アリーレン、−C1〜C12−アラルキレン、−C1〜C12−ヘテロアルキレン、−C1〜C12−ヘテロアリーレン、−C1〜C12−ヘテロアラルキレン及び/若しくは−N=であり、
又は
cc) − (a=b=c=0の場合)R=≡C−R'''(R'''=−C1〜C10−アルキル、−C1〜C10−アリール及び/若しくは−C1〜C10−アラルキル)である])の少なくとも1種の触媒とを、一般式Sim2m+2(m>n及びX=F、Cl、Br及び/若しくはI)及びSiX4(X=F、Cl、Br及び/若しくはI)の少なくとも1種のハロゲンシランを包含する混合物の形成下で反応させ、
並びに
一般式Sim2m+2の少なくとも1種のハロゲンシランを、一般式Sim2m+2のヒドリドシランの形成下で水素化する、ハロゲンシランからヒドリドシランを製造する方法により製造可能であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、ヒドリドシランとして実質的にネオペンタシランを包含することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、直鎖状、分枝鎖状若しくは環状の飽和、不飽和若しくは芳香族の炭素原子1〜12個を有する炭化水素、アルコール、エーテル、カルボン酸、エステル、ニトリル、アミン、アミド、スルホキシド及び水から成る群から選択された少なくとも1種の溶媒を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、少なくとも1種の溶媒を、前記組成物の全質量を基準として20〜80質量%の割合で有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、
− BHx3-x(x=0〜3及びR=C1〜C10−アルキル基又は不飽和の環状の、場合によりエーテルで錯体化された若しくはアミンで錯体化されたC2〜C10−アルキル基)、
− Si59BR2(R=H、Ph又は1〜C10−アルキル基)
− Si49BR2(R=H、Ph又は1〜C10−アルキル基)
− 赤リン、
− 白リン(P4)、
− PHx3-x(x=0〜3及びR=Ph、SiMe3又は1〜C10−アルキル基)、
− P7(SiR33(R=H、Ph又は1〜C10−アルキル基)
− Si59PR2(R=H、Ph又は1〜C10−アルキル基)並びに
− Si49PR2(R=H、Ph又は1〜C10−アルキル基)
から成る群から選択された少なくとも1種のドーピング物質を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、少なくとも1種のドーピング物質を、前記組成物の全質量を基準として0.01〜20質量%の割合で有することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
− BHx3-x(x=0〜3及びR=C1〜C10−アルキル基又は不飽和の環状の、場合によりエーテルで錯体化された若しくはアミンで錯体化されたC2〜C10−アルキル基)、
− Si59BR2(R=H、Ph又は1〜C10−アルキル基)
− Si49BR2(R=H、Ph又は1〜C10−アルキル基)
− 赤リン、
− 白リン(P4)、
− PHx3-x(x=0〜3及びR=Ph、SiMe3又は1〜C10−アルキル基)、
− P7(SiR33(R=H、Ph又は1〜C10−アルキル基)
− Si59PR2(R=H、Ph又は1〜C10−アルキル基)並びに
− Si49PR2(R=H、Ph又は1〜C10−アルキル基)
から成る群から選択された少なくとも1種のドーピング物質を、反応過程の間に又はその後に添加することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記方法を、70〜220℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記温度が90〜210℃であることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドリドシランをオリゴマー化する方法、該方法により製造可能なオリゴマー及びその使用に関する。
【0002】
ヒドリドシラン若しくはそのオリゴマーは、シリコン膜を作製するための可能な原料として文献中に記載されている。
【0003】
ここで、ヒドリドシランとは、実質的にシリコン原子と水素原子のみを含有し、かつ20個未満のシリコン原子を有する化合物と理解される。ヒドリドシランは、原則的に気体状、液体状若しくは固体状であってよく、かつ−殊に固体の場合−溶媒、例えばトルエン若しくはシクロヘキサンに可溶性であるか、又は液状シラン、例えばシクロペンタシランに実質的に可溶性である。例として、モノシラン、ジシラン、トリシラン、シクロペンタシラン及びネオペンタシランが挙げられる。少なくとも3個若しくは4個のシリコン原子を有するヒドリドシランは、Si−H結合を有する直鎖状、分枝鎖状若しくは(場合により二環式/多環式の)環状構造を有していてよく、かつ有利には以下のそれぞれの一般式Sin2n+2(直鎖状若しくは分枝鎖状;n=2〜20)、Sin2n(環式;n=3〜20)又はSin2(n-i)(二環式若しくは多環式;n=4〜20;i={環の数}−1)によって表されることができる。
【0004】
原則的に多くのヒドリドシランがシリコン膜製造のために用いられることができる場合でも、より高次のシラン、すなわち10個より多いシリコン原子を有するヒドリドシランのみが、通常の基材のコーティングに際してその表面を良好に覆い、かつ欠陥が少ない均一な膜を生じさせることができることがわかっている。この理由から、より高次のヒドリドシランを製造する方法が重要である。多くのより高次のヒドリドシランは、より低次のヒドリドシランのオリゴマー化によって製造されることができる。より低次のヒドリドシランの係るオリゴマー化に際しては、形式的に見て、2つのより低次のヒドリドシラン分子から、水素及び/又はより小さいヒドリドシリル残基の引き抜き後に、より高次のヒドリドシラン分子が構成される。
【0005】
そうして例えば、DE2139155A1は、トリシラン、n−テトラシラン及び/又はn−ペンタシランの熱分解によるヒドリドシランの製造法を記載している。しかしながら、この方法は、技術的に大いに煩雑であり、それというのも、反応に際して、まず出発シランが高真空で蒸発させられ、続けて熱分解がグラスウールに接触させて行われ、かつ分解生成物が続けて縮合させられ、かつガスクロマトグラフィーにより分離されなければならないからである。
【0006】
EP0630933A2は、熱により半導体材料に変換させられることができる縮合物の形成法を記載している。この縮合物は、少なくとも1種の金属及び/又は金属化合物を包含する触媒の存在下での、モノシラン、ジシラン及びトリシランから選択されたモノマーを基礎とするヒドリドシランモノマーの脱水素重合反応により製造される。しかしながら、この製造法に際しての欠点は、使用された触媒が反応の終了後に煩雑に除去されなければならないことである。
【0007】
US5,252,766Aも、触媒援用ヒドリドシラン合成、すなわち、ランタニド錯体の存在下でのヒドリドシラン化合物の反応を包含する方法を記載している。しかしながら、ここでも欠点は、使用された触媒が反応の終了後に煩雑に除去されなければならないことである。さらに、相応する触媒系の製造は煩雑である。
【0008】
EP1134224A2は、シクロペンタシラン及びシリルシクロペンタシランを含有するシリコンフィルムを製造するための組成物を記載している。そこではさらに、シリルシクロペンタシランがシクロペンタシランのラジカル重合開始剤として使用できることが記載されている。それにより、環状シランのシクロペンタシラン及びシリルシクロペンタシランを含有する混合物を用いてシランオリゴマーが製造されることができる。これらのシランオリゴマーは、ポリシランコーティングフィルムとして基材に施与されることができ、かつ熱により若しくは光によりシリコンに変換させられることができる。シランオリゴマーの製造に際しては、環状化合物の開環重合の場合、実質的に直鎖状のオリゴマーが生ずる。しかしながら、実質的に直鎖状のこれらのオリゴマーは、シリコン膜製造にとって不都合であり、それというのも、それらは非常に狭いモル質量範囲でしか使用されることができないからである:分子量が小さすぎると、より不十分な湿潤しかもたらされないか若しくは湿潤はもたらされない。分子量が大きすぎると、安定でない組成物がもたらされ、該組成物から大きすぎるオリゴマーが析出し、かつ該組成物を用いて良好な湿潤若しくは均一な膜を得ることはできない。
【0009】
JP2004−134440Aは、環状ヒドリドシラン及び場合により直鎖状のヒドリドシランを包含する反応混合物を、熱及び/又は光によりまず処理し、次いで基材に施与し、かつ最終的に露光プロセスによりシリコン膜に変換させることができる、基材上にシリコンフィルムを製造する方法を記載している。この方法も、環状化合物を基礎とするオリゴマーが不都合であるという、既に述べた欠点を有している。さらに、ヒドリドシランの放射線照射が不都合であり、それというのも、ヒドリドシランの反応には高い放射強度が必要とされ、かつ放射線照射下での反応は良好に制御されることができないからである。
【0010】
US6,027,705Aは、モノシラン又はジシランからのトリシラン又はより高次のシランの多段階の製造法を記載している。第一の反応段階でのモノシラン又はジシランの反応に由来する縮合物が、250〜450℃の温度での熱による第二の反応ゾーンで、より高次のシランの混合物を得るために使用されることができる。しかしながら、この場合、これらの温度では、高い分子量を有するシランの僅かな割合しか取得できないことが問題である;原料のモノシラン若しくはジシランの他に、生成物混合物中では、本質的にシリコン原子3〜7個を有するシランが主要素を成している。この影響は、ガス状での反応操作において特に際立っている。
【0011】
したがって、従来技術の上記欠点を回避するという課題が生まれる。殊に、ヒドリドシランから、より簡単に、殊に技術的により煩雑でなく、かつ触媒を分離する必要なく、シリコン膜製造のためにより良好に使用可能なオリゴマー若しくはその混合物を、より高い収率で提供する方法を提供する課題が生じる。
【0012】
この課題は、意想外にも、ヒドリドシランとして実質的に少なくとも1種のシリコン原子最大20個を有する非環状ヒドリドシランを包含する組成物を、触媒の不在下で235℃より小さい温度で熱により反応させる、ヒドリドシランをオリゴマー化する方法によって解決される。
【0013】
前で既に記載したように、ヒドリドシランをオリゴマー化する方法は、形式的に見て、2つのヒドリドシラン分子から、水素及び/又はより小さいヒドリドシリル残基の引き抜き後に、より大きい分子量を有するヒドリドシラン分子を構成する方法と解される。
【0014】
特に良好な収率は、本発明による方法が液相法、すなわち、熱変換が触媒の不在下において液相中で実施される方法である場合に得られる。
【0015】
有利には、オリゴマー化する方法は、電磁線の供給なしに、殊にUV照射なしに実施される。
【0016】
最大20個のシリコン原子を有する非環状ヒドリドシランは、一般式Sin2n+2(n≦20)を満たす化合物である。有利には使用可能なヒドリドシランは、標準条件下で液体状若しくは固体状であり、かつ液体として若しくは適した溶媒に溶解されて液相法で使用されることができるという利点を提供する一般式Sin2n+2(n=3〜20)のヒドリドシランである。
【0017】
少なくとも1種のヒドリドシランを包含する有利には使用可能な組成物は、Mw≦500g/モルの質量平均分子量を有するヒドリドシラン混合物を含有する。さらに有利には、該組成物は、Mw≦400g/モル、より一層有利にはMw≦350g/モルの質量平均分子量を有するヒドリドシラン混合物を含有する。これらのヒドリドシラン混合物は、簡単に製造可能であるばかりでなく、特に良好に可溶性であるという利点を有する。
【0018】
有利には使用可能な組成物は、ハロゲンシランからヒドリドシランを製造する方法により製造可能であり、該方法により、ハロゲンシランから、より素早く、かつ、より高い収率で従来技術において公知のヒドリドシランとして、殊にネオペンタシランを製造することが、その際、煩雑に分離されなければならない副生成物が生ずることなく可能である。この方法では、
a)i) 一般式Sin2n+2(n≧3及びX=F、Cl、Br及び/若しくはI)の少なくとも1種のハロゲンシランと
ii) 一般式NRR'aR''bc(a=0若しくは1、b=0若しくは1、及びc=0若しくは1、及び
【化1】
[式中、
aa) − R、R'及び/若しくはR''は、−C1〜C12−アルキル、−C1〜C12−アリール、−C1〜C12−アラルキル、−C1〜C12−アミノアルキル、−C1〜C12−アミノアリール、−C1〜C12−アミノアラルキル、殊に有利には−Ph、PhCH3、PhC25、−PhC37、−CH2(C64)CH3、−CH2(C64)C25、−C24(C64)C25、−C24(C64)C37、−C36(C64)C37、−C62(CH33、−C63(CH32、−C87、−C86CH3、−PhNR'''R''''、−PhCH2NR'''R''''、−PhC24NR'''R''''、−PhC36NR'''R''''、−CH2(C64)CH2NR'''R''''、−CH2(C64)C24NR'''R''''、−C24(C64)C24NR'''R''''、−C24(C64)C36NR'''R''''、−C36(C64)C36NR'''R''''、−CH2NR'''R''''、−C24NR'''R''''、−C36NR'''R''''、−C48NR'''R''''、−C510NR'''R''''、−C612NR'''R''''、−C714NR'''R''''、−C816NR'''R''''、−C918NR'''R''''及び/若しくは−C1020NR'''R''''(R'''及びR''''=−C1〜C10−アルキル、−C1〜C10−アリール及び/若しくは−C1〜C10−アラルキル)であり、
及び/又は
− 2つ若しくは3つの基R、R'及びR''は、c=0の場合に一緒になって、N含有の環式若しくは二環式のヘテロ脂肪族若しくはヘテロ芳香族の系を形成し、殊に、その際、有利には、環式若しくは二環式のヘテロ脂肪族若しくはヘテロ芳香族の系は、ピロリジン−、ピロール−、ピペリジン−、ピリジン−、ヘキサメチレンイミン−、アザトロピリデン−若しくはキノリン環系であり、
− ただし、少なくとも1つの基R、R'若しくはR''は−CH3ではなく、
及び/又は
bb) − R及びR'及び/若しくはR''(c=1の場合)は、−C1〜C12−アルキレン、−C1〜C12−アリーレン、−C1〜C12−アラルキレン、−C1〜C12−ヘテロアルキレン、−C1〜C12−ヘテロアリーレン、−C1〜C12−ヘテロアラルキレン及び/若しくは−N=、殊に有利には、−CH2−、−C24−、−C36−、−C48−、−C510−、−C612−、−C714−、−C816−、−C918−、−C1020−、−Ph−、−PhCH2−、−PhC24−、−PhC36−、−CH2(C64)CH2−、−CH2(C64)C24−、−C24(C64)C24−、−C24(C64)C36−、−C36(C64)C36−、−C6H(CH33−、−C62(CH32−、−CH=、−CH=CH−、−N=、−N=CH−及び/若しくは−CH=N−であり、
又は
cc) − (a=b=c=0の場合)R=≡C−R'''(R'''=−C1〜C10−アルキル、−C1〜C10−アリール及び/若しくは−C1〜C10−アラルキル)である])の少なくとも1種の触媒とを、一般式Sim2m+2(m>n及びX=F、Cl、Br及び/若しくはI)及びSiX4(X=F、Cl、Br及び/若しくはI)の少なくとも1種のハロゲンシランを包含する混合物の形成下で反応させ、
並びに
b) 一般式Sim2m+2の少なくとも1種のハロゲンシランを、一般式Sim2m+2のヒドリドシランの形成下で水素化する。
【0019】
極めて有利には、ヒドリドシランとして実質的に少なくとも1種のシリコン原子最大20個を有する非環状ヒドリドシランを包含する組成物は、ヒドリドシランとして実質的にネオペンタシランを包含する組成物である。
【0020】
同様に、有利には、組成物として、より高次のヒドリドシランを得るための、より低次のヒドリドシラン(殊にモノシラン、ジシラン、トリシラン)の脱水素重合反応に由来する反応混合物(実質的にシリコン原子3〜20個を有するヒドリドシランを含有する)を用いてもよい。相応する組成物は、均一系若しくは不均一系接触反応により、より低次のヒドリドシランから作製することができる。
【0021】
不均一系合成プロセスに由来する有利な反応混合物は、より高次のヒドリドシランを製造する方法により製造可能であり、該方法により、少なくとも1種の低次ヒドリドシランと、少なくとも1種の不均一系触媒とを反応させ、その際、この少なくとも1種の触媒は、担体に施与されたCu、Ni、Cr及び/若しくはCo並びに/又は担体に施与されたCu、Ni、Cr及び/若しくはCoの酸化物を包含する。
【0022】
均一系合成プロセスに由来する有利な反応混合物は、より高次の一般式H−(SiH2n−H[式中、n≧2である]のヒドリドシランを製造する方法により製造可能であり、その際、1種以上の低次ヒドリドシラン(殊にモノシラン)、水素及び周期系の第VIII副族の元素を包含する1種以上の遷移金属化合物及びランタノイドが、5bar(絶対)を上回る圧力で反応させられ、続けて系は放圧させられ、かつ得られた反応混合物から、より高次のヒドリドシランが分離される。
【0023】
既に記載したように、ヒドリドシランをオリゴマー化する本発明による方法の場合、実質的に少なくとも1種のシリコン原子最大20個を有する非環状ヒドリドシランを包含する組成物が使用される。その際、ヒドリドシランとして実質的に少なくとも1種の非環状ヒドリドシランを包含する組成物は、第一のオリゴマー形成剤として少なくとも1種の非環状ヒドリドシランを有する組成物と解される。そのうえまた、該組成物は、環状かつケージ状のヒドリドシラン、殊に一般式Sin2n+2(環式;n=3〜20)若しくはSin2(n-i)(二環式若しくは多環式;n=4〜20;n=4〜20;i={環の数}−1)のヒドリドシランも少量で有していてよい。しかしながら、特に良好な効果を得るために、その割合は、全質量を基準として5質量%を上回らない、有利には2質量%を上回らないヒドリドシランを有するべきである。結果生じるオリゴマーはシリコン膜形成に極めて良好に適しているので、ヒドリドシランとしてもっぱらシリコン原子最大20個を有する非環状ヒドリドシランを包含する組成物の使用が極めて有利であり、すなわち、該組成物は、環状(ケージ状のものを含む)ヒドリドシランを含有しない。
【0024】
組成物は、原則的にもっぱらヒドリドシランから成っていてよいか又はさらになお別の成分を有していてもよい。しかしながら、好ましくは、該組成物は、さらになお別の成分、殊に溶媒、ドーピング物質若しくは更なる添加剤を有する。
【0025】
好ましくは、該組成物は、少なくとも1種の溶媒を有する。好ましくは使用可能な溶媒は、直鎖状、分枝鎖状若しくは環状の飽和、不飽和若しくは芳香族の炭素原子1〜12個を有する炭化水素(場合により部分的に若しくは完全に水素化されている)、アルコール、エーテル、カルボン酸、エステル、ニトリル、アミン、アミド、スルホキシド及び水から成る群から選択してよい。特に有利なのは、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、ドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロペンタン、ベンゼン、トルエン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン、インダン、インデン、テトラヒドロナフタリン、デカヒドロナフタリン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、p−ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン及びクロロホルムである。極めて良好に使用可能な溶媒は、炭化水素、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、ドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン、インダン及びインデンである。
【0026】
特に良好な結果を得るために、該組成物は、組成物の全質量を基準として20〜80質量%の割合で溶媒を含有する。
【0027】
さらに、該組成物は、少なくとも1種のドーピング物質を有していてもよいその際、ドーピング物質は、周期系の第III主族若しくは第V主族の半金属の元素変態又は元素化合物であり、これは少なくとも第III主族若しくは第V主族の半金属の挿入下でヒドリドシランと反応して半金属含有オリゴマーを形成することができる。相応する半金属含有オリゴマーは、有利には、ドーピングされたシリコン膜の製造のために適している。好ましくは使用可能なドーピング物質は、BHx3-x型のホウ素化合物(x=0〜3及びR=C1〜C10−アルキル基、不飽和の環状の、場合によりエーテルで錯体化された若しくはアミンで錯体化されたC1〜C10−アルキル基)、次式Si59BR2(R=H、Ph、C1〜C10−アルキル基)及びSi49BR2(R=H、Ph、C1〜C10−アルキル基)の化合物、赤リン、白リン(P4)、式PHx3-x(x=0〜3及びR=Ph、SiMe3、C1〜C10−アルキル基)の化合物、及び次式P7(SiR33(R=H、Ph、C1〜C10−アルキル基)、Si59PR2(R=H、Ph、C1〜C10−アルキル基)及びSi49PR2(R=H、Ph、C1〜C10−アルキル基)の化合物から成る群から選択されることができる。
【0028】
特に良好な結果を得るために、該組成物は、組成物の全質量を基準として0.01〜20質量%の割合でドーピング物質を含有する。
【0029】
さらに、該ドーピング物質は、既に反応開始時にヒドリドシラン含有組成物中に存在していてよいばかりでなく、それはまた反応過程において初めて又はその後に、しかしながら、好ましくは反応過程の間に添加してもよい。
【0030】
さらに、該組成物は、少なくとも1種の添加剤を有していてもよい。その際、添加剤として、有利には湿潤剤及び非イオン性表面添加剤(殊に、フッ素化若しくは過フッ素化されたアルキル基を有するフッ素ベースの表面添加剤又はオキシアルキル基を有するポリエーテルアルキル基ベースの表面添加剤)を使用することができる。特に好ましくは使用可能な添加剤は、フッ素化若しくは過フッ素化されたアルキル基を有するフッ素ベースの表面添加剤から成る群から選択されることができる。
【0031】
特に良好な結果を得るために、該組成物は、有利には、組成物の全質量を基準として0.001〜20質量%の割合で添加剤を含有する。
【0032】
本発明による方法は、触媒の不在下で実施される。それにより、最大20個のシリコン原子を有する非環状ヒドリドシランのオリゴマーへの反応を触媒する試剤の存在なしに合成が行われる。より小さいヒドリドシランからの最大20個のシリコン原子を有する非環状ヒドリドシランの触媒援用合成に由来し、かつ前の段階で使用された触媒が完全には除去され得ていなかった反応混合物が使用される場合は、該反応混合物は、なおこの触媒を最大10ppmまで含有していてよい。しかしながら、好ましくは、該組成物は触媒不含であり、すなわち、それは検出限界値を下回る0.1ppmの値を有する。
【0033】
本発明による方法は、235℃より小さい温度で熱により実施される。有利には、該方法は、30〜235℃の温度で実施される。さらに有利には、該方法は、特に良好な収率を得るために、70〜220℃の温度で、より一層有利には90〜210℃の温度で実施される。相応する温度は、当業者に公知である手段を用いて調整してよい。
【0034】
本発明による方法にとって、圧力は原則的には重要でない。しかしながら、温度に応じて、圧力は有利には、該方法が液相中で実施されることができるように選択されるべきである。さらに有利な圧力は、800mbar〜200barである。
【0035】
反応器中での該組成物の有利な滞留時間は、1分〜10時間である。
【0036】
さらに有利には、該組成物は、熱変換の間に攪拌される。
【0037】
さらに有利には、該組成物に、熱反応の間又は熱反応の完了後に溶媒を添加してもよい。そこからもたらされる利点は、平均分子量分布に影響を及ぼすこと、並びに粒子として析出するか若しくは該組成物中でコロイド状に存在し、かつ後になってSi膜形成に悪影響を及ぼす可能性がある高次オリゴマーのHシランが生ずるのを防止することにある。
【0038】
さらに、本発明の対象は、本発明による方法に従って製造可能なヒドリドシランオリゴマーである。これらは、概して290〜5000g/モルの質量平均分子量を有する。特に良好には、本発明による方法により、500〜3500g/モルの質量平均分子量を有するオリゴマーを製造することができる。
【0039】
本発明により製造可能なヒドリドシランオリゴマーは、数多くの利用に適している。特に良好には、それらは−それ自体で若しくは更なる成分との組成物において−電子部品膜又は光電子部品膜の製造のために適している。したがって、本発明の対象はまた、光電子部品膜又は電子部品膜を作製するための、本発明による方法に従って得られるヒドリドシランオリゴマーの使用である。有利には、本発明による方法に従って得られるヒドリドシランオリゴマーは、光電子部品又は電子部品中での電荷輸送性成分の作製のために適している。さらに、本発明による方法に従って得られるヒドリドシランオリゴマーは、シリコン含有膜、好ましくはシリコン単体膜の製造のために適している。
【0040】
本発明の対象を、以下の例によって詳細に説明するが、これらに限定されない。
【0041】
例1:
ガラス容器中のネオペンタシラン0.5mLを、280℃で熱板上で加熱する。液体はすぐに沸騰し始め、そして約10分後には、シリコン製造にとって相応しくない黄色の固形分のみが残る。
【0042】
例2:
ガラス容器中のネオペンタシラン0.5mLを、30℃で5時間、熱板上で加熱する。得られた混合物のGPC測定から突き止めた質量平均分子量は230g/モルである。
【0043】
例3:
ガラス容器中のネオペンタシラン0.5mLを、150℃で5時間、熱板上で加熱する。得られたオリゴマー混合物のGPC測定から突き止めた質量平均分子量は3330g/モルである。
【0044】
例4:
例3からのオリゴマー化されたH−シラン0.05mLとシクロオクタン0.25mL中のネオペンタシラン0.05mLより成る配合液を4滴、ガラス基材に滴下し、引き続き、6000rpmでスピンコーティングを行う。フィルムが得られ、これを続けて10分間、400℃にてSi膜に転換させる。得られたSi膜は、厚みが約62mmであり、かつ約3.3nmの粗度Rqと約3.9nmのうねりWtを有する。