(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記同軸ケーブルの外側導体が前記内部グランドに接続される接続点から、前記同軸ケーブルの外側導体が前記外部グランドに接続される接続点までの長さが、前記アンテナの動作帯域の波長の1/4以内の長さに設定されている、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る実施形態について、図面を参照して以下に説明する。
【0018】
(アンテナ装置10の概要)
まず、
図1を参照して、実施形態に係るアンテナ装置10の概要について説明する。
図1は、実施形態に係るアンテナ装置10の構成を示す図である。
【0019】
図1に示すように、アンテナ装置10は、アンテナ100および同軸ケーブル200を備えて構成されている。アンテナ100は、後述するように、単一の平面内に形成された逆F型アンテナである。
【0020】
このアンテナ装置10は、スマートフォン、携帯電話機、電子書籍端末、ノートパソコン、PDA等の各種無線装置に搭載され、データ通信、通話、GPS等の無線通信機能を実現するために利用される。
【0021】
(同軸ケーブル200の構成)
次に、
図2を参照して、実施形態に係る同軸ケーブル200の構成について具体的に説明する。
図2は、実施形態に係る同軸ケーブル200の構成を示す図である。
【0022】
図2に示すように、同軸ケーブル200は、その断面の内側から外側に向かって順に、内側導体204、絶縁体205、外側導体203、外皮202を備えて構成されている。
【0023】
内側導体204は、アンテナ100の一方の給電点P(
図3参照)に対して半田付けや溶接などによって電気的に接続される。また、外側導体203は、アンテナ100の他方の給電点Q(
図3参照)に対して半田付けや溶接などによって電気的に接続される。
【0024】
絶縁体205は、内側導体204と外側導体203とを電気的に隔離するためのものである。外皮202は、外側導体203を保護するとともに、外側導体203を外部から電気的に隔離するためのものである。このため、外皮202には、絶縁体が用いられている。
【0025】
(露出部201)
同軸ケーブル200は、露出部201をさらに備える。この露出部201は、同軸ケーブル200の先端からある程度の間隔を有して離間した位置において、部分的に外皮202が剥かれている部分であって、同軸ケーブル200の外側導体203を露出させ、当該外側導体203を外部に設けられたグランド(
図5に示す例では、基板500)に電気的に接続させるための部分である。この接続により、アンテナ100は、基板500を外部グランドとして利用することができるようになっている。
【0026】
同軸ケーブル200は、アンテナ100から、外部グランドとして機能する基板500(
図5参照)の表面上を通って、図示を省略するRFモジュールまで延伸している。すなわち、同軸ケーブル200の一部区間は、基板500の表面上に配置される。露出部201は、この一部区間に設けられており、これにより、同軸ケーブル200の外側導体203を、基板500に電気的に接続することができるようになっている。
【0027】
なお、同軸ケーブル200における露出部201の位置によって、アンテナ100と同軸ケーブル200との容量結合における容量が変化し、これによりアンテナ100と同軸ケーブル200との間に生じるインダクタンスの共振点も変化する。このため、露出部201の位置は、所望する動作帯域によって適切に設定されることとなる。
【0028】
(アンテナ100の構成)
次に、
図3および
図4を参照して、実施形態に係るアンテナ100の構成について具体的に説明する。
図3は、実施形態に係るアンテナ100の構成を示す正面図である。
図4は、
図3に示したアンテナ100のA−A断面図である。
【0029】
図3に示すように、アンテナ100は、放射素子101、インダクタンスマッチング部102、内部グランド103、給電部104、短絡部105、および誘電体基板106を備えて構成されている。
【0030】
放射素子101、インダクタンスマッチング部102、内部グランド103、給電部104、および短絡部105(以下、まとめて「薄膜導体部110」と示す。)は、薄膜状かつ導電性を有するアルミニウムや銅などの部材に対してプレス加工やエッチング等を施すことによって、一体的に形成されている。
【0031】
薄膜導体部110は、誘電体基板106の表面上に重畳されて設けられている。そして、薄膜導体部110は、誘電体基板106に接着されている。誘電体基板106は、薄膜状のポリイミドフィルム等の部材によって形成されている。
【0032】
(薄膜導体部110の具体的な形状)
薄膜導体部110の平面上の概ね中央の位置には、給電部104が設けられている。給電部104からは、同軸ケーブル200が引き出される方向とは反対の方向(
図3におけるx軸正方向)に、放射素子101と短絡部105とが、互いに略平行かつ略直線状に引き出されている。
【0033】
放射素子101は、所定の動作帯域(例えば、Wi−Fiの周波数帯である2412MHz〜2482MHz帯)で動作することを目的とした放射素子である。このため、放射素子101は、所定の動作帯域での動作に必要な長さ(概ね、波長λの1/4の長さ)を有している。
【0034】
すなわち、アンテナ100の動作帯域は、放射素子101の長さによっても決定付けられる。例えば、アンテナ100の動作帯域を低周波側へシフトさせたい場合は、放射素子101をより長く調整することで、これを実現することができる。反対に、アンテナ100の動作帯域を高周波側へシフトさせたい場合は、放射素子101をより短く調整することで、これを実現することができる。
【0035】
この場合、アンテナ100の共振点と短絡部105の共振点とが重なりあうように、短絡部105の長さも合わせて調整することが好ましい。その理由は、アンテナ100の動作帯域は、短絡部105の長さによっても決定付けられるため、一方の長さのみ調整してしまうと、アンテナ100の共振点と短絡部105の共振点とが互いにずれてしまい、動作帯域が狭くなる場合があるからである。
【0036】
短絡部105は、給電部104と内部グランド103とを短絡し、アンテナ100の入力インピーダンスを変更(すなわち、リアクタンス成分をキャンセル)することにより、特に高周波帯域において、インピーダンス整合を容易に取ることを可能とするためのものである。
【0037】
特に、動作帯域の拡大および放射効率の向上を目的として、短絡部105の長さ(すなわち、給電部104と内部グランド103との間の長さ)は、放射素子101と同様に、所定の動作帯域での動作に必要な長さ(概ね、波長λの1/4の長さ)に設定されている。
【0038】
放射素子101は、給電部104から同軸ケーブル200の引き出し方向と反対方向(
図3におけるx軸正方向)に延伸する直線部101a(第1の直線部)と、折り返し部101b(第1の折り返し部)を介して直線部101aの端部(給電部104とは反対側の端部)に接続され、同軸ケーブル200の引き出し方向(
図3におけるx軸負方向)に延伸する直線部101c(第2の直線部)とを有している。また、短絡部105は、給電部104から同軸ケーブル200の引き出し方向と反対方向(
図3におけるx軸正方向)に延伸する直線部105a(第3の直線部)と、折り返し部105b(第2の折り返し部)を介して直線部105aの端部(給電部104とは反対側の端部)に接続され、同軸ケーブル200の引き出し方向(
図3におけるx軸負方向)に延伸する直線部105c(第4の直線部)とを有している。
【0039】
すなわち、放射素子101および短絡部105の各々は、折り返し構造を有しており、いわゆるメアンダ形状を成している。特に、短絡部105は、給電点Pを含む給電部104と給電点Qを含む内部グランド103とを短絡しており、これにより、インピーダンスマッチングのためのループ形状を成している。
【0040】
本実施形態に係るアンテナ100において注目すべきは、内部グランド103が微小な導体片により構成されている点である。より具体的に言うと、内部グランド103が、一辺の長さが同軸ケーブル200の直径と同程度の長方形状の導体片により構成されている点である。内部グランド103をこのような微小な導体片によって構成し得るのは、同軸ケーブル200の外側導体203と電気的に接続している基板500がグランドとしての機能を担っているためである。
【0041】
(インダクタンスマッチング部102)
インダクタンスマッチング部102は、アンテナ100と同軸ケーブル200とを容量結合するためのものである。アンテナ装置10は、この容量結合により、アンテナと同軸ケーブルとの間にインダクタンスを生じさせ、その共振点による共振を利用することで、動作帯域の拡大および放射特性の改善を図ることが可能となっている。
【0042】
具体的には、インダクタンスマッチング部102は、直線部102aと、パターン102bとを有している。直線部102aは、給電部104から同軸ケーブル200の引き出し方向に延伸している。パターン102bは、直線部102aに接続された長方形状であって、同軸ケーブル200と重なり合うように配置されている。同軸ケーブル200がこのパターン102b上に配置されることにより、同軸ケーブル200とアンテナ100とが容量結合される。
【0043】
なお、
図1に示す例のように、パターン102bの幅は、パターン102b上に配置される同軸ケーブル200の幅(直径)以上に広く設定されていることが好ましい。また、
図1および
図5に示す例のように、パターン102bおよび放射素子101の各々の先端位置(すなわち、同軸ケーブル200が延伸する方向(
図5におけるx軸負方向)における端部の位置)は、互いに並設されていることが好ましい。
【0044】
(誘電体被覆膜107)
また、
図4に示すように、アンテナ100は、さらに、誘電体被覆膜107を備えている。誘電体被覆膜107には、誘電体基板106と同様に、薄膜状のポリイミドフィルム等の部材が用いられている。この誘電体被覆膜107は、薄膜導体部110を覆うように、薄膜導体部110の表面上に重畳されて設けられている。そして、誘電体被覆膜107は、薄膜導体部110および誘電体基板106に接着されている。これにより、アンテナ100は、薄膜導体部110が、誘電体基板106と誘電体被覆膜107とによって、その両面から挟み込まれた構成となっている。
【0045】
誘電体被覆膜107において、給電部104に対応する位置には、同軸ケーブル200の内側導体204を給電部104に電気的に接続させるための開口部107aが形成されている。また、誘電体被覆膜107において、内部グランド103に対応する位置には、同軸ケーブル200の外側導体203を内部グランド103に電気的に接続させるための開口部107bが形成されている。
【0046】
(無線装置への実装方法)
次に、
図5を参照して、アンテナ装置10の無線装置への実装方法を説明する。
図5は、実施形態に係るアンテナ装置10の実装例を示す断面図である。
図5に示す例では、アンテナ装置10は、無線装置を構成する筐体400の内部に設けられている。
【0047】
具体的には、筐体400の内側には、基板500が設けられている。筐体400と基板500とは密着しており、電気的にも接続されている。アンテナ装置10のうち、アンテナ100は、筐体400の内側の表面上に配置されており、同軸ケーブル200は、この基板500の表面上に配置されている。
【0048】
同軸ケーブル200は、アンテナ100と図示を省略するRFモジュールとの間に配置され、一端がアンテナ100(内部グランド103および給電部104)に接続され、他端がRFモジュールに接続される。このとき、
図1および
図5に示すように、同軸ケーブル200のアンテナ100側の部分は、給電部104から、短絡部105が延伸する方向とは反対の方向(
図5におけるx軸負方向)に直線状に延伸し、かつ放射素子101および短絡部105の各々と互いに略平行となるように、基板500の表面上に配置される。このような配置とする理由は、同軸ケーブル200と短絡部105(インピーダンスマッチングパターン)とが互いに干渉し、アンテナ装置10の特性が不安定になってしまうことを回避するためである。
【0049】
特に、同軸ケーブル200の一部の区間である第1の区間は、インダクタンスマッチング部102の終端部に形成されているパターン102bの表面上に設置される。これにより、同軸ケーブル200とアンテナ100とが容量結合される。
【0050】
また、同軸ケーブル200の、上記第1の区間よりもRFモジュール側の区間である第2の区間は、基板500の表面上に設置される。この第2の区間には、露出部201が設けられており、この露出部201によって、同軸ケーブル200の外側導体203が、基板500に対して電気的に接続される。この電気的な接続により、アンテナ100は、基板500を外部グランドとして利用することが可能となる。
【0051】
同軸ケーブル200は、このように配置された状態で、インダクタンスマッチング部102および基板500の表面上に対して、接着等の固定方法により固定される。そして、基板500には、露出部201が電気的に接続される。また、給電部104には、同軸ケーブル200の内側導体204が、半田付けや溶接などによって電気的に接続された状態で固着される。さらに、内部グランド103には、同軸ケーブル200の外側導体203が、半田付けや溶接等によって電気的に接続された状態で固着される。
【0052】
(アンテナ装置10の特性)
ここで、
図6および
図7を参照して、実施形態に係るアンテナ装置10の特性について説明する。
【0053】
図6は、実施形態に係るアンテナ装置10の放射特性を示すグラフである。ここでは、アンテナ装置10の利得およびVSWR特性を測定した。
【0054】
この測定結果によれば、本実施形態のアンテナ装置10は、2412MHz〜2482MHz帯を、動作帯域として得られていることが分かる。また、本実施形態のアンテナ100は、上記動作帯域の中心周波数において、無指向に動作し、かつ十分な利得を得られていることが分かる。
【0055】
図7は、実施形態に係るアンテナ装置10における、同軸ケーブル200のケーブル長と放射特性との関係を示すグラフである。ここでは、同軸ケーブル200のケーブル長を40mm、90mm、150mmとした場合のそれぞれについて、放射特性を測定した。
【0056】
この測定結果によれば、同軸ケーブル200のケーブル長を上記のいずれとした場合であっても、動作帯域(2412MHz〜2482MHz帯)の各周波数において、同様の利得が得られている。このことから、同軸ケーブル200のケーブル長は、アンテナ装置10の放射特性に影響を及ぼさないことが分かる。すなわち、本実施形態のアンテナ装置10は、その設計時に同軸ケーブル200のケーブル長を考慮しなくてもよく、設計自由度が高いものとなっている。
【0057】
図8は、実施形態に係るアンテナ装置10のVSWR特性を示すグラフである。ここでは、内部グランド103から露出部201までの距離を12mm、14mm、16mm、20mmとした場合のそれぞれについて、VSWR特性を測定した。
【0058】
この測定結果によれば、上記距離を長くするほど(すなわち、露出部201を内部グランド103から離間させるほど)、動作帯域を低周波側にシフトできることが分かる。すなわち、本実施形態のアンテナ装置10は、上記距離を調整することによって、容易に所望の帯域を動作帯域とすることができるのである。
【0059】
また、この測定結果によれば、2.4GHz帯(2412MHz〜2482MHz)を動作帯域とする場合、内部グランド103から露出部201までの距離を12mm以上18mm以下としたとき、良好なVSWR特性を得られる(VSWR値が3以下となる)ことが分かる。一般化して言えば、λを動作波長とする場合、内部グランド103から露出部201までの距離をλ/10以上λ/7以下としたときに、良好なVSWR特性を得られることが分かる。2.4GHzに対応する波長λ
2.4Gは125mmであり、12mm≒λ
2.4G/10、18mm≒λ
2.4G/7であるからである。
【0060】
また、この測定結果によれば、上記距離をアンテナ装置10の動作帯域の波長の1/4以内とすることにより、この動作帯域において、よりよいVSWR特性が得られることが分かる。
【0061】
図9は、実施形態に係るアンテナ装置10における、露出部201の位置と、同軸ケーブル200のケーブル長と、放射特性との関係を示すグラフである。ここでは、(1)内部グランド103から露出部201までの距離を14mmとし、同軸ケーブル200のケーブル長を100mmとした場合、(2)内部グランド103から露出部201までの距離を16mmとし、同軸ケーブル200のケーブル長を100mmとした場合、および(3)内部グランド103から露出部201までの距離を16mmとし、同軸ケーブル200のケーブル長を150mmとした場合、のそれぞれについて、放射特性を測定した。
【0062】
この測定結果によれば、上記(1)〜(3)のいずれの場合であっても、動作帯域(2412MHz〜2482MHz帯)の各周波数において、同様の利得が得られている。このことから、露出部201の位置および同軸ケーブル200のケーブル長は、アンテナ装置10によって得られる利得に殆ど影響を及ぼさないことが分かる。すなわち、本実施形態のアンテナ装置10は、露出部201の位置が所望の周波数帯を動作帯域とすることができる範囲内に設定されていれば、これ以外に露出部201の位置および同軸ケーブル200のケーブル長を考慮しなくてもよく、設計自由度が高いものとなっている。
【0063】
図10は、アンテナ装置10の構成を概略的に示したものである。
図10に示すアンテナ800は、その構成が、実質的にアンテナ装置10と等価である。
【0064】
図10に示すアンテナ800において、放射素子801は、放射素子101に相当するものであり、グランド803は、内部グランド103および基板(外部グランド)500に相当するものであり、給電部804は給電部104に相当するものである。放射素子801とグランド803とを短絡する経路805は、短絡部105に相当するものであり、放射素子801から容量Cに到る経路802は、インダクタンスマッチング部102に相当する。そして、容量Cは、インダクタンスマッチング部102と同軸ケーブル200の外側導体203との間の容量、すなわち、インダクタンスマッチング部102と基板500との間の容量に相当するものである。
【0065】
したがって、経路802の有無のそれぞれについて、アンテナ800の放射特性を測定することにより、インダクタンスマッチング部102の有無のそれぞれについて、アンテナ装置10の放射特性を測定した場合と、同様の結果が得られるということになる。
【0066】
図11〜
図13は、アンテナ800の放射特性を示すグラフである。特に、
図11は、短絡部を1つ(経路805のみ)設けた場合のアンテナ800の入力インピーダンスを示すグラフである。また、
図12は、短絡部を2つ(経路805および経路802)設けた場合のアンテナ800の入力インピーダンスを示すグラフである。そして、
図13は、アンテナ800のVSWR特性を示すグラフである。
【0067】
図11および
図12に示す測定結果から、短絡部を1つ設けた場合、共振点が1つ発生し、短絡部を2つ設けた場合、共振点が2つ発生することが分かる。これにより、
図13に示すように、短絡部を1つ設けた場合と2つ設けた場合とで、アンテナ800の動作帯域に変化が生じることが分かる。そして、短絡部を2つ設けた場合、各短絡部の寸法等を変更するなどして、各共振点を適切に調整することにより、動作帯域を拡大できることが分かる。
【0068】
これらの測定結果により、アンテナ装置10において、短絡部105のみならず、必要に応じてインダクタンスマッチング部102をさらに設けることで、動作帯域をより拡大できることが証明された。
【0069】
(効果)
以上説明したとおり、本実施形態のアンテナ装置10においては、同軸ケーブル200の外側導体203を基板500と接続させることによって、当該基板500をアンテナ100の外部グランドとして利用する構成を採用している。
【0070】
これにより、本実施形態のアンテナ装置10においては、逆F型アンテナとしての動作を阻害することなく、同軸ケーブル200の外側導体203に直結された内部グランド103を極小化することができる。
【0071】
よって、本実施形態のアンテナ装置10は、実装対象の通信端末の狭い設置スペースにも容易に設置することができ、その設置スペースを拡大する必要がないため、通信端末のデザインにも影響を及ぼすことがない。
【0072】
また、本実施形態のアンテナ装置10は、インダクタンスマッチング部102によって、放射素子101と同軸ケーブル200の外側導体203とを容量結合する構成を採用している。これにより、インダクタンスを生じさせ、このインダクタンスを利用することで、アンテナ100の動作帯域を拡大するとともに、アンテナ100に十分なVSWR特性をもたらすことができる。
【0073】
また、本実施形態のアンテナ装置10は、内部グランド103からの露出部201の位置によって、アンテナ100の動作帯域が決定付けられる構成となっている。このため、内部グランド103からの露出部201の位置を適切に調整することで、所望の動作帯域を容易に得ることができる。
【0074】
なお、本実施形態のアンテナ装置10は、従来のアンテナ装置からの追加の構成部品は必要なく、比較的簡単な構成となっているため、コストを増加させることなく、上記した様々な効果を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態のアンテナ装置10は、プリント基板、金属製の筐体、金属部品、電子部品等、従来では放射の妨げとなっていた部材から離間させることなく、実装対象の通信端末内に配置することもできる。アンテナ装置10は、このように配置した場合であっても、内部グランド103からの露出部201の位置を適切に調整することで、放射特性の低下を抑制することができる。このことからも、本実施形態のアンテナ装置10は、通信端末の狭い設置スペースにも容易に設置することができ、その設置スペースを拡大する必要がないため、通信端末のデザインにも影響を及ぼすことがない。
〔まとめ〕
以上のように、本実施形態に係るアンテナ装置は、放射素子および内部グランドを有するアンテナと、内側導体が前記放射素子に接続され、外側導体が前記内部グランドに接続された同軸ケーブルと、前記同軸ケーブルの外側導体と接続された外部グランドと、を備えている、ことを特徴とする。
【0076】
上記構成によれば、内部グランドと外部グランドとの双方がモノポール型アンテナ(逆F型アンテナを含む)に必須の構成要素であるグランド(地板)として機能する。このため、例えば、上記アンテナ装置を搭載する無線装置が元々備えている基板を外部グランドとして利用することによって、モノポール型アンテナとしての機能を阻害することなく、内部グランドの面積を小さくすることができる。これにより、従来よりも実装面積の小さいアンテナを実現することができる。
【0077】
上記アンテナ装置において、前記アンテナは、前記放射素子と前記内部グランドとを短絡する短絡部をさらに有する逆F型アンテナである、ことが好ましい。
【0078】
上記構成によれば、同軸ケーブルとのインピーダンス整合を容易に図ることができる。
【0079】
上記アンテナ装置において、前記放射素子は、前記同軸ケーブルの内側導体が接続された給電部から前記同軸ケーブルの引き出し方向と反対方向に伸びる第1の直線部と、第1の折り返し部を介して前記第1の直線部の前記給電部側とは反対側の端部に接続された第2の直線部であって、前記第1の折り返し部から前記引き出し方向に伸びる第2の直線部とからなり、前記短絡部は、前記給電部から前記引き出し方向と反対方向に伸びる第3の直線部と、第2の折り返し部を介して前記第3の直線部の前記給電部側とは反対側の端部に接続された第4の直線部であって、前記第2の折り返し部から前記引き出し方向に伸び、前記第2の折り返し部と反対側の端部が前記内部グランドに接続された第4の直線部とからなる、ことが好ましい。
【0080】
上記構成によれば、アンテナの構成をよりコンパクトにすることができる。これにより、より実装面積の小さいアンテナを実現することができる。
【0081】
上記アンテナ装置において、前記アンテナは、前記放射素子と接続され、かつ、前記同軸ケーブルの外側導体と容量結合したインダクタンス整合パターンをさらに有している、ことが好ましい。
【0082】
上記構成によれば、同軸ケーブルとの容量結合により、アンテナと同軸ケーブルとの間にインダクタンスを生じさせ、その共振点による共振を利用することで、動作帯域の拡大および放射特性の改善を図ることができる。
【0083】
上記アンテナ装置において、前記インダクタンス整合パターンの幅が、当該インダクタンス整合パターン上に配置される前記同軸ケーブルの幅以上に広く設定されている、ことが好ましい。
【0084】
上記構成によれば、同軸ケーブルとのインダクタンス整合を容易に図ることができる。
【0085】
上記アンテナ装置において、前記放射素子の先端部と、前記インダクタンス整合パターンの先端部とが、並設されている、ことが好ましい。
【0086】
上記構成によれば、放射素子の先端部の位置と、インダクタンス整合パターンの先端部の位置とが略同位置となるので、アンテナの放射効率を高めることができる。
【0087】
上記アンテナ装置において、前記同軸ケーブルの外側導体が前記外部グランドに接続される接続位置が前記アンテナを動作させる動作帯域に応じて設定されている、ことが好ましい。
【0088】
上記構成によれば、上記接続位置を調整するだけといった簡単な作業により、所望の動作帯域を容易に得ることができる。また、アンテナの構成を変更することなく、アンテナの利用目的に応じた動作帯域を得ることができるので、アンテナの汎用性を高めることもできる。
【0089】
上記アンテナ装置において、前記同軸ケーブルの外側導体が前記内部グランドに接続される接続点から、前記同軸ケーブルの外側導体が前記外部グランドに接続される接続点までの長さが、前記アンテナの動作帯域の波長の1/4以内の長さに設定されている、ことが好ましい。
【0090】
上記構成によれば、上記接続点間の距離を、所望の動作帯域の波長の1/4以内の長さに設定することにより、この動作帯域において、よりよいVSWR特性が得られる。
【0091】
また、本実施形態に係る実装方法は、放射素子および内部グランドを有するアンテナを無線装置に実装する実装方法であって、同軸ケーブルの内側導体を前記放射素子に接続し、前記同軸ケーブルの外側導体を前記内部グランドに接続する第1の接続工程と、前記同軸ケーブルの外側導体を前記無線装置が備える外部グランドに接続する第2の接続工程と、を含んでいる、ことを特徴とする。
【0092】
上記実装方法によれば、内部グランドと外部グランドとの双方をモノポール型アンテナ(逆F型アンテナを含む)に必須の構成要素であるグランド(地板)として機能させることができる。このため、例えば、上記無線装置が元々備えている基板を外部グランドとして利用することによって、モノポール型アンテナとしての機能を阻害することなく、上記無線装置に実装するアンテナの内部グランドの面積を小さくすることができる。これにより、従来よりも実装面積の小さいアンテナを、上記無線装置に実装することができる。
【0093】
〔補足説明〕
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0094】
例えば、アンテナの種類、構造、形状、寸法、動作帯域等を、上述した実施形態と異ならせることによって得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0095】
実施形態では、本発明を逆F型アンテナに適用する例を説明したが、これに限らず、本発明は、モノポールアンテナ等、様々なアンテナに適用することができる。
【0096】
また、実施形態では、本発明を1つの放射素子を備えたアンテナに適用する例を説明したが、これに限らず、本発明は、2つ以上の放射素子を備えたアンテナ(例えば、低周波用の放射素子と、高周波用の放射素子とを備えたアンテナ)にも適用することができる。
【0097】
いずれの場合も、必要に応じて、各部(例えば、放射素子、内部グランド、給電部、短絡部、同軸ケーブル、導体)の形状、寸法、位置、配置、材質等を適切に変更することによって、実施形態のアンテナ装置10と同様に、アンテナのサイズを大型化することなく、動作帯域を広帯域化し、目的とする周波数帯を動作帯域とするとよい。