(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機EL素子は、駆動時において、前記有機EL素子の長手方向に沿った法平面以外において放射輝度分布が極大値を有することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明による実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1は天井に取り付けられる照明装置11の第1の実施例を示す概略斜視図である。
図2は
図1中のA−A線に沿った断面図である。
図2は照明装置11を使用する時の状態を示し、
図2において、照明装置11の下方向が光り取り出し方向である。ここでは照明装置11を天井に設置するものとして説明するが、天井に配設されるものに限らず、例えば床面に垂直な壁面、天井以外の壁などに設置しても良い。
【0011】
照明装置11は、外装のハウジング12を含む。ハウジング12は、内部に、有機ELパネル13などを格納する。ハウジング12には、有機ELパネル13の照明光を外部に取り出す開口部14が設けられている。ハウジング12の開口部14の周りにはフランジFLが天井への取り付け部として働くように設けられている。
【0012】
有機ELパネル13は、
図1に示すように、ストライプ状に平行並置された互いに異なる発光色の複数の帯状の有機EL素子13aからなる平面発光部13Aを有する。
図1において有機EL素子13aの集合の平面発光部13Aはそのストライプ伸長方向と平行なハッチングで示されている。有機ELパネル13は、ハウジング12に固着されているパネル支持部15を介してハウジング12に固定されている。有機ELパネル13は例えばネジなどによりパネル支持部15に固定されている。有機ELパネル13の固定方法は特に限定されない。
【0013】
有機ELパネル13として例えばパネル平面xy方向に広がる平面状のものが用いられ、有機ELパネルの光取り出し側の面発光部が開口部14から観察者に見られるように有機ELパネル13は配置されている。特に、
図1及び
図2に示すように、有機ELパネル13は、ハウジング12の開口部14を含むXY平面(開口平面XY方向)から奥行き方向Zに角度θにて傾斜して配置されている。
【0014】
さらに、有機ELパネル13は、有機EL素子13aのそれぞれの長手方向がハウジング12の開口部14を含む開口平面XYに平行となるように、ハウジング12に固定されている。照明装置11真下の観察者が開口部14を介して有機ELパネル13を見た場合、観察者はストライ
プ状の有機EL素子13aをパネル平面xy方向の法線方向からでなく、それから傾斜した方向から有機ELパネル13を見ることになる。
【0015】
図2に示すように、ハウジング12の奥行き方向Zにおける有機ELパネル13の裏側のハウジング12の内面に駆動回路16を配置できる。駆動回路16は、外部の電力供給ラインに接続され、有機ELパネル13に電力を供給するための電気回路である。駆動回路16は、有機ELパネル13の複数の有機EL素子13a(発光素子)を発光色ごとに異なる条件で駆動できるように駆動回路を構成しても良い。駆動回路16と有機ELパネル13とは導電ケーブルCcで接続される。
【0016】
なお、照明装置11を照明モジュールとして照明設備に用いる場合、
図2に示す開口部14の周りにはフランジFLや駆動回路16は必ずしも設ける必要はなく、他の外部固定手段や電力供給手段を設けることができる。有機ELパネルへの電力供給ラインは有機ELパネルでは少なくとも陽極と陰極の為に2本が必要である。その他、複数の発光素子を配置した有機ELパネルを用いた場合、それぞれの発光素子を異なる条件で駆動させたい場合は、電力供給ラインは3本以上必要となる。
【0017】
[有機ELパネル13]
図3は、本実施例の有機ELパネルを構成する基板側方向(パネル法線方向z)から見た有機ELパネル13の平面図である。
図4は、有機ELパネル13の構成を示す
図3におけるC−C線に沿った断面図である。
【0018】
図3に示すように、有機ELパネル13においては、平行にストライプ状に並置された有機EL素子13aは、例えば、赤色発光R、緑色発光G及び青色発光Bの互いに異なる発光色の有機EL素子の組(RGBストライプともいう)を逐次並べて構成できる。すなわち、有機EL素子13aはRGB発光色の組のピッチLpと各組内のサブピッチSp(有機EL素子13aの短手方向の幅とバンク幅の合計であるが、実質的に有機EL素子13aの短手幅である)とで、互いに一定の周期間隔おいてx方向に並置されている。
【0019】
図4に示すように、有機ELパネル13は、ガラスや樹脂などの光透過性を有する光透過性の基板20、透明電極30、バスライン40、発光層を含む有機層50、反射電極60が積層されて構成される。有機ELパネル13は、透明電極30と反射電極60との間に電圧を印加することにより発光層において生成される光を基板20の表面から取り出す所謂ボトムエミッション型の有機ELパネルである。基板20の光取り出し面は平坦面となり、基板20の光取り出し面とは反対側の面に有機EL素子13aを有する。
【0020】
陽極を構成する複数の透明電極30は、それぞれ帯状をなしており、基板20上においてy方向に沿って伸長し、互いに一定間隔おいてx方向に平行に並置されている。透明電極30の各々は、例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の金属酸化物導電体等からなる。
【0021】
透明電極30の各々の端側上には、透明電極30に電源電圧を供給する為のバスライン40がy方向に沿って伸長して形成されている。
【0022】
基板20及び透明電極30のバスライン40上には絶縁膜BKが形成されている。絶縁膜BKには、各々がy方向に伸張するストライプ状の開口部が形成されている。絶縁膜BKの表面に複数の開口部を設けることにより複数のバンク(隔壁)が形成される。開口部の各々は、透明電極30に達しており、開口部の底面において透明電極30各々の表面が有機層50に接している。
【0023】
絶縁膜BKの各開口部内における透明電極30上には、正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53R、53G、53B、電子輸送層54、電子注入層55がこの順序で積層されて構成される有機層50が形成されている。発光層と電子輸送層の間に正孔阻止層を設けることもできる。
【0024】
発光層53R、53G、53Bは、それぞれ、赤色発光、緑色発光、青色発光を行う蛍光性有機金属化合物等からなる。発光層53R、53G、53Bは、絶縁膜BK(バンク)によって互いに隔てられた状態で並置されている。すなわち、有機層50は、バンクBKによって隔てられた複数の発光領域を形成している。これら発光領域などはインクジェット法により、それぞれの発光色発光層に対応する少なくとも2色以上の発光材料の液滴を個別に塗布し乾燥させて成膜できる。
【0025】
発光層53R、53G、53Bおよび絶縁膜BKの表面を覆うように電子輸送層54及び電子注入層55が順に形成されている。電子注入層55の表面を覆うように陰極を構成する帯状の反射電極60がx方向に伸張するように形成されている。反射電極60は、仕事関数が低くかつ高反射率を有するAlなどの金属または合金等からなる。反射電極60は、光反射膜を構成するものである。
【0026】
なお、以上説明した発光層などの有機機能層の層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。いずれにしても、これら積層構成に限定されることなく、少なくとも発光層を含み、或いは兼用できる電荷輸送層を含む有機層及び電極の構成は本発明に含まれる。
【0027】
このように、赤、緑、青の発光色をそれぞれ発する発光層53R、53G、53Bは、ストライプ状に繰り返し配置されており、光取り出し面となる基板20の表面からは、赤、緑、青の光が任意の割合で混色されて単一の発光色として認識される光が放出される。
【0028】
[照明装置の動作]
本実施例のRGBストライプ型の有機ELパネル13において、有機EL素子13aのRGB発光色の有機EL素子の組のピッチLp及びサブピッチSpなどのピッチが広い場合、RGBストライプが目立ってしまいRGB発光色の混色が不十分となって、白色有機ELパネル13に見えないという懸念がある。一方で、有機EL素子13aのピッチを狭くすると相対的にバンクBKの面積が増え開口率が小さくなるため、所望の輝度を得ようとすると各素子にかかる電流負担が大きくなる。また、ピッチを狭くする場合、有機EL素子13aの数が増加するので、有機ELパネルの製造歩留まりも悪くなり生産性が悪くなるという懸念もある。
【0029】
図5に示すように、照明装置の使用者が直接、当該照明装置を眺めた場合でも、使用者である観察者Vから有機ELパネル13までの距離は1m(1000000μm)以上であると考えられる。
【0030】
使用者とパネルの距離が1mであるとき、この距離が最小視認距離(3原色が混ざり合って人間の目で見える距離)となるパネルピッチを考える。このときパネルから1m離れた場所からパネルのピクセルピッチは4’(0.066°)となり、ピクセルピッチ=2×(tan(0.033°)×1000000)≒1150μmとなる。よってサブピッチ2X/3:Sp=(ピクセルピッチ)/3≒380μmである。つまり、照明用途(パネルとの距離1m以上)では380μmピッチがRGBストライプを認識できなくなるピッチである。
【0031】
このように、ハウジング開口部14を含むXY平面に対して、ハウジング12内に有機ELパネル13を斜めに設置することで、RGBストライプを見えにくくすることができる。なお、白色を構成する3原色のRGBストライプに説明したが、ストライプはRGBに特に限定されない。
【0032】
開口率は90%以上確保したい場合を計算すると、表1に示すように、有機ELパネル13のサブピッチSp(バンク幅70μmで計算)は700μm以上必要となる。
【0034】
380μmのサブピッチSpでRGBストライプが見えなくなることから、cosθ=380/Sp[μm]を満たすべく、Sp=700μmを代入して計算する。700μmピッチ有機ELパネル13を
図5の観察者から見てRGBストライプが見えなくなるサブピッチSpにするには有機ELパネル13を傾斜角度θ=57.1°以上傾ける必要がある。この場合、Sp×cosθ≦380μmを満たすならば、RGBストライプを観察者に見えなくする効果が顕著になる。cosθ=380/Spを満たす計算値の傾斜角度θを表2に示す。
【0036】
このように、本実施例では、RGBストライプ型の有機ELパネル13を収納するハウジング12において、開口部14を含むXY平面に対して、有機ELパネル13(xy平面)を斜めに配置(傾斜角度θ)することにより、RGBストライプを観察者に見えなくすることができるとともに、際限なくピッチを狭くすることがなくなり、有機EL素子13aの数を抑制して、製造歩留まりに貢献する。
【0037】
[第2実施例]
有機ELパネル13の放射輝度分布が有機ELパネル13の正面方向に強い光強度分布又は通常のランバーシアン光強度分布である場合、開口平面から斜めに設置した有機ELパネル13から観察者に届く光量が弱くなる。また、正面方向の光をミラー等で反射させてもその光は700μmピッチのRGBストライプの光である。
【0038】
そこで、
図1に示すハウジング12の内壁、少なくとも有機ELパネル13から開口部14までの内壁、に鏡面処理を施すことにより、効率の良い光り取り出しが達成できる。
【0039】
また、
図6に示す装置は、有機ELパネル13と交差し、かつ、ハウジング12の開口部14を含む平面に向かうミラーM(有機ELパネルとの交線が当該開口平面に平行なミラー)を更に有する以外は、
図1に示す構成と同一の実施例であり、これも効率の良い光り取り出しが達成できる。特に、有機ELパネル13の垂直方向(パネル法線方向z)から角度b°の斜め方向に強い放射輝度分布を有機ELパネルが持つとき、有機ELパネル13に対して交差角度180−b°(ミラーMと有機ELパネル13のなす角度)でミラーMを配置すると観測方向への光の損失が少なくなる効果が得られる。
【0040】
さらに、有機EL素子13aは、駆動時において、有機ELパネル13の有機EL素子13aを含む法平面内の放射輝度分布より強度の高い当該法平面以外の放射輝度分布を有するように形成することが好ましい。有機ELパネル13から観察者の方向(有機ELパネル13の正面から斜め方向)に強い放射輝度分布を有するように有機EL素子13aの有機層を光学設計することで、斜め設置した有機ELパネル13の法線方向に強い放射輝度分布のものを用いた場合に比べて光り取り出しを有効とすることができる。
【0041】
そこで、ランバーシアン光強度分布を有する有機ELパネルとパネル法線方向から斜め方向に強い放射輝度分布を有する有機ELパネルと2種類作成し評価する実験を行った結果を説明する。
【0042】
図4に示す有機層構成のうちの陰極(反射電極)、発光層、正孔輸送層、正孔注入層及び陽極(透明電極)の層構成を厚さ1.1mmのガラス基板上に形成した。ランバーシアン光強度分布を有するもの(60:45素子)とパネル法線方向から斜め方向に強い放射輝度分布を有するもの(120:10素子)では、発光層及び正孔輸送層の膜厚のみの比率を変えた以外、同一の構成で2種類の有機ELパネルを形成した。
【0045】
次に、
図7を参照して、120:10素子及び60:45素子の有機ELパネルの光学特性を調べた実験について説明する。120:10素子及び60:45素子の有機ELパネルの双方とも、発光波長が略500nmピーク(5V)のブロードなスペクトルを呈した。このときの放射輝度の出射角に関する分布を、120:10素子の有機ELパネルと60:45素子の有機ELパネルに対して測定した。
図7に示すグラフの半径方向が放射輝度を示し、円周方向が出射角度を示す。曲線120:10と曲線60:45が、それぞれ120:10素子及び60:45素子の有機ELパネルの放射輝度分布を示す。
【0046】
かかる放射輝度分布から分かるように、60:45素子の有機ELパネルではほぼすべての出射角度範囲において放射輝度が均等であった。120:10素子の有機ELパネルでは、前者の場合に比べて、出射角45°付近における放射輝度が向上した。
【0047】
このように、ランバーシアン光強度分布の60:45素子の有機ELパネルを、ハウジング開口部XY平面に対して斜めに配置に用いてもよいが、法線斜め方向に強い放射輝度分布を有するように有機ELパネルの有機層を光学設計することで、斜め設置した有機ELパネルの光り取り出しを有効とすることができることが分かる。さらに、有機ELパネルの偏在する強い放射輝度分布方向にミラーを配置する構成とすれば、有機ELパネルから観察者方向に強い光り取り出しが達成できる。すなわち、有機EL素子はその長手方向に沿った法平面以外において放射輝度分布が極大値を有すように形成されることが好ましい。
【0048】
RGBストライプ型の有機ELパネルを収納するハウジングにおいて、その開口部を含むXY平面に対して、有機ELパネルを斜めに配置する場合に、その有機ELパネルが観察者方向(有機ELパネルの斜め方向)に放射輝度分布が強くなるように光学設計されていることが好ましい。
【0049】
[第3実施例]
図8は、1つのハウジング12内にて、有機EL素子の光取り出し面が開口部14へ発光面が向くように、図示しない固定部材を介して2枚の有機ELパネル13を電気的に接続して固定配置した以外、
図2及び
図6に示す構成と同一の実施例を示す。有機ELパネル同士の交線が当該開口平面に平行となるように配置されている。
【0050】
図9は、1つのハウジング12内にて、それぞれの有機EL素子の光取り出し面が開口部14へ発光面が向くように、8枚の有機ELパネル13を複数の固定部材70を介して電気的にかつ蛇腹様に接続して固定配置した以外、
図2に示す構成と同一の実施例を示す。有機EL素子13a(反射電極)はミラーとしても機能するので、正面方向への効率の良い光り取り出しが達成できる。
【0051】
図10は、1つのハウジング12内にて、それぞれの有機EL素子の光取り出し面が開口部14へ発光面が向くように、1枚のフレキシブルな基板を用いた有機ELパネル13bを蛇腹様に形成し開口平面に平面発光部13Aが傾斜するように配置された以外、
図2及び
図9に示す構成と同一の実施例を示す。
【0052】
図11は、1つのハウジング12内にて、それぞれの有機EL素子の光取り出し面が開口部14へ発光面が向くように、図示しない固定部材を介して4枚の三角形の有機ELパネル13を電気的にかつ四角錐状に接続して固定配置した以外、
図2に示す構成と同一の実施例を示す。有機EL素子13aはミラーとしても機能するので、正面方向への効率の良い光り取り出しが達成できる。
【0053】
[第4実施例]
図12は、有機ELパネル13の法線方向からの発光の視認を抑制するために、開口部14の周囲縁部に、有機EL素子13aのストライプ伸長方向に平行に突出する庇部EAVを設け以外、
図12に示す構成と同一の実施例を示す。なお、有機EL素子13aのストライプ伸長方向に平行に突出する庇部EAVはいずれ実施例においても設けることができる。
【0054】
[第5実施例]
図13(a)は本発明の第5実施例の照明装置構造を示す平面図であり、
図13(b)は
図13(a)におけるD−D線に沿った断面図である。
【0055】
図13は、
図11に示す実施例の変形例として、1つのハウジング12内にて、それぞれの有機EL素子の光取り出し面が開口部14へ発光面が向くように、中心に12枚の二等辺三角形の有機ELパネル13cをそれぞれの二等辺頂角を中心に配置して、36枚の台形の有機ELパネル13dの底辺と頂辺とを交互に固定部材(図示せず)を介して電気的に接続して同心円状に固定配置した以外、
図11に示す構成と同一の実施例を示す。この例も有機EL素子13aがミラーとしても機能するので、正面方向への効率の良い光り取り出しが達成できる。シャンデリア型に複数の有機ELパネルを配置とすることで、観察者の位置による輝度のバラツキを抑制できる。なお、本実施例にも第4実施例と同様の態様にて庇部(図示せず)を設けてもよい。
【0056】
なお、いずれの実施例においても、保護のために、ハウジング開口部14にガラスやアクリルなどの透光性蓋部材や、金属や樹脂等からなる格子を配置してもよい。