特許第5701405号(P5701405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701405
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】砥石車の取付装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 45/00 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
   B24B45/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-549043(P2013-549043)
(86)(22)【出願日】2011年12月16日
(86)【国際出願番号】JP2011079233
(87)【国際公開番号】WO2013088574
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年10月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591043721
【氏名又は名称】豊田バンモップス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】北島 正人
(72)【発明者】
【氏名】深見 肇
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 諭
(72)【発明者】
【氏名】国広 泰治
(72)【発明者】
【氏名】竹原 寛
【審査官】 橋本 卓行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−277955(JP,A)
【文献】 特開平06−238557(JP,A)
【文献】 特開昭58−186560(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0293380(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0167119(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 45/00
B24B 23/00−23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥石軸の外周に着脱可能に固着された砥石フランジに対して、外周に砥石層を設けた砥石車を取付ける取付装置であって、
前記砥石フランジに、前記砥石車を取付ける砥石取付軸部を設け、
該砥石取付軸部の外周に、嵌合導入部を形成し、
該嵌合導入部の基端部に、円弧状の嵌合凸部を180度未満の角度範囲に亘って形成し、
前記嵌合導入部は、前記砥石車が、上下左右方向に円滑に案内され、かつ前記嵌合凸部にスムーズに乗り上げできるように、前記嵌合凸部の径寸法より小さな径寸法に設定され、
前記砥石車に、前記嵌合凸部の径寸法と同心的に合致嵌合する径寸法を有する中心穴を形成し、
前記嵌合導入部の前記砥石取付軸部の軸端側に、前記嵌合導入部より径方向寸法の小さな逃がし部を、前記嵌合凸部から軸線方向に離間し、かつ前記嵌合凸部と円周方向に対向する位置に所定の角度範囲に亘って形成し、
前記砥石取付軸部の前記嵌合凸部に前記砥石車の前記中心穴を同心的に合致嵌合した状態で、前記砥石車を前記砥石フランジの端面に固定するようにした、
ことを特徴とする砥石車の取付装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記嵌合導入部の径寸法を、前記嵌合凸部の径寸法より0.015〜0.35mm小さくした砥石車の取付装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記嵌合導入部および前記逃がし部を、前記嵌合凸部と同心の円筒形状とした砥石車の取付装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記砥石フランジに、前記嵌合凸部に対応する角度位置にアップマークを設けた砥石車の取付装置。
【請求項5】
請求項4において、前記砥石フランジに装着される前記砥石車は、予め機外において前記中心穴を基準にして前記砥石層の外周を成形され、前記砥石車には、前記アップマークに対応する合わせマークが設けられている砥石車の取付装置。
【請求項6】
砥石軸の外周に着脱可能に固着された砥石フランジに対して、外周に砥石層を設けた砥石車を取付ける取付装置であって、
前記砥石フランジに、前記砥石車を取付ける砥石取付軸部を設け、
前記砥石取付軸部の外周に、嵌合導入部を形成し、
前記砥石車に、前記嵌合導入部の径寸法より大きな径寸法を有する中心穴を形成し、
前記砥石車の前記中心穴の内周に、前記砥石車を前記砥石嵌合部の径寸法とを同心的に合致嵌合する径寸法を有する円弧状の嵌合凸部を180度未満の角度範囲に亘って形成し、
前記嵌合導入部は、前記砥石車が、上下左右方向に円滑に案内され、かつ前記砥石嵌合部にスムーズに乗り上げできるように、前記砥石嵌合部の径寸法より小さな径寸法に設定され、
前記嵌合導入部の前記砥石取付軸部の軸端側に、前記嵌合導入部より径方向寸法の小さな逃がし部を、前記砥石嵌合部から軸線方向に離間し、かつ前記砥石車の前記嵌合凸部と円周方向に対向する位置に所定の角度範囲に亘って形成し、
前記砥石取付軸部の前記砥石嵌合部に前記砥石車の前記嵌合凸部を同心的に合致嵌合した状態で、前記砥石車を前記砥石フランジの端面に固定するようにした、
ことを特徴とする砥石車の取付装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記嵌合導入部の径寸法を、前記嵌合凸部の径寸法より0.015〜0.35mm小さくした砥石車の取付装置。
【請求項8】
砥石軸の外周に着脱可能に固着された砥石フランジに対して、外周に砥石層を設けた砥石車を取付ける取付方法であって、
前記砥石フランジに、前記砥石車を取付ける砥石取付軸部を設け、
該砥石取付軸部の外周に、嵌合導入部を形成し、
該嵌合導入部の基端部に、円弧状の嵌合凸部を180度未満の角度範囲に亘って形成し、
前記嵌合導入部は、前記砥石車が、上下左右方向に円滑に案内され、かつ前記嵌合凸部にスムーズに乗り上げできるように、前記嵌合凸部の径寸法より小さな径寸法に設定され、
前記砥石車に、前記嵌合凸部の径寸法と同心的に合致嵌合する径寸法を有する中心穴を形成し、
前記嵌合導入部の前記砥石取付軸部の軸端側に、前記嵌合導入部より径方向寸法の小さな逃がし部を、前記嵌合凸部から軸線方向に離間し、かつ前記嵌合凸部と円周方向に対向する位置に所定の角度範囲に亘って形成し、
前記砥石取付軸部の前記嵌合導入部に前記砥石車の前記中心穴を支持させ、その状態で前記砥石車を前記嵌合導入部によって案内しながら前記砥石取付軸部の軸線方向に移動させて、前記砥石車の前記中心穴を前記砥石取付軸部の前記嵌合凸部に同心的に合致嵌合させ、その状態で、前記砥石車を前記砥石フランジの端面に固定するようにした、
ことを特徴とする砥石車の取付方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記嵌合導入部の径寸法を、前記嵌合凸部の径寸法より0.015〜0.35mm小さくした砥石車の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石車の取付装置に関し、特に、砥石車を砥石フランジに容易に、かつ芯出し精度を確保して取付けることができる砥石車の取付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研削盤の機外で砥石車を砥石修正装置によってツルーイングし、それと同じ取付基準で砥石車を研削盤に取付けるようにしたものが、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のものは、砥石修正装置および研削盤の各砥石軸の取付面(外周面)と、この取付面に取付けられる砥石車の取付穴(内周面)との間に、砥石車を砥石軸に嵌合しやすい程度のクリアランスを設けることにより、砥石車の砥石軸への着脱作業を容易に行えるようにしている。
【0004】
また、砥石軸にテーパ嵌合可能な砥石スリーブに、砥石層を有する円板状の砥石保持体を装着するボス部を設け、このボス部に砥石保持体の内径と同径で、かつ180度以下の円弧状の砥石装着部を形成したものが、特許文献2に記載されている。
【0005】
特許文献2に記載のものは、砥石保持体を砥石スリーブの砥石装着部に容易に装着することができるとともに、砥石保持体を砥石スリーブと同心状態に保持できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−40237公報
【特許文献2】特開昭61−182767公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、特許文献1の図8に示されるように、砥石軸1の取付面1aの外径よりも砥石車2の取付穴2aの内径を大きくすることにより、クリアランスCLを付与するものであるので、砥石修正装置によって砥石車をツルーイングする際に、砥石軸1の中心O1に対して砥石車2の中心O2が偏心量εだけ偏心して取付けられることになる。このために、砥石車2の砥石層3が砥石コア4の外周面に対して偏心してツルーイングされるようになる。従って、砥石層3を砥石軸1に対して真円にツルーイングするためには、砥石層3の円周上の一部におけるツルーイング量Q1を局所的に多くしなければならず、砥石車2の寿命が短くなる問題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載のものは、特許文献2の図1に示されるように、砥石保持体(2)を、締付ボルト(11)によって砥石スリーブ(5)と締付フランジ(10)との間で挟着し、しかる状態で、砥石スリーブ(5)を砥石軸(12)にテーパ嵌合し、締付ナット(13)によって締付固定することにより、砥石車(1)を(砥石軸12)と同心的に取付けるものである。従って、砥石車を交換する毎に、重量のある砥石スリーブ等を砥石軸から取外し、かつ取付ける必要があり、砥石交換の作業性が悪く、砥石交換に要する時間が長くなる問題がある。
【0009】
しかも、特許文献2に記載のものでは、砥石スリーブ(5)のボス部(6)に形成した円弧状の砥石装着部(6a)の突出量が小さいと、砥石保持体(2)の装着時の隙間が小さくなり、砥石スリーブ(5)の砥石装着部(6a)への砥石保持体(2)の装着が難しくなる。そのため、砥石保持体(2)の装着を容易にするためには、砥石装着部(6a)の突出量を大きくする必要があり、砥石スリーブ(5)の回転アンバランスが大きくなる問題があった。
【0010】
本発明は、上述した従来の問題を解消するためになされたもので、交換する砥石車の重量を軽減して、砥石車を砥石フランジに容易に装着することができ、かつ芯出し精度を確保して取付けることができる砥石車の取付装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、砥石軸の外周に着脱可能に固着された砥石フランジに対して、外周に砥石層を設けた砥石車を取付ける取付装置であって、前記砥石フランジに、前記砥石車を取付ける砥石取付軸部を設け、該砥石取付軸部の外周に、嵌合導入部を形成し、該嵌合導入部の基端部に、円弧状の嵌合凸部を180度未満の角度範囲に亘って形成し、前記嵌合導入部は、前記砥石車が、上下左右方向に円滑に案内され、かつ前記嵌合凸部にスムーズに乗り上げできるように、前記嵌合凸部の径寸法より小さな径寸法に設定され、前記砥石車に、前記嵌合凸部の径寸法と同心的に合致嵌合する径寸法を有する中心穴を形成し、前記嵌合導入部の前記砥石取付軸部の軸端側に、前記嵌合導入部より径方向寸法の小さな逃がし部を、前記嵌合凸部から軸線方向に離間し、かつ前記嵌合凸部と円周方向に対向する位置に所定の角度範囲に亘って形成し、前記砥石取付軸部の前記嵌合凸部に前記砥石車の前記中心穴を同心的に合致嵌合した状態で、前記砥石車を前記砥石フランジの端面に固定するようにしたことである。
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、前記嵌合導入部の径寸法を、前記嵌合凸部の径寸法より0.015〜0.35mm小さくしたことである。
【0012】
請求項3に係る発明の特徴は、請求項1または請求項2において、前記嵌合導入部および前記逃がし部を、前記嵌合凸部と同心の円筒形状としたことである。
【0013】
請求項4に係る発明の特徴は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記砥石フランジに、前記嵌合凸部に対応する角度位置にアップマークを設けたことである。
【0014】
請求項5に係る発明の特徴は、請求項4において、前記砥石フランジに装着される前記砥石車は、予め機外において前記中心穴を基準にして前記砥石層の外周を成形され、前記砥石車には、前記アップマークに対応する合わせマークが設けられていることである。
【0015】
請求項6に係る発明の特徴は、砥石軸の外周に着脱可能に固着された砥石フランジに対して、外周に砥石層を設けた砥石車を取付ける取付装置であって、前記砥石フランジに、前記砥石車を取付ける砥石取付軸部を設け、前記砥石取付軸部の外周に、嵌合導入部を形成し、前記砥石車に、前記嵌合導入部の径寸法より大きな径寸法を有する中心穴を形成し、前記砥石車の前記中心穴の内周に、前記砥石車を前記砥石嵌合部の径寸法とを同心的に合致嵌合する径寸法を有する円弧状の嵌合凸部を180度未満の角度範囲に亘って形成し、前記嵌合導入部は、前記砥石車が、上下左右方向に円滑に案内され、かつ前記砥石嵌合部にスムーズに乗り上げできるように、前記砥石嵌合部の径寸法より小さな径寸法に設定され、前記嵌合導入部の前記砥石取付軸部の軸端側に、前記嵌合導入部より径方向寸法の小さな逃がし部を、前記砥石嵌合部から軸線方向に離間し、かつ前記砥石車の前記嵌合凸部と円周方向に対向する位置に所定の角度範囲に亘って形成し、前記砥石取付軸部の前記砥石嵌合部に前記砥石車の前記嵌合凸部を同心的に合致嵌合した状態で、前記砥石車を前記砥石フランジの端面に固定するようにしたことである。
請求項7に係る発明の特徴は、請求項6において、前記嵌合導入部の径寸法を、前記嵌合凸部の径寸法より0.015〜0.35mm小さくしたことである。
請求項8に係る発明の特徴は、砥石軸の外周に着脱可能に固着された砥石フランジに対して、外周に砥石層を設けた砥石車を取付ける取付方法であって、前記砥石フランジに、前記砥石車を取付ける砥石取付軸部を設け、該砥石取付軸部の外周に、嵌合導入部を形成し、該嵌合導入部の基端部に、円弧状の嵌合凸部を180度未満の角度範囲に亘って形成し、前記嵌合導入部は、前記砥石車が、上下左右方向に円滑に案内され、かつ前記嵌合凸部にスムーズに乗り上げできるように、前記嵌合凸部の径寸法より小さな径寸法に設定され、前記砥石車に、前記嵌合凸部の径寸法と同心的に合致嵌合する径寸法を有する中心穴を形成し、前記嵌合導入部の前記砥石取付軸部の軸端側に、前記嵌合導入部より径方向寸法の小さな逃がし部を、前記嵌合凸部から軸線方向に離間し、かつ前記嵌合凸部と円周方向に対向する位置に所定の角度範囲に亘って形成し、前記砥石取付軸部の前記嵌合導入部に前記砥石車の前記中心穴を支持させ、その状態で前記砥石車を前記嵌合導入部によって案内しながら前記砥石取付軸部の軸線方向に移動させて、前記砥石車の前記中心穴を前記砥石取付軸部の前記嵌合凸部に同心的に合致嵌合させ、その状態で、前記砥石車を前記砥石フランジの端面に固定するようにしたことである。
請求項9に係る発明の特徴は、請求項8において、前記嵌合導入部の径寸法を、前記嵌合凸部の径寸法より0.015〜0.35mm小さくしたことである。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、嵌合導入部の形成によって、砥石フランジの砥石取付軸部に砥石車を取付ける際に、砥石車を砥石取付軸部に隙間を有した状態で挿入できるようになり、砥石車を砥石取付軸部に装着した後は、砥石車を嵌合導入部上で滑らせながら、砥石車の内周面を嵌合凸部に嵌合させることができる。
【0017】
これにより、砥石車の砥石フランジへの取付けを容易に行うことができるので、砥石取付軸部と砥石車との間の隙間を可及的に小さくすることが可能となり、研削屑等の異物やクーラントが隙間内に入りにくくすることができるとともに、砥石フランジの回転アンバランスを小さくでき、バランス取り作業が容易となる。
【0018】
また、砥石取付軸部の軸端側に逃がし部を、嵌合凸部から軸線方向に離間して所定の角度範囲に亘って形成したので、逃がし部と嵌合凸部との間に嵌合導入部を全周に亘って形成することができ、これによって、砥石車を嵌合導入部上で案内している際に砥石車が上下左右に傾いても、嵌合導入部によって傾きが規制され、砥石取付軸部と砥石車との間の隙間が小さくても、砥石車を嵌合凸部にスムーズに嵌合させることができる。
【0019】
しかも、請求項1に係る発明によれば、砥石車の中心穴と嵌合凸部との合致嵌合によって、砥石車の中心を砥石フランジの中心に一致させることができ、砥石フランジに対する砥石車の同心精度を確保することができる。加えて、砥石フランジの砥石取付軸部に対して、円板状の砥石車を取付けるだけであるので、砥石車を交換する際の交換重量を低減でき、砥石交換の作業性を向上することができる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、嵌合導入部および逃がし部を、嵌合凸部と同心の円筒形状としたので、嵌合導入部および逃がし部の形成を容易に行うことができる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、砥石フランジに、嵌合凸部に対応する角度位置にアップマークを設けたので、砥石車の装着時に砥石フランジの嵌合凸部を上向きの角度位置に容易に位置決めすることができる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、砥石フランジに装着される砥石車は、予め機外において内周を基準にして砥石層の外周を成形され、砥石車には、アップマークに対応する合わせマークが設けられているので、砥石車の合わせマークを砥石フランジのアップマークに合うように砥石フランジに装着することにより、成形時と同じ取付基準で砥石車を研削盤の砥石フランジに容易に取付けることができる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、砥石車の内周側に、嵌合凸部と逃がし円弧部を設け、砥石フランジの砥石取付軸部側に、嵌合円弧部に嵌合する砥石嵌合部と導入嵌合部と逃がし部を設けたので、請求項1で述べたと同様な作用効果を奏することができる。
請求項8に係る発明によれば、砥石取付軸部の嵌合導入部に砥石車の中心穴を支持させ、その状態で砥石車を嵌合導入部によって案内しながら砥石取付軸部の軸線方向に移動させて、砥石車の中心穴を砥石取付軸部の嵌合凸部に同心的に合致嵌合させ、その状態で、砥石車を砥石フランジの端面に固定するように取付方法であるので、請求項1で述べたと同様な作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施に好適な研削盤の平面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態を示すもので、図1の矢印2方向から見た砥石取付装置の拡大正面図である。
図3図2の3−3線に沿って切断した砥石取付装置の断面図である。
図4】砥石フランジの砥石取付軸部を示す斜視図である。
図5】砥石車を成形する成形装置の一例を示す平面図である。
図6】本発明の第2の実施の形態を示す砥石取付装置の断面図である。
図7図6の7−7線に沿って切断した断面図である。
図8】従来技術における砥石軸と砥石車との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態に好適な研削盤10の平面図を示し、研削盤10のベッド11上には、テーブル12がZ軸方向に移動可能に支持され、ベッド11に設置されたサーボモータ13の駆動により、図略の送りねじ機構を介して移動されるようになっている。テーブル12上には、主軸台14と心押台15が対向して設置され、これら主軸台14と心押台15によって、工作物WがZ軸方向と平行な軸線の回りに回転可能に支持される。
【0026】
また、ベッド11上には、砥石台17がZ軸に交差するX軸方向に移動可能に支持され、ベッド11に設置されたサーボモータ18の駆動により、図略の送りねじ機構を介して移動されるようになっている。砥石台17には、砥石車19を保持するための砥石軸20が砥石台17の移動方向と垂直な水平軸線の回りに回転可能に支持され、砥石軸20は砥石台17に設置された砥石駆動モータ21によって回転駆動される。
【0027】
テーブル12および砥石台17を駆動するサーボモータ13、18は、NC装置29によってNC制御されるようになっており、テーブル12のZ軸方向移動と、砥石台17のX軸方向の進退移動とにより、工作物Wを砥石車19によって研削加工するようになっている。
【0028】
図2および図3は、本発明の第1の実施の形態を示すもので、砥石車19は、外周面25bに砥石層24を設けた円板状の砥石コア25を備え、砥石コア25の中心部には真円からなる内周面25aを有する中心穴が形成されており、砥石コア25の外周面25bおよび内周面25aは同心加工されている。砥石車19は、砥石軸20上にテーパ嵌合されて締付ナット26により着脱可能に固着された砥石フランジ23に、後述するように着脱可能に取付けられるようになっている。砥石軸20に固着された砥石フランジ23は、図略のバランス取り装置によってバランス取りされる。
【0029】
砥石フランジ23には、砥石取付軸部23aが砥石フランジ23の中心(砥石軸20)と同心的に形成され、この砥石取付軸部23aに砥石コア25の内周面25aが嵌合されるようになっている。砥石フランジ23の砥石取付軸部23aに嵌合された砥石車19は、砥石コア25の円周上に形成した複数のボルト孔を挿通する複数のボルト27によって、砥石フランジ23の端面に固定される。なお、砥石層24は、例えば、CBN砥粒をビトリファインドボンドで結合したものからなっている。
【0030】
砥石フランジ23の砥石取付軸部23aは、図3に示すように、砥石車19の砥石コア25の軸方向幅よりも十分に大きな軸方向長さを有している。砥石取付軸部23aの外周には、図4にも示すように、砥石車19を装着する際に円周隙間を形成するための嵌合導入部23a1が形成されている。嵌合導入部23a1は、砥石取付軸部23a(砥石フランジ23)の回転中心O1と同心的な円筒形状に形成され、その外径D1は、砥石コア25の内周面25aの内径(後述する嵌合凸部23a2の外径)D0より僅かな寸法、例えば、0.05mm程度小径に設定されている(D0>D1)。
【0031】
砥石取付軸部23aの嵌合導入部23a1の基端部、すなわち、砥石フランジ23の端面側には、砥石コア25の内周面25aの内径(D0)とほぼ同径の嵌合凸部23a2が、180度未満の角度範囲θ、例えば90度の角度範囲に亘って、嵌合導入部23a1と同心的に形成されている。90度の角度範囲に嵌合凸部23a2を形成することにより、砥石車19と砥石取付軸部23aとの間には、上下方向のみならず、左右方向にも隙間を形成することできる。
【0032】
この結果、砥石フランジ23の砥石取付軸部23aの嵌合導入部23a1の基端部には、嵌合凸部23a2を除く部分に、嵌合凸部23a2より小径部分(嵌合導入部23a1)が、180度を超える角度範囲に亘って形成される。
【0033】
嵌合導入部23a1の形成により、砥石フランジ23の砥石取付軸部23aに砥石車19を取付ける際に、砥石車19の内周面25aを砥石取付軸部23aの中心O1に対して、砥石取付軸部23aの全周に隙間を有した状態で砥石車19を挿入することができ、砥石取付軸部23aへの砥石車19の取付け作業を容易に行えるようになる。
【0034】
しかも、砥石車19を砥石取付軸部23aの嵌合導入部23a1に挿入した後、砥石車19を離すと、重力作用によって砥石車19の内周面25aが砥石取付軸部23aの嵌合導入部23a1に支持され、砥石車19は取付け軸方向に垂直に位置決め支持される。従って、その状態で、砥石車19を嵌合導入部23a1上を滑らせながら砥石フランジ23の端面に向かって移動させることにより、砥石車19の内周面25aを嵌合凸部23a2に容易に嵌合させることができる。
【0035】
すなわち、嵌合凸部23a2と嵌合導入部23a1の段差寸法は小さく、砥石車19の径によっても異なるが、例えば、0.015〜0.35mm(好ましくは、0.025mm)であるので、砥石車19を嵌合導入部23a1上を滑らせることにより、砥石車19を砥石取付軸部23aの嵌合凸部23a2に容易に嵌合させることができる。この場合、砥石車19の内周面25aの端部に面取りを形成してもよい。この状態(砥石フランジ23の嵌合凸部23a2に砥石車19の内周面25aが嵌合された状態)においては、砥石車19の内周面25aと砥石取付軸部23aとの間に、半周以上に亘ってクリアランスCLが形成されるとともに、砥石車19の中心が、砥石取付軸部23aの中心O1、延いては、砥石軸20の中心に一致され、芯出し精度が確保される。
【0036】
このように、嵌合導入部23a1を案内にして、砥石車19を砥石取付軸部23aの嵌合凸部23a2に嵌合保持できるので、砥石取付軸部23aと砥石車19との間の隙間CLを小さくしても、砥石フランジ23への砥石車19の取付けを容易に行うことができる。
【0037】
従って、砥石取付軸部23aと砥石車19との間の隙間CLを可及的に小さくすることが可能となる。言い換えれば、嵌合凸部23a2の突出量を小さくすることが可能となるので、砥石フランジ23の回転アンバランスを小さくでき、砥石フランジ23のバランス取り作業が容易となる。しかも隙間CLを小さくできることにより、研削屑等の異物やクーラントが隙間CL内に侵入しにくくすることができ、錆びの発生を抑制することができる。
【0038】
しかも、砥石軸20に固定された砥石フランジ23の砥石取付軸部23aに対して、円板状の砥石車19を着脱するだけでよいので、砥石車19を交換する際の交換砥石重量を低減でき、砥石交換作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0039】
砥石フランジ23の砥石取付軸部23aの嵌合導入部23a1の端部(砥石取付軸部23aの軸端)には、嵌合導入部23a1より小径の逃がし部23a3が、嵌合凸部23a2から軸線方向に所定量離間し、かつ嵌合凸部23a2と180度異なる円周位置に、180度を超える角度範囲、例えば270度程度の角度範囲に亘って形成されている。逃がし部23a3は、嵌合導入部23a1と同心の円弧状に形成され、その外径D2は、嵌合導入部23a1の外径D1に対して、例えば、0、1mm程度小径に設定されている(D1>D2)。
【0040】
これにより、砥石フランジ23が嵌合凸部23a2を上向きとした角度に位置決めされた場合に、砥石取付軸部23aの軸端の径方向寸法S1(図2参照)を、嵌合導入部23a1の外径D1よりも小さくすることができる。従って、砥石車19を砥石フランジ23の砥石取付軸部23aへ装着する際に、仮に砥石車19が前後方向あるいは左右方向に傾くことにより、砥石車19の内周面25aの実質的な径寸法が小さくなっても、逃がし部23a3の形成によって、砥石コア25を砥石フランジ23の砥石取付軸部23aに挿入しやすくすることができる。
【0041】
しかも、逃がし部23a3が、嵌合凸部23a2から軸線方向に所定量離間して形成され、嵌合凸部23a2と逃がし部23a3との間に、嵌合導入部23a1が全周に亘って形成されているので、砥石車19を嵌合導入部23a1上で滑らせている際に多少左右に傾いても、嵌合導入部23a1によって傾きを規制でき、小さな隙間であっても、砥石車19を嵌合凸部23a2にスムーズに嵌合させることが可能となる。
【0042】
上記したように、嵌合凸部23a2と嵌合導入部23a1の段差が小さいから、砥石車19は上下左右方向に円滑に案内されることにより、段部(嵌合凸部23a2)にスムーズに乗り上げることができる。しかも、砥石車19の内周面25aと砥石取付軸部23aとの間のクリアランスCLが小さいと、砥石車19を砥石取付軸部23aに入れにくくなるが、砥石取付軸部23aの入口部(軸端部)に逃がし部23a3が形成されているので、クリアランスCLが小さくても、砥石車19を砥石取付軸部23aに容易に装着できるようになる。
【0043】
なお、嵌合導入部23a1、嵌合凸部23a2、ならびに逃がし部23a3を、砥石フランジ23の回転中心と同心的に形成したことにより、円筒研削盤によって、嵌合導入部23a1、嵌合凸部23a2ならびに逃がし部23a3を、比較的容易に加工できる。
【0044】
具体的には、まず、砥石取付軸部23aの外周を直径D0に加工に、しかる後、嵌合凸部23a2を所定の角度範囲に亘って突設させるように直径D1の嵌合導入部23a1を加工し、最後に、径寸法がD2の逃がし部23a3を所定の角度範囲に亘って加工する
【0045】
砥石車19の砥石コア25の側面には、図2に示すように、砥石車19を砥石フランジ23の砥石取付軸部23aに取付ける際の方向性を示す取付指標としての合わせマークM1が付与されている。これにより、砥石車19を、合わせマークM1が砥石フランジ23の砥石取付軸部23aに形成された嵌合凸部23a2に一致する角度で容易に装着することができる。
【0046】
一方、砥石フランジ23の砥石取付軸部23aの側面には、図2および図3に示すように、砥石車19を取付ける方向性を示すアップマークM2が、嵌合凸部23a2に対応する角度位置に付与されている。砥石フランジ23は、通常、アップマークM2(嵌合凸部23a2)が鉛直方向の上方に位置する角度位置に位置決めされ、この状態で、砥石車19の内周面25aが砥石取付軸部23aに装着される。
【0047】
この場合、砥石車19が前もって、後述する成形装置30等によって成形(ツルーイング)されている場合には、図2で示したように、砥石車19に砥石フランジ23の砥石取付軸部23aに取付ける際の方向性を示す合わせマークM1を形成し、この合わせマークM1を、砥石フランジ23に形成されたアップマークM2に一致するように、砥石車19を砥石フランジ23の砥石取付軸部23aに取付ければよい。これによって、砥石成形時と同じ取付基準で砥石車19を砥石フランジ23に取付けることができるようになり、砥石フランジ23に取付けた砥石車19の同心精度を確保することができる。
【0048】
次に、研削盤10の砥石フランジ23に砥石車19を取付けるに先立って、砥石車19を製品として完成させるための成形(ツルーイング)工程について説明する。
【0049】
図5は、砥石車19を成形する成形装置30の一例を示すもので、成形装置30のベッド31上には、テーブル32がZ軸方向に移動可能に支持され、ベッド31に設置されたサーボモータ33の駆動により、図略の送りねじ機構を介して移動されるようになっている。テーブル32上には、成形台34が固定されており、成形台34には、砥石車19をツルーイングするダイヤモンドロール35が、Z軸方向に平行な軸線の回りに回転可能に支持されている。ダイヤモンドロール35は、成形台34に設置された図略のモータによって回転駆動される。
【0050】
また、ベッド31上には、砥石支持台37がZ軸に交差するX軸方向に移動可能に支持され、ベッド31に設置されたサーボモータ38の駆動により、図略の送りねじ機構を介して移動されるようになっている。砥石支持台37には、砥石車19を取付けるための砥石取付軸部を有する図略の砥石フランジが、砥石支持台37の移動方向と垂直な水平軸線の回りに回転可能に支持され、砥石フランジは砥石支持台37に設置された砥石駆動モータ40によって回転駆動される。
【0051】
砥石フランジの砥石取付軸部は、研削盤10の砥石軸20上に装着された砥石フランジ23の砥石取付軸部23aと同様な構成をなすもので、外周の一部が半周以上に亘って砥石取付軸部23aの外径より所定の寸法だけ小径にした逃がし部が形成され、逃がし部を除く半周以下に、砥石コア25の内周面25aに同心的に合致嵌合する円弧状の嵌合凸部が形成されている。
【0052】
テーブル32および砥石支持台37を駆動するサーボモータ33、38は、NC装置43によって制御され、テーブル32のZ軸方向移動と、砥石支持台37のX軸方向の進退移動とにより、ダイヤモンドロール35によって砥石車19の外周を、砥石車19の内周面25aを基準にして、真円に成形(ツルーイング)するようになっており、また、必要に応じて、バランス取りが実施される。
【0053】
このようにして、砥石車19が製品として完成され、砥石車19の砥石コア25の側面には、砥石成形(ツルーイング)時と同一の取付基準で、砥石車19を研削盤10の砥石フランジ23に取付けることができるように、成形装置30の砥石フランジの嵌合凸部と対応した位置に、合わせマークM1(図2参照)が形成される。
【0054】
この場合、合わせマークM1は、砥石車19を成形装置30に取付ける前に形成しておき、この合わせマークM1を砥石フランジの嵌合凸部と対応するように、砥石フランジに取付けるようにしてもよい。
【0055】
次に上記した第1の実施の形態における作用について説明する。研削盤10で使用していた砥石車19が寿命に達した場合には、ボルト27を緩めて、砥石車19を砥石フランジ23より取外し、予め製品として完成されている砥石車19と交換する。
【0056】
砥石交換時には、砥石フランジ23は、アップマークM2(嵌合凸部23a2)が上向きとなるように位置決めされ、このアップマークM2に砥石車19の合わせマークM1を位置合わせした状態で、砥石車19を砥石フランジ23の砥石取付軸部23aに装着する。
【0057】
この際、砥石フランジ23の砥石取付軸部23aには、砥石車19の内周面25aよりも小径の嵌合導入部23a1が全周に亘って形成されているので、砥石取付軸部23aの全周に隙間を有した状態で砥石車19を挿入することができる。
【0058】
しかも、砥石取付軸部23aの軸端には、嵌合導入部23a1より小径の逃がし部23a3が形成されているので、砥石車19を砥石フランジ23の砥石取付軸部23a装着する際に、砥石車19が多少傾いていても、砥石コア25を砥石フランジ23の砥石取付軸部23aに挿入しやすくすることができる。
【0059】
このようにして、砥石車19を砥石取付軸部23aの嵌合導入部23a1に挿入した後、砥石車19を離すと、重力作用によって砥石車19の内周面25aが砥石取付軸部23aの嵌合導入部23a1に支持できる。従って、作業者は、砥石車19を砥石取付軸部23aの嵌合導入部23a1に支持した状態で、砥石車19を砥石フランジ23の端面に向かって嵌合導入部23a1上を滑らせるだけで、砥石車19の内周面25aを嵌合凸部23a2に嵌合させることができる。
【0060】
この際、逃がし部23a3が嵌合凸部23a2から軸線方向に所定量離間して形成されていることにより、砥石車19を嵌合導入部23a1で滑らせる際に、砥石車19が多少傾いていても、嵌合導入部23a1の案内によって砥石車19を嵌合凸部23a2にスムーズに嵌合できるようになる。
【0061】
砥石取付軸部23aの嵌合凸部23a2に嵌合された砥石車19は、砥石フランジ23に対して同心上に位置決め保持される。この状態で、図2および図3に示すように、砥石コア25の円周上に形成した複数のボルト孔を挿通する複数のボルト27によって、砥石コア25を砥石フランジ23の端面に締付け、砥石車19を砥石フランジ23に固定する。
【0062】
上記した第1の実施の形態によれば、砥石車19は、成形(ツルーイング)時と同一の取付基準で砥石取付軸部23aに取付けられることになり、研削盤10に取付けられた砥石車19は、砥石取付軸部23a、延いては砥石軸20に同心状態に保持され、真円精度が確保される。従って、砥石車19を研削盤10に取付けた後に、砥石車19のツルーイングを行わなくても、砥石車19の高速回転時に振動等が発生することがなく、高精度な研削を可能にできる。
【0063】
しかも、嵌合導入部23a1の形成によって、砥石取付軸部23aの全周に隙間を有した状態で砥石車19を挿入することができるので、嵌合凸部23a2の突出量を小さくできる。これにより、砥石フランジ23の回転アンバランスを小さくでき、砥石フランジ23のバランス取り作業が容易となる。しかも隙間CLが小さくなって、研削屑等の異物やクーラントが隙間CL内に入りにくくすることができる。
【0064】
さらに、逃がし部23a3の形成によって、砥石取付軸部23aへの砥石車19の挿入時に砥石車19が多少傾いていても、小さな隙間で、砥石取付軸部23aに砥石車19を容易に取付けることができる。加えて、逃がし部23a3が、嵌合凸部23a2から軸線方向に所定量離間して形成されているので、嵌合凸部23a2と逃がし部23a3との間に、嵌合導入部23a1が全周に亘って形成され、砥石車19を嵌合導入部23a1で滑らせている際に、砥石車19が多少傾いていても、嵌合導入部23a1の案内によって砥石車19を嵌合凸部23a2にスムーズに嵌合することができる。
【0065】
また、砥石フランジ23を砥石軸20に固定した状態で、円板状の砥石車19のみを交換すればよいので、砥石交換重量を低減でき、砥石交換を簡単かつ短時間で行えるようになる。
【0066】
このような結果、砥石メーカにおいて、上記した構成の砥石フランジ23を、砥石車19を用いて工作物を加工するユーザに提供し、研削盤10の砥石軸20に固定しておく。そのうえで、内周面25aを基準にして成形(ツルーイング)し、完成させた砥石車19を、砥石メーカよりユーザに必要に応じて補給することにより、ユーザにおいて、交換重量の小さな砥石車19を、簡単にしてかつ同心精度を確保して取付けることができる。これにより、ユーザにおいては、段取り替えに要する時間を大幅に短縮でき、生産効率を向上することができる。
【0067】
なお、CBN砥石からなる円板状の砥石車19に代えて、普通砥石を砥石軸20に取付ける場合には、砥石軸20より砥石フランジ23を取外し、砥石軸20に普通砥石を挟持した砥石スリーブを装着すればよい。
【0068】
図6および図7は、本発明の第2の実施の形態を示すもので、第1の実施の形態と異なる点は、砥石取付軸部23a側に設けられていた嵌合凸部を、砥石車19の内周側に設けた点である。従って、以下においては、主に第1の実施の形態と異なる点を説明し、第1の実施の形態と同一の構成部品については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0069】
図6および図7において、砥石フランジ23の砥石取付軸部23aの基端部には、砥石嵌合部23a5が、砥石車19の砥石コア25の軸方向幅よりも小さな軸方向長さで、全周に亘って形成されている。砥石取付軸部23aには、砥石嵌合部23a5と僅かな段差を有する嵌合導入部23a1が、砥石取付軸部23aの軸端に亘って砥石嵌合部23a5と同心的に形成されている。嵌合導入部23a1の外径は、砥石嵌合部23a5の外径より、例えば、0.05mm程度小径に設定されている。
【0070】
砥石取付軸部23aの嵌合導入部23a1の端部(砥石取付軸部23aの軸端)には、嵌合導入部23a1より小径の逃がし部23a3が、砥石嵌合部23a5から軸線方向に所定量離間し、かつアップマークM2と180度異なる円周位置に、180度を超える角度範囲、例えば270度程度の角度範囲に亘って形成されている。逃がし部23a3は、嵌合導入部23a1と同心の円弧状に形成され、その外径は、嵌合導入部23a1の外径に対して、例えば、0、1mm程度小径に設定されている。
【0071】
砥石車19(砥石コア25)の内周面25aには、図7に示すように、砥石取付軸部23aの砥石嵌合部23a5の外径とほぼ同径の嵌合凸部25a2が、180度未満の角度範囲θ、例えば90度の角度範囲に亘って、砥石車19の中心と同心的に形成されている。砥石車19の内周面25aの嵌合凸部25a2を除く部分には、嵌合凸部25a2よりも大径の逃がし円弧部25a3が、180度を超える角度範囲に亘って形成される。
【0072】
嵌合導入部23a1の形成により、砥石フランジ23の砥石取付軸部23aに砥石車19を取付ける際に、砥石車19の内周面25aを砥石取付軸部23aの中心に対して、砥石取付軸部23aの全周に隙間を有した状態で砥石車19を挿入することができ、砥石取付軸部23aへの砥石車19の取付け作業を容易に行えるようになる。
【0073】
しかも、砥石車19を砥石取付軸部23aの嵌合導入部23a1に挿入した後、砥石車19を離すと、重力作用によって砥石車19の嵌合凸部25a2が砥石取付軸部23aの嵌合導入部23a1に支持され、砥石車19は取付け軸方向に垂直に位置決め支持される。従って、その状態で、砥石車19を嵌合導入部23a1上を滑らせながら砥石フランジ23の端面に向かって移動させることにより、砥石車19の嵌合凸部25a2を砥石嵌合部23a5に容易に嵌合させることができる。
【0074】
すなわち、砥石嵌合部23a5と嵌合導入部23a1の段差寸法は小さい(例えば、0.015〜0.35mm(好ましくは、0.025mm)ので、砥石車19を嵌合導入部23a1上を滑らせることにより、砥石車19の嵌合凸部25a2を砥石取付軸部23aの砥石嵌合部23a5に容易に嵌合させることができる。この状態においては、砥石車19の嵌合凸部25a2と砥石嵌合部23a5との間に、半周以上に亘ってクリアランスCLが形成されるとともに、砥石車19の中心が、砥石取付軸部23aの中心、延いては、砥石軸20の中心に一致され、芯出し精度が確保される。
【0075】
上記した第2の実施の形態によれば、砥石車19の内周側に、嵌合凸部25a2と逃がし円弧部25a3を設けた場合でも、先に述べた第1の実施の形態と同様に、嵌合導入部23a1によって、砥石車19の嵌合凸部25a2を砥石取付軸部23aの砥石嵌合部23a5に容易に嵌合させることができる。
【0076】
また、逃がし部23a3によって、砥石取付軸部23aへの砥石車19の挿入時に砥石車19が多少傾いていても、小さな隙間で、砥石取付軸部23aに砥石車19を容易に取付けることができる。さらに、逃がし部23a3が、砥石嵌合部23a5から軸線方向に所定量離間して形成されているので、砥石嵌合部23a5と逃がし部23a3との間に、嵌合導入部23a1が全周に亘って形成され、砥石車19を嵌合導入部23a1で滑らせている際に、砥石車19が多少傾いていても、嵌合導入部23a1の案内によって砥石車19を砥石嵌合部23a5にスムーズに嵌合させることができる。
【0077】
さらに、砥石フランジ23を砥石軸20に固定した状態で、円板状の砥石車19のみを交換すればよいので、砥石交換重量を低減でき、砥石交換を簡単かつ短時間で行えるようになる。
【0078】
上記した実施の形態においては、予め研削盤10の機外において、成形装置30により砥石車19を成形(ツルーイング)し、成形後の砥石車19を、成形時と同じ取付基準で研削盤10に取付けるようにした例について述べたが、本発明は、砥石フランジ23の砥石取付軸部23aに取付ける砥石車19を、成形装置30によって前もって成形するものに限定されるものではない。なお、砥石車19を、成形装置30によって前もって成形しない場合には、砥石車19に合わせマークM1を設けることも不要となる。
【0079】
また、上記した実施の形態においては、嵌合導入部23a1および逃がし部23a3を、砥石フランジ23の中心と同心の円弧状とした例について述べたが、必ずしも砥石フランジ23の中心と同心の円弧面である必要はなく、嵌合導入部23a1および逃がし部23a3の機能を損わない範囲内で、それらの形状を変更することは可能である。
【0080】
なお、実施の形態で述べた嵌合導入部23a1、嵌合凸部23a2(砥石嵌合部23a5)および逃がし部23a3の径寸法差や角度範囲は、単なる一例を示したものにすぎず、例えば、逃がし部23a3は、少なくとも180度前後の角度範囲であれば、砥石車19の前後方向の傾きに十分対応可能である。
【0081】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る砥石車の取付装置は、円板状の砥石車を砥石軸に固着された砥石フランジの砥石取付軸部に着脱可能に取付ける研削盤に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0083】
10…研削盤、17…砥石台、19…砥石車、20…砥石軸、23…砥石フランジ、23a…砥石取付軸部、23a1…嵌合導入部、23a2…嵌合凸部、23a3…逃がし部、23a5…砥石嵌合部、24…砥石層、25…砥石コア、25a…内周面、25a2…嵌合凸部、25a3…逃がし円弧部、27…ボルト、30…成形装置、M1…合わせマーク、M2…アップマーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8