特許第5701432号(P5701432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5701432
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】食品及び風味改善方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/39 20060101AFI20150326BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20150326BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20150326BHJP
   A23L 1/221 20060101ALI20150326BHJP
   A23F 3/14 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   A23L2/00 Q
   A23L2/00 B
   A23L2/02 E
   A23L1/221 C
   A23F3/14
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-129968(P2014-129968)
(22)【出願日】2014年6月25日
【審査請求日】2014年6月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】木原 香織
(72)【発明者】
【氏名】西元 琢也
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−054202(JP,A)
【文献】 特開2006−262889(JP,A)
【文献】 特開2007−252340(JP,A)
【文献】 特開2005−237291(JP,A)
【文献】 特開2005−237290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/00−2/40
A23F 3/00−3/42
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物乾燥物、抹茶及び煎茶からなるチャノキの葉、並びに含蜜糖を含有する粉末食品であって、
前記植物乾燥物が、前記チャノキの葉又は含蜜糖よりも多く含まれていることを特徴とする粉末食品。
【請求項2】
以下の(a)〜(d)のいずれか1の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の粉末食品。
(a)前記粉末食品の総量に対し、前記チャノキの葉を0.6〜47質量%含有する。
(b)前記抹茶を、前記粉末食品の総量に対し0.4〜30質量%含有する。
(c)前記煎茶を、前記粉末食品の総量に対し0.2〜17質量%含有する。
(d)前記含蜜糖を、前記粉末食品の総量に対し0.2〜24質量%含有する。
【請求項3】
前記含蜜糖が、黒糖であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉末食品。
【請求項4】
前記植物乾燥物が、パセリ,麦,ダイコン,ゴーヤ,ニンジン,ブロッコリ,ケール,セロリ,カボチャ,小松菜,キャベツ,ゴボウ,アスパラガス,ホウレンソウから選択されるいずれか1以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の粉末食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の野菜を含有した食品及び風味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康維持のため、野菜の摂取は欠かせないものとなっている。野菜からビタミンやミネラル等の栄養成分を十分に摂取するには、多量の野菜を経口摂取する必要があるが、近年、野菜の摂取不足に伴う栄養不足が懸念されている。
そのため、従来から、野菜等の植物を加工し、青汁等の粉末飲料やジュースといった飲食品にすることで、野菜を摂取し易くする対策が取られている。
しかしながら、野菜等の植物を粉末飲料等へ加工する場合、植物に含有される栄養成分等が濃縮され、苦さや生臭さが強調されるため、摂取し難くなるという問題があった。
【0003】
このような課題を解決するため、野菜等の植物の乾燥粉末を含む食品は、合成甘味料や香料等によってマスキングされることが一般的である。野菜等の植物を含む食品の味等の改善方法として、乳糖を添加することを特徴とする野菜飲料のエグミ低減方法(特許文献1)、カンペステロールとβ−シトステロールを任意の重量比で含有させることを特徴とする野菜の青臭み抑制方法及び濃厚感改善方法(特許文献2)、スクラロースで野菜の青臭さをマスキングした野菜加工食品(特許文献3及び4)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−226128号公報
【特許文献2】特開2012−244913号公報
【特許文献3】特開2014−057604号公報
【特許文献4】特開2014−057605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1乃至4は、野菜等の植物の味や青臭さをマスキングするものであり、植物の味を活かし、且つ、味や香りを改善するものではなかった。そのため、より良い風味改善方法の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するために、チャノキの葉及び含蜜糖を配合することにより、野菜等の植物の味を損なうことなく、美味しく爽やかな味わいを有するとともに、香り等にも優れ、摂取し易い植物乾燥物を含む食品及び食品の風味改善方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討を行ったところ、チャノキの葉及び含蜜糖を配合することにより、野菜等の植物の本来の味を損なうことなく、味や香り、飲み易さ等を改善することができ、チャノキの葉及び含蜜糖を任意の配合量又は重量比にすることで、香りも良く、飲み易さ、口当たり等に対する優れた効果が得られることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)植物乾燥物、抹茶及び煎茶からなるチャノキの葉、並びに含蜜糖を含有する食品であって、前記植物乾燥物が、前記チャノキの葉又は含蜜糖よりも多く含まれていることを特徴とする粉末食品。
(2)以下の(a)〜(d)のいずれか1の条件を満たす(1)に記載の粉末食品。
(a)前記粉末食品の総量に対し、前記チャノキの葉を0.6〜47質量%含有する。
(b)前記抹茶を、前記粉末食品の総量に対し0.4〜30質量%含有する。
(c)前記煎茶を、前記粉末食品の総量に対し0.2〜17質量%含有する。
(d)前記含蜜糖を、前記粉末食品の総量に対し0.2〜24質量%含有する。
(3)前記含蜜糖が、黒糖であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の粉末食品。
(4)前記植物乾燥物が、パセリ,麦,ダイコン,ゴーヤ,ニンジン,ブロッコリ,ケール,セロリ,カボチャ,小松菜,キャベツ,ゴボウ,アスパラガス,ホウレンソウから選択されるいずれか1以上である前記(1)乃至(3)のいずれか1の粉末品。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、植物乾燥物を含む食品に対しチャノキの葉及び含蜜糖を配合することにより、野菜等の植物の味を損なうことなく、植物乾燥物を含む食品の風味を改善し、美味しく爽やかな味わいを有するとともに、香り等にも優れる食品にすることができる。
また、チャノキの葉又は含蜜糖を任意の配合量又は重量比にすることで、香りも良く、飲み易さ、口当たり等に対する優れた風味改善効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明の食品に配合される植物乾燥物に含まれる植物は特に限定されないが、セリ科植物(パセリ、ニンジン、セロリ等)、イネ科植物(例えば、大麦,小麦,えん麦等の麦類等)、アブラナ科植物(キャベツ、ケール、ダイコン、小松菜、ブロッコリ等)、ウリ科植物(例えば、カボチャ、ゴーヤ等)、キク科植物(例えば、ゴボウ等)、ユリ科植物(アスパラガス等)、アカザ科植物(例えば、ホウレンソウ等)等の植物の乾燥物を含有することが好ましい。これらの植物の品種等は特に限定されず、変種等を使用しても良い。これらの植物は、植物体をそのまま乾燥物に加工しても良いし、搾汁や抽出物等の加工物を乾燥物に加工しても良い。乾燥物は、粉砕等の処理によって乾燥粉末としても良い。
また、該植物において、使用される部位は特に限定されないが、一般的に可食部とされる根、茎、葉、花序、果実等から選択されることが好ましい。根や茎、果実等を使用する場合、皮を含んでも良い。
【0012】
本発明の食品に配合されるチャノキの葉は、ツバキ科(Theaceae)、チャノキ属(Thea)の植物である。チャノキ(Thea sinensis(=Camellia sinensis))の葉は、そのままあるいは、緑茶、紅茶、黒茶、白茶、黄茶、青茶などの加工物を用いることができるが、熱処理によって酸化酵素の働きを止めた不発酵茶である緑茶を用いることが好ましい。緑茶としては煎茶、抹茶を用いることが好ましい。なお、不発酵茶は一般的に、熱処理後に葉を揉んだものを煎茶、葉を揉まないものをてん茶と呼び、てん茶を挽いて粉末にしたものが抹茶と呼ばれる。
本発明において煎茶は、玉露やかぶせ茶、番茶、玉緑茶等の製造工程として茶葉を揉む工程が含まれた茶葉であれば良い。また、煎茶は1種の茶葉のみを使用しても良いし、2種以上の茶葉を併用しても良い。
また、本発明のチャノキの葉は、そのまま又は搾汁、抽出物等を乾燥粉末に加工しても良い。例えば、煎茶は、そのまま乾燥粉末に加工しても良いし、抽出物等を乾燥粉末に加工しても良い。抹茶は、抽出物を乾燥粉末に加工しても良い。
【0013】
本発明の食品に配合される含蜜糖は、糖蜜が分離されていない砂糖の総称であり、糖蜜を含む糖であれば特に制限はなく、加工方法や原料として用いる植物の種類、粉状や液状等の剤形を問わない。本発明に用いることができる含蜜糖としては、例えば、黒糖や赤糖(赤砂糖)、白下糖、かえで糖、黒蜜、ブラウンシュガー等を用いても良く、精製糖の製造時に分離された糖蜜のみを含むものを用いても良い。また、糖蜜が残っていれば、粗糖のように一部の糖蜜が分離されたものを用いても良く、サトウキビやテンサイ等の植物の搾汁そのもの又は搾汁の濃縮物を用いても良い。また、上記の含蜜糖に他の原料を加えて加工したものを用いても構わない。また、植物等に黒糖等の含蜜糖を加えて微生物によって発酵した発酵エキスを用いても構わない。
【0014】
本発明に用いる含蜜糖としては、黒糖が最も好ましい。なお、本願における黒糖とは、さとうきびの搾り汁から不純物の除去を行い、濃縮を行った後、糖蜜を分離せずに製造した砂糖であって固形又は粉末状のものだけではなく、黒糖に粗糖等を加えて加工した加工黒糖や、黒糖蜜(原材料に黒糖を使用して夾雑物の除去を行った液体状のもの)も含むこととする。
【0015】
本発明の食品は、前述した植物乾燥物、チャノキの葉、含蜜糖を乾燥粉末に加工したものを配合することが好ましい。乾燥粉末への加工方法は、直接粉砕・破砕して粉末とする方法、原料の搾汁又は抽出を濃縮・乾燥した後に粉砕・破砕する方法等、目的に応じて適宜選択することができる。
粉砕・破砕方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ブランチング処理を行い、次いで水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥し、その後粉砕する方法(特開2004−000210号を公報参照),ブランチング処理を行い、次いで揉捻し、乾燥した後、粉砕する方法(特開2002−065204号公報を参照),粗粉砕した後、更に微粉砕する方法(特開2006−289225号公報を参照)等を挙げることができる。
また、抽出方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、原料にエタノール、水、これらの混合物等、当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて加温して抽出する方法等を挙げることができる。
搾汁方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、原料の植物又はその細片化物を圧搾するか、原料の細片化物を遠心又はろ過する方法等を挙げることができる。原料の細片化の方法においても、従来公知の方法を用いることができる。
粉末にする際の乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、凍結乾燥粉末や熱風乾燥粉末等が挙げられる。
【0016】
本発明の食品における、チャノキの葉及び含蜜糖の重量比は、目的や使用対象等の条件に応じて、適宜設定することができるが、例えば、チャノキの葉:含蜜糖=6〜470:2〜240、好ましくはチャノキの葉:含蜜糖=6〜227:3〜240が選択される。
また、チャノキの葉が抹茶及び煎茶である場合、例えば、抹茶:煎茶:含蜜糖=4〜300:2〜170:2〜240、好ましくは抹茶:煎茶:含蜜糖=4〜150:2〜77:3〜240が選択される。
重量比がこれらの範囲から外れると、味や香り、飲み易さ、清涼感等の改善作用が得られ難くなる傾向にあり好ましくない。
【0017】
本発明の食品に対するチャノキの葉の配合量は、特に限定されず、目的や使用対象等の条件に応じて適宜選択することができるが、植物乾燥物より少ない配合量であることが好ましく、例えば、0.6〜47質量%、好ましくは0.6〜22.7質量%が選択される。
また、チャノキの葉が、抹茶又は煎茶である場合、本発明の食品に対する抹茶又は煎茶の配合量は、特に限定されず、目的や使用対象等の条件に応じて適宜選択することができ、例えば、抹茶の場合、0.4〜30質量%、好ましくは0.4〜15質量%、煎茶の場合、0.2〜17質量%、好ましくは0.2〜7.7質量%が選択される。
抹茶の配合量が、0.4質量%より少なくなる、又は、15質量%より多くなるにつれ、味や香り、飲み易さ、清涼感等の改善作用が得られ難くなる傾向にあり、30質量%を超えるとこれらの傾向が著しくなるため好ましくない。
煎茶の配合量が、0.2質量%より少なくなる、又は、7.7質量%より多くなるにつれ、味や香り、飲み易さ、清涼感等の改善作用が得られ難くなる傾向にあり、17質量%を超えるとこれらの傾向が著しくなるため好ましくない。
【0018】
本発明の食品に対する含蜜糖の配合量は、特に限定されず、目的や使用対象等の条件に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.2〜24質量%、好ましくは0.3〜24質量%が選択される。
含蜜糖の配合量が、0.3質量%より少なくなる、又は、24質量%より多くなるにつれ、味や香り、飲み易さ、清涼感等の改善作用が得られ難くなる傾向にあり、0.2質量%より少なくなるか24質量%より多くなるにつれ、これらの傾向が著しくなるため好ましくない。
【0019】
本発明の食品には、前述した植物乾燥物、チャノキの葉、含蜜糖に加えその他の成分を含有しても良い。
その他の成分としては、例えば、機能性成分、甘味料、調味料、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料などが挙げられる。本発明の食品に対するこれらの成分配合量は、本発明の食品の効果が十分に発現するように適宜調整される。
【0020】
本発明の食品は、飲食品等のその他の組成物に含有させても良い。その他の組成物に対する本発明の食品の配合量は、特に制限はなく、目的や形状,使用対象等の様々な条件に応じて、広範囲でその配合量を適宜設定することができる。例えば0.0001以上100質量%未満、好ましくは0.001〜90質量%、より好ましくは0.01〜70質量%の範囲が選択される。
本発明の食品の摂取量は特に制限はなく、摂取対象個体の年齢、体重、体質等、様々な要因を考慮して適宜選択することができる。
【0021】
本発明の食品を、その他の成分を含有する場合、又は、その他の組成物に含有させる場合に得られる、本発明の食品を配合する組成物の形状は、特に限定されず、例えば、粉状、粒状、顆粒状、錠状、クリーム状、タブレット状、カプセル状、カプレット状、ソフトカプセル状、板状、ブロック状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、飴状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等が適宜選択される。
【0022】
本発明の食品は粉末食品であることが好ましく、その形状としては粉状、粒状、顆粒状等が挙げられる。粉末食品とした場合の粒径は、特に限定されないが、粉状、粒状の場合、例えば0.01〜1000μm、好ましくは0.1〜300μm、より好ましくは1〜300μmが選択される。粉末の粒径が1μmより小さくなるにつれ加工が困難になる傾向あり、0.01μmより小さくなると、この傾向が著しくなるので好ましくない。また、粉末の粒径が300μmより大きくなると、直接又は粉状飲料として経口摂取する際にざらつき等を感じ易くなる傾向に有り、1000μmより大きくなると、この傾向が著しくなるので好ましくない。
また、顆粒状の場合、例えば、0.01〜10000μm、好ましくは0.1〜3000μm、より好ましくは1〜1000μmが選択される。顆粒の粒径が1μmより小さくなるにつれ、造粒が困難となる傾向にあり、0.01μmより小さくなるにつれ、この傾向が著しくなるので好ましくない。また、顆粒の粒径が1000μmより大きくなるにつれ、溶媒への溶解性や分散性が悪くなる傾向にあり、10000μmより大きくなると、この傾向が著しくなるので好ましくない。
【0023】
本発明の食品の摂取方法、摂取量、摂取回数、摂取時期、及び摂取対象は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明の食品を、そのまま又は顆粒等とし、水やその他の飲料(牛乳等)や食用油(コーン油等)等液体に溶かす若しくは分散させ飲料として摂取する場合、製造を容易にでき、組成物としての安定性や汎用性に優れるとともに、カプセルや錠剤等と異なり1度に多くの組成物を摂取することができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
まず、パセリ(茎・葉),麦(大麦の茎・葉),ダイコン(茎・葉・根),ゴーヤ(果実),ニンジン(根),ブロッコリ(茎・花序),ケール(葉),セロリ(茎・葉),カボチャ(果実),小松菜(茎・葉),キャベツ(葉),ゴボウ(根),アスパラガス(茎),ホウレンソウ(茎・葉)を同量ずつ混合して調製した植物乾燥粉末と、風味改善剤を準備した。風味改善剤としては、チャノキの葉として抹茶粉末及び煎茶粉末を用い、含蜜糖として黒糖粉末を用いた。
次に、表1に示す組み合わせとなるように植物乾燥粉末と抹茶粉末、煎茶粉末及び黒糖粉末を配合し、試料1乃至9の粉末食品を得た。尚、試料1乃至9の粉末食品の調製は、総量を100gとし、抹茶粉末は8g、煎茶粉末は4g、黒糖粉末は3g、植物乾燥粉末は残部となるように組み合せて行った。例えば、試料3の場合、抹茶粉末8gと植物乾燥粉末92gを混合し総量100gとした。
次いで、調製した試料1乃至9の粉末食品3gと、飲料水100mLを混合し、試料1乃至9の試験飲料を得た。
【0026】
【表1】
【0027】
<官能評価試験>
官能試験の評価者には、20〜30代の健常男女複数人が選択された。試験飲料の各試験飲料の官能評価を行うにあたり、各評価者は試験飲料の摂取前に少量の水を口に含んでマウスウォッシュを行った。評価者は、各試験飲料を摂取し、評価が良くないものを1、評価が良いものを5とする、1〜5までの5段階で、味,香りの良さ,飲み易さ,清涼感の4項目の評価を行った。
また、評価値3は、どちらでもないという評価であり、本試験の基準値とした。
官能評価の結果を表1に示す。
【0028】
表1の結果から、植物乾燥粉末と抹茶粉末、煎茶粉末及び黒糖粉末の全てを含む試料9は、全ての評価値が、植物乾燥粉末のみの試料1、風味改善剤のみの試料2と比べて概ね1〜2点高かった。また、風味改善剤1種のみを含む試料3〜5、風味改善剤2種を組合せた試料6〜8と比べても、風味改善剤3種全てを組合せた試料9の方が評価値は高かった。
【0029】
このことから、植物乾燥粉末を含有する粉末食品において、風味改善剤を配合することで、植物乾燥粉末の味や香り、飲み易さ、清涼感等の風味を改善することができ、その効果は、抹茶粉末,煎茶粉末及び黒糖粉末の3種全てを組合せることで、相乗的に高めることができることが確認された。また、植物乾燥粉末と組合せる風味改善剤の量が、植物乾燥粉末の量より少なくても、味や香り、飲み易さ、清涼感等の風味改善効果が得られることが確認された。
【0030】
(実施例2)
まず、実施例1で使用した試料9に対して、抹茶粉末,煎茶粉末及び黒糖粉末の粉末食品中の配合量を表2〜4に示すように調整した試料10〜25の粉末食品を得た。
次に、得られた粉末食品3gを実施例1と同様に飲料水100gと混合し、官能評価を実施し、実施例1の試料1及び2の評価と比較した。
更に、実施例1の官能評価項目に加え、総合評価として、非常に風味に優れるものを◎、風味に優れるものを○、風味が悪いものを△、非常に風味が悪いものを×とする評価を加えた。
評価結果を表2乃至4に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
表2及び3より、抹茶粉末又は煎茶粉末の配合量が、試料9に対して3倍及び5倍の試料(試料13,14,19,20)の総合評価は○であり、0.05倍,0.1倍,1倍,2倍の試料(試料9〜12,16〜18)の総合評価は◎であった。
このことから、植物乾燥粉末に対する風味改善効果は、抹茶粉末及び煎茶粉末の試料9に対する配合量が、0.1〜5倍の時に優れ、特に0.1〜2倍の時に極めて優れることが確認された。
【0035】
表4より、黒糖粉末の配合量が、試料9に対して0.05倍の試料(試料22)の総合評価は○であり、配合量が0.1倍,1倍,5倍,10倍の試料(試料9,23〜25)の総合評価は◎であった。
このことから、植物乾燥粉末に対する風味改善効果は、黒糖粉末の試料9に対する配合量が、0.05〜10倍の時に優れ、特に0.1〜10倍の時に極めて優れることが確認された。
【0036】
以上のことから、植物乾燥物を含有する食品において、抹茶の配合量は、食品中に0.4〜30質量%、好ましくは0.4〜15質量%の場合、味や香り、飲みやすさや清涼感等の風味に対し優れた改善効果が得られることが示された。
煎茶の配合量は、食品中に0.2〜17質量%、好ましくは0.2〜7.7質量%の場合、味や香り、飲みやすさや清涼感等の風味に対し優れた改善効果が得られることが示された。
黒糖の配合量は、粉末食品中に0.2〜24質量%、好ましくは0.3〜24質量%の場合、味や香り、飲みやすさや清涼感等の風味に対し優れた改善効果が得られることが示された。
また、抹茶及び煎茶をチャノキの葉として合せて考えた場合、チャノキの葉の配合量は、食品中に0.6〜47質量%、好ましくは0.6〜22.7質量%の場合、味や香り、飲みやすさや清涼感等の風味に対し優れた改善効果が得られることが示された。
【0037】
風味改善剤中の抹茶、煎茶、黒糖の重量比は、抹茶:煎茶:黒糖=4〜300:2〜170:2〜240、好ましくは抹茶:煎茶:黒糖=4〜150:2〜77:3〜240の場合、高い風味改善効果が得られることが示された。
また、抹茶及び煎茶をチャノキの葉として合せて考えた場合、チャノキの葉:黒糖=6〜470:2〜240、好ましくはチャノキの葉:黒糖=6〜227:3〜240の場合、高い風味改善効果が得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、チャノキの葉及び含蜜糖を配合することにより、野菜等の植物の味を損なうことなく、美味しく爽やかな味わいを有するとともに、香り等にも優れ、摂取し易い植物乾燥物を含む食品及び食品の風味改善方法を提供することができる。
【要約】
【課題】
チャノキの葉及び含蜜糖を任意の配合量又は重量比で植物乾燥物を含有する食品に配合することにより、野菜等の植物の味を損なうことなく、美味しく爽やかな味わいを有するとともに、香りも良く、飲み易さ、口当たり等にも優れ、食品として摂取し易い食品及び食品の風味改善方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
植物乾燥物、チャノキの葉及び含蜜糖を含有する食品であって、前記植物乾燥物が、前記チャノキの葉又は含蜜糖よりも多く含まれていることを特徴とする。
【選択図】なし