(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5701464
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】非接触通信装置
(51)【国際特許分類】
G06K 19/07 20060101AFI20150326BHJP
H04B 1/59 20060101ALI20150326BHJP
H04B 5/02 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
G06K19/07 020
H04B1/59
H04B5/02
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-543648(P2014-543648)
(86)(22)【出願日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】JP2013066292
【審査請求日】2014年9月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509288585
【氏名又は名称】QUADRAC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593092482
【氏名又は名称】JR東日本メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100119301
【弁理士】
【氏名又は名称】蟹田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】日下部 進
(72)【発明者】
【氏名】久保野 文夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正信
(72)【発明者】
【氏名】南部 啓一
【審査官】
甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−022923(JP,A)
【文献】
特開平11−355186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00−19/18
H04B 1/59
H04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップに接続可能な非接触通信装置であって、
アンテナ部と、
前記アンテナ部で受信した信号から第1検波信号を取り出す第1検波部と、
前記第1検波部で取り出した第1検波信号を用いてクロック信号を振幅変調し、この振幅変調された信号を前記ICチップに入力する振幅変調部と、
前記ICチップの出力信号から第2検波信号を取り出す第2検波部と、
前記第2検波部で取り出した第2検波信号を用いて前記アンテナ部から取り出した搬送波を負荷変調し前記アンテナ部に入力する負荷変調部と、
前記第1検波部、前記振幅変調部、及び前記第2検波部に電力を供給する電源部と、
を備え、
前記電源部は電池であり、
前記第1検波部、前記振幅変調部、及び前記第2検波部は、前記電源部から供給された電力で動作する、
ことを特徴とする非接触通信装置。
【請求項2】
前記振幅変調部は差動回路であることを特徴とする請求項1に記載の非接触通信装置。
【請求項3】
前記第1検波部と外部装置とを切り替えるスイッチを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の非接触通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカードなどの非接触通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駅の改札機やスーパーのレジなどで利用される非接触通信装置は、負荷変調方式によりデータを送受信する(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】苅部浩著、「トコトンやさしい 非接触ICカードの本」、初版3刷、日刊工業新聞社、2005年11月20日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の非接触通信装置では、信号の送受信のみならず、ICチップへの電力伝送が必要であったために、大きな負荷変調を掛けることができず、結果的に、通信距離も短くせざるを得なかった。
【0005】
そこで、本発明は、従来のICチップをそのまま使用しつつ、ICチップへの電力伝送を不要とし、通信距離も長くすることができる非接触通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記課題は、次の手段により解決される。
【0007】
本発明は、ICチップに接続可能な非接触通信装置であって、アンテナ部と、前記アンテナ部で受信した信号から第1検波信号を取り出す第1検波部と、前記第1検波部で取り出した第1検波信号を用いてクロック信号を振幅変調し、この振幅変調された信号を前記ICチップに入力する振幅変調部と、前記ICチップの出力信号から第2検波信号を取り出す第2検波部と、前記第2検波部で取り出した第2検波信号を用いて前記アンテナ部から取り出した搬送波を負荷変調し前記アンテナ部に入力する負荷変調部と、
前記第1検波部、前記振幅変調部、及び前記第2検波部に電力を供給する電源部と、を備え
、前記電源部は電池であり、前記第1検波部、前記振幅変調部、及び前記第2検波部は、前記電源部から供給された電力で動作する、ことを特徴とする非接触通信装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る非接触通信装置の概略論理回路図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る非接触通信装置における概略タイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付した図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る非接触通信装置の概略論理回路図であり、
図2は、本発明の一実施形態に係る非接触通信装置における概略タイミングチャートである。
【0011】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る非接触通信装置1は、ICチップ40に接続可能な非接触通信装置であり、アンテナ部10と、第1検波部20と、振幅変調部30と、第2検波部50と、負荷変調部60と、電源部70と、を備えている。以下、順に説明する。なお、非接触通信装置1は、読取装置(図示せず)との間で半二重通信を行う。
【0012】
[アンテナ部10]
アンテナ部10は、読取装置(例:駅の改札機やスーパーのレジなどに備え付けられたリーダ)との間で信号を送受信する。アンテナ部10は、例えば、アンテナコイル11と同調用のコンデンサ12とを備え、アンテナコイル11を横切る磁界を用いて信号を送受信する。
【0013】
[第1検波部20]
第1検波部20は、アンテナ部10で受信した信号(
図2:A)から第1検波信号(
図2:B)を取り出す。第1検波部20は、例えば、増幅器21と、検波ダイオード22と、抵抗23と、コンデンサ24、25と、コンパレータ26と、を備え、アンテナ部10で受信した信号が所定の閾値よりも高いか低いかで「1」または「0」を出力する。この出力信号が第1検波信号となる。
【0014】
第1検波部20は、電源部70から供給された電力で動作する。
【0015】
[振幅変調部30]
振幅変調部30は、第1検波部20で取り出した第1検波信号(
図2:B)を用いてクロック信号(
図2:C)を振幅変調し、この振幅変調された信号(
図2:D3)をICチップ40に入力する。
【0016】
振幅変調部30は、差動回路として構成されており、例えば、電流バッファ31a、AND入力型電流バッファ32aと、抵抗33a、34aと、を備える第1回路と、反転電流バッファ31b、反転AND入力型電流バッファ32bと、抵抗33b、34bと、を備える第2回路と、を有している。第1回路からは
図2のD1に示した信号が出力され、第2回路からは
図2のD2に示した信号が出力されるが、ICチップ40は内部にインピーダンスを有しているため、結果として、振幅変調部30の全体としての出力信号は、
図2のD3に示した信号となる。なお、差動回路は、振幅変調部30の一例である。
【0017】
振幅変調部30は、電源部70から供給された電力で動作する。
【0018】
[ICチップ40]
ICチップ40は、振幅変調部30で振幅変調された信号(
図2:D3)を受けて、応答信号(
図2:E)を出力する。
【0019】
ICチップ40は、電力供給端子を有しておらず、振幅変調部30から入力された信号を用いて、自らが使用する電力を作り出し動作する。
【0020】
[第2検波部50]
第2検波部50は、ICチップ40の出力信号(
図2:E)から第2検波信号(
図2:F)を取り出す。第2検波部50は、例えば、整流ダイオード51a、51bと、抵抗52と、コンデンサ53と、コンデンサ54と、コンパレータ55と、を備え、ICチップ40の出力信号が所定の閾値よりも高いか低いかで「1」または「0」を出力する。この出力信号が第2検波信号となる。
【0021】
第2検波部50は、電源部70から供給された電力で動作する。
【0022】
第2検波部50は、ICチップ40に有線で接続されているため、ICチップ40から出力される信号を受ける入力特性(例:SN比や入力レベル)が変動しない。
【0023】
[負荷変調部60]
負荷変調部60は、第2検波部50で取り出した第2検波信号(
図2:F)を用いてアンテナ部10で受信した搬送波(
図2:G)を負荷変調し、この負荷変調された信号(
図2:H)をアンテナ部10に入力する。アンテナ部10からは、この負荷変調された信号(
図2:H)が送信される。負荷変調部60は、例えば、FET(Field Effect Transistor:電界効果型トランジスタ)61と、抵抗62と、を備えている。
【0024】
抵抗62がない場合は、FET61がオンした時に、差動増幅器81aにおける2つの差動入力が短絡するために、クロック取出部81からクロック信号を取り出すことができなくなり、ICチップ40に電力が供給できなくなる。そこで、本発明の一実施形態では抵抗62を設けている。しかし、抵抗62は、大きな負荷変調を掛けることができるようになるべく小さい値がよく、FET61に必要とされるオン抵抗がある場合は省くこともできる。クロック取出部81からクロック信号を取り出せる限り、抵抗62とFET61のオン抵抗とを限りなく小さくして、大きな負荷変調を掛けることができる。
【0025】
従来の非接触通信装置では、大きな負荷変調を掛けようとすると、ICチップ40の内部にある電力受信回路で得られる電力が小さくなり、ICチップ40の動作に必要な電力に達せず、ICチップ40が動作を停止してしまう。これに対して、本発明の一実施形態では、抵抗62とFET61のオン抵抗とを限りなく小さくしても、クロック取出部81からクロック信号を取り出せる限り、ICチップ40が動作を停止することはないので、大きな負荷変調を掛ける場合の制約が緩和される。したがって、本発明の一実施形態によれば、大きな負荷変調を掛けることができる。なお、本発明の一実施形態では、負荷変調部60による負荷変調の大きさY(
図2:H)が、読取装置(図示せず)による負荷変調の大きさX(
図2:A)の9倍程度になる形態を一例として示したが、これは一例である。
【0026】
[電源部70]
電源部70は 第1検波部20、振幅変調部30、及び第2検波部50に電力を供給する。したがって、これら各部は、電源部70から供給された電力で動作する。
【0027】
以上述べたとおり、本発明の一実施形態に係る非接触通信装置1によれば、従来のICチップ40をそのまま使用することができる。また、電源部70を用いるため、ICチップ40への電力伝送が不要となる。さらに、大きな負荷変調を掛けることができるため、通信距離も長くすることができる。
【0029】
[クロック取出部81、クロック装置82]
クロック取出部81は、アンテナ部10で受信した信号からクロック信号(
図2:C)を取り出す。クロック取出部81は、例えば、差動増幅器81aとコンパレータ81bとを備える。
【0030】
クロック装置82は、クロック信号(
図2:C)を生成し出力する装置である。クロック装置82は、例えば、クリスタルオシレータを用いることができる。クロック装置82は、読取装置(図示せず)との間ではなく、携帯電話やスマートフォンなどの外部装置(図示せず)との間で通信を行う場合に、クロック取出部81からクロック信号が出力されなくなるため、用いられる。
【0031】
[第1スイッチ部91、第2スイッチ部92]
第1スイッチ部91は、クロック取出部81とクロック装置82とを切り替えるスイッチである。第1スイッチ部91は、読取装置(図示せず)との間で通信を行う場合にはクロック取出部81と振幅変調部30とを接続し、携帯電話やスマートフォンなどの外部装置(図示せず)との間で通信を行う場合にはクロック装置82と振幅変調部30とを接続する。これにより、振幅変調部30は、読取装置(図示せず)との間で通信を行う場合は、クロック取出部81から取り出したクロック信号(
図2:C)を振幅変調し、外部装置(図示せず)との間で通信を行う場合は、クロック装置82で生成されたクロック信号(
図2:C)を振幅変調する。
【0032】
第2スイッチ部92は、第1検波部20と携帯電話やスマートフォンなどの外部装置(図示せず)とを切り替えるスイッチである。第2スイッチ部92は、読取装置(図示せず)との間で通信を行う場合には第1検波部20と振幅変調部30とを接続し、外部装置(図示せず)との間で通信を行う場合には外部装置(図示せず)と振幅変調部30とを接続する。これにより、振幅変調部30は、読取装置(図示せず)との間で通信を行う場合は、第1検波部20から出力される第1検波信号でクロック信号(
図2:C)を振幅変調し、外部装置(図示せず)との間で通信を行う場合は、外部装置(図示せず)から入力された信号でクロック信号(
図2:C)を振幅変調する。
【0033】
なお、第1スイッチ部91と第2スイッチ部92とは、目的に応じて連動させてもよい。
【0034】
[その他]
第2検波部50は、携帯電話やスマートフォンなどの外部装置(図示せず)に接続可能に構成されており、外部装置(図示せず)との間で通信を行う場合は、第2検波部50から出力される第2検波信号が外部装置(図示せず)に入力される。
【0035】
本発明の一実施形態に係る非接触通信装置において、第1スイッチ部91、第2スイッチ部92、電流バッファ31a、AND入力型電流バッファ32a、反転電流バッファ31b、及び反転AND入力型電流バッファ32bは、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)により構成することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの説明は、本発明の一例に関するものであり、本発明は、これらの説明によって何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 非接触通信装置
10 アンテナ部
11 アンテナコイル
12 コンデンサ
20 第1検波部
21 増幅器
22 検波ダイオード
23 抵抗
24 コンデンサ
25 コンデンサ
26 コンパレータ
30 振幅変調部
31a 電流バッファ
32a AND入力型電流バッファ
33a 抵抗
34a 抵抗
31b 反転電流バッファ
32b 反転AND入力型電流バッファ
33b 抵抗
34b 抵抗
40 ICチップ
50 第2検波部
51a 整流ダイオード
51b 整流ダイオード
52 抵抗
53 コンデンサ
54 コンデンサ
55 コンパレータ
60 負荷変調部
61 FET
62 抵抗
70 電源部
81 クロック抽出部
81a 差動増幅器
81b コンパレータ
82 クロック装置
91 第1スイッチ部
92 第2スイッチ部
【要約】
従来のICチップをそのまま使用しつつ、ICチップへの電力伝送を不要とし、通信距離も長くすることができる非接触通信装置を提供する。
ICチップに接続可能な非接触通信装置であって、アンテナ部と、前記アンテナ部で受信した信号から第1検波信号を取り出す第1検波部と、前記第1検波部で取り出した第1検波信号を用いてクロック信号を振幅変調し、この振幅変調された信号を前記ICチップに入力する振幅変調部と、前記ICチップの出力信号から第2検波信号を取り出す第2検波部と、前記第2検波部で取り出した第2検波信号を用いて前記アンテナ部から取り出した搬送波を負荷変調し前記アンテナ部に入力する負荷変調部と、電源部と、を備える。