特許第5701470号(P5701470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701470
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】ロウ付け用のアルミニウム合金製の帯材
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/00 20060101AFI20150326BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20150326BHJP
   B23K 35/14 20060101ALI20150326BHJP
   B23K 35/22 20060101ALI20150326BHJP
   B23K 35/28 20060101ALI20150326BHJP
   B23K 101/14 20060101ALN20150326BHJP
【FI】
   C22C21/00 E
   C22C21/00 D
   C22C21/00 J
   B23K1/00 S
   B23K35/14 A
   B23K35/14 F
   B23K35/22 310D
   B23K35/28 310B
   B23K101:14
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2006-540530(P2006-540530)
(86)(22)【出願日】2004年11月24日
(65)【公表番号】特表2007-521396(P2007-521396A)
(43)【公表日】2007年8月2日
(86)【国際出願番号】FR2004003003
(87)【国際公開番号】WO2005061165
(87)【国際公開日】20050707
【審査請求日】2007年10月18日
【審判番号】不服2012-5039(P2012-5039/J1)
【審判請求日】2012年3月16日
(31)【優先権主張番号】0314001
(32)【優先日】2003年11月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500092697
【氏名又は名称】コンステリウム フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】504274240
【氏名又は名称】コンステリウム ロールド プロダクツ−レイヴンズウッド,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Constellium Rolled Products Ravenswood,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】デュラック,サンドリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】アンリ,シルヴァン
【合議体】
【審判長】 木村 孔一
【審判官】 松嶋 秀忠
【審判官】 鈴木 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−303132(JP,A)
【文献】 特開昭62−013259(JP,A)
【文献】 特開平09−085433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00−21/18
B23K 35/00−35/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理された窒素の雰囲気下で無フラックスのロウ付けによってロウ付けされた部材を製造するための、重量パーセントで、少なくとも80%のアルミニウム、ならびに、Si<1.0% Fe<1.0% Cu<1.0% Mn<2.0% Mg<3.0% Zn<6.0% Ti<0.3% Zr<0.3% Cr<0.3% Hf<0.6% V<0.3% Ni<2.0% Co<2.0% In<0.3% Sn<0.3%、合計0.15%であるその他の元素それぞれ<0.05%、を含む芯材用のアルミニウム合金製の帯材または板材において、前記アルミニウム合金に、0.01〜0.5%のイットリウムを含有させるイットリウムの使用。
【請求項2】
芯材用のアルミニウム合金製の帯材または板材が、少なくともその片面において4〜15重量%のシリコンを含むロウ付け用アルミニウム合金で被覆されていることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ロウ付け用アルミニウム合金が、芯材用のアルミニウム合金製の帯材または板材とのロール圧延によって得られるクラッドされた層であることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
芯材用のアルミニウム合金製の帯材または板材が、ロウ付け用合金の微粒子で被覆されていることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
ロウ付け用合金の微粒子が、ポリマー樹脂で被覆されていることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
芯材用のアルミニウム合金製の帯材または板材が、さらに0.05〜0.5%のビスマスを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金製の帯材に関するものであり、場合によって、ロウ付け用合金の片面または両面にクラッドをされた、アルミニウム合金製の帯材に関するものであり、該帯材は、ロウ付けされた部材、とりわけ自動車または建築用の熱交換器、そしてより詳細には、管理された雰囲気下で無フラックスでの、ロウ付けにより接合組み立てされる部材の製造を目的としている。
【背景技術】
【0002】
自動車の熱交換器の接合組み立てのために最も一般的に用いられる方法は、ロウ付けである。該ロウ付けは、少なくとも接合組み立てするための構成要素の一つについて、『芯材用』と呼ばれる合金で構成されるクラッドされた帯材の使用に基づいており、該合金は、『ロウ付け用』と呼ばれる合金で片面または両面に被覆される。後者は、芯材用合金の固相点の温度より約30℃低い液相点の温度に特徴がある。適合した熱処理を適用すれば、クラッドだけを溶かすことが可能となり、それから接触する表面を湿らすようになり、全体の冷却後に良好な接合組み立てを可能にするものである。
【0003】
三つの異なるロウ付けの技術が、現在、共存している。それらは以下のとおりである。
【0004】
最も普及しているのが、非腐食性『フラックス』を接合組み立て用の部材に誘引した後、管理された窒素の雰囲気下でのロウ付けであり、もっとも広く用いられているのはNocolok(登録商標)フラックスである。この製品は、アルミニウム上の表面の酸化膜を溶解させ、したがって表面の湿潤性を増加させることを目的としており、カリウムのフルオロアルミン酸タイプのものである。その使用は、いくつかの問題を生じさせる。この製品は、もちろん本質的な代償を有する。その保管場所は、熱交換器の製造ラインの完全自動化をしばしば妨げる特有の設備を必要とする。結局、廃水処理を設置しなければならない。
【0005】
もう一つの技術は、より古いものであるが、特に北米で相変わらず用いられている真空での、ロウ付けである。この方法は、マグネシウムを含むクラッドを用いることを強いる。水面で分離され真空内で気化するこのマグネシウム元素は、残留酸素の跡を捉えることを可能にする。該方法は、また、当初から差動膨張によって割られた酸化膜が再び形を成すことも避ける。いかなるフラックスも必要ないが、真空を作り出す設備は非常に重装備となり、関連する維持費は非常に高くつく。これらの経済的な理由のために、現行ラインは、Nocolok(登録商標)ラインの利益のために徐々に放棄された。
【0006】
最後に、より二次的な方法で用いられる第三の方法は、フラックスに代わってニッケル層を堆積させることである。ロウ付けは、続いて窒素のもとで実現された。クラッドの表面のAl−Ni相の生成によって、ロウ付けの過程の間に放出されるエネルギーは、酸化膜を破るのに十分である。
【0007】
主な問題は、現行のNocolok(登録商標)ライン上でロウ付け作業を実現することであるが、なぜならこのことが最も普及しかつ最も経済的であるからであり、該実現には、フラックスも複雑な表面の他の準備も用いられず、また、この技術を用いて接合組み立てされることになる熱交換器の最終的な特性における低下を引き起こしもしない。
【0008】
この分野においての最も大きな発展を遂げた解決法は、ニッケルの堆積によるロウ付け方法の適応である。たとえば国際公開第02/07928号パンフレット(Corus)に記載されているように、次第に単純化された堆積技術がうまく配置されていたのなら、該技術は相変わらず問題に対しての部分的な回答にしかならない。熱交換器、またはアルミニウム帯材の製造者は、作業が該製造者によって実現される場合、ロウ付け前の表面の準備のために特殊な設備を常に追加しなければならず、かつ、ニッケル被覆用の浴によって生成されたことで今度は廃水を管理し続けなければならない。しかも、国際公開第02/060639号パンフレット(Corus)が示すように、進展が耐腐食性という表現で報告されるのならば、示された成果は、ロウ付けされた製品Nocolik(登録商標)について示された成果にはいたらない(例えばPechiney Rhenaluの国際公開第02/40729号パンフレットを参照)。
【0009】
その他の解決法は、クラッド用合金および/またはロウ付け炉内の雰囲気条件の適応に結び付けられており、たとえば、ロウ付け法における元素Bi、Sr、Ba、あるいはSbを添加することによってその表面の張力を変化させるようにすることを示す米国特許第3,811,177号明細書(VAW)のようである。この後者の特性上でのビスマスの効果はまた、欧州特許第0004096号明細書(Ford)においても示されている。より最近では、Kaiser Aluminiumの国際公開第01/98019号パンフレットにおいて、場合によってはカリウムまたはビスマスをともなった、ナトリウムの添加の利益が挙げられている。
【0010】
最後に、欧州特許第1306207号明細書(スカイアルミニウム)において、MgおよびBiを含むロウ付け法は、アルミニウム合金で形成された薄い層で被覆され、その薄い層が溶けはじめる際に、該合金は固体のままとなるものである。その薄い層は、ロウ付け過程の後のほうでしか破れず、液状クラッドを作用させ、その液状クラッドは、それからその上面を湿らすことになるものである。液状ロウ付け法の酸化は、短い時間に雰囲気下で作用することで避けられている。薄い層にある酸化物については、再び液状クラッドに包まれる際に砕ける。
【特許文献1】国際公開第02/07928号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/060639号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/40729号パンフレット
【特許文献4】米国特許第3,811,177号明細書
【特許文献5】欧州特許第0004096号明細書
【特許文献6】国際公開第01/98019号パンフレット
【特許文献7】欧州特許第1306207号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、有利な経済的条件において、アルミニウム合金製のロウ付けされた部材を、無フラックスで、ロウ付けによって製造することを可能にすることを目的としており、とくに管理された雰囲気下でフラックスを用いたロウ付けのために用いられるものと同じ装備を用いるものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、0.01〜0.5%のイットリウム、および/または0.05〜0.5%のビスマスを含み、ロウ付け用合金の少なくとも片面上を被覆された、アルミニウム合金製の帯材または板材を対象としている。被覆は、ロール圧延により、たとえば4〜15%のシリコンを含むアルミニウム合金でクラッドされた層であることができる。該被覆はまた、ロウ付け用合金の微粒子、とりわけ合金Al−Si製の、場合によっては樹脂層内に包まれた微粒子を有する層であることもできる。
【0013】
本発明は、また、0.01〜0.5%のイットリウムおよび/または0.05〜0.5%のビスマスを含むアルミニウム合金製の帯材または板材を用いて実現された、ロウ付けされた部材、とりわけ熱交換器も対象としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1aおよび図1bは、ロウ付けの適性を評価するための例において用いられるVの試験片を、それぞれ平面図および側面図で表している。図2は、実施例において記述されたロウ付けの適性テストにおける、ロウ付けされた合わせ目の長さの定義を表している。
【0015】
先に示した技術全体とは反対に、本発明は、芯材用合金の組成を変化させることを目指すことによって、いかなる堆積も用いず、かつ管理された標準の雰囲気の条件下で、ロウ付けが実行されることができるようにしており、装備においてロウ付け設備を変更することなく至ることができる。
【0016】
いささか驚くべきことに、芯材の中に、約0.05%に見合うイットリウム、または約0.15%に見合うビスマスのような特定の元素を添加することで、窒素のもとで無フラックスでのロウ付けの場合において、ロウ付けされた合わせ目の非常に満足のいく性質を得ることができる。
【0017】
この方法は、少なくとも80重量%のアルミニウムを含むすべてのアルミニウム合金タイプに適用されることができ、とりわけ該アルミニウム合金タイプの元素は、無フラックスでのロウ付けを可能にすることを目的とした特異な元素を添加する前に、以下の条件に対応している。すなわち、重量%で、Si<1.0% Fe<1.0% Cu<1.0% Mn<2.0% Mg<3.0% Zn<6.0% Ti<0.3% Zr<0.3% Cr<0.3% Hf<0.6% V<0.3% Ni<2.0% Co<2.0% In<0.3% Sn<0.3% その他の元素それぞれ<0.05%で合計0.15%、残りはアルミニウム。
【0018】
板材または帯材は、ロウ付けアルミニウム合金、通常4〜15%のシリコンを含む合金をともなって、片面または両面にロール圧延によってクラッドされる。ロウ付け用合金は、銅、マグネシウム、あるいは亜鉛のようなその他の添加元素を含むことができる。該合金はまた、Ag、Be、Bi、Ce、La、Pb、Pd、Sb、Y、あるいはミッシュメタル、つまり分離しない希土類の混合物、などである、合金の表面の張力を変化させることを目的とした元素もまた含むことができる。ロウ付け用合金が片面にのみクラッドされる場合、もう片方の面は、それ自体が既知の方法で、通常Al−Znタイプの、芯材用合金の耐腐食性を改良することを目的とした犠牲合金で被覆される。
【0019】
ロウ付け用合金は、また、微粒子、とりわけ、たとえば欧州特許第0568568号明細書(Alcan International)において記載されているように、微粒子Al−Siの微粒子の形状のもとで堆積されることができる。管理された雰囲気下でのロウ付けについて、ロウ付け用合金の微粒子は、通常、フラックス、特にカリウムのフルオロアルミン酸のようなフッ化物と、ポリマー樹脂のような結合材とを基にしたフラックスの微粒子に結び付けられる。この場合、本発明に特有の利点は、被覆内にフラックスが存在することを避けることである。
【0020】
ビスマスおよび/またはイットリウムの添加をともなう合金製の板材は、ロウ付けされた部材の製造について、該板材がロウ付け用合金で被覆された別の板材に結び付けられる際に、被覆されずに用いられることもできる。
【0021】
実施例
実施例1
芯材用合金の板材を四つ鋳造し、次の表に組成を示す。
【0022】
【表1】
【0023】
同様に、クラッド用合金4047(Al−12%のSi)の板材を鋳造した。接合組み立てが、これらの板材から実現されたことにより、クラッド用合金の厚さが厚さ全体の10%を有するようにしている。これらの接合組み立てが、熱間圧延、ついで冷間圧延されることにより、0.3mmの厚さのクラッドされた帯材を生成するようにしている。これらの帯材は、それから260℃で10時間の焼き戻し処理にかけられた。
【0024】
図1に記載された試験片は、これらの材料のロウ付け性を評価するために用いられた。V字試験片は、H24状態の、かつ厚さが0.3mmの3003合金の裸の帯材で構成されている。250℃で15分の研磨処理は、ロウ付けすべき金属に適用される。他のいかなる表面準備も用いられず、また特に、いかなるフラックスも堆積されない。ロウ付けは、二重壁のガラス炉内でなされ、該ガラス炉は、処理の間の、液状ロウの動きおよび合わせ目の形成を視覚化することを可能にするものである。熱サイクルは、約20℃/minの勾配にしたがって610℃まで温度の上昇段階、610℃で2分間の維持、および約30℃/minでの下降から成る。すべては、8リットル/minの流量で、窒素の連続した掃気のもとでなされる。
【0025】
結果は、以下の段階にしたがってA〜Eの記号によって規定される。
【0026】
【表2】
【0027】
結果は、表3に示されている。
【0028】
【表3】
【0029】
YまたはBiを芯材用合金に添加することによって得られる、ロウ付けへの適性の改良を確認する。
【0030】
実施例2
同様の方法で、以下の組成のクラッド二つを鋳造した。
【0031】
【表4】
【0032】
同様に、クラッド用合金4045(Al−10%のSi)の板材を鋳造した。変化の全範囲ならびに実現された試験は、例1におけるものと正確に同じタイプのものである。
【0033】
結果は、表5に示される。
【0034】
【表5】
【0035】
合金Nにイットリウムを添加することが、ロウ付けへの適性のはっきりとした改良に至ることが確認される。
【0036】
実施例3
同様の仕方で、以下の組成の板材を二つ鋳造した。
【0037】
【表6】
【0038】
同様に、クラッド用合金4045(Al−10%Si)の板材を鋳造した。変化の全範囲ならびに実現された試験は、実施例1におけるものと正確に同じタイプのものである。
【0039】
結果は、以下の表7に示される。
【0040】
【表7】
【0041】
合金Pにイットリウムを添加することは、ロウ付けへの適性のはっきりとした改良に至ることが確認される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1a】ロウ付けの適性を評価するためのV字試験片の平面図
図1b】ロウ付けの適性を評価するためのV字試験片の側面図
図2】ロウ付けの適性テストにおけるロウ付けされた合わせ目の長さの定義
図1a
図1b
図2