(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記誘起電圧の目標値にもとづくデジタル値と、前記アナログデジタル変換回路から入力されるデジタル値との差分が小さくなるよう前記駆動信号を適応的に変化させることにより、前記誘起電圧の位相を調整することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動回路。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、ステッピングモータ200およびその駆動回路100の構成を示す図である。ステッピングモータ200の制御装置(図示せず)から供給される入力信号は、駆動回路100に入力される。駆動回路100は、当該入力信号に応じた駆動電流をステッピングモータ200に供給する。これにより、当該入力信号に応じたステッピングモータ200の回転制御が実現される。
【0011】
ステッピングモータ200は、第1コイル22、第2コイル24およびロータ26を含む。第1コイル22および第2コイル24は、互いに電気角で90°位置がずれて配置される。したがって、ロータ26に対する磁界の方向もロータの中心角に対して、互いに電気角で90°ずれている。
【0012】
ロータ26は、磁性体(たとえば、永久磁石)を含んでおり、第1コイル22および第2コイル24からの磁界に応じて安定する位置が決定される。駆動回路100は、第1コイル22および第2コイル24に互いに90°位相の異なる交流電流を供給することにより、両者の電流位相に差を設け、ロータ26を回転させることができる。
【0013】
また、駆動回路100は、電流位相の変化を特定のタイミングで停止させることにより、そのタイミングの電流位相に応じた、特定の位置にロータ26を停止させることができる。これらの処理により、ステッピングモータ200の回転を制御することができる。
【0014】
以下、駆動回路100についてより具体的に説明する。駆動回路100は、制御部10、駆動部30および誘起電圧検出部40を含む。制御部10は、外部から設定される入力信号をもとに駆動信号を生成し、駆動部30に設定する。駆動部30は、第1コイル22および第2コイル24に位相の異なる電流を供給して、ロータ26を回転させる。
【0015】
図2は、駆動部30の構成例を説明するための図である。この構成例では、Hブリッジ回路により第1コイル22を駆動する。Hブリッジ回路は、第1トランジスタQ1、第2トランジスタQ2、第3トランジスタQ3および第4トランジスタQ4を含む。第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2との第1直列回路、および第3トランジスタQ3と第4トランジスタQ4との第2直列回路が、それぞれ電源とグラウンド間に接続される。第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2との接続点と、第3トランジスタQ3および第4トランジスタQ4との接続点との間に、第1コイル22が接続される。
【0016】
この構成にて、第1トランジスタQ1と第4トランジスタQ4がオン、および第2トランジスタQ2と第3トランジスタQ3がオフで、第1コイル22に順方向電流が流れ、第1トランジスタQ1と第4トランジスタQ4がオフ、および第2トランジスタQ2と第3トランジスタQ3がオンで、第1コイル22に逆方向電流が流れる。
【0017】
第2コイル24についても、第1コイル22と同様にHブリッジ回路で駆動することができる。このようなHブリッジ回路を二つ設けることにより、第1コイル22および第2コイル24を個別に制御することができる。
【0018】
図1に戻る。駆動部30がHブリッジ回路で構成される場合、制御部10は、上記入力信号に応じたデューティ比を持つPWM(Pulse Width Modulation)信号を上記駆動信号として生成し、上記Hブリッジ回路を構成するトランジスタのゲート端子に入力する。すなわち、第1コイル22および第2コイル24に供給される電力は、このPWM信号により制御される。
【0019】
誘起電圧検出部40は、第1コイル22または第2コイル24からみて駆動部30がハイインピーダンス状態のとき、第1コイル22の両端電圧または第2コイル24の両端電圧を検出して、第1コイル22または第2コイル24に発生する誘起電圧を検出する。誘起電圧検出部40の構成例は後述する。
【0020】
なお、第1コイル22からみて駆動部30がハイインピーダンス状態のときとは、第1コイル22を駆動するHブリッジ回路に含まれるトランジスタがすべてオフのときである。第2コイル24からみて駆動部30がハイインピーダンス状態のときとは、第2コイル24を駆動するHブリッジ回路に含まれるトランジスタがすべてオフのときである。
【0021】
制御部10は、第1コイル22または第2コイル24に発生する誘起電圧の目標値と、誘起電圧検出部40により検出される誘起電圧の値との差分が小さくなるよう、上記駆動信号を適応的に変化させることにより、上記誘起電圧の位相を調整する。この位相調整を実現するための構成例は後述する。
【0022】
図3は、ステッピングモータ200の回転位相を示す図である。第1コイル22に供給する駆動電流のデューティ比は、電気角で示すロータ26の回転角が0°および180°のとき100%、90°および270°のとき0%、ならびに45°、135°、225°および315°のとき71%である。第2コイル24では、駆動電流のデューティ比とロータ26の回転角との関係が、第1コイル22のものと90°位相がずれる。
【0023】
たとえば、1−2相駆動では、第1コイル22に供給する駆動電流のデューティ比を、0%→71%→100%→71%→0%→71%→100%→71%→0%のように設定する。すなわち、ロータ26の1回転を8フェーズに分けて制御する。なお、2回目の100%のときの電流は、1回目の100%のときの電流と逆方向の電流である。また、3回目および4回目の71%のときの電流は、1回目および2回目の71%のときの電流と逆方向の電流である。
【0024】
ここで、上記デューティ比は、最大トルクでの駆動を想定したものである。ステッピングモータ200に供給する電流が十分でない場合、パワー不足となり、所望の回転精度が得られなくなる可能性がある。そこで、従来は十分に大きな電流を供給していた。しかしながら、このような駆動方式では、無駄なエネルギーロスが発生する。
【0025】
本実施の形態では、誘起電圧検出部40により検出される誘起電圧に応じて、上記デューティ比を下げる制御を行う。たとえば、71%を57%に、100%を80%に下げる。なお、それぞれのデューティ比を減少させる割合は、同一の割合でなくてもよい。
【0026】
図4は、第1コイル22の駆動電圧波形および誘起電圧波形を示す図(トルク高)である。ここでは、第1コイル22に十分に余裕を持った電流を供給して、高トルクで駆動している例を示している。なお、誘起電圧波形は必ずしも正弦波にならないが、ここでは正弦波に近いものとして表現している。また、駆動電圧波形は第1コイル22の両端の電位差を波形で描いたものである。ここで、ロータ26の回転角が90°、270°では、第1コイル22の電圧供給が0となる。
図2に示したHブリッジ回路に含まれるすべての第1〜第4トランジスタQ1〜Q4はオフに制御され、ハイインピーダンス状態となっている。したがって、第1コイル22の両端には、誘起電圧波形がそのまま現れる。
【0027】
図4にて、誘起電圧波形の位相は、駆動電圧波形の位相に対して進んでいる。すなわち、誘起電圧波形は、ハイインピーダンス期間に突入する前に、すでにゼロクロスしている。これは、第2コイル24に流れる電流が十分に大きいため、ロータ26が早期に回転するためである。
【0028】
駆動電圧のデューティ比を下げていくと、誘起電圧波形が徐々に駆動電圧波形の位相に近づいていく。そして、脱調する直前では、誘起電圧波形は駆動電圧波形に対し遅れるようになる。そして、脱調すると、ロータ26が回転せず、誘起電圧波形が得られなくなる。
【0029】
図5は、第1コイル22の駆動電圧波形および誘起電圧波形を示す図(トルク適切)である。ここでは、第1コイル22に適切な電流を供給して、適切なトルクで駆動している例を示している。
図5では、誘起電圧波形の位相と駆動電圧波形の位相とが、略一致している。すなわち、誘起電圧波形は、ハイインピーダンス期間の中央付近でゼロクロスする。逆にいえば、ゼロクロスがハイインピーダンス期間の中央付近で発生している場合、回転精度および消費電力の両方の観点を踏まえた最適駆動と考えられる。なお、大きなトルク変動による脱調を避けるために、駆動電流に多少余裕を持たせてもよい。
【0030】
このように、誘起電圧波形の位相を、できるだけ駆動電圧波形の位相に近づけるよう制御することにより、消費電力を低減することができる。以下、それを実現するための具体的構成について説明する。
【0031】
図6は、制御部10の構成例を示す図である。この構成例では、制御部10は、減算部11、PID演算部12、加算部13、駆動信号生成部14、固定値保持部15、大小比較部16、更新部17、更新値保持部18、第1モード切替スイッチS11および第2モード切替スイッチS12を有する。
【0032】
減算部11は、上記誘起電圧の目標値と、誘起電圧検出部40により検出される誘起電圧の値との差分を算出し、誤差信号を生成する。ここで、当該誘起電圧の値は、当該誘起電圧そのものの値であってもよいし、後述するように当該誘起電圧が所定の増幅率で増幅された値であってもよい。後者の場合、上記誘起電圧の目標値も、その増幅率で増幅された値に設定される。
【0033】
上記誘起電圧の目標値は、後述する調整信号の理想値に設定される。この理想値は、ステッピングモータ200の回転制御に関する実験やシミュレーションにもとづき、導きだされる値である。すなわち、上記誘起電圧波形の位相と上記駆動電圧波形の位相とが一致する際の調整信号の値、またはその調整信号の値に一定のオフセット値を加えた値である。
【0034】
また、上記目標値および上記出力値は、アナログ値であってもよいし、デジタル値であってもよいが、以下の説明では、デジタル値で規定される例を説明する。
【0035】
PID演算部12は、減算部11により生成された誤差信号をPID演算する。PID演算部12は、積分演算部12a、比例演算部12bおよび微分演算部12cを含む。積分演算部12aは、入力される誤差信号を所定の増幅率により増幅し、増幅した誤差信号を積分して出力する。たとえば、前回の出力値を保持するレジスタを含み、前回の出力値と今回の入力値(増幅後)とを加算して、今回の出力値とする。比例演算部12bは、入力される誤差信号を所定の増幅率により増幅し、出力する。微分演算部12cは、入力される誤差信号を微分し、微分した誤差信号を所定の増幅率により増幅して出力する。たとえば、前回の入力値(増幅前)を保持するレジスタを含み、前回の入力値(増幅前)と今回の入力値(増幅前)との差分を算出し、その値を増幅して、今回の出力値とする。
【0036】
積分演算部12a、比例演算部12bおよび微分演算部12cのうち、有効化する演算部をユーザが任意に設定することができる。たとえば、三つの演算部をすべて有効化して用いてもよいし、比例演算部12bのみを有効化して用いてもよいし、積分演算部12aおよび比例演算部12bのみを有効化して用いてもよい。
【0037】
加算部13は、PID演算部12に含まれる積分演算部12a、比例演算部12bおよび微分演算部12cのうち、有効化されている演算部から出力される信号を加算して調整信号を生成する。その際、加算部13は、PID演算部12から入力される信号に、第1モード切替スイッチS11を介して入力される固定値、または第2モード切替スイッチS12を介して入力される調整信号の前回値をさらに加算して、調整信号を生成する。この追加的に加算される値に関する詳細な説明は後述する。
【0038】
駆動信号生成部14は、上述した入力信号、および加算部13により生成された調整信号をもとに駆動信号を生成する。本実施の形態では、当該入力信号にもとづいて生成されたPWM信号のデューティ比を、当該調整信号に応じて調整する。より具体的には、PID演算部12から出力される信号の合計が正の値の場合、当該PWM信号のデューティ比を下げて、第1コイル22および第2コイル24に供給される電流量を小さくする。反対に、PID演算部12から出力される信号の合計が負の値の場合、当該PWM信号のデューティ比を上げて、第1コイル22および第2コイル24に供給される電流量を大きくする。
【0039】
また、当該調整信号の絶対値が大きいほど、当該PWM信号のデューティ比の調整量を大きくする。なお、当該調整信号の値と、当該PWM信号のデューティ比の調整量との変換比は、あらかじめ駆動信号生成部14に設定されている。
【0040】
固定値保持部15は、所定の固定値を保持し、その固定値を加算部13に出力する。この固定値は、ステッピングモータ200の運転が開始されるときの調整信号の初期値として使用される。加算部13は、ステッピングモータ200の運転が開始されるとき、固定値保持部15から入力される固定値を調整信号の初期値として、駆動信号生成部14に出力する。
【0041】
当該固定値が加算部13に供給されることにより、PID演算部12からの有効な信号が加算部13に入力される前から、有効な調整信号を駆動信号生成部14に供給することができる。上記固定値は、PID演算部12からの有効な信号が加算部13に入力されるようになった後も、オフセット成分として加算部13に供給され続ける。
【0042】
上記固定値は、外部から設定される固有の値であってもよいし、適応的に調整される値であってもよい。前者の例として、上記目標値より高い値が設定される。その場合にて、上記目標値に近い値が設定された場合、上記目標値と近い位置から上記位相の調整を開始できるが、回転開始時のトルク不足による脱調の可能性がその分、大きくなる。上記目標値から離れた値が設定された場合、回転開始時のトルク不足による脱調の可能性は低くなるが、上記目標値と離れた位置から上記位相の調整を開始することになり、上記誘起電圧の位相が適切な位置に調整されるまでの時間がその分、長くなる。設計者またはユーザはこのトレードオフ関係を考慮して、上記固定値を設定することができる。
【0043】
以下、上記固定値を適応的に調整するための構成について説明する。大小比較部16は、固定値保持部15に保持される固定値と、加算部13から出力される調整信号の値との大小関係を比較する。更新部17は、大小比較部16による比較結果に応じて、上記固定値を更新する。
【0044】
更新値保持部18には、固定値保持部15に保持される固定値が初期値として設定される。以下、更新値保持部18に保持される固定値は、更新部17により順次、更新される。すなわち、更新値保持部18は、更新部17により更新される更新値を保持する。更新値保持部18に保持される更新値は、ステッピングモータ200の今回の運転が終了した後、固定値保持部15に設定され、固定値保持部15に保持される新たな固定値となる。この固定値が、ステッピングモータ200の次回の運転時の調整信号の初期値となる。
【0045】
以下、固定値保持部15に保持される固定値の更新処理をより具体的に説明する。なお、以下の説明では、1回のハイインピーダンス期間に1回、誘起電圧検出部40により誘起電圧がサンプリングされる例を前提とする。したがって、1回のハイインピーダンス期間に1回、加算部13から更新された新たな調整信号が出力されることになる。なお、ハイインピーダンス期間のどのタイミングで誘起電圧をサンプリングするかは、設計者またはユーザが任意に設定することができる。
【0046】
図7は、更新部17による、更新値保持部18に保持される更新値の更新処理を説明するためのフローチャートである。大小比較部16は、固定値保持部15に保持される固定値と、加算部13から出力される調整信号の値とを、モータを駆動して最初に現れるハイインピーダンス状態に制御されるフェーズに比較する(S101)。更新部17は、当該固定値が当該調整信号の値より大きいとき(S101の>)、更新値保持部18に保持される、当該固定値を初期値とする更新値をデクリメントする(S102)。当該固定値が当該調整信号の値より小さいとき(S101の<)、更新値保持部18に保持される、当該固定値を初期値とする更新値をインクリメントする(S103)。当該固定値と当該調整信号の値とが等しいとき(S101の=)、更新値保持部18に保持される値は更新されない。
【0047】
上記インクリメント処理および上記デクリメント処理により加算および減算される値は、上記更新値の最小制御単位であってもよいし、それより大きな値であってもよい。たとえば、±1であってもよいし、±2であってもよいし、±5であってもよい。
【0048】
なお、固定値保持部15に保持される固定値を、調整信号の初期値として加算部13に供給するフィードフォワード制御は、必須の制御ではなく、フィードフォワード制御を用いない場合、第1モード切替スイッチS11をオフする。その場合、当該固定値がオフセット成分として加算部13で調整信号に加算されなくなる。その代わりに、第2モード切替スイッチS12をオンして、調整信号の前回値をオフセット成分として加算部13に供給する。なお、フィードフォワード制御を用いる場合、第2モード切替スイッチS12はオフされる。
【0049】
図8は、誘起電圧検出部40の詳細な構成よびステッピングモータ200と誘起電圧検出部40との詳細な接続関係を示す図である。誘起電圧検出部40は、差動増幅回路42、アナログデジタル変換回路44およびオフセット発生回路46を備える。差動増幅回路42は、第1コイル22の両端の電位または第2コイル24の両端の電位を差動増幅して、アナログデジタル変換回路44に出力する。アナログデジタル変換回路44は、差動増幅回路42から出力されるアナログ値をデジタル値に変換し、制御部10(より厳密には減算部11)に出力する。
【0050】
制御部10は、誘起電圧の目標値にもとづくデジタル値と、アナログデジタル変換回路44から入力されるデジタル値との差分が小さくなるよう駆動信号を適応的に変化させることにより、誘起電圧の位相を調整する。ここで、上記誘起電圧の目標値にもとづくデジタル値とは、差動増幅回路42の増幅率に対応させて当該目標値を増幅させた値である。
【0051】
以下、差動増幅回路42の具体的構成について説明する。差動増幅回路42は、オペアンプOP1、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第3抵抗R3および第4抵抗R4を含む。
【0052】
オペアンプOP1の反転入力端子には、第1抵抗R1を介して第1コイル22または第2コイル24の一端の電位が入力される。オペアンプOP1の、反転入力端子と出力端子とは第2抵抗R2を介して接続される。第1抵抗R1と第2抵抗R2は直列に接続される。
【0053】
オペアンプOP1の非反転入力端子には、第3抵抗R3を介して第1コイル22または第2コイル24の一端の電位が入力される。また、オペアンプOP1の非反転入力端子は、第4抵抗R4を介してオフセット発生回路46に接続される。第3抵抗R3と第4抵抗R4は直列に接続される。なお、オフセット発生回路46を設けない場合、第4抵抗R4はオフセット発生回路46の代わりに、グラウンドに接続される。
【0054】
第1抵抗R1と第3抵抗R3の抵抗値を同じ値に設定し、第2抵抗R2と第4抵抗R4の抵抗値を同じ値に設定する。この条件では、差動増幅回路42の増幅率はR2/R1により決定される。設計者またはユーザは、第1抵抗R1(=第3抵抗R3)および第2抵抗R2(=第4抵抗R4)の抵抗値を調整することにより、差動増幅回路42の増幅率を調整することができる。
【0055】
オフセット発生回路46は、第5抵抗R5および第6抵抗R6を含む。第5抵抗R5および第6抵抗R6は直列に接続され、その直列回路は電源とグラウンドとの間に接続される。第5抵抗R5と第6抵抗R6との分圧点は第4抵抗R4に接続される。設計者またはユーザは、第5抵抗R5および第6抵抗R6の抵抗値を調整することにより、第5抵抗R5と第6抵抗R6との分圧比を調整し、差動増幅回路42に加えるオフセット電圧を調整することができる。
【0056】
第1スイッチS1は、第1コイル22の第1端子と、差動増幅回路42の反転入力端子とを導通または非導通させるためのスイッチである。第2スイッチS2は、第1コイル22の第1端子と、差動増幅回路42の非反転入力端子とを導通または非導通させるためのスイッチである。第3スイッチS3は、第1コイル22の第2端子と、差動増幅回路42の反転入力端子とを導通または非導通させるためのスイッチである。第4スイッチS4は、第1コイル22の第2端子と、差動増幅回路42の非反転入力端子とを導通または非導通させるためのスイッチである。
【0057】
第5スイッチS5は、第2コイル24の第1端子と、差動増幅回路42の反転入力端子とを導通または非導通させるためのスイッチである。第6スイッチS6は、第2コイル24の第1端子と、差動増幅回路42の非反転入力端子とを導通または非導通させるためのスイッチである。第7スイッチS7は、第2コイル24の第2端子と、差動増幅回路42の反転入力端子とを導通または非導通させるためのスイッチである。第8スイッチS8は、第2コイル24の第2端子と、差動増幅回路42の非反転入力端子とを導通または非導通させるためのスイッチである。
【0058】
第1コイル22の誘起電圧が検出される場合、第1スイッチS1がオンおよび第2スイッチS2がオフ、ならびに第3スイッチS3がオフおよび第4スイッチS4がオンの第1状態と、第1スイッチS1がオフおよび第2スイッチS2がオン、ならびに第3スイッチS3がオンおよび第4スイッチS4がオフの第2状態とが、第1コイル22からみて駆動部30がハイインピーダンス状態に制御されるフェーズごとに交互に切り替えられる。
【0059】
第2コイル24の誘起電圧が検出される場合、第5スイッチS5がオンおよび第6スイッチS6がオフ、ならびに第7スイッチS7がオフおよび第8スイッチS8がオンの第3状態と、第5スイッチS5がオフおよび第6スイッチS6がオン、ならびに第7スイッチS7がオンおよび第8スイッチS8がオフの第4状態とが、第2コイル24からみて駆動部30がハイインピーダンス状態に制御されるフェーズごとに交互に切り替えられる。
【0060】
この制御方式では、誘起電圧がゼロを境に上昇方向に変化しているときも下降方向に変化しているときも、オペアンプOP1の出力電圧の極性を、たとえば正に、統一することができる。したがって、オペアンプOP1の出力電圧範囲およびアナログデジタル変換回路44の入力電圧範囲を狭くすることができ、オペアンプOP1およびアナログデジタル変換回路44のコストを抑制することができる。なお、誘起電圧の極性は、ハイインピーダンス状態に制御されるフェーズごとに交互に切り替わるため、アナログデジタル変換回路44の後段で、その出力デジタル値に極性情報を容易に追加することができる。
【0061】
また、オペアンプOP1の出力電圧の極性を統一させない場合、第2スイッチS2、第3スイッチS3、第6スイッチS6および第7スイッチS7は設ける必要がない。また、この構成でも、誘起電圧のサンプリングを一フェーズ飛ばしで実行すれば、当該極性を統一させることができる。ただし、収束時間が全フェーズでサンプリングする場合と比較し、遅くなる。
【0062】
以上説明したように本実施の形態によれば、誘起電圧を検出し、その位相を駆動電圧の位相に近づけるようフィードバック制御することにより、ステッピングモータを高効率駆動することができる。すなわち、脱調を抑制しつつ、消費電力を低減することができる。また、フィードバック制御としてPID制御を用いることにより、ユーザのニーズをきめ細かく反映したフィードバック制御を実現することができる。
【0063】
また、フィードバック制御開始時に、所定の固定値を上記調整信号の初期値に設定するフィードフォワード制御を採用することにより、収束時間を短縮することができる。また、当該固定値を学習により最適値に向けて更新することにより、収束時間をさらに短縮することができる。
【0064】
また、誘起電圧検出回路を、差動増幅回路およびアナログデジタル変換回路により構成することにより、誘起電圧を精度よく検出することができる。すなわち、低電圧で駆動されるステッピングモータでは誘起電圧も小さな値となるが、その場合でも、コイルの両端電位を差動増幅回路の二つの入力端子に入力し、それを差動増幅することにより、誘起電圧を精度よく検出することができる。また、その検出結果をデジタル値に変換することにより、デジタル値によるフィードバック制御が可能となり、補正精度を向上させることができる。
【0065】
以上、本発明をいくつかの実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0066】
上述した実施の形態では、主に、ハイインピーダンス状態に制御されるフェーズごとに、誘起電圧を1回サンプリングする例を説明した。この点、当該フェーズごとに複数回サンプリングしてもよい。
【0067】
また、上述した実施の形態では、二つのステータコイルでロータを回転させる例を説明したが、四つや八つなど、三つ以上のステータコイルでロータを回転させる構成のステッピングモータにも適用可能である。