特許第5701520号(P5701520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東海理化電機製作所の特許一覧

<>
  • 特許5701520-キャップ取付構造及びキャップ 図000002
  • 特許5701520-キャップ取付構造及びキャップ 図000003
  • 特許5701520-キャップ取付構造及びキャップ 図000004
  • 特許5701520-キャップ取付構造及びキャップ 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701520
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】キャップ取付構造及びキャップ
(51)【国際特許分類】
   B60B 7/06 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
   B60B7/06 M
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-123407(P2010-123407)
(22)【出願日】2010年5月28日
(65)【公開番号】特開2011-246070(P2011-246070A)
(43)【公開日】2011年12月8日
【審査請求日】2012年10月22日
【審判番号】不服2014-998(P2014-998/J1)
【審判請求日】2014年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大西 敏
【合議体】
【審判長】 大熊 雄治
【審判官】 出口 昌哉
【審判官】 平田 信勝
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−13301(JP,U)
【文献】 実開平1−101901(JP,U)
【文献】 実開昭54−95735(JP,U)
【文献】 実開昭60−148101(JP,U)
【文献】 特開平10−297203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 1/00 - 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のホイールに取付けられるキャップと、
前記キャップに設けられ、前記ホイールに前記キャップが取付けられた状態で弾性変形されて前記ホイールに係合される第1弾性変形部と、
前記キャップに設けられ、前記ホイールに前記キャップが取付けられた状態弾性変形されないと共に、前記ホイールから前記キャップが取外される際に前記ホイールに係合されることで弾性変形される第2弾性変形部と、
前記ホイールに設けられた被摺動部と、
前記キャップに設けられ、前記ホイールに前記キャップが取付けられた状態で前記キャップの温度が上昇されて前記キャップが膨張される時に前記被摺動部を摺動して前記第2弾性変形部が前記キャップの前記ホイールからの取外方向側に移動される摺動部と、
を備えたキャップ取付構造。
【請求項2】
前記ホイールに前記キャップが取付けられた状態で前記キャップの温度が想定最高温度まで上昇されて前記キャップが膨張される時に前記第2弾性変形部が前記ホイールによって弾性変形されずに移動される請求項1記載のキャップ取付構造。
【請求項3】
車両のホイールに取付けられる本体部と、
前記本体部に設けられ、前記ホイールに前記本体部が取付けられた状態で弾性変形されて前記ホイールに係合される第1弾性変形部と、
前記本体部に設けられ、前記ホイールに前記本体部が取付けられた状態で弾性変形されないと共に、前記ホイールから前記本体部が取外される際に前記ホイールに係合されることで弾性変形される第2弾性変形部と、
前記本体部に設けられ、前記ホイールに前記本体部が取付けられた状態で前記本体部の温度が上昇されて前記本体部が膨張される時に前記ホイールに設けられた被摺動部を摺動して前記第2弾性変形部が前記本体部の前記ホイールからの取外方向側に移動される摺動部と、
を備えたキャップ。
【請求項4】
前記ホイールに前記本体部が取付けられた状態で前記本体部の温度が想定最高温度まで上昇されて前記本体部が膨張される時に前記第2弾性変形部が前記ホイールによって弾性変形されずに移動される請求項3記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のホイールにキャップを取付けるキャップ取付構造及び車両のホイールに取付けられるキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
キャップ取付構造としては、樹脂により製作されたキャップ部と一体に設けられた係止片がタイヤホイールに係合されることにより、ホイールセンタキャップがタイヤホイールに取付けられるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、ホイールセンタキャップがタイヤホイールに取付けられた状態では、係止片が、弾性変形されて、タイヤホイールに係合されることで、ホイールセンタキャップがタイヤホイールに保持される。このために、係止爪には、曲げ応力が作用されている。
【0004】
さらに、ホイールセンタキャップは車両の車軸近傍に配置されるため、車両のブレーキ操作による熱が車軸からタイヤホイールを介してホイールセンタキャップに伝達される。
【0005】
このため、係止片に曲げ応力が作用されている状態で、ホイールセンタキャップに熱が付加されるため、係止爪が熱クリープにより変形されて、ホイールセンタキャップのタイヤホイールからの取外荷重が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−297203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実を考慮し、キャップに熱が付加されてもキャップのホイールからの取外荷重を確保できるキャップ取付構造及び熱が付加されてもホイールからの取外荷重を確保できるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のキャップ取付構造は、車両のホイールに取付けられるキャップと、前記キャップに設けられ、前記ホイールに前記キャップが取付けられた状態で弾性変形されて前記ホイールに係合される第1弾性変形部と、前記キャップに設けられ、前記ホイールに前記キャップが取付けられた状態弾性変形されないと共に、前記ホイールから前記キャップが取外される際に前記ホイールに係合されることで弾性変形される第2弾性変形部と、前記ホイールに設けられた被摺動部と、前記キャップに設けられ、前記ホイールに前記キャップが取付けられた状態で前記キャップの温度が上昇されて前記キャップが膨張される時に前記被摺動部を摺動して前記第2弾性変形部が前記キャップの前記ホイールからの取外方向側に移動される摺動部と、を備えている。
【0009】
請求項2に記載のキャップ取付構造は、請求項1に記載のキャップ取付構造において、前記ホイールに前記キャップが取付けられた状態で前記キャップの温度が想定最高温度まで上昇されて前記キャップが膨張される時に前記第2弾性変形部が前記ホイールによって弾性変形されずに移動される。
【0012】
請求項3に記載のキャップは、車両のホイールに取付けられる本体部と、前記本体部に設けられ、前記ホイールに前記本体部が取付けられた状態で弾性変形されて前記ホイールに係合される第1弾性変形部と、前記本体部に設けられ、前記ホイールに前記本体部が取付けられた状態弾性変形されないと共に、前記ホイールから前記本体部が取外される際に前記ホイールに係合されることで弾性変形される第2弾性変形部と、前記本体部に設けられ、前記ホイールに前記本体部が取付けられた状態で前記本体部の温度が上昇されて前記本体部が膨張される時に前記ホイールに設けられた被摺動部を摺動して前記第2弾性変形部が前記本体部の前記ホイールからの取外方向側に移動される摺動部と、を備えている。
【0013】
請求項4に記載のキャップは、請求項3に記載のキャップにおいて、前記ホイールに前記本体部が取付けられた状態で前記本体部の温度が想定最高温度まで上昇されて前記本体部が膨張される時に前記第2弾性変形部が前記ホイールによって弾性変形されずに移動される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載のキャップ取付構造では、キャップに第1弾性変形部が設けられており、車両のホイールにキャップが取付けられた状態で、第1弾性変形部が弾性変形されてホイールに係合されている。このため、キャップがホイールに取付けられる。
【0017】
また、キャップには、第2弾性変形部が設けられており、ホイールからキャップが取外される際に、第2弾性変形部がホイールに係合されることで、第2弾性変形部が弾性変形される。このため、キャップに第2弾性変形部による取外荷重が作用される。
【0018】
ここで、ホイールにキャップが取付けられた状態で、第2弾性変形部が弾性変形されていない。このため、第2弾性変形部には、曲げ応力が作用されないため、第2弾性変形部に熱が付加されても、第2弾性変形部の熱クリープによる変形を抑制できる。これにより、キャップのホイールからの取外荷重を確保できる。
【0019】
請求項2に記載のキャップ取付構造では、ホイールにキャップが取付けられた状態で、キャップの温度が想定最高温度まで上昇されてキャップが膨張される時に、第2弾性変形部がホイールによって弾性変形されずに移動される。このため、第2弾性変形部には、曲げ応力が作用されないため、第2弾性変形部の熱クリープによる変形を抑制できる。これにより、キャップのホイールからの取外荷重を確保できる。
【0025】
請求項3に記載のキャップでは、本体部に第1弾性変形部が設けられており、車両のホイールに本体部が取付けられた状態で、第1弾性変形部が弾性変形されてホイールに係合されている。このため、本体部がホイールに取付けられる。
【0026】
また、本体部には、第2弾性変形部が設けられており、ホイールから本体部が取外される際に、第2弾性変形部がホイールに係合されることで、第2弾性変形部が弾性変形される。このため、本体部に第2弾性変形部による取外荷重が作用される。
【0027】
ここで、ホイールに本体部が取付けられた状態で、第2弾性変形部が弾性変形されていない。このため、第2弾性変形部には、曲げ応力が作用されないため、第2弾性変形部に熱が付加されても、第2弾性変形部の熱クリープによる変形を抑制できる。これにより、本体部のホイールからの取外荷重を確保できる。
【0028】
請求項4に記載のキャップでは、ホイールに本体部が取付けられた状態で、本体部の温度が想定最高温度まで上昇されて本体部が膨張される時に、第2弾性変形部がホイールによって弾性変形されずに移動される。このため、第2弾性変形部には、曲げ応力が作用されないため、第2弾性変形部の熱クリープによる変形を抑制できる。これにより、本体部のホイールからの取外荷重を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施の形態に係るホイールセンタキャップが車両のホイールに取付けられた状態を示すホイール径方向に沿った断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るホイールセンタキャップを示す車幅方向内側から見た斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係るホイールセンタキャップの第2係止爪及び摺動爪をホイールセンタキャップの周方向において重ねて見た側面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るホイールセンタキャップに熱が付加された際の摺動爪と第2係止爪の先端部の移動を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1には、本発明の実施の形態に係るキャップとしてのホイールセンタキャップ10が車両のホイール80に取付けられた状態が断面図にて示されており、図2には、ホイールセンタキャップ10が車幅方向内側から見た斜視図にて示されている。なお、図面では、ホイールセンタキャップ10のホイール80への取付方向(ホイール80軸方向内側及び車幅方向内側であり、以下単に「取付方向」という)を矢印Aで示し、ホイールセンタキャップ10のホイール80からの取外方向(ホイール80軸方向外側及び車幅方向外側であり、以下単に「取外方向」という)を矢印Bで示す。
【0035】
本実施の形態に係るホイールセンタキャップ10は、樹脂により製作されており、図1に示す如く、ホイールセンタキャップ10は、中心軸線が車両のホイール80の中心軸線に一致された状態で、ホイール80の軸心部に取外方向側から取付けられている。
【0036】
ホイール80は、線膨張係数がホイールセンタキャップ10(樹脂)の線膨張係数より低いアルミニウムにより製作されている。ホイール80の軸心部には、断面円形状の取付孔82が車幅方向に沿って設けられており、取付孔82は、取外方向側に開口されている。取付孔82の内周面83には、被摺動部としての係合凸部84が環状に設けられている。係合凸部84は、断面台形状に形成されており、係合凸部84は、ホイール80の径方向内側へ突出されると共に、ホイール80の周方向に沿って配置されている。
【0037】
図3に示す如く、係合凸部84には、取外方向側において、傾斜部86が形成されており、傾斜部86は、取付方向側へ向かうに従いホイール80の径方向内側に向かう方向へ傾斜すると共に、ホイール80の径方向に対して角度θ1傾いて配置されている。係合凸部84には、取付方向側において、係合部88が形成されており、係合部88は、取外方向側へ向かうに従いホイール80の径方向内側に向かう方向へ傾斜すると共に、ホイール80の径方向に対して角度θ2傾いて配置されている。また、係合凸部84には、傾斜部86と係合部88との間において、連絡部87が形成されており、連絡部87は、ホイール80の径方向に対して垂直に配置されると共に、傾斜部86と係合部88とを連絡している。
【0038】
図1及び図2に示す如く、ホイールセンタキャップ10の取外方向側端には、本体部としてのカバー20が設けられており、カバー20は、円盤状に形成されて、ホイール80の軸心部を取外方向側から被覆している。カバー20の外周には、外周面22がカバー20の径方向に対して垂直に形成されており、外周面22は、ホイール80の内周面83の周方向に沿って配置されて、内周面83からカバー20径方向内側へ離間されている。
【0039】
カバー20の外周部の取付方向側には、第1弾性変形部としての第1係止爪30がカバー20の周方向に沿って所定間隔毎に一体に設けられており、第1係止爪30は、カバー20の周方向に沿って湾曲されている。
【0040】
第1係止爪30の先端部を除く部分には、弾性変形部31が設けられており、弾性変形部31は、カバー20から取付方向側へ向けて延設されている。弾性変形部31は、板状にされて、カバー20の径方向において弾性変形可能となっている。
【0041】
第1係止爪30の先端部には、取付方向側かつカバー20径方向外側において、傾斜部36が形成されており、傾斜部36は、取外方向側へ向かうに従いカバー20の径方向外側に向かう方向へ傾斜している。第1係止爪30の先端部には、取外方向側かつカバー20径方向外側において、係合部40が形成されており、係合部40は、取付方向側へ向かうに従いカバー20の径方向外側に向かう方向へ傾斜している。また、第1係止爪30の先端部には、傾斜部36と係合部40との間において、連絡部38が形成されており、連絡部38は、カバー20の径方向に対して垂直に配置されると共に、傾斜部36と係合部40とを連絡している。
【0042】
第1係止爪30の係合部40はホイール80の係合部88に係合されている。このため、ホイールセンタキャップ10の取外方向への移動が規制されている。さらに、係合部40が係合部88に係合されることで、第1係止爪30の弾性変形部31がカバー20の径方向内側へ弾性変形されている。このため、第1係止爪30の弾性変形荷重がホイール80に作用されることで、ホイールセンタキャップ10の回転トルク(ホイールセンタキャップ10のホイール80に対する抗回転力)を確保している。
【0043】
図2及び図3に示す如く、カバー20の外周部の取付方向側には、第2弾性変形部としての第2係止爪50がカバー20の周方向に沿って所定間隔毎に一体に設けられており、第2係止爪50は、第1係止爪30の間の中央に配置されると共に、カバー20の周方向に沿って湾曲されている。
【0044】
第2係止爪50の先端部を除く部分には、弾性変形部51が設けられており、弾性変形部51は、カバー20から取付方向側へ向けて延設されている。弾性変形部51は、板状にされて、カバー20の径方向において弾性変形可能となっている。
【0045】
第2係止爪50の先端部には、取付方向側かつカバー20径方向外側において、傾斜部56が形成されており、傾斜部56は、取外方向側へ向かうに従いカバー20の径方向外側に向かう方向へ傾斜している。第2係止爪50の先端部には、取外方向側かつカバー20径方向外側において、係合部60が形成されており、係合部60は、取付方向側へ向かうに従いカバー20の径方向外側に向かう方向へ傾斜すると共に、カバー20の径方向に対して角度θ3傾いて配置されている。角度θ3は、前述した角度θ2より小さくされている。また、第2係止爪50の先端部には、傾斜部56と係合部60との間において、連絡部58が形成されており、連絡部58は、カバー20の径方向に対して垂直に配置されると共に、傾斜部56と係合部60とを連絡している。
【0046】
第2係止爪50の連絡部58と係合部60との境界部分は、ホイール80の係合部88に対して取付方向側に離間して配置されている。また、第2係止爪50の連絡部58は、ホイール80の内周面83に対してカバー20径方向内側に離間して配置されている。このため、第2係止爪50が、内周面83及び係合凸部84に当接されないことで、第2係止爪50の弾性変形部51は、弾性変形されていない。
【0047】
カバー20の外周部の取付方向側には、摺動部としての摺動爪70がカバー20の周方向に沿って所定間隔毎に一体に設けられており、摺動爪70は、第1係止爪30と第2係止爪50との間の中央に配置されると共に、カバー20の周方向に沿って湾曲されている。また、摺動爪70は、カバー20から取付方向側へ向けて延設されている。
【0048】
摺動爪70の先端部には、カバー20径方向外側において、傾斜部72が形成されており、傾斜部72は取付方向側へ向かうに従いカバー20径方向内側に向かう方向へ傾斜している。また、摺動爪70は弾性変形されていない状態で、傾斜部72がホイール80の傾斜部86に当接されている。これにより、ホイールセンタキャップ10の取付方向への移動が規制されている。
【0049】
カバー20の取付方向側には、補強部としてのリブ76Aが二対一体に設けられており、各対のリブ76Aは、カバー20の径方向において互いに対向する一対の第2係止爪50のカバー20周方向両端部間に延設されている。
【0050】
また、カバー20の取付方向側には、補強部としてのリブ76Bが一体に設けられており、リブ76Bは、第2係止爪50のカバー20周方向中央部からカバー20の中心に向かってリブ76Aに到達するまで延設されている。
【0051】
このため、第2係止爪50がカバー20径方向内側へ弾性変形される際には、リブ76A及びリブ76Bによって第2係止爪50の弾性変形荷重が高くなる。さらに、第1係止爪30の弾性変形部31及び第2係止爪50の弾性変形部51が弾性変形される際には、リブ76A及びリブ76Bによってカバー20が取外方向側を凸にして撓むことが抑制される。
【0052】
ホイール80は図示しない車両の車軸に固定されており、車軸には、図示しない車両のブレーキ装置が設置されている。これにより、車両のブレーキ操作(ブレーキ装置の操作)により発生した熱が、車軸からホイール80を介してホイールセンタキャップ10に伝達される。
【0053】
ここで、車両のブレーキ操作により発生した熱が車軸からホイール80を介してホイールセンタキャップ10に伝達されて、ホイールセンタキャップ10及びホイール80に熱が付加された際には、付加された熱によりカバー20及びホイール80の取付孔82がカバー20径方向外側(取付垂直方向)へ膨張される(伸びる)。この際には、第1係止爪30の弾性変形部31が更にカバー20径方向内側へ弾性変形される。さらに、摺動爪70の傾斜部72がホイール80の傾斜部86に対してカバー20径方向外側へ摺動されることで、ホイールセンタキャップ10が取外方向へ移動される。
【0054】
このため、第2係止爪50の先端部は取外方向及びカバー20径方向外側へ移動される。また、ホイールセンタキャップ10の温度が想定最高温度(例えば、130℃)まで上昇された際においても、第2係止爪50の連絡部58と係合部60との境界部分の係合部88に対する取外方向の隙間及び第2係止爪50の連絡部58のホイール80の内周面83に対するカバー20径方向の隙間によって、第2係止爪50の先端部がホイール80の内周面83及び係合凸部84に当接しないことで、第2係止爪50の弾性変形部51がホイール80によって弾性変形されない構成とされている。
【0055】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0056】
ホイールセンタキャップ10がホイール80に取付けられる際には、ホイールセンタキャップ10の中心軸線がホイール80の取付孔82の中心軸線に一致された状態で、ホイールセンタキャップ10の各第1係止爪30と各第2係止爪50とが、取付孔82に取付方向へ向けて挿入される。
【0057】
ホイールセンタキャップ10がホイール80に取付けられた状態では、第1係止爪30の弾性変形部31がカバー20径方向内側へ弾性変形されて、第1係止爪30の係合部40がホイール80の係合部88に係合されると共に、摺動爪70の傾斜部72がホイール80の傾斜部86に当接される。このため、ホイールセンタキャップ10がホイール80にガタなく取付けられている。
【0058】
また、ホイールセンタキャップ10がホイール80に取付けられた状態では、第2係止爪50の連絡部58と係合部60との境界部分の係合部88に対する取外方向の隙間及び第2係止爪50の連絡部58のホイール80の内周面83に対するカバー20径方向の隙間によって、第2係止爪50の先端部はホイール80の内周面83及び係合凸部84に当接していない。このため、第2係止爪50の弾性変形部51は、弾性変形されていない。
【0059】
車両のブレーキ操作により発生した熱が車軸からホイール80を介してホイールセンタキャップ10に伝達される際には、ホイール80に伝達された熱により取付孔82がホイール80径方向外側(取付垂直方向)へ膨張される(伸びる)と共に、ホイールセンタキャップ10に伝達された熱によりカバー20が径方向外側へ膨張される(伸びる)。
【0060】
ホイールセンタキャップ10の温度が、温度ΔT分上昇して、想定最高温度(例えば、130℃)まで上昇された際のカバー20の半径の伸びDCは、カバー20の直径をLCとし、カバー20の線膨張係数をαCとすると、
DC=(LC/2)×αC×ΔT
となる。
【0061】
また、ホイール80の温度が、温度ΔT分上昇して、想定最高温度(例えば、130℃)まで上昇された際の取付孔82の半径の伸びDHは、取付孔82の直径をLHとし、ホイール80の線膨張係数をαHとすると、
DH=(LH/2)×αH×ΔT
となる。
【0062】
ホイール80はアルミニウムにより製作されており、ホイールセンタキャップ10は樹脂により製作されている。このため、樹脂の線膨張係数はアルミニウムの線膨張係数より大きいことから、カバー20の半径の伸びDCが取付孔82の半径の伸びDHより大きくなる。したがって、カバー20の外周面22がホイール80の内周面83に対し相対的に径方向へ移動する(近づく)。この際の移動量Dは、
D=DC−DH
となる。
【0063】
図4に示す如く、カバー20の外周面22がホイール80の内周面83に対し相対的に径方向へ移動される際には、摺動爪70の傾斜部72がホイール80の傾斜部86に対してカバー20径方向外側へ摺動されることで、ホイールセンタキャップ10がホイール80の内周面83に対し相対的に取外方向へ移動する。この際の移動量Eは、
E=D×tanθ1
となる。
【0064】
これにより、第2係止爪50は、ホイール80に対してカバー20径方向外側へ移動量D移動されると共に、取外方向へ移動量E移動される。
【0065】
さらに、第2係止爪50の先端部がホイール80に対してカバー20径方向外側へ移動量D移動されることで、第2係止爪50の連絡部58と係合部60との境界部分が取外方向において対向するホイール80の係合部88の部位88Aが、カバー20径方向外側及び取付方向へ変位される。この際の部位88Aの取付方向への変位量Fは、
F=D×tanθ2
となる。
【0066】
これにより、連絡部58と係合部60との境界部分は、ホイール80の内周面83に対してカバー20径方向外側へ移動量D近づくと共に、ホイール80の係合部88に対して取外方向へ移動量G近づく。この際の移動量Gは、
G=E+F
となる。
【0067】
第2係止爪50の連絡部58とホイール80の内周面83とのカバー20径方向の隙間寸法aは、移動量Dより大きくされている。このため、第2係止爪50の連絡部58がホイール80の内周面83に当接しない。また、第2係止爪50の連絡部58と係合部60との境界部分とホイール80の係合凸部84との取外方向の隙間寸法bは、移動量Gより大きくされている。このため、第2係止爪50の連絡部58と係合部60との境界部分がホイール80の係合部88に当接しない。これにより、ホイールセンタキャップ10及びホイール80の温度が想定最高温度(例えば、130℃)まで上昇されて、ホイールセンタキャップ10及びホイール80が膨張された時でも、第2係止爪50は弾性変形されない。
【0068】
一方、ホイールセンタキャップ10がホイール80から取外される際には、ホイールセンタキャップ10の中心軸線がホイール80の取付孔82の中心軸線に一致された状態で、ホイールセンタキャップ10が、取外方向側へ向けて引き出される。
【0069】
この際には、第1係止爪30の係合部40がホイール80の連絡部87と係合部88との境界部分を摺動される。このため、係合部40が連絡部87と係合部88との境界部分によってホイール80の径方向内側へ押されて、第1係止爪30の弾性変形部31がカバー20の径方向内側へ弾性変形される。これにより、第1係止爪30によってホイールセンタキャップ10にホイール80からの取外荷重が作用される。
【0070】
また、この際には、第2係止爪50の連絡部58と係合部60との境界部分がホイール80の係合部88に対して摺動される。このため、連絡部58と係合部60との境界部分が係合部88によってホイール80の径方向内側へ押されて、第2係止爪50の弾性変形部51がカバー20の径方向内側へ弾性変形される。これにより、第2係止爪50によってホイールセンタキャップ10にホイール80からの取外荷重が作用される。
【0071】
さらに、第1係止爪30の弾性変形部31及び第2係止爪50の弾性変形部51が弾性変形される際には、リブ76A及びリブ76Bによってカバー20が取外方向側を凸に湾曲して撓むことが抑制される。
【0072】
ここで、上述した如く、ホイール80にホイールセンタキャップ10が取付けられた状態で、第2係止爪50の弾性変形部51は弾性変形されていない。このため、第2係止爪50には、曲げ応力が作用されないため、第2係止爪50に熱が付加されても、第2係止爪50の熱クリープによる変形を抑制できる。これにより、ホイールセンタキャップ10のホイール80からの取外荷重を確保できる。
【0073】
また、ホイールセンタキャップ10及びホイール80の温度が想定最高温度(例えば、130℃)まで上昇された際には、カバー20及び取付孔82が径方向外側へ膨張されて、摺動爪70の傾斜部72がホイール80の傾斜部86に対してカバー20径方向外側へ摺動することで、第2係止爪50の連絡部58と係合部60との境界部分が、ホイール80の内周面83に対してカバー20径方向外側へ移動量D近づくと共に、ホイール80の係合部88に対して取外方向へ移動量G近づく。
【0074】
この際においても、第2係止爪50の連絡部58とホイール80の内周面83とのカバー20径方向の隙間寸法aが移動量Dより大きくされているため、第2係止爪50の連絡部58がホイール80の内周面83に当接しない。また、第2係止爪50の連絡部58と係合部60との境界部分とホイール80の係合凸部84との取外方向の隙間寸法bが移動量Gより大きくされているため、第2係止爪50の連絡部58と係合部60との境界部分がホイール80の係合部88に当接しない。これにより、第2係止爪50には、曲げ応力が作用されないため、第2係止爪50の熱クリープによる変形を抑制できる。このため、ホイールセンタキャップ10のホイール80からの取外荷重を確保できる。
【0075】
さらに、カバー20には、リブ76A及びリブ76Bが設けられており、リブ76A及びリブ76Bはカバー20の径方向において対向する第2係止爪50間を繋いでいる。このため、リブ76A及びリブ76Bによって第2係止爪50の弾性変形部51がカバー20径方向内側へ弾性変形される際の曲げ荷重が高くなる。また、第2係止爪50が弾性変形される際のカバー20の撓みがリブ76A及びリブ76Bによって抑制されることで、ホイール80からホイールセンタキャップ10が取外される時のカバー20の変形を抑制できる。これにより、ホイールセンタキャップ10のホイール80からの取外荷重を一層確保できる。
【0076】
なお、本実施の形態では、隙間寸法aが移動量Dより大きくされ、隙間寸法bが移動量G(G=E+F)より大きくされている。移動量Eは、D×tanθ1であり、移動量Fは、D×tanθ2であるため、角度θ1及び角度θ2を変化させることにより、隙間寸法a及び隙間寸法bを設定することができる。
【0077】
例えば、角度θ1及び角度θ2を45度に設定すると、移動量Eは移動量Dとなり、移動量Fは移動量Dとなる。したがって、隙間寸法bが隙間寸法aの2倍に設定されることになる。
【0078】
また、本実施の形態では、隙間寸法aが移動量Dより大きくされ、隙間寸法bが移動量Gより大きくされている。これに替えて、ホイール80の内周面83とカバー20の外周面22とのカバー20径方向の隙間寸法をcとする(図3参照)と、a>D+cとして、b>G+c×tanθ1+c×tanθ2としてもよい。これにより、例えば、摺動爪70の傾斜部72及びホイール80の傾斜部86の寸法のばらつきによって、仮に、カバー20がホイール80にカバー20径方向外側へずれて取付られた場合でも、ホイールセンタキャップ10に熱が付加された際に、確実に第2係止爪50の先端部がホイール80の内周面83に当接することを防止できる。
【0079】
さらに、本実施の形態では、摺動爪70が、第1係止爪30と第2係止爪50とは別部材として設けられている。これに替えて、摺動爪70を第1係止爪30又は第2係止爪50と一体に設けられる構成としてもよい。これにより、第1係止爪30又は第2係止爪50のカバー20周方向の長さ(幅)を長くできるため、第1係止爪30又は第2係止爪50の弾性変形荷重が高くなる。これにより、ホイールセンタキャップ10のホイール80からの取外荷重を確保できる。
【0080】
また、本実施の形態では、ホイールセンタキャップ10の温度が想定最高温度(例えば、130℃)まで上昇された際においても、隙間寸法a及び隙間寸法bによって、第2係止爪50の先端部がホイール80の内周面83及び係合凸部84に当接しないことで第2係止爪50の弾性変形部51がホイール80によって弾性変形されない構成とされている。これに替えて、ホイールセンタキャップ10の温度が想定最高温度まで上昇された際において、第2係止爪50の弾性変形部51がホイール80によって弾性変形されないで、第2係止爪50の先端部がホイール80の内周面83及び係合凸部84に当接する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10 ホイールセンタキャップ(キャップ)
20 カバー(本体部)
30 第1係止爪(第1弾性変形部)
50 第2係止爪(第2弾性変形部)
70 摺動爪(摺動部)
76A リブ(補強部)
76B リブ(補強部)
80 ホイール
84 係合凸部(被摺動部)
図2
図3
図4
図1