(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の絞り羽根と前記第1ガイドプレートと前記第2ガイドプレートは、合成樹脂シートを型抜き成型して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光量調整装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の光量調整装置は、撮影光路(或いは投影光路)に光軸開口を有する基板を配置し、この基板に複数枚の光量調節羽根を開閉自在に配置して光軸開口を大口径又は小口径に光量調整する装置として知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、基板に形成した光軸開口の周囲に複数枚の羽根を配置し、光路口径を小径から大径まで相似形で開閉する虹彩絞り装置が開示されている。このような絞り装置は、多数枚の羽根で円形状に近い口径で多段階に光量調整する特徴が知られている。
【0004】
同文献には、中央に光路開口を有する上下一対のリング状基板の間に複数の絞り羽根を配置し、この複数の絞り羽根を基板の一方に設けた駆動ユニットで開閉する開閉機構が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、文献1と同様にリング形状に形成した基板間に複数の絞り羽根を配置し、基板の一方に設けた駆動ユニットで羽根を開閉動する装置が開示されている。このように光路開口の周囲に複数の羽根を鱗状に配置し、基板の一方に設けた駆動ユニットで開閉動する装置は広く知られている。
【0006】
そして複数の羽根を開閉動する機構は、基板に羽根の運動軌跡に沿ってガイド溝を設け、このガイド溝に羽根に植設したピンを嵌合し、他方の基板に設けた伝動リングで羽根を所定方向に回動させることによって複数の羽根の運動を規制している。このため羽根を支持する基板には羽根の枚数に応じたガイド溝が光路開口の周縁に配置されている。このガイド溝の構造は特許文献1の
図4に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように光路開口の周縁に複数の羽根を配置し、この羽根を開閉動して光路口径を大小調製する絞り装置は、特許文献1、2などで知られている。この場合、複数の絞り羽根は、合成樹脂、金属などで薄い平板形状に形成され、複数の羽根が相互に重なり合うように光路開口に配置され、上下一対の基板間に開閉可能に支持されている。この複数の羽根を同時に開閉動するため、基板の一方には、駆動リングが回転可能に組み込まれ、この駆動リングと各羽根部材を嵌合して連動するようにしている。また、他方の基板には羽根の開閉方向を運動規制するガイド溝が形成され各羽根と係合するようにしている。
【0009】
そこで各羽根部材の表裏面に第1第2の突起を設け、この第1の突起は基板(地板)に形成したガイド溝に係合し、第2の突起は駆動リングに形成した嵌合孔に係合している。
【0010】
このように従来は、第1の基板と駆動リングとの間に各羽根部材を開閉動可能に直接支持しているため、次の問題が生ずる。各羽根部材と第1基板との間、或いは各羽根部材と駆動リングとの間に、生ずる摩擦抵抗によって羽根根の円滑な運動が妨げられ、これと共に駆動装置の消費電力が大きいことが問題となる。
【0011】
また、第1基板と羽根部材、駆動リングと羽根部材との間に羽根の開閉動作で静電気が発生し、この静電気が帯電して蓄積されると羽根の開閉不良を引き起こすことが知られている。従来この静電気蓄積を防止するため例えば基板を導電性金属或いは、カーボンなどの導電性繊維を混入した樹脂成型で構成しているが、繊維を混入するとこの繊維が基板表面に露出し羽根の運動の妨げとなる。
【0012】
そこで本発明者は上下一対の基板間に複数の羽根部材を開閉可能に支持する際に、羽根と基板との間、羽根と駆動リングとの間、にガイドプレートを介在させ、このガイドプレートによって摩擦抵抗を軽減するのと同時に静電気の発生を軽減するとの着想に至った。
【0013】
ところが本発明者が、羽根とガイドプレートをポリエチレン樹脂フィルムの打抜き成形で製作して羽根の開閉状態を観察したところ次の問題が新たに発生した。
【0014】
駆動リングとこれに介在するガイドプレートに嵌合孔を設けて羽根の突起(ピン)と嵌合し、駆動リングの回転で複数の羽根を開閉動する。このときリングとプレートの嵌合孔の位置ズレ、孔内径の精度差によって羽根はプレートの嵌合孔に規制されて開閉動し、駆動リングの開閉動と連動しないことがある。このことは基板とこれに介在するガイドプレートに羽根の開閉運動を規制するガイド溝を設けた場合にも、ガイド溝相互に位置ズレ、精度誤差があると羽根は不安定な開閉動作をすることとなる。
【0015】
この状態を
図11に示すが、駆動リング110の嵌合孔111と上ガイドプレート120の嵌合孔121が位置ズレ或いは寸法精度によってガタつきΔt1が生ずると、例えば駆動リングが時計方向に回転して羽根104を開閉する時には同図(b)に示すように、或る羽根104はΔt1だけ速く回転し、或る羽根はΔt1だけ遅く回転する。そして駆動リング110が反時計方向に回転するときには逆にΔt1だけ遅く回転し、羽根の開口径には開口量の狂いが生ずる。同様に基板100とこれに介在する下ガイドプレート105の間にもガイド溝102とガイド溝103が位置ズレ或いは寸法精度によってガタつき、同図(c)に示すようにガタつきΔt2が生ずると羽根の開閉軌跡がΔt2だけズレることとなる。
【0016】
本発明は、一対の基板間に開閉自在に支持した複数の絞り羽根を駆動リングで開閉動する際に、基板と羽根との間、駆動リングと羽根との間、に作用する摩擦抵抗が少なく、円滑な開閉動作が可能であると共に正確な運動軌跡で開閉する光量調整装置の提供をその課題としている。更に、本発明は羽根の開閉動作で静電気が発生して蓄積されることの少ない光量調整装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を達成するため本発明は、第1の基板、絞り羽根、駆動リング、第2の基板の順に積層状に重ね合わせる際に、第1基板と羽根の間に第1のガイドプレートを、駆動リングと羽根との間に第2のガイドプレートを介在させ、第1基板と第1ガイドプレートには羽根に形成した第1の突起に嵌合するガイド溝を、第2基板と第2ガイドプレートには羽根に形成した第2の突起に係合する係合孔をそれぞれ配置する。このとき第1ガイドプレートのガイド溝は第1基板のガイド溝より狭小幅に構成すると共に、駆動リングの嵌合孔は、第2ガイドプレートの係合孔より小径に構成することを特徴としている。
【0018】
更にその構成を詳述するに、光路開口(12)を有する第1、第2から成る一対の基板(11、41)と、一対の基板間に配置され光路開口の通過光量を調節する複数の絞り羽根(21)と、複数の絞り羽根を開閉する駆動リング(31)と、駆動リングを所定回転角度で回動する駆動装置(M)と、を備える。上記一対の基板と絞り羽根と駆動リングとは、略中央に光路開口を形成して第1の基板、絞り羽根、駆動リング、第2の基板の順に積層状に重ね合わせ、第1の基板と絞り羽根との間には、第1ガイドプレートを、駆動リングと絞り羽根との間には、第2ガイドプレートを介在する。そして上記第1基板と第1ガイドプレートには、複数の絞り羽根それぞれに形成された第1の突起に嵌合するガイド溝を形成し、駆動リングと第2ガイドプレートには、複数の絞り羽根それぞれに形成された第2の突起に嵌合する嵌合孔を形成する。
【0019】
そこで第1ガイドプレートに形成されたガイド溝(16)は第1基板に形成されたガイド溝(13)より狭小幅に構成すると共に、駆動リングに形成する嵌合孔(33)は、第2ガイドプレートに形成する係合孔(37)より小径に構成する。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、光路開口を有する第1基板と羽根の間に第1のガイドプレートを、駆動リングと羽根との間に第2のガイドプレートを介在させ、各羽根に設けた突起を嵌合する第1ガイドプレートのガイド溝は第1基板のガイド溝より狭小幅に構成し、駆動リングの嵌合孔は第2ガイドプレートの嵌合孔より小径に構成したものであるから以下の効果を奏する。
【0021】
複数の絞り羽根は第1基板(地板)に第1ガイドプレートを介在させて開閉可能に支持しているから、この基板を金属成形、樹脂成形などで堅牢に構成する際に、その表面粗さ、バリ、混合物質(例えば強化繊維)などの影響で羽根開閉の負荷が増大することがない。これと共に複数の羽根部材は第1基板の反対面(上面)を駆動リングに支持されることとなるが、この駆動リングとの間に第2のガイドプレートを介在させて開閉可能に支持しているから、この駆動リングを金属成形、樹脂成形などで形成する際に表面粗さ、バリ、強化繊維などの影響を受けることなく円滑な開閉動作が可能である。
【0022】
これと共に、各羽根部材に形成した突起を第1基板と第1ガイドプレートに設けたガイド溝で運動規制する際に、プレート側のガイド溝を基板側のガイド溝より狭小幅に構成したから、各羽根部材はプレート側のガイド溝に沿って開閉運動することとなる。このため第1基板のガイド溝は、例えば型成形時の抜きテーパを形成しても、或いは加工精度を粗くしても羽根の開閉運動に影響を及ぼすことがない。
【0023】
また、各羽根部材には第2の突起が形成され、この突起は駆動リングと第2ガイドプレートに設けた嵌合孔で連結され駆動リングの運動が羽根に伝達されることとなる。このときこの嵌合孔は駆動リング側がガイドプレート側より小径に構成されているから、リング側とプレート側の嵌合孔が位置ズレ、或いは相互に寸法誤差が生じても羽根は駆動リングに規制され、ガイドプレートの影響を受けることなく駆動リングの移動に応じて同一量ずつ開閉移動することとなる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
図1は本発明に係わる光量調整装置Aの組立分解図である。
図1に示すように光量調整装置Aは、第1基板組(地板組)1と、羽根組2と、駆動リング組3と、第2基板組4(押さえ板組)で構成されている。そして第1基板組1に羽根組2が組み込まれ、この羽根組2の上に駆動リング組3と第2基板組4が組み込まれている。このような構成によって羽根組2は第1基板組1と第2基板組4にサンドイッチ状に挟持され、第1第2基板組1,4を固定ビスで一体化(不図示)している。
【0026】
[第1基板組の構成]
図2に従って第1基板組1と羽根組2の構成について説明する。第1基板組1は地板11と第1摺動リング15(第1ガイドプレート;以下同様)で構成され、羽根組2は複数の絞り羽根21で構成されている。各構成について説明する。
【0027】
地板11は光路開口12を有し、撮像装置の鏡筒形状に応じた形状に構成される。この地板11は金属、樹脂などで装置に強靭性を持たせる材質・寸法に形成されている。図示の地板11は、ガラス繊維などの強化繊維を混入した合成樹脂のモールド成形で形成している。これは地板11を薄型で小型軽量に構成するためである。
【0028】
地板11は中央部に光路開口12が設けられ、開口周縁は絞り羽根を支持する羽根支持面11x(平坦面若しくは凹凸面)を形成し、この支持面に絞り羽根を開閉方向に案内(運動規制)するガイド溝13が形成してある。このガイド溝13の構成については後述する。図示14は押さえ板41を固定する連結突起であり、突起内部にネジ穴が形成してある。
【0029】
「第1ガイドプレート」
第1ガイドプレート(第1摺動リング)15は、
図2にその斜視構造を、
図4(b)に平面構造を示すように地板11と略々同一形状のリング形状に形成されている。この第1ガイドプレート15は
図7(a)に断面構造を示すように地板11の羽根支持面11xと絞り羽根21との間に介在し、羽根21が直接地板11と接触するのを避ける。図示の第1ガイドプレート15は地板11と略々同一の平面形状に形成している。
【0030】
この第1ガイドプレート15は、後述する羽根部材21との摩擦係数が小さい樹脂フィルムで形成されている。図示の第1ガイドプレート15は後述する羽根部材21と同一素材で、例えばポリエチレン樹脂フィルム(PETシート)の型抜き成形で形成されている。そして
図4(b)にその形状を示すように地板11のガイド溝13と一致するガイド溝16が形成されている。このガイド溝16については後述する。
【0031】
従って、地板11を樹脂のモールド成形で、第1ガイドプレート15を樹脂フィルムの型抜き成形で形成する場合には、地板11の形状精度に比べ第1ガイドプレート15の形状精度を高精細に形成することが出来る。このことはモールド成形に比べ、カレンダーロール成形でシート状に形成した素材を型抜き成形することによって寸法精度が得られる為である。また第1ガイドプレート15の材質を絞り羽根21と同一材質にすることによって熱変化などの温度特性は羽根部材と実質的に同一となり、羽根21とガイドプレート15は同一素材で帯電列が同一であるから両者が摺動しても静電気を帯びることがない。
【0032】
図示の第1ガイドプレート15は地板11と略々同一形状に形成され、中央に位置する光路開口12の周縁に複数の絞り羽根21の基端部21xを支持し、先端部21yは光路開口内部に臨ませるように支持する(
図8(a)(b)参照)。
【0033】
「羽根部材」
羽根組2は、
図8(a)(b)に示すように複数の絞り羽根21a〜21iで構成されている。図示の絞り羽根21は、9枚の羽根で構成され、各羽根の形状は同一形状に形成されている。
図8(b)に羽根形状の一例を示すが、基端部21xは上述の第1摺動リング15を介して地板11に支持される。また羽根の先端部21yは光路開口12を開閉する。このとき複数の羽根部材の先端部21xは互いに鱗状に重なり合って円形状の光路口径12を形成する形状になっている。
【0034】
各羽根部材21a〜21iには、
図8(a)に示すように第1の突起(ガイドピン)22と第2の突起(作動ピン)23が表裏に植設されている。このガイドピン22は各羽根部材に地板11側に面する位置に配置され、作動ピン23はその反対面(後述する第2基板側)に配置されている。このガイドピン22は後述するように地板11のガイド溝13と、第1ガイドプレート15のガイド溝16に嵌合し、作動ピン23は後述する作動部材(駆動リング)31の嵌合孔33に嵌合する。なお、各羽根部材21a〜21iには、第1第2の突起22、23を植設(例えば溶融接着)する際の位置決め孔(不図示)が穿設してあり、羽根の外形状と位置決め孔で第1第2の突起22,23の植設位置を設定するようになっている。
【0035】
[ガイド溝とカイドピンの関係]
上述の地板11に形成されたガイド溝13と第1ガイドプレート15に形成されたガイド溝16と各羽根部材21に形成されたガイドピン(第1の突起)22の関係について説明する。
【0036】
地板11のガイド溝13は
図7(a)(c)に示すように凹陥溝で構成され地板外部の光が透過されない盲穴形状に形成されている。また地板11をモールド成形で形成する関係から抜きテーパθが形成され、その平均内径はdcに設定されている。
【0037】
また第1ガイドプレート15のガイド溝16は、内径dbの貫通孔で形成されている。この貫通孔は樹脂フィルムの型抜き成形で均一径に形成されている。
【0038】
一方、各絞り羽根21a〜21iにはガイドピン22が植設され、その外径はdaに設定されている。そこで、このピン外径daとガイド溝内径dbとの関係は、da≦db<dcの関係に設定されている。つまり第1ガイドプレート15のガイド溝16は地板11のガイド溝13より狭小幅(db<dc)でガイドピン外径daと適合する寸法(da≦db)に設定されている。
【0039】
従って同図に示すように各羽根部材21a〜21iに植設されたガイドピン(第1の突起)22は第1ガイドプレート15のガイド溝16と係合して運動規制され、地板11のガイド溝13とは接触しないこととなる。このためガイドピン(第1の突起)22はテーパθを有する地板11のガイド溝13と不安定に係合することがない。これによって羽根部材21が傾くことも、浮き上がることもない。
【0040】
[第2基板組の構成]
図3に従って第2基板組4と駆動リング組3について説明する。第2基板組4は押さえ板41と、補強板42と、押さえ板に固定した駆動ユニットMで構成されている。また駆動リング組3は、作動部材(駆動リング)31と第2摺動リング(第2ガイドプレート)36で構成される。以下各構成について説明する。
【0041】
「押さえ板」
押さえ板41は
図3に示すように中央部に開口43を有するリング形状に形成され、前述の地板11と略々同一形状に形成されている。図示の押さえ板41は樹脂のモールド成形で、外周の一部に駆動ユニットMの取付座46が設けてある。この取付座46に後述する駆動ユニットMがビスなどで固定される。図示45は押さえ板41を地板11の連結突起14にビス止めする連結孔である。
【0042】
「補強板」
補強板42は、
図3に示すように金属などの比較的強靭な板材で構成され、樹脂製の押さえ板41を補強する。従って押さえ板41に十分な強度が得られるときには補強板42を省くことが可能である。この補強板42は押さえ板41と略々同一形状に形成され、中央に開口44が形成してある。
【0043】
上記押さえ板41の開口43と補強板42の開口44は、いずれも光路開口12の開口径Dより大きく設定してあり、開口43の開口径D1と開口44の開口径D2と光路開口12の開口径Dとは、D2≧D1>Dに設定されている。
【0044】
駆動リング組3は駆動モータ(後述の駆動ユニット)Mの駆動を絞り羽根21に伝達する作動部材(駆動リング)31と、第2摺動リング(第2ガイドプレート)36で構成されている。
【0045】
「駆動リング」
作動部材(駆動リング)31は
図3に示すように例えば樹脂のモールド成形で中央部に光路開口12を有するリング形状(以下「駆動リング」という)に形成されている。この駆動リング31は、補強板42を介して押さえ板41に回動自在に取り付けられている。このため駆動リング31には光路開口12の周縁にフランジ32と係合突起34が形成してある。フランジ32は押さえ板41の開口43と補強板42の開口44に嵌合し、光路開口12の中心と一致する回転中心で回動する。また係合突起34は補強板42と摺接する面に形成され両者を円滑に摺動するのを補助している。
【0046】
駆動リング31は上述のように押さえ板41に回動自在に組み込まれ、その周縁の一部には受動歯35が形成してある。この受動歯35は押さえ板41の取付座46に取付けられた後述する駆動ユニットMの駆動歯車53と噛合する位置に設けられている。
【0047】
上記駆動リング31には、各絞り羽根21a〜21iに植設された作動ピン(第2の突起)23と嵌合する嵌合孔33が光路開口12の周縁に設けられている。この嵌合孔33は絞り羽根21の枚数に応じて光路開口12の周縁に複数(図示のものは9個所)配置されている。
【0048】
このような構成において駆動リング31は、押さえ基板41に回動自在に支持され、駆動ユニットMの駆動歯車53によって所定角度回転することとなる。そして駆動リング31の回転は各羽根部材21a〜21iに伝達されることとなる。
【0049】
「第2ガイドプレート」
第2ガイドプレート(第2摺動リング;以下同様)36は
図3に示すように中央に光路開口12を有する樹脂フィルム(例えばポリエチレンなどの樹脂フィルム)で形成され、駆動リング31と羽根部材21の間に介在される。これは羽根部材21と駆動リング31が直接接触するのを避け、絞り羽根の円滑な開閉運動を得るためである。図示の第2ガイドプレート36は、絞り羽根21と同一素材で構成している。これは互いに摺動する羽根と摺動リングを同一材質にすることによって熱変化などの温度特性は羽根部材と実質的に同一となり、羽根と摺動リングは同一素材で帯電列が同一であるから両者が摺動しても静電気を帯びることがない。
【0050】
上記第2ガイドプレート36は駆動リング31と同様なリング形状に形成されている。この第2ガイドプレート36には駆動リング31の嵌合孔33と合致する位置に係合孔37が設けてある。この駆動リング31の嵌合孔33と摺動リングの係合孔37とは、
図7(b)に示すように、各羽根に形成した第2の突起(作動ピン)23の外径de、駆動リング31の嵌合孔33の直径dd、第2ガイドプレート36の係合孔37の直径dfとの関係を次式のように設定している。
de≦dd<df(式1)
つまり、羽根の作動ピン(第2の突起)23の外径deと駆動リング31の嵌合孔33の直径ddが互いに適合するように嵌合し、第2ガイドプレート36の係合孔37の直径dfは、作動ピン(第2の突起)23の外径deより十分大きく設定している。これによって羽根の作動ピン(第2の突起)23は実質的に駆動リング31の嵌合孔33と嵌合し、第2ガイドプレート36の係合孔37とは係合しないこととなる。
【0051】
このように駆動リング31の嵌合孔33(直径dd)を第2ガイドプレート36の係合孔37(直径df)より小径に設定したのは次の理由による。第2ガイドプレート36は駆動リング31と羽根21との間に介在する。このため羽根21の開閉運動、或いは駆動リング31の回動運動で第2ガイドプレート36も回転運動する。このとき第2ガイドプレート36の係合孔37と駆動リング31の嵌合孔33が位置ズレしているか、加工精度で孔径が異なると
図11(b)に示すように嵌合孔相互間に位相差Δt1が発生する。この位相差はガタつきとして羽根の開閉に影響する。
【0052】
このようなガタつき(位相差Δt1)が存在すると複数の絞り羽根は、或る羽根はΔt1だけ速く回転し、或る羽根はΔt1だけ遅く回転する。そして羽根先端の開閉位置ズレを招く。そこで本発明は第2ガイドプレート36の係合孔37を駆動リング31の嵌合孔33より大きく設定し、羽根の作動ピン(第2の突起)23と係合しないように孔径を設定している。
【0053】
[駆動ユニットM]
図9に駆動ユニットMの一実施形態を示す。同図の駆動ユニットMはマグネットロータ50と、ステータコイル51と駆動回転軸52と、駆動歯車53と、ヨーク54で構成されている。マグネットロータ50は駆動回転軸52と永久磁石56を一体化して構成され、駆動回転軸52の両端部はコイル枠55に軸受け支持されている。永久磁石56は外周にNS2極が形成され、駆動回転軸52には駆動歯車53が取り付けられている。また、ステータコイル51はコイル枠55と、これに巻回されたコイル58で構成されている。このコイル枠55は内部にロータを内蔵するため、左右若しくは上下に2分割されている。このコイル枠55にはブラケット57が一体形成され、外周にヨーク54が嵌装されている。
【0054】
このような構成で、コイル58に通電するとマグネットロータ50は時計方向若しくは反時計方向に所定角度正逆転し、駆動歯車53を正逆転する。このように構成された駆動ユニットMは押さえ板41の取付座46にブラケット57をネジなどで固定する。そして駆動歯車53を駆動リング31の受動歯35に噛合する。これによって駆動リング31は、
図3時計方向と反時計方向に所定角度往復動し、絞り羽根21を開閉動する。
【0055】
[組立て状態の説明]
図1に従って光量調整装置Aの組み立て状態を説明する。上述のように構成された地板11に第1ガイドプレート15を重ね合わせる。このとき地板11に設けた位置決めピン17が第1ガイドプレート15の位置決め孔18に嵌合して両者の位置決めがなされる。
【0056】
地板11と第1ガイドプレート15を重ね合わせて、第1ガイドプレート15上に第1〜第9絞り羽根21a〜21iを
図2に示すように重ね合わせる。このとき各羽根部材21のガイドピン(第1の突起)22をガイド溝13とガイド溝16に嵌合する。
【0057】
次いで、
図3に示すように各羽根部材21a〜21iの上に第2ガイドプレート36を重ね合わせ、各羽根部材21a〜21iの作動ピン(第2の突起)23をプレート側の係合孔37に嵌合する。そこで押さえ板41に補強板42を重ね合わせて第2ガイドプレート36上に重ね合わせる。このとき押さえ板41にマウントした駆動ユニットMの駆動歯車53を駆動リング31の受動歯35と噛合させる。
【0058】
そこで地板11と押さえ板41を固定ビスで固定する。これによって地板11、第1ガイドプレート15、羽根部材21、第2ガイドプレート36、駆動リング31、補強板42、押さえ板41が順次上方に重ね合わせられ、一体化される。
【0059】
[羽根の開閉動作]
次に、
図8に従って絞り羽根の開閉動作について説明する。同図(a)は光路開口12の周囲に複数の絞り羽根を配置した状態を示し、(b)はこの複数の羽根の1枚の開閉動作状態を示す。同図(a)のように光路開口12の周囲には、光路中心Oを基準に所定角度隔てた位置(図示のものは9枚の羽根を角度40度ずつ隔てた位置)に複数の絞り羽根21a〜21iが鱗状に配置されている。各絞り羽根21a〜21iは地板11に形成したガイド溝13に第1の突起(ガイドピン)22が嵌合してある。これと共に各絞り羽根21a〜21iに形成された第2の突起(作動ピン)23は、駆動リング31の嵌合孔33に嵌合されている。
【0060】
そして駆動リング31は光路中心Oを中心に前述の駆動ユニットMによって所定角度範囲で時計方向と反時計方向に回転する。このときの羽根の開閉動作を同図(b)に従って説明する。作動ピン(第2の突起)23は駆動リング31の回転で図示光路中心Oから半径Lの円弧軌跡x−xで図示c点からd点に同図時計方向に回転移動する。またガイドピン(第1の突起)22はガイド溝16に沿って図示y−7y軌跡でa点からb点に移動する。
【0061】
この作動ピン(第2の突起)23とガイドピン(第1の突起)22の移動で絞り羽根21は同図実線(オープン状態)から同図破線(クローズ状態)に開閉動する。なお図示の装置はクローズ状態のとき光路開口12は小口径の小絞り状態に設定され、オープン状態のときには全開状態に設定されている。従って駆動ユニットMに供給する電流に応じて絞り羽根21は、小絞り状態から全開状態に任意の開口径で開閉し、光路開口12を通過する光量を大小調整することとなる。
【0062】
[撮像装置]
次に上述の光量調整装置Aを用いた撮像装置について
図10に基づいて説明する。スチールカメラ、ビデオカメラ等のレンズ鏡筒に前述の光量調整装置を組込む。図示Bは撮影光路に配置した前レンズ、Cは後レンズであり、これ等のレンズで被写体像を結像しその結像面に撮像手段Sを配置する。撮像手段SとしてはCCDなどの固体撮像素子或いは感光フィルムなどを用いる。そして制御はCPU制御回路、露出制御回路、及びシャッタ駆動回路で実行するように構成する。図示のSW1はメイン電源スイッチであり、SW2はシャッタレリーズスイッチを示す。カメラ装置としての制御には、この他オートフォーカス回路などが用いられるが良く知られた構成であるので説明を省く。
【0063】
そこでレンズ鏡筒に組込まれた前レンズBと後レンズCとの間に絞り装置Eとシャッタ装置(不図示)を組込む。この絞り装置Eには前述の絞り羽根21及び駆動ユニットMが組込まれている。そこで制御CPUは露出量、シャッタスピードなどの撮影条件を設定し、露出制御回路及びシャッタ駆動回路に指示信号を発する。まず露光量は露出制御回路が制御CPUからの指示信号で駆動装置Mのコイルに所定方向の電流を供給する。すると絞り羽根21は駆動装置Mの回転を駆動歯車53を介して作動ピン23から伝達され、最適露光量に光路開口12を絞る。
【0064】
次いで、レリーズ釦が操作されると、CCDなどの固体撮像素子の場合すでにチャージされている電荷を放出し、撮影を開始する。そこでシャッタ駆動回路は制御CPUから予め設定された露光時間の経過後、シャッタ動作開始の信号を受け駆動装置のコイルにシャッタ閉成方向の電流を供給する。このシャッタ動作の後、撮像手段SがCCD(固体撮像素子)の場合は画像処理回路に画像データが転送されメモリなどに蓄積される。