(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に新規なDNAの同定と単離及びマウスStra6、レチノイン酸応答性タンパク質に類似した配列を有する新規なポリペプチドの組み換え生成に関する。これらの分子のいくつかは先に「PRO10282」と称されるが、以下「Stra6」ポリペプチドとする。
【0002】
(発明の背景)
膜結合タンパク質
膜結合タンパク質及びレセプターは、中でも、多細胞生物の形成、分化及び維持において重要な役割を担っている。多くの個々の細胞の運命、例えば増殖、遊走、分化、又は他の細胞との相互作用は、典型的には他の細胞及び/又は直接の環境から受けた情報により支配される。情報はしばしば分泌ポリペプチド(例えば、分裂促進因子、生存因子、細胞障害因子、分化因子、ニューロペプチド、及びホルモン)により伝達され、それらは多種多様な細胞レセプター又は膜結合タンパク質によって受け取り、判断される。限定するものではないが、このような膜結合タンパク質及び細胞レセプターは、サイトカインレセプター、レセプターキナーゼ、レセプターホスファターゼ、細胞-細胞間相互作用に関わるレセプター、及びセレクチン及びインテグリンのような細胞接着分子を含む。例えば、細胞増殖及び分化を制御するシグナルの伝達は、様々な細胞タンパク質のリン酸化により部分的に制御される。また、その工程を触媒する酵素であるタンパク質チロシンキナーゼは、増殖因子レセプターとして作用することもできる。例としては、繊維芽細胞増殖因子及び神経細胞成長因子レセプターを含む。
膜結合タンパク質及びレセプター分子は、製薬及び診断用の薬剤としてを含む様々な産業上の利用性を有している。例えば、レセプターイムノアドヘシンをレセプター-リガンド相互作用を阻害する治療薬として利用することができる。膜結合タンパク質はまた、関連するレセプター/リガンド相互作用の可能性のあるペプチド又は小分子阻害剤のスクリーニングに利用することもできる。
新規な天然のレセプター又は膜結合タンパク質を同定するための努力が産業界と学術界の両方によってなされている。多くの努力が新規なレセプター又は膜結合タンパク質に対するコード化配列を同定するために哺乳動物の組換えDNAライブラリーをスクリーニングすることに注がれている。
【0003】
本発明のStra6ポリペプチドは、レチノイン酸により誘発される発現をするマウスタンパク質Stra6と配列相同性(73%同一性及び81%相同性)を共有する(Bouillet等, Dev. Biol. 170:420-433[1995]; Bouillet等, Mech. Dev.63: 173-186[1997]; Chazaud等Dev. Genet. 19:66-73[1996])。レチノイン酸は脊椎発達の間の重要なシグナル伝達分子であり、遺伝子は胚発達の間の増殖及び分化において重大な役割を果たすと考えられる。マウスStra6 cDNAは、レチノイン酸誘導遺伝子を同定及び単離するためのサブトラクティブハイブリダイゼーション法を用いてP19マウス胚性癌腫細胞から単離され、既に特徴付けされているタンパク質と類似性を示さない。それは複数の膜貫通ドメインに対応するアミノ酸残基の高疎水性伸長、膜複合タンパクの特性を含む。発現パターンに基づいて、Stra6は初期に胚発達の間の背腹節のパターン化で、後に軟骨内骨化の制御で重要な役割を果たすと考えられる(Chazaud等, Dev. Genet. 19:66-73[1996])。
ここで開示されるStra6ポリペプチドは、Stra6ポリペプチドが膜複合タンパク質であることを示す膜貫通ドメインを構成すると思われる複数の高疎水性残基を含む。それらは未知のリガンドに対するレセプターとして機能し、細胞増殖、発達又は分化に対する影響があるシグナル伝達経路の一部でありうる。
【0004】
悪性腫瘍(癌)は、米国において心臓疾患に続き第2の主要な死亡原因である(Boring等, CA Cancel J. Clin., 43: 7 [1993])。
癌は、正常な組織から誘導されて腫瘍実体を形成する異常な、又は腫瘍形成性の細胞数の増加、これらの腫瘍形成性腫瘍細胞による隣接組織の侵襲、及び最終的に血液やリンパ系を介して局所のリンパ節及び離間部位に拡散(転移)する悪性細胞の生成を特徴とする。癌性状態においては、正常細胞が増殖しない条件下で細胞が増殖する。癌自体は、異なる侵襲及び攻撃性の程度で特徴付けられる広範な種々の形態で顕現する。
遺伝子発現の変化は制御不能な細胞増殖及び脱分化に強く関連しており、全ての癌に共通する特徴である。或る種の良く研究された癌のゲノムにおいて、通常は腫瘍抑制遺伝子と呼ばれ、正常には悪性細胞増殖又は或る種の優性遺伝子、例えば悪性増殖を促進するように作用するオンコジーンの過剰発現を防止するように作用する劣性遺伝子発現の減少を示すことが見出された。これらの遺伝子変化は、凝集して完全な腫瘍形成性フェノタイプを示す形質の幾つかが移入される原因であることが明らかとなった(Hunter, Cell 64: 1129 [1991]; Bishop, Cell 64: 235-248 [1991])。
癌細胞における良く知られた遺伝子(例えばオンコジーン)過剰発現のメカニズムは遺伝子増幅である。これは、祖先細胞の染色体において特定遺伝子の多重コピーが生成されるプロセスである。このプロセスは、遺伝子を含む染色体の領域の計画性のない複製、次いで複製されたセグメントが染色体へ戻る再組換えを含む(Alitalo等, Adv. Cancer Res. 47: 235-281 [1986])。遺伝子の過剰発現は、遺伝子増幅と並行して起こる、即ち、生成されるコピーの数に比例すると考えられる。
増殖因子及び増殖因子レセプターをコードするプロトオンコジーンは、乳癌を含む、様々なヒトの悪性腫瘍の原因に重要な役割を担っていることが確認されている。例えば、上皮成長因子レセプター(EGFR)に関連した185-kdの膜貫通糖タンパク質レセプター(p185
HER2、HER2又はc-erbB-2)をコードするヒトErbB2遺伝子(erbB2、her2としても知られている、又はc-erbB-2)は、ヒトの乳癌の約25%〜30%で過剰発現されていることが見出されている(Slamon等, Science 235:177-182[1987];Slamon等, Science 244:707-712[1989])。
【0005】
プロトオンコジーンの遺伝子増幅は、典型的には癌のより悪性の形態に関わる事象であり、臨床的結果の予測の判断材料として作用しうることが報告されている(Schwab等, Genes Chromosome Cancer 1, 181-193 [1990]; Alitalo等, 上掲)。即ち、erbB2の過剰発現は、特に腋窩のリンパ節を含む一次疾患を持つ患者において、不完全な予後の判断材料と一般に見なされており(Slamon等, [1987]及び[1989], 上掲; Ravdin及びChamness, Gene 159: 19-27 [1995]; 及びHynes及びStern, Biochem Biophys Acta 1198: 165-184 [1994])、ホルモン療法及びCMF(シクロホスファミド、メトトレキセート、及びフルオロウラシル)を含む化学療法剤に対する感受性又は耐性と関連付けられていた(Baselga等, Oncology 11 (3 Suppl 1): 43-48 [1997])。しかしながら、erbB2過剰発現と不完全な予後との関連にも関わらず、HER2-ポジティブな患者のタキサンでの処理に臨床的に反応する可能性は、HER2-ネガティブ患者の3倍も大きかった(上掲)。組換えヒト化抗-ErbB2(抗-HER2)モノクローナル抗体(マウス抗-ErbB2抗体4D5のヒト化型、rhuMAb HER2又はHerceptin(商品名)と呼ばれる)は、広範な従来の抗癌治療を受けたErbB2を過剰発現する転移性乳癌を持つ患者で臨床的に活性である。(Baselga等, J. Clin. Oncol. 14: 737-744[1996])。
上記に照らして遺伝子増幅に関連する腫瘍の診断及び治療に有用な新規な方法及び組成物を同定することに明らかな興味がある。
【0006】
(発明の概要)
ヒトcDNAクローン(ここでDNA148380−2827と称する)が、マウスレチノイン酸応答タンパク質Stra6をコードする核酸と相同性を有し、本出願で全長天然配列ヒト「PRO10282」と称される、667アミノ酸の新規なポリペプチドをコードすることが同定された。更なるヒトcDNAクローン(ここでDNA148389−2827-1と称される)が、マウスStra6と天然配列ヒトPRO10282の両方と有意な配列相同性を示す、あるいは天然配列ヒトPRO10282のスプライスバリアントであると考えられる、658アミノ酸の新規なポリペプチド(PRO19578)をコードすることが同定された。以下に検討されるが、マウスStra6に対するそれらの相同性から、本発明のPRO10282ポリペプチド(天然配列及び変異体の分子を含む)はまた「Stra6」ポリペプチドとも称される。
一実施態様では、本発明は、PRO10282ポリペプチドをコードする核酸配列を含む単離された核酸分子を提供する。
一態様では、単離された核酸分子は、(a)Fig.2(配列番号:2)のアミノ酸残基約1〜約667の配列を有するPRO10282ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)Fig.7(配列番号:5)のアミノ酸残基約1〜約658の配列を有するPRO19578ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(c)(a)または(b)のDNA分子の相補鎖に対して、少なくとも約80%の配列同一性、好ましくは少なくとも約81%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約82%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約83%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約84%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約86%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約87%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約88%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約89%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約91%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約92%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約93%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約94%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約96%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約97%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約98%の配列同一性、そして、より好ましくは少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0007】
他の態様では、単離された核酸分子は、(a)Fig.2(配列番号:2)のアミノ酸残基約1〜約667の配列を有するPRO10282ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は(b)Fig.7(配列番号:5)のアミノ酸残基約1〜約658の配列を有するPRO19587ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は(c)(a)または(b)のヌクレオチド配列の相補鎖を含む。
一態様では、単離された核酸分子は、(a)Fig.1(配列番号:1)のヌクレオチド約49〜約2049の配列を有するDNA分子、又は(b)Fig.6(配列番号:4)のヌクレオチド約186〜約2159の配列を有するDNA分子、又は(c)(a)または(b)のDNA分子の相補鎖に対して、少なくとも約80%の配列同一性、好ましくは少なくとも約81%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約82%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約83%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約84%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約86%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約87%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約88%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約89%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約91%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約92%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約93%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約94%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約96%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約97%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約98%の配列同一性、そして、より好ましくは少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
他の態様では、本発明は、(a)Fig.1(配列番号:1)の約49〜約2049のヌクレオチド配列、又は(b)Fig.6(配列番号:4)の約186〜約2159のヌクレオチド配列、又は(c)(a)または(b)のヌクレオチド配列の相補鎖を含む単離された核酸分子に関する。
【0008】
他の態様では、本発明は、(a)2000年1月11日にATCCにATCC寄託番号PTA-1181(DNA148380-2827)の下に寄託されたヒトタンパク質cDNAにコードされる同一の成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)2000年2月23日にATCCにATCC寄託番号PTA-1405(DNA148389-2827-1)の下に寄託されたヒトタンパク質cDNAにコードされる同一の成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(c)(a)又は(b)のDNA分子の相補鎖に対して、少なくとも約80%の配列同一性、好ましくは少なくとも約81%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約82%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約83%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約84%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約86%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約87%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約88%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約89%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約91%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約92%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約93%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約94%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約96%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約97%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約98%の配列同一性、そして、より好ましくは少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子に関する。好ましい態様では、単離された核酸分子は、(a)2000年1月11日にATCCにATCC寄託番号PTA-1181(DNA148380-2827)の下に寄託されたヒトタンパク質cDNAにコードされる同一の成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)2000年2月23日にATCCにATCC寄託番号PTA-1405(DNA148389-2827-1)の下に寄託されたヒトタンパク質cDNAにコードされる同一の成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(c)(a)又は(b)のDNA分子の相補鎖を含む。
【0009】
他の態様では、本発明は、(a)2000年1月11日にATCCにATCC寄託番号PTA-1181(DNA148380-2827)の下に寄託されたヒトタンパク質cDNAの配列をコードする全長ポリペプチド、又は(b)2000年2月23日にATCCにATCC寄託番号PTA-1405(DNA148389-2827-1)の下に寄託されたヒトタンパク質cDNAの配列をコードする全長ポリペプチド、又は(c)(a)又は(b)のDNA分子の相補鎖に対して、少なくとも約80%の配列同一性、好ましくは少なくとも約81%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約82%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約83%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約84%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約86%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約87%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約88%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約89%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約91%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約92%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約93%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約94%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約96%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約97%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約98%の配列同一性、そして、より好ましくは少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子に関する。
好ましい態様では、単離された核酸分子は、(a)2000年1月11日にATCCにATCC寄託番号PTA-1181(DNA148380-2827)の下に寄託されたヒトタンパク質cDNAの配列をコードする全長ポリペプチド、又は(b)2000年2月23日にATCCにATCC寄託番号PTA-1405(DNA148389-2827-1)の下に寄託されたヒトタンパク質cDNAの配列をコードする全長ポリペプチド、又は(c)(a)又は(b)のDNA分子の相補鎖を含む。
他の態様では、本発明は、下記に定義されるように(a)Fig.2(配列番号:2)の約1〜約667のアミノ酸をコードする核酸配列の相補鎖、又は(b)Fig.7(配列番号:5)の約1〜約658のアミノ酸をコードする核酸配列の相補鎖に対してハイブリダイズする核酸配列を含む活性PRO10282ポリペプチドをコードする単離された核酸分子に関し、ここで単離された核酸分子はマウスStra6をコードするDNA以外である。好ましくは、ハイブリダイゼーションは高緊縮性の(緊縮な)ハイブリダイゼーション及び洗浄条件の下で行われる。
【0010】
また他の態様では、本発明は、下記に定義されるように(a)Fig.1(配列番号:1)の約ヌクレオチド49〜約2049の核酸配列の相補鎖、又は(b)Fig.6(配列番号:4)のアミノ酸残基約186〜約2159の核酸配列の相補鎖に対してハイブリダイズする核酸配列を含む活性PRO10282ポリペプチドをコードする単離された核酸分子に関し、ここで単離された核酸分子はマウスStra6をコードするDNA以外である。好ましくは、ハイブリダイゼーションは高緊縮性の(緊縮な)ハイブリダイゼーション及び洗浄条件の下で行われる。
更なる態様では、本発明は少なくとも約765ヌクレオチドを有し、緊縮な条件下で試験DNAを(a)Fig.2(配列番号:2)のアミノ酸残基約1〜約667の配列を有するPRO10282ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)Fig.7(配列番号:5)のアミノ酸残基約1〜約658の配列を有するPRO19578ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(c)(a)または(b)のDNA分子の相補鎖とハイブリダイズすることにより生成され、試験DNA分子が(a)、(b)又は(c)に対して少なくとも約80%の配列同一性、好ましくは少なくとも約81%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約82%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約83%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約84%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約86%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約87%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約88%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約89%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約91%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約92%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約93%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約94%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約96%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約97%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約98%の配列同一性、そして、より好ましくは少なくとも約99%の配列同一性を有する場合に試験DNA分子を単離する、ヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子に関する。
【0011】
他の態様では、本発明は、(a)Fig.2(配列番号:2)の残基約1〜約667のアミノ酸配列、又は(b)Fig.7(配列番号:5)の残基約1〜約658のアミノ酸配列、又は(c)(a)または(b)のヌクレオチド配列の相補鎖と比較したときに、少なくとも約80%ポジティブ、好ましくは少なくとも約81%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約82%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約83%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約84%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約85%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約86%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約87%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約88%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約89%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約90%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約91%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約92%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約93%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約94%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約95%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約96%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約97%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約98%ポジティブ、そして、より好ましくは少なくとも約99%ポジティブのスコアとされるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子に関する。
本発明の他の態様は、膜貫通ドメイン欠失又は膜貫通ドメイン不活性のどちらか、あるいはこのようなコード化配列に相補的であるPRO10282ポリペプチドをコードする核酸配列を含む単離された核酸配列を提供し、ここで膜貫通ドメインは、Fig.2(配列番号:2)の約アミノ酸位置からアミノ酸位置まで、約アミノ酸位置54からアミノ酸位置69まで、約アミノ酸位置102からアミノ酸位置119まで、約アミノ酸位置148からアミノ酸位置166まで、約アミノ酸位置207からアミノ酸位置222まで、約アミノ酸位置301からアミノ酸位置320まで、約アミノ酸位置364からアミノ酸位置380まで、約アミノ酸位置431からアミノ酸位置451まで、約アミノ酸位置474からアミノ酸位置489まで、約アミノ酸位置512からアミノ酸位置531まで;及びFig.7(配列番号:5)の約アミノ酸位置54からアミノ酸位置71まで、約アミノ酸位置93からアミノ酸位置11まで、約アミノ酸位置140からアミノ酸位置157まで、約アミノ酸位置197からアミノ酸位置214まで、約アミノ酸位置291からアミノ酸位置312まで、約アミノ酸位置356からアミノ酸位置ま371で、約アミノ酸位置425からアミノ酸位置481まで、約アミノ酸位置505からアミノ酸位置522まで伸びると仮に同定される。従って、ここで記載されるPRO10282ポリペプチドの可溶性細胞外ドメインが予測される。
【0012】
この点で、本発明の他の態様は、(a)Fig.2(配列番号:2)のアミノ酸1〜XをコードするDNA分子、ここでXはFig.2(配列番号:2)の49〜59の任意のアミノ酸であり、又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対して、少なくとも約80%の配列同一性、好ましくは少なくとも約81%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約82%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約83%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約84%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約86%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約87%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約88%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約89%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約91%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約92%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約93%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約94%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約96%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約97%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約98%の配列同一性、そして、より好ましくは少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子に関する。特定の態様では、単離された核酸分子は、(a)Fig.2(配列番号:2)、又はFig.7(配列番号:5)のアミノ酸1〜Xをコードし、ここでXはFig.2(配列番号:2)の49〜59の任意のアミノ酸であり、あるいは(b)(a)のDNA分子の相補鎖である、ヌクレオチド配列を含む。特定の態様では、単離された核酸分子は(a)Fig.2(配列番号:2)、又はFig.7(配列番号:5)のアミノ酸1〜Xをコードし、ここでXはFig.2(配列番号:2)、又はFig.7(配列番号:5)の49〜59の任意のアミノ酸であり、あるいは(b)(a)のDNA分子の相補鎖である、ヌクレオチド配列を含む。
また本発明の他の態様では、単離された核酸分子は、(a)Fig.2(配列番号:2)、又はFig.7(配列番号:5)の残基約1〜Xのアミノ酸配列(ここで、XがFig.2(配列番号:2)の49〜59の任意のアミノ酸である)と比較したときに、少なくとも約80%ポジティブ、好ましくは少なくとも約81%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約82%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約83%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約84%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約85%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約86%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約87%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約88%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約89%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約90%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約91%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約92%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約93%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約94%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約95%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約96%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約97%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約98%ポジティブ、そして、より好ましくは少なくとも約99%ポジティブのスコアとされるポリペプチドをコードする、あるいは(b)(a)のDNA分子の相補鎖である。
【0013】
他の実施態様は、PRO10282ポリペプチドコード化配列の断片に関し、例えば、ハイブリダイゼーションプローブとしての、又は場合によっては抗PRO10282抗体に対する結合部位を含むポリペプチドをコードしてもよいPRO10282ポリペプチドの断片のコード化のための用途が見いだされる。このような核酸断片は、通常は少なくとも約20ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも約30ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約40ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約50ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約60ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約70ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約80ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約90ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約100ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約110ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約120ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約130ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約140ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約150ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約160ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約170ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約180ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約190ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約200ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約250ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約300ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約350ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約400ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約450ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約500ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約600ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約700ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約800ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約900ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約1000ヌクレオチド長であり、ここで「約」という語の内容は参照する長さのプラス又はマイナス10%のヌクレオチド配列長を指すことを意味する。本発明の核酸断片はマウスのStra6の天然コード化配列の断片と異なる。好ましい実施態様ではヌクレオチド配列断片はFig.1(配列番号:1)に示されるヌクレオチド配列の、あるいはFig.6(配列番号:4)に示されるヌクレオチド配列の任意のコードか領域から誘導される。PRO10282ポリペプチドコード化ヌクレオチド配列の新規な断片は、多くの良く知られた配列アラインメントプログラムの任意のものを用いてPRO10282ポリペプチドコード化ヌクレオチド配列と他の公知のヌクレオチド配列とを整列させ、いずれのPROポリペプチドコード化ヌクレオチド配列断片が新規であるかを決定することによる、日常的な手法で同定してもよい。このようなPRO10282ポリペプチドコード化ヌクレオチド配列は全てここで考慮され、過度の実験なしく決定することができる。また、これらのヌクレオチド分子断片によってコードされるPRO10282ポリペプチド、好ましくは抗PRO10282抗体に対する結合部位を含むPRO10282ポリペプチド断片も考慮される。
【0014】
他の実施態様では、本発明は、PRO10282をコードするヌクレオチド配列を有するベクター又はその変異体を提供する。ベクターは以下に定義される任意の単離された核酸分子を含んでいてもよい。
この様なベクターを持つ宿主細胞もまた、提供される。一例としては、宿主細胞はCHO細胞、大腸菌、又は酵母でありうる。PRO10282ポリペプチドを生成する方法が更に提供され、PRO10282の発現に適した条件下で宿主細胞を培養し、細胞培地からPRO10282を回収することを含む。
他の実施態様では、本発明は、上記で特定された単離された核酸配列の任意のものにコードされる単離されたPRO10282ポリペプチドを提供する。
特定の態様では、本発明は単離された天然配列PRO10282ポリペプチド提供し、ある実施態様では、Fig.2(配列番号:2)の残基約1〜約667、又はFig.7(配列番号:5)の残基約1〜約658を含むアミノ酸配列を含む。
他の態様では、本発明は、Fig.2(配列番号:2)のアミノ酸残基約1〜約667の配列、又はFig.7(配列番号:5)のアミノ酸残基約1〜約658の配列に対して少なくとも約80%の配列同一性、好ましくは少なくとも約81%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約82%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約83%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約84%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約86%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約87%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約88%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約89%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約91%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約92%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約93%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約94%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約96%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約97%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約98%の配列同一性、そして、より好ましくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたPRO10282ポリペプチドに関する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、2000年1月11日にATCCにATCC寄託番号PTA-1181(DNA148380-2827)の下に寄託されたヒトタンパク質cDNAの配列をコードするアミノ酸配列、又は2000年2月23日にATCCにATCC寄託番号PTA-1405(DNA148389-2827-1)の下に寄託されたヒトタンパク質cDNAの配列をコードするアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列同一性、好ましくは少なくとも約81%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約82%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約83%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約84%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約86%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約87%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約88%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約89%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約91%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約92%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約93%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約94%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約96%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約97%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約98%の配列同一性、そして、より好ましくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたPRO10282ポリペプチドに関する。好ましい実施態様では、単離されたPRO10282ポリペプチドは、2000年1月11日にATCCにATCC寄託番号PTA-1181(DNA148380-2827)の下に寄託されたヒトタンパク質cDNA、又は2000年2月23日にATCCにATCC寄託番号PTA-1405(DNA148389-2827-1)の下に寄託されたヒトタンパク質cDNAによってコードされるアミノ酸配列を含む。
さらなる態様では、本発明は、Fig.2(配列番号:2)の残基約1〜約667のアミノ酸配列、又はFig.7(配列番号:5)の残基約1〜約658のアミノ酸配列と比較したときに、少なくとも約80%ポジティブ、好ましくは少なくとも約81%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約82%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約83%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約84%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約85%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約86%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約87%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約88%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約89%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約90%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約91%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約92%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約93%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約94%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約95%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約96%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約97%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約98%ポジティブ、そして、より好ましくは少なくとも約99%ポジティブのスコアとされるアミノ酸配列を含む単離されたPRO10282ポリペプチドに関する。
【0016】
本発明の他の態様は、膜貫通ドメイン欠失又は膜貫通ドメイン不活性の単離されたPRO10282ポリペプチドを提供する。同一のものを生成する方法もまた、ここで記載され、ここで、これらの方法はPRO10282ポリペプチドの発現に適した条件下で適切なコード化核酸分子を含むベクターを有する宿主細胞を培養し、細胞培地からPRO10282ポリペプチドを回収することを含む。
従って、本発明の一態様では、Fig.2(配列番号:2)、又はFig.7(配列番号:5)のアミノ酸約1〜約X(ここで、XはFig.2(配列番号:2)、又はFig.7(配列番号:5)の49〜59の任意のアミノ酸)に対して、少なくとも約80%の配列同一性、好ましくは少なくとも約81%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約82%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約83%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約84%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約86%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約87%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約88%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約89%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約91%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約92%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約93%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約94%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約96%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約97%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約98%の配列同一性、そして、より好ましくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離された可溶性PRO10282ポリペプチドに関する。好ましい態様では、単離された可溶性PRO10282ポリペプチドは、Fig.2(配列番号:2)、又はFig.7(配列番号:5)のアミノ酸約1〜約Xを含み、ここで、XはFig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)の49〜59の任意のアミノ酸である。
【0017】
また本発明の他の態様では、単離された可溶性PRO10282ポリペプチドは、Fig.2(配列番号:2)、又はFig.7(配列番号:5)の残基約1〜約Xのアミノ酸配列(ここで、XはFig.2(配列番号:2)、又はFig.7(配列番号:5)の49〜59の任意のアミノ酸)に比較したときに、少なくとも約80%ポジティブ、好ましくは少なくとも約81%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約82%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約83%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約84%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約85%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約86%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約87%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約88%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約89%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約90%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約91%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約92%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約93%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約94%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約95%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約96%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約97%ポジティブ、より好ましくは少なくとも約98%ポジティブ、そして、より好ましくは少なくとも約99%ポジティブのスコアとされるアミノ酸配列を含む。
また他の態様では、本発明は、Fig.2(配列番号:2)のアミノ酸残基約1〜約667、又はFig.7(配列番号:5)のアミノ酸残基約1〜約658の配列、又はその断片であって、生物学的活性のある、あるいは抗PRO10282に対する結合部位を提供するのに十分であるものを含む、単離されたPRO10282ポリペプチドに関し、ここで、生物学的活性を有する、あるいは抗PRO10282抗体に対する結合部位を提供するPRO10282ポリペプチドの同定は、当該分野でよく知られた技術を用いて日常的な方法で成されうる。ここでの断片は、マウスStra6ポリペプチドの断片以外である。好ましくは、PRO10282断片は、天然10282ポリペプチドの質的生物学的活性を有している。
【0018】
また更なる態様では、本発明は、(i)(a)Fig.2(配列番号:2)のアミノ酸残基約1〜約667 の配列を有するPRO10282ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)Fig.7(配列番号:5)のアミノ酸残基約1から約658の配列を有するPRO19578ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(c)(a)又は(b)のDNA分子の相補鎖と緊縮な条件下で試験DNA分子をハイブリダイズする、及び試験DNA分子が(a)、(b)又は(c)に対して少なくとも約80%の配列同一性、好ましくは少なくとも約81%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約82%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約83%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約84%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約86%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約87%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約88%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約89%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約91%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約92%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約93%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約94%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約96%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約97%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約98%の配列同一性、そして、より好ましくは少なくとも約99%の配列同一性を有する場合に、(ii)ポリペプチドの発現に適した条件下で試験DNA分子を含む宿主細胞を培養する、及び(iii)細胞培地からポリペプチドを回収することによって生成されるポリペプチドを提供する。
【0019】
他の実施態様では、本発明は、異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したPRO10282ポリペプチドを含んでなるキメラ分子を提供し、ここで、上記されるようなPRO10282ポリペプチドは任意のPRO10282、変異体又はその断片を含んでいてもよい。そのようなキメラ分子の例は、エピトープタグ配列又は免疫グロブリンのFc領域に融合したここに記載のPRO10282ポリペプチドを含む。
他の実施態様では、本発明は、上記のPRO10282ポリペプチドに特異的に結合する以下に定義する様な抗体を提供する。場合によっては、抗体はモノクローナル抗体、抗体断片又は一本鎖抗体である。
また他の実施態様では、本発明は以下に定義されるような天然PRO10282ポリペプチドのアゴニスと及びアンタゴニストに関する。特定の実施態様では、アゴニスト又はアンタゴニストは抗PRO10282抗体又は小分子である。
更なる実施態様では、本発明は、PRO10282ポリペプチドと候補分子を接触させ、及び前記PRO10282ポリペプチドを調節する生物学的活性を監視することを含む、PRO10282ポリペプチドに対するアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法に関する。好ましくは、PRO10282ポリペプチドは天然PRO10282ポリペプチドである。
また更なる実施態様では、本発明は、PRO10282ポリペプチド、又はここで記載されるようなPRO10282ポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニスト、又は抗PRO10282抗体を、担体と共に含む物質の組成物に関する。任意には、担体は製薬的に許容可能な担体である。
他の実施態様では、本発明はPRO10282ポリペプチド、又はここで記載されるようなそのアゴニスト又はアンタゴニスト、又は抗PRO10282抗体の使用、あるいはPRO10282ポリペプチド、又はここで記載されるようなそのアゴニスト又はアンタゴニスト、又は抗PRO10282抗体に応答性の症状の治療に利用される薬剤の調製に関する。
【0020】
更なる実施態様では、本発明はPRO10282ポリペプチドに特異的に結合する抗体に関する。好ましくは抗体は、PRO10282ポリペプチドを発現する細胞の死を誘導する。特に好ましい実施態様では、細胞は、同じ組織型の正常細胞に比較してPRO10282ポリペプチドを過剰発現する癌細胞である。抗体は、好ましくはヒト化又はヒトであり、抗体断片及び一本鎖抗体を含む。
他の実施態様では、本発明はPRO10282ポリペプチドに特異的に結合する抗体を含む物質の組成物に関する。
また他の態様では、本発明はPRO10282ポリペプチドに特異的に結合する抗体をコードする単離された核酸分子、該核酸を含むベクター、及び該ベクターを含む宿主細胞に関する。本発明はまた、抗PRO10282抗体を生成する方法に関する。
また更なる実施態様では、本発明は、抗PRO10282抗体(又は他のPRO10282のアンタゴニスト)に試料を暴露することによってPRO10282ポリペプチドの含有が推測される試料中の該ポリペプチドの存在を決定する、及び試料中のPRO10282ポリペプチドに対する該抗体(又はアンタゴニスト)の結合を決定する方法に関する。特に重要な実施態様では、試料は癌細胞由来である。
異なる実施態様では、本発明は、(a)哺乳動物から得られた組織の試験試料中の、及び(b)同組織型の既知の正常組織細胞の対照試料中の、PRO10282ポリペプチドをコードする遺伝子の発現のレベルを測定することを含む、哺乳動物の腫瘍を診断する方法に関する。試験試料中の対照試料よりも高い発現レベルは、試験組織細胞を得た哺乳動物に腫瘍が存在することを示唆する。
【0021】
本発明の他の方法によれば、(a)哺乳動物から得られた組織細胞の試験試料と抗PRO10282抗体を接触させ、及び(b)試験試料に該抗体とPRO10282ポリペプチドとの複合体の形成を測定することによって、哺乳動物で腫瘍を診断する。複合体の形成は哺乳動物中の腫瘍の存在を示唆する。
他の態様では、本発明は抗PRO10282抗体(又はPRO10282の様々なアンタゴニスト)と包装に適した担体を含む癌診断キットに関する。場合によっては、キットはまた、試料中のPRO10282ポリペプチドの存在を検出するために抗体又は他のアンタゴニストを用いるという説明書を含む。
他の態様では、本発明はPRO10282ポリペプチドの生物学的活性を阻害する有効量の薬剤にPRO10282ポリペプチドを発現する腫瘍細胞を暴露することにより腫瘍細胞の増殖を阻害する方法に関する。薬剤は、例えば抗PRO10282抗体又はPRO10282の他のアンタゴニストであり得る。腫瘍細胞は更に従来からある腫瘍の治療、例えば放射線治療、細胞毒性剤及び/又は化学療法剤での治療等を行ってもよい。
異なる態様では、本発明は、PRO10282ポリペプチドを発現する腫瘍細胞を該ポリペプチドの発現の阻害に有効な量の薬剤に暴露することにより腫瘍細胞の増殖を阻害し、腫瘍成長を抑制する方法に関する。
本発明は、更にPRO10282ポリペプチドの過剰発現により特徴付けされる腫瘍の発達、増殖、又は転移を抑制する又は遅らせる(減少させる)関連する方法に関する。このような治療は腫瘍細胞の病理を直接減少させても、あるいは腫瘍細胞を他の治療剤、例えば放射線及び/又は化学療法剤による治療に対する感受性をより高めても良い。本発明は、特に異常な又は別の転移、隣接細胞の通常の機能の妨害、又は異常なレベルでのサイトカイン又は他の分泌生成物の放出、炎症又は免疫反応の抑制又は悪化等を制御する方法を含む。
本発明は更に、容器、容器上のラベル、及び活性剤を含有する組成物含んでなる製造品に関し、ここで組成物は、組成物が腫瘍成長を阻止するのに有効であり、容器上のラベルには、腫瘍細胞でのPRO10282ポリペプチドの過剰発現により特徴付けられる症状の治療に効果的であることが示される。
【0022】
またさらに他の態様では、本発明は、候補化合物とPRO10282ポリペプチドを2つの成分を作用させるのに十分な条件と時間接触させ、PRO10282の生物学的又は免疫学的活性が抑制される可動化を測定することによって、PRO10282ポリペプチドの生物学的又は免疫学的活性を阻害する化合物を同定する方法に関する。
また、本発明は、次の工程:(a)細胞とスクリーニングされる候補化合物を、PRO10282ポリペプチドの存在下でPRO10282ポリペプチドにより通常誘発される細胞性反応の誘発に適した条件で接触させ、及び(b)試験化合物が効果的なアンタゴニストである場合に測定される前記細胞性反応の誘発を測定することを含む、PRO10282ポリペプチドの活性を抑制する化合物を同定する方法に関する。細胞性反応の誘発の欠乏は、試験化合物が効果的なアンタゴニストであることを示唆する。
本発明は更に、細胞を候補化合物と接触させ、発現が抑制されるかどうかを測定することによって、細胞発現のPRO10282ポリペプチドの発現を抑制する化合物を同定する方法に関する。
本発明は特に、ここでのスクリーニング方法により同定されるPRO10282アゴニスト又はアンタゴニストに関する。このようなアゴニスト又はアンタゴニストは、限定するものではないが、アゴニスト又はアンタゴニスト特性を有する抗PRO10282抗体、ポリペプチド、ペプチド、有機小分子を含む。
【0023】
(発明の詳細な説明)
ここで使用される際の「PRO10282ポリペプチド」、「PRO10282タンパク質」、「PRO10282」、「Stra6ポリペプチド」、「Stra6タンパク質」及び「Stra6」という用語は、直後に数値符号がある場合に種々のポリペプチドを指し、天然配列PRO10282(Stra6)ポリペプチド及びPRO10282(Stra6)変異体(ここで更に詳細に定義する)を含む。ここに記載されるPRO10282(Stra6)ポリペプチドは、ヒト組織型又は他の供給源といった種々の供給源から単離してもよく、組換え及び/又は合成方法によって調製してもよい。
「天然配列PRO10282」又は「天然配列Stra6」は、天然由来の対応するPRO10282ポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでいる。このような天然配列PRO10282(Stra6)ポリペプチドは、自然から単離することもできるし、組換え又は合成手段により生産することもできる。「天然配列PRO10282」又は「天然配列Stra6」という用語には、特に、特定のPRO10282の自然に生じる切断又は分泌形態(例えば、細胞外ドメイン配列)、自然に生じる変異形態(例えば、選択的にスプライシングされた形態)及びそのポリペプチドの自然に生じる対立遺伝子変異体が含まれる。本発明の一実施態様では、天延配列PRO10282はFig.2(配列番号:2)のアミノ酸1〜667を含む成熟又は全長天然配列PRO10282である。本発明の他の実施態様において、天然配列PRO10282ポリペプチドは配列番号:5のアミノ酸1〜658を含む成熟又は全長PRO19578ポリペプチドであり、配列番号:2の天然配列PRO10282ポリペプチドの他のスプライシング形態であると考えられる。また、FIG.2(配列番号:2)及びFig.7、配列番号:5に記載されるPRO10282ポリペプチドは、アミノ酸位置1としてここで命名されるメチオニン残基で開始することが示されるが、Fig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)のアミノ酸位置1から上流又は下流にある他のメチオニン残基をPRO10282ポリペプチドの開始アミノ酸残基として用いることも考えられるし可能でもある。
PRO10282(Stra6)ポリペプチド「細胞外ドメイン」又は「ECD」は、膜貫通及び細胞質ドメインを実質的に有しないPRO10282(Stra6)ポリペプチドの形態を意味する。通常、PRO10282ポリペプチドECDは、それらの膜貫通及び/又は細胞質ドメインを1%未満、好ましくはそのようなドメインを0.5%未満しか持たない。本発明のPRO10282ポリペプチドについて同定された任意の膜貫通ドメインは、疎水性ドメインのその型を同定するために当該分野において日常的に使用される基準に従い同定されることが理解されるであろう。膜貫通ドメインの厳密な境界は変わり得るが、最初に同定されたドメインのいずれかの末端から約5アミノ酸を越えない可能性が高い。従って、PRO10282ポリペプチド細胞外ドメインは、アミノ酸1〜Xを含み、ここでXはFig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)のアミノ酸49〜59の任意のアミノ酸である。
【0024】
「PRO10282ポリペプチド変異体」又は「Stra6変異体ポリペプチド」とは、上記又は下記に定義されるように、(a)Fig.2(配列番号:2)に示されるPRO10282ポリペプチドの残基1〜667、又はFig.7(配列番号:5)の残基1〜658、(b)Fig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)の1〜X、ここでXはFig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)のアミノ酸49〜アミノ酸59の任意のアミノ酸である、又は(c)Fig.2(配列番号:2)、又はFig.7(配列番号:5)に示されるアミノ酸配列の他の特定の派生断片のアミノ酸配列と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する活性PRO10282(Stra6)ポリペプチドを意味する。このようなPRO10282(Stra6)ポリペプチド変異体には、例えば、全長天然アミノ酸配列のN-又はC-末端、並びにFig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)の配列において一又は複数のアミノ酸残基が付加、もしくは欠失されたPRO10282(Stra6)ポリペプチドが含まれる。通常、PRO12080ポリペプチド変異体は、(a)Fig.2(配列番号:2)に示されるPRO10282ポリペプチドの残基1〜667又はFig.7(配列番号:5)のPRO19578ポリペプチドの残基1〜658、(b)Fig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)の1〜X、ここでXはFig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)のアミノ酸49〜アミノ酸59の任意のアミノ酸である、又は(c)Fig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)に示されるアミノ酸配列の他の特定の派生断片と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは少なくとも約81%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約82%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約83%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約84%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約86%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約87%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約88%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約89%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約91%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約92%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約93%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約94%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約96%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約97%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、そして、より好ましくは少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有している。PRO10282変異体ポリペプチドは天然PRO10282ポリペプチド配列を包含しない。通常は、PRO10282変異体ポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長、より多くは少なくとも約20アミノ酸長、より多くは少なくとも約30アミノ酸長、より多くは少なくとも約40アミノ酸長、より多くは少なくとも約50アミノ酸長、より多くは少なくとも約60アミノ酸長、より多くは少なくとも約70アミノ酸長、より多くは少なくとも約80アミノ酸長、より多くは少なくとも約90アミノ酸長、より多くは少なくとも約100アミノ酸長、より多くは少なくとも約150アミノ酸長、より多くは少なくとも約200アミノ酸長、より多くは少なくとも約300アミノ酸長、又はそれ以上であり、Bouillet等, Mechanisms of Development 63, 173-186(1997)に記載されるようなマウスStra6配列の断片とは異なる。
【0025】
ここに定義されるPRO10282(Stra6)ポリペプチドに対してここで同定されている「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、PRO配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2プログラム用の完全なソースコードが以下のFig.4A−Qに与えられている配列比較プログラムALIGN-2を用いても得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作成され、以下の表1に示したソースコードは米国著作権庁, Washington D.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、South San Francisco, Californiaから好適に入手可能であり、また以下のFig.4A−Qに与えたソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX (登録商標)V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
【0026】
ここでの目的のためには、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対して或る程度の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2のA及びBのアラインメントによって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。この方法を用いた%アミノ酸配列同一性の計算の例として、表2Aと2Bは、「比較タンパク質」と称されるアミノ酸配列の「PRO」と称されるアミノ酸配列に対する%アミノ酸配列同一性の計算方法を示す。
特に断らない限り、ここで用いられる全ての%アミノ酸配列同一性値は、上記したようにしてALIGN-2配列比較コンピュータプログラムを用いて得られる。しかしながら、%アミノ酸配列同一性は、配列比較コンピュータプログラムNCBI-BLAST-2(Altschul等, Nucleic Acids Res., 25: 3389-3402 (1997))を用いて決定してもよい。NCBI-BLAST2配列比較プログラムは、http://ww.ncbi.nlm.nih.govからダウンロードできる。NCBI-BLAST2は幾つかの検索パラメータを使用し、それら検索パラメータの全ては初期値に設定され、例えば、unmask=可、鎖=全て、予測される発生=10、最小低複合長=15/5、マルチパスe-値=0.01、マルチパスの定数=25、最終ギャップアラインメントのドロップオフ=25、及びスコアリングマトリクス=BLOSUM62を含む。
【0027】
アミノ酸配列比較にNCBI-BLAST2が用いれれる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対して或る程度の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムNCBI-BLAST2のA及びBのアラインメントによって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。
【0028】
「PRO10282(Stra6)変異体ポリヌクレオチド」又は「PRO10282(Stra6)変異体核酸配列」とは、下記に定義されるように、活性PRO10282ポリペプチドをコードする核酸分子であり、(a)Fig.2(配列番号:2)に示されるPRO10282ポリペプチドの残基1〜667又はFig.7(配列番号:5)のPRO19578ポリペプチドの残基1〜658をコードする核酸配列、(b)Fig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)の1〜Xをコードする核酸配列、ここでXはFig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)のアミノ酸49〜アミノ酸59の任意のアミノ酸である、又は(c)Fig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)に示されるアミノ酸配列の他の特定の派生断片をコードする核酸配列と、少なくとも80%の配列同一性を有する。通常は、PRO10282変異体ポリヌクレオチドは、(a)Fig.2(配列番号:2)に示されるPRO10282ポリペプチドの残基1〜667又はFig.7(配列番号:5)のPRO19578ポリペプチドの残基1〜658をコードする核酸配列、(b)Fig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)の1〜Xをコードする核酸配列、ここでXはFig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)のアミノ酸49〜アミノ酸59の任意のアミノ酸である、又は(c)Fig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)に示されるアミノ酸配列の他の特定の派生断片をコードする核酸配列と、少なくとも約80%の核酸配列同一性、好ましくは少なくとも約81%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約82%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約83%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約84%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約85%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約86%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約87%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約88%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約89%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約91%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約92%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約93%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約94%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約96%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約97%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約98%の核酸配列同一性、そして、より好ましくは少なくとも約99%の核酸配列同一性を有している。変異体は、天然ヌクレオチド配列を含まない。
通常は、PRO10282(Stra6)変異体ポリヌクレオチドは、少なくとも約30ヌクレオチド長、より多くは少なくとも約60ヌクレオチド長、より多くは少なくとも約90ヌクレオチド長、より多くは少なくとも約120ヌクレオチド長、より多くは少なくとも約150ヌクレオチド長、より多くは少なくとも約180ヌクレオチド長、より多くは少なくとも約210ヌクレオチド長、より多くは少なくとも約240ヌクレオチド長、より多くは少なくとも約270ヌクレオチド長、より多くは少なくとも約300ヌクレオチド長、より多くは少なくとも約450ヌクレオチド長、より多くは少なくとも約600ヌクレオチド長、より多くは少なくとも約900ヌクレオチド長、又はそれ以上であり、特にBouillet等, Mechanisms of Development 63, 173-186(1997)に記載されるようなマウスStra6のヌクレオチド配列に含まれるポリヌクレオチドを除く。
【0029】
ここで同定されるPRO10282(Stra6)コード化核酸配列に対する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、PRO10282ポリペプチドコード化核酸配列のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の知る範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%核酸配列同一性値は、以下に記載するように、ALIGN-2プログラム用の完全なソースコードが表1に与えられている配列比較プログラムALIGN-2を用いて得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作成され、Fig.4A−Qに示したソースコードは米国著作権庁, Washington D.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2はジェネンテック社、South San Francisco, Californiaを通して公的に入手可能であり、またFig.4A−Qに与えたソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標) V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
【0030】
ここでの目的のためには、与えられた核酸配列Cの、与えられた核酸配列Dとの、又はそれに対する%核酸配列同一性(あるいは、与えられた核酸配列Dと、又はそれに対して或る程度の%核酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Cと言うこともできる)は次のように計算される:
分率W/Zの100倍
ここで、Wは配列アラインメントプログラムALIGN-2のC及びDのアラインメントによって同一であると一致したスコアのヌクレオチドの数であり、ZはDの全ヌクレオチド数である。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さと異なる場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。この方法を用いた%核酸配列同一性の計算の例として、Fig.3C−Dは、「比較DNA」と称される核酸配列の「PRO-DNA」と称される核酸配列に対する%核酸配列同一性の計算方法を示す。
特に断らない限りは、ここでの全ての%核酸配列同一性値は上記のようにALIGN-2配列比較コンピュータプログラムを用いて得られる。しかしながら、%核酸配列同一性は、配列比較プログラムNCBI-BLAST2(Altschul等, Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402 (1997))を用いて決定してもよい。NCBI-BLAST2配列比較プログラムは、http://ww.ncbi.nlm.nih.govからダウンロードできる。NCBI-BLAST2は幾つかの検索パラメータを使用し、それら検索パラメータの全ては初期値に設定され、例えば、unmask=可、鎖=全て、予測される発生=10、最小低複合長=15/5、マルチパスe-値=0.01、マルチパスの定数=25、最終ギャップアラインメントのドロップオフ=25、及びスコアリングマトリクス=BLOSUM62を含む。
【0031】
配列比較にNCBI-BLAST2が用いれれる状況では、与えられた核酸配列Cの、与えられた核酸配列Dとの、又はそれに対する%核酸配列同一性(あるいは、与えられた核酸配列Dと、又はそれに対して或る程度の%核酸配列同一性を持つ又は含む与えられた核酸配列Cと言うこともできる)は次のように計算される:
分率W/Zの100倍
ここで、Wは配列アラインメントプログラムNCBI-BLAST2のC及びDのアラインメントによって同一であると一致したスコアのヌクレオチドの数であり、ZはDの全ヌクレオチド数である。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さと異なる場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。
他の実施態様では、PRO10282(Stra6)変異体ポリペプチドヌクレオチドは、活性PROポリペプチドをコードし、好ましくは緊縮性ハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で、Fig.2(配列番号:2)又はFig.7(配列番号:5)に示す全長PRO10282ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションする核酸分子である。PRO10282変異体ポリペプチドは、PRO10282変異体ポリヌクレオチドにコードされるものであってもよい。
上記のように実施されるアミノ酸配列同一性比較の文脈における「ポジティブ(陽性)」という用語は、比較された配列において同一であるアミノ酸残基ばかりでなく特性を有するものも含む。対象とするアミノ酸残基に対してポジティブ値をスコアされるアミノ酸残基は、対象とするアミノ酸残基と同一であるか、又は対象とするアミノ酸残基の(下記の表6で特定するように)好ましい置換とされるものである。
ここでの目的のために、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%ポジティブ値(あるいは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対して或る程度の%ポジティブを持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2のA及びBのアラインメントによってポジティブであるとのスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%ポジティブは、BのAに対する%ポジティブとは異なることは理解されるであろう。
【0032】
「単離された」とは、ここで開示された種々のポリペプチドを記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。好ましくは、単離されたポリペプチドは、それに天然に付随する全ての成分を伴わない。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離されたポリペプチドには、PRO10282(Stra6)ポリペプチドの自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程により調製される。
PROポリペプチドをコードする「単離された」核酸分子は、同定され、PRO10282コード化核酸の天然源に通常付随している少なくとも1つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。好ましくは、単離された核酸は、それに天然に付随する全ての成分を伴わない。単離されたPRO10282コード化核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。ゆえに、単離された核酸分子は、天然の細胞中に存在するPRO10282コード化核酸分子とは区別される。しかし、PRO10282(Stra6)ポリペプチドをコードする単離された核酸分子は、例えば、核酸分子が天然細胞のものとは異なった染色体位置にあるPRO10282ポリペプチドを通常発現する細胞に含まれるPRO10282コード化核酸分子を含む。
【0033】
「コントロール配列」という表現は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレーター配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、例えば、単一の抗-PRO10282モノクローナル抗体(アゴニスト抗体を含む)、多エピトープ特異性を持つ抗-PRO10282抗体組成物、一本鎖の抗-PRO10282抗体、及び抗-PRO10282抗体の断片を包含している(下記参照)。ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団、すなわち、構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である集団から得られる抗体を称する。
【0034】
ハイブリダイゼーション反応の「緊縮性」は、当業者によって容易に決定され、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングのための温度が高くなり、プローブが短くなると温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは、一般的に、相補鎖がその融点に近いがそれより低い環境に存在する場合における変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション可能な配列との間の所望の相同性の程度が高くなると、使用できる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をより緊縮性にするが、低い温度は緊縮性を低下させる。さらに、緊縮性は塩濃度に逆比例する。ハイブリダイゼーション反応の緊縮性の更なる詳細及び説明は、Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照のこと。
ここで定義される「緊縮性条件」又は「高度の緊縮性条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温度、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃において50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いるもの;(3)42℃における50%ホルムアミド、5xSSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5xデンハート液、超音波処理サケ精子DNA(50g/ml)、0.1%SDS、及び10%のデキストラン硫酸と、42℃における0.2xSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中の洗浄及び55℃での50%ホルムアミド、次いで55℃におけるEDTAを含む0.1xSSCからなる高緊縮性洗浄を用いるものによって同定される。
「中程度の緊縮性条件」は、Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989に記載されているように同定され、上記の緊縮性より低い洗浄溶液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含む。中程度の緊縮性条件は、20%ホルムアミド、5xSSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハート液、10%デキストラン硫酸、及び20mg/mLの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中の37℃での終夜インキュベーション、次いで1xSSC中37−50℃でのフィルターの洗浄といった条件である。当業者であれば、プローブ長などの因子に適合させる必要に応じて、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかを認識するであろう。
【0035】
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」に融合したPRO10282ポリペプチドを含んでなるキメラポリペプチドを指す。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープ、又は幾つかの他の試薬によって同定できるエピトープを提供するに十分な数の残基を有しているが、その長さは対象とするPROポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20の残基)を有する。
「抗体」なる用語は、広義に使用され、特に、例えば単独の抗PRO10282(抗Stra6)モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、及び中和抗体を含む)、複数のエピトープに特異性を有する抗PRO10282抗体組成物、一本鎖抗PRO抗体、及び抗PRO10282抗体の断片(以下参照)を包含する。
ここで用いられる「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団、即ち、集団を構成する個々の抗体が少量で存在する自然に起こりうる突然変異以外は同一である集団から得られる抗体を意味する。
「抗体断片」は、未変性の抗体の一部、好ましくは未変性の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')
2、及びFv断片;ダイアボディ(diabody);直鎖状抗体(Zapata等, Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]);一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多重特異的抗体を含む。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれ、各々単一の抗原結合部位を持つ2つの同一な抗原結合断片、及び残りの「Fc」断片、その名称は容易に結晶化する能力を反映している、を生成する。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有するが、交差結合抗原であり得るF(ab')
2断片が生成される。
【0036】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、緊密に非共有的に結合した1つの重鎖と1つの軽鎖の二量体からなる。この配置では、V
H−V
L二量体の表面における抗原結合部位を決定するために各可変領域の3つのCDRが相互作用する。正確には、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原特異的な3つのCDRしか含まないFvの半分)でさえも抗原を認識し結合する能力を持つが、結合部位全体よりは親和性が低い。
また、Fab断片は軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含む。Fab断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端における数個の残基の付加によりFab断片と相違する。Fab'-SHは、ここにおいて、定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を持つFab'の記号である。F(ab')
2抗体断片は、元々、それらの間にヒンジシステインを持つFab'断片の対として生成された。抗体断片の他の化学的結合も知られている。
任意の種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる1つ又は2つの明らかに異なる型に分類できる。
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスに分けられる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらの幾つかは、更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分けられる。免疫グロブリンの異なるクラスに該当する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び3次元構造はよく知られている。
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を指し、その断片は同一のポリペプチド鎖(V
H−V
L)内で軽鎖可変ドメイン(V
L)に重鎖可変ドメイン(V
H)が結合している。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成を可能にするリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディーは、例えば、EP404097;WO93/11161;及びHollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:6444-6448 (1993)に更に詳細に記載されている。
【0037】
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から同定され分離され又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分とは、抗体の診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他の非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、抗体は、(1)ローリー(Lowry)法によって決定した場合95重量%以上の、最も好ましくは99重量%の抗体まで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに充分な程度まで、あるいは(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた還元又は非還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれるが、これは抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないからである。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域又は相補性決定領域(CDRs)と呼ばれる3つ又は4つののセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク(FR)領域と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、β-シート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、CDRにより連結されたβ-シート配置を主にとる4つ又5つのFR領域をそれぞれ含んでいる。各鎖のCDRは、FRにより近接して結合せしめられ、他の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, NIH Publ. No.91-3242, Vol.I, 647-669頁[1991]を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞障害性活性への抗体の関与を示す。
【0038】
ここで使用される場合、「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合性を生じる抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89-97(L3)及び重鎖可変ドメインの31−35(H1)、50−65(H2)及び95-102(H3);Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))又は「高頻度可変ループ」からの残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96-101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含んでなる。「フレームワーク」又は「FR」残基はここに定義した高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含有する特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')
2あるいは抗体の他の抗原結合性配列)である。大部分において、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、そのレシピエントの相補性決定領域(CDR)が、マウス、ラット、ヤギなどのヒト以外の種のCDR(ドナー抗体)に由来する所望の特異性、親和性及び容量を持つ残基で置換されている。ある場合は、ヒト免疫グロブリンのFvFR枠残基が対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、持ち込まれるCDR又はフレームワーク配列にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精密かつ最適化するために施される。一般にヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質上全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質上全てがヒト免疫グロブリン共通配列のものである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含有するであろう。また、最適なヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含有するであろう。さらなる詳細については、Jones等, Nature 321: 522 -525 (1986);Reichmann等, Nature 332: 323-329 (1988);Presta, Curr. Op. struct. Biol. 2: 593 -596 (1992)を参照のこと。ヒト化抗体は、抗体の抗原結合領域が、関心のある抗原でマカクザルを免疫化することにより生産された抗体から由来するプリマタイズしたPRIMATIZED(商品名)抗体を含む。
【0039】
ここで用いる「イムノアドヘシン」という用語は、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能を持つ異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性を付与した抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは抗体の抗原認識及び結合部位以外の所望の結合特異性を持つアミノ酸配列(即ち「異種」)と免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物である。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む近接アミノ酸配列である。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3、又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
ここで意図している「活性な」及び「活性」とは、天然又は天然発生のPRO10282ポリペプチドの生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するPRO10282ポリペプチドの形態を意味し、「生物学的」活性とは、天然又は天然発生のPRO10282ポリペプチドによって生ずる(阻害性又は刺激性の)生物学的機能であって、天然又は天然発生のPRO10282ポリペプチドが有する抗原性エピトープに対して抗体を生成する能力を除くものを意味し、「免疫学的」活性とは、天然又は天然発生のPRO10282ポリペプチドが有する抗原性エピトープに対して抗体を生成する能力を意味する。好ましい生物学的活性は、例えばレチノイン酸に対する反応において成長、発達又は分化の役割を含む。レチノイン酸に対して誘発されるマウスタンパク質、Stra6との近接した類似性に基づき、ここで開示されるPRO10282ポリペプチドは、例えば先に背腹節のパターン化に、後に軟骨内骨化の制御に重要な役割を果たしうる。他の生物学的活性は、腫瘍発達及び成長に関係している。
【0040】
「免疫学的活性」は、好ましくは「免疫学的交差反応性」であり、候補ポリペプチドが、この活性を持つPRO10282(Stra6)ポリペプチドの定性的生物学的活性を、周知の活性なPRO10282(Stra6)ポリペプチドに対して生じたポリクローナル抗血清と競合的に阻害できることを意味する。そのような抗血清は、例えばヤギ又はウサギに、完全フロイントアジュバント中の周知の活性類似物を皮下注射し、次いで不完全フロイント中で腹膜内又は皮下に追加免疫することにより従来の方法で調製される。免疫学的交差反応性は好ましくは「特異的」であり、これは同定される免疫学的交差反応性分子(例えば抗体)の対応するStra6ポリペプチドに対する結合親和性が、その分子の他の任意の知られた天然ポリペプチドに対する結合親和性より有意に高い(好ましくは少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約4倍、さらにより好ましくは少なくとも約8倍、最も好ましくは少なくとも約10倍高い)ことを意味する。
「アンタゴニスト」という用語は最も広い意味で用いられ、ここに開示する天然のPRO10282ポリペプチドの生物学的活性を十分に阻害、抑制、又は中和化する任意の分子を含む。「アゴニスト」という用語は最も広い意味で用いられ、ここに開示する天然のPRO10282ポリペプチドの生物学的活性に類似する任意の分子を含む。適したアゴニスト又はアンタゴニスト分子は特に、アゴニスト又はアンタゴニスト抗体又は抗体断片、天然のPRO10282ポリペプチドの断片又はアミノ酸配列変異体、ペプチド、有機小分子などを含む。PRO10282ポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法は、腫瘍細胞を候補アゴニスト又はアンタゴニスト分子に暴露し、PRO10282ポリペプチドに通常関連する一又は複数の生物学的活性において検出される変化を測定することを含みうる。
ここで用いられる「腫瘍」は、悪性又は良性に関わらず、全ての腫瘍形成細胞成長及び増殖、及び全ての前癌性及び癌性細胞及び組織を意味する。
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には制御されない細胞増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、腺癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより特定の例には、乳癌、前立腺癌、大腸癌、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、結腸直腸癌、子宮体癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝癌及び様々な種類の頭部及び頸部の癌が含まれる。
【0041】
「治療」とは、治療的処置及び予防的又は保護的手段の両方を指し、目的は病理症状又は疾患の阻止又は遅延(減少)である。治療が必要なものは、既に疾患に罹っているもの並びに膝下に罹りやすいもの又は疾患が防止されるべきものを含む。腫瘍(例えば、癌)治療では、治療薬は直接的に腫瘍細胞の病理を低下させてもよいし、又は腫瘍細胞を他の治療媒介物、例えば放射線及び/又は化学療法に対してより敏感にしてもよい。
癌の「病理」は、患者の良好な生存を危うくさせる全ての現象を含む。これは、限定されるものではないが、異常又は制御不能な細胞増殖、転移、隣接細胞の正常機能の阻害、サイトカイン又は他の分泌生成物の異常レベルでの放出、炎症又は免疫反応の抑制又は悪化などを含む。
「慢性」投与とは、初期の治療効果(活性)を長期間にわたって維持するようにするために、急性態様とは異なり連続的な態様での薬剤の投与を意味する。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ本質的に周期的になされる処理である。
治療の目的とされる「哺乳動物」は、哺乳類に分類される任意の動物を意味し、ヒト、家畜用及び農場用動物、動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
一又は複数のさらなる治療薬「と組み合わせて」の投与は、同時(一時)及び任意の順序での連続投与を含む。
ここで用いられる「担体」は製薬的に許容される担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、それらは、用いられる用量及び濃度でそれに暴露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液であることが多い。生理学的に許容される担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸バッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストラン等の単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の自己形成対イオン;及び/又はTWEEN(商品名)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商品名)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0042】
「標識」という語は、ここで用いられる場合、抗体に直接的又は間接的に結合して「標識化」抗体を生成する検出可能な化合物又は組成物を意味する。標識はそれ自身によって検出可能でもよく(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)、あるいは、酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物又は組成物の化学的変換を触媒してもよい。また標識は、毒素のような非検出可能な物質でもよい。
「固相」とは、本発明の抗体が接着できる非水性マトリクスを意味する。ここに包含される固相の例は、部分的又は全体的にガラス(例えば、孔の制御されたガラス)、ポリサッカリド(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンで形成されたものを含む。或る実施態様では、前後関係に応じて、固相はアッセイ用プレートのウェル;その他では精製用カラム(例えばアフィニティークロマトグラフィーカラム)を含むことができる。また、この用語は、米国特許第4,275,149号に記載されたような別々の粒子の不連続な固体相も含む。
「リポソーム」は、哺乳動物への薬物(PRO10282ポリペプチド又はそれらに対する抗体など)の送達に有用な、脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤を含む種々の型の小さな小胞である。リポソームの成分は、通常は生物学的メンバーの脂質配列に類似した2層構造に配列される。
「小分子」は、ここで約500ダルトン未満の分子量を有すると定義される。
「遺伝子増幅」及び「遺伝子重複」なる言葉は、互換可能に使用され、遺伝子又は遺伝子断片に複製が特定の細胞又は細胞株で形成されることによる方法に関する。複製された領域(増幅されたDNAの伸長)はしばしば「単位複製配列」と称される。通常、生成されたメッセンジャーRNA(mRNA)の量、つまり遺伝子発現のレベルは、また、特定の遺伝子発現からなる複製の数の割合で増加する。
ここで用いられる「細胞障害薬剤」なる用語は、細胞の機能を阻害又は抑制する及び/又は細胞破壊を生ずる物質を意味する。この用語は、放射性同位体(例えば、I
131、I
125、Y
90及びRe
186)、化学療法剤、及び細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素的活性毒素といった毒素、又はその断片を含むとされる。
【0043】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例は、アドリアマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara−C」)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン、タキソイド、例えばパクリタキセル(Taxol, Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)及びドキセタキセル(Taxotere, Rhone-Poulenc Rorer, Antony, rance)、トキソテール、メトトレキセート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イフォスファミド、マイトマイシンC、マイトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノマイシン、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラマイシン(米国特許第4,675,187号参照)、メルファラン、及び他の関連するナイトロジェンマスタードを含む。また、この定義に含まれるのは、タモキシフェン及びオナプリストンなどの腫瘍へのホルモン作用を調節又は阻害するように作用するホルモン様薬剤である。
ここで用いられる際の「増殖阻害剤」は、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞の増殖を、インビトロ又はインビボで阻害する化合物又は組成物を意味する。即ち、増殖阻害剤は、S期でそのような遺伝子を過剰発現する細胞の割合を有意に減少させるものである。増殖阻害剤の例は、細胞周期を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール、及びトポII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。G1停止させるこれらの薬剤は、S期停止にも溢流し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-Cである。さらなる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn及びIsrael, 編, Chapter 1, 表題「Cell cycle reguration, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakami等, (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特にp13に見出すことができる。
「ドキソルビシン」はアントラサイクリン抗生物質である。ドキソルビシンの完全な化学名は(8S-cis)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-lyxo-ヘキサピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオンである。
【0044】
「サイトカイン」なる用語は、1つの細胞集団から放出され、他の細胞に細胞間メディエータとして作用するタンパク質の一般用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインに含まれるのは、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インシュリン;プロインシュリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質、例えば濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体化ホルモン(LH);肝増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミューラー阻害因子;マウス生殖腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-β等の神経成長因子;血小板増殖因子;TGF-α及びTGF-β等のトランスフォーミング増殖因子;インスリン様成長因子-I及びII;エリスロポエチン(EPO);骨誘発因子;インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSFs)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);及び顆粒球-CSF(G-CSF);インターロイキン(ILs)、例えばIL-1、IL-1a、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12;腫瘍壊死因子、例えばTNF-α及びTNF-β;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。ここで用いられる際、用語サイトカインは、天然供給源から、又は組換え細胞培養からのタンパク質を含み、天然配列サイトカインの生物学的な活性等価物である。
この出願で用いられる用語「プロドラッグ」は、親薬剤に比較して腫瘍細胞に対する細胞毒性が低く、酵素的に活性化又はより活性な親形態に変換される製薬的活性物質の前駆体又は誘導体形態を意味する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, pp. 375-382, 615th Meeting, Belfast (1986),及びStella 等, 「Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」、Directed Drug Delivery, Borchardt等(編), pp.147--267, Human Press (1985)参照。本発明のプロドラッグは、これらに限られないが、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸変性プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグを含み、限定するものではないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害性薬剤の例には、前記の化学療法剤が含まれる。
【0045】
ここに開示されるポリペプチド又はそのアンタゴニストの「有効量」とは、腫瘍性細胞増殖の阻害に関しては、標的細胞の増殖を或る程度阻害できる量である。この用語は、標的細胞の増殖阻害、細胞分裂停止及び/又は細胞障害効果及び/又はアポトーシスを誘導することのできる量を含む。腫瘍性細胞増殖の阻害の目的のためのPRO10282(PRO19578)ポリペプチド又はそのアンタゴニストの「有効量」は、経験的に日常的手法で決定できる。
「治療的有効量」は、腫瘍の治療に関しては、次の効果:(1)遅延化及び完全な成長停止を含む、腫瘍成長の或る程度の阻害;(2)腫瘍細胞数の減少;(3)腫瘍サイズの縮小;(4)腫瘍細胞の末梢器官への浸潤の阻害(即ち、減少、遅延化又は完全な停止);(5)転移の阻害(即ち、減少、遅延化又は完全な停止);(6)抗腫瘍免疫反応の促進、これは、腫瘍の退行又は拒絶をもたらしてもよいが、必ずしも必要ではない;及び/又は(7)疾患に伴う徴候の1つ又は複数の或る程度の軽減の1つ又は複数を誘起することのできる量を意味する。腫瘍の治療の目的のためのPRO10282ポリペプチドアンタゴニストの「治療的有効量」は、経験的に日常的手法で決定できる。
PRO10282アンタゴニストの「増殖阻害量」は、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞の増殖をインビトロ又はインビボで阻害できる量である。腫瘍性細胞増殖の阻害の目的のためのPRO10282アンタゴニストの「増殖阻害量」は、経験的に日常的手法で決定できる。
PRO10282アンタゴニストの「細胞障害量」は、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞をインビトロ又はインビボで破壊できる量である。腫瘍性細胞増殖の阻害の目的のためのPRO10282アンタゴニストの「細胞毒性量」は、経験的に日常的手法で決定できる。
「アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド」又は「アンチセンスオリゴヌクレオチド」(互換的に使用さされる用語である)は配列特異的な方法で標的遺伝子の転移及び/又は翻訳を抑制することができる核酸分子と定義される。「アンチセンス」なる用語は、核酸が標的遺伝子のコード化(「センス」)遺伝子配列に相補的であることを意味する。アンチセンスオリゴヌクレオチドはワトソン-クリック塩基対から新生mRNAに対して逆方向にハイブリダイズする。標的mRNA鋳型の結合により、アンチセンスオリゴヌクレオチドはコード化タンパク質の最終的な翻訳を阻害する。該用語は特に、元々ある自己スプライシング活性を有する配列の付加による標的RNAの触媒切断を誘発することを示す「リボゾーム」と呼ばれるアンチセンス物質を含む(Warzocha及びWotowiec、"Antisense strategy" biological utility and prospects int he treatment of hematological malignancies."、Leuk. Lymphoma、24: 267-281 [1997])。
【0046】
II. 本発明の組成物と方法
A.全長天然配列ヒトPRO10282及びPRO19578(Stra6)ポリペプチド
本発明は、本出願で天然配列ヒトPRO10282(又はUNQ3126)及びPRO19578ポリペプチドと称されるポリペプチドをコードする新規に同定され単離された核酸配列を提供する。特に下記の実施例でさらに詳細に開示するように、種々の天然配列ヒトPRO10282及びPRO19578ポリペプチドをコードするcDNAが同定され単離された。別々の発現ラウンドで生成されたタンパク質には異なるPRO番号が与えられるが、UNQ番号は任意の与えられたDNA及びコード化タンパク質に独特であり、変わることはないことを記しておく。しかしながら、単純化のために、本明細書において、DNA148380−2827にコードされるタンパク質並びに上記のPROの定義に含まれるさらなる天然相同体及び変異体は、それらの起源又は調製形式に関わらず、「PRO10282」として呼称する。DNA148380−2827にコードされるポリペプチドは「PRO10282」の天然の変異体であり、特に「PRO19578」と称される。
下記の実施例に開示するように、種々のcDNAクローンがDNA148380−2827及びDNA148389−2827-1としてATCCに寄託されている。これらのクローンの事実上のヌクレオチド配列は、この分野で日常的な方法を用いて寄託されたクローンを配列決定することにより容易に決定することができる。予測されるアミノ酸配列は、ヌクレオチド配列から常套的技量を用いて決定できる。ここに記載したPRO10282及びPRO19578ポリペプチド及びコード化核酸について、本出願人は、現時点で入手可能な配列情報と最も良く一致するリーディングフレームであると考えられるものを同定した。
ALIGN-2配列アラインメントコンピュータープログラムを用いて、全長天然配列PRO10282(Fig.2及び配列番号:2に示される)はStra6、レチノイン酸(AFO62476)に応じて誘発されるマウスタンパク質と特定のアミノ酸配列同一性を有す。従って、現在、本出願で開示されるPRO10282ポリペプチドは、Stra6タンパク質ファミリーの新規な同定されたメンバーであり、タンパク質ファミリーの一又は複数の生物学的及び/又は免疫学的活性又は特性を持ちうると考えられている。PRO19578は、現在は天然全長ヒトPRO10282の別のスプライスされた変異体であると考えられ、天然ヒトPRO10282アミノ酸配列の位置89−97で9アミノ酸(SPVDFLAGD)が欠失し、PRO10282の位置527に相当する位置518でMet(M)に代わってIle(I)を含んでいる。
【0047】
B.PRO10282(Stra6)ポリペプチド変異体
2つの特定の天然配列ヒトStra6ポリペプチド(天然配列ヒトPRO10282及びPRO19578)が開示される。上記されるように、PRO19578は、天然配列ヒトPRO10282の別のスプライスされた天然変異体であると考えられ、よって「PRO10282変異体」である。ここに記載した全長天然配列PRO10282及びPRO19578ポリペプチドに加えて、PRO10282及びPRO19578変異体も調製できると考えられる。PRO10282及びPRO19578変異体は、PRO10282又はPRO19578DNAに適当なヌクレオチド変化を導入することにより、及び/又は所望のPRO10282変異体ポリペプチドを合成することにより調製できる。当業者は、グリコシル化部位の数又は位置の変化あるいは膜固着特性の変化などのアミノ酸変化がPRO10282又はPRO19578の翻訳後プロセスを変えうると認識するであろう。
天然全長配列PRO10282、PRO19578又はここに記載したPRO10282又はPRO19578の種々のドメインにおける変異は、例えば、米国特許第5,364,934号に記載されている保存的及び非保存的変異についての技術及び指針の任意のものを用いてなすことができる。変異は、結果として天然配列PRO10282又はPRO19578と比較してPRO10282又はPRO19578のアミノ酸配列が変化するPRO10282又はPRO19578をコードする一又は複数のコドンの置換、欠失又は挿入であってよい。場合によっては、変異は少なくとも1つのアミノ酸のPRO10282又はPRO19578の一又は複数のドメインの任意の他のアミノ酸による置換である。いずれのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を与えることなく挿入、置換又は欠失されるかの指針は、PRO10282又はPRO19578の配列を相同性の知られたタンパク質分子の配列と比較し、相同性の高い領域内でなされるアミノ酸配列変化の数を最小にすることによって見出される。アミノ酸置換は、一のアミノ酸の類似した構造及び/又は化学特性を持つ他のアミノ酸での置換、例えばロイシンのセリンでの置換、即ち保存的アミノ酸置換の結果とすることができる。挿入又は欠失は、場合によっては1から5のアミノ酸の範囲内とすることができる。許容される変異は、配列においてアミノ酸の挿入、欠失又は置換を系統的に作成し、得られた変異体を全長又は成熟天然タンパク質によって提示された活性について試験することにより決定される。
PRO10282ポリペプチド断片がここに提供される。このような断片は、例えば、全長天然タンパク質と比較した際に、N-末端又はC-末端で切断されてもよく、又は内部残基を欠いていてもよい。或る種の断片は、PRO10282又はPRO19578ポリペプチドの所望の生物学的活性に必須ではないアミノ酸残基を欠いている。
PRO10282又はPRO19578断片は、多くの従来技術の任意のものによって調製してよい。所望のペプチド断片は化学合成してもよい。代替的方法は、酵素的消化、例えば特定のアミノ酸残基によって決定される部位のタンパク質を切断することが知られた酵素でタンパク質を処理することにより、あるいは適当な制限酵素でDNAを消化して所望の断片を単離することによるPRO10282又はPRO19578断片の生成を含む。さらに他の好適な技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、所望のポリペプチド断片をコードするDNA断片を単離し増幅することを含む。DNA断片の所望の末端を決定するオリゴヌクレオチドは、PCRの5’及び3’プライマーで用いられる。好ましくは、PRO10282又はPRO19578ポリペプチド断片は、Fig.2(配列番号:2)に示した天然PRO10282又はPRO19578ポリペプチドと少なくとも1つの生物学的及び/又は免疫学的活性を共有する。
【0048】
特別の実施態様では、関心ある保存的置換を、好ましい置換と題して表1に示す。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表1に例示的置換と示した又は以下に参照としてアミノ酸分類でさらに記載するように、より実質的な変化が導入され生成物がスクリーニングされる。
表1
元の残基 例示的置換 好ましい置換
Ala(A) val; leu; ile val
Arg(R) lys; gln; asn lys
Asn(N) gln; his; lys; arg gln
Asp(D) glu glu
Cys(C) ser ser
Gln(Q) asn asn
Glu(E) asp asp
Gly(G) pro; ala ala
His(H) asn; gln; lys; arg arg
Ile(I) leu; val; met; ala; phe;ノルロイシン leu
Leu(L) ノルロイシン; ile; val;met; ala; phe ile
Lys(K) arg; gln; asn arg
Met(M) leu; phe; ile leu
Phe(F) leu; val; ile; ala; tyr leu
Pro(P) ala ala
Ser(S) thr thr
Thr(T) ser ser
Trp(W) tyr; phe tyr
Tyr(Y) trp; phe; thr; ser phe
Val(V) ile; leu; met; phe;ala; ノルロイシン leu
【0049】
PRO10282ポリペプチドの機能又は免疫学的同一性の実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又はヘリックス配置、(b)標的部位における分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持しながら、それらの効果において実質的に異なる置換基を選択することにより達成される。自然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいてグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン, met, ala, val, leu, ile;
(2)中性の親水性:cys, ser, thr;
(3)酸性:asp, glu;
(4)塩基性:asn, gln, his, lys, arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly, pro; 及び
(6)芳香族:trp, tyr, phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。また、そのように置換された残基は、保存的置換部位、もしくは好ましくは残された(非保存)部位に導入されうる。
変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャンニング、及びPCR突然変異誘発等のこの分野で知られた方法を用いてなすことができる。部位特異的突然変異誘発[Carter等, Nucl. Acids Res., 13: 4331 (1986); Zoller等, Nucl. Acids Res., 10: 6487 (1987)]、カセット突然変異誘発[Wells等, Gene, 34: 315 (1985)]、制限的選択突然変異誘発[Wells等, Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317: 415 (1986)]、又は他の知られた技術をクローニングしたDNAに実施してPRO10282変異体DNAを生成することもできる。
また、隣接配列に沿って一又は複数のアミノ酸を同定するのにスキャンニングアミノ酸分析を用いることができる。好ましいスキャンニングアミノ酸は比較的小さく、中性のアミノ酸である。そのようなアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインを含む。アラニンは、ベータ炭素を越える側鎖を排除し変異体の主鎖構造を変化させにくいので、この群の中で典型的に好ましいスキャンニングアミノ酸である[Cunningham及びWells, Science, 244: 1081-1085 (1989)]。また、アラニンは最もありふれたアミノ酸であるため典型的には好ましい。さらに、それは埋もれた及び露出した位置の両方に頻繁に見られることが多い[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150: 1 (1976)]。アラニン置換が十分な量の変異体を生じない場合は、アイソテリック(isoteric)アミノ酸を用いることができる。
【0050】
C.PRO10282(Stra6)の修飾
PRO10282及びPRO19578の共有結合的修飾は、PRO10578を含み、本発明の範囲内に含まれる。共有結合的修飾の一型は、PRO10282ポリペプチドの標的とするアミノ酸残基を、PRO10282の選択された側鎖又はN-又はC-末端残基と反応できる有機誘導体化試薬と反応させることを含む。二官能性試薬での誘導体化が、例えばPRO10282を水不溶性支持体マトリクスあるいは抗PRO10282抗体の精製方法、及びその逆で用いるための表面に架橋させるのに有用である。通常用いられる架橋剤は、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸、3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等のジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタン等の二官能性マレイミド、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミダート等の試薬を含む。
他の修飾は、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチルへの脱アミノ化、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル又はスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86 (1983)]、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
【0051】
本発明の範囲内に含まれるPRO10282ポリペプチドの共有結合的修飾の他の型は、ポリペプチドの天然グリコシル化パターンの変更を含む。天然配列PRO10282及びPRO19578ポリペプチドはそれらのアミノ酸配列の位置8-12でN-結合グリコシル化部位を含む。「天然グリコシル化パターンの変更」とは、この目的で意図されるのは、天然配列PRO10282又はPRO19578に見られる一又は複数の炭水化物部分の欠失(潜在するグリコシル化部位の除去又は化学的及び/又は酵素的手段によるグリコシル化の削除のいずれかによる)、及び/又は天然配列PRO10282又はPRO19578に存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。さらに、この語句は、存在する種々の炭水化物部分の性質及び特性の変化を含む、天然タンパク質のグリコシル化における定性的変化を含む。
天然又は変異体PRO10282ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加はアミノ酸配列の変更を伴ってもよい。この変更は、例えば、一又は複数のセリン又はスレオニン残基の天然配列PRO10282(O-結合グリコシル化部位)への付加、又は置換によってなされてもよい。PRO10282アミノ酸配列は、場合によっては、DNAレベルでの変化、特に、PRO10282ポリペプチドをコードするDNAを予め選択された塩基において変異させ、所望のアミノ酸に翻訳されるコドンを生成させることを通して変更されてもよい。
PRO10282ポリペプチド上に炭水化物部分の数を増加させる他の手段は、グリコシドのポリペプチドへの化学的又は酵素的結合による。このような方法は、この技術分野において、例えば、1987年9月11日に発行されたWO 87/05330、及びAplin及びWriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)に記載されている。
PRO10282ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的に、あるいはグルコシル化の標的として提示されたアミノ酸残基をコードするコドンの変異的置換によってなすことができる。化学的脱グリコシル化技術は、この分野で知られており、例えば、Hakimuddin等, Arch. Biochem. Biophys., 259:52 (1987)により、及びEdge等, Anal. Biochem., 118: 131 (1981)により記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura等, Meth. Enzymol. 138:350 (1987)に記載されているように、種々のエンド-及びエキソ-グリコシダーゼを用いることにより達成される。
【0052】
PRO10282の共有結合的修飾の他の型は、PRO10282ポリぺプチドの、種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンの一つへの、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号又は同第4,179,337号に記載された方法での結合を含む。
また、本発明のPROポリペプチドは、他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したPROを含むキメラ分子を形成する方法で修飾されてもよい。
一実施態様では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとPRO10282との融合を含む。エピトープタグは、一般的にはPRO10282のアミノ又はカルボキシル末端に位置する。このようなPRO10282のエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティー精製によってPRO10282を容易に精製できるようにする。種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。例としては、ポリ-ヒスチジン(poly-his)又はポリ-ヒスチジン-グリシン(poly-his-gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Field等, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hopp等, BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinner等, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)]を含む。
それに代わる実施態様では、キメラ分子はPRO10282の免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含んでもよい。キメラ分子の二価形態(「イムノアドヘシン」とも呼ばれる)については、そのような融合体はIgG1分子のFc領域であり得る。Ig融合体は、好ましくはIg分子内の少なくとも1つの可変領域に換えてPRO10282ポリペプチドの可溶化(膜貫通ドメイン欠失又は不活性化)形態を含む。特に好ましい実施態様では、免疫グロブリン融合体は、IgG1分子のヒンジ、CH2及びCH3、又はヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合体の製造については、1995年6月27日発行の米国特許第5,428,130号を参照のこと。
【0053】
D.PRO10282(Stra6)の調製
以下の記述は、主として、PRO10282(Stra6)核酸を含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養することによりPRO19578を生産する方法に関する。もちろん、当該分野においてよく知られている他の方法を用いてPRO10282を調製することができると考えられる。例えば、PRO10282配列、又はその一部は、固相技術を用いた直接ペプチド合成によって生産してもよい[例えば、Stewart等, Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., San Francisco, CA (1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。手動技術又は自動によるインビトロタンパク質合成を行ってもよい。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ・ペプチド合成機(Foster City, CA)を用いて、製造者の指示により実施してもよい。PRO10282の種々の部分は別々に化学的に合成され、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて全長PRO10282を生産してもよい。
【0054】
1.PRO10282(Stra6)をコードするDNAの単離
PRO10282をコードするDNAは、PRO10282mRNAを保有していてそれを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリーから得ることができる。従って、ヒトPRO10282DNAは、実施例に記載されるように、ヒトの組織から調製されたcDNAライブラリーから簡便に得ることができる。またPRO10282コード化遺伝子は、ゲノムライブラリー、オリゴヌクレオチド合成、又は他の既知の合成方法(例えば、自動化核酸合成)により得ることもできる。
ライブラリーは、関心ある遺伝子あるいはそれによりコードされるタンパク質を同定するために設計されたプローブ(例えば、PRO10282に対する抗体又は少なくとも約20-80塩基のオリゴヌクレオチド)によってスクリーニングできる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリーのスクリーニングは、例えばSambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。PRO10282をコードする遺伝子を単離する他の手段はPCR法を使用するものである[Sambrook等,上掲;Dieffenbach等, PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
下記の実施例には、cDNAライブラリーのスクリーニング技術を記載している。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、充分な長さで、疑陽性が最小化されるよう充分に明瞭でなければならない。オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされるライブラリー内のDNAとのハイブリダイゼーション時に検出可能であるように標識されていることが好ましい。標識化の方法は当該分野において良く知られており、
32P標識されたATPのような放射線標識、ビオチン化あるいは酵素標識の使用が含まれる。中程度の緊縮性及び高度の緊縮性を含むハイブリダイゼーション条件は、上掲のSambrook等に与えられている。
このようなライブラリースクリーニング法において同定された配列は、Genbank等の公共データベース又は他の個人の配列データベースに寄託され公衆に利用可能とされている周知の他の配列と比較及びアラインメントすることができる。分子の定められた領域内又は全長配列に渡っての(アミノ酸又はヌクレオチドレベルのいずれかでの)配列同一性は、この分野で知られた、そしてここに記載した方法を用いて決定することができる。
タンパク質コード化配列を有する核酸は、初めてここで開示された推定アミノ酸配列を使用し、また必要ならば、cDNAに逆転写されなかったmRNAの生成中間体及び先駆物質を検出する上掲のSambrook等に記述されているような従来のプライマー伸長法を使用し、選択されたcDNA又はゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより得られる。
【0055】
2.宿主細胞の選択及び形質転換
宿主細胞を、ここに記載したPRO10282生産のための発現又はクローニングベクターで形質移入又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された従来の栄養培地で培養する。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)及びSambrook等, 上掲に見出すことができる。
真核生物細胞形質移入及び原核生物細胞形質転換の方法、例えば、CaCl
2、CaPO
4、リポソーム媒介及びエレクトロポレーションは、通常、当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。上掲のSambrook等に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、一般的に原核生物に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shaw等, Gene, 23:315 (1983)及び1989年6月29日公開のWO 89/05859に記載されているように、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法を使用することができる。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な態様は米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母菌中への形質転換は、典型的には、Van Solingen等, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiao等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いられる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansour等, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0056】
ここのベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母菌、又は高等真核生物細胞である。適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えば大腸菌のような腸内細菌科を含む。種々の大腸菌株が公衆に利用可能であり、例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC31,446);大腸菌X1776(ATCC31,537);大腸菌株W3110(ATCC27,325)及びK5772(ATCC53,635)である。他の適切な原核動物宿主細胞は、大腸菌、例えば、E. coli、エンテロバクター、エルビニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア、例えば、セラチアマルセサンス(Serratia marcescans) 、及び赤痢菌、並びに桿菌、例えばバシリスブチリス(B. subtilis)及びバシリリチェニフォルミス(B. licheniformis)(例えば、1989年4月12日公開のDD 266,710に記載されたバシリリチェニフォルミス41P)、シュードモナス、例えば緑膿筋及びストレプトマイセスなどの腸内細菌科を含む。これらの例は限定ではなく例示である。株W3110は、組換えDNA生産発行のための共通の宿主株であるので一つの特に好ましい宿主又は親宿主である。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、株W3110は、宿主に外来のタンパク質をコードする遺伝子における遺伝子変異に影響を与えるように修飾してもよく、そのような宿主の例としては、完全な遺伝子型tonAを有する大腸菌W3110株1A2;完全な遺伝子型tonA ptr3を有する大腸菌W3110株9E4;完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (argF-lac)169 degP ompT kan
rを有する大腸菌W3110株27C7(ATCC 55,244);完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (argF-lac)169 degP ompT rbs7 ilvG kan
rを有する大腸菌W3110株37D6;非カナマイシン耐性degP欠失変異を持つ37D6株である大腸菌W3110株40B4;及び1990年8月7日発行の米国特許第4,946,783号に開示された変異周辺質プロテアーゼを有する大腸菌株を含む。あるいは、クローニングのインビトロ法、例えばPCR又は他の核酸ポリメラーゼ反応が好ましい。
【0057】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、PRO10282コード化ベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシアは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。他に、シゾサッカロミセス・プロンブ(Schizosaccharomyces pombe)(Beach及びNurse, Nature, 290: 140 [1981]; 1985年5月2日発行のEP 139,383);クルベロミセスホスツ(Kluyveromyces hosts)(米国特許第4,943,529号; Fleer等, Bio/Technology, 9: 968-975 (1991))、例えばケーラクチス(K. lactis)(MW98-8C, CBS683, CBS4574; Louvencourt等, J. Bacteriol. 154(2):737-1742 [1983])、ケーフラギリス(K. fragilis)(ATCC 12,424)、ケーブルガリクス(K. bulgaricus)(ATCC 16,045)、ケーウィケラミイ(K. wickeramii)(ATCC 24,178)、ケーワルチイ(K. waltii)(ATCC 56,500)、ケードロソフィラルム(K. drosophilarum)(ATCC 36,906; Van den Berg等, Bio/Technology, 8: 135 (1990))、ケーテモトレランス(K. thermotolerans)及びケーマルキシアナス(K. marxianus);ヤロウィア(yarrowia)(EP 402,226);ピッチャパストリス(Pichia pastoris)(EP 183,070; Sreekrishna等, J. Basic Microbiol, 28: 265-278 [1988]);カンジダ;トリコデルマレーシア(reesia)(EP 244,234);アカパンカビ(Case等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76: 5259-5263 [1979]);シュワニオマイセス(schwanniomyces)、例えばシュワニオマイセスオクシデンタリス(occidentalis)(1990年10月31日発行のEP 394,538);及び糸状真菌、例えば、ニューロスポラ、ペニシリウム、トリポクラジウム(Tolypocladium)(1991年1月10日公開のWO 91/00357);及びコウジ菌、例えば偽巣性コウジ菌(Ballance等, Biochem. Biophys. Res. Commun., 112: 284-289 [1983]; Tilburn等, Gene, 26: 205-221 [1983]; Yelton等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 1470-1474 [1984])及びクロカビ(Kelly及びHynes, EMBO J., 4: 475-479 [1985])が含まれる。ここではメチロトロピック(Methylotropic)酵母が適切であり、これらに限られないが、ハンセヌラ(Hansenula)、カンジダ、クロエケラ(Kloeckera)、ピチア(Pichia)、サッカロミセス、トルロプシス(Torulopsis)、及びロドトルラ(Rhodotorula)からなる属から選択されるメタノールで増殖可能な酵母を含む。この酵母の分類の例示である特定の種のリストは、C. Anthony, The Biochemistry of Methylotrophs, 269 (1982)に見出される。
グリコシル化PRO10282の発現に適切な宿主細胞は多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、ショウジョウバエS2及びスポドプテラSf9等の昆虫細胞並びに植物細胞が含まれる。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びCOS細胞を含む。より特定の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub及びChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL 75); ヒト肝細胞 (Hep G2, HB 8065); 及びマウス乳房腫瘍細胞 (MMT 060562, ATCC CCL51)を含む。適切な宿主細胞の選択は、この分野の技術範囲内にあると考えられる。
【0058】
3.複製可能なベクターの選択及び使用
PRO10282をコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子又はファージの形態とすることができる。適切な核酸配列が、種々の手法によってベクターに挿入される。一般に、DNAはこの分野で周知の技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、一又は複数のシグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。これらの成分の一又は複数を含む適当なベクターの生成には、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を用いる。
PRO10282は直接的に組換え手法によって生産されるだけではなく、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN-末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生産される。一般に、シグナル配列はベクターの成分であるか、ベクターに挿入されるPRO10282コード化DNAの一部である。シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列であってよい。酵母菌の分泌に関しては、シグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、アルファ因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含み、後者は米国特許第5,010,182号に記載されている)、又は酸ホスファターゼリーダー、白体(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日公開のEP362,179)、又は1990年11月15日に公開されたWO 90/13646に記載されているシグナルであり得る。哺乳動物細胞の発現においては、哺乳動物シグナル配列は、同一あるいは関連ある種の分泌ポリペプチド由来のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダーのようなタンパク質の直接分泌に使用してもよい。
【0059】
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。そのような配列は種々の細菌、酵母菌及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2プラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選べるマーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシリに対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
哺乳動物細胞に適切な選択可能なマーカーの例は、DHFRあるいはチミジンキナーゼのように、PRO10282コード化核酸を取り込むことのできる細胞成分を同定することのできるものである。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、Urlaub 等により, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)に記載されているようにして調製され増殖されたDHFR活性に欠陥のあるCHO株化細胞である。酵母菌中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979);Kingman等, Gene, 7:141(1979);Tschemper等, Gene, 10:157(1980)]。trp1遺伝子は、例えば、ATCC番号44076あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で増殖する能力を欠く酵母菌の突然変異株に対する選択マーカーを提供する[Jones, Genetics, 85:12 (1977)]。
【0060】
発現及びクローニングベクターは、通常、PRO10282コード化核酸配列に作用可能に結合し、mRNA合成に指向するプロモーターを含む。種々の可能な宿主細胞により認識されるプロモーターが知られている。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターはβ-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系[Chang等, Nature, 275:615 (1978); Goeddel等, Nature, 281:544 (1979)]、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); EP 36,776]、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター[deBoer 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]を含む。細菌系で使用するプロモーターもまたPRO10282をコードするDNAと作用可能に結合したシャイン-ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
酵母宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ[Hitzeman 等, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]又は他の糖分解酵素[Hess 等, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900(1987)]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
他の酵母プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘導的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースを利用する酵素のプロモーター領域がある。酵母菌での発現に用いられるベクターとプロモーターはEP 73,657に更に記載されている。
【0061】
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからのPRO10282転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス(1989年7月5日公開のUK 2,211,504)、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノム、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及びヒートショックプロモーターから得られるプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り制御される。
より高等の真核生物によるPRO10282をコードするDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。エンハンサーは、通常は約10から300塩基対で、プロモーターに作用してその転写を増強するDNAのシス作動要素である。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製開始点の後期側のSV40エンハンサー(100-270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、PRO10282コード化配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5'位に位置している。
また真核生物宿主細胞(酵母菌、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの通常は5'、時には3'の非翻訳領域から取得できる。これらの領域は、PRO10282をコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
組換え脊椎動物細胞培養でのPRO10282の合成に適応化するのに適切な他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gething等, Nature, 293:620-625 (1981); Mantei等, Nature, 281:40-46 (1979); EP 117,060; 及びEP 117,058に記載されている。
【0062】
4.遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子増幅及び/又は発現は、ここで提供された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、例えば、従来よりの、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法[Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:5201-5205 (1980)]、サザンブロット法、ドットブロット法(DNA分析)、又はインサイツハイブリダイゼーション法によって、直接的に試料中で測定することができる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA-RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。次いで、抗体を標識し、アッセイを実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば細胞又は組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液のアッセイによって測定することもできる。試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳動物で調製することができる。簡便には、抗体は、天然配列PRO10282ポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又はPRO10282 DNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
【0063】
5.ポリペプチドの精製
PRO10282の形態は、培地又は宿主細胞の溶菌液から回収することができる。膜結合性であるならば、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)又は酵素的切断を用いて膜から引き離すことができる。PRO10282の発現に用いられる細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤などの種々の化学的又は物理的手段によって破壊することができる。
PRO10282を、組換え細胞タンパク又はポリペプチドから精製することが望ましい。次の手順が適切な精製手順の例である:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEによるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;IgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラム;及びPRO10282のエピトープタグ形態を結合させる金属キレート化カラムである。この分野で知られ、例えば、Deutscher, Methodes in Enzymology, 182 (1990);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (1982)に記載された種々のタンパク質精製方法を用いることができる。選ばれる精製過程は、例えば、用いられる生産方法及び特に生産される特定のPRO10282の性質に依存する。
【0064】
E.PRO10282(Stra6)ポリペプチドをコードする遺伝子の腫瘍組織及び細胞系での増幅
この発明は或る種の癌細胞で増幅される遺伝子の同定及び特徴付けに基づいている。
原核生物及び真核生物ゲノムに2つの見掛け上は矛盾する要件を課した。一方は、遺伝情報としてのDNAのその最初の形態での保存及び繁殖であり、複数の世代を通して安定な遺伝を確保する。他方では、細胞又は生物が最近の環境変化を採用しなければならない。適応メカニズムは遺伝子物質の質的又は量的改変を含みうる。質的改変は、コード化配列が変化して構造的又は機能的に異なるタンパク質を生ずるDNA変異を含む。遺伝子増幅は量的改変であり、それにより実際の完全なコード化配列、即ち遺伝子の数が増加し、転写に利用できるテンプレート数の増加、翻訳可能な転写物の数の増加、及び最終的には増幅された遺伝子にコードされるタンパク質の量の増加をもたらす。
遺伝子増幅の現象及びそこにあるメカニズムは、幾つかの原核及び真核生物細胞培養系でインビトロ実験されている。遺伝子増幅の最も特徴づけられた例は、種々の濃度の細胞毒性薬メトトレキセート(MTX)を含有する培地での真核生物細胞の培養を含む。MTXは葉酸類似物であり酵素デヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)のブロックによりDNA合成を妨害する。低濃度のMTXに最初に暴露すると殆どの細胞(99.9%)が死亡する。少量の細胞は生き残り、多量のDHFR-RNA及びタンパク質を生産することによりMTX濃度を増加させても増殖できる。この過剰生産の基礎は単一のDHFR遺伝子の増幅である。遺伝子のさらなるコピーは、小さく過剰な染色体(二重微小)の形態で染色体外コピーとして、又は一体化染色体コピーとして見られる。
遺伝子増幅は、細胞障害性薬剤(細菌に対する抗生物質及び真核生物に対する化学療法剤)への耐性の進行及び腫瘍形成性形質転換において最も普通に起こる。自発的事象としての又はウイルス又は化学/環境侵襲による真核生物の形質転換は典型的にその細胞の遺伝物質における変化を伴う。ヒト悪性腫瘍で観察される最も通常の遺伝的変化はp53タンパク質の突然変異である。p53は、定常(G1)から複製(S)期への細胞の転移を制御し、DNA損傷の存在下でこの転移を防止する。言い換えれば、p53変異不全の主な結果の一つは、DNA損傷の蓄積及び増幅、即ち遺伝的変化である。腫瘍形成細胞における遺伝的変化の通常の型は、点変異に加えて、増幅及び全体、構造的改変、例えば転位置である。
【0065】
DNA配列の増幅は、DHFR実験系で例示したように特定の機能的要件を示す。従って、悪性におけるある種のオンコジーンの増幅は悪性形質転換及び形質転換フェノタイプの維持のプロセスにおけるこれらの遺伝子の原因となる役割を示す。この仮説が最近の研究で支持されている。例えば、bcl-2タンパク質はある型の非ホジキンリンパ腫において増幅されることが見いだされた。このタンパク質はアポトーシスを阻害して腫瘍形成細胞の蓄積を進行させる。増殖因子レセプターの遺伝子ファミリーのメンバーが種々の型の癌で増幅されることが見いだされ、これらのレセプターの過剰発現が、腫瘍細胞の制限された量の利用可能な増殖因子に対する感受性を低下させる。例としては、アンドロゲン欠乏治療の間の再発前立腺癌におけるアンドロゲンレセプターの増幅、及び乳癌における増殖因子レセプターホモログERB2の増幅を含む。最近、細胞間シグナル伝達及び細胞周期進行に含まれる遺伝子が悪性形質転換の間に増幅を受けうる。これは、種々の上皮及びリンパ腫瘍形成におけるbcl-I及びras遺伝子の増幅によって例示される。
これらの初期の研究は、これらの方法が悪性形質転換に重要な遺伝子の同定が可能であるため、腫瘍形成において増幅されたDNA配列の同定の可能性を例示する。ERB2の場合も、形質転換タンパク質が腫瘍治療のための新規で特異的な標的を示すので、治療的立場からの可能性を示す。
増幅されたゲノム配列を示すのに幾つかの異なる技術を使用できる。癌細胞から調製した染色体展開の古典的な細胞発生分析は、転位置、欠失及び変換といった全体構造変化を同定するには十分である。増幅ゲノム領域は、それらが高いコピー数を含むか染色体外物質として存在する場合にのみ可視化される。細胞発生は特定の腫瘍形成を持つ特定の染色体変化の一貫した関係を示すための第1の技術だが、管理可能なDNA配列の同定及び単離には不十分である。より最近に開発された技術の競合ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)は腫瘍形成におけるゲノム増幅の広範な現象を例示する。腫瘍及び正常DNAは正常細胞の分裂中期に同時にハイブリダイゼーションし、腫瘍に高頻度で存在するDNA配列についての画像分析で全ゲノムをスクリーニングする(WO 93/18,186; Gray等, Radiation Res. 137: 275-289 [1994])。スクリーニング法として、このタイプの分析は、種々のヒト腫瘍における再発アンプリコン(増幅DNAの伸展)の多数を明らかにした。CGHは古典的細胞発生分析よりDNAの増幅伸展の同定において感度が高いが、それは標準的な遺伝子技術によりアンプリコン内のコード化配列の迅速な同定及び単離ができない。
【0066】
遺伝子増幅の検出に最も感度の良い方法はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースのアッセイである。これらのアッセイは極めて少量の腫瘍DNAを出発材料として用い、精巧で感度が良く、配列決定などの更なる分析に利用できるDNAを提供し、高容量スループット分析に適している。
上記のアッセイは相互に排他的ではなく、腫瘍形成における増幅の同定にしばしば組み合わせて使用される。細胞発生分析及びCGHは増幅領域の全ゲノムの概観のためのスクリーニング法を代表し、PCRベースのアッセイはコード化配列、即ち増幅領域の遺伝子を最終的に同定するのに最も適している。
本発明により、このような遺伝子は定量的PCR(S. Gelmini等, Clin, Chem. 43: 752 [1997])により、乳、肺、結腸、前立腺、脳、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、精巣、卵巣、子宮など、腫瘍、又は腫瘍細胞系を含む種々の原発腫瘍からのDNAを健常ドナーからのプールしたDNAと比較することにより同定される。定量的PCRは、TaqMan(商品名)装置(ABI)を用いて実施された。遺伝子特異的プライマー及び蛍光発生プローブは、DNAのコード化配列に基づいて設計される。
ヒト肺癌細胞系は、A549(SRCC768)、Calu-1(SRCC769)、Calu-6(SRCC770)、H157(SRCC771)、H441(SRCC772)、H460(SRCC773)、SKMES-1(SRCC774)、SW900(SRCC775)、H522(SRCC832)、及びH810(SRCC833)を含み、全てATCCから入手可能である。原発ヒト肺腫瘍細胞は通常は腺癌、扁平上皮細胞癌、大細胞癌、非-小細胞癌、小細胞癌、及び気管支肺胞癌から誘導され、例えば、SRCC724(「AdenoCa」と略記される腺癌)(LT1)、SRCC725(「SqCCa」と略記される扁平上皮細胞癌)(LT1a)、SRC725(「NSCCa」と略記される非-小細胞癌)(LT1a)、SRCC726(腺癌)(LT2)、SRCC727(腺癌)(LT3)、SRCC728(腺癌)(LT4)、SRCC729(扁平上皮細胞癌)(LT6)、SRCC730(腺/扁平上皮細胞癌)(LT7)、SRCC825(腺癌)(LT8)、SRCC731(腺癌)(LT9)、SRCC732(扁平上皮細胞癌)(LT10)、SRCC733(扁平上皮細胞癌)(LT11)、SRCC734(腺癌)(LT12)、SRCC735(腺/扁平上皮細胞癌)(LT13)、SRCC736(扁平上皮細胞癌)(LT15)、SRCC737(扁平上皮細胞癌)(LT16)、SRCC738(扁平上皮細胞癌)(LT17)、SRCC739(扁平上皮細胞癌)(LT18)、SRCC740(扁平上皮細胞癌)(LT19)、SRCC741(肺細胞癌、「LCCa」と略記)(LT21)、SRCC811(腺癌)(LT22)、SRCC825(腺癌)(LT8)、SRCC886(腺癌)(LT25)、SRCC887(扁平上皮細胞癌)(LT26)、SRCC888(腺-BAC癌)(LT27)、SRCC889(扁平上皮細胞癌)(LT28)、SRCC890(扁平上皮細胞癌)(LT29)、SRCC891(腺癌)(LT30)、SRCC892(扁平上皮細胞癌)(LT31)、SRCC894(腺癌)(LT33)を含む。また、SRCC1125[HF-000631]、SRCC1127[HF-000641]、SRCC1129[HF-000643]、SRCC1133[HF-000840]、SRCC1135[HF-000842]、SRCC1227[HF-001291]、SRCC1229[HF-001293]、SRCC1230[HF-001294]、SRCC1231[HF-001295]、SRCC1232[HF-001296]、SRCC1233[HF-001297]、SRCC1235[HF-001299]、SRCC1236[HF-001300]と称されるヒト肺腫瘍も含まれる。
【0067】
結腸癌細胞系は、例えば、ATCC細胞系SW480(腺癌、SRCC776)、SW620(結腸腺癌のリンパ節転移、SRCC777)、Colo320(癌、SRCC778)、HT29(腺癌、SRCC779)、HM7(ATCC大腸腺癌細胞系、SRCC780、Robert Warren博士, UCSFから得た)、CaWiDr(腺癌、SRCC781)、HCT116(癌、SRCC782)、SKCO1(腺癌、SRCC783)、SW403(腺癌、SRCC784)、LS174T(癌、SRCC785)、Colo205(癌、SRCC828)、HCT15(癌、SRCC829)、HCC2998(癌、SRCC830)、及びKM12(癌、SRCC831)を含む。原発大腸腫瘍は、CT2(SRCC742)、CT3(SRCC743)、CT8(SRCC744)、CT10(SRCC745)、CT12(SRCC746)、CT14(SRCC747)、CT15(SRCC748)、CT16(SRCC749)、CT17(SRCC750)、CT1(SRCC751)、CT4(SRCC752)、CT5(SRCC753)、CT6(SRCC754)、CT7(SRCC755)、CT9(SRCC756)、CT11(SRCC757)、CT18(SRCC758) 、CT19(腺癌、SRCC906)、CT20(腺癌、SRCC907)、CT21(腺癌、SRCC908)、CT22(腺癌、SRCC909)、CT23(腺癌、SRCC910)、CT24(腺癌、SRCC911)、CT25(腺癌、SRCC912)、CT26(腺癌、SRCC913)、CT27(腺癌、SRCC914)、CT28(腺癌、SRCC915)、CT29(腺癌、SRCC916)、CT30(腺癌、SRCC917)、CT31(腺癌、SRCC918)、CT32(腺癌、SRCC919)、CT33(腺癌、SRCC920)、CT35(腺癌、SRCC921)及びCT36(腺癌、SRCC922)と称される大腸腺癌を含む。また、SRCC1051[HF-000499]、SRCC1052[HF-000539]、SRCC1053[HF-000575]、SRCC1054[HF-000698]、SRC1142[HF-000762]、SRCC1144[HF-000789]、SRC1146[HF-000795]及びSRCC1148[HF-000811]と称されるヒト大腸腫瘍中心も含まれる。
ヒト乳癌細胞系は、例えば、HBL100(SRCC759)、MB435s(SRCC760)、T47D(SRCC761)、MB468(SRCC762)、MB175(SRCC763)、MB361(SRCC764)、BT20(SRCC765)、MCF7(SRCC766)、及びSKBR3(SRCC767)、及びSRCC1057[HF-000545]と称されるヒト乳腫瘍中心を含む。また、SRCC1094、SRCC1095、SRCC1096、SRCC1097、SRCC1098、SRCC1099、SRCC1100、SRCC1101と称されるヒト乳腫瘍、及びSRCC893[LT32]と称されるbreast-met-ling-NS腫瘍が含まれる。
ヒト腎臓腫瘍中心は、SRCC989[HF-000611]及びSRCC1014[HF-000613]を含む。
ヒト精巣腫瘍中心はSRCC1001[HF-000733]、そして精巣腫瘍辺縁はSRCC999[HF-000716]を含む。
ヒト上皮小体腫瘍はSRCC1002[HF-000831]及びSRCC1003[HF-000832]を含む。
【0068】
F.組織分布
ここでの遺伝子増幅アッセイの結果は、種々のヒト組織でのmRNA発現の測定などのさらなる実験により確認できる。
上記したように、種々の組織における遺伝子増幅又は遺伝子発現は、mRNAの転写の定量化のための従来のサザンブロット、ノーザンブロット(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 5201-5205 [1980])、ドットブロット(DNA分析)、又はインサイツハイブリダイゼーションにより、ここに提供する配列にもとづいて適切な標識プローブを用いて測定できる。あるいは、DNA二重鎖、RNA二重鎖、及びDNA-RNAハイブリッド二重鎖又はDNA-タンパク質二重鎖を含む特定の二重鎖を認識する抗体を用いてもよい。
あるいは、種々の組織における遺伝子発現は、遺伝子産物を直接定量化するための、組織断片及び細胞培地又は体液の免疫組織学的染色などの免疫的方法によっても測定できる。免疫組織学的染色及び/又は試料液のアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の動物から調製される。便利には、抗体は天然配列PRO10282(Stra6)ポリペプチドに対して、又は特異的抗体エピトープをコード化及びDNA配列に基づく合成ペプチドに対して調製される。抗体を生成する一般的技術、及びノーザンブロット及びインサイツハイブリダイゼーションのプロトコールは以下に提供する。
【0069】
G.染色体マッピング
与えられた遺伝子の増幅が機能的に関連する場合は、その遺伝子は、腫瘍生存に重要でない隣接ゲノム領域より多く増幅すべきである。これを試験するために、例えば放射性ハイブリッド分析により、遺伝子を特定染色体にマッピングできる。次いで、増幅レベルを特定した位置及び隣接ゲノム領域において測定する。遺伝子がマッピングされたゲノム領域での選択的又は優先的増幅は、観察された遺伝子増幅が腫瘍増殖又は生存を促進する可能性と一致する。染色体マッピングはフレームワーク及びエピセンターマッピングの両方を含む。さらなる詳細は、例えば、Stewart等, Genome Research 7, 422-433 (1997)を参照。
【0070】
H.抗体結合実験
遺伝子増幅実験の結果は、腫瘍(癌)細胞上でのStra6ポリペプチドの発現を阻害する抗PRO10282(抗Stra6)抗体の能力が試験される抗体結合実験によって更に確認できる。例示的な抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性、及びへテロ抱合体抗体を含み、その調製は以下に記載する。
抗体結合実験は、競合的結合アッセイ、直接及び間接サンドウィッチアッセイ、及び免疫沈降アッセイなどの既知のアッセイ法で実施してよい。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp.147-158 (CRC Press, Inc., 1987)。
競合的結合アッセイは、標識標準物の、限られた量の抗体との結合について試験分析物と競合する能力による。試験試料中の(腫瘍細胞で増幅された遺伝子にコードされる)標的タンパク質の量は、抗体に結合し始める標準物の量に逆比例する。結合し始める標準物の量の測定を促進するために、抗体は好ましくは競合の前又は後に固定化し、抗体に結合した標準品及び分析物が未結合で残っている標準物及び分析物から容易に分離できるようにする。
サンドウィッチアッセイは2つの抗体の使用を含み、各々が検出すべきタンパク質の異なる免疫原部分、又はエピトープに結合できる。サンドウィッチアッセイにおいて試験試料分析物は固体支持体上に固定化された第1の抗体に結合し、その後第2の抗体が分析物に結合し、よって不溶性の3成分複合体が形成される。例えば米国特許第4,376,110号参照。第2の抗体は検出可能部分で標識され(直接サンドウィッチアッセイ)、あるいは検出可能部分で標識された抗-免疫グロブリン抗体を用いて測定してもよい(間接サンドウィッチアッセイ)。例えば、サンドウィッチアッセイの一形態はELISAアッセイであり、この場合の検出可能部分は酵素である。
免疫組織学のために、腫瘍試料は新鮮でも凍結したものでもよく、パラフィンに包埋して、例えばホルマリン等の保存剤で固定してもよい。
【0071】
I.細胞ベースの腫瘍アッセイ
細胞ベースアッセイ及び腫瘍(例えば、癌)の動物モデルを用いて、遺伝子増幅アッセイに発見を確認し、ここでの遺伝子増幅と腫瘍形成細胞増殖の進行及び病理との関係をさらに理解することができる。ここで同定する遺伝子産物の腫瘍又は癌の進行及び病理における役割は、ここで遺伝子を増幅すると同定された原発腫瘍細胞又は細胞系を用いて試験することができる。このような細胞は、例えば、上記した乳、大腸及び肺癌細胞及び細胞系を含む。
異なる方法では、特定の腫瘍に含まれることが知られた細胞型の細胞をここでのcDNAで形質移入し、これらのcDNAの過剰増殖誘導能力を分析する。適当な細胞は、例えば、B104-1-1細胞株(neuプロトオンコジーンで形質移入された安定なNIH-3T3細胞液)及びras-形質移入NIH-3T3細胞等の安定な腫瘍細胞系を含み、これらは所望の遺伝子で形質移入し、そして腫瘍形成的増殖を監視できる。このような形質移入細胞系は、次いで、形質転換細胞の増殖に対する細胞分裂停止又は細胞障害活性の発揮により、又は抗体依存性細胞性細胞障害活性(ADCC)の媒介により、ポリ−又はモノクローナル抗体又は抗体組成物の腫瘍形成細胞増殖を阻害する能力を試験するのに使用できる。ここに同定した遺伝子のコード化配列で形質移入した細胞は、さらに、癌治療用の候補薬の同定に使用できる。
さらに、(下記のような)トランスジェニック動物の腫瘍から誘導された一次培地は、ここでの細胞ベースアッセイに使用できるが、安定な細胞系が好ましい。トランスジェニック動物から連続細胞系を誘導する技術はこの分野で良く知られている(Small等, Mol. Cell. Biol. 5, 642-648 [1985]参照)。
【0072】
J.動物モデル
腫瘍の進行及び原因におけるここに同定される遺伝子の役割を更に理解するために、そして抗体、及び小分子アゴニストを含む天然ポリペプチドの他のアゴニストを含む候補治療薬の有効性を試験するために、種々の良く知られた動物モデルが使用できる。これらのモデルのインビボ性質により、特にヒト患者における反応を予測できる。腫瘍及び癌(例えば、乳癌、結腸癌、前立腺癌、肺癌など)の動物モデルは、非組換え及び組換え(トランスジェニック)動物の両方を含む。非組換え動物モデルは、例えば、齧歯類、例えばマウスモデルを含む。このようなモデルは、標準的な技術、例えば、皮下注射、尾部静脈注射、脾臓移植、腹膜内移植、腎被膜下移植、又はオルトピン(orthopin)移植、例えば大腸組織に移植された結腸癌細胞により、腫瘍細胞を同系マウスに導入することにより生成される。(1997年9月18日に発行されたPCT公報WO 97/33551参照。)
癌遺伝子の研究におそらく最もしばしば用いられる動物種は、免疫不全マウス、特にヌードマウスである。ハイポ/形成不全を持つヌードマウスがヒト腫瘍異種移植の宿主として行動するという観察は、この目的のための広い用途を導いた。常染色体劣性nu遺伝子が、例えば、ASW、A/He、AKR、BALB/c、B10.LP、C17、C3H、C57BL、C57、CBA、DBA、DDD、I/st、NC、NFR、NFS、NFS/N、NZB、NZC、NZW、P、RIII及びSJLを含むヌードマウスの極めて多数の異なる共通遺伝子系統に導入された。さらに、遺伝的な免疫不全を持つヌードマウス以外の広範な他の動物が生育され、腫瘍異種移植のレシピエントとして用いられた。さらなる詳細については、The Nude Mouse in Oncology Research, E. Boven 及び B. Winograd 編, CRC Press, Inc., 1991を参照。
これらの動物に導入される細胞は、周知の腫瘍/癌細胞系、例えば上記列挙した腫瘍細胞系、及び、例えばB104-1-1細胞系(neuプロトオンコジーンで形質移入された安定NIH-3T3細胞系);ras-形質移入NIH-3T3細胞:Caco-2(ATCC HTB-37)、中程度に良く分化したグレードIIヒト大腸腺癌細胞系、HT-29(ATCC HTB-38)から、あるいは腫瘍及び癌から誘導することができる。腫瘍又は癌細胞の試料は、手術を受けている患者から、液体窒素中での凍結及び保存を含む標準的な条件を用いて得ることができる(Karmali等, Br. J. Cancer 48, 689-696 [1983])。
【0073】
腫瘍細胞は、ヌードマウスなどの動物に、種々の手法によって導入できる。マウスの皮下(s.c.)空間は、腫瘍移植に非常に好ましい。腫瘍は、固体ブロックとして、トロチャー(trochar)を用いてニードル生検として、細胞懸濁物として皮下移植できる。固体ブロック又はトロチャー移植のために、適切な大きさの腫瘍組織断片が皮下空間に導入される。細胞懸濁物は、原発腫瘍又は安定な腫瘍細胞系から新たに調製され、皮下注射される。また腫瘍細胞は、皮下植え込みとして注射することもできる。この位置において、種菌が皮膚結合組織の下層と皮下組織との間に析出される。Boven及びWinograd (1991), 上掲。
乳癌の動物モデルは、例えば、神経芽腫細胞(それからneu癌遺伝子が最初に単離される)、又はneu形質移入NIH-3T3細胞をヌードマウスに移植することにより、基本的にはDrebin等, PNAS USA 83, 9129-9133 (1986)に記載されているように生成される。
同様に、結腸癌の動物モデルは、結腸癌細胞を動物、例えばヌードマウスに継代し、これらの動物における腫瘍の発現を導くことにより生成される。ヌードマウスにおけるヒト結腸癌の同所性移植モデルは、例えば、Wang等, Cancer Research 54, 4726-4728 (1994)及びToo等, Cancer Research 55, 681-684 (1995)に記載されている。このモデルは、いわゆるAntiCancer, Inc. (SanDiego, California)から市販の「METAMOUSE」に基づく。
動物に生じた腫瘍は、取り出してインビトロで培養することができる。インビトロ培地からの細胞は、次いで動物に継代することができる。これらの腫瘍は、さらなる試験及び薬物スクリーニングの標的として提供され得る。あるいは、継代から得られる腫瘍は単離でき、継代前細胞及び1又はそれ以上の継代後に単離した細胞のRNAを、対象とする遺伝子の識別可能な発現について分析する。このような継代技術は、周知の腫瘍又は癌細胞系で実施することができる。
【0074】
例えば、Meth A、CMS4、CMS5、CMS21、及びWEHI-164がBALB/c雌マウスの線維肉腫に導入され(DeLeo等, J. Exp. Med. 146, 720 [1977])、それは、種々の抗原の抗-腫瘍活性の研究のための高度に制御可能なモデル系を提供する(Palladino等, J. Immunol. 138, 4023-4032 [1987])。簡便には、腫瘍細胞は細胞培地中でインビトロで増殖させる。動物に注射する前に、細胞系は洗浄してバッファー中に約10x10
6から10x10
7細胞/mlの細胞密度で懸濁する。次いで動物を10から100μlの細胞懸濁物で皮下移入し、腫瘍が現れるまで1から3週間放置する。
さらに、最も完全に研究された実験的腫瘍の一つであるマウスのルイス肺(3LL)癌腫は、研究用腫瘍モデルとして用いることができる。この腫瘍モデルにおける有効性は、肺の小細胞癌腫(SCCL)と診断されたヒト患者の治療における有利な効果と相関していた。この腫瘍は、影響を受けたマウスからの腫瘍断片又は培地に残った細胞の注射に際して正常マウスに導入でき(Zupi等, Br. J. Cancer 41, suppl. 4, 309 [1980])、証拠は、腫瘍がたった一つの細胞の注射から開始され、移入した腫瘍細胞の極めて高い集団が生存することを示している。この腫瘍モデルに関する更なる情報については、Zacharski, Haemostasis 16, 300-320 [1986]を参照のこと。
移植された腫瘍の動物モデルにおける試験化合物の有効性を評価する一つの方法は、治療前後での腫瘍の大きさを測定することである。伝統的に、移植した腫瘍の大きさは、二又は三次元のスライドキャリパーで測定される。二次元に制限された測定は、腫瘍の大きさを正確に反映せず、従って、通常は数式を用いて対応する容積に換算される。しかしながら、腫瘍の大きさの測定は極めて不正確である。候補薬の治療効果は、治療-誘発性の成長遅延及び特異的な成長遅延としてより良く記述できる。腫瘍成長の記述における他の重要な変数は、腫瘍容積倍加時間である。Rygaard及びSpang-Thomsen, Proc. 6th Int. Workshop on Immune-Deficient Animals, Wu及びSheng編, Basel, 1989, 301によって報告されたプログラムなどの、腫瘍成長の計算及び記述のためのコンピュータプログラムも利用可能である。しかし、腫瘍に続く壊死及び炎症反応が実際には少なくとも初期に腫瘍の大きさを増大させ得ることを注記しておく。従って、これらの変化は、形態学的方法及びフローサイトメトリー分析を組み合わせて、注意深く監視する必要がある。
【0075】
組換え(トランスジェニック)動物モデルは、ここに同定された遺伝子のコード部分を、トランスジェニック動物作成のための標準的技術を用いて、対象とする動物のゲノムに導入することにより加工できる。トランスジェニック操作の標的として提供できる動物は、限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、及び非-ヒト霊長類、例えばヒヒ、チンパンジー及びサルを含む。これらの動物に導入遺伝子を導入するのにこの分野で知られた技術は、全核マイクロインジェクション(Hoppe及びWanger, 米国特許第4,873,191号);胚系列へのレトロウイルス媒介遺伝子転移(例えば、Van der Putten等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 6148-615 [1985]);胚性肝細胞での遺伝子標的化(Thompsonら, Cell 56, 313-321 [1989]);胚のエレクトロポレーション(Lo, Mol. Cel. Biol. 3, 1803-1814 [1983]);精子媒介遺伝子転移(Lavitranoら, Cell 57, 717-73 [1989])を含む。概説のためには、例えば、米国特許第4,736,866号を参照のこと。
本発明の目的のために、トランスジェニック動物は、その一部にのみ導入遺伝子を有するもの(「モザイク動物」)を含む。導入遺伝子は、単一の導入遺伝子として、又はコンカテマー、例えば頭部と頭部又は頭部と尾部の直列型として組み込まれる。特定の細胞型への導入遺伝子の選択的導入も、例えば、Lasko等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 6232-636 (1992)の技術に従って可能である。
トランスジェニック動物における導入遺伝子の発現は、標準的技術によって監視できる。例えば、導入遺伝子の組み込みの確認にサザンブロット分析又はPCR増幅が用いられる。次いで、mRNA発現のレベルは、インサイツハイブリダイゼーション、ノーザンブロット分析、PCR、又は免疫組織化学などの技術を用いて分析できる。動物は、腫瘍又は癌発生の徴候についてさらに試験される。
【0076】
あるいは、動物の胚性細胞に導入されたポリペプチドをコードする変更ゲノムDNAと、そのポリペプチドをコードする内在性遺伝子との間の相同的組換えによって、ここに同定するPRO10282(Stra6)ポリペプチドをコードする欠陥又は変更遺伝子を有する「ノックアウト」動物を作成することができる。例えば、PRO10282ポリペプチドをコードするcDNAは、確立された技術に従い、ポリペプチドをコードするゲノムDNAのクローニングに使用できる。特にPRO10282ポリペプチドをコードするゲノムDNAの一部を欠失したり、組み込みを監視するために使用する選択可能なマーカーをコードする遺伝子等の他の遺伝子で置換することができる。典型的には、ベクターは無変化のフランキングDNA(5'と3'末端の両方)を数キロベース含む[例えば、相同的組換えベクターについてはThomas and Capecchi, Cell, 51: 503 (1987)を参照のこと]。ベクターは胚性幹細胞に(例えばエレクトロポレーションによって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に組換えられた細胞を選択する[例えば、Li等, Cell,69:915 (1992)参照]。選択された細胞は次に動物(例えばマウス又はラット)の胚盤胞内に注入され、集合キメラを形成する[例えば、Bradley, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987), pp. 113-152参照]。その後、キメラ性胚を適切な偽妊娠の雌性乳母に移植し、「ノックアウト」動物を作ると言われる。胚細胞に相同的に組換えられたDNAを有する子孫は標準的な技術により同定され、それらを利用して動物の全細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ノックアウト動物は、PRO10282ポリペプチドが不在であることによるある種の病理的状態及び病理的状態の進行に対して防御する能力によって特徴付けられる。
【0077】
自発的な動物腫瘍の治療におけるここに同定されるポリペプチドに特異的に結合する抗体、及び他の候補薬の有効性も試験できる。このような研究のための適切な標的は、ネコ口腔扁平上皮癌(SCC)である。ネコ口腔SCCは高度に侵襲的な悪性腫瘍で、ネコに最も多く発生する口腔悪性腫瘍であり、この種に報告される口腔腫瘍の60%以上を占める。それは、離れた部位には殆ど転移しないが、この転移の低い発生率は単にこの腫瘍を持つネコの短い生存期間を反映しているにすぎない。これらの腫瘍は通常手術できないが、主にネコの口腔の解剖学的形状による。現在では、この腫瘍の有効な治療法は存在しない。研究に入る前に、各々のネコに完全な臨床検査、生体組織検査を施し、コンピュータ断層撮影(CT)によりスキャンした。舌下口腔扁平上皮細胞腫瘍を持つと診断されたネコは研究から排除した。舌はこの腫瘍のために麻痺し始め、治療がこの腫瘍を殺した後でも、動物は自分で餌を取ることができないであろう。各々のネコを長期に渡って繰り返し治療する。腫瘍の写真を治療期間中の毎日及び引き続く再チェックの時点で撮影した。治療の後、各ねこに再度CTスキャンを施した。CTスキャン及びラジオグラフは、その後8週間ごとに評価した。データは、対照群と比較した生存数、反応性及び毒性における相違について評価した。ポジティブ反応は、腫瘍の縮小、好ましくは生存の質の向上又は生存期間の延長を必要とする。
さらに、他の自発的動物腫瘍、例えばイヌ、ネコ、及びヒヒの線維肉腫、腺癌、リンパ腫、クロンドローマ(chrondroma)、平滑筋肉腫も試験できる。これらのイヌ及びネコでの乳腺癌は、その発現及び挙動がヒトのものに極めて類似しているので、好ましいモデルである。しかし、このモデルの使用は動物におけるこの型の腫瘍の発生比率によって制限される。
【0078】
K.候補薬についてのスクリーニングアッセイ
候補薬のスクリーニングアッセイは、ここで同定される遺伝子にコードされるポリペプチドと結合又は抱合する化合物、あるいはコード化ポリペプチドと他の細胞性タンパク質との相互作用を阻害する化合物を同定するために設計される。このようなスクリーニングアッセイは、特に小分子候補薬の同定に適したものにする、化学的ライブラリーのハイスループットスクリーニングに従うアッセイを含む。小分子とは、抗体合成有機又は無機化合物を含むと考え、それらは、ペプチド、好ましくは可溶性ペプチド、(ポリ)ペプチド-免疫グロブリン融合体、特に、限定されないが、ポリ-及びモノクローナル抗体及び抗体断片、一本鎖抗体、抗-イディオタイプ抗体、及びそれらの抗体又は断片のキメラ又はヒト化形、並びにヒト抗体及び抗体断片を含む抗体を含んでいる。アッセイは、種々の形式で実施でき、この分野で良く特徴付けられたタンパク質-タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ及び細胞ベースのアッセイを含む。
全てのアッセイは、それらが候補薬をここで同定される核酸にコードされるポリペプチドと、それら2成分が相互作用するのに十分な時間接触させることで共通している。
結合アッセイにおいて、相互作用は結合であり、形成された複合体は単離されるか、又は反応混合物中で検出される。特別な実施態様では、ここに同定された遺伝子にコードされるポリペプチドのレセプター即ち候補薬が、共有又は非共有結合により固相、例えばマイクロタイタープレートに固定化される。非共有結合は、一般的に固体表面をポリペプチドの溶液で被覆し乾燥させることにより達成される。あるいは、固定化すべきペプチドに特異的な固定化抗体、例えばモノクローナル抗体を、そのペプチドを固体表面に固着させるために用いることができる。アッセイは、固定化成分、例えば固着成分を含む被覆表面に、検出可能な標識で標識されていてもよい非固定化成分を添加することにより実施される。反応が完了したとき、未反応成分を例えば洗浄により除去し、固体表面に固着した複合体を検出する。最初の非固定化成分が検出可能な標識を有している場合、表面に固定化された標識の検出は複合体形成が起こったことを示す。最初の非固定化成分が標識を持たない場合は、複合体形成は、例えば、固定化された複合体に特異的に結合する標識抗体によって検出できる。
【0079】
候補化合物がここで同定される遺伝子にコードされる特定のPRO10282ポリペプチドと相互作用するが結合しない場合、その相互作用は、タンパク質−タンパク質相互作用を検出するために良く知られた方法によってアッセイすることができる。そのようなアッセイは、架橋、同時免疫沈降、及び勾配又はクロマトグラフィーカラムを通す同時精製などの伝統的な手法を含む。さらに、タンパク質−タンパク質相互作用は、Fields及び共同研究者等[Fiels及びSong, Nature 340, 245-246 (1989); Chienら, Proc.Natl. Acad. Sci. USA 88, 9578-9582 (1991)]に記載された酵母菌ベースの遺伝子系を用いることにより、Chevray及びNathans[Proc.Natl. Acad. Sci. USA 89, 5789-5793 (1991)]に開示されているように監視することができる。酵母菌GAL4などの多くの転写活性化剤は、2つの物理的に別個のモジュラードメインからなり、一方はDNA結合ドメインとして作用し、他方は転写活性化ドメインとして機能する。以前の文献に記載された酵母菌発現系(一般に「2-ハイブリッド系」と呼ばれる)は、この特性の長所を利用して、2つのハイブリッドタンパク質を用い、一方では標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインに融合し、他方では、候補となる活性化タンパク質が活性化ドメインに融合している。GAL1-lacZリポーター遺伝子のGAL4活性化プロモーターの制御下での発現は、タンパク質-タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、β-ガラクトシダーゼに対する色素生産性物質で検出される。2-ハイブリッド技術を用いた2つの特定なタンパク質間のタンパク質-タンパク質相互作用を同定するための完全なキット(MATCHMAKER(商品名))は、Clontechから商業的に入手可能である。この系は、特定のタンパク質相互作用に含まれるタンパク質ドメインのマッピング、並びにこれら相互作用にとって重要なアミノ酸残基の特定にも拡張することができる。
ここで同定されるPRO10282のコード化配列と他の細胞外成分との相互作用を阻害する化合物は、次のように試験することができる:通常は、増幅された遺伝子の生成物及び細胞内又は外成分を含む反応混合物を、条件下で2つの生成物が相互作用及び結合する時間に渡って調製する。試験化合物が結合を阻害する能力を試験するために、反応は試験化合物有り又は無しで実施する。さらに、第3の反応混合物にプラシーボを添加してポジティブ対照としてもよい。混合物中に存在する試験化合物と細胞内又は外成分との結合(複合体形成)は上記のように監視する。対照反応において複合体が形成され、試験化合物を含む反応混合物ではしないことは、試験化合物が試験化合物とその反応パートナーとの相互作用を妨害することを示す。
【0080】
アンタゴニストを検定するために、PRO10282ポリペプチドを、特定の活性についてスクリーニングする化合物とともに細胞に添加してもよく、PRO10282ポリペプチド存在下で対象とする活性を阻害する当該化合物の能力が、当該化合物がPRO10282ポリペプチドのアンタゴニストであることを示す。あるいは、アンタゴニストは、PRO10282ポリペプチド及び潜在的アンタゴニストを、膜結合PRO10282ポリペプチドレセプター又は組換えレセプターと、競合的阻害アッセイに適した条件下で結合させることにより検出してもよい。PRO10282ポリペプチドは、放射活性等で標識でき、レセプターに結合したPRO10282ポリペプチド分子の数を潜在的アンタゴニストの有効性を決定するのに使用できる。レセプターをコードする遺伝子は、当業者に知られた多くの方法、例えばリガンドパンニング及びFACSソーティングにより同定できる。Coliganら, Current Protocols in Immun., 1(2): Chapter 5 (1991)。好ましくは発現クローニングが用いられ、そこではポリアデニル化RNAがPRO10282ポリペプチドに反応性の細胞から調製され、このRNAから生成されたcDNAライブラリーがプールに分配され、COS細胞又は他のPRO10282ポリペプチドに反応性でない細胞の形質移入に使用される。スライドガラスで増殖させた形質移入細胞を、標識したPRO10282ポリペプチドへ曝露する。PRO10282ポリペプチドは、ヨウ素化又は部位特異的タンパク質キナーゼの認識部位の包含を含む種々の手段で標識できる。固定及びインキュベーションの後、スライドにオートラジオグラフ分析を施す。ポジティブプールを同定し、相互作用サブプール化及び再スクリーニング工程を用いてサブプールを調製して再形質移入し、結果的に推定レセプターをコードする単一のクローンを生成する。
レセプター同定の代替的方法として、標識したPRO10282ポリペプチドをレセプター分子を発現する細胞膜又は抽出調製物に光親和性結合させることができる。架橋材料はPAGEに溶解させ、X線フィルムに暴露する。レセプターを含む標識複合体を励起し、ペプチド断片に分離し、タンパク質微量配列決定を施すことができる。微量配列決定から得たアミノ酸配列は、推定レセプターをコードする遺伝子を同定するcDNAライブラリーをスクリーニングする分解性オリゴヌクレオチドプローブの組の設計に用いられる。
【0081】
アンタゴニストの他の検定では、レセプターを発現する哺乳動物細胞又は膜調製物を、候補化合物の存在下で標識PRO10282ポリペプチドとともにインキュベートする。次いで、この相互作用を促進又は阻止する化合物の能力を測定する。
潜在的なアンタゴニストのより特別な例は、免疫グロブリンとPRO10282ポリペプチドとの融合体に結合するオリゴヌクレオチド、特に、限られないが、ポリペプチド-及びモノクローナル抗体及び抗体断片、一本鎖抗体、抗-イディオタイプ抗体、及びこれらの抗体又は断片のキメラ又はヒト化形態、並びにヒト抗体及び抗体断片を含む抗体を含んでいる。あるいは、潜在的アンタゴニストは、密接に関連したタンパク質、例えば、レセプターを認識するが効果を与えず、よってPRO10282ポリペプチドの作用を競合的に阻害するPRO10282ポリペプチドの変異形態であってもよい。
他の潜在的なPRO10282ポリペプチドアンタゴニストは、アンチセンス技術を用いて調製されたアンチセンスRNA又はDNA生成物であり、例えば、アンチセンスRNA又はDNAは、標的mRNAにハイブリダイゼーションしてタンパク質翻訳を妨害することによりmRNAの翻訳を直接阻止するように作用する。アンチセンス技術は、トリプルへリックス形成又はアンチセンスDNA又はRNAを通して遺伝子発現を制御するのに使用でき、それらの方法はともに、ポリペプチドヌクレオチドのDNA又はRNAへの結合に基づく。例えば、ここでの成熟PRO10282ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の5'コード化部分は、約10から40塩基対長のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドの設計に使用される。DNAオリゴヌクレオチドは、転写に含まれる遺伝子の領域に相補的であるように設計され(三重螺旋−Leeら, Nucl, Acid Res., 6: 3073 (1979); Cooneyら, Science, 241: 456 (1988); Dervanら, Science, 251: 1360 (1991)参照)、それによりPRO10282ポリペプチドの転写及び生成を防止する。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドはインビボでmRNAにハイブリダイゼーションしてmRNA分子のPRO10282ポリペプチドへの翻訳を阻止する(アンチセンス−Okano, Neurochem., 56: 560 (1991); Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression (CRC Press: Boca Raton, FL, 1988))。また上記のオリゴヌクレオチドは、細胞に輸送され、アンチセンスRNA又はDNAをインビボで発現させて、PRO10282ポリペプチドの産生を阻害することもできる。アンチセンスDNAが用いられる場合、翻訳開始部位、例えば標的遺伝子ヌクレオチド配列の-10から+10位置の間から誘導されるオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
【0082】
アンチセンスRNA又はDNAは、一般的に少なくとも約5塩基長、約10塩基長、約15塩基長、約20塩基長、約25塩基長、約30塩基長、約35塩基長、約40塩基長、約45塩基長、約50塩基長、約55塩基長、約60塩基長、約65塩基長、約70塩基長、約75塩基長、約80塩基長、約85塩基長、約90塩基長、約95塩基長、約100塩基長、又はそれ以上である。
潜在的アンタゴニストは、PRO10282ポリペプチドの活性部位、レセプター結合部位、又は増殖因子又は他の関連結合部位に結合し、それによりPRO10282ポリペプチドの正常な生物学的活性を阻止する小分子を含む。小分子の例は、これらに限られないが、小型ペプチド又はペプチド様分子、好ましくは可溶性ペプチド、及び合成非ペプチド有機又は無機化合物を含む。
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒できる酵素的RNA分子である。リボザイムは、相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、次いでヌクレオチド鎖切断的切断により作用する。潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、既知の技術で同定できる。更なる詳細は、例えば、Rossi, Current Biology 4: 469-471 (1994)及びPCT公報、番号WO 97/33551(1997年9月18日発行)を参照。
転写阻害に用いられる三重螺旋形成における核酸分子は一本鎖でデオキシヌクレオチドからなる。これらのオリゴヌクレオチドの基本組成は、フーグスチン塩基対則を介するトリプルヘリックス形成を促進するように設計され、それは一般に二重鎖の一方の鎖上のプリン又はピリミジンのサイズ変更可能な伸展を必要とする。さらなる詳細は、例えば、PCT公報、番号WO 97/33551, 上掲を参照。
これらの小分子は、上記で議論したスクリーニングアッセイの一又は複数の任意のものにより及び/又は当業者に良く知られた他の任意のスクリーニング技術により同定できる。
【0083】
L.PRO10282(Stra6)の用途
PRO10282(Stra6)をコードする核酸配列(又はそれらの相補鎖)は、ハイブリダイゼーションプローブとしての使用を含む分子生物学の分野において、染色体及び遺伝子マッピングにおいて、及びアンチセンスRNA及びDNAの生成において種々の用途を有している。また、PRO10282核酸も、ここに記載される組換え技術によるPRO10282ポリペプチドの調製に有用である。
全長天然配列PRO10282遺伝子(配列番号:1)、又はPRO19578遺伝子(配列番号:4)又はその一部は、全長PRO10282又はPRO19578cDNAの単離あるいはFig.1(配列番号:1)に開示したPRO10282コード化配列又はFig.6(配列番号:4)に開示したPRO15978コード化配列に対して所望の配列同一性を持つ更に他の遺伝子(例えば、PRO10282の天然発生変異体又は他の種からのPRO10282をコードするもの)の単離のためのcDNAライブラリー用のハイブリダイゼーションプローブとして使用できる。場合によっては、プローブの長さは約20〜約50塩基である。ハイブリダイゼーションプローブは、少なくとも部分的に配列番号:1のヌクレオチド配列の新規な領域から誘導してもよく、それらの領域は、過度の実験をすることなく、天然配列PRO10282又はPRO19578のプロモーター、エンハンサー成分及びイントロンを含むゲノム配列から誘導され得る。例えば、スクリーニング法は、PRO10282又はPRO19578ポリペプチド遺伝子のコード化領域を周知のDNA配列を用いて単離して約40塩基の選択されたプローブを合成することを含む。ハイブリダイゼーションプローブは、
32P又は
35S等の放射性ヌクレオチド、又はアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合したアルカリホスファターゼ等の酵素標識を含む種々の標識で標識されうる。本発明のPRO10282又はPRO19578遺伝子に相補的な配列を有する標識されたプローブは、ヒトcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリーをスクリーニングし、そのライブラリーの何れのメンバーがプローブにハイブリダイゼーションするかを決定するのに使用できる。ハイブリダイゼーション技術は、以下の実施例において更に詳細に記載する。
本出願で開示する任意のESTはプローブと同様に、ここに記載した方法で用いることができる。
PRO10282(Stra6)核酸の他の有用な断片は、標的PRO10282(Stra6)mRNA(センス)又はPRO10282(Stra6)DNA(アンチセンス)配列に結合できる一本鎖核酸配列(RNA又はDNAのいずれか)を含むアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドを含む、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、本発明によると、PRO10282(Stra6)DNAのコード化領域の断片を含む。このような断片は、一般的には少なくとも約14ヌクレオチド、好ましくは約14から30ヌクレオチドを含む。与えられたタンパク質をコードするcDNA配列に基づく、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドを制御する可能性は、例えば、Stein及びCohen(Cancer Res. 48: 2659: 1988)及び van der Krolら,(BioTechniques 6: 958, 1988)に記載されている。
【0084】
アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドの標的核酸配列への結合は二重鎖の形成をもたらし、それは、二重鎖の分解の促進、転写又は翻訳の期外停止を含む幾つかの方法の一つ、又は他の方法により、標的配列の転写又は翻訳を阻止する。よって、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、PRO10282(Stra6)タンパク質の発現を阻止するのに用いられる。アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、修飾糖−ホスホジエステル骨格(又は他の糖結合、WO91/06629に記載のもの等)を有するオリゴヌクレオチドをさらに含み、そのような糖結合は内因性ヌクレアーゼ耐性である。そのような耐性糖結合を持つオリゴヌクレオチドは、インビボで安定であるが(即ち、酵素分解に耐えうるが)、標的ヌクレオチド配列に結合できる配列特異性は保持している。
センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドの他の例は、WO90/10048に記載されているもののような、有機部分、及びオリゴヌクレオチドの標的核酸配列への親和性を向上させる他の部分、例えばポリ-(L-リジン)に共有結合したオリゴヌクレオチドを含む。さらにまた、エリプチシン等の挿入剤、アルキル化剤又は金属作体をセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合させ、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドの標的ヌクレオチド配列への結合特異性を改変してもよい。
【0085】
アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、CaPO
4-媒介DNAトランスフェクション、エレクトロポレーションを含む任意の遺伝子転換方法により、又はエプスタイン-バーウイルスなどの遺伝子転換ベクターを用いることにより、標的核酸配列を含む細胞に導入される。好ましい方法では、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、適切なレトロウイルスベクターに挿入される。標的核酸配列を含む細胞は、インビボ又はエキソビボで組換えレトロウイルスベクターに接触させる。好適なレトロウイルスベクターは、これらに限られないが、マウスレトロウイルスM-MuLVから誘導されるもの、N2(M-MuLVから誘導されたレトロウイルス)、又はDCT5A、DCT5B及びDCT5Cと命名されたダブルコピーベクター(WO90/13641参照)を含む。
また、センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは、WO91/04753に記載されているように、リガンド結合分子との複合体の形成により標的配列を含む細胞に導入してもよい。適切なリガンド結合分子は、これらに限られないが、細胞表面レセプター、増殖因子、他のサイトカイン、又は細胞表面レセプターに結合する他のリガンドを含む。好ましくは、リガンド結合分子の複合体形成は、リガンド結合分子がその対応する分子又はレセプターに結合する、あるいはセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチド又はその複合体の細胞への侵入を阻止する能力を実質的に阻害しない。
あるいは、センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは、WO90/10448に記載されたように、オリゴヌクレオチド−脂質複合体の形成により標的核酸配列を含む細胞に導入してもよい。センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチド−脂質複合体は、好ましくは内因性リパーゼにより細胞内で分解される。
【0086】
また、プローブは、PCR技術に用いて、密接に関連したPRO10282コード化配列の同定のための配列のプールを作成することができる。
また、PRO10282(Stra6)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、そのPRO10282(Stra6)をコードする遺伝子のマッピングのため、及び遺伝子疾患を持つ個体の遺伝子分析のためのハイブリダイゼーションプローブの生成にも用いることができる。ここに提供されるヌクレオチド配列は、インサイツハイブリダイゼーション、既知の染色体マーカーに対する結合分析、及びライブラリーでのハイブリダイゼーションスクリーニング等の周知の技術を用いて、染色体及び染色体の特定領域にマッピングすることができる。
PRO10282のコード化配列が他のタンパク質に結合するタンパク質をコードする場合(例えば、PRO10282がレセプターである場合)、PRO10282は、そのリガンドを同定するアッセイに用いることができる。このような方法により、レセプター/リガンド結合性相互作用の阻害剤を同定することができる。このような結合性相互作用に含まれるタンパク質も、ペプチド又は小分子阻害剤又は結合性相互作用のアゴニストのスクリーニングに用いることができる。また、レセプターPRO10282(Stra6)は関連するリガンドの単離にも使用できる。スクリーニングアッセイは、天然PRO10282(Stra6)又はPRO10282(「PRO10282結合タンパク質」)に結合する天然ポリペプチドの生物学的活性に似たリード化合物の発見のために設計される。このようなスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリーのハイスループットスクリーニングに従うアッセイを含み、小分子候補薬剤の同定に特に適したものとする。考慮される小分子は、合成有機又は無機化合物を含む。アッセイは、この分野で良く特徴付けられているされているタンパク質−タンパク質結合アッセイ、生物学的スクリーニングアッセイ、免疫検定及び細胞ベースのアッセイを含む種々の型式で実施される。
【0087】
また、PRO10282又はその任意の修飾型をコードする核酸は、トランスジェニック動物又は「ノックアウト」動物のいずれかを産生することに使用でき、これらは治療的に有用な試薬の開発やスクリーニングに有用である。トランスジェニック動物(例えばマウス又はラット)とは、出生前、例えば胚段階で、その動物又はその動物の祖先に導入された導入遺伝子を含む細胞を有する動物である。導入遺伝子とは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれたDNAである。一実施形態では、PRO10282をコードするcDNAは、PRO10282をコードするDNAを発現する細胞を含むトランスジェニック動物を作製するために使用するゲノム配列及び確立された技術に基づいて、PRO10282をコードするゲノムDNAをクローン化するために使用することができる。トランスジェニック動物、特にマウス又はラット等の特定の動物を産生する方法は、当該分野において常套的になっており、例えば米国特許第4,736,866号や第4,870,009号に記述されている。典型的には、特定の細胞を組織特異的エンハンサーでのPRO10282導入遺伝子の導入の標的にする。胚段階で動物の生殖系列に導入されたPRO10282コード化導入遺伝子のコピーを含むトランスジェニック動物はPRO10282をコードするDNAの増大した発現の影響を調べるために使用できる。このような動物は、例えばその過剰発現を伴う病理学的状態に対して保護をもたらすと思われる試薬のテスター動物として使用できる。本発明のこの態様においては、動物を試薬で治療し、導入遺伝子を有する未治療の動物に比べ病理学的状態の発症率が低ければ、病理学的状態に対する治療上の処置の可能性が示される。
【0088】
あるいは、PRO10282の非ヒト相同体は、動物の胚性細胞に導入されたPRO10282をコードする変更ゲノムDNAと、PRO10282をコードする内在性遺伝子との間の相同的組換えによって、PRO10282をコードする欠陥又は変更遺伝子を有するPRO10282「ノックアウト」動物を作成するために使用できる。例えば、PRO10282をコードするcDNAは、確立された技術に従い、PRO10282をコードするゲノムDNAのクローニングに使用できる。PRO10282をコードするゲノムDNAの一部を欠失したり、組み込みをモニターするために使用する選択可能なマーカーをコードする遺伝子等の他の遺伝子で置換することができる。典型的には、ベクターは無変化のフランキングDNA(5’と3’末端の両方)を数キロベース含む[例えば、相同的組換えベクターについてはThomas及びCapecchi, Cell, 51:503(1987)を参照のこと]。ベクターは胚性幹細胞に(例えばエレクトロポレーションによって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に組換えられた細胞が選択された[例えば、Liら, Cell, 69:915(1992)参照]。選択された細胞は次に動物(例えばマウス又はラット)の胚盤胞内に注入されて集合キメラを形成する[例えば、Bradley, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987), pp. 113-152参照のこと]。その後、キメラ性胚を適切な偽妊娠の雌性乳母に移植し、期間をおいて「ノックアウト」動物を作り出す。胚細胞に相同的に組換えられたDNAを有する子孫は標準的な技術により同定され、それらを利用して動物の全細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ノックアウト動物は、PRO10282ポリペプチドの欠乏によるある種の病理的状態及びその病理的状態の進行に対する防御能力によって特徴付けられる。
【0089】
また、PRO10282ポリペプチドをコードする核酸は遺伝子治療にも使用できる。遺伝子治療用途においては、例えば欠陥遺伝子を置換するため、治療的有効量の遺伝子産物のインビボ合成を達成するために遺伝子が導入される。「遺伝子治療」とは、1回の処理により継続的効果が達成される従来の遺伝子治療と、治療的に有効なDNA又はmRNAの1回又は繰り返し投与を含む遺伝子治療薬の投与の両方を含む。アンチセンスRNA及びDNAは、ある種の遺伝子のインビボ発現を阻止する治療薬として用いることができる。短いアンチセンスオリゴヌクレオチドを、細胞膜による制限された取り込みに起因する低い細胞内濃度にもかかわらず、それが阻害剤として作用する細胞中に移入できることは既に示されている(Zamecnikら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 4143-4146 [1986])。オリゴヌクレオチドは、それらの負に荷電したリン酸ジエステル基を非荷電基で置換することによって取り込みを促進するように修飾してもよい。
生存可能な細胞に核酸を導入するための種々の技術が存在する。これらの技術は、核酸が培養細胞にインビトロで、あるいは意図する宿主の細胞においてインビボで移入されるかに応じて変わる。核酸を哺乳動物細胞にインビトロで移入するのに適した方法は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法などを含む。現在好ましいインビボ遺伝子移入技術は、ウイルス(典型的にはレトロウイルス)ベクターでのトランスフェクション及びウイルス被覆タンパク質-リポソーム媒介トランスフェクションである(Dzauら, Trends in Biotechnology 11, 205-210(1993))。幾つかの状況では、核酸供給源を、細胞表面膜タンパク質又は標的細胞に特異的な抗体、標的細胞上のレセプターに対するリガンド等の標的細胞を標的化する薬剤とともに提供するのが望ましい。リポソームを用いる場合、エンドサイトーシスを伴って細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質、例えば、特定の細胞型向性のキャプシドタンパク質又はその断片、サイクルにおいて内部移行を受けるタンパク質に対する抗体、細胞内局在化を標的とし細胞内半減期を向上させるタンパク質が、標的化及び/又は取り込みの促進のために用いられる。レセプター媒介エンドサイトーシスは、例えば、Wuら, J. Biol. Chem. 262, 4429-4432 (1987); 及びWagnerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 3410-3414 (1990)によって記述されている。遺伝子作成及び遺伝子治療のプロトコールの概説については、Andersonら, Science 256, 808-813 (1992)を参照のこと。
【0090】
ここに記載したPRO10282ポリペプチドをタンパク質電気泳動目的の分子量マーカーとして用いてもよく、単離された核酸配列を、これらのマーカーを組み換え発現に用いてもよい。
ここに記載したPRO10282ポリペプチド又はその断片をコードする核酸分子は、染色体の同定に有用である。この点において、実際の配列に基づく染色体マーキング試薬は殆ど利用可能ではないため、新規な染色体マーカーの同定の必要である。本発明の各PRO10282核酸分子は染色体マーカーとして使用できる。
また、本発明のPRO10282ポリペプチド及び核酸分子は組織タイピングに使用でき、本発明のPRO10282ポリペプチドは、好ましくは同じ型の正常組織に比較して疾患性組織において、一方の組織で他方に比較して異なる発現をする。PRO10282核酸分子には、PCR、ノーザン分析、サザン分析及びウェスタン分析のプローブ生成のための用途が見出されるであろう。
【0091】
ここに記載したPRO10282ポリペプチドは治療薬として用いてもよい。本発明のPRO10282ポリペプチドは、製薬的に有用な組成物を調製するのに知られた方法に従って製剤され、これにより、このPRO10282生成物は製薬的に許容される担体媒体と混合される。治療用製剤は、凍結乾燥された製剤又は水性溶液の形態で、任意的な製薬上許容可能なキャリア、賦形剤又は安定剤と、所望の精製度を有する活性成分とを混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. Ed., [1980])、調製され保管される。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、用いる投与量及び濃度ではレシピエントに対して無毒性であり、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(残基数約10個未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリン等の単糖類、二糖類又は他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、マンニトール又はソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又はTWEEN(商品名)、PLURONICS(商品名)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0092】
インビボ投与に使用される製剤は滅菌されていなくてはならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、滅菌フィルター膜を通す濾過により容易に達成される。
ここで、本発明の製薬組成物は一般に、無菌のアクセスポートを具備する容器、例えば、皮下注射針で貫通可能なストッパーを持つ静脈内バッグ又はバイアル内に配される。
投与経路は周知の方法、例えば、静脈内、腹膜内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内又は病巣内経路での注射又は注入、局所投与、又は徐放系による。
本発明の製薬組成物の用量及び望ましい薬物濃度は、意図する特定の用途に応じて変化する。適切な用量又は投与経路の決定は、通常の内科医の技量の範囲内である。動物実験は、ヒト治療のための有効量の決定についての信頼できるガイダンスを提供する。有効量の種間スケーリングは、Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobiら, 編, Pergamon Press, New York 1989, pp. 42-96のMordenti, J. 及びChappell, W. 「The use of interspecies scaling in toxicokinetics」に記載された原理に従って実施できる。
PRO10282ポリペプチド又はそのアゴニスト又はアンタゴニストのインビボ投与が用いられる場合、正常な投与量は、投与経路に応じて、哺乳動物の体重当たり1日に約10ng/kgから100mg/kgまで、好ましくは約1g/kg/日から10mg/kg/日である。特定の用量及び輸送方法の指針は文献に与えられている;例えば、米国特許第4,657,760号、第5,206,344号、又は第5,225,212号参照。異なる製剤が異なる治療用化合物及び異なる疾患に有効であること、例えば一つの器官又は組織を標的とする投与には、他の器官又は組織とは異なる方式で輸送することが必要であることが予想される。
【0093】
PRO10282ポリペプチドの投与を必要とする任意の疾患又は疾病の治療に適した放出特性を持つ製剤でPRO10282ポリペプチドの持続放出が望まれる場合、PRO10282ポリペプチドのマイクロカプセル化が考えられる。持続放出のための組換えタンパク質のマイクロカプセル化は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン-(rhIFN-)、インターロイキン-2、及びMN rgp120で成功裏に実施されている。Johnsonら, Nat. Med., 2: 795-799 (1996); Yasuda, Biomed. Ther., 27: 1221-1223 (1993); Horaら, Bio/Technology, 8: 755-758 (1990); Cleland, 「Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polyactide Polyglycolide Microsphere Systems」Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach, Powell 及び Newman編, (Plenum Press: New York, 1995), p.439-462; WO97/03692,WO96/40072,WO96/07399;及び米国特許第5,654,010号。
これらのタンパク質の持続放出製剤は、ポリ-乳酸-コグリコール酸(PLGA)ポリマーを用い、その生体適合性及び広範囲の生分解特性に基づいて開発された。PLGAの分解生成物である乳酸及びグリコール酸は、ヒト身体内で即座にクリアされる。さらに、このポリマーの分解性は、分子量及び組成に依存して数ヶ月から数年まで調節できる。Lewis, 「Controlled release of bioactive agents from lactide/glycolide polymer」: M. Chasin及び R. Langer (編), Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems (Marcel Dekker: New York, 1990), pp. 1-41。
本発明は、PRO10282ポリペプチドに類似する(アゴニスト)又はPRO10282ポリペプチドの効果を阻害する(アンタゴニスト)ものを同定するための化合物のスクリーニング方法も包含する。アンタゴニスト候補薬のスクリーニングアッセイは、ここに同定した遺伝子にコードされるPRO10282ポリペプチドと結合又は複合体形成する化合物、又は他にコード化ポリペプチドの他の細胞性タンパク質との相互作用を阻害する化合物を同定するために設計される。このようなスクリーニングアッセイは、それを特に小分子候補薬の同定に適したものにする、化学的ライブラリーのハイスループットスクリーニングに適用可能なアッセイを含む。
該アッセイは、タンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ、及び細胞ベースのアッセイで、この分野で知られたものを含む種々の方式で実施される。
アンタゴニストについての全てのアッセイは、それらが候補薬をここで同定された核酸にコードされるPRO10282ポリペプチドと、これら2つの成分が相互作用するのに十分な条件下及び時間で接触させることを必要とすることにおいて共通する。
【0094】
結合アッセイにおいて、相互作用は結合であり、形成された複合体は単離されるか、又は反応混合物中で検出される。特別な実施態様では、ここに同定された遺伝子にコードされるPRO10282ポリペプチド又は候補薬が、共有又は非共有結合により固相、例えばミクロタイタープレートに固定化される。非共有結合は、一般的に固体表面をPRO10282ポリペプチドの溶液で被覆し乾燥させることにより達成される。あるいは、固定化されるPRO10282ポリペプチドに特異的な固定化抗体、例えばモノクローナル抗体を、それを固体表面に固着させるために用いることができる。アッセイは、固定化成分、例えば固着成分を含む被覆表面に、検出可能な標識で標識されていてもよい非固定化成分を添加することにより実施される。反応が完了したとき、未反応成分を例えば洗浄によって除去し、固体表面に固着した複合体を検出する。最初の非固定化成分が検出可能な標識を有している場合、表面に固定化された標識の検出は複合体形成が起こったことを示す。最初の非固定化成分が標識を持たない場合は、複合体形成は、例えば、固定化された複合体に特異的に結合する標識抗体によって検出できる。
【0095】
候補化合物が相互作用するがここに同定した遺伝子にコードされる特定のPRO10282ポリペプチに結合しない場合、そのポリペプチドとの相互作用は、タンパク質-タンパク質相互作用を検出するために良く知られている方法によってアッセイすることができる。そのようなアッセイは、架橋、同時免疫沈降、及び勾配又はクロマトグラフィーカラムを通す同時精製などの伝統的な手法を含む。さらに、タンパク質-タンパク質相互作用は、Chevray及びNathans[Proc.Natl. Acad. Sci. USA 89, 5789-5793 (1991)]に開示されているように、Fields及び共同研究者ら[Fiels及びSong, Nature(London) 340, 245-246 (1989); Chienら, Proc.Natl. Acad. Sci. USA 88, 9578-9582 (1991)]に記載された酵母ベースの遺伝子系を用いることによってモニターすることができる。酵母GAL4などの多くの転写活性化剤は、2つの物理的に別個のモジュラードメインからなり、一方はDNA結合ドメインとして作用し、他方は転写活性化ドメインとして機能する。前出の文献に記載された酵母発現系(一般に「2-ハイブリッド系」と呼ばれる)は、この特性の長所を利用し、並びに2つのハイブリッドタンパク質を用い、一方では標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインに融合し、他方では候補となる活性化タンパク質が活性化ドメインに融合している。GAL1-lacZリポーター遺伝子のGAL4活性化プロモーターの制御下での発現は、タンパク質-タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、β-ガラクトシダーゼに対する色素生産性物質で検出される。2-ハイブリッド技術を用いた2つの特定なタンパク質間のタンパク質-タンパク質相互作用を同定するための完全なキット(MATCHMAKER(商品名))は、Clontechから商業的に入手可能である。また、この系は、特定のタンパク質相互作用に含まれるタンパク質ドメインのマッピング、並びにこれら相互作用にとって重要なアミノ酸残基の特定へ拡大適用することができる。
【0096】
ここで同定されたPRO10282ポリペプチドをコードする遺伝子と細胞内又は細胞外成分との相互作用を阻害する化合物は、次のように試験できる:通常、反応混合物は、遺伝子産物と細胞外又は細胞内成分を、これら2つの生成物の相互作用及び結合が可能な条件下及び時間に渡って含むように調製される。候補化合物が結合を阻害する能力を試験するために、反応は試験化合物の不存在及び存在下で実施される。さらに、プラシーボを第3の反応混合物に添加してポジティブコトロールを提供してもよい。混合物中に存在する試験化合物と細胞内又は細胞外成分との結合(複合体形成)は上記のようにモニターされる。試験化合物を含有する反応混合物ではなく、コントロール反応における複合体の形成は、試験化合物が試験化合物とその結合パートナーとの相互作用を阻害することを示す。
アンタゴニストをアッセイするためには、特定の活性についてスクリーニングされる化合物とともにPRO10282ポリペプチドを細胞へ添加してもよく、PRO10282ポリペプチド存在下における対象活性を阻害する化合物の能力は、化合物がPRO10282ポリペプチドのアンタゴニストであることを示す。あるいは、PRO10282ポリペプチドと膜結合PRO10282ポリペプチドレセプター又は組換えレセプターを有する潜在的アンタゴニストを競合的阻害アッセイに適した条件下で結合させることによって、アンタゴニストを検出してもよい。放射活性などでPRO10282ポリペプチドを標識することが可能であり、潜在的アンタゴニストの有効性を判断するためにレセプターに結合したPRO10282ポリペプチドの数を利用することができる。レセプターをコードする遺伝子は、当業者に知られた多くの方法、例えばリガンドパンニング及びFACSソートによって同定できる。Coliganら, Current Protocols in Immun., 1(2): 第5章(1991)。好ましくは、発現クローニングが用いられ、ポリアデニル化RNAがPRO10282ポリペプチドに反応性の細胞から調製され、このRNAから生成されたcDNAライブラリーがプールに分配され、COS細胞又はPRO10282ポリペプチド反応性でない他の細胞のトランスフェクションに使用される。スライドガラスで増殖させたトランスフェクション細胞を、標識したPRO10282ポリペプチドで暴露する。このPRO10282ポリペプチドは、ヨウ素化又は部位特異的タンパク質キナーゼの認識部位の封入を含む種々の手段で標識できる。固定及びインキュベーションの後、スライドにオートラジオグラフィ分析を施す。ポジティブプールを同定し、相互作用サブプール化及び再スクリーニング工程を用いてサブプールを調製して再トランスフェクションし、最終的に推定レセプターをコードする単一のクローンを生成する。
【0097】
レセプター同定の代替的方法として、標識化PRO10282ポリペプチドをレセプター分子を発現する細胞膜又は抽出調製物に光親和性結合させることができる。架橋材料をPAGEで溶解させ、X線フィルムへ暴露する。レセプターを含む標識複合体を励起し、ペプチド断片へ分解し、タンパク質微量配列決定を施すことができる。微量配列決定から得たアミノ酸配列は、推定レセプターをコードする遺伝子を同定するcDNAライブラリーをスクリーニングする縮重オリゴヌクレオチドプローブの一組の設計に用いられる。
アンタゴニストの他のアッセイでは、レセプターを発現する哺乳動物細胞又は膜調製物を、候補化合物の存在下で標識PRO10282ポリペプチドとともにインキュベートする。次いで、この相互作用を促進又は阻止する化合物の能力を測定する。
潜在的なアンタゴニストのより特別な例は、免疫グロブリンとPRO10282ポリペプチドとの融合体に結合するオリゴヌクレオチド、特に、限られないが、ポリペプチド-及びモノクローナル抗体及び抗体断片、一本鎖抗体、抗-イディオタイプ抗体、及びこれらの抗体又は断片のキメラ又はヒト化形態、並びにヒト抗体及び抗体断片を含む抗体を含んでいる。あるいは、潜在的アンタゴニストは、密接に関連したタンパク質、例えば、レセプターを認識するが効果を与えず、従ってPRO10282ポリペプチドの作用を競合的に阻害するPRO10282ポリペプチドの変異形態であってもよい。
【0098】
他の潜在的なPRO10282ポリペプチドアンタゴニストは、アンチセンス技術を用いて調製されたアンチセンスRNA又はDNA生成物であり、例えば、アンチセンスRNA又はDNAは、標的mRNAにハイブリダイゼーションしてタンパク質翻訳を妨害することによりmRNAの翻訳を直接阻止するように作用する。アンチセンス技術は、トリプルへリックス形成又はアンチセンスDNA又はRNAを通して遺伝子発現を制御するのに使用でき、それらの方法はともに、ポリペプチドヌクレオチドのDNA又はRNAへの結合に基づく。例えば、ここでの成熟PRO10282ポリペプチドをコードするポリペプチドヌクレオチド配列の5’コード化部分は、約10から40塩基対長のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドの設計に使用される。DNAオリゴヌクレオチドは、転写に含まれる遺伝子の領域に相補的であるように設計され(トリプルへリックス−Leeら, Nucl, Acid Res., 6: 3073 (1979); Cooneyら, Science, 241: 456 (1988); Dervanら, Science, 251: 1360 (1991)参照)、それによりPRO10282ポリペプチドの転写及び生成を防止する。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドはインビボでmRNAにハイブリダイゼーションしてmRNA分子のPRO10282ポリペプチドへの翻訳を阻止する(アンチセンス−Okano, Neurochem., 56: 560 (1991); Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression (CRC Press: Boca Raton, FL, 1988))。上記のオリゴヌクレオチドは、細胞に輸送され、アンチセンスRNA又はDNAをインビボで発現させて、PRO10282ポリペプチドの生産を阻害することもできる。アンチセンスDNAが用いられる場合、翻訳開始部位、例えば標的遺伝子ヌクレオチド配列の-10から+10位置の間から誘導されるオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
【0099】
潜在的アンタゴニストは、PRO10282ポリペプチドの活性部位、レセプター結合部位、又は増殖因子又は他の関連結合部位に結合し、それによりPRO10282ポリペプチドの正常な生物学的活性を阻止する小分子を含む。小分子の例は、これらに限られないが、小型ペプチド又はペプチド様分子、好ましくは可溶性ペプチド、及び合成非ペプチド有機又は無機化合物を含む。
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒できる酵素的RNA分子である。リボザイムは、相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、次いでヌクレオチド鎖切断的切断により作用する。潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、既知の技術で同定できる。更なる詳細は、例えば、Rossi, Current Biology 4: 469-471 (1994)及びPCT公報、番号WO97/33551(1997年9月18日公開)を参照。
転写阻害に用いられるトリプルヘリックス形成における核酸分子は一本鎖でデオキシヌクレオチドからなる。これらのオリゴヌクレオチドの基本組成は、フーグスチン塩基対則を介するトリプルヘリックス形成を促進するように設計され、それは一般に二重鎖の一方の鎖上のプリン又はピリミジンのサイズ変更可能な伸展を必要とする。さらなる詳細は、例えば、PCT公報、番号WO97/33551、上掲を参照。
これらの小分子は、上記で検討したスクリーニングアッセイの一つ又は複数の任意のものにより及び/又は当業者に良く知られた他の任意のスクリーニング技術により同定できる。
Stra6、マウスレチノイン酸誘発遺伝子は、精巣のサルトリ細胞での精子形成サイクル依存性発現を持つ。Stra6との配列相同性に基づき、ここで開示されるPRO10282ポリペプチドは精子形成に重要な役割を有し、従って不妊治療で使用される可能性がある。現在ではPRO10282ポリペプチドの発現は、そのマウス相同物Stra6と同様にレチノイン酸により誘発されると考えられる。従って、ハイブリダイゼーションによるmRNA、又は免疫学的アッセイによるタンパク質のレベルでのPRO10282の発現は、試験化合物が多種多様なレチノイド反応性疾患の治療に可能性を有するかどうかを決定するのに使用することができる。治療の対象に考えられる疾患のタイプとしては、乾癬、座瘡、異形成症、癌及び自己免疫疾患が含まれる。考慮される異形成症の種類としては、上皮組織の前癌性病変、例えば口腔白板症、頸部、咽頭及び気管支の異形成症を含む。考慮される癌の種類としては、大腸(腺癌)、肺(癌腫及び腺癌)、皮膚、頭部及び首部、頸部、子宮、胸部及び前立腺の癌を含む。考慮される自己免疫疾患の種類としては、リウマチ様関節炎、変形性関節症、全身性紅斑性狼瘡、尋常性天疱瘡及び落葉状天疱瘡を含む。このような疾患及び症状を処置するのに可能な治療法は、PRO10282の抗体及びアンタゴニスト(小分子を含む)である。
【0100】
M.腫瘍治療のための組成物及び方法
ここで同定した遺伝子の増幅を伴う腫瘍の治療に有用な組成物は、限定されないが、抗体、小有機及び無機分子、ペプチド、ホスホペプチド、アンチセンス及びリボザイム分子、三重螺旋分子などを含み、標的遺伝子産物の発現又は活性を阻害するものである。
例えば、アンチセンスRNA及びRNA分子は、標的mRNAにハイブリダイゼーションしてタンパク質翻訳を防止することによりmRNAの翻訳を直接阻止する。アンチセンスDNAが用いられる場合、翻訳開始部位、例えば標的遺伝子ヌクレオチド配列の-10から+10位置の間から誘導されるオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒できる酵素的RNA分子である。リボザイムは、相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、次いでヌクレオチド鎖切断的切断により作用する。潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、既知の技術で同定できる。更なる詳細は、例えば、Rossi, Current Biology 4: 469-471 (1994)及びPCT公報、番号WO 97/33551(1997年9月18日発行)を参照。
【0101】
転写阻害に用いられる三重螺旋形成における核酸分子は一本鎖でデオキシヌクレオチドからなる。これらのオリゴヌクレオチドの基本組成は、フーグスチン塩基対則を介する三重螺旋形成を促進するように設計され、それは一般に二重鎖の一方の鎖上のプリン又はピリミジンのサイズ変更可能な伸展を必要とする。さらなる詳細は、例えば、PCT公報、番号WO 97/33551, 上掲を参照。
これらの分子は上記のスクリーニングアッセイの任意のもの又は任意の組み合わせにより、又は当業者に知られた他のスクリーニング技術により同定できる。
【0102】
N.抗PRO10282(抗Stra6)抗体
本発明は、更に抗PRO10282(抗Stra6)抗体を提供する。例示的な抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性、及びヘテロ抱合体を含む。
【0103】
1.ポリクローナル抗体
抗PRO10282抗体はポリクローナル抗体を含みうる。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫化剤又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、PRO10282ポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に抱合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例は、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。
【0104】
2.モノクローナル抗体
あるいは、抗PRO10282抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。また、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
【0105】
免疫化剤は、典型的には断片を含むPRO10282ポリペプチド、又はそのタンパク質又はその断片の融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用されるか、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化細胞系と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化細胞系は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫細胞系が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は増殖を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプチリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
【0106】
好ましい不死化細胞系は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性のものである。より好ましい不死化細胞系はマウス骨髄腫系であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのソーク研究所(Salk Institute)Cell Distribution Centerやヴァージニア州マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)より入手可能である。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞系も開示されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984)、Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
次いでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、PRO10282ポリペプチドに対するモノクローナル抗体の存在について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定する。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
【0107】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを制限希釈工程によりサブクローニングし、標準的な方法で増殖させることができる[Goding, 上掲]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として増殖させることもできる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製される。
【0108】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により生成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成などしない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより[US. Patent No.4,816,567;Morrisonら, 上掲]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに置換するか、本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換し、キメラ性二価抗体を産生することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、あるいは本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二価抗体を生成する。
【0109】
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られてる。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意のポイントで切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の生成は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成できる。
【0110】
3.ヒト及びヒト化抗体
抗PRO10282抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')
2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jonesら, Nature, 321:522-525 (1986); Riechmannら, Nature, 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
【0111】
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンター(Winter)及び共同研究者[Jonesら, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmannら, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyenら, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
【0112】
また、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリー[Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marksら, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]を含むこの分野で知られた種々の方法を用いて生成することもできる。また、Coleら及びBoernerらの技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる[Coleら, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985)及びBoernerら, J. Immunol., 147(1):86-95(1991) ]。同様に、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子は部分的又は完全に不活性化されたマウスに導入することにより産生することができる。投与の際に、遺伝子再配列、組立、及び抗体レパートリーを含むあらゆる観点においてヒトに見られるものに非常に類似しているヒト抗体の生産が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、及び次の科学文献:Marksら, Bio/Technology 10, 779-783 (1992); Lonbergら, Nature 368 856-859 (1994); Morrison, Nature 368, 812-13 (1994); Fishwildら, Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996); Lonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995)に記載されている。
【0113】
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本発明の場合において、結合特異性の一方はPRO10282ポリペプチドに対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。
二重特異性抗体を生成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開のWO93/08829、及びTrauneckerら, EMBO J.,10:3655-3656 (1991)に開示されている。
【0114】
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合体をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を生成するための更なる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
【0115】
WO96/27011に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体のパーセントを最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置換される。大きな側鎖と同じ又はより小さいサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(アラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモ二量体のような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0116】
二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab')
2二重特異性抗体)として調製できる。抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science, 229:81 (1985) は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')
2断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
【0117】
大腸菌からFab'フラグメントを直接回収でき、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalabyら, J. Exp. Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')
2分子の製造を記述している。各Fab'フラグメントは大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、正常なヒトT細胞及びErbB2レセプターを過剰発現する細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
【0118】
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体フラグメントを生成し分離する様々な方法もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelnyら, J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体フラグメントを生成する別のメカニズムを提供した。フラグメントは、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V
L)に重鎖可変ドメイン(V
H)を結合してなる。従って、一つのフラグメントのV
H及びV
Lドメインは他のフラグメントの相補的V
L及びV
Hドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体フラグメントを製造する他の方策もまた報告されている。Gruberら, J. Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら,J. Immunol. 147:60(1991)。
【0119】
例示的二重特異性抗体は、ここで与えられるPRO10282ポリペプチド上の2つの異なるエピトープに結合しうる。あるいは、抗PRO10282ポリペプチドアームは、T細胞レセプター分子(例えばCD2、CD3、CD28又はB7)等の白血球上のトリガー分子、又はFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgGのFcレセプター(FcγR)に結合するアームに結合し、細胞防御メカニズムを特定のタンパク質発現細胞に集中するようにしてもよい。二重特異性抗体は、特定のポリペプチドを発現する細胞に対する局所的細胞毒性薬として使用してもよい。これらの抗体は、ポリペプチド結合アーム及び細胞障害性薬剤又はキレート化剤、例えばEOTUBE、DPTA、DOTA、又はTETAに結合するアームを有する。他の対象とする二重特異性抗体は、PRO10282ポリペプチドに結合し、さらに組織因子(TF)に結合する。
【0120】
5.ヘテロ抱合体抗体
ヘテロ抱合抗体もまた本発明の範囲に入る。ヘテロ抱合抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため[米国特許第4,676,980号]及びHIV感染の治療のために[WO 91/00360; WO 92/200373; EP 03089]提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を生成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4,676,980号に開示されているものが含まれる。
【0121】
6.エフェクター機能の設計
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、例えばガンの治療における抗体の効能を増強することが望ましい。例えば、システイン残基をFc領域に導入して、この領域における鎖間ジスルイド結合を形成させる。このようにして産生されたホモダイマー抗体は改善されたインターナリゼーション能力及び/又は増加した補体媒介細胞死滅及び抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を有しうる。Caronら, J. Exp. Med. 176:1191-1195 (1992)及びShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照されたい。抗腫瘍活性が高められたホモダイマー抗体は、Wolffら, Cancer Research 53:2560-2565(1993)に記載されているようなヘテロ二官能性架橋剤を使用して調製することもできる。あるいは二重Fc領域を有し、よって増強された補体溶解及びADCC能を有しうる抗体を設計することができる。Stevensonら, Anti-cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。
【0122】
7.免疫複合体
本発明はまた、化学療法剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素、又はその断片)などの細胞障害性薬剤、あるいは放射性同位体(即ち、放射性抱合)に抱合された抗体を含む免疫複合体にも関する。
このような免疫複合体の生成に有用な化学療法剤は上記した。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、コレラ毒素、ボツリヌス毒素、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)を含む。様々な放射性ヌクレオチドが放射性抱合抗体の生成に利用可能である。例として、
212Bi、
131I、
131In、
90Y及び
186Reを含む。
【0123】
抗体及び細胞障害性薬剤の複合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて生成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら, Science 238: 1098 (1987)に記載されたように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のためのキレート剤の例である。WO 94/11026を参照のこと。
他の実施態様では、腫瘍の予備標的化で使用するために、抗体は「レセプター」(ストレプトアビジン等)に抱合されてもよく、抗体-レセプター複合体は患者に投与され、次いで清澄化剤を用いて未結合複合体を循環から除去し、次に細胞障害性薬剤(例えば、放射性ヌクレオチド等)に抱合された「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0124】
8.免疫リポソーム
また、ここに開示する抗体は、免疫リポソームとして調製してもよい。抗体を含むリポソームは、Epsteinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985); Hwangら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980); 及び米国特許第4,485,045号及び第4,544,545号に記載されたような、この分野で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成される。リポソームは、所定サイズのフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab’断片は、Martinら, J. Biol. Chem. 257: 286-288 (1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームに抱合され得る。化学療法剤(ドキソルビシン等)は、場合によってはリポソーム内に包含される。Gabizonら, J. National Cancer Inst. 81(19) 1484 (1989)を参照のこと。
【0125】
9.抗体依存性酵素媒介性プロドラッグ治療法(ADEPT)
また、本発明の抗体は、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公開81/01145号を参照)を活性な抗癌剤に転化させるプロドラッグ活性化酵素に抗体をコンジュゲートさせることにより、ADEPTにおいて使用することができる。例えば国際公開88/07378及び米国特許第4,975,278号を参照されたい。
ADEPTに有用な免疫コンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞障害性形態に転化するように、プロドラッグに作用し得る任意の酵素が含まれる。
限定するものではないが、この発明の方法に有用な酵素には、グリコシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヒトリゾチーム、ヒトグルクロニダーゼ、ホスフェート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに転化するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ(例えば、カルボキシペプチダーゼG2及びカルボキシペプチダーゼA)及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なもの;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの転化に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なノイラミニダーゼ及びβガラクトシダーゼ;βラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化させるのに有用なβラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、「アブザイム」としてもまた公知の酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤に本発明のプロドラッグを転化させるために使用することもできる(例えば、Massey, Nature 328:457-458[1987]を参照)。抗体-アブザイムコンジュゲートは、ここで記載されているようにして、腫瘍細胞個体群にアブザイムを輸送するために調製することができる。
この発明の酵素は、当該分野においてよく知られている技術、例えば上で検討したヘテロ二官能性架橋試薬を使用することにより、抗PRO10282抗体(抗Stra6)に共有的に結合させることができる。あるいは、本発明の抗体の少なくとも結合領域を本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部位に結合せしめてなる融合タンパク質を、当該技術においてよく知られている組換えDNA技術を使用して生成することができる(Neuberger等, Nature 312:604-608[1984])。
【0126】
10.抗体の製薬組成物
ここで同定されるPRO10282ポリペプチドに特異的に結合する抗体、並びに上記に開示したスクリーニングアッセイによって同定された他の分子は、種々の疾患の治療のために、製薬組成物の形態で投与することができる。
PRO10282ポリペプチドが細胞内にあり、全抗体が阻害剤として用いられる場合、取り込める抗体が好ましい。しかし、リポフェクション又はリポソームも抗体、又は抗体断片を細胞に導入するのために使用できる。抗体断片が用いられる場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小阻害断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持したペプチド分子が設計できる。このようなペプチドは、化学的に合成でき、又は組換えDNA技術によって生成できる。例えば、Marascoら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 7889-7893 (1993)参照。ここでの製剤は、治療すべき特定の徴候に必要な場合に1つ以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものも含んでよい。あるいは、又はそれに加えて、組成物は、細胞障害性薬剤、サイトカイン又は増殖阻害剤を含んでもよい。これらの分子は、適切には、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。
【0127】
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されていてもよい。これらの技術は、Remington's Pharmaceutical Science, 上掲に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなけらばならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。除放性マトリクスの例は、ポリエステルヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタメート、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商品名)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、ポリ-(D)-3-ヒドロキシブチル酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。カプセル化された抗体が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物学的活性の低下及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、含まれる機構に依存する安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を通した分子間S−S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の付加、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
【0128】
O.抗PRO10282(抗Stra6)抗体の用途
本発明の抗PRO10282抗体は様々な有用性を有している。例えば、抗PRO10282抗体は、PRO10282の診断アッセイ、例えばその特定細胞、組織、又は血清での発現の検出に用いられる。競合的結合アッセイ、直接又は間接サンドウィッチアッセイ及び不均一又は均一相で行われる免疫沈降アッセイ[Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc. (1987) pp. 147-158]等のこの分野で知られた種々の診断アッセイ技術が使用される。診断アッセイで用いられる抗体は、検出可能な部位で標識される。検出可能な部位は、直接又は間接に、検出可能なシグナルを発生しなければならない。例えば、検出可能な部位は、
3H、
14C、
32P、
35S又は
125I等の放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリン等の蛍光又は化学発光化合物、あるいはアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ又はセイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素であってよい。抗体に検出可能な部位を抱合させるためにこの分野で知られた任意の方法が用いられ、それにはHunterら, Nature 144:945 (1962);Davidら, Biochemistry, 13: 1014 (1974);Painら, J. Immunol. Meth., 40:219 (1981);及びNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)に記載された方法が含まれる。
【0129】
また、抗PRO10282抗体は、組換え細胞培養又は天然供給源からのPRO10282のアフィニティー精製にも有用である。この方法においては、PRO10282に対する抗体を、当該分野でよく知られている方法を使用して、セファデックス樹脂や濾紙のような適当な支持体に固定化する。次に、固定化された抗体を精製するPRO10282を含む試料と接触させた後、固定化された抗体に結合したPRO10282以外の試料中の物質を実質的に全て除去する適当な溶媒で支持体を洗浄する。最後に、PRO10282を抗体から脱離させる他の適当な溶媒で支持体を洗浄する。
抗PRO10282抗体は、多種多様なレチノイド反応性疾患の治療に利用できる化合物をスクリーニングする感度の良い方法の潜在的な用途を有するPRO10282ポリペプチドの発現を監視するのに利用できる。治療の対象として考慮される疾患のタイプとしては、乾癬、座瘡、異形成症、癌及び自己免疫疾患が含まれる。考慮される異形成症の種類としては、上皮組織の前癌性病変、例えば口腔白板症、頸部、咽頭及び気管支の異形成症を含む。考慮される癌の種類としては、大腸(腺癌)、肺(癌腫及び腺癌)、皮膚、頭部及び首部、頸部、子宮、胸部及び前立腺の癌を含む。考慮される自己免疫疾患の種類としては、リウマチ様関節炎、変形性関節症、全身性紅斑性狼瘡、尋常性天疱瘡及び落葉状天疱瘡を含む。抗PRO10282抗体は、このような疾患及び症状の治療に潜在的な治療用途を有している。
【0130】
P.抗PRO10282(Stra6)抗体及び他のStra6アンタゴニストを用いた治療方法
本発明の抗体及び他の抗腫瘍化合物は、ここで同定される増幅遺伝子の過剰発現及び/又は活性化を特徴とするものを含む種々の状態の治療に用いてもよいと考えられる。このような抗体及び、これらに限られないが有機及び無機小分子、ペプチド、アンチセンス分子等を含む他の化合物で治療される状態又は疾患の例としては、良性又は悪性腫瘍(例えば、腎臓(renal)、肝臓、腎臓(kidney)、膀胱、乳房、胃、卵巣、大腸直腸、前立腺、膵臓、肺、外陰部、甲状、肝臓の癌;肉腫;膠芽細胞腫;及び種々の頭部及び頸部の腫瘍);白血病及びリンパ悪性疾患;ニューロン、グリア、星状細胞、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、間質及び胞胚腔の疾患;及び炎症、脈管形成及び免疫学的な疾患が含まれる。本発明の抗Stra6抗体及び他のアンタゴニストでの特に好ましい治療の対象は、Wnt-1経路(例えばβ-カテニンシグナル伝達の異常な活性を引き起こす)で隠す(harbor)遺伝子が不足した及び/又はStra6の過剰発現した腫瘍である。Wnt-1経路での遺伝子欠損を隠すヒト癌はまた、Stra6の過剰発現を示すが、全てのStra6過剰発現腫瘍は、Wnt-1経路での突然変異に関連することが知られている。本発明のStra6アンタゴニストは、Stra6過剰発現腫瘍の治療に優れた潜在性を有する。このような腫瘍の好ましいグループは腫瘍、卵巣、子宮内膜、及びウィルムス腎腫瘍、黒色腫、及び褐色細胞腫(副腎髄質から誘発される腫瘍)を含む。
本発明の抗腫瘍剤、例えば抗体は、哺乳動物、好ましくはヒトに、周知の方法、例えば、ボーラスとして又は所定時間に渡る連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹膜内、脳脊髄内、皮下、関節間、滑膜内、鞘内、経口、局所、又は吸入経路などにより投与される。抗体の静脈内投与が好ましい。
【0131】
他の治療的養生法を抗癌剤、例えば本発明の抗体の投与と組み合わせてもよい。例えば、このような抗癌剤で治療される患者は放射線治療を受けてもよい。あるいは、又はそれに加えて、患者に化学療法剤を投与してもよい。このような化学療法剤の調製法及び用量スケジュールは、製造者の指示に従って使用されるか、熟練した実務者により経験的に決定される。そのような化学療法に対する調製法及び用量スケジュールはまたChemotherapy Service M.C. Perry編, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992)にも記載されている。化学療法剤は、本発明の抗腫瘍剤、例えば抗体の投与に先立って、又は続いて投与してもよく、あるいはそれらと同時に投与してもよい。本発明の抗体は、タモキシフェン等の抗エストロゲン化合物又はオナプリストンなどの抗プロゲステロン(EP 616812参照)の、それらの分子について知られた用量と組み合わせてもよい。
また、腫瘍関連抗原に対する抗体、例えばErbB2、EGFR、ErbB3、ErbB4、又は血管内皮因子(VEGF)に結合する抗体を投与することも好ましい。ときどきは、患者にサイトカインを投与することも有利である。好ましい実施態様では、ここの抗癌剤は、増殖阻害剤と同時投与される。例えば、まず増殖阻害剤を投与し、続いて本発明の抗癌剤を投与する。しかしながら、同時投与、又は本発明の抗癌剤を最初に投与することも考えられる。増殖阻害剤についての適切な用量は現在用いられている量であるが、増殖阻害剤とこの抗体との組み合わせ(相乗)効果により減少させ得る。
疾患の防止又は治療のための、ここでの抗腫瘍剤の適切な用量は、上記で定義したような治療される疾患の型、疾患の重篤さ及び経過、防止又は治療目的で薬剤が投与されるか否か、従前の治療、患者の臨床履歴及び薬剤に対する反応、及び主治医の裁量に依存する。薬剤は、適切には患者に一回又は一連の治療に渡って適切に投与される。
例えば、疾患の型及び重篤さに応じて、約1μg/kgから15mg/kg(例えば、0.1−20mg/kg)の抗体が、例えば、1又はそれ以上の別々の投与あるいは連続注入のいずれにしても、患者に投与するための最初の候補用量である。典型的な1日の用量は、上記の要因に応じて、約1μg/kgから100mg/kg又はそれ以上であろう。数日以上に渡る繰り返し投与のためには、状態に応じて、疾患の徴候に所望の抑制が現れるまで治療が続けられる。しかしながら、他の用量計画が有用であることもある。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易に監視される。
【0132】
Q.製造品
本発明の他の実施態様では、上記の疾患の診断又は治療に有用な物質を含む製造品が提供される。この製造品は容器と使用説明書とを含んでなる。好適な容器は、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、及び試験管を含む。容器は、ガラス又はプラスチックなどの種々の材料から形成されてよい。容器は、状態を診断し治療するのに有効な組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の活性剤は通常、本発明のポリペプチド又は抗体である。容器上又は添付される使用説明書又はラベルは、組成物が選択した状態の診断又は治療のために使用されることを示す。製造品はさらに、リン酸緩衝塩水、リンガー液及びデキストロース溶液などの製薬的に許容されるバッファーを含む第2の容器を具備してもよい。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用上の指示を付けたパッケージ挿入物を含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0133】
R.腫瘍の診断及び予知
或る種の腫瘍で過剰発現される増殖レセプター等の細胞表面タンパク質は候補薬剤又は腫瘍(例えば、癌)治療の優れた標的であるが、同じタンパク質は腫瘍細胞で増幅された遺伝子にコードされる分泌タンパク質とともに腫瘍の診断及び予知に用途が見出される。例えば、腫瘍細胞で増幅された遺伝子のタンパク質産物に対する抗体は腫瘍診断又は予知として使用できる。
例えば、抗体断片を含む抗体は、増幅された遺伝子にコードされるタンパク質(「マーカー遺伝子産物」)の発現の定性的又は定量的検出に用いることができる。抗体は、好ましくは検出可能な、例えば蛍光標識を備え、結合は光学顕微鏡、フローサイトメトリー、フルオロメトリー、又はこの分野で知られた他の技術によって観察できる。これらの技術は、増幅された遺伝子が細胞表面タンパク質、例えば増殖因子をコードする場合に特に好ましい。このような結合アッセイは、上記5節に実質的に記載されたように実施される。
マーカー遺伝子産物に結合する抗体のインサイツ検出は、例えば、免疫蛍光又は免疫電子顕微鏡によって実施できる。この目的のために、組織学的試料を患者から取り出し、好ましくは生物学的試料に抗体を重層させることにより、標識抗体をそれに適用する。この手法はまた、試験される組織におけるマーカー遺伝子産物の分布も決定できるようにする。当業者には、インサイツ検出のために広範な組織学的方法が容易に利用できることは明らかであろう。
【0134】
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
本明細書で引用した全ての特許及び文献の全体を、出典明示によりここに援用する。
実施例
実施例で言及されている市販試薬は、他に特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC登録番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、VAである。以下の実施例において、他に特定されない限り、「Sra6」は天然配列PRO10282ポリペプチドを意味する。
【0135】
実施例1
ヒトPRO10282及びPRO19578ポリペプチドをコードするcDNAクローンの単離
天然ヒトPRO10282及びPRO19578をコードするcDNAクローン(DNA148380−2827及びDNA148389−2827-1)は、酵母のスクリーニングを用い、一次cDNAクローンの5’末端を優先的に表すヒト胎児脳cDNAライブラリー中において同定された。
クローンDNA148380−2827は、単一のオープンリーディングフレームを含み、ヌクレオチド位置49−51に見かけの翻訳開始部位、そしてヌクレオチド位置2050−2052の停止コドンで終了する(Fig.1)。予測されるポリペプチド前駆体は667アミノ酸長である( Fig.2)。Fig.2に示された全長PRO10282タンパク質は、約73502ダルトンの見積もり分子量と約9.26のpIを持つ。Fig.2(配列番号:2)に示された全長PRO10282配列の分析により、Fig.2に示される様な様々な重要なポリペプチドドメインの存在が明らかにされ、これら重要なポリペプチドドメインの位置はおおよそ上述の通りである。クローンDNA148380−2827は、2000年1月11日にATCCに寄託され、ATCC寄託番号PTA-1181が付与される。
クローンDNA148389−2827-1は、単一のオープンリーディングフレームを含み、ヌクレオチド位置186-188に見かけの翻訳開始部位、そしてヌクレオチド位置2160−2162の停止コドンで終了する(Fig.6、配列番号:4)。予測されるポリペプチド前駆体は658アミノ酸長である(Fig.7、配列番号:5)。Fig.7に示された全長PRO19578タンパク質は、約72583ダルトンの見積もり分子量と約9.36のpIを持つ。Fig.7(配列番号:5)に示された全長PRO19578配列の分析により、Fig.7に示される様な様々な重要なポリペプチドドメインの存在が明らかにされ、これら重要なポリペプチドドメインの位置はおおよそ上述の通りである。注目すべき点は、9つの潜在的膜貫通ドメイン及びヒトとマウスの対応配列の間で保存される14のシステイン残基の存在である。マウスStra6は潜在的な3つのN−リンクグリコシル化部位を有するが、ヒトPRO19578(天然ヒトStra6)は一つを有する。クローンDNA148389−2827-1は、2000年2月23日にATCCに寄託され、ATCC寄託番号PTA-1405が付与される。
【0136】
Fig.2(配列番号:2)に示した全長配列、及びFig.7(配列番号:5)に示した全長配列のALIGN-2配列アラインメント分析法を用いたDayhoffデータベース(バージョン35.45 SwissProt 35)の分析は、PRO10282アミノ酸配列と以下のDayhoff配列との間の配列同一性を示す:AF062476, P_W88559及びHGS_RE259。
Fig.8に示すように、全長ヒトPRO10282及びPRO19578ポリペプチドとの比較により、PRO19578がPRO10282アミノ酸配列の位置89−97において9アミノ酸(SPVDFLAGD;配列番号:13)の欠失を含むことが示される。さらに、PRO19578は、PRO10282の対応する位置(位置527)のメチオニン(M)の代わりにアミノ酸位置518にイソロイシン(I)を含むが、これはこの位置におけるG/A多型から生じる。PRO10282と天然配列PRO19578は共にマウスStra6ポリペプチドのヒトホモログであると考えられており、従って「Stra6」と呼ぶこともある。マウスStra6及びDNA148340−2827によってコードされる天然配列ヒト全長PRO10282ポリペプチドとは、約74%のアミノ酸配列同一性を示す。
Fig.9はDNA148380−2827によってコードされる天然配列ヒト全長PRO10282ポリペプチドの疎水性プロットを示し、簡単には、「ヒトStra6」と称される。Fig.9に示されるように、該667アミノ酸長ポリペプチド中のアミノ酸残基の約50%は疎水性である。
UNIGENEの決定によると、ヒトStra6遺伝子は染色体15q23に位置した。予備的ではあるが細かいマッピングにより、Stra6がSTS間隔D15S124−D15S160に位置し、GeneMap’98の位置はG3マップ上の244.52に対応することが示された。
【0137】
実施例2
PRO10282及びPRO19578のハイブリダイゼーションプローブとしての使用
以下の方法は、PRO10282及びPRO19578をコードするヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションプローブとしての使用について記述する。
全長又は成熟PRO10282又はPRO19578のコード配列を含むDNAは、ヒト組織cDNAライブラリー又はヒト組織ゲノムライブラリー中でホモログDNA(PRO10282又はPRO19578の天然発生変異体をコードするものなど)をスクリーニングするためのプローブとして用いられる。
どちらかのライブラリーDNAsを含むフィルターのハイブリダイズ及び洗浄は以下の高緊縮性の条件下にて実施される。放射活性標識化したPRO10282由来のプローブのフィルターに対するハイブリダイゼーションは、50%ホルムアミド、5xSSC、0.1%ピロリン酸ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム、pH6.8、2xデンハード溶液、及び10%硫酸デキストランの溶液中で、42℃、20時間、実施された。フィルターの洗浄は、0.1xSSC及び0.1%SDSの水溶液中、42℃で行われた。
全長天然配列のPRO10282又はPRO19578をコードするDNAと所望の配列同一性を有するDNAは、この分野で知られた標準的な方法を用いて同定できる。
【0138】
実施例3
大腸菌におけるPRO10282及びPRO19578の発現
この実施例は、大腸菌における組み換え発現による所望のPRO10282及びPRO19578の非グリコシル化形態の調製を例示する。
PRO10282及びPRO19578をコードするDNA配列は、選択されたPCRプライマーを用いて最初に増幅する。プライマーは、選択された発現ベクターの制限酵素部位に対応する制限酵素部位を持たなければならない。種々の発現ベクターが用いられる。好適なベクターの例は、pBR322(大腸菌由来のもの;Bolivar等, Gene, 2:95 (1977)参照)であり、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性についての遺伝子を含む。ベクターは、制限酵素で消化され、脱リン酸される。PCR増幅した配列は、次いで、ベクターに結合させる。ベクターは、好ましくは抗生物質耐性遺伝子、trpプロモーター、polyhisリーダー(最初の6つのSTIIコドン、poly-His配列、及びエンテロキナーゼ切断部位を含む)、PRO10282及びPRO19578コード化領域、ラムダ転写ターミネーター、及びargU遺伝子を含む。
ライゲーション混合物は、次いで、Sambrook等, 上掲に記載された方法を用いた選択した大腸菌の形質転換に使用される。形質転換体は、それらのLBプレートで増殖する能力により同定され、次いで抗生物質耐性クローンが選択される。プラスミドDNAが単離され、制限分析及びDNA配列分析で確認される。
選択されたクローンは、抗生物質を添加したLBブロスなどの液体培地で終夜増殖させることができる。終夜培養物は、続いて大規模培地の播種に用いられる。次に細胞を最適光学密度まで増殖させ、その間に発現プロモーターが作動する。
更に数時間の培養の後、遠心分離による集菌が可能である。遠心分離で得られた細胞ペレットは、この分野で知られた種々の試薬を用いて可溶化され、次いで可溶化PRO10282タンパク質を、タンパク質が堅く結合する条件下で金属キレート化カラムを用いて精製する。
【0139】
以下の手法を用いて、poly-Hisタグ形態でPRO10282及びPRO19578を大腸菌で発現させてもよい。PRO10282及びPRO19578をコードするDNAを選択したPCRプライマーを用いて最初に増幅する。プライマーは、選択された発現ベクターの制限酵素部位に対応する制限酵素部位、及び効率的で信頼性のある翻訳開始、金属キレートカラムでの迅速な精製、及びエンテロキナーゼでのタンパク質分解的除去を与える他の有用な配列を含む。次いでPCR増幅された、poly-Hisタグ配列を発現ベクターに結合させ、それを株52(W3110 fuhA(tonA) lon galE rpoHts(htpRts) clpP(lacIq))に基づく大腸菌宿主の形質転換に使用する。形質転換体は、最初に50mg/mlのカルベニシリンを含有するLB中、30℃で振盪しながら3-5のO.D.600に達するまで増殖させる。ついで培地をCRAP培地(3.57gの(NH
4)
2SO
4、0.71gのクエン酸ナトリウム・2H2O、1.07gのKCl、5.36gのDifco酵母抽出物、500mL水中の5.36gのSheffield hycase SF、並びに110mMのMPOS、pH7.3、0.55%(w/v)のグルコース及び7mMのMgSO
4の混合で調製)中に50-100倍希釈し、30℃で振盪させながら約20-30時間増殖させる。試料を取り出してSDS-PAGEにより発現を確認し、バルク培地を遠心分離して細胞のペレットとする。細胞ペレットを精製及びリフォールディングまで凍結させる。
0.5から1Lの発酵(6-10gペレット)からの大腸菌ペーストを、7Mのグアニジン、20mMのトリス、pH8バッファー中で10容量(w/v)で再懸濁させる。固体硫酸ナトリウム及びテトラチオン酸ナトリウムを添加して最終濃度を各々0.1M及び0.02Mとし、溶液を4℃で終夜撹拌する。この工程により、すべてのシステイン残基が亜硫酸によりブロックされた変性タンパク質がもたらされる。溶液をBeckman Ultracentrifuge中で40,000rpmで30分間濃縮する。上清を金属キレートカラムバッファー(6Mのグアニジン、20mMのトリス、pH7.4)の3-5容量で希釈し、0.22ミクロンフィルターを通して濾過して透明化する。透明化抽出物を、金属キレートカラムバッファーで平衡化させた5mlのQiagen Ni
+2-NTA金属キレートカラムにロードする。カラムを50mMのイミダゾール(Calbiochem, Utrol grade)を含む添加バッファー、pH7.4で洗浄する。タンパク質を250mMのイミダゾールを含有するバッファーで溶離する。所望のタンパク質を含有する画分をプールし、4℃で保存する。タンパク質濃度は、そのアミノ酸配列に基づいて計算した吸光係数を用いて280nmにおけるその吸収により見積もる。
【0140】
タンパク質を、20mMのトリス、pH8.6、0.3MのNaCl、2.5Mの尿素、5mMのシステイン、20mMのグリシン及び1mMのEDTAからなる新たに調製したリフォールディングバッファー中に徐々に希釈することによりタンパク質をリフォールディングさせる。リフォールディング容量は、最終的なタンパク質濃度が50〜100マイクログラム/mlとなるように選択する。リフォールディング溶液を4℃で12-36時間ゆっくり撹拌する。リフォールディング反応はTFAを採取濃度0.4%(約3のpH)で添加することにより停止させる。タンパク質をさらに精製する前に、溶液を0.22ミクロンフィルターを通して濾過し、アセトニトリルを最終濃度2-10%で添加する。再生したタンパク質を、Poros R1/H逆相カラムで、0.1%TFAの移動バッファーと10〜80%のアセトニトリル勾配での溶離を用いてクロマトグラフィーにかける。A280吸収を持つ画分のアリコートをSDSポリアクリルアミドゲルで分析し、相同な再生タンパク質を含有する画分をプールする。一般的に、殆どの正しく再生したタンパク質種は、これらの種が最もコンパクトであり、その疎水性内面が逆相樹脂との相互作用から遮蔽されているので、アセトニトリルの最低濃度で溶離される。凝集した種は通常、より高いアセトニトリル濃度で溶離される。誤って再生したタンパク質を所望の形態から除くのに加えて、逆相工程は試料からエンドトキシンも除去する。
所望の再生したPRO10282及びPRO19578ポリペプチドを含有する画分をプールし、溶液に向けた窒素の弱い気流を用いてアセトニトリルを除去する。タンパク質を、透析又は調製バッファーで平衡化したG25 Superfine(Pharmacia)樹脂でのゲル濾過及び滅菌濾過により、0.14Mの塩化ナトリウム及び4%のマンニトールを含む20mMのHepes、pH6.8に調製する。
【0141】
特に、天然ヒトStra6タンパク質PRO10282の2つの細胞外ドメイン(ECD)、ペプチドA(アミノ酸229−295)及びペプチドB(アミノ酸532−667)は、アミノ酸配列MKHQHQHQHQHQHQMHQ(配列番号:12)を有するN−末端ポリヒスチジンリーダーを伴って、別々に発現された。転写は大腸菌のアルカリホスファターゼプロモーターによってコントロールされ(Kikuchi等, Nucleic Acids Res. 9:5671-5678[1981])、trpオペロンリボソーム結合部位(Yanofsky等, Nucleic Acids Res. 9:6647-6668[1981])は翻訳のために用意された。翻訳終結コドンの下流は、λから転写ターミネーターまでであり(Scholtissek及びGrosse, Nucleic Acids Res. 15:3185[1987])、その後にレアーなtRNA遺伝子pro2、argU、及びglyTが続く(Komine等, J. Mol. Biol. 212:579-598[1990];Fournier及びOzeki, Microbiol. Rev. 49:379-397[1985])。
2つのStra6ECDコード化配列DNA断片は全長cDNAクローンからPCRによって調製され、上述の発現ベクター中に挿入され、pST239と名付けた。DNA配列確認の後、PE148380A及びPE148380Bと名付けられた新規Stra6発現プラスミドは、大腸菌株58F3((fhuAΔ(tonAΔ)lonΔgalErpoHts(htpRts)ΔclpP laclq ΔompTΔ(nmpc-fepE)ΔslyD)。これらの形質転換体のルリア培地培養物は、最初30℃で一晩生育され、その後、アルカリホスファターゼプロモーターを誘導するためにリン酸制限培地中で100倍に希釈した。振盪しながら30℃で24時間後、培養物は遠心し、細胞ペーストはペプチドの精製を開始するまで凍結させた。
精製については、大腸菌ペースト(6-10mg沈殿)を10倍容(w/v)の7Mグアニジン塩酸、20mM Tris,pH8のバッファー中に懸濁させた。個体の亜硫酸ナトリウム及び四チオン酸ナトリウムが、それぞれ最終濃度0.1M及び0.02Mとなるように添加され、溶液は4℃で一晩撹拌された。遠心により溶液を透明にし、6M グアニジン、HCl、20 mM Tris、pH7.4で平衡化されたキアゲンNi−NTA金属キレートカラムに添加した。カラムは50mMイミダゾール(Calbiochem, Utrol grade)を含む追加のバッファーで洗浄された。タンパク質は、250mMイミダゾールを含むバッファーで溶出された。所望のタンパク質を含む画分がプールされ、1mM HClに対して透析され、4℃で保存された。
【0142】
実施例4
哺乳動物細胞におけるPRO10282及びPRO19578ポリペプチドの発現
この実施例は、哺乳動物細胞における組み換え発現によるPRO10282及びPRO19578ポリペプチドのグリコシル化形態の調製を例示する。
発現ベクターとしてpRK5(1989年3月15日発行のEP 307,247参照のこと)を用いた。場合によっては、PRO10282及びPRO19578DNAを、これらのDNAをpRK5へ挿入させることのできる選択した制限酵素とSambrook等, 上掲に記載されたようなライゲーション方法を用いて、pRK5へ挿入させる。得られたベクターは、各々pRK5−PRO10282及びpRK5−PRO19578ポリペプチドと呼ばれる。
一実施態様では、選択された宿主細胞は293細胞とすることができる。ヒト293細胞(ATCC CCL 1573)は、ウシ胎児血清及び場合によっては滋養成分及び/又は抗生物質を添加したDMEMなどの媒質中で組織培養プレートにおいて増殖させて集密化する。約10μgのpRK5−PRO10282又はpRK5−PRO19578DNAを約1μgのVA RNA遺伝子コード化DNA[Thimmappaya等, Cell, 31:543 (1982)]と混合し、500μlの1mMトリス-HCl、0.1mMEDTA、0.227MCaCl
2に溶解させる。この混合物に、滴状の、500μlの50mMHEPES(pH7.35)、280mMのNaCl、1.5mMのNaPO
4を添加し、25℃で10分間沈殿物を形成させる。沈殿物を懸濁し、293細胞に加えて37℃で約4時間安定させる。培養培地を吸引し、2mlのPBS中20%グリセロールを30秒間添加する。293細胞は、次いで無血清培地で洗浄し、新鮮な培地を添加し、細胞を約5日間インキュベートする。
形質移入の約24時間後、培養培地を除去し、培養培地(のみ)又は200μCi/ml
35S−システイン及び200μCi/ml
35S−メチオニンを含む培養培地で置換する。12時間のインキュベーションの後、条件培地を回収し、スピンフィルターで濃縮し、15%SDSゲルに添加する。処理したゲルを乾燥させ、PRO10282ポリペプチドの存在を明らかにするために、選択された時間、フィルムに暴露させる。形質転換した細胞を含む培地は、更なるインキュベーションを施し(無血清培地で)、培地を選択されたバイオアッセイで調べる。
【0143】
これに換わる技術において、PRO10282又はPRO19578は、Somparyrac等, Proc. Natl. Acad. Sci., 12:7575 (1981)に記載されたデキストラン硫酸法を用いて293細胞に一過的に導入される。293細胞は、スピナーフラスコ内で最大密度まで増殖させ、700μgのpRK5−PRO10282又はpRK5−PRO19578を添加する。細胞は、まずスピナーフラスコから遠心分離によって濃縮し、PBSで洗浄する。DNA−デキストラン沈殿物を細胞ペレット上で4時間インキュベートする。細胞を20%グリセロールで90秒間処理し、組織培養培地で洗浄し、組織培養培地、5μg/mlウシインスリン及び0.1μg/mlウシトランスフェリンを含むスピナーフラスコに再度導入する。約4日後に、条件培地を遠心分離して濾過し、細胞及び細胞片を除去する。次いで発現されたPRO10282又はPRO19578を含む試料を濃縮し、透析及び/又はカラムクロマトグラフィー等の選択した方法によって精製する。
他の実施態様では、PRO10282又はPRO19578をCHO細胞で発現させることができる。pRK5−PRO10282又はpRK5−PRO19578は、CaPO
4又はDEAE−デキストランなどの公知の試薬を用いてCHO細胞に形質移入することができる。上記したように、細胞培地をインキュベートし、培地を培養培地(のみ)又は
35S-メチオニン等の放射性標識を含む培地に置換することができる。PRO10282又はPRO19578ポリペプチドの存在を同定した後、培養培地を無血清培地に置換してもよい。好ましくは、培地を約6日間インキュベートし、次いで条件培地を収集する。次いで、発現されたPRO10282又はPRO19578ペプチドを含む培地を濃縮して、選択した方法にとって精製することができる。
【0144】
また、エピトープタグ化PRO10282又はPRO19578は、宿主CHO細胞において発現させてもよい。PRO10282又はPRO19578は、pRK5ベクターからサブクローニングした。サブクローン挿入物は、次いで、PCRを施してバキュロウイルス発現ベクター中のpoly-hisタグ等の選択されたエピトープタグを持つ枠に融合できる。poly-hisタグPRO10282又はPRO19578挿入物は、次いで、安定なクローンの選択のためのDHFR等の選択マーカーを含むSV40誘導ベクターにサブクローニングできる。最後に、CHO細胞をSV40誘導ベクターで(上記のように)形質移入する。発現を確認するために、上記のように標識化を行ってもよい。発現されたpoly-HisタグPRO10282又はPRO19578を含む培養培地は、次いで濃縮し、Ni
2+−キレートアフィニティークロマトグラフィー等の選択された方法により精製できる。
またPRO10282又はPRO19578は、一過性発現法によりCHO及び/又はCOS細胞で、他の安定な発現方法によりCHO細胞で発現させてもよい。
CHO細胞における安定な発現は以下の方法を用いて実施される。タンパク質は、それは対応するタンパク質の可溶化形態及び/又はpoly-Hisタグ形態のコード化配列(例えば、細胞外ドメイン)がIgG1のヒンジ、CH2及びCH2ドメインを含む定常領域配列に融合したIgG生成物(イムノアドヘシン)、又はpoly-Hisタグ形態として発現される。
PCR増幅に続いて、対応するDNAを、Ausubel等, Current Protocols of Molecular Biology, Unit 3.16, John Wiley and Sons (1997)に記載されたような標準的技術を用いてCHO発現ベクターにサブクローニングする。CHO発現ベクターは、対象とするDNAの5’及び3’に適合する制限部位を有し、cDNAの便利なシャトル化ができるように生成される。ベクターは、Lucas等, Nucl. Acids Res. 24: 9, 1774-1779 (1996)に記載されたようにCHO細胞での発現を用い、対象とするcDNA及びジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)の発現の制御にSV40初期プロモーター/エンハンサーを用いる。DHFR発現は、形質移入に続くプラスミドの安定な維持のための選択を可能にする。
所望のプラスミドDNAの12マイクログラムを、市販の形質移入試薬Superfect(登録商標)(Quiagen), Dosper(登録商標)及びFugene(登録商標)(Boehringer Mannheim)約一千万のCHO細胞に導入する。細胞は、上掲のLucas等に記載されているように増殖させる。約3x10
−7細胞を、下記のような更なる増殖及び生産のためにアンプル中で凍結させる。
プラスミドDNAを含むアンプルを水浴中に置いて解凍し、ボルテックスにより混合する。内容物を10mlの媒質を含む遠心管にピペットして、1000rpmで5分間遠心分離する。上清を吸引して細胞を10mlの選択培地(0.2μm濾過PS20、5%の0.2μm透析濾過ウシ胎児血清を添加)中に懸濁させる。次いで細胞を90mlの選択培地を含む100mlスピナーに分けた1-2日後、細胞を150mlの選択培地を満たした250mlスピナーに移し、37℃でインキュベートする。さらに2-3日後、250ml、500ml及び2000mlのスピナーを3x10
5細胞/mLで播種する。細胞培地を遠心分離により新鮮培地に交換し、生産培地に再懸濁させる。任意の適切なCHO培地を用いてもよいが、実際には1992年6月16日に発行された米国特許第5,122,469号に記載された生産培地を使用してもよい。3Lの生産スピナーを1.2x10
6細胞/mLで播種する。0日目に、細胞数とpHを測定する。1日目に、スピナーをサンプルし、濾過空気での散布を実施する。2日目に、スピナーをサンプルし、温度を33℃に変え、500 g/Lのグルコース及び0.6mlの10%消泡剤(例えば35%ポリジメチルシロキサンエマルション、Dow Corning 365 Medical Grade Emulsion)の30mlとする。生産を通して、pHは7.2近傍に調節し維持する。10日後、又は生存率が70%を下回るまで、細胞培地を遠心分離で回収して0.22μmフィルターを通して濾過する。濾過物は、4℃で貯蔵するか、すぐに精製用カラムに添加する。
【0145】
poly-Hisタグ生成物について、タンパク質はNi-NTAカラム(Qiagen)を用いて精製する。精製の前に、イミダゾールを条件培地に5mMの濃度まで添加する。条件培地を、0.3MのNaCl及び5mMイミダゾールを含む20mMのHepes, pH7.4バッファーで平衡化した6mlのNi-NTAカラムに4-5ml/分の流速で4℃においてポンプ供給する。添加後、カラムをさらに平衡バッファーで洗浄し、タンパク質を0.25Mイミダゾールを含む平衡バッファーで溶出する。高度に精製されたタンパク質は、続いて10mMのHepes、0.14MのNaCl及び4%のマンニトールを含む貯蔵バッファー中で25mlのG25 Superfine(Pharmacia)を用いて脱塩し、-80℃で保存する。
イムノアドヘシン(Fc含有)生成物を以下のようにして条件培地から精製する。条件培地を、20mMのリン酸ナトリウムバッファー, pH6.8で平衡化した5mlのプロテインAカラム(Pharmacia)に添加する。添加後、カラムを平衡バッファーで強く洗浄した後、100mMのクエン酸, pH3.5で溶出する。溶出したタンパク質は、1mlの画分を275μlの1Mトリスバッファー, pH9を含むチューブに回収することにより即座に中和する。高度に精製されたタンパク質は、続いてpoly-Hisタグタンパク質について上述した保存バッファー中で脱塩する。均一性はSDSポリアクリルアミドゲルで評価し、エドマン(Edman)分解によりN-末端アミノ酸配列決定する。
【0146】
実施例5
酵母菌でのPRO10282及びPRO19578の発現
以下の方法は、酵母菌中でのPRO10282及びPRO19578の組換え発現を記述する。
まず、ADH2/GAPDHプロモーターからのPRO10282の細胞内生産又は分泌のための酵母菌発現ベクターを生成する。PRO10282の細胞内発現を導くために、PRO10282ポリペプチド(PRO19578を含む)をコードするDNA及びプロモーターを選択したプラスミドの適当な制限酵素部位に挿入した。分泌のために、PRO10282をコードするDNAを、ADH2/GAPDHプロモーターをコードするDNA、天然PRO10282シグナルペプチド又は他の哺乳動物シグナルペプチド、又は、例えば酵母菌アルファ因子分泌シグナル/リーダー配列、及び(必要ならば)PRO10282の発現のためのリンカー配列とともに、選択したプラスミドへクローニングすることができる。
次に、酵母菌株AB110等の酵母菌は上記の発現プラスミドで形質転換し、選択された発酵培地中で培養できる。形質転換した酵母菌上清は、10%トリクロロ酢酸での沈降及びSDS−PAGEでの分離によって分析し、次いでクマシーブルー染色でゲルの染色をすることができる。
組換体PRO10282(PRO19578を含む)ポリペプチドは、実質上、遠心分離による酵母細胞の発酵液からの分離、その後、選択されたカートリッジフィルターによる培養液の濃縮によって単離及び精製される。PRO10282(例えばPRO19578)を含む濃縮物は、選択されたカラムクロマトグラフィー樹脂を使用することによってさらに精製される。
【0147】
実施例6
バキュロウイルス感染昆虫細胞でのPRO10282及びPRO19578発現
以下の方法は、バキュロウイルス感染昆虫細胞中におけるPRO10282及びPRO19578の組換体の発現を記述する。
PRO10282又はPRO19578をコードする配列を、バキュロウイルス発現ベクターに含まれるエピトープタグの上流に融合させる。このようなエピトープタグは、poly-hisタグ及び免疫グロブリンタグ(IgGのFc領域など)を含む。pVL1393(Navogen)などの市販されているプラスミドから誘導されるプラスミドを含む種々のプラスミドを用いることができる。簡単には、PRO10282又はPRO19578コード化配列の所定部分、例えば膜貫通タンパク質の細胞外ドメインをコードする配列又はタンパク質が細胞外である場合の成熟タンパク質をコードする配列などが、5’及び3’領域に相補的なプライマーを用いたPCRにより増幅される。5’プライマーは、隣接する(選択された)制限酵素部位を包含していてもよい。その後、生産物は、選択された制限酵素で消化され、発現ベクターにサブクローニングされる。
組換えバキュロウイルスは、上記のプラスミド及びBaculoGold(商品名)ウイルスDNA(Pharmingen)を、Spodoptera frugiperda(「Sf9」)細胞(ATCC CRL 1711)中にリポフェクチン(GIBCO-BRLから市販)を用いて同時形質移入することにより作成される。28℃で4-5日インキュベートした後、放出されたウイルスを回収し、更なる増幅に用いた。ウイルス感染及びタンパク質発現は、O'Reilley等, Baculovirus expression vectors: A laboratory Manual, Oxford: Oxford University Press (1994)に記載されているように実施した。
【0148】
次に、発現されたpoly-his タグPRO10282又はPRO19578は、例えばNi
2+−キレートアフィニティークロマトグラフィーにより以下のように精製される。抽出は、Rupert等, Nature, 362:175-179 (1993)に記述されているように、ウイルス感染した組み換えSf9細胞から調製した。簡単には、Sf9細胞を洗浄し、超音波処理用バッファー(25mlのHepes、pH7.9;12.5mMのMgCl
2;0.1mM EDTA;10%グリセロール;0.1%のNP−40;0.4MのKCl)中に再懸濁し、氷上で2回20秒間超音波処理した。超音波処理物を遠心分離で透明化し、上清を負荷バッファー(50mMリン酸塩、300mMのNaCl、10%グリセロール、pH7.8)で50倍希釈し、0.45μmフィルターで濾過した。Ni
2+−NTAアガロースカラム(Qiagenから市販)を5mlの総容積で調製し、25mlの水で洗浄し、25mlの添加バッファーで平衡化させた。濾過した細胞抽出物は、毎分0.5mlでカラムに添加した。カラムをA
280のベースラインまで添加バッファーで洗浄し、その時点でフラクションの回収を始める。次に、カラムを、結合タンパク質を非特異的に溶離する二次洗浄バッファー(50mMリン酸塩;300mMのNaCl、10%グリセロール、pH6.0)で洗浄した。A
280のベースラインに再度到達した後、カラムを二次洗浄バッファー中で0から500mlイミダゾール勾配で展開した。1mlのフラクションを回収し、SDS−PAGE及び銀染色又はアルカリホスファターゼ(Qiagen)に複合したNi
2+−NTAでのウェスタンブロットで分析した。溶離されたHis
10−タグPRO10282又はPRO19578を含むフラクションをプールして添加バッファーに対して透析した。
あるいは、IgGタグ(又はFcタグ)PRO10282又はPRO19578の精製は、例えば、プロテインA又はプロテインGカラムクロマトグラフィーを含む公知のクロマトグラフィー技術を用いて実施できる。
【0149】
実施例7
PRO10282又はPRO19578に結合する抗体の調製
この実施例は、PRO10282又はPRO19578に特異的に結合できるモノクローナル抗体の調製を例示する。
モノクローナル抗体の生産のための技術は、この分野で知られており、例えば、上掲のGodingに記載されている。用いられ得る免疫原は、精製されたPRO10282及びPRO19578、PRO10282又はPRO19578を含む融合タンパク質、及び細胞表面に組換えPRO10282又はPRO19578を発現する細胞を含む。免疫原の選択は、当業者が過度の実験をすることなく成すことが可能である。
Balb/c等のマウスを、完全フロイントアジュバントに乳化して皮下又は腹腔内に1-100マイクログラムで注入したPRO10282又はPRO19578免疫原で免疫化する。あるいは、免疫原をMPL−TDMアジュバント(Ribi Immunochemical Research, Hamilton, MT)に乳化し、動物の後足蹠に注入してもよい。免疫化したマウスは、次いで10から12日後に、選択したアジュバント中に乳化した付加的免疫源で追加免疫する。その後、数週間、マウスを更なる免疫化注射で追加免疫する。抗-PRO10128抗体又は抗-PRO19578抗体の検出のためのELISAアッセイでテストするために、眼窩後出血からの血清試料をマウスから周期的に採取してもよい。
適当な抗体力価が検出された後、抗体に「ポジティブ(陽性)」な動物はPRO10282又はPRO19578の最終静脈内注射の注入をすることができる。3から4日後、マウスを屠殺し、脾臓細胞を取り出した。次いで脾臓細胞を(35%ポリエチレングリコールを用いて)、ATCCから番号CRL1597で入手可能なP3X63AgU.1等の選択されたマウス骨髄腫株化細胞に融合させた。融合によりハイブリドーマ細胞が生成され、次いで、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン)培地を含む96ウェル組織培養プレートに蒔き、非融合細胞、骨髄腫ハイブリッド、及び脾臓細胞ハイブリッドの増殖を阻害した。
【0150】
ハイブリドーマ細胞は、PRO10282又はPRO19578に対する反応性についてのELISAでスクリーニングされる。PRO10282又はPRO19578に対する所望のモノクローナル抗体を分泌する「ポジティブ(陽性)」ハイブリドーマ細胞の決定は、技術常識の範囲内である。
陽性ハイブリドーマ細胞を同系のBalb/cマウスに腹腔内注入し、抗-PRO10282又は抗-PRO19578モノクローナル抗体を含む腹水を生産させる。あるいは、ハイブリドーマ細胞を、組織培養フラスコ又はローラーボトルで増殖させることもできる。腹水中に生成されたモノクローナル抗体の精製は、硫酸アンモニウム沈殿、それに続くゲル排除クロマトグラフィ−を用いて行うことができる。あるいは、抗体のプロテインA又はプロテインGへの親和性に基づくアフィニティークロマトグラフィーを用いることもできる。
特に、5匹のBalb/cマウス(Charles River Laboratories, Wilmington, DE)を、ヒトStra6のアミノ酸532−667に対応する、精製されたユニザイム結合アミノ酸ペプチドで、Ribiアジュバント(Ribi immunochem Research, Inc., Hamilton, MO)中で過剰免疫した。膝窩リンパ節由来のB細胞は、既述のようにして(X63.Ag8.653;American Type Culture Collection, Rockville, MD)、マウスミエローマ細胞(Hongo等, Hybridoma 14:253-260[1995])と融合させた。10-14日後、上清を回収し、直接酵素結合免疫アッセイ(ELISA)により抗体産物のスクリーニングを行った。限界希釈による2ラウンドのスクリーニングの後、ELISA及び免疫組織染色によって最も高い免疫結合性示す8つのポジティブクローンは、mAbのインビボでの生産のためにプリスティン(Pristine)で初回刺激されたマウスにインジェクトした(Freud及びBlair, J. Immunol. 129:2826-2830[1982])。腹水はプールされ、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(Pharmacia fast protein liquid chromatography(FPLC);Pharmacia, Uppsala, Sweden)により、既述のようにして(Hongo等, 上掲)精製された。精製された抗体標品は滅菌的に濾過され(0.2μmポアサイズ;Nalgene, Rochester, NY)、リン酸緩衝化食塩水(PBS)中、4℃にて保存された。
【0151】
実施例8
特異的抗体を用いたPRO10282又はPRO19578のポリペプチドの精製
天然又は組換えPRO10282又はPRO19578ポリペプチドは、この分野の種々の標準的なタンパク質精製方法によって精製できる。例えば、pro−PRO10282又はpro−PRO19578ポリペプチド、成熟PRO10282又はPRO19578、又はpre−PRO10282又はpre−PRO19578ポリペプチドは、対象のPRO10282に特異的な抗体を用いて、イムノアフィニティークロマトグラフィーによって精製される。一般に、免疫親和性カラムは抗-PRO10282又は抗-PRO19578ポリペプチド抗体を活性化クロマトグラフィー樹脂に共有結合させて作製される。
ポリクローナルイムノグロブリンは、硫酸アンモニウムでの沈殿又は固定化プロテインA(Pharmacia LKB Biotechnology, Piscataway, N.J.)での精製のいずれかにより免疫血清から調製される。同様に、モノクローナル抗体は、硫酸アンモニウム沈殿又は固定化プロテインAでのクロマトグラフィーによりマウス腹水液から調製される。部分的に精製された免疫グロブリンは、CnBr-活性化セファロース
TM(Pharmacia LKB Biotechnology)等のクロマトグラフィー樹脂に共有結合される。抗体が樹脂に結合され、樹脂がブロックされ、誘導体樹脂は製造者の指示に従って洗浄される。
このようなイムノアフィニティーカラムは、可溶化形態のPRO10282又はPRO19578ポリペプチドを含有する細胞からの画分を調製することによるPRO10282又はPRO19578ポリペプチドの精製において利用される。この調製物は、洗浄剤の添加又はこの分野で公知の方法により分画遠心分離を介して得られる全細胞又は細胞成分画分の可溶化により誘導される。あるいは、シグナル配列を含む可溶性PRO10282又はPRO19578ポリペプチドは、細胞が増殖する培地中に有効な量で分泌される。
可溶化PRO10282又はPRO19578ポリペプチド含有調製物は、イムノアフィニティーカラムを通し、カラムはPRO10282又はPRO19578ポリペプチドの好ましい吸着をさせる条件下(例えば、洗浄剤存在下の高イオン強度バッファー)で洗浄される。その後、カラムは、抗体/PRO10282又はPRO19578ポリペプチド結合を解離する条件下(例えば、約2−3といった低いpH、高濃度の尿素又はチオシアン酸イオン等のカオトロープ)で溶離され、PRO10282又はPRO19578ポリペプチドが回収される。
【0152】
実施例9
薬剤スクリーニング
本発明は、PRO10282(Stra6)ポリペプチド(PRO19578を含む)又はその結合断片を種々の薬剤スクリーニング技術において使用することによる化合物のスクリーニングに特に有用である。そのようなテストに用いられるPRO10282ポリペプチド又は断片は、溶液中に遊離状態でも、固体支持体に固定されても、細胞表面に位置しても、細胞内に局在化していてもよい。薬剤スクリーニングの1つの方法は、PRO10282ポリペプチド又は断片を発現する組換え核酸で安定に形質移入される真核生物又は原核生物宿主細胞を利用する。薬剤は、そのような形質移入細胞に対して、競合的結合アッセイにおいてスクリーニングされる。そのような細胞は、生存可能又は固定化形態のいずれかにおいて、標準的な結合アッセイに使用できる。例えば、PRO10282ポリペプチド又は断片とテストされる試薬の間での複合体形成を測定してもよい。あるいは、テストされる試薬によって生ずるPRO10282ポリペプチドとその標的細胞との間の複合体形成の減少をテストする事もできる。
従って、本発明は、PRO10282(Stra6)ポリペプチド関連疾病又は疾患に影響を与えうる薬剤又は任意の他の試薬のスクリーニング方法を提供する。これらの方法は、その試薬をStra6ポリペプチド又は断片に接触させ、当該技術分野において趣致の方法により、(i)試薬とStra6ポリペプチド又は断片との間の複合体の存在について、又は(ii)Stra6ポリペプチド又は断片と細胞との間の複合体の存在についてアッセイすることを含んで成る。これらの競合結合アッセイでは、Stra6ポリペプチド又は断片が典型的には標識される。適切なインキュベーションの後、フリーのStra6ポリペプチド又は断片を結合形態のものから分離し、フリー又は未複合の標識の量が、特定の試薬がStra6ポリペプチドに結合する、又はStra6ポリペプチド/細胞複合体を阻害する能力の尺度となる。
【0153】
薬剤スクリーニングのための他の技術は、ポリペプチドに対して適当な結合親和性を持つ化合物についてのハイスループットスクリーニングを提供し、1984年9月13日に発行されたWO 84/03564に詳細に記載されている。簡単に述べれば、多数の異なる小型ペプチド試験化合物が、プラスチックピン等の固体支持体又は幾つかの他の表面上で合成される。PRO10282(Stra6)ポリペプチドに適用すると、ペプチドテスト化合物はStra6ポリペプチドと反応して洗浄される。結合したStra6ポリペプチドは当該分野で周知の方法により検出される。また、精製したStra6ポリペプチドは、上記の薬剤スクリーニング技術に使用するためにプレート上に直接被覆することもできる。さらに、非中和抗体は、ペプチドを捕捉し、それを固体支持体上に固定化するのに使用できる。
また、本発明は、Stra6ポリペプチドに結合可能な中和抗体が、Stra6ポリペプチド又はその断片について試験化合物と特異的に競合する競合薬剤スクリーニングアッセイも考慮する。この方法において、抗体は、Stra6ポリペプチドで、一又は複数の抗原決定基を持つ任意のペプチドの存在を検出するのに使用できる。
【0154】
実施例10
合理的薬剤設計
合理的薬剤設計の目的は、対象とする生物学的活性ポリペプチド(即ち、PRO10282(Stra6)ポリペプチド)又はそれらが相互作用する小分子、例えばアゴニスト、アンタゴニスト、又はインヒビターの構造的類似体を製造することである。これらの例は、PRO10282ポリペプチド又はPRO19578ポリペプチドのより活性で安定な形態、又はインビボで天然配列のPRO10282又はPRO19578ポリペプチドの機能を促進又は阻害する薬剤の創作に使用できる(参考、Hodgson, Bio/Technology, 9: 19-21 (1991))。
1つのアプローチにおいて、PRO10282又はPRO19578ポリペプチド、又はPRO10282又はPRO19578ポリペプチド−インヒビター複合体の三次元構造が、X線結晶学により、コンピュータモデル化により、最も典型的には2つの方法の組み合わせにより決定される。分子の構造を解明し活性部位を決定するためには、天然PRO10282又はPRO19578ポリペプチドの形状及び電荷の両方が確認されなければならない。数は少ないが、PRO10282又はPRO19578ポリペプチドの構造に関する有用な情報が相同タンパク質の構造に基づいたモデル化によって得られることもある。両方の場合において、関連する構造情報は、類似体PROポリペプチド様分子の設計又は有効なインヒビターの同定に使用される。合理的な薬剤設計の有用な例は、Braxton及びWells, Biochemistry, 31: 7796-7801 (1992)に示されているような向上した活性又は安定性を持つ分子、又はAthauda等, J. Biochem., 113: 742-746 (1993)に示されているような天然ペプチドのインヒビター、アゴニスト、又はアンタゴニストとして作用する分子を含む。
また、上記のような機能アッセイによって選択された標的特異的な抗体を単離しその決せよう構造を解明することもできる。この方法は、原理的には、それに続く薬剤設計が基礎をおくことのできるファーマコア(pharmacore)を生成する。機能的な薬理学的に活性な抗体に対する抗-イディオタイプ抗体(抗-ids)を生成することにより、タンパク質結晶学をバイパスすることができる。鏡像の鏡像として、抗-idsの結合部位は最初のレセプターの類似物であると予測できる。抗-idsは、次いで、化学的又は生物学的に製造したペプチドのバンクからペプチドを同定及び単離するのに使用できる。単離されたペプチドは、ファーマコアとして機能するであろう。
本発明により、十分な量のPRO10282ポリペプチド(PRO19578を含む)がX線結晶学などの分析実験を実施するために入手可能である。さらに、ここに提供したPRO10282ポリペプチドアミノ酸配列の知識は、X線結晶学に換える、又はそれに加えるコンピュータモデル化技術で用いられる知識を提供する。
【0155】
実施例11
組織発現分布
オリゴヌクレオチドプローブを、定量的PCR増幅反応の使用において、添付の図に示すPRO10282ポリペプチドコード化ヌクレオチド配列から構成した。オリゴヌクレオチドプローブを、標準的PCR反応に関連したテンプレートの3'末端から、約200-600塩基対の増幅された断片が付与されるように選択した。オリゴヌクレオチドプローブを、異なるヒト成人及び/又は胎児の組織源から単離されたクロンテックRNAを用いた標準的な定量PCR増幅反応に使用し、アガロースゲル電気泳動により分析し、試験した種々の組織におけるPRO10282ポリペプチドコード化核酸の発現レベルを定量的に決定した。種々の異なるヒト組織型におけるPRO10282ポリペプチドコード化核酸の発現パターン又は特異的発現の知識により、転移腫瘍等の一次組織源を決定するために、他の組織特異的マーカーを用いて又は用いずに、組織分類分けに有用な診断用マーカーが提供される。これらのアッセイの結果(Fig.10に示す)は、DNA148380−2827分子が成人腎臓、精巣及び子宮において高頻度に発現されており;乳房、前立腺及び気管において有意に発現され;脳、心臓、肺及び胸腺において弱く発現され;肝臓、骨髄、大腸、骨格筋、小腸、脾臓及び胃では発現されていない。
全RNAはクロンテック(Palo Alto, California)から購入し、以下のPCR増幅のためのプライマー/プローブのセットを用いて分析された。
h.Stra6.tmf3: 5’ CACACTCGAGAGCCAGATATTTT (配列番号:6)
h.Stra5.tmr4: 5’ AACAAGTTTATTGCAGGGAACAC (配列番号:7)
h.Stra6.tmp4: 5’ TGTAGTTTTTATGCCTTTGGCTATTATGAAAGAGGT
(配列番号:8)
tmf = 正方向プライマー
tmr = 逆方向プライマー
tmp = プローブ
以下の実施例12に記述してあるように実施したインサイツハイブリダイゼーションにより、腎臓尿細管上皮細胞、子宮筋、間質性細胞、乳房管及び小葉を取り巻く間質性細胞におけるStra6の発現が確認され、一方、脳、肝臓、脾臓、膵臓、心臓、肺、胃、小腸、大腸、前立腺、脾臓、及び副腎皮質における発現はほとんど検出されなかった(データは示さず)。インサイツハイブリダイゼーションによって調べられた正常組織のうち、最も高い発現レベルは、PCR増幅には含まれなかった胎盤及び副腎髄質において見られた。
【0156】
実施例12
ヒト腫瘍における天然ヒトヒトPRO10282(Stra6)転写物の過剰発現
本実施例は天然ヒト全長PRO10282(Stra6)が、ある種のヒト大腸腫瘍及び大腸、肺、腎臓及び乳房などの種々のヒト腫瘍由来の細胞株においても、有意に過剰発現されていることを示す。
スクリーニングのための出発物質はヒト大腸腫瘍、又は種々のヒト大腸、腎臓、乳房、又は肺腫瘍細胞株から単離された全RNAであった。大腸腫瘍組織において、Stra6RNA発現は、同一の患者からの正常大腸組織(粘膜)由来のRNAと比較して定量された。種々の腫瘍細胞株におけるStra6RNA発現は、種々の正常細胞株(即ち、正常大腸、腎臓及び肺細胞株)と比較して定量された。
リアルタイム定量PCR(RT−PCR、例えば、TAQMAN ABI PRIZM 7700
TM[Perkin Elmer, Applied Biosystems Division, Foster City, California])は、Taqmanアッセイ試薬を使用して、正常細胞とある種の癌又は癌細胞株由来の細胞におけるPRO10282(Stra6)がコードする遺伝子(DNA148380−2827に対応する)の発現レベルの定量的な差をモニターするために用いられた。50μlのRT−PCR反応は、5μlの10xTaqman Buffer A, 各300μMのdNTF, 5 mM MgCl
2, 10 unitsのRNAseインヒビター, 12.5 units のMuLV逆転写酵素, 1.25 unitsのAmpliTaq Gold DNA Polymerase, 200 nM プローブ, 500 nM プライマー及び100 ng RNAにより構成された。反応条件は、逆転写反応が48℃、30分間、変性が95℃、25秒間及び65℃、1分間で構成された。反応産物は、4−20%ポリアクリルアミドゲル(Novex)上で分析された。
標準曲線は、分析される各サンプルのために、対象の各遺伝子並びにグリセルアルデヒド−3−デヒドロゲナーゼリン酸(GAPDH)ハウスキーピング遺伝子に関する相対的な発現レベルを定量するために使用された。相対的基準化単位は対象の遺伝子のmRNAレベルをGAPDHmRNAレベルで割ることによって得た。相対的基準化ユニットは、誘導倍率を決定するために実験サンプルとコントロールの間で比較された。
【0157】
結果は、PRO10282をコードするmRNAが、スクリーニングされた原発性大腸癌又は大腸、腎臓、乳房、又は肺癌細胞株のいずれかにおいて過剰発現されるかどうか決定するために用いられた。分析に用いられた幾つかの対応するヒト正常及び大腸腫瘍サンプルの組織学的結果を以下に示す:
数 組織学
850 浸潤性腺癌;壊死は無し;良好に保存
851 浸潤性腺癌;壊死は最小;良好な状態
892 浸潤性腺癌;壊死は最小;良好な状態
869 浸潤性腺癌;壊死は最小;良好な状態
893 正常粘膜−異形成−浸潤性腺癌;壊死は最小
;良好な状態
870 腺癌−重篤な異形成;壊死は最小;良好な状態
871 腺癌−異形成−正常粘膜;壊死は無し;良好な状態
848 腺癌−絨毛腺腫に発症している様子
正常粘膜/粘膜下組織;壊死は無し、良好な状態
872 浸潤性腺癌;約70%の腫瘍が壊死
全体的に良好な保存
778 腺癌−通常、乳頭形態;正常/過形成性粘膜;
最小壊死;許容な保存
17 中程度な高分化型腺癌
18 高分化型腺癌
64 中程度な高分化型腺癌
76 中程度な高分化型腺癌
【0158】
ヒト肺細胞株には、正常ヒト肺線維芽細胞株MRC5(CCL-171)及びIMR90(CCL-186)、ヒト肺癌腫上皮細胞株A549(SRCC768、CCL-185)、ヒト類表皮性肺癌腫細胞株Calu-1(SRCC769;HTB−54)、ヒト未分化癌腫細胞株Calu−6(SRCC770,HTB−56−おそらく肺)、肺に乳頭癌腫を持つ患者の心膜液由来のヒト上皮細胞株NCl−H441(SRCC772;HTB-174)、及びヒト肺扁平上皮細胞癌腫細胞株SW900(SRCC775;HTB−59)が含まれ、全てATCCより入手可能である。
例えば、大腸細胞株には、正常大腸線維芽細胞株CCD112Co(CRL-1541)、ヒト結腸直腸腺癌細胞株CaCo−2(HTB−37)、ヒト結腸直腸腺癌細胞株WiDr(CCl−218)、ヒト結腸直腸腺癌細胞株HCT-116(CCL−247)、ヒト結腸直腸腺癌細胞株SK−Co1(HTB−39)、ヒト結腸直腸腺癌細胞株COLO320(SRCC778;CCL−220)、ヒト結腸直腸腺癌細胞株HT29(SRCC779;HTB−38)、ヒト結腸直腸腺癌細胞株SW403(CCL−230)、ヒト大腸癌細胞株NCl/HCC2998、及びヒト結腸直腸腺癌細胞株Colo320DM(CCL−220)が含まれ、全てATCC又は公的な供給源より入手可能である。
ヒト乳房癌腫細胞株にはヒト乳房腺癌細胞株MCF7(SRCC766;HTB−22)、及びヒト乳癌細胞株NCl/ADR−RESが含まれ、共に公的に入手可能である。
腎臓株には、アデノウィルス5DNAで形質転換された293細胞株(CRL-1573)が含まれる。2つのウィルムス腫瘍細胞株、G401(CRL-1441)及びSK−NEP-1(CRL-1573)も分析に含まれていた。
【0159】
RNA調製
RNAは前述の培養細胞株から調製した。単離は、キアゲンの精製キット、バッファー及びプロテアーゼを用いて、取り扱い説明書及び以下の記述に従って行われた。より特別な場合は、細胞からの全RNAはキアゲンRNeasy midi-columnsを用いて単離された。組織サンプル由来の全RNAは、RNA Stat-60(Tel-Test)を用いて単離された。腫瘍から調製されたRNAは塩化セシウム密度勾配遠心によって単離された。
固形ヒト腫瘍サンプルの調製及び溶解:
腫瘍サンプルは計量し、50mlのコニカルチューブ中に入れ、氷上に保った。処理は1調製あたり(1チップ/調製)250mgを超えない量に限定された。プロテアーゼ溶液は、最終濃度20μg/mlになるように冷やしたddH
2O6.25ml中に希釈し、4℃で保存した。G2バッファー(20ml)はDNAseAを最終濃度200μg/ml(100mg/mlのストックから)になるように希釈することで調製した。腫瘍組織は、エアロゾルの吸引を避けるために層流のTCフード中において室温に保ち、ポリトロンの大チップも使用し、10mlのG2バッファー中で60秒間ホモジナイズした。サンプル間において、ポリトロンは、2LのddH
2O、次にG2バッファー(50ml)中で各々2x30秒間回転させて掃除を行った。未だ組織がジェネレーターチップ上に残存している場合、装置を解体して掃除を行った。
キアゲンプロテアーゼ(上述のように1.0ml調製した)を添加し、次いでボルテックス及び50℃で3時間インキュベートした。抽出物が透明になるまで、インキュベーション及び遠心を繰り返した(例えば、さらに30−60分間インキュベートし、3000xgで10分間、4℃にて沈殿にした)。
【0160】
定量
RNAのリアルタイムPCR分析から得られた結果は、最初はデルタCTユニットとして表現された。1ユニットは1PCRサイクル又は正常に比較しておよそ2倍の増幅に相当し、2ユニットは4倍に相当し、3ユニットは8倍に相当し、以下同様である。データは倍率の差に変換し、そのように示した。最初、逆転写酵素は、100ngの全RNA又はポリA+RNAからプライマーにオリゴ(dT)を用いてcDNAを合成するために用いられた。その結果、生じたcDNAはPCR用のテンプレートとして使用した。定量化はPRO10282コード化配列の3’側の非翻訳領域に由来するプライマーと各介在配列に対応するTAQMAN
TM蛍光プローブを用いて得られた。3’側領域を用いるとゲノムDNA中のイントロン−エクソン境界域をクロスすることを回避できるため、本方法を用いてRNAの発現を正確に評価するためには必須の要件である。PRO10282がコードする遺伝子の増幅のために使用されるプライマー及びプローブの配列(正方向、逆方向、プローブ)は以下の通りである:
1組には、上記実施例11中、配列番号:6、7及び8として記述された各々正方向及び逆方向及びプローブが含まれた。
含まれる他のセット:
hStra6.tmfl1: 5' AGACCAGGTCCCACACTGA (配列番号:9)
hStra6.tmr1: 5' TTCATAATAGCCAAAGGCATAAAA (配列番号:10)、及び
h.Stra6.tmp1: 5' CTGCCCACACTCGAGAGCCAGAT 3' (配列番号11)
ヒト GAPDH:
正方向プライマー: 5'-GAAGATGGTGATGGGATTTC-3' (配列番号:14)
逆方向プライマー; 5'-GAAGGTGAAGGTCGGAGTC-3' (配列番号:15)
プローブ: 5'-CAAGCTTCCCGTTCTCAGCC-3' (配列番号:16)
5’ヌクレアーゼアッセイ反応は、リアルタイムで増幅をモニターするためにTaqDNAポリメラーゼの5’エクソヌクレアーゼ活性を利用する蛍光PCRベースの技術である。2つのオリゴヌクレオチドプライマーは、PCR反応に典型的なアンプリコンを生成するために用いられる。第三のオリゴヌクレオチド又はプローブは、2つのPCRプライマーの間に位置するヌクレオチド配列を検出するために設計される。該プローブは、TaqDNAポリメラーゼ酵素によって延長不能であり、レポーター蛍光色素及び消光色素で標識化される。レポーター色素からのレーザーによって誘導された何れの発光も、プローブ上で2つの色素が近接して存在する場合に消光色素によって消光される。増幅反応中、TaqDNAポリメラーゼ酵素は、テンプレート依存的な様式でプローブを切断する。その結果得られるプローブ断片は溶液中で解離し、放出されたレポーター色素由来のシグナルは、第二のフルオロフォアーの消光効果を免れる。レポーター色素の1分子が、合成された新規分子の各々から遊離され、非消光レポーター色素の検出は、データの定量的な解釈の基礎を提供する。
上で述べたように、5’ヌクレアーゼ法は、ABI PRIZM 7700
TM Sequence Detection System
TMなどのリアルタイム定量的PCR装置上で実行される。システムは、サーモサイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)、カメラ及びコンピューターから構成される。システムはサーモサイクラー上、96ウェル形式中でサンプルを増幅させる。増幅の間、レーザーで誘導された蛍光シグナルは、ファイバーオプティクスケーブルを介して全96ウェルに対してリアルタイムで収集され、CCDで検出される。システムは機器を動かし、データを解析するためのソフトウェアーを含む。
5’−ヌクレアーゼアッセイのデータは、最初、Ct又は閾値サイクルで表される。これは、レポーターシグナルが蛍光のバックグラウンドレベル以上で蓄積するサイクルとして定義される。Ct値は、癌細胞中のRNAの発現を正常細胞のものと比較する場合、核酸サンプル中における特定標的配列の開始コピーの相対的な数の定量的な測定値として用いられる。
【0161】
結果
ヒトStra6RNA(DNA148380−2827に相当する)は、対応する正常ヒト大腸組織と比較した場合、ヒト大腸腫瘍組織中で強い過剰発現を示す。Fig.11に示すように、同一の患者由来の対応する正常結腸直腸粘膜由来のRNAと比較して、ヒトStra6RNA(DNA148380−2827に相当する)は調べられた14のヒト腫瘍大腸組織全てにおいて過剰発現していることが見いだされた。過剰発現は、2−及び170−倍の間で変動し、14腫瘍組織サンプル中7つが少なくとも約10−倍であった。定量的PCRによって得られたサイクル閾値は、多くの正常粘膜サンプル中において、Stra6mRNAレベルが非常に低いか又はおそらく存在していないことを示した。
第二の検出方法として、定量的PCR反応(各40サイクル)が完了した後に得られる産物をポリアクリルアミドで電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色によって視覚化した。Fig.12Aで示すように、標準としてハウスキーピング遺伝子、グリセルアルデヒド−3−デヒドロゲナーゼリン酸(GAPDH)の発現を使用し、正常な対応サンプルと比較した腫瘍サンプル中において、Stra6mRNAから実質的により多くの量のPCR産物が生産された。これに対して、内部コントロールGAPDHmRNA由来の産物の比較可能なレベルは、全てのサンプルから生産された。
大腸腺癌中のStra6の発現は、以下のように実施されたインサイツハイブリダイゼーション(ISH)によって、上皮腫瘍細胞に対して局在化された。
32P標識化センス及びアンチセンスリボプローブは、DNA148380−2827によってコードされるヒトStra6ポリペプチドのコード化配列であるヌクレオチド432-1247に相当する874bpPCR産物から転写された。ホルマリン固定、パラフィン包埋組織切片は、既述に従い処理された(Pennica等, Proc. Natl. Acad. Sci USA 95:14717-22 [1998])。結果はFig.12Bに示される。
Fig.13に示されるように、ヒトStra6RNA(DNA148380−2827に相当する)は、種々の乳房、腎臓、大腸及び肺腫瘍細胞株においても有意に過剰発現されている。「相対的RNA発現」とは、正常及び腫瘍組織中におけるRNA発現は、任意に選択された標準細胞株SW480における発現を比較して示されることを意味する。
【0162】
種々の腫瘍切片において得られるインサイツハイブリダイゼーションの結果は、Fig.16にも示される。大腸腺癌以外の幾つかの腫瘍タイプも高レベルのStra6発現を示した。これらには、3つのメラノーマのうちの3つ(Fig.16A及びB)、4つの子宮内膜腺癌のうち3つ(Fig.16C及びD)、3つの卵巣腺癌のうち2つ、及び腎臓のウィルムス腫瘍(Fig.16E及びF)が含まれた。これらの種々の腫瘍におけるStra6のインサイツハイブリダイゼーションシグナルは、正常腎臓及び子宮において比較的高い発現レベルを示し、正常大腸においては低いレベルを示すデータと一致して、大腸腺癌よりもかなり高かった。Stra6は正常副腎髄質中で検出されるため、この組織由来の腫瘍である2つのクロム親和細胞腫も調べた。これらの腫瘍において、Stra6の発現は本研究において調べられた他の如何なる腫瘍又は組織の発現をも凌駕した(Figures 16G及びH)。Stra6は正常腎臓において検出され、ウィルムス腫瘍において強く発現されたが、腎細胞癌中には検出されなかった。腎臓移行上皮癌において、腫瘍上皮細胞よりむしろ腫瘍関連間質細胞がStra6を発現した(データは示さず)。
PRO10282をコードするDNA148380−2827のmRNAは種々の腫瘍並びに細胞株由来の多くの腫瘍において過剰発現されるので、腫瘍の形成及び/又は成長に関連すると思われる。結果的に、DNA148380−2827(PRO10282)又はDNA148389−2827-1によってコードされるPRO19578などの該タンパク質の他の天然発生変異体に対して指向されたアンタゴニスト(例えば、抗体、有機及び無機小分子、Stra6変異体などのペプチド及びポリペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、癌、特に、限定はしないが、大腸、肺、乳房、及び/又は腎臓癌の診断、予防及び/又は治療において有用であると期待される。
DNA148380−2827(PRO10282)によってコードされるタンパク質に対して作製された治療的抗体のようなアンタゴニストの有効性は、PRO10282をコードする遺伝子の発現を刺激する薬剤によって増強され得る。例えば、9−シス−レチノイン酸又はオール−トランスレチノイン酸を用いたヒト結腸直腸癌細胞株の処理の結果、Stra6mRNA(Fig.15)の発現の劇的な増強が生じる。従って、適当なレチノイドと組合わせたPRO10282に対する治療的抗体による癌患者の治療は、抗体による腫瘍殺傷を増強することが期待される。DNA148389−2827-1によってコードされるヒトのスプライシング変異体などの、種々の腫瘍において過剰発現される他の天然Stra6ポリペプチド対する抗体に対しても同じことが言えるであろう。
【0163】
実施例13
Wnt-1及びレチノイドによるStra6の相乗的誘導
材料と方法
細胞培養
C57MG及びC57MG/Wnt-1細胞は、10%ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、及び2.5μg/mlピューロマイシン(Edge Biosystems)を添加したダルベッコ修正イーグル培地中で生育させた。テトラサイクリン応答Wnt-1発現を行うC57MG細胞は、ピューロマイシンを含まず、400 μg/mlG418(Gibco BRL)、100μg/ml ハイグロマイシンB(Gibco BRL)及び 50 ng/mlテトラサイクリンを添加した完全培地中で生育させた(Korinek等, Mol. Cell Biol. 18:1248-56[1998])。Wnt-1誘導研究において、細胞はリン酸緩衝化食塩水で洗浄し、テトラサイクリンを含まない培地中で10,24,48,72及び96時間培養し、その後回収した。0時間のコントロールのディッシュは、テトラサイクリンを含む培地中で一貫して維持した。全てのディッシュは、同時に回収し、全RNAは各時点において抽出した。RT−PCRは、Wnt-1、Stra6及びGAPDH特異的なプライマー及びプローブを用い、各サンプルからの100 ngの全RNAに対して実施した。
ヒト大腸腺癌細胞株HCT116及びWiDr細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクションから入手した。HCT116細胞はMcCoy's 5A培地中、10 %ウシ胎児血清( FBS)を添加して維持した。WiDr細胞は、10 % FBSを添加したダルベッコ最小必須培地(DMEM)中で維持した。レチノイン酸誘導研究において、細胞は、2.5mlの培地を含む60mmディッシュあたり10
5細胞でプレートし、24時間生育させた。細胞はビタミンD3、オール−トランス−RA(Spectrum Laboratory Products)、又は9−シス−RA(Toronto Research Chemicals Inc.)(DMSO中、1μMの最終濃度)で表示した時間に処理した。コントロール細胞は等量のDMSOで処理した。
C57MG/親細胞をWnt−3aの条件培地で処理する場合、細胞は1μM 9−シス−RAの存在下又は非存在下においてL細胞又はL−W3A細胞由来の標準又は条件培地中でインキュベートした。条件培地は、既述に従い調製した(Willert等, Genes Dev. 13:1768-73[1999])。48時間後、細胞は、フッ化ナトリウム、バナジン酸塩を含むPBS中に掻き取って回収し、液体窒素中で急速凍結させた。RNAはRNAeasyキット(Qiagen)を用い、取り扱い説明書に従ってカラム上でDNaseI処理を更に行って調製した。
【0164】
ウェスタンブロッティング
C57MG/Wnt-1TET細胞株の場合、Wnt-1の発現は、テトラサイクリンの非存在下において0,24,48,又は72時間細胞を培養することによって誘導した。細胞はTriton X-100溶解バッファー[20 mM tris-HCl(pH8.0), 137 mM NaCl, 1 % Triton X-100, 1 mM EGTA, 10 % glycerol, 1.5 mM MgCl
2, 1 mM dithiothreitol, 1 mM バナジン酸ナトリウム, 50 mM フッ化ナトリウム, 及び完全プロテアーゼインヒビターカクテル(Boehringer Mannheim)中で溶解させ、タンパク質等価物はSDS−PAGEで泳動し、イムノブロッティングされた。ブロットは、β−カテニン(Rubinfeld等, Science 262:1731-1734[1993])に対する0.2 μg/ml アフィニティー精製したウサギポリクローナル抗体、0.1μg/ml抗-ERK2モノクローナル抗体(Transduction Laboratories)、又は1:2000のRARγ-1に対する抗血清 (Affinity Bioreagents)と共にインキュベートした。WiDr細胞株の場合、細胞は1μM オール−トランス−RAで、48時間処理し、その後TritonX-100溶解バッファー中で溶解させ、上述のように処理した。ブロットは、1:50抗-Stra6ペプチドBモノクローナルハイブリドーマ培養上清(クローン12F4.2H9.1D5)と共にインキュベートした。
免疫組織化学
WiDrは9−シス−レチノイン酸又はDMSOで処理し、その後剥がして、低速遠心により沈殿に回収した。細胞沈殿物は、10 % 中和緩衝化ホルマリン中で一晩固定し、脱水し、パラフィン中に包埋した。免疫組織化学は、抗-Stra6ペプチドBモノクローナルハイブリドーマ培養上清(クローン12F4.2H9.1D5)又は非特異的マウスアイソタイプIgG2Aを一次抗体として用いて実施し、その後、既述(Eberhard等, Am. J. Pathol. 145:640-9[1994])に従い、色素原(Vectastain Elite Kit, Vector Laboratories)としてジアミノベンチジンを用いてアビジン-ビオチン複合体を使用した検出を行った。切片はヘマトキシリンで対比染色した。
Wnt-1トランスジェニックマウス
乳腺中でWnt-1プロトオンコジーンを発現するトランスジェニックマウスは、典型的には該組織中において過形成性傷害及び発達性腫瘍を示す(Tsukamoto等, Cell 55:619-625[1988])。これらのマウスは、以下の実験において使用された。
【0165】
結果
Easwaran等は、以前、MCF-7細胞を変異体β−カテニン、及びレチノイドで同時形質移入させたとき、合成レチノイン酸応答レポーター遺伝子の増強された活性を報告した(Easwaran等, Curr. Biol. 9:1415-1418[1999])。レチノイン酸誘導遺伝子としてStra6が元々同定された(Bouillet等, Mech Dev. 63:173-186[1997])ことを併せて考慮すると、レチノイン酸はC57MG細胞株においてStra6のレベルを増加させるためにWnt-1と共同するのか否か疑問が生じた。C57MG親株の9−シス−RA又はオール−RA(ATRA)による48時間の処理により、Stra6mRNAのレベルは顕著に増大したが、DMSO又はビタミンD3は影響を及ぼさなかった(Fig.17A)。予想したように、DMSO又はビタミンD3のいずれかによるC57MG/Wnt-1細胞の処理によって、親細胞株と比較して増大したStra6mRNAのレベルを示した。Wnt-1によるStra6誘導のレベルは、9−シス−RAによるC57MG親細胞の刺激において観察されたレベルに匹敵するものであった。しかし、C57MG/Wnt-1細胞株の9−シス−RAによる処理は、無処理のC57MG/Wnt-1又は9−シス−RAで処理したC57MG親細胞と比較してStra6mRNAに対して更に10倍の増大を誘導した。同様の結果はオール−トランス−RAに関しても得られた。
Wnt-1発現に無関係ではあるが、C57MG/Wnt-1細胞株における潜在的なクローンの多様性は、親のコントロール細胞と比較したレチノイン酸に対する異なる応答の原因である可能性があった。この点を解決するために、9−シス−RAの存在下又は非存在下において可溶性Wnt−3aによる刺激に対するC57MG親細胞の応答をテストした。Wnt−3aは、Wnt-1と同様のトランスフォーミング特性を示すWnt-1ホモログであり、マウスL細胞中で可溶性リガンドとして生産される。Wnt−3aを発現する培養L細胞由来であって、コントロールのL細胞由来ではない条件培地は、C57MG細胞中におけるStra6の発現を誘導した(Fig.17B)。僅かに高いレベルの誘導が9−シス−RAによるC57MG細胞の処理において観察された。しかし、9−シス−RAとWnt−3aを組合せた結果、いずれかの薬剤単独の場合に認められたレベルを遙かに凌ぐStra6転写物のレベルになった。
【0166】
レチノイン酸で処理したC57MG/Wnt-1細胞におけるStra6の誘導が、増大したβ−カテニンのレベルによって増強されたのであれば、その結果、β−カテニン又はAPCの何れかに変異を含むヒト大腸癌細胞中でレチノイン酸に応答して、Stra6の同様な誘導が期待できる。このようなことが起きるかどうか決定するために、Stra6mRNAレベルが、HCT116細胞中においてβ−カテニンにおける変異の活性化を引き起こし、WiDr細胞において野生型APCの両コピーを欠失させるレチノイン酸処理の前後において測定された。両方の細胞株において、Stra6mRNAレベルの有意な増加が、DMSO又はビタミンD3に比べてATRA又は9−シス−RAによる処理によって認められた(Fig.17C)。HCT116細胞株におけるATRAによるStra6遺伝子の活性化は、インサイツハイブリダイゼーションによって確認された(Fig.17D)。ATRAで処理されたWiDr細胞における予想される73kDaStra6タンパク質のバンドの誘導は、Stra6特異的なモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロット分析によって検出された(Fig.17E)。WiDr細胞の免疫組織化学分析によって、レチノイン酸に応答したStra6タンパク質の増加が原形質膜に局在化することが明らかとなった(Fig.17F)。
RARγ遺伝子は、アフリカツメガエルの胚においてWntシグナルに対するターゲットとして提言されており、レチノイン酸によるStra6の誘導はレチノイン酸レセプターのサブタイプの存在に依存することが示された(McGrew等, Mech. Dev. 87:21-32[1999];Taneja等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:7854-8[1995])。併せて考えると、これらの知見は、Wnt及びレチノイドによるStra6の相乗的な活性化がWntシグナルによるRARγ発現の活性化によることを示唆する。Wnt-1シグナリングが哺乳類細胞におけるRARγのレベルに対して何らかの影響を及ぼすかどうか決定するために、条件的にWnt-1を発現するC57MG細胞から調製した溶解物についてレセプターに関してウェスタンブロットを実施した。Wnt-1の発現において、RARγ-1に特異的な抗体と反応し、見かけの分子量64kDaに移動するタンパク質が24時間後に誘導され、その発現は48時間後には増大した(Fig.18A)。また、Wnt-1トランスジェニックマウスから得られる過形成性乳腺及び乳腺腫瘍も分析し、正常乳腺と比較してこれらの組織においてRARγmRNAの上昇したレベルを検出した(Fig.18B)。19の腺癌から単離した同じ量のRNA中に存在するRARγのレベルを定量的PCRによって評価した。特に、RARγmRNA発現は、正常ヒト大腸組織と比較して検査されたヒト大腸腫瘍の19のうち14(74%)においておよそ2−4倍増大した(Fig.18C)。これらの結果は、Wnt-1シグナルがRARγの発現を促進し、Wnt-1経路によって動かされる該レセプターがマウス及びヒトの腫瘍において上昇することを示す。
【0167】
実験的知見の考察
遺伝子発現の解明によるアプローチは、mRNA転写物の公平な検出に基づくもので、その結果、遺伝子の活性化を生じるメカニズムへの予期せぬ見識を導くことも可能である。ここで、Wnt-1がレチノイン酸応答遺伝子であるStra6の誘導を促進したことが示されたが、このことはWnt及びレチノイン酸によって導出されるシグナル経路間の関係を示唆する。この関係は、Wnt及びレチノイン酸の組合せによるStra6の相乗的な誘導を示すことによってさらに指示された。この相乗作用の原因となる3つの選択可能な説明が存在する:i)TCF/LEFsのようなWntに対し直接応答する転写因子はStra6遺伝子のプロモーターエレメントに結合し、活性化し得る;ii)Wnt経路におけるシグナル構成要素は、適当なレチノイン酸レセプター(RAR)と直接相互作用し、RARを介した遺伝子発現を増強し得る;又はiii)Wnt-1によるシグナルは適当なRARの発現を活性化し、その結果、細胞をレチノイン酸に対して感作させることができる。この最後の提言は、ここに提示されたデータがWnt-1シグナルは速やかにRARγレセプターの発現を誘導することを示すので好ましいものであるが、本発明は作用に関する如何なる特定の理論又はメカニズムによっても限定されない。
これまでの研究により、RARγ遺伝子の特異的破壊はレチノイドによるStra6遺伝子の誘導を顕著に減少させたことが示されている(Taneja等, 上掲)。しかしながら、RARγのWnt-1誘導による発現とは別のメカニズムも観察された相乗作用に貢献している可能性もまだある。β−カテニンがレチノイン酸レセプターに結合するという提言は魅力的ではあるが、我々の細胞株において内在性RARγとβ−カテニンとの特異的な如何なる関係をも観察していない。しかし、β−カテニンのRARγへの結合は、インヴィトロで示されたように(Easwaran等, 1999, 上掲)、Wnt-1によるStra6の活性化に関係する可能性がある。RARγを持たないトランスジェニック動物におけるStra6の発現パターンは、野生型の同腹仔で観察される場合よりも広範囲に及び、レチノイン酸によるStra6の誘導はコントロールと比較してヌルの動物に由来する細胞において増強された(Bouillet等, 1997, 上掲;Taneja等, 1995, 上掲)。従って、RARγはStra6の発現に対し阻害的であり、β−カテニンがRARγの機能を阻害するならば、Wnt-1によるβ−カテニンの活性化はこの阻害を潜在的に軽減させる可能性がある。
【0168】
Wnt-1シグナルによるレチノイン酸応答遺伝子の相乗的誘導により、Wnt-1経路における遺伝的欠損を隠すヒトの癌はStra6の過剰発現を呈するということが暗示される。大部分の結腸直腸腫瘍はAPC腫瘍サプレッサー又はβ−カテニンのいずれかをコードする遺伝子に変異を持ち(Polakis, Curr. Opin. Genet. Dev. 9:15-21 [1999])、従って、14の結腸直腸腫瘍のうち14において対応する正常組織と比較した場合、Stra6転写物の過剰発現を検出している(実施例12を参照のこと)。β−カテニンにおける変異の活性化は、卵巣及び子宮内膜の癌、ウィルムス腎臓腫瘍及びメラノーマにおいても同定されており、このことはWnt-1シグナルにおける欠損がこれらの癌の進行に貢献することを示す(Kobayashi等, Jpn. J. Cancer Res. 90:55-9[1999];Koesters等, Cancer Res. 59:3880-2[1999];Palacios及びHamallo, Cancer Res. 58:1344-7[1998];Rimm等, Am. J. Pathol. 154:325-9[1999];Rubinfeld等, Science 262:1731-1734[1993];Wright等, Int. J. Cancer 82:625-9[1999])。これらのヒトの癌の4つ全てにおいて、インサイツハイブリダイゼーションによって決定されるように(実施例12を参照のこと)Stra6mRNAの過剰発現が示された。副腎髄質由来の腫瘍であるクロム親和性細胞腫は、非常に高レベルStra6mRNAを示すが、Wnt-1シグナル経路における変異に関するこれらの腫瘍の状態は報告されていない。メラノーマ及びクロム親和性細胞腫を生じさせる細胞型は、神経冠由来の発生学的派生を共通に有するということは興味深いことである。特に、腎臓のウィルムス腫瘍、クロム親和性細胞腫、及び子宮体癌は全てStra6が正常に発現される器官において発症する。このことは、Wnt-1経路によって動かされるような腫瘍化シグナルは、分化の原因であるシグナルと相互作用し、これによりStra6の発現を過剰に活性化することを示唆する。
ヒトStra6タンパク質に特異的なモノクローナル抗体による結腸直腸癌細胞の染色によって決定されるように、ヒトのStra6タンパク質は細胞表面に存在する。さらに、細胞膜において観察される染色強度は、レチノイン酸による細胞の処理の後増大した。従って、Stra6は細胞表面に局在する多段階膜貫通タンパク質をコードする様である。
【0169】
材料の寄託
次の材料をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション,10801 University Blvd., Manassas, Virginia20110-2209, USA(ATCC)に寄託した:
材料 ATCC寄託番号 寄託日
DNA148380-2827 PTA-1181 2000年1月11日
DNA148389-2827-1 PTA-1405 2000年2月23日
これらの寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約及びその規則(ブダペスト条約)の規定に従って行われた。これは、寄託の日付から30年間、寄託の生存可能な培養が維持されることを保証するものである。寄託物はブダペスト条約の条項に従い、またジェネンテック社とATCCとの間の合意に従い、ATCCから入手することができ、これは、どれが最初であろうとも、関連した米国特許の発行時又は任意の米国又は外国特許出願の公開時に、寄託培養物の後代を永久かつ非制限的に入手可能とすることを保証し、米国特許法第122条35U.S.C.及びそれに従う特許庁長官規則(特に参照番号886OG638の37CFR第1.14条を含む)に従って権利を有すると米国特許庁長官が決定した者に後代を入手可能とすることを保証するものである。
本出願の譲受人は、寄託した培養物が、適切な条件下で培養されていた場合に死滅もしくは損失又は破壊されたならば、材料は通知時に同一の他のものと即座に取り替えることに同意する。寄託物質の入手可能性は、特許法に従いあらゆる政府の権限下で認められた権利に違反して、本発明を実施するライセンスであるとみなされるものではない。
上記の文書による明細書は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。寄託した態様は、本発明のある側面の一つの説明として意図されており、機能的に等価なあらゆる作成物がこの発明の範囲内にあるため、寄託された作成物により、本発明の範囲が限定されるものではない。ここでの物質の寄託は、文書による説明が、そのベストモードを含む、本発明の任意の側面の実施を可能にするために不十分であることを認めるものではないし、それが表す特定の例証に対して請求の範囲を制限するものと解釈されるものでもない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に改変することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の請求の範囲内に入るものである。