(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701629
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/22 20060101AFI20150326BHJP
A47C 1/025 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
B60N2/22
A47C1/025
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-19428(P2011-19428)
(22)【出願日】2011年2月1日
(65)【公開番号】特開2012-158252(P2012-158252A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2014年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085187
【弁理士】
【氏名又は名称】井島 藤治
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 秀彦
【審査官】
望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−285246(JP,A)
【文献】
特開2005−230300(JP,A)
【文献】
特開2002−065387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/22
A47C 1/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒面に円周方向に沿って内歯が形成され、一方の面が開放面となった有底円筒状の第1部材と、
前記内歯と噛合可能な外歯を有した複数のポールと、
前記第1部材の開放面側に積層され、前記第1部材と前記円周方向に相対回転可能に設けられ、前記外歯が前記内歯と噛合するロック位置,前記外歯が前記内歯から離れたアンロック位置の間で前記各ポールを案内するポールガイドが形成された第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間で、前記相対回転の軸上に回転可能に設けられ、一方の方向に回転すると前記外歯が前記内歯に噛合する方向に前記ポールを移動し、他方の方向に回転すると前記外歯が前記内歯より離れる方向に前記ポールを移動させるロックレリーズ手段と、
前記ポールをロック位置方向に付勢する付勢手段と、
前記第1部材の前記内歯より底面側の内筒面に形成され、円周方向に沿った円弧状のガイド,前記円弧状のガイドに当接すると、前記ポールをアンロック位置に保持する当接部からなるロック解除保持機構と、
を有し、
前記ポールの外歯が前記第1部材の前記内歯に噛合することにより、前記第1部材と第2部材との相対回転が禁止されるリクライニング装置において、
前記ロックレリーズ手段は、
前記相対回転の軸上に回転可能に設けられた第1カムと、
該第1カムと前記複数のポールのうちの少なくとも1つのポールとの間に設けられ、一方の方向に回転する前記第1カムに押されると前記外歯が前記内歯に噛合する方向に前記ポールを押す第2カムと、
を有し、
前記ロック解除保持機構の当接部は、前記第2カムに設けられた突部であることを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記ポールは、前記第2カムのみでロック位置方向に押されることを特徴とする請求項1記載のリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内筒面に円周方向に沿って内歯が形成され、一方の面が開放面となった有底円筒状の第1部材と、前記内歯と噛合可能な外歯を有した複数のポールと、前記第1部材の開放面側に積層され、前記第1部材と前記円周方向に相対回転可能に設けられ、前記外歯が前記内歯と噛合するロック位置,前記外歯が前記内歯から離れたアンロック位置の間で前記各ポールを案内するポールガイドが形成された第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間で、前記相対回転の軸上に回転可能に設けられ、一方の方向に回転すると前記外歯が前記内歯に噛合する方向に前記ポールを押し、他方の方向に回転すると前記外歯が前記内歯より離れる方向に前記ポールを移動させるロックレリーズ手段と、前記ポールをロック位置方向に付勢する付勢手段と、前記第1部材の前記内歯より底部側の内筒面に形成され、円周方向に沿った円弧状のガイド,前記円弧状のガイドに当接すると、前記ポールをアンロック位置に保持する当接部からなるロック解除保持機構と、有し、前記ポールの外歯が前記第1部材の前記内歯に噛合することにより、前記第1部材と第2部材との相対回転が禁止されるリクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7、
図8を用いて従来のリクライニング装置の一例を説明する。
図7はシートの構成図、
図8は従来のリクライニング装置の分解斜視図である。
【0003】
図7に示すように、シート1は、着座者の臀部を支持するシートクッション2と、シートクッション2に対して前後方向に傾動可能に設けられ、着座者の背部を支持するシートバック3とからなっている。4はシートバック3の傾動の回転軸上に設けられ、シートバック3の傾動を許可/禁止するリクライニング装置である。
【0004】
また、このリクライニング装置4は、前傾れ状態から後ろ倒れ状態で傾動可能である。そして、初段ロック状態から後ろ倒れ状態までの間及び前傾れ状態では、シートバック3の傾動を許可/禁止可能となっているが、初段ロック状態から前傾れ状態までの間では、ロック解除保持機構(詳細は後述)により、ロック解除保持状態となり、操作レバーを操作しなくても、シートクッションの傾動が可能となっている。
【0005】
リクライニング装置4は、
図9に示すように、シートバック3に設けられる第1部材(ラチェット)7は、一方の面が開放面となった有底円筒状で、内筒面に円周方向に沿って内歯7aが形成されている。3つのポール9には、内歯7aと噛合可能な外歯9aが形成されている。
【0006】
第1部材7の内歯7aより底面7g側の内筒面には、円周方向に沿って相対回転の軸方向に突出するガイド7bが形成されている。ガイド7bは、相対回転の軸方向への突出量が異なる3種類の円弧状突部よりなっている。第1の円弧状突部は、中心角がリクライニング装置4のロック解除保持状態の角度と同じ中径部7cである。この中径部7cの両側に突出量が中径部7cより少ない大径部7d、大径部7hが形成されている。各大径部7d、大径部7dの中径部7c側と反対側には、突出量が中径部7cより多い小径部7e、小径部7fが形成されている。
【0007】
第1部材7の開放面側には、シートクッション2に設けられる第2部材(ベースプレート)11が外周リング10を用いて積層され、第1部材7と円周方向に相対回転可能となっている。この第2部材11には、各ポール9の両側面を挟み、外歯9aが内歯7aと噛合するロック位置,外歯9aが内歯7aから離れたアンロック位置の間で各ポール9を案内する3組のポールガイド11a、11bが形成されている。
【0008】
第1部材7と第2部材11との間には、ロックレリーズ手段としての、カム13が設けられる。このカム13は、相対回転の軸上に回転可能に設けられ、周方向に120度ピッチで径方向に延出する3つのアーム部13aが形成されている。各アーム部13aの先端部には、カム面13bが形成されている。
【0009】
一方、ポール9は、外歯9aが形成され、第1部材7の円弧状のガイド7bに対向する外歯形成部9bと、外歯形成部9bと段部9cを介して形成され、第1部材7の底面7gと対向すると共に、カム13のアーム部13aが対向する基部9dとからなっている。更に、ポール9の段部9cには、カム13のカム面13bが当接可能となっている。
【0010】
カム13の各アーム部13aには、ポール9の各基部9dに形成されたカム穴9eに係合する突部13cが形成されている。
【0011】
カム13が一方の方向(図において、矢印A方向)に回転すると、アーム部13aのカム面13bがポール9の段部9cを押し、外歯9aが内歯7aに噛合する方向(ロック位置方向)にポール9が移動する。また、カム13が他方の方向(図において、反矢印A方向)に回転すると、カム13の突部13cとポール9のカム穴9eにより、外歯9aが内歯7aより離れる方向(アンロック位置方向)にポール9が移動する。
【0012】
外端部が第2部材11に係止され、内端部がカム13に係止されたスプリング15により、カム13は一方の方向、即ち、ポール9の外歯9aが第1部材7の内歯7aに噛合する方向(ロック位置方向)に付勢されている。
【0013】
また、3つあるポール9のうちの1つのポール9’には、第1部材7のガイド7bの相対回転の軸と平行な面に当接する突部9fが形成されている。
【0014】
ポール9’の突部9fが第1部材7のガイド7bの大径部7dに対向する状態では、ポール9’,ポール9は、外歯9aが内歯7aに噛合するロック位置から外歯9aが内歯7aから離れたアンロック位置まで移動可能である。一方、ポール9’の突部9fが第1部材7のガイド7bの中径部7cと対向する状態では、スプリング15の付勢力により、突部9fは中径部7cに当接し、ポール9は外歯9aと内歯7aとが噛合しない位置(アンロック位置)にポール9’が保持され、カム13を介して、他の2つのポール9も外歯9aと内歯7aとが噛合しない位置(アンロック位置)に保持される。また、第1部材7と第2部材11とは、ポール9’の突部9fが小径部7e、小径部7fに当接する範囲(
図7において、前倒れ状態と後ろ倒れ状態との間の範囲)で相対回転可能となっている。
【0015】
そして、本従来例では、第1部材7のガイド7bの中径部7cと、ポール9の突部9fとで、ポール9,9’をアンロック位置に保持するロック解除保持機構が形成されている。
【0016】
ここで、上記構成のリクライニング装置の作動を説明する。
【0017】
シートバック3が、初段ロック状態と後ろ倒れ状態との間に位置する場合、即ち、ポール9’の突部9fが、ガイド7bの大径部7dと対向する状態では、通常、スプリング15の付勢力により、第2部材11に設けられた各ポール9,9’は、外歯9aが、第1部材7の内歯7aに噛合したロック位置にあり、第1部材7と第2部材11との相対回転は禁止され、シートバック3はシートクッション2に対して回転ができない状態(ロック状態)にある。
【0018】
スプリング15の付勢力に抗して、カム13を操作して、他方の方向に回転させると、各ポール9,9’は、外歯9aと内歯7aとの噛合が解除されたアンロック位置に移動し、第1部材7と第2部材11との相対回転が可能となり、シートバック3はシートクッション2に対して回転可能となる。
【0019】
カム13への操作力を解除すると、スプリング15の付勢力により、第2部材11に設けられた各ポール9,9’の外歯9aが、第1部材7の内歯7aに噛合し、第1部材7と第2部材11との相対回転は禁止され、再びロック状態となる。
【0020】
シートバック3が初段ロック状態よりも前傾すると、即ち、ポール9’の突部9fが、ガイド7bの中径部7cと対向する状態では、ロック解除保持機構により、ポール9,9’はアンロック位置に保持され、カム13を操作しなくてもシートバック3は前傾/後傾が可能となる。そして、ロック解除保持された状態で、シートバック3を前傾させ、前傾れ状態となると、ポール9’の突部9fが、ガイド7bの中径部7cから大径部7hへ落ち込み、スプリング15の付勢力により、第2部材11に設けられた各ポール9,9’の外歯9aが、第1部材7の内歯7aに噛合し、第1部材7と第2部材11との相対回転は禁止され、ロック状態となる。また、ロック解除保持された状態で、シートバック3を後傾させ、初段ロック状態となると、ポール9’の突部9fが、ガイド7bの中径部7cから大径部7dへ落ち込み、スプリング15の付勢力により、第2部材11に設けられた各ポール9,9’の外歯9aが、第1部材7の内歯7aに噛合し、第1部材7と第2部材11との相対回転は禁止され、ロック状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2009−247395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかし、
図8に示すリクライニング装置では、ロック解除保持機構の突部は、3つあるポールのうちの1つのポール9’に設けられている。よって、ロック解除保持状態からシートバック3が前傾/後傾し、ロック状態になる場合、3つあるポールのうち、最初に、突部9を有するポール9’がロック位置方向に移動し、このポール9’の移動により、カム13を介して他の2つのポール9がロック位置に移動する。即ち、3つあるポールの内、突部9fを有するポール9’の外歯が内歯に噛合し、次に、突部がない2つのポール9の外歯が内歯に噛合し、ロックタイミング(噛合タイミング)が異なる問題点がある。
【0023】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、ロック解除保持状態が解除される際に、複数のポールのロックタイミングが同時となるリクライニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
課題を解決する請求項1に係る発明は、内筒面に円周方向に沿って内歯が形成され、一方の面が開放面となった有底円筒状の第1部材と、前記内歯と噛合可能な外歯を有した複数のポールと、前記第1部材の開放面側に積層され、前記第1部材と前記円周方向に相対回転可能に設けられ、前記外歯が前記内歯と噛合するロック位置,前記外歯が前記内歯から離れたアンロック位置の間で前記各ポールを案内するポールガイドが形成された第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間で、前記相対回転の軸上に回転可能に設けられ、一方の方向に回転すると前記外歯が前記内歯に噛合する方向に前記ポールを移動し、他方の方向に回転すると前記外歯が前記内歯より離れる方向に前記ポールを移動させるロックレリーズ手段と、前記ポールをロック位置方向に付勢する付勢手段と、前記第1部材の前記内歯より底面側の内筒面に形成され、円周方向に沿った円弧状のガイド,前記円弧状のガイドに当接すると、前記ポールをアンロック位置に保持する当接部からなるロック解除保持機構と、を有し、前記ポールの外歯が前記第1部材の前記内歯に噛合することにより、前記第1部材と第2部材との相対回転が禁止されるリクライニング装置において、前記ロックレリーズ手段は、前記相対回転の軸上に回転可能に設けられた第1カムと、該第1カムと前記複数のポールのうちの少なくとも1つのポールとの間に設けられ、一方の方向に回転する前記第1カムに押されると前記外歯が前記内歯に噛合する方向に前記ポールを押す第2カムと、を有し、前記ロック解除保持機構の当接部は、前記第2カムに設けられた突部であることを特徴とするリクライニング装置である。
【0025】
請求項2に係る発明は、
前記ポールは、前記第2カムのみでロック位置方向に押されることを特徴とする請求項1記載のリクライニング装置である。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明によれば、前記ロックレリーズ手段は、前記相対回転の軸上に回転可能に設けられた第1カムと、該第1カムと前記複数のポールのうちの少なくとも1つのポールとの間に設けられ、一方の方向に回転する前記第1カムに押されると前記外歯が前記内歯に噛合する方向に前記ポールを押す第2カムと、を有し、前記ロック解除保持機構の当接部は、前記第2カムに設けられた突部であることにより、ロック解除保持機構により前記ポールがアンロック位置に保持された状態からロック保持機構が解除されると、第2カムの当接部がガイドより離れ、第2カムは、前記ポールを押す方向に移動すると共に、レリーズプレート、第1カムを一方の方向に回転させる。第1カムが一方の方向に回転することにより、複数のポールの外歯は内歯に同時に噛合し、ロックタイミングが同時となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態のリクライニング装置の分解斜視図である。
【
図2】
図1のリクライニング装置を組み付けた際の矢印C方向から見た正面図である。
【
図5】
図1の第1ポールと第2カムとの斜視図である。
【
図8】従来のリクライニング装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0032】
本実施の形態例のりクライング装置は、
図7に示すリクライニング装置4と同様に、シートバック3の傾動の回転軸上に設けられるものである。
【0033】
図1−
図6を用いて、本実施形態のリクライング装置を説明する。
図1は本実施形態のリクライニング装置の分解斜視図、
図2は
図1のリクライニング装置を組み付けた際の矢印C方向から見た正面図、
図3は
図2の切断線A−Aでの断面図、
図4は
図2の切断線B−Bでの断面図、
図5は
図1の第1ポールと第2カムとの斜視図、
図6は
図5の矢印D方向から見た斜視図である。
【0034】
図1−
図4において、シートバック側に設けられるラチェット(第1部材)21は、円板状の板材をプレスにより半抜加工した有底円筒状で、円形凹部21aが形成されている。この円形凹部21aの内周面には、内歯23が円周方向全域に形成されている。また、円形凹部21aの中心には、貫通した穴21bが形成されている。
【0035】
シートクッション側に設けられるベースプレート(第2部材)25も、円板状の板材をプレスにより半抜加工し、円形凹部25aが形成されている。この円形凹部25aの径は、ラチェット21の外径より若干大きく設定されている。そして、円形凹部25aに、ラチェット21が嵌め込まれ、ベースプレート25とラチェット21とは相対回転可能となっている。また、ラチェット21の中心には、貫通した穴21bが形成されている。
【0036】
そして、ラチェット21の外周部と、ベースプレート25の外周部とは、リング状の外周リング27により挟持され、ラチェット21とベースプレート25とは、相対回転の軸(
図1においてO)方向に分離されることなく、相対回転可能に保持されている。
【0037】
ラチェット21の円形凹部21aとベースプレート25の円形凹部25aとが形成する空間には、第1カム31が配置される。第1カム31は、相対回転の軸と直交する平面上に延出する本体31bと、筒状で、ベースプレート25の穴25bに回転可能に支持され、穴25bを介して外部に突出する軸部31aとからなっている。軸部31aは相対回転の軸と直交する平面での断面形状は、略小判形状となっている。また、本体部31bには、ラチェット21方向に突出する2つの突部31cが形成されている。
【0038】
第1カム31とラチェット21の円形凹部21aとの間には、レリーズプレート33が配置される。このレリーズプレート33には、第1カム31の突部31cが係合する穴33aが形成されている。この突部31cと穴33aの係合により、第1カム31とレリーズプレート33とは一体となって回転する。
【0039】
レリーズプレート33とベースプレート25の円形凹部25aとの間には、円周方向に沿って第1ポール41と、第2ポール43とが交互に計4つ配置されている。
【0040】
第1ポール41,第2ポール43の内歯23と対向する面には、内歯23に噛合可能な外歯41a,43aが形成されている。
【0041】
ベースプレート25の円形凹部25aには、第1ポール41,第2ポール43の側部を挟むように4つのポールガイド37が形成されている。このポールガイド37により、第1ポール41,第2ポール43は相対回転の半径方向にのみ移動可能となっている。即ち、ポールガイド37は、外歯41a、外歯43aがラチェット21の内歯23と噛合するロック位置,外歯41a、外歯43aがラチェット21の内歯23から離れたアンロック位置の間で、第1ポール41,第2ポール43を案内する。
【0042】
また、第1ポール41と第1カム31との間には、第2カム45が配置される。
【0043】
ここで、
図4,
図5を用いて、第1ポール41と第2カム45とを説明する。
【0044】
第1ポール41のレリーズプレート33と対向する面の一方の側には、第1ポール41の背面(第1ポール41の外歯41aが形成された面と反対側の面)から外歯41aに向かって凹部41bが形成されている。そして、凹部41bの底面側は、積層部41cとなっている。
【0045】
一方、第2カム45は、第1ポール41の背面に当接可能な当接部45aと、第1ポール41の凹部41bに嵌合し、積層部41cと相対回転の軸方向に互いに重なる積層部45cとからなっている。
【0046】
図1−
図4に戻って、第1ポール41、第2ポール43のレリーズプレート33と対向する面には、レリーズプレート33方向に突出する突部41d、突部43dが形成されている。レリーズプレート33には、これら第1ポール41、第2ポール43の突部41d、突部43dが係合するカム穴33b、カム穴33cが形成されている。このカム穴33b、カム穴33cは、レリーズプレート33が
図1において矢印T方向(他方の方向)に回転すると、ポールガイド37に沿って、第1ポール41の外歯41a、第2ポール43の外歯43aがラチェット21の内歯23より離れる方向(アンロック位置方向)に第1ポール41、第2ポール43を移動させる形状に設定されている。
【0047】
第1カム31の本体部31bの外周部には、周方向に沿って4つの第1突部31d、4つの第2突部31eが交互に形成されている。第1突部31dは、第1カム31が
図1において矢印T方向と反対方向(一方の方向)に回転すると、第2カム45の第1カム31との対向部に形成されたV字溝45b(
図5、
図6参照)及び第2ポール43の第1カム31との対向部に形成されたV字溝43bの斜面を押接し、第2ポール43と、第2カム45に押される第1ポール41とは、ポールガイド37に沿って、外歯41a、外歯43aがラチェット21の内歯23に噛合する方向(ロック位置方向)に移動するようになっている。また、第2突部31eは、第1カム31が
図1において矢印T方向と反対方向(一方の方向)に回転すると、第1ポール41の第1カム31との対向部に形成された突部41e(
図5、
図6参照)及び第2ポール43の第1カム31との対向部に形成された突部43cに微少な隙間を介して対向するようになっている。
【0048】
ベースプレート25から外部に突出した第1カム31の軸部31aには、スパイラルスプリング51の内端部が係止されている。スパイラルスプリング51の外端部は、ベースプレート25の係止されている。そして、スパイラルスプリング51は、第1カム31を矢印T方向と逆方向(一方の方向)に付勢している。よって、このスパイラルスプリング51は、ロック位置方向に第1ポール41,第2ポール43を付勢する付勢手段として機能する。
【0049】
ここで、本実施形態の第1ポール41,第2ポール43をアンロック位置に保持するロック解除保持機構の説明を行う。
【0050】
ラチェット(第1部材)21の内歯23より底面の内筒面には、円周方向に沿った円弧状のガイド61が形成されている。ガイド61は、相対回転の軸方向への突出量が異なる2種類の円弧状突部からなっている。第1の円弧状突部は、中心角がリクライニング装置のロック解除保持状態の角度と同じ2つの小径部61aである。第2の突出部はこられ2つの小径部61aの間に、突出量が小径部61aより小さい2つの大径部61bである。
【0051】
第2カム45には、ラチェット21の円弧状のガイド61(小径部61a,大径部61b)の相対回転の軸と平行な面に当接可能な突部45dが形成されている。本実施の形態では、第2カム45が第1ポール41に積層された状態で、第2カム45の突部45dは、第1ポール41の円周方向の中央に位置するように設けられている。
【0052】
大径部61bの突出量(高さ)は、第2カム45の突部45dがラチェット21のガイド61の大径部61bに対向する状態で、積層された第2カム45と第1ポール41とが外歯41aが内歯23に噛合するロック位置から外歯41aが内歯23から離れたアンロック位置まで、第2カム45の突部45dが大径部61bに当接せずに移動可能なように設定されている。
【0053】
小径部61aの突出量(高さ)は、積層された第2カム45と第1ポール41とが外歯41aが内歯23に噛合するロック位置へ移動しようとすると、外歯41aが内歯23に噛合する前に、第2カム45の突部45dがラチェット21のガイド61の小径部61aに当接し、第2カム45のロック位置への移動が禁止されるように設定されている。第2カム45の移動が禁止されると、第1カム31の矢印T方向と逆方向(一方の方向)への回転が禁止され、第1ポール41,第2ポール43はアンロック位置に保持される。
【0054】
よって、本実施形態では、ラチェット(第1部材)21のガイド61の小径部61aと、第2カム45の突部45dとで、第1ポール41,第2ポール43をアンロック位置に保持するロック解除保持機構が形成されている。
【0055】
ここで、上記構成のリクライニング装置の作動を説明する。
【0056】
シートバックが初段ロック状態と後ろ倒れ状態との間(
図7参照)に位置する場合、即ち、第2カム45の突部45dがラチェット21のガイド61の大径部61bに対向する状態では、通常、スパイラルスプリング51の付勢力により、第1カム31を介して、ベースプレート25に設けられた第1ポール41、第2ポール43は、外歯41a,外歯43aが、ラチェット21の内歯23に噛合したロック位置にあり、ラチェット(第1部材)21とベースプレート(第2部材)25との相対回転は禁止され、シートバックはシートクッションに対して回転ができない状態(ロック状態)にある。
【0057】
スパイラルスプリング51の付勢力に抗して、第1カム31を操作して、他方の方向に回転させると、レリーズプレート33を介して、第1ポール41、第2ポール43は、外歯41a,外歯43aが、ラチェット21の内歯23との噛合が解除されたアンロック位置に移動し、ラチェット(第1部材)21とベースプレート(第2部材)25との相対回転が可能となり、シートバックはシートクッションに対して回転可能となる。
【0058】
第1カムへ31の操作力を解除すると、スパイラルスプリング51の付勢力により、第1ポール41、第2ポール43は、外歯41a,外歯43aが、ラチェット21の内歯23に噛合し、ラチェット(第1部材)21とベースプレート(第2部材)25との相対回転は禁止され、再びロック状態となる。
【0059】
シートバックが初段ロック状態よりも前傾すると、即ち、第2カム45の突部45dが、ガイド61の小径部61aと対向する状態では、ロック解除保持機構により、第1ポール41,第2ポール43をアンロック位置に保持され、第1カム31を操作しなくてもシートバックは前傾/後傾が可能となる。
【0060】
そして、ロック解除保持された状態で、シートバックを後傾させ、初段ロック状態となると、第2カム45の突部45dが、ガイド61の小径部61aから大径部61bへ落ち込み、スパイラルスプリング51の付勢力により、第1ポール41、第2ポール43は、外歯41a,外歯43aが、ラチェット21の内歯23に噛合し、ラチェット(第1部材)21とベースプレート(第2部材)25との相対回転は禁止され、ロック状態となる。
【0061】
このような構成によれば、以下のような効果が得られる。
【0062】
(1) ロック解除保持機構により、第1ポール41,第2ポール43をアンロック位置に保持された状態からロック保持機構が解除されると、第2カム45の突部45dが小径部(ガイド)61aより離れ、第2カム45は、第1ポール41を押す方向に移動すると共に、レリーズプレート33、第1カム31を一方の方向に回転させる。第1カム31が一方の方向に回転することにより、複数のポール、2つの第1ポール41,第2ポール43の外歯41a,外歯43aは内歯23に同時に噛合し、ロックタイミングが同時となる。
【0063】
(2) 第1ポール41と第2カム45とは、相対回転の軸方向に互いに重なる積層部41c,積層部45cを有し、第2カム45の突部45dは、第2カム45の積層部45cに設けられていることにより、第2カム45の突部45dを設ける位置の自由度が大きくなる。
【0064】
また、第1ポール41のベースプレート(第2部材)25のポールガイド37に案内される箇所の長さが長くなるので、第1ポール41とベースプレート25のポールガイド37とのガタが少なくなる。
【0065】
(3) 第2カム45が第1ポール41に積層された状態で、第2カム45の突部45dは、
第1ポール41の円周方向の中央に位置するように設けられていることにより、同一構造のリクライニング装置をシートの左右に設ける場合、第1ポールの共通化を図る事ができる。
【0066】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定するものではない。上記実施の形態では、2つの第2カム45を用いたが、第2カムは1つでもよい。また、1つの第2カムで、2つのポールを追い込むようにしてもよい。
【0067】
また、第2カムの形状も、第1ポールと第1カムとの間に配置される円形の第2カムであってもよい。
【0068】
さらに、上記実施の形態では、ラチェット21をシートバック側にベースプレート25をシートクッション側に設けたが、ラチェット21をシートクッション側に、ベースプレート25をシートバック側に設けてもよい。
【符号の説明】
【0069】
21 ラチェット(第1部材)
25 ベースプレート(第2部材)
31 第1カム
45 第2カム
45d 突部