(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源から出射された光束を測定光と参照光に分割し、測定光束を被検者眼眼底に導き,参照光を参照光学系に導いた後、前記眼底から反射された測定光と参照光との干渉状態を検出器により検出する干渉光学系と、
測定光と参照光との光路長差を調整するために測定光又は参照光の光路中に配置された光学部材を駆動させる駆動手段と、を備え、
前記検出器からの出力信号に基づいて眼底の断層画像を撮像する眼底撮影装置において、
前記駆動手段の駆動を制御して前記光学部材を移動させると共に、前記光学部材の各位置にて前記検出器から出力される出力信号に基づいて,眼底断層像が取得される位置に前記光学部材を移動させる第1光路長調整手段と、
前記第1光路長調整手段によって調整された位置から前記光学部材の位置を再調整する第2光路長調整手段と、
前記第1光路長調整手段と前記第2光路長調整手段の作動の間に、前記検出器からの出力信号に基づいて、前記干渉光学系を調整する光学調整手段と、
を備えることを特徴とする眼底撮影装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る光断層像撮影装置の光学系及び制御系を示す図である。なお、以下の説明においては、眼科撮影装置の一つである眼底撮影装置を例にとって説明する。また、本実施形態においては、被検眼の奥行き方向をZ方向(光軸L1方向)、奥行き方向に垂直な平面上の水平方向成分をX方向、鉛直方向成分をY方向として説明する。
【0012】
図1において、その光学系は、光源から出射された光束を測定光と参照光に分割し、測定光束を被検者眼眼底に導き,参照光を参照光学系に導いた後、前記眼底から反射された測定光と参照光との干渉状態を検出器により検出する干渉光学系(OCT光学系)200と、固視標投影ユニット300と、を備える。干渉光学系200は、測定光学系200aと参照光光学系200bを含む。また、干渉光学系200は、参照光と測定光による干渉光を周波数(波長)毎に分光し,分光された干渉光を受光手段(本実施形態においては、1次元受光素子)に受光させる分光光学系800を有する。また、ダイクロイックミラー40は、OCT光学系200の測定光として用いられる波長成分の光を反射し、固視標投影ユニット300に用いられる波長成分の光を透過する特性を有する。
【0013】
まず、ダイクロイックミラー40の反射側に設けられたOCT光学系200の構成について説明する。27はOCT光学系200の測定光及び参照光として用いられる低コヒーレントな光を発するOCT光源であり、例えばSLD光源等が用いられる。OCT光源27には、例えば、中心波長840nmで50nmの帯域を持つ光源が用いられる。26は光分割部材と光結合部材としての役割を兼用するファイバーカップラーである。OCT光源27から発せられた光は、導光路としての光ファイバ38aを介して、ファイバーカップラー26によって参照光と測定光とに分割される。測定光は光ファイバ38bを介して被検眼Eへと向かい、参照光は光ファイバ38c(ポラライザ(偏光素子)33)を介して参照ミラー31へと向かう。
【0014】
測定光を被検眼Eへ向けて出射する光路には、測定光を出射する光ファイバ38bの端部39b、被検者眼底に対する視度を補正するために光軸方向に移動可能なフォーカス用光学部材(フォーカシングレンズ)24、走査駆動機構51の駆動により眼底上でXY方向に測定光を走査させることが可能な2つのガルバノミラーの組み合せからなる走査部(光スキャナ)23と、リレーレンズ22が配置されている。ダイクロイックミラー40及び対物レンズ10は、OCT光学系200からのOCT測定光を被検眼眼底へと導光する導光光学系としての役割を有する。
【0015】
光ファイバ38bの端部39bから出射した測定光は、フォーカシングレンズ24を介して、走査部23に達し、2つのガルバノミラーの駆動により反射方向が変えられる。そして、走査部23で反射された測定光は、リレーレンズ22を介して、ダイクロイックミラー40で反射された後、対物レンズ10を介して、被検眼眼底に集光される。
【0016】
そして、眼底で反射した測定光は、対物レンズ10を介して、ダイクロイックミラー40で反射し、OCT光学系200に向かい、リレーレンズ22、走査部23の2つのガルバノミラー、フォーカシングレンズ24を介して、光ファイバ38bの端部39bに入射する。端部39bに入射した測定光は、光ファイバ38b、ファイバーカップラー26、光ファイバ38dを介して、光ファイバ38dの端部84aに達する。
【0017】
一方、参照光を参照ミラー31に向けて出射する光路には、光ファイバ38c、参照光を出射する光ファイバ38cの端部39c、コリメータレンズ29、参照ミラー31が配置されている。光ファイバ38cは、参照光の偏光方向を変化させるため、駆動機構34により回転移動される。すなわち、光ファイバ38c及び駆動機構34は、偏光方向を調整するためのポラライザ33として用いられる。なお、ポラライザとしては、上記構成に限定されず、測定光の光路又は参照光の光路に配置されるポラライザを駆動させることにより、測定光と参照光の偏光状態を略一致させるものであればよい。例えば、1/2波長板や1/4波長板を用いることやファイバーに圧力を加えて変形させることで偏光状態を変えるもの等が適用できる。
【0018】
なお、ポラライザ33(偏光コントローラ)は、測定光と参照光の偏光方向を一致させるために、測定光と参照光の少なくともいずれかの偏光方向を調整する構成であればよい。例えば、ポラライザは、測定光の光路に配置された構成であってもよい。
【0019】
また、参照ミラー駆動機構50は、測定光又は参照光との光路長を調整するために測定光又は参照光の光路中に配置された参照ミラー31を駆動させる。参照ミラー31は、本実施形態においては、参照光の光路中に配置され、参照光の光路長を変化させるべく、光軸方向に移動可能な構成となっている。
【0020】
光ファイバー38cの端部39cから出射した参照光は、コリメータレンズ29で平行光束とされ、参照ミラー31で反射された後、コリメータレンズ29により集光されて光ファイバ38cの端部39cに入射する。端部39cに入射した参照光は、光ファイバ38c、光ファイバ38c(ポラライザ33)を介して、ファイバーカップラー26に達する。
【0021】
そして、光源27から発せられた光によって前述のように生成される参照光と被検眼眼底に照射された測定光による眼底反射光は、ファイバーカップラー26にて合成され干渉光とされた後、光ファイバ38dを通じて端部84aから出射される。周波数毎の干渉信号を得るために干渉光を周波数成分に分光する分光光学系800(スペクトロメータ部)は、コリメータレンズ80、グレーティングミラー(回折格子)81、集光レンズ82、受光素子83を有する。受光素子83は、赤外域に感度を有する一次元素子(ラインセンサ)を用いている。
【0022】
ここで、端部84aから出射された干渉光は、コリメータレンズ80にて平行光とされた後、グレーティングミラー81にて周波数成分に分光される。そして、周波数成分に分光された干渉光は、集光レンズ82を介して、検出器(受光素子)83の受光面に集光する。これにより、受光素子83上で干渉縞のスペクトル情報が記録される。そして、受光素子83からの出力信号に基づいて眼の断層画像を撮像する。すなわち、そのスペクトル情報が制御部70へと入力され、フーリエ変換を用いて解析することで、被験者眼の深さ方向における情報が計測可能となる。ここで、制御部70は、走査部23により測定光を眼底上で所定の横断方向に走査することにより断層像を取得できる。例えば、X方向もしくはY方向に走査することにより、被検眼眼底のXZ面もしくはYZ面における断層像(眼底断層像)を取得できる(なお、本実施形態においては、このように測定光を眼底に対して一次元走査し、断層像を得る方式をBスキャンとする)。なお、取得された眼底断層像は、制御部70に接続されたメモリ72に記憶される。さらに、走査部23の駆動を制御して、測定光をXY方向に二次元的に走査することにより、受光素子83からの出力信号に基づき被検者眼眼底のXY方向に関する二次元動画像や被検眼眼底の三次元画像を取得することも可能である。
【0023】
参照ミラー31は、駆動機構50の駆動によって光軸方向に移動され、被検眼毎の眼軸長の違いに対応できるよう、その移動可能範囲が設定されている。
図1において、参照ミラー31は、参照光の光路長が短くなる方向における移動限界位置K1から参照光の光路長が長くなる方向における移動限界位置K2までの範囲を移動可能である。
【0024】
自動光路長調整(第1自動光路長調整(詳しくは後述する))を開始する前の参照ミラー31の初期位置(移動開始位置)は、移動限界位置K1又は移動限界位置K2に設定される。もちろん、初期化開始以前の途中位置を初期位置としてもよい。また、初期位置を任意に変更できる設定としてもよい。
【0025】
フォーカシングレンズ24は、駆動機構24aの駆動によって光軸方向に移動され、その移動可能範囲が設定されている。フォーカシングレンズ24は、第1移動限界位置(例えば、屈折力が−15Dに対応する位置、すなわち、−15Dの屈折力でフォーカスが合う位置)から第2移動限界位置(例えば、屈折力が+15Dに対応する位置)までの範囲を移動可能である。
【0026】
フォーカシングレンズ24の初期位置は、被検眼の平均的な眼屈折力に対応する位置(例えば、0Dに対応する位置)としている。もちろん、初期位置に移動させる以前の位置を初期位置としてもよい。また、初期位置を任意に変更できる設定としてもよい。第1移動限界位置、第2移動限界位置のいずれかが初期位置であってもよい。
【0027】
光ファイバ38cは、駆動機構34の駆動によって回転移動され、その移動可能範囲が設定されている。光ファイバ38cは、第1移動限界位置(例えば、0°)から第2移動限界位置(例えば、180°)までの回転移動可能である。
【0028】
光ファイバ38cは、第1移動限界位置から第2移動限界位置までの間の途中位置に位置されており、第2自動光路長調整完了後までは移動されない。そのため、ポラライザ33においては、途中位置が初期位置となる。
【0029】
次に、固視標投影ユニット300について説明する。固視標投影ユニット300は、眼Eの視線方向を誘導するための光学系を有する。投影ユニット300は、眼Eに呈示する固視標を有し、複数の方向に眼Eを誘導できる。
【0030】
例えば、固視標投影ユニット300は、可視光を発する可視光源を有し、視標の呈示位置を二次元的に変更させる。これにより、視線方向が変更され、結果的に撮像部位が変更される。例えば、撮影光軸と同方向から固視標が呈示されると、眼底の中心部が撮像部位として設定される。また、撮影光軸に対して固視標が上方に呈示されると、眼底の上部が撮像部位として設定される。すなわち、撮影光軸に対する視標の位置に応じて撮影部位が変更される。
【0031】
固視標投影ユニット300としては、例えば、マトリクス状に配列されたLEDの点灯位置により固視位置を調整する構成、光源からの光を光スキャナを用いて走査させ、光源の点灯制御により固視位置を調整する構成、等、種々の構成が考えられる。また、投影ユニット300は、内部固視灯タイプであってもよいし、外部固視灯タイプであってもよい。
【0032】
また、制御部70には、表示モニタ75、メモリ72、コントロール部74、参照ミラー駆動機構50、フォーカシングレンズ24を光軸方向に移動させるための駆動機構24a、駆動機構34、等が接続されている。
【0033】
図2はOCT光学系200によって取得(形成)される断層画像の一例を示す図である。断層画像の画像データGは、光路長一致位置より手前側に対応する第1の画像データG1と、光路長一致位置より奥側に対応する第2画像データG2からなり、測定光と参照光の光路長が一致する深度位置Sに関して互いに対称な画像となっている。
【0034】
なお、上記構成において、測定光と参照光との光路長が一致する深度位置が網膜表面より前側に形成されるように参照ミラー31が配置されると、脈絡膜側部分よりも網膜表面側の感度が高い眼底断層像(正像)が取得される。この場合、第1の画像データG1と第2画像データG2における眼底断層像は、向かい合った状態となる。この場合、第1の画像データG1において実像が取得され、第2画像データG2において虚像(ミラーイメージ)が取得される。
【0035】
一方、測定光と参照光との光路長が一致する深度位置が網膜表面より奥側に形成されるように参照ミラー31が配置されると、網膜表面側よりも脈絡膜側部分の感度が高い眼底断層像(逆像)が取得される。この場合、第1の画像データG1と第2画像データG2における眼底断層像は、互いに反対方向を向いた状態にある。この場合、第2の画像データG2において実像が取得され、第1の画像データG1において虚像(ミラーイメージ)が取得される。
【0036】
制御部70は、例えば、断層画像の画像データGのうち、第1の画像データG1もしくは第2画像データG2のいずれかの画像データを抽出し、モニタ75の画面上に表示する。なお、本実施形態では、第1の画像データG1を抽出する設定となっている。
【0037】
本実施形態において、制御部70は、受光素子83から出力されるスペクトルデータに対しソフトウェアによる分散補正処理を施す。そして、分散補正後のスペクトルデータに基づいて深さプロファイルを得る。このため、実像と虚像との間で画質において差異が生じる。
【0038】
例えば、実像に対する分散の影響を補正するための分散補正値として第1の分散補正値(正像用)をメモリ72から取得し、受光素子83から出力されるスペクトルデータを第1の分散補正値を用いて補正し、補正されたスペクトル強度データをフーリエ変換して断層画像データを形成する。これにより、第1の画像データG1において実像が取得されたとき、その実像は、高感度・高解像度の画像にて取得され、第1の画像データG1において虚像が取得されたとき、その虚像は、分散補正値の違いにより低解像度のぼやけた像となる。
【0039】
もちろん、これに限定されず、虚像に対するソフトウェアの分散補正が行われても良い。また、第2の画像データG2を抽出する設定であってもよいし、もちろん第1の画像データG1と第2の画像データG2の両方を抽出する設定であってもよい。また、所定のスイッチにより任意に設定されてもよい。
【0040】
以上のような構成を備える装置において、その制御動作について説明する。
図3は、本装置における動作の流れを示すフローチャートである。検者は、固視標投影ユニット300の固視標を注視するように被検者に指示した後、図示無き前眼部観察用カメラで撮影される前眼部観察像をモニタ75で見ながら、被検眼の瞳孔中心に測定光軸がくるように、図示無きジョイスティックを用いて、アライメント操作を行う。
【0041】
次いで、最適化を行うことによって、検者が所望する眼底部位が高感度・高解像度で観察できるようにする。なお、本実施形態において、最適化の制御は、光路長調整、フォーカス調整、偏光状態の調整(ポラライザ調整)、の制御である。
【0042】
検者は、コントロール部74に配置された最適化開始スイッチ(Optimizeスイッチ)74aを押す。最適化開始スイッチ74aから操作信号が発せられると、制御部70は、最適化制御を開始するためのトリガ信号を発し、最適化を開始する。
【0043】
ここで、制御部70は、第1光路長調整と第2光路長調整の間にOCT光学系200を調整することにより撮影条件の最適化を行う。本実施形態における最適化としては、例えば、第1自動光路長調整、フォーカス調整、第2自動光路長調整、ポラライザ調整の順で行われる。最適化の完了後、検者により、図示無き撮影スイッチが押されると、眼底断層像が撮影され、メモリ75に記憶される。
【0044】
なお、本実施形態において、第1自動光路長調整、フォーカス調整、ポラライザ調整は、断層画像の信号強度を検出することによって行われる。以下の説明では、信号強度を示す指標として所定の評価値Bが用いられる。
【0045】
評価値Bは、B=((画像の平均最大輝度値)−(画像の背景領域の平均輝度値))/(背景領域の輝度値の標準偏差)の式より求められる。制御部70は、受光素子83からの出力信号に基づいて取得される断層画像の輝度分布データを取得する。例えば、
図4は、参照ミラー、フォーカシングレンズ、ポラライザがある所定の位置に配置されている場合のモニタ75の画面上に表示された画像を示す図である。
【0046】
制御部70は、初めに、深さ方向(Aスキャン方向)に走査する複数の走査線を設定し、各走査線上における輝度分布データを求める。
図4においては、画像を10分割し、10本の分割線を走査線としている。
図5は、画像の深さ方向における輝度分布の変化を示す図である。
【0047】
ここで、制御部70は、各走査線に対応する輝度分布から輝度値の最大値(以下、最大輝度値と省略する)を算出する。そして、制御部70は、眼底断層像における最大輝度値として、各走査線における最大輝度値の平均値を算出する。そして、制御部70は、眼底断層像における背景領域の平均輝度値として、各走査線における背景領域の輝度値の平均値を算出する。
【0048】
このようにして、算出された評価値Bは、第1自動光路長調整、フォーカス調整、ポラライザ調整において利用される。なお、この場合、画像データG1内の断層画像にて、評価値Bを算出することが好ましい。
【0049】
<最適化制御>
図6は、本実施形態に係る最適化制御について説明する図である。概して、制御部70は、初期化の制御として、参照ミラー31とフォーカシングレンズ24の位置を初期位置に設定する。初期化完了後、制御部70は、設定した初期位置から参照ミラー31を一方向に所定ステップで移動させ、第1光路長調整を行う(第1自動光路長調整)。第1光路長調整完了後、制御部70は、合焦位置情報を取得し、フォーカスシングレンズ24を合焦位置に移動させ、オートフォーカス調整を行う。そして、オートフォーカス調整完了後、再度、参照ミラー31を光軸方向に移動させ、光路長の再調整(光路長の微調整)をする第2光路長調整を行う。第2光路長調整完了後、制御部70は、参照光の偏光状態を調節するためのポラライザ33を駆動させ、測定光の偏光状態を調整する。
【0050】
以下に、最適化制御の一例について詳細に説明する。
【0051】
<初期化>
初めに、制御部70は、初期化の制御を行う。初期化の制御は、参照ミラー31とフォーカシングレンズ24の位置を初期位置(移動開始位置)に移動させる。
【0052】
そして、初期化の制御が開始されると、制御部70は、移動限界位置K1又は移動限界位置K2のどちらかの位置を参照ミラー31の初期位置として選択する。なお、初期位置の決定は、初期化の制御を開始する以前の参照ミラー31の位置から移動限界位置K1又は移動限界位置K2により近い側の位置が選択される。そして、制御部70は、移動限界位置K1又は移動限界位置K2の初期位置へ参照ミラー31を移動させる。もちろん、異なる基準に基づいて、初期位置に設定するための移動方向の決定を行ってもよい。
【0053】
また、制御部70は、フォーカシングレンズ24を初期位置(本実施形態においては、0Dに対応する位置)へ移動させる。
【0054】
<第1自動光路長調整(粗調整)>
以上のようにして、初期化が完了すると、次いで、制御部70は、第1自動光路長調整(自動粗光路長調整)を行う。
図7は、第1自動光路長調整の制御動作の流れを示すフローチャートである。
【0055】
制御部70は、駆動機構50の駆動を制御して参照ミラー31を移動させると共に、参照ミラー31の各位置にて受光素子83から出力される出力信号に基づいて、眼底断層像が取得される位置に参照ミラー31を移動させる。
【0056】
具体的には、制御部70は、初期位置にて断層画像を取得した後、初期位置とは逆の移動限界位置に向けて参照ミラー31を移動させる。例えば、参照ミラー31の初期位置として限界位置K1が選択(設定)された場合、限界位置K2に向けて方向へ移動させる。
【0057】
ここで、制御部70は、参照ミラー31を所定のステップ(例えば、撮影範囲として2mmステップ)で移動させ、各移動位置における断層画像を順次取得していき、眼底断層像が取得される位置を探索していく。
【0058】
この場合、制御部70は、離散的に設定された参照ミラー31の移動位置において、参照ミラー31が停止される度に断層像を取得する。そして、制御部70は、各位置にて取得される断層画像を解析する。例えば、制御部70は、各位置にて取得される断層像の評価値Bを算出する。そして、制御部70は、参照ミラー31の位置と断層像の評価値Bとを対応付けてメモリ75に記憶する。
【0059】
図8は、参照ミラー31の位置ごとにおける評価値Bの算出結果の一例を示す図である。横軸は、参照ミラーの位置、縦軸は、参照ミラーの各位置における評価値Bを表記したものである。
【0060】
ここで、制御部70は、取得された参照ミラー31の位置ごとにおける評価値Bの算出結果から、評価値Bのピークを検出する。そして、制御部70は、ピークの検出位置に対応する参照ミラー31の位置をメモリ75に記憶させる。そして、制御部70は、評価値Bのピークに対応する位置へ参照ミラー31を移動させる。なお、一般的には、眼底の実像が断層画像中に現れるときの参照ミラー31の位置が、評価値Bのピークが検出される位置となる。ただし、フォーカスがあっていない場合においては、虚像が断層画像中に現れるときの参照ミラー31の位置が、評価値Bのピークが検出される位置となる場合もありえる。
【0061】
以上のようにして光路長がラフに調整されると、モニタ72上のいずれかの位置に眼底断層像の少なくとも一部が表示された状態となる。
【0062】
なお、本実施形態においては、参照ミラー31を所定のステップで移動させる場合、評価値Bの上昇がなくなり、下降をはじめた位置で、参照ミラー31の駆動を停止するようにしてもよい。また、制御部70は、参照ミラー31の位置ごとにおける評価値Bの算出結果からピークに対応する参照ミラーの位置を推測するようにしてもよい。(例えば、評価値Bの変化を示す近似曲線を作成する)。
【0063】
<オートフォーカス調整>
制御部70は、第1自動光路長調整が完了すると、次いで、フォーカス調整を行う。
【0064】
制御部70は、第1自動光路長調整を経て、受光素子83から出力される出力信号に基づいて、被検者眼眼底に対する合焦位置にフォーカシングレンズ24を移動させる。
【0065】
具体的には、制御部70は、駆動部24aの駆動を制御し、所定の初期位置から所定のステップでレンズ24を移動させる。そして、制御部70は、各移動位置における断層画像を順次取得していき、合焦位置(眼底断層像のフォーカスが合う位置)を探索していく。
【0066】
例えば、制御部70は、ある移動限界位置に向けて0.5Dずつレンズ24を移動させていき、合焦位置が見つかれなければ、反対方向にレンズ24を移動させる。なお、レンズ24の移動ステップは、これに限定されず、例えば、1Dでもよいし、2Dでもよく、任意に設定される構成でもよい。
【0067】
合焦位置の探索は、離散的に設定されたフォーカシングレンズ24の移動位置でフォーカシングレンズ24が停止される度に、その位置にて取得される画像を解析する。例えば、制御部70は、各位置にて取得される断層像の評価値Bを算出する。そして、制御部70は、レンズ24の位置と断層像の評価値Bとを対応付けてメモリ75に記憶する。
【0068】
ここで、制御部70は、取得されたフォーカシングレンズ24の位置ごとにおける評価値Bの算出結果から、評価値Bのピークを検出する。そして、制御部70は、ピークの検出位置に対応する位置へフォーカシングレンズ24を移動させる。以上のようにして、フォーカス調整が完了される。
【0069】
<第2光路長調整(微調整)>
制御部70は、フォーカス調整を経て、受光素子83から出力される出力信号に基づいて、第1自動光路長調整によって調整された位置から参照ミラー31の位置を再調整する。
【0070】
具体的には、フォーカス調整が完了すると、制御部70は、フォーカス調整によって取得された断層画像に基づいて、参照ミラー31を移動させる第2自動光路長調整を行う。
【0071】
ここで、制御部70は、画像データG1において、フォーカス調整後に取得された眼底断層像が実像か虚像かを判定する。例えば、制御部70は、深さ方向での輝度分布におけるピークに対する半値幅が所定の許容幅より小さいとき、眼底眼底像を実像と判定し、半値幅が所定の許容幅が大きいとき、眼底断層像を虚像する。なお、断層像の実虚の判定については、実像と虚像との間の画質の差異が利用される手法であればよく、半値幅の他、例えば、断層像のコントラスト、断層像のエッジの立ち上がり度等が利用される。また、眼底断層像の形状が利用されてもよい。
【0072】
制御部70は、取得される眼底断層像が虚像と判定された場合、実像が取得される方向(参照光が短くなる方向)に向けて参照ミラー31を移動させる。このとき、制御部70は、光路長一致位置Sから像検出位置までの偏位量をゼロにする参照ミラー31の移動量を算出し、さらに算出された移動量の2倍分参照ミラー31を移動させる。これにより、実像のみが取得された状態となる。この場合、参照ミラー31が一定量移動されたときの偏位量を予め求めておけばよい。これにより、制御部70は、光路長断層像の深度位置から像検出位置までの偏位量が所定の偏位量となるように参照ミラー31を移動させることが可能となり、眼底断層像を所定の表示位置に表示できる。なお、参照ミラー31を移動させる手段はこれに限定されるものではない。例えば、虚像と判定された場合に、予め、参照ミラー31を実像が取得される方向(参照光が短くなる方向)に向けて移動させる所定のオフセット量を設定しておく。そして、制御部70は、眼底断層像が虚像と判定された場合、参照ミラー31を所定のオフセット量分移動させる。
【0073】
また、取得される眼底断層像が実像と判定された場合、制御部70は、深さ方向における輝度分布のピークが検出された位置を像位置とみなし、予め設定された光路長調整位置と像位置との変位量を算出し、その変位量がなくなるように参照ミラー31を移動させる(特開2010−12111号公報参照)。
【0074】
制御部70は、上記のように画像データG1の断層像に対する実虚の判定を行うと共に、さらに、画像データG1において実像と虚像が並存するか否かを並行して判定するのが好ましい。例えば、制御部70は、前述のように算出される各走査線における最大輝度値の検出位置の平均位置を眼底断層像の像位置P1として検出する。そして、制御部70は、測定光と参照光の光路長が一致する深度位置S(第1の画像データの上端位置)から像検出位置P1までの偏位量を算出する。すなわち、制御部70は、測定光と参照光の光路長が一致する深度位置Sを基準に眼底断層像の像位置を検出する。
【0075】
そして、制御部70は、前述のように算出される眼底断層像の像位置P1が断層画像の上端付近(例えば、断層画像の上端から1/4に相当する領域)にある場合、眼底断層像の実像と虚像が並存している状態であると判定する。この場合、制御部70は、実像のみが取得される方向(参照光が短くなる方向)に向けて参照ミラー31を所定量移動させる。この場合、実像と虚像が並存している状態から実像のみが取得された状態となるまでの参照ミラー31の移動方向及び移動量を実験もしくはシミュレーションにより予め求めておき、メモリ72に記憶しておけばよい。
【0076】
以上のように、第1自動光路長調整、フォーカス調整、第2自動光路長調整という手順で最適化の制御を動作させる。本実施形態においては、第1自動光路長調整は、受光素子83から出力される出力信号の信号強度に基づいて、断層画像中に眼底断層像が含まれるようにラフに光路長を調整するものである。一方、第2自動光路長調整は、受光素子83から出力される出力信号に基づいて深さ方向における眼底断層像の位置情報を取得し、取得された位置情報に基づいて、眼底断層像が所定の深さ位置にて取得されるようにシビアに光路長を調整するものである。第1自動光路長調整がフォーカス調整を可能にするための光路長調整であるのに対し、第2自動光路長調整が撮影時の最適な光路長に調整するための光路長調整である。
【0077】
例えば、フォーカス調整は、眼底断層像の輝度値に基づいて行われるため、断層画像の撮影範囲内に眼底断層像が含まれる必要がある。このため、フォーカス調整前に、第1自動光路長調整により粗く光路長を調整し、断層画像中に眼底断層像が取得されるようにしたので、フォーカスをスムーズに調整できる。
【0078】
また、上記のように断層画像に基づくフォーカス調整後に光路長を再調整することにより、フォーカス調整によって画質(解像度、コントラストなど)が向上した眼底像を用いて光路長を調整できるため、所定の位置に向けて眼底像を確実に誘導できる。
【0079】
すなわち、フォーカス調整前の光路長調整では、画像から検出される輝度が弱いために、実像・虚像の判定、適正な深さ位置への眼底断層像の誘導制御が適正に行わない場合がある。そこで、上記のようにフォーカス前とフォーカス後に自動光路長調整(OPL)制御を行うことにより、光路長調整をスムーズかつ安定して行うことができる。
【0080】
このようなことにより、SLO光学系もしくは眼底カメラ光学系等の眼底正面撮影専用の光学系を利用しない光断層像撮影装置でも、スムーズに光路長調整とフォーカス調整を可能にする。
【0081】
<ポラライザ調整>
制御部70は、第2自動光路長調整後に受光素子83から出力される出力信号に基づき、ポラライザ33を駆動させ、偏光状態の調整を行う。
【0082】
具体的には、制御部70は、ポラライザ33の位置を初期位置より、移動開始位置に移動させる。なお、ポラライザ33の初期位置は、第1移動限界位置から第2移動限界位置までの間の途中の位置に配置されている。なお、ポラライザ調整の際の、ポラライザ33の移動開始位置は、第1移動限界位置又は第2移動限界位置の位置となる。
【0083】
制御部70は、ポラライザ33を途中位置から第1移動限界位置又は第2移動限界位置のどちらかの移動開始位置を選択し、移動させる。例えば、制御部70は、第1移動限界位置を移動開始位置として選択し、ポラライザ33を移動させる。そして、制御部70は、ポラライザ33を第1移動限界位置から第2移動限界位置方向へ移動させる。なお、移動開始位置が第2移動限界位置の場合には、第1移動限界位置方向へ移動させる。そして、各移動位置におけるモニタ75の画面上の画像を順次取得していき、干渉光が強く受光できる位置(測定光と参照光の偏光状態が合う位置)を探索していく。
【0084】
偏光状態が合う位置の探索は、離散的に設定されたポラライザ33の移動位置でポラライザ33が停止される度に、その配置位置にて取得される画像を解析し、評価値Bの算出を行う。
【0085】
制御部70は、移動開始位置とは、逆の移動限界位置まで、5°ずつポラライザ33を移動させていく。なお、本実施形態では、5°ずつポラライザ33を移動させる構成としたが、これに限定されない。例えば、10°でもよいし、20°でもよく、任意に設定できる構成でもよい。
【0086】
ここで、制御部70は、取得されたポラライザ33の位置ごとにおける評価値Bの算出結果から、ピークとなる評価値B(ピーク値)を検出し、ピーク値が検出された位置に対応する位置へポラライザ33を移動させる。以上のようにして、ポラライザ調整が完了される。
【0087】
以上のようにして、最適化の制御が完了されることにより、SLO光学系もしくは眼底カメラ光学系等の眼底正面撮影専用の光学系が搭載されていない光断層像撮影装置でも、検者が所望する眼底部位が高感度・高解像度で観察できるようになる。もちろん、眼底正面撮影専用の光学系を備える装置においても、上記手法は適用できる。
【0088】
<変容例>
また、測定光の光路長と参照光の光路長との光路長差を変更するための構成としては、測定光の光路長を変化させて参照光との光路長を調整するような構成としてもよい。例えば、
図1の光学系において、参照ミラー31を固定とし、リレーレンズ24とファイバー端部39bとを一体的に移動させることにより参照光の光路長に対して測定光の光路長を変化させるような構成が考えられる。
【0089】
なお、以上の説明においては、最適化制御動作の際に、前の調整が完了後に次の調整に移行する構成としたがこれに限定されない。例えば、制御部70により、断層画像の輝度情報に基づいて、最適化の調整が成功したか否かを判定し、判定結果に基づいて最適化の調整を停止させるようにしてもよい。この場合、例えば、
図9のフローチャートに示すような制御動作が考えられる。制御部70は、第1自動光路長調整後、その適否を判定する。判定は、例えば、所定の閾値を設定しておき、検出値(例えば、評価値Bや輝度値等)が閾値を越えたか否かによって判定するようにすればよい。そして、制御部70は、調整が失敗したと判定した場合、再び最適化の制御をやり直しさせる。このとき、最適化制御が失敗するたびに最適化の制御を停止させてもよいし、数回最適化制御が失敗した場合に、最適化の制御を停止させてもよい。また、最適化が失敗した際には、最適化が失敗した表示をモニタ75上に表示する等して、検者に再最適化を行うか否かを選択させる構成としてもよい。
【0090】
なお、制御部70が失敗したと判定した場合、最適化の制御のやり直しを行わせる前に、例えば、偏光状態が変化するような所定角度(例えば、90°)だけポラライザ33を回転駆動させるようにしてもよい。このように、調整の成否判定を行った部材以外の部材の調整をすることにより、眼底断層像の受光される状態が変化し、再最適化が行われた場合に、最適化の制御が可能となる場合がある。
【0091】
なお、以上の説明においては、最適化の制御動作として、光路長調整、フォーカス調整、ポラライザ調整を行ったがこれに限定されない。例えば、ポラライザ調整を除いてもよい。この場合、最適化にかかる時間が少なくなるが、眼底断層像の感度及び解像度は、低くなる。
【0092】
なお、以上の説明においては、最適化の制御動作として、第1自動光路長調整、フォーカス調整、第2自動光路長調整、ポラライザ調整の順で行われるようにしたがこれに限定されない。例えば、第1自動光路長調整からフォーカス調整の間に、ポラライザ調整を行ってもよい。また、フォーカス調整から第2自動光路長調整の間に、ポラライザ調整を行ってもよい。
【0093】
なお、以上の説明においては、フォーカス調整が第1自動光路長調整から第2自動光路長調整の間に行われ、1回のフォーカス調整にて、フォーカスを一致させる構成としたがこれに限定されない。例えば、第2光路長調整の前後でフォーカス調整を行ってもよい。この場合、制御部70は、第1フォーカス調整は、第2光路長調整による光路長の微調整が可能な程度に粗く調整を行い、第2光路長調整による光路長の微調整完了後、第2フォーカス調整にて、フォーカスを一致させるようにしてもよい。
【0094】
また、第1自動光路長調整が完了されていない状態であっても、眼底断層像が取得された時点で、フォーカス調整を開始しても良い。すなわち、第1光路長調整、フォーカス調整、第2光路長調整の作動に関して、それらの作動タイミングが重複する場合もありうる。
【0095】
なお、以上の説明においては、断層画像における輝度分布を利用して眼底断層像の実像/虚像の判定を行うものとしたが、眼底断層像の実像が取得されたときの断層画像の断面形状と眼底断層像の虚像が取得されたときの断層画像における断面形状とを比較し、その比較結果を考慮して実像/虚像の判定が可能な判定条件を設定するようにしてもよい。例えば、実像と虚像が深さ方向に対称な画像であることを利用する。より具体的には、眼底断層像の第1の画像データG1から網膜色素上皮部分を画像処理(例えば、網膜色素上皮の輝度値に対応するような所定の閾値を超える輝度値のデータを抽出する)により抽出し、抽出された網膜色素上皮部分の曲線形状に基づいて実像/虚像を判定するようにしてもよい。なお、光学部材を用いて分散補正を行う構成のものに対しても適用可能である。もちろん、光学的な分散補正とソフトウェアによる分散補正を組み合わせたものに対しても適用可能である。
【0096】
なお、以上の説明においては、フーリエ変換後の深さプロファイルに基づいて各撮像条件が調整されたが、これに限定されない。すなわち、検出器から出力される出力信号に基づいて各撮像条件が調整さればよい。例えば、フーリエ変換前のスペクトルデータが用いられてもよい。
【0097】
なお、上記説明において、スペクトルメータを用いたスペクトルドメインOCTを例にとって説明したが、これに限定されない。例えば、波長可変光源を備えるSS−OCT(Swept source OCT)であってもよい。