【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(SEM径比)
銀被覆銅粉(サンプル)を走査型電子顕微鏡(SEM)にて1,000倍率で観察し、100個の視野においてそれぞれ5個、合計500個の粒子を抽出した。各粒子の長径と短径を測定して、長径に対する短径の比率の平均値をSEM径比(短径/長径)とした。
【0038】
(粒子表面に存在する銀量と銅量の比率測定)
銀被覆銅粉(サンプル)のX線電子分光の測定を行い、それぞれの分光強度の比から粒子表面に存在する銀量
(atomic%)と銅量
(atomic%)の比率を求めた。X線電子分光測定の条件を次に示す。
装置:島津製作所 ESCA-K1
X線源:Mg−Kα
出力:電圧10kV、電流20mA
分析面積:0.85mmφ
Ar+エッチング:なし
【0039】
(粒度測定)
銀被覆銅粉(サンプル)を少量ビーカーに取り、3%トリトンX溶液(関東化学製)を2、3滴添加し、粉末になじませてから、0.1%SNディスパーサント41溶液(サンノプコ製)50mLを添加し、その後、超音波分散器TIPφ20(日本精機製作所製、OUTPUT:8、TUNING:5)を用いて2分間分散処理して測定用サンプルを調製した。
この測定用サンプルを、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置MT3300(日機装製)を用いて体積累積粒径D50を測定した。
【0040】
(比表面積の測定)
比表面積は、ユアサアイオニクス社製モノソーブにて、BET一点法で測定した。
【0041】
(導電性ペーストの導電性(比抵抗)評価)
シリコーンシーラント(スリーボンド社製、型番5211)に対し、銀被覆銅粉(サンプル)を70質量%の比率で配合し、更に銀被覆銅粉(サンプル)と同じ質量のトルエンを添加し、シンキー社製あわ取り練太郎(型番AR−100)を用いて十分に混合した後、ガラス板状にスクリーン印刷により1cm×10cmの帯状のパターンを印刷した。そのペーストを大気中にて70℃で60分間乾燥させ後、デジタルボルトメーター(YOKOGAWA ELECTRIC WORKS製)にて電気抵抗を測定した。
また、マイクロメーターにて膜厚を測定し、比抵抗(Ω・cm)=幅(cm)×膜厚(μm)×電気抵抗(Ω)/(長さ(cm)×10
4)という式にて、導電性ペーストの導電性(比抵抗)を算出した。
【0042】
(実施例1)
デンドライト状電解銅粉(純度99%以上、D50:15μm、短径/長径=0.2)25kgを、50℃に保温した純水50L中に投入してよく攪拌させた。これとは別に、純水5Lに硝酸銀4.5kg投入して硝酸銀溶液を作製した。先ほど銅粉を溶解した溶液に硝酸銀溶液を一括添加した。この状態で2時間攪拌を行い、銀被覆銅粉スラリーを得た。
次に、真空ろ過にて銀被覆銅粉スラリーのろ過を行い、ろ過が終わった後、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)600gを純水6Lに溶解させた溶液を用いて洗浄し、続いて3Lの純水で残留EDTAを洗浄した。その後、120℃で3時間乾燥させてデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)を得た。
【0043】
得られたデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)のSEM径比(短径/長径)は0.2であった。
デンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)のX線電子分光の測定を行い、粒子表面に存在する銀量と銅量の比率を測定した結果、表1に示すように、銀被覆銅粉の表面についている銅はほとんどないことが明らかとなった。
また、表1に示すように、この銀被覆銅粉の導電性を測定したところ、良好な値を示した。
【0044】
(実施例2)
電解銅粉(実施例1と同様)25kgを純水50L中に投入しよく攪拌させた。
これとは別に純水10Lに硝酸銀9.0kg投入して硝酸銀溶液を作製した。先ほど銅粉を溶解した溶液に硝酸銀溶液を一括添加した。この状態で2時間攪拌を行い、銀被覆銅粉スラリーを得た。次に真空ろ過にてろ過を行い、ろ過が終わった後、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)1200gを純水6Lに溶解させた溶液を用いて洗浄し、続いて3Lの純水で残留EDTAを洗浄した。その後、120℃で3時間乾燥させてデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)を得た。
【0045】
得られたデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)のSEM径比(短径/長径)は0.2であった。
デンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)のX線電子分光の測定を行い、粒子表面に存在する銀量と銅量の比率を測定した結果、表1に示すように、銀被覆銅粉の表面についている銅はほとんどないことが明らかとなった。
また、表1に示すように、この銀被覆銅粉の導電性を測定したところ、良好な値を示した。
【0046】
(実施例3)
電解銅粉(純度99%以上、D50:18μm、短径/長径=0.1)25kgを純水50L中に投入しよく攪拌させた。
これとは別に純水15Lに硝酸銀13.5kg投入して硝酸銀溶液を作製した。先ほど銅粉を溶解した溶液に硝酸銀溶液を一括添加した。この状態で2時間攪拌を行い、銀被覆銅粉スラリーを得た。次に真空ろ過にてろ過を行い、ろ過が終わった後、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)1800gを純水6Lに溶解させた溶液を用いて洗浄し、続いて3Lの純水で残留EDTAを洗浄した。その後、120℃で3時間乾燥させてデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)を得た。
【0047】
得られたデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)のSEM径比(短径/長径)は0.1であった。
デンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)のX線電子分光の測定を行い、粒子表面に存在する銀量と銅量の比率を測定した結果、表1に示すように、銀被覆銅粉の表面についている銅はほとんどないことが明らかとなった。
また、表1に示すように、この銀被覆銅粉の導電性を測定したところ、良好な値を示した。
【0048】
(実施例4)
電解銅粉(純度99%以上、D50:12μm、短径/長径=0.3)25kgを純水50L中に投入しよく攪拌させた。
これとは別に純水2.5Lに硝酸銀2.25kg投入して硝酸銀溶液を作製した。先ほど銅粉を溶解した溶液に硝酸銀溶液を一括添加した。この状態で2時間攪拌を行い、銀被覆銅粉スラリーを得た。次に真空ろ過にてろ過を行い、ろ過が終わった後、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)300gを純水6Lに溶解させた溶液を用いて洗浄し、続いて3Lの純水で残留EDTAを洗浄した。その後、120℃で3時間乾燥させてデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)を得た。
【0049】
得られたデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)のSEM径比(短径/長径)は0.3であった。
デンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)のX線電子分光の測定を行い、粒子表面に存在する銀量と銅量の比率を測定した結果、表1に示すように、銀被覆銅粉の表面についている銅はほとんどないことが明らかとなった。
また、表1に示すように、この銀被覆銅粉の導電性を測定したところ、良好な値を示した。
【0050】
(実施例5)
電解銅粉(純度99%以上、D50:10μm、短径/長径=0.4)25kgを純水50L中に投入しよく攪拌させた。
これとは別に純水7.5Lに硝酸銀6.75kg投入して硝酸銀溶液を作製した。先ほど銅粉を溶解した溶液に硝酸銀溶液を一括添加した。この状態で2時間攪拌を行い、銀被覆銅粉スラリーを得た。次に真空ろ過にてろ過を行い、ろ過が終わった後、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)900gを純水6Lに溶解させた溶液を用いて洗浄し、続いて3Lの純水で残留EDTAを洗浄した。その後、120℃で3時間乾燥させてデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)を得た。
【0051】
得られたデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)のSEM径比(短径/長径)は0.4であった。
デンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)のX線電子分光の測定を行い、粒子表面に存在する銀量と銅量の比率を測定した結果、表1に示すように、銀被覆銅粉の表面についている銅はほとんどないことが明らかとなった。
また、表1に示すように、この銀被覆銅粉の導電性を測定したところ、良好な値を示した。
【0052】
(比較例1)
電解銅粉(実施例1と同様)25kgを純水50L中に投入しよく攪拌させた。これとは別に純水5Lに硝酸銀4.5kg投入して硝酸銀溶液を作製した。先ほど銅粉を溶解した溶液に硝酸銀溶液を一括添加した。この状態で2時間攪拌を行い、銀被覆銅粉スラリーを得た。次に真空ろ過にてろ過を行い、ろ過が終わった後、洗浄を行った。洗浄水は純水6Lを用いた。ろ過後、120℃、3時間乾燥を行ってデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)を得た。
【0053】
得られたデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)のSEM径比(短径/長径)は0.2であった。
デンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)のX線電子分光の測定を行い、粒子表面に存在する銀量と銅量の比率を測定した結果、表1に示すように、銀被覆銅粉の表面に銅が比較的多くついていることが明らかとなった。
また、表1に示すように、この銀被覆銅粉の導電性を測定したところ、抵抗が悪いことが分かった。
【0054】
(比較例2)
電解銅粉(実施例1と同様)25kgを純水50L中に投入しよく攪拌させた。
これとは別に純水10Lに硝酸銀9.0kg投入し硝酸銀溶液を作製した。先ほど銅粉を溶解した溶液に硝酸銀溶液を一括添加した。この状態で2時間攪拌を行い、銀被覆銅粉スラリーを得た。次に真空ろ過にてろ過を行い、ろ過が終わった後、洗浄を行った。洗浄水は純水6Lに溶解させた溶液を用いた。ろ過後、120℃、3時間乾燥を行いデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)を得た。
【0055】
得られたデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)のSEM径比(短径/長径)は0.2であった。
デンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)のX線電子分光の測定を行い、粒子表面に存在する銀量と銅量の比率を測定した結果、表1に示すように、銀被覆銅粉の表面に銅が比較的多くついていることが明らかとなった。
また、表1に示すように、この銀被覆銅粉の導電性を測定したところ、抵抗が悪いことが分かった。
【0056】
【表1】
【0057】
(考察)
これらの結果とこれまで行った試験結果を総合すると、キレート剤で洗浄することにより、銀被覆銅粉粒子表面の銅量を効果的に少なくすることができ、抵抗値を下げることができることが確かめられた。この際、キレート剤は銅イオンをキレート化する効果があることから、洗浄に用いるキレート剤、特にEDTAの濃度は溶解する銅イオンに応じて濃度を変えることが好ましいと考えられ、キレート剤の添加量は溶解する銅イオンに対して5wt%〜50wt%、特に10wt%〜50wt%とするのが好ましいと考えられる。
また、粒子表面に存在する銅の量が、粒子表面に存在する銀の量に対して0.05未満であれば、粒子表面に酸化銅の被膜が形成されるのを抑えることができ、粉末が黒くなるのを防止できるばかりか、導電性をより一層高めることができると考えられる。