特許第5701748号(P5701748)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5701748スタックを含むパネル、およびそのパネルを含む弾道抵抗性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701748
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】スタックを含むパネル、およびそのパネルを含む弾道抵抗性物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/02 20060101AFI20150326BHJP
   B32B 5/12 20060101ALI20150326BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20150326BHJP
   F41H 5/04 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   B32B5/02 A
   B32B5/12
   D03D1/00 A
   F41H5/04
【請求項の数】29
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-506711(P2011-506711)
(86)(22)【出願日】2009年4月29日
(65)【公表番号】特表2011-523381(P2011-523381A)
(43)【公表日】2011年8月11日
(86)【国際出願番号】EP2009055219
(87)【国際公開番号】WO2009133150
(87)【国際公開日】20091105
【審査請求日】2012年4月17日
(31)【優先権主張番号】08008166.4
(32)【優先日】2008年4月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】ヨンゲダイク, マルセル
(72)【発明者】
【氏名】プッテン ファン, クーン
(72)【発明者】
【氏名】エス ファン, マルタン アントニウス
【審査官】 宮澤 尚之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−530052(JP,A)
【文献】 特表平06−506161(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01627719(EP,A1)
【文献】 特開平07−300763(JP,A)
【文献】 特開平07−068651(JP,A)
【文献】 特表2008−505302(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/107359(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
D03D 1/00− 27/18
F41A 1/00− 99/00
F41B 1/00− 15/10
F41C 3/00− 33/08
F41F 1/00− 7/00
F41G 1/00− 11/00
F41H 1/00− 13/00
F41J 1/00− 13/02
F42B 1/00− 99/00
F42C 1/00− 99/00
F42D 1/00− 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層および第2層を含む圧密されたスタックを含むパネルであって、前記第1層が延伸ポリマー繊維および任意に結合剤を含み、かつ前記第2層が延伸ポリマーテープを含み、
前記スタックにおける前記第1層および第2層の総数は少なくとも10である、パネル。
【請求項2】
前記第1層および/または第2層のうちの少なくとも1つが、延伸ポリマー繊維および/またはポリマーテープそれぞれの織布を含む、請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
前記第2層は平行配向された複数の延伸ポリマーテープを含み、隣接する当該延伸ポリマーテープの間には隙間がある、請求項1又は2に記載のパネル。
【請求項4】
前記第2層はテープ織物構造へと織られた複数の延伸ポリマーテープを含む、請求項1又は2に記載のパネル。
【請求項5】
前記スタックにおける前記第1層および第2層の総数は少なくとも25である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項6】
前記第1層が平行配向で延伸ポリマー繊維を含み、隣接する第1層における前記繊維の配向が、20〜160度の角度で異なる、請求項1〜のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項7】
前記スタックにおいて、多くの第1層および/または第2層がクラスターを形成する、請求項1〜のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項8】
第2層の総面積密度が、スタックの総面積密度の1〜50%である、請求項1〜のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項9】
第2層の総面積密度が、スタックの総面積密度の3〜30%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項10】
第2層の総面積密度が、スタックの総面積密度の5〜20%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項11】
前記延伸ポリマーテープの面積密度が、20〜60g/mである、請求項1〜10のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項12】
前記第1層および/又は前記第2層は結合剤を含み、当該結合剤は前記繊維に対する結合ストリップとして適用される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項13】
前記第2層は結合剤を含み、当該結合剤は局所的に適用されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項14】
前記第1層および/または前記第2層の少なくとも1つの厚さは120μmを超えない、請求項1〜13のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項15】
前記第1層および/または前記第2層の少なくとも1つの厚さは50μmを超えない、請求項1〜13のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項16】
前記第1層および/または前記第2層の少なくとも1つの厚さは29μmを超えない、請求項1〜13のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項17】
前記第1層における延伸ポリマー繊維の体積百分率が、70〜98%である、請求項1〜16のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項18】
前記第1層における延伸ポリマー繊維の体積百分率が、80〜95%である、請求項1〜16のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項19】
前記第1層における延伸ポリマー繊維の体積百分率が、85〜92%である、請求項1〜16のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項20】
前記第1層の前記ポリマーが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、液晶ポリマーおよびはしご型ポリマーからなる群から選択され、かつ前記第2層の前記ポリマーが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、およびポリアミドからなる群から選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項21】
前記ポリアミドが、ポリ(p−フェニレンテラフタルアミド)である、請求項20に記載のパネル。
【請求項22】
前記液晶ポリマーおよびはしご型ポリマーが、ポリベンゾイミダゾールまたはポリベンゾオキサゾールであり、あるいは、ポリ(1,4−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、またはポリ(2,6−ジイミダゾ[4,5−b−4’,5’−e]ピリジニレン−1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)である、請求項20に記載のパネル。
【請求項23】
前記第1層または第2層における前記ポリマーが、ポリオレフィンである、請求項20に記載のパネル。
【請求項24】
前記第1層または第2層における前記ポリオレフィンが、ポリエチレンである、請求項23に記載のパネル。
【請求項25】
前記ポリエチレンが、超高分子量ポリエチレンである、請求項24に記載のパネル。
【請求項26】
前記超高分子量ポリエチレンは、デカリン中の溶液で135℃にて決定される固有粘度が少なくとも4dl/gである、請求項25に記載のパネル。
【請求項27】
前記第1層が、マトリックスに埋め込まれた、平行配向の延伸ポリマー繊維を含み、かつ前記第2層が、延伸ポリマーテープを含む、請求項1〜26のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか一項に記載のパネルを含む、弾道抵抗性物品。
【請求項29】
前記スタックの第2層の多くがクラスターを形成し、かつ第2層のこのクラスターが衝撃面に位置する、請求項28に記載の弾道抵抗性物品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、第1層および第2層を含むスタック、かかる第1層および第2層の圧密スタックを含むパネル、および前記スタックまたはパネルを含む防弾抵抗性物品に関する。
【0002】
延伸ポリマー繊維の第1層の圧密スタックは、米国特許第6,893,704B1号明細書から知られている。この特許には、平行配向で結合マトリックスに埋め込まれた超高分子量ポリエチレン繊維からなる複数の層を含むスタックであって、スタックにおける次の2層の繊維の延伸方向または配向が異なるスタックが開示されている。このスタックは、いわゆる高弾道抵抗性物品を作製するために、圧縮することによって使用される。
【0003】
満足の行く高弾道抵抗性物品は、高い剛性と優れたエネルギー吸収能力とを併せ持つことが必要である。高い剛性は、物体の衝撃から生じる、いわゆる(鈍的)外傷を減らすのに有利であることが多い。剛性およびエネルギー吸収の要求条件は、一方がもう一方に対して不利になる可能性があり得ること、かつ通常不利になることを極小化するという理由から、ある程度矛盾する。両方の要求条件を兼ね備える、(圧密)スタックおよびその弾道抵抗性物品を提供することが非常に望まれる。
【0004】
米国特許第6,893,704B1号明細書によるスタックは満足の行く弾道性能を示すが、この性能をさらに改善することができる。
【0005】
本発明の目的は、既知の材料と少なくとも同程度の防弾性を有する、圧密することができるスタックを提供することであり、そのスタックまたは圧密パネルは容易に製造することができる。
【0006】
この目的は、第1層および第2層を含むスタックであって、第1層が延伸ポリマー繊維および任意に結合剤を含み、かつ第2層が延伸ポリマーテープを含むスタックを提供することによって、本発明に従って達成される。
【0007】
驚くべきことに、両方の種類の層を合わせてスタックを形成し、そのスタックを圧密することによって、適切なまたは向上したレベルのエネルギー吸収と剛性を併せ持つ、シートとも呼ばれるパネルが得られる。以下にさらに説明される本発明の特定の実施形態において、本発明によるスタックは、現況技術と比較すると意外に高い程度まで、シートの防弾性を向上させる。これは、第1層と第2層との相乗効果によるものと考えられる。
【0008】
本発明のスタックの第1層は好ましくは、複数の延伸ポリマー繊維を平行配向で適切な表面上に位置付け、繊維を互いに保持することによって、例えば適切なマトリックス材料中に繊維を埋め込むことによって製造される。本発明による第1層を製造する他の方法は、平行配向で密に位置付けられた複数の繊維を同時に適切なマトリックス材料を介して引っ張り、適切な表面上に繊維を配する方法である。繊維の湿潤を促進するために、溶媒を加熱することによって、または溶媒を添加することによって、マトリックス材料の粘度を下げる。後者の場合には、溶媒の蒸発によって、第1層が残り、更なる処理のために用いられる。
【0009】
本発明のスタックの第2層は好ましくは、複数の延伸ポリマーテープを平行配向で位置付けることによって製造され、その縦方向の縁端は互いに可能な限り近接し、好ましくは接触する近さである。しかしながら、工業的規模で経済的な速度でかかる第2層を製造することができるようにするためには、隣接テープ間に隙間をとることも可能であり、かかる隙間は2mm以下である。他の選択肢は、縦方向縁端に沿って部分的な重なりを形成することである。さらに他の可能性は、テープ上に薄いポリマーフィルムを位置付けて、密着した第2層を形成することである。適切なフィルムは、厚さ5〜15ミクロンのポリオレフィン、好ましくはポリエチレンフィルムである。本発明による第2層は好ましくは、互いに対してその縦方向縁端を有する複数のテープを位置付けることによって製造されるが、そのテープまたはフィルムが後に記載のように必要な機械的性質を有する限り、十分な幅のただ1つの(十分に幅広い)テープから作られる第2層もまた本発明の範囲内にある。他の好ましい実施形態において、第2層は、平行配向の代わりに、テープ織物構造へと織られたテープを含み得る。
【0010】
第2層のテープは、延伸フィルムによって製造することができる。フィルムは、継目なしベルトの組み合わせの間にポリマー粉末を供給し、その融点未満の温度でそのポリマー粉末を圧縮成形し、得られた圧縮成形ポリマーを圧延し、それによってフィルムを形成することによって製造される。フィルムを形成するのに好ましい他の方法は、押出機にポリマーを供給し、その融点を超える温度でフィルムを押出し、押出ポリマーフィルムを延伸することを含む。所望の場合には、押出機にポリマーを供給する前に、ポリマーを適切な液体有機化合物と混合して、例えばゲルを形成することができ、例えば、超高分子量ポリエチレンを使用する場合などに好ましい。テープを製造するためのフィルムの延伸、好ましくは一軸延伸は、当該技術分野で公知の手段によって行われる。かかる手段は、押出延伸および適切な延伸装置上での引張り延伸を含む。向上した機械的強度および剛性を得るために、延伸は複数の工程で行われる。得られた延伸テープ自体を使用して前記第2層を製造するか、またはそれらを所望の幅に切断するか、または延伸方向に沿って裂く。好ましくは、前記第2層は、裂かれていないテープから製造される。これによって、製造中の取り扱いの工程が少なくなる。このように製造された一方向テープの幅は、テープが製造されるフィルムの幅によって制限されるだけである。テープの幅は、好ましくは2mmを超え、さらに好ましくは5mmを超え、最も好ましくは30mmを超える。テープまたは層の面積密度は、大きな範囲にわたって変動し、例えば5〜200g/mであることができる。好ましい面積密度は、10〜120g/m、さらに好ましくは15〜80g/m、最も好ましくは20〜60g/mである。
【0011】
第1層および/または第2層が繊維および/またはテープをそれぞれ、平行配向で、いわゆる一方向配列で含む場合、本発明によるスタックの好ましい実施形態において、スタックにおける2つの続くまたは隣接する第1層および/または第2層の延伸方向(すなわち、繊維およびテープそれぞれの配向)は異なる。これによって、防弾性がさらに改善される。多層材料シートがさらに好ましく、スタックにおける2つの続く第1層および/または第2層の延伸方向は、角度20〜160度、さらに好ましくは40〜140度、最も好ましくは70〜110度異なる。2層の延伸方向が約90度の角度で異なる、隣接して位置する2つの第1層または2つの第2層のアセンブリは通常、クロスプライと呼ばれる。かかるクロスプライを使用したスタックの組立ては、生産速度に関して有利である。
【0012】
本発明によるスタックの他の好ましい実施形態において、第1層および/または第2層のうちの少なくとも1つが、延伸ポリマー繊維および/または延伸ポリマーテープそれぞれの織布を含む。かかる好ましい実施形態において、第1層は場合により、それらが織物構造を形成するように並べられた複数の延伸ポリマー繊維で構成され、第2層も場合により、それらが織物構造を形成するように並べられた複数の延伸ポリマーテープで構成される。第1層および/または第2層としてのかかる織布は、延伸ポリマーの繊維(第1層に関して)または延伸ポリマーの小さなストリップ(第2層に関して)の製織、ブレイディング等の紡織技術を適用することによって製造することができる。特に第2層は好ましくは、隣接する層からのテープが互いの上で突出しないようにスタックされるが、異なるテープ間の縫い目線はむしろ、互い違いに配置され、防弾性がさらに改善される。
【0013】
第1層および第2層は原則的に、あらゆる積重ね順序で配置することができる。例えば、スタックにおいて交互に層を配置することが可能である。
【0014】
好ましい実施形態において、本発明によるスタックは、多くの第1層および/または第2層がクラスターとなることを特徴とする。かかる配置は容易に製造され、防弾性を向上させる。さらに好ましくは、スタックは、クラスター配置における第1層および/または第2層を総面積密度の少なくとも20%、またさらに好ましくは第1層および/または第2層を総面積密度の少なくとも50%、最も好ましくは第1層および/または第2層を総面積密度の少なくとも95%含む。特に、最後の実施形態によって、防弾性と、剛性の向上による外傷の低減との優れた組み合わせが得られる。
【0015】
スタックにおける第1層および第2層の相対面積密度は原則的に、第1層と第2層の両方が存在する限り、大きな範囲にわたって変化し得る。特に優れた防弾性は、第2層の総面積密度が、多層材料シートの総面積密度に対して1〜50%、好ましくは3〜30%、最も好ましくは5〜20%であるスタックで達成される。材料シートの面積密度は、平方メートル当たりのその重量として定義される。
【0016】
スタックにおける第1層および第2層の総数は、用途に依存するが、有利なことには少なくとも2、好ましくは少なくとも10、最も好ましくは少なくとも25である。これらの好ましい実施形態は、強く、堅い多層材料シートであって、さらに軽量であるシートを提供する。軽量であることは、人間の使用者に快適さを提供する。
【0017】
本発明による多層材料シートの特に好ましい他の実施形態は、第1層の繊維が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、特にポリ(p−フェニレンテラフタルアミド)、液晶ポリマーおよびはしご型ポリマー、例えばポリベンゾイミダゾールまたはポリベンゾオキサゾール、特にポリ(1,4−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、またはポリ(2,6−ジイミダゾ[4,5−b−4’,5’−e]ピリジニレン−1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)からなる群から選択されるポリマーから製造され、かつ第2層のポリマーが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、およびポリアミドからなる群から選択されることを特徴とする。これらのポリマーからのテープ、繊維および層は好ましくは、例えばフィルム、テープまたは繊維を適切な温度で延伸することによって高度に配向され、一方向材料が得られる。一方向テープの場合、繊維および層とは、本出願の文脈において、テープ、繊維および層が、一方向への、すなわち延伸方向への、ポリマー鎖の好ましい配向を示すことを意味する。かかるフィルム、テープ、繊維および層は、延伸によって製造され、好ましくは一軸延伸によって製造され、異方性機械的性質を示すだろう。
【0018】
本発明のスタックの好ましい実施形態は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の第1層および/または第2層を含み、すなわち、前記層に含有される繊維および/またはテープは、UHMWPEから製造される。UHMWPEは直鎖状または分岐状であることができるが、好ましくは直鎖状ポリエチレンが使用される。直鎖状ポリエチレンは、本明細書において炭素原子100個につき1本未満の側鎖、好ましくは炭素原子300個につき1本未満の側鎖を有するポリエチレンを意味すると理解され、側鎖または分枝鎖は一般に、少なくとも10個の炭素原子を含有する。側鎖は、例えば欧州特許第0269151号明細書に記載のように、厚さ2mmの圧縮成形フィルム上でFTIRによって適切に測定される。直鎖状ポリエチレンはさらに、プロペン、ブテン、ペンテン、4−メチルペンテン、オクテンなどの、それと共重合可能な1種または複数種の他のアルケンを5モル%まで含有し得る。好ましくは、直鎖状ポリエチレンは、高モル質量であり、少なくとも4dl/g、さらに好ましくは少なくとも8dl/g、最も好ましくは少なくとも10dl/gの固有粘度(IV,デカリン中の溶液で135℃にて決定される)を有する。かかるポリエチレンは、UHMWPEとも呼ばれる。固有粘度は、MnおよびMwなどの実際のモル質量パラメータよりも容易に決定することができる分子量の尺度である。UHMWPE繊維および/またはテープを使用することによって、特に優れた防弾性が得られる。
【0019】
好ましくは、そのフィラメントがゲル紡糸法によって製造される、UHMWPE繊維が使用される。適切なゲル紡糸法は、例えば英国特許出願公開第A−2042414号明細書、英国特許出願公開第A−2051667号明細書、欧州特許出願公開第0205960A号明細書および国際公開第01/73173A1号パンフレット、およびAdvanced Fiber Spinning Technology,Ed.T.Nakajima,Woodhead Publ.Ltd(1994),ISBN 185573 182 7に記載されている。UHMWPE繊維の引張り強さ(またはテナシティ)は、マルチフィラメント糸に適用されるASTM D885Mに従って決定される。手短に言えば、ゲル紡糸法は、高固有粘度のポリオレフィン溶液を調製し、溶解温度を超える温度でその溶液をフィラメントへと紡糸し、ゲル化温度未満にフィラメントを冷却し、それによって、フィラメントが少なくとも一部ゲル化し、溶媒を少なくとも一部除去する前、除去する間および/または除去した後に、フィラメントを延伸することを含む。
【0020】
一部の実施形態において、第1層および/または第2層は、第1層および/または第2層の構造が、かかる第1層および/または第2層の取り扱いおよび製造中に維持されるように、複数の一方向繊維および/またはテープを結合させ、安定化するために局所的に適用される、結合剤を含み得る。マトリックスとも呼ばれる場合が多い適切な結合剤は、例えば欧州特許第0191306B1号明細書、欧州特許出願公開第1170925A1号明細書、欧州特許第0683374B1号明細書および欧州特許出願公開第1144740A1号明細書に記載されている。結合剤は、様々な形態および方法で、例えば、横方向結合ストリップ(一方向配向繊維またはテープに対して横方向)として適用される。第2層の形成中の結合剤の適用は有利なことに、テープを安定化し、このため、隣接テープ間の重なりを避けると同時に、より速い製造サイクルを達成することが可能となる。結合剤の役割は、一方向シートの取り扱いおよび製造中に複数の一方向テープを一時的に保持し、かつ固定することであるため、結合剤を局所的に適用することが好ましい。代替の実施形態において、局所的な溶接などの結合手段を用いて、隣接する一方向テープが平行配向で維持されるように、隣接する一方向テープの縦方向縁端の部分を互いに、断続的に融着することができる。
【0021】
スタックの第1層および/または第2層の厚さは原則的に、広い範囲内で選択することができる。しかしながら、好ましくは、本発明によるスタックは、第1層および/または第2層の少なくとも1つの厚さ、好ましくは実質的にすべての厚さが、120μmを超えず、さらに好ましくは50μmを超えず、最も好ましくは29μmを超えないことを特徴とする。スタックにおける第1層および/または第2層のうちの少なくとも1つの厚さを要求される厚さに制限することによって、限られた強度を有する層でさえ、驚くべきことに十分な防弾性が達成される。
【0022】
第1層における繊維の強度は、それらが製造されるポリマーおよびその(一軸)延伸比に大きく依存する。繊維の強度は、少なくとも0.75GPa、好ましくは少なくとも0.9GPa、さらに好ましくは少なくとも1.2GPa、またさらに好ましくは少なくとも1.5GPa、またさらに好ましくは少なくとも1.8GPa、またさらに好ましくは少なくとも2.1GPa、最も好ましくは少なくとも3GPaである。繊維の強度は、当該技術分野で公知の方法、例えばASTM D2256−02(2008)に従って決定される。第1層の強度は、第1層内の繊維の体積含有率に依存する。第1層における繊維の体積含有率は、好ましくは70〜98%、さらに好ましくは80〜95%、最も好ましくは85〜92%であり、残りの体積は、結合剤および/または通常使用される他の添加剤を含有する。
【0023】
第2層におけるテープの強度は、それらが製造されるポリマーおよびその(一軸)延伸比に大きく依存する。テープ(および第2層)の強度は、少なくとも0.75GPa、好ましくは少なくとも0.9GPa、さらに好ましくは少なくとも1.2GPa、またさらに好ましくは少なくとも1.5GPa、またさらに好ましくは少なくとも1.8GPa、またさらに好ましくは少なくとも2.1GPa、最も好ましくは少なくとも3GPaである。当該技術分野で公知の方法、例えばインストロン(Instron)引張試験機において、バレルクランプで締付けられた例えば長さ25cmのテープを、例えば速度25cm/分で引っ張ることによって、テープの強度が決定される。その一方向層は好ましくは、互いに十分に連結されており、それは例えば室温などの通常の使用条件下にて、一方向層が剥離しないことを意味する。
【0024】
本発明によるスタックは、例えば圧縮による圧密によって、装甲板またはパネルなどの高防弾性物品を製造するのに特に有用である。弾道用途は例えば、断片および破片など、銃弾および硬い粒子を含む数種類の発射物に対する弾道的脅威を有する用途を含む。
【0025】
本発明によるスタックまたはパネルを含む弾道抵抗性物品の好ましい実施形態において、スタックの第2層の多くがクラスターを形成し、第2層のクラスターは、スタックまたはパネルの外側に、少なくともその衝撃面に位置する。さらに好ましくは、スタックの第2層の総面積密度の少なくとも20%、またさらに好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも95%がクラスターを形成し、それによって、第2層のクラスターは、スタックの外側に、少なくともその衝撃面に位置する。これらの技術的対策がとられた弾道抵抗性物品またはパネルは、向上したエネルギー吸収および増加した剛性を示す。
【0026】
本発明による弾道抵抗性物品は、セラミック;金属、好ましくはアルミニウム、マグネシウム、チタン、ニッケル、クロムおよび鉄またはその合金;ガラス;グラファイト、またはその組み合わせからなる群から選択される無機材料の更なるシートを含み得る。金属が特に好ましい。かかる場合には、金属シートにおける金属は、少なくとも350℃、さらに好ましくは少なくとも500℃、最も好ましくは少なくとも600℃の融点を有する。適切な金属としては、アルミニウム、マグネシウム、チタン、銅、ニッケル、クロム、ベリリウム、鉄および銅、その合金など、例えば鋼およびステンレス鋼およびアルミニウムとマグネシウムの合金(いわゆるアルミニウム5000シリーズ)、およびアルミニウムと亜鉛およびマグネシウムとの合金またはアルミニウムと亜鉛、マグネシウムおよび銅との合金(いわゆるアルミニウム7000シリーズ)が挙げられる。前記合金において、例えば、アルミニウム、マグネシウム、チタンおよび鉄の量は好ましくは、少なくとも50重量%である。好ましい金属シートは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ニッケル、クロム、ベリリウム、鉄、その合金などを含む。さらに好ましくは、金属シートは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ニッケル、クロム、鉄、およびその合金をベースとする。この結果、優れた耐久性を有する軽量防弾性物品が得られる。またさらに好ましくは、金属シートにおける鉄またはその合金は、少なくとも500のブリネル硬さを有する。最も好ましくは、金属シートは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、およびその合金をベースとする。この結果、最高の耐久性を有する最軽量の防弾性物品が得られる。本出願において耐久性とは、熱、湿気、光および紫外線への暴露条件下での複合材の寿命を意味する。層のスタックにおいてどこにでも無機材料の更なるシートを位置付けることができるが、好ましい弾道抵抗性物品は、無機材料の更なるシートが、第1層および第2層を有するスタックまたはパネルの外側に、最も好ましくは少なくともその衝撃面に位置付けられることを特徴とする。
【0027】
無機シートの厚さは、広い範囲内で変動し、好ましくは1〜50mm、さらに好ましくは2〜30mmである。
【0028】
スタックの外側、少なくともその衝撃面に無機材料の更なるシートを位置付けることが好ましい。弾道抵抗性物品の衝撃面におけるかかる無機シートは、弾道の脅威に対する、特にいわゆる徹甲(「AP」)の脅威または銃弾に対する、更なる保護を提供する。無機材料の更なるシートは、(圧密)スタックとの付着を向上させるために、任意に予備処理してもよい。更なるシートの適切な予備処理としては、機械的処理、例えば、サンダー仕上げまたは研磨、例えば硝酸を用いた化学エッチングによるその表面の荒面仕上またはクリーニング、およびポリエチレンフィルムでのラミネートが挙げられる。
【0029】
弾道抵抗性物品の他の実施形態において、結合層、例えば接着剤は、更なるシートとスタックまたはパネルとの間に塗布される。かかる接着剤は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂またはビニルエステル樹脂を含み得る。他の好ましい実施形態において、結合層は、無機繊維、例えばガラス繊維または炭素繊維の織物層または不織物層をさらに含み得る。例えば、ねじ、ボルトおよびスナップ嵌めなどの機械的手段によって、スタックまたはパネルに更なるシートを取り付けることも可能である。AP銃弾、断片または急造爆発装置に対する脅威に遭遇し得る弾道用途において、本発明による弾道抵抗性物品が使用される場合には、更なるシートは、セラミック層でカバーされた金属シートを含むことが好ましい。このようにして、以下のような(衝撃面から始まる):セラミック層/金属シート/第1層および第2層の層状構造を有する防弾性物品が得られる。適切なセラミック材料としては、例えば、酸化アルミナ、酸化チタン、酸化ケイ素、炭化ケイ素および炭化ホウ素が挙げられる。無機層のシートの厚さ、特にセラミック層の厚さは、弾道の脅威レベルに依存するが、一般に2〜30mmと様々である。
【0030】
本発明の一実施形態において、弾道抵抗性物品、特にパネルを製造する方法であって、(a)複数の第1層および第2層をスタックする工程;(b)温度および圧力下にてスタック層を圧密し、パネルを形成する工程;を含む方法が提供される。好ましくは、セラミック、鋼、アルミニウム、チタン、ガラスおよびグラファイト、またはその組み合わせからなる群から選択される材料の更なるシートが、好ましくは第1層および第2層の圧密スタックと組み立てられる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、(a)複数の第1層および第2層をスタックする工程であって、第1層および第2層の少なくとも95%がクラスターを形成し、それによって好ましくは、第2層のクラスターがスタックの外側に、少なくともその意図される衝撃面に位置付けられる工程;(b)温度および圧力下にて、スタックされた第1層および第2層を圧密する工程;を含む、弾道抵抗性物品を製造する方法が提供される。
【0032】
代替の方法において、第1層および/または第2層の圧密された2層または4層スタックを用いて、スタックが形成される。
【0033】
上述のすべての方法の圧密は、水圧プレスにおいて適切に行われる。圧密とは、第1層および第2層を比較的しっかりと、互いに取り付けて、1つのユニットを形成することを意味することが意図される。圧密中の温度は一般に、プレス温度によって制御される。最低温度は一般に、適度な圧密速度が得られるように選択される。この点から、80℃が適切な下限温度であり、この下限は、好ましくは少なくとも100℃、さらに好ましくは少なくとも120℃、最も好ましくは少なくとも140℃である。最高温度は、第1層および第2層の延伸ポリマーが、例えば融解のためにその高い機械的性質を失う温度より低い温度に選択される。好ましくはその温度は、延伸ポリマー層の融解温度より少なくとも10℃、好ましくは少なくとも15℃、さらに少なくとも20℃低い。第1層および第2層における延伸ポリマーが明確な融解温度を示さない場合には、延伸ポリマー層がその機械的性質を失い始める温度が、融解温度の代わりに読み取られる。好ましい超高分子量ポリエチレンの場合には、145℃未満の温度が一般に選択される。
【0034】
圧密中の圧力は、好ましくは少なくとも7MPa、さらに好ましくは少なくとも15MPa、またさらに好ましくは少なくとも20MPa、最も好ましくは少なくとも35MPaである。このようにして、剛性の防弾性物品が得られる。圧密に最適な時間は一般に、5〜120分の範囲であり、温度、圧力、成形品の厚さなどの条件に応じて異なり、通常の実験によって確認することができる。湾曲した防弾性物品を製造する場合には、更なるシートの材料を最初に所望の形状へと予備成形し、続いて第1層および第2層と圧密することが有利である。
【0035】
好ましくは、高い弾道抵抗性を得るために、高温での圧縮成形後の冷却も、圧力下で行われる。圧力は好ましくは、緩和を防ぐために温度が十分に低くなるまで、例えば80℃以下まで維持される。この温度は当業者によって確立することができる。超高分子量ポリエチレンの層を含む弾道抵抗性物品を製造する場合、一般的な圧縮温度は、90〜150℃、好ましくは115〜130℃の範囲である。一般的な圧縮圧力は、100〜300バール、好ましくは100〜180バール、さらに好ましくは120〜160バールの範囲であり、圧縮時間は一般に、40〜180分である。
【0036】
本発明のスタック、パネルおよび防弾性物品は特に、著しく低い重量で公知の材料と少なくとも同じレベルの保護、または公知の物品と比較して等しい重量で向上した弾道性能を提供することから、従来から知られている防弾性材料よりも有利である。出発原料が安価であり、製造プロセスが比較的短く、したがって対費用効果が高い。異なるポリマーを使用して本発明の製品を製造することができることから、特定の用途に応じて、特性を最適化することができる。
【0037】
本発明は、添付の図面によって、より詳細に説明されるが、それに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1aは、本発明によるスタックの概略分解組立図を示し、図1bは、図1aに示される圧密スタックの概略断面図を示す。
図2図2は、本発明によるスタックの他の実施形態の概略分解組立図を示す。
図3図3は、第1層および第2層の約50%がクラスターを形成する、本発明による弾道抵抗性物品の概略断面図を示す。
【0039】
図1aを参照すると、本発明によるスタック(1)は、4つの第1層(10)および4つの第2層(20)を含む。第1層(10)は、マトリックス(15)に埋め込まれた複数の平行配置延伸ポリマー繊維(12)を含む。第2層(20)は、複数の平行配置延伸ポリマーテープ(22)を含む。隣接して位置する2つの第1層および第2層(10,20)の延伸方向は、90度の角度で異なる。好ましい順序で複数の層(10,20)を位置付けた後、このように形成されたスタックを圧力下および高温にて圧密する。この結果が、その断面が図1bで示される圧密スタックまたはパネル(1)である。
【0040】
図2を参照すると、本発明によるスタック(2)の他の実施形態が示される。スタック(2)は2つの第1層(30)および2つの第2層(40)を含む。第1層(30)は、延伸繊維(12)の織物構造を含み、第2層(40)は、テープ(22)の織物構造を含む。層(30)および(40)は、上述のようにスタックされ、圧密されて、パネルが形成される。
【0041】
他の好ましい実施形態は、平行配向で繊維を含む第1層(10)を含むスタックに関し、次の層は、図1に(10)によって説明されるようにクロスプライされ、第2層は図2に(40)によって記載される織物テープを含む。
【0042】
図3を参照すると、本発明によるスタック(3)の他の実施形態が示される。スタック(3)は、圧密された多くの第1層および第2層(10,20)を含み、第1層および第2層の面積密度の約50%がクラスターを形成する。示される特定の実施形態において、2つのクラスター(13)は、隣接位置の多くの第1層(10)によって形成され、2つのクラスター(23)は、隣接位置の多くの第2層(20)によって形成される。多層シートの本発明の実施形態は、弾道抵抗性物品として特に有用である。クラスター(23)が弾道物品またはパネルの衝撃面(50)に位置する場合に、特に有利な特性の組み合わせが得られる。
【0043】
本発明はさらに、それに限定されることなく、以下の実施例および比較実験によって説明される。
【0044】
[実施例I]
第1層および第2層を含む圧密パネルを作製した。パネルの面積密度(多層材料シートの平方メートル当たりの質量)は21kg/mであった。第2層のパーセンテージ(第2層の面積密度/シートの面積密度×100%として定義される)は10%であった。スタックは、ダイニーマ(Dyneema)(登録商標)HB26の72層(強度3.5GPaを有する一方向配向ポリエチレン繊維のクロスプライ層とマトリックスを含む:第1層)および強度1.8GPaを有する延伸超高分子量ポリエチレンテープのテープ織物層(第2層)をスタックすることによって形成された。多くのクロスプライ第1層と織物第2層を表1に示すようにスタックした。第1層および第2層は2つのサブスタックでクラスターを形成し、第2層のクラスターが衝撃面に位置した(図3に示す)。圧力165バール、温度130℃で35分間、圧密を行った。圧密されたシートを圧力下で冷却した。
【0045】
[実施例II]
第1層の64のクロスプライと41の第2層を使用してスタックを形成し、スタックにおける第2層のパーセンテージが20%となったことを除いては、実施例Iを繰り返した。
【0046】
[実施例III]
第1層の40のクロスプライと102の第2層を使用してスタックを形成し、スタックにおける第2層のパーセンテージが50%となったことを除いては、実施例Iを繰り返した。
【0047】
[比較実験A]
上述の方法と同じ方法で圧密スタックを作製し、唯一の違いは、スタックが第1層のみで作られたことである(ダイニーマ(登録商標)HB26のみ含有;第2層0%)。製造されたシートの面積密度は21kg/mであった。
【0048】
【表1】

【0049】
試験手順
製造されたパネルを曲げ荷重下にて、その防弾性能に関して機械的に試験した。曲げ試験には、合計10個の試料を各データポイントに使用した。試料を試験にかける前に、23℃、湿度50%で48時間コンディショニングした。曲げ弾性率を得るための三点曲げ試験をISO178に従って行った。
【0050】
所定の速度、平均827m/sでAK47 7.6239mm MSC(Mrs.Sellier & Bellot社製)の脅威に各試料の2つのパネルをさらすことによって、弾道性能(固有エネルギー吸収,SEA)を分析した。面積密度、銃弾重量および速度を用いて、エネルギー吸収を計算した。
【0051】
結果
試験の結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
この結果から、発明さたシートにおける第1層と第2層の組み合わせによって、剛性が高められることが示されている。このことにより、外傷が減少する。さらに、発明されたシートの固有エネルギー吸収(SEA)として表される防弾性能は、最新技術によるシートによって吸収されるエネルギーと少なくとも同レベルであるか、またはそれより高い。
【0054】
特に、スタックにおける第2層のパーセンテージが約20%または20%未満である場合には、高いパーセンテージの前記第2層を含有するスタックと比較して、前記スタックのSEAが高いことを確認することができる。第2層の量を20%を超える量に増加することによって、前記スタックのSEAが減少することも確認された。特に、第2層約50%にて、前記スタックのSEAは、第1層のみ含有するスタックのSEAを下回った。第1層と第2層の相乗効果は、第2層約20%または20%未満の上記範囲に関して強く、その量を増加することによって減少すると結論付けられる。
【0055】
前記スタックの剛性は、第2層のパーセンテージを高いパーセンテージに、例えば50%にシフトすることによってさらに増加することも確認された。
【0056】
本発明のスタックから製造された弾道抵抗性物品は、公知の材料と比較して、ほぼ同じ重量または低い重量で向上したレベルの保護を提供することから、従来から知られている弾道抵抗性物品よりも特に有利である。
図1a
図1b
図2
図3