(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701775
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】バイアルアダプタ素子
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20150326BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
A61J3/00 314B
A61J1/00 315C
A61J1/00 315D
A61J3/00 316C
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-546305(P2011-546305)
(86)(22)【出願日】2010年1月13日
(65)【公表番号】特表2012-515055(P2012-515055A)
(43)【公表日】2012年7月5日
(86)【国際出願番号】US2010020829
(87)【国際公開番号】WO2010083174
(87)【国際公開日】20100722
【審査請求日】2012年12月20日
(31)【優先権主張番号】12/354,004
(32)【優先日】2009年1月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505271758
【氏名又は名称】テバ メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュメシュ,エリ
【審査官】
岩田 洋一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/036101(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/117178(WO,A1)
【文献】
特開平08−071121(JP,A)
【文献】
特表平02−503272(JP,A)
【文献】
特表2007−503853(JP,A)
【文献】
特開2001−333960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬品混合システムで用いるためのバイアルアダプタ素子であって、
ボディと、
前記ボディから延在するバイアル接続ポートと、
前記バイアル接続ポートの内部に突出し、かつ前記ボディから延在するシリンジアダプタ素子接続ポートと流体連通する中空のバイアル穴あけスパイクと、
前記ボディの内壁の周りに間隔を空けて配置され、かつ前記ボディの内壁に形成された切抜部に位置する複数の弾性舌部とを備え、
前記ボディは、前記バイアル接続ポートから外向きに延びかつ前記バイアル接続ポートの周囲に連続して延びる途切れていない縁を含む、バイアルアダプタ素子。
【請求項2】
前記弾性舌部に向かう付勢力を作り出すために配置される付勢装置をさらに備える、請求項1に記載のバイアルアダプタ素子。
【請求項3】
各舌部は、面取り突起で終端する片持ちアームを含み、前記片持ちアームは、前記ボディの内壁に沿って延在する、請求項1に記載のバイアルアダプタ素子。
【請求項4】
各舌部は、面取り突起で終端する片持ちアームを含み、前記片持ちアームは、ボディの内壁と同じ厚みであり、前記面取り突起は、前記片持ちアームよりも厚い、請求項1に記載のバイアルアダプタ素子。
【請求項5】
各舌部は、面取り突起で終端する片持ちアームを含み、各面取り突起は、前記ボディの中心に向かって径方向に延在し、前記ボディに形成された切抜部の近位端に位置する、請求項1に記載のバイアルアダプタ素子。
【請求項6】
前記付勢装置はコイルバネを含む、請求項2に記載のバイアルアダプタ素子。
【請求項7】
前記付勢装置は、前記スパイクが貫通するための孔を有する可撓性円筒形素子を含む、請求項2に記載のバイアルアダプタ素子。
【請求項8】
前記ボディは、前記縁から内向きに延在する円錐フランジを含む、請求項1に記載のバイアルアダプタ素子。
【請求項9】
各舌部は、面取り突起で終端する片持ちアームを含み、各片持ちアームは、前記円錐フランジに形成された切抜部の近位端から垂れ下がり、前記面取り突起が延在し始める前記片持ちアームの遠位端縁から付属物が延在する、請求項8に記載のバイアルアダプタ素子。
【請求項10】
各舌部は、面取り突起で終端する片持ちアームを含み、各片持ちアームは、前記ボディの床から延在し、前記ボディに形成された切抜部に位置し、前記面取り突起が延在し始める前記片持ちアームの遠位端縁から付属物が延在する、請求項1に記載のバイアルアダプタ素子。
【請求項11】
前記中空のバイアル穴あけスパイクは、前記ボディに形成されたカウンタボア内に装着され、前記付勢装置は、前記カウンタボア内に配置される、請求項2に記載のバイアルアダプタ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般的に薬品混合システムに関し、特に、自身にバイアルを接続するための接続特徴が向上したバイアルアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
薬品混合システムは当該技術において周知である。ある特定の薬品混合システムが、本願の現行譲受人に譲渡された、その開示内容が引用により本願に援用される、公開済のPCT特許出願WO2005/041846に記載されている。この薬品混合システムはテバ・メディカル・リミテッド(Teva Medical Ltd.)から市販されており、ブランド名Tevadaptorで販売されている。これは、危険な静注薬品を安全に調合および投与するためのシステムである。Tevadaptorは、危険な薬品原料への暴露の危険性を最小限に抑え、針刺し損傷の危険性を排除する。この薬品混合システムはルアーフィットの(lure fitted)シリンジと共に用いられるよう意図されており、抗悪性腫瘍薬などの有毒薬品の取扱いに特に有用である。
【0003】
Tevadaptor薬品混合システムは、点滴用バッグなどの流体容器のポートに挿入可能な容器ポートアダプタを含む。薬品の入ったバイアルに接続するためのバイアルアダプタ素子が提供される。シリンジアダプタ素子が、シリンジに、ならびに容器ポートアダプタおよび/またはバイアルアダプタ素子に取付けられ得る。容器ポートアダプタ、シリンジアダプタ素子および/またはバイアルアダプタ素子は、バイアルの有害であり得る内容物が液体、固体、または気体の形態で大気に放出されないような方法で、大気への通気孔が形成され得る。
【0004】
シリンジアダプタ素子は、シリンジの内容物と流体連通する針を有し得る。針は普通は外向きに突出するのではなく、隔壁によってシリンジアダプタ素子の内部に封入される。シリンジアダプタ素子は、シリンジのルアーロック先端上にねじ込まれ得る。こうして、シリンジアダプタ素子の針はシリンジの内容物と流体連通する。
【0005】
同様に、バイアルアダプタ素子は、バイアルの内容物と流体連通し、かつ隔壁によって封入されるスパイクを有し得る。バイアルはバイアルアダプタ素子に押し付けられ得、バイアルアダプタ素子のスパイクがバイアルの隔壁に穴をあける。バイアルアダプタ素子は次にシリンジアダプタ素子に押し付けられ得、シリンジアダプタ素子の針がシリンジアダプタ素子およびバイアルアダプタアセンブリの隔壁に穴をあける。これによって、流体がシリンジからシリンジアダプタ素子の針およびバイアルアダプタ素子のスパイクを通じてバイアルに流れることができる。
【0006】
バイアルを所望量の流体で充填した後、バイアルアダプタアセンブリはシリンジアダプタ素子から分離され得る。分離の際、シリンジアダプタ素子の針はエラストマー隔壁によって封入される。このようにして、流体は外向きに滴り落ちない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の要約
本発明は、薬品混合システムにさらなる特徴を提供すること、特に以下により詳細に説明されるように、自身にバイアルを接続するための接続特徴が向上したバイアルアダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の実施例に従って、薬品混合システムで用いるためのバイアルアダプタ素子であって、ボディと、ボディから延在するバイアル接続ポートと、バイアル接続ポートの内部に突出し、かつボディから延在するシリンジアダプタ素子接続ポートと流体連通する中空のバイアル穴あけスパイク(任意に、ボディに形成されたカウンタボア内に装着される)と、ボディの内壁の周りに間隔を空けて配置され、かつボディの内壁に形成された隙間に位置する複数の弾性舌部(たとえば、各舌部は任意に、面取り突起で終端する片持ちアームを含む)とを含むバイアルアダプタ素子が提供される。弾性舌部に向かう付勢力を作り出すための付勢装置が、任意にカウンタボア内に配置され得る。
【0009】
本発明の実施例に従って、ボディは、外向きに延在する近位縁を含む。片持ちアームは、ボディの内壁に沿って延在し得る。片持ちアームは、ボディの内壁と同じ厚みであってもよく、面取り突起は、片持ちアームよりも厚くてもよい。
【0010】
本発明の実施例に従って、各面取り突起は、ボディの中心に向かって径方向に延在し、ボディに形成された切抜部の近位端に位置する。
【0011】
本発明の実施例に従って、付勢装置はコイルバネを含む。代替的に、本発明の別の実施例に従って、付勢装置は、スパイクが貫通するための孔を有する可撓性円筒形素子を含む。
【0012】
本発明の別の実施例に従って、ボディは、縁から内向きに延在する円錐フランジを含む。各片持ちアームは、円錐フランジに形成された切抜部の近位端から垂れ下がり得、面取り突起が延在し始める片持ちアームの遠位端縁から付属物が延在し得る。
【0013】
本発明の別の実施例に従って、各片持ちアームは、ボディの床から延在し得、ボディに形成された切抜部に位置し得、面取り突起が延在し始める片持ちアームの遠位端縁から付属物が延在し得る。
【0014】
本発明は、図面と関連して読まれると、以下の詳細な説明からより完全に理解および認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例に従って構成された動作可能なバイアルアダプタ素子の簡略図である。
【
図2】本発明の別の実施例に従って構成された動作可能なバイアルアダプタ素子の簡略図である。
【
図3】本発明のさらに別の実施例に従って構成された動作可能なバイアルアダプタ素子の簡略図である。
【
図4】本発明のさらに別の実施例に従って構成された動作可能なバイアルアダプタ素子の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施例の詳細な説明
ここで、本発明の実施例に従って構成された動作可能なバイアルアダプタ素子10を示す
図1を参照する。バイアルアダプタ素子10は、医学的に安全な金属またはプラスチックなどのいずれかの好適で頑丈な材料からなり得る。
【0017】
バイアルアダプタ素子10は、以下に詳細に説明されるバイアル接続ポート12を含み得る。中空のバイアル穴あけスパイク14が、バイアル接続ポート12の中心に突出している。スパイク14は、たとえばボティ17の一部として一体成形され得るカウンタボア28内に位置する。
【0018】
スパイク14は、シリンジアダプタ素子接続ポート16と流体連通する。PCT特許出願WO2005/041846などの当該技術において公知であるように、シリンジアダプタ素子接続ポート16は、スパイク14と流体連通する中空の筒状部(図示せず)を含む。筒状部は、スパイク14と反対側の端において隔壁(図示せず)で覆われる。シリンジアダプタ素子(図示せず)は針を有し、シリンジアダプタ素子接続ポート16に押し付けられ得、その結果シリンジアダプタ素子の針がポート16の筒状部の隔壁に穴をあける。これによってシリンジアダプタ素子とスパイク14が流体連通するため、シリンジアダプタ素子に接続されたシリンジ(図示せず)の内容物(たとえば溶液中の薬品)がスパイク14に流れ、そこから、バイアル接続ポート12に予め接続されたバイアル(図示せず)に流れることができる。
【0019】
図1に示される実施例では、バイアル接続ポート12はボディ17(典型的に円形カップの形状)を含み、ボディ17は、ボディ17から外向きに延在する近位(近位とは、ポート12に接続されるバイアルに最も近いことを意味する)縁18を有する。複数の弾性舌部20が、ボディ17の内壁の周りに間隔を空けて配置される。各舌部20は、ボディ17の内壁に沿って延在し、かつ面取り突起24で終端する片持ちアーム22から構成される。片持ちアーム22は、ボディ17の壁と厚みが同じであり得る(または代替的に厚みが異なり得るが、壁の外面と同一平面にある)が、面取り突起24は片持ちアーム22よりも厚い。各面取り突起24は、ボディ17の中心に向かって(すなわちスパイク14に向かって)径方向に延在し、ボディ17に形成された切抜部26の近位端に位置する。舌部20はボディ17の周りに等間隔で配置され得るか、または代替的にボディ17の周りに不等間隔で配置され得る。
【0020】
バイアルがバイアル接続部12に押込まれると、バイアルのネックはまず面取り突起24に接触し、面取り突起24を押しのけながら面取り突起24を径方向外向きに押す。片持ちアーム22の慣性モーメントを軸方向(スパイク14に平行)と比べて径方向外向き方向(スパイク14に対して垂直)においてより大きく、より小さく、または等しくするようにそれぞれ適切に設計することによって、面取り突起24の弾性を軸方向と比べて径方向外向き方向においてより高く、より低く、または等しくするように設計することができる。
【0021】
バイアルをバイアル接続ポート12に押込んだ後、スパイク14がバイアルの隔壁に穴をあけ、バイアルヘッドがボディ17の壁の内径に入り込む。バイアルをポート12に接続する際の公差の不整合を補償するために、付勢装置30がカウンタボア28に配置される。付勢装置30はバイアルを舌部20の面取り突起24に押付けることによって、バイアルから内容物が空けられる際に残留量が確実に最小となるようにする。
図1に示される実施例では、付勢装置30は、金属、エラストマー、スポンジ、フォーム、もしくはプラスチック、またはそれらのいずれかの組合せなどの安全な材料からなるコイルバネである。
【0022】
次に、別の型のバイアルアダプタ素子10を示す
図2を参照する。この型では、バイアルアダプタ素子10は、スパイク14が貫通するための孔を有する可撓性円筒形素子である付勢装置30Aを含む。付勢装置30Aは、安全なエラストマー(たとえばゴム、シリコーンゴムなど)またはフォーム(たとえばシリコーンゴムフォームなど)からなり得る。
【0023】
次に、本発明の別の実施例に従って構成された動作可能なバイアルアダプタ素子40を示す
図3を参照する。バイアルアダプタ素子40はバイアルアダプタ素子10と類似しており、同様の素子には同様の番号が付されている。バイアルアダプタ素子40は、内部に押込まれるバイアルを固定するために用いられる弾性舌部の構造がバイアルアダプタ素子10とは異なる。ボディ17は、縁18から内向きに延在する円錐フランジ42を含む。複数の弾性舌部44が、ボディ17の内壁の周りに間隔を空けて配置される。各舌部44は、円錐フランジ42に形成された切抜部48の近位端から垂れ下がる片持ちアーム46から構成される。付属物50が片持ちアーム46の遠位端縁から下向きに延在し、面取り突起52で終端する。付属物50および突起52は、ボディ17に形成された切抜部54内に位置する。
【0024】
次に、本発明の別の実施例に従って構成された動作可能なバイアルアダプタ素子60を示す
図4を参照する。バイアルアダプタ素子60はバイアルアダプタ素子10または40と類似しており、同様の素子には同様の番号が付されている。バイアルアダプタ素子60は、内部に押込まれるバイアルを固定するために用いられる弾性舌部の構造が前の実施例とは異なる。複数の弾性舌部62がボディ17の内壁の周りに間隔を空けて配置される。各舌部62は、ボディ17の床66から上向きに延在し、かつボディ17に形成された切抜部68に位置する片持ちアーム64(示される実施例ではU字型)から構成される。付属物70が片持ちアーム64の近位端縁から下向きに延在し、面取り突起72で終端する。
【0025】
明確にするために別個の実施例の内容で説明された本発明のさまざまな特徴は、単一の実施例で組合せて設けられてもよいことが認識される。逆に、簡略にするために単一の実施例の内容で説明された本発明のさまざまな特徴は、別個に、またはいずれかの好適な下位の組合せで設けられてもよい。