(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、このような圧力バランス型の流量制御弁として、例えば特開2000−320711号公報(特許文献1)及び特開昭63−243581号公報(特許文献2)に開示されたものがある。
図14に、従来の圧力バランス型の流量制御弁の一例としての電動膨張弁の縦断面図を示す。
【0003】
図14に示す電動膨張弁(図中、符号800で示す)は、弁本体801と、弁部材804と、ばね805と、弁棒806と、パッキン807と、電動アクチュエータ809と、を備えている。
【0004】
弁本体801は、略円筒形に形成されている。弁本体801の側壁801aには、第1流体通路A1と連通する第1開口811が設けられ、底壁801bには、第2流体通路A2と連通する第2開口812が設けられている。第2開口812の周りには、弁座部813が設けられている。また、弁本体801の上部には上蓋816が取り付けられており、上蓋816には、雄ねじ筒817が植立されている。雄ねじ筒817には、弁棒806の上端が貫通されている。
【0005】
弁部材804は、円筒状に形成されており、弁本体801内にピストン状に移動可能に収容されている。弁部材804は、弁本体801の内部空間を弁室814と背圧室815とに区画している。弁室814は、第1開口811と連通されている。弁部材804の下端は、弁座部813に対向している。また、弁部材804には、第2開口812と背圧室815とを連通する均圧路841が設けてある。弁部材804は、ばね805によって弁座部813に向かって常時押圧されている。弁部材804は、その上部に弁棒806の下端がストッパ806aにより係止可能に貫入されており、当該弁棒806が上方に引き上げられるとストッパ806aが弁部材804に係止して、弁部材804も共に引き上げられる。環状のパッキン7は、弁本体801と弁部材804との間で流体の漏洩を阻止し、かつ相互に摺動することを妨げないように設けられている。
【0006】
電動アクチュエータ809は、弁本体801の上部に取り付けられており、ロータ892と、ステータコイル893と、シールドチューブ894と、を有している。ロータ892は、シールドチューブ894の内側に設けられている。ロータ892は、雄ねじ筒817に回転自在に螺着され、かつ弁棒806の上端部863と回転自在に結合している。ステータコイル893は、シールドチューブ894の外側に取り付けられている。
【0007】
ロータ892は、回転されることによって雄ねじ筒817の軸心方向(図中、上下方向)に移動する。そして、ロータ892の移動は、ばね895によって遊びがないように弁棒806に伝えられて、弁棒806はロータ892の回転量に比例して進退する。つまり、電動アクチュエータ809の駆動により、弁棒806及び弁部材804が上下動し、第2開口812の周囲の弁座部813に対して弁部材804が離座/着座する。
【0008】
この電動膨張弁800において、第2開口812と背圧室815とは、均圧路841によって連通されている。そのため、弁部材804の背圧室815側の上端面804bに作用する流体圧力と、弁部材804の第2開口812側の下端面804aに作用する流体圧力との圧力バランスがとれ、弁部材804を上下動させるときの電動アクチュエータ809の駆動力が軽減される。
【0009】
具体的には、弁部材804の上端面804bの面積をS1、下端面804aの面積をS2、第2開口812における流体圧力をP2、上向きの力を正とすると、弁閉時の圧力バランス、即ち、弁部材804に対してその軸心方向(図中上下方向)に加わる力Fは、次の(i)式で表され、
F=P2(S2−S1) ・・・(i)
つまり、弁部材804の上端面804bの面積S1と下端面804aの面積S2とを同一(略同一含む)にすることで、弁閉時に軸心方向に加わる力を相殺又は軽減することができる。
【0010】
また、上述した電動膨張弁800では、弁部材804が円柱状であったため上端面804bの面積S1及び下端面804aの面積S2のみ考慮したものであったが、例えば、
図15に示すような、弁部材が円柱状以外の形状の場合についても、同様に考えることができる。
【0011】
図15に示す流量制御弁(図中、符号900で示す)において、901が略円筒状の弁本体、904が略円柱状の弁部材、911が第1開口、912が第2開口、913が弁座部、915が背圧室、941が均圧路である。また、D1〜D6は、弁部材904の各部分の径を示し、以下のS1〜S6は、弁部材904をその軸心方向(図中上下方向)から見たときのD1〜D6のそれぞれに対応する部分の面積を示す。
【0012】
第1開口911における流体圧力をP1、第2開口912における流体圧力をP2とすると、弁部材904について、P1によって図中上向きに加えられる力F1及び下向きに加えられる力F2、並びに、P2によって図中上向きに加えられる力F3及び下向きに加えられる力F4は、次の(ii)式〜(v)式で表される。
F1=P1((S1−S3)+(S6−S2)) ・・・(ii)
F2=P1((S5−S3)+(S6−S5)) ・・・(iii)
F3=P2(S2−S4) ・・・(iv)
F4=P2(S1−S4) ・・・(v)
【0013】
そして、上向きの力を正とすると、弁部材904に対してその軸心方向(図中上下方向)に加わる力F’は、
F’=(F1−F2)+(F3−F4)
=P1(S1−S2)−P2(S1−S2)
=(P1−P2)(S1−S2) ・・・(vi)
として表され、つまり、上記と同様に、弁部材904において弁閉時に第2開口における流体圧力が加わる部分について、背圧室915側の部分の平面視面積S1と第2開口912側(弁座部913側)の部分の平面視面積S2とを同一(略同一含む)にすることで、弁閉時に弁部材904の軸心方向に加わる力を相殺又は軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(本発明の第1実施形態)
以下に、本発明の流量制御弁の第1実施形態としての電動弁を、
図1〜
図6を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る流量制御弁の第1実施形態である電動弁の縦断面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は、各図における上下に対応しており、各部材の相対的な位置関係を示すものであって、絶対的な位置関係を示すものではない。
【0026】
この実施形態の電動弁(各図中、符号1で示す)は、弁ハウジングとしての弁本体10と、弁座部16と、シリンダ部としての弁ガイド20と、弁部材30と、均圧路36と、弁部材移動手段としての弁部材駆動部40と、を有している。
【0027】
弁本体10は、略円筒形状に形成されており、その内側には弁室10Aが形成されている。弁本体10は、その周壁10aに円形の第1開口11が形成され、その下端の底壁10bに円形の第2開口12が形成されている。第1開口11には、一次側継手管A1が固定して取り付けられて、当該一次側継手管A1と弁室10A内の一次側ポート13とが連通されている。また、第2開口12には、二次側継手管A2が固定して取り付けられて、この二次側継手管A2と後述する弁座部16内の二次側ポート14とが連通されている。
【0028】
弁座部16は、円形環状に形成されて、弁本体10内に第2開口12と連通して設けられている。弁座部16は、上方から下方に向かうにしたがって内径が徐々に小さくなる単一のすり鉢形状の着座面17と、着座面17の下端に連接された弁座部内周面18と、を有している。この着座面17は、後述する弁部材30が弁座部16に着座したときに当該弁部材30が当接される。また、弁座部内周面18は、二次側継手管A2の内径と略同一径に形成されており、二次側ポート14を画定している。
【0029】
弁ガイド20は、弁ガイド本体部21と、弁ガイド蓋部22と、を有している。弁ガイド本体部21は、両端部が開口された略円筒形状に形成されている。弁ガイド本体部21は、その下端部21aと弁座部16とが間隔をあけて対向するように配置されて、弁本体10内に固定して取り付けられている。弁ガイド蓋部22は、弁ガイド本体部21の上端部21bを塞ぐように当該弁ガイド本体部21に固定金具23によって固定して取り付けられている。弁ガイド蓋部22には、それを上下方向に貫通するように形成された雌ねじ部22aが設けられている。
【0030】
弁部材30は、全体として略円柱形状に形成されており、弁ガイド20内に上下方向に摺動移動可能に配設されている。つまり、弁部材30は、弁ガイド20内にピストン状に移動可能に収容されている。弁部材30は、弁ガイド20内に収容されることにより、弁ガイド20内の空間を区画して、弁ガイド20内における上端部21b側に背圧室25が形成される。
【0031】
弁部材30は、弁体31と、連結金具34と、パッキン部37と、を有している。
【0032】
弁体31は、下端部31aが開口されかつ上端部31bが上壁32で塞がれた略円筒形状に形成されている。弁体31は、その外周面31cが弁ガイド本体部21の内周面21cに摺動可能に接して配置されている。弁体31の下端部31aには、下方に向かうにしたがって径が小さくなる先細りの弁体テーパ面33が設けられている。
【0033】
連結金具34は、弁体31より外径の小さい略円筒形状に形成されている。連結金具34は、下端部34aが開口されかつ上端部34bにばね受け部35が設けられている。連結金具34の周壁34cにおける上端部34b寄りの箇所には、連結金具34の内外を連通する貫通孔34dが形成され、この貫通孔34dの下方の箇所には、フランジ部34eが設けられている。
【0034】
連結金具34は、その下端部34aが弁体31の上壁32に当該上壁32を貫通して固定して取り付けられている。これにより、弁体31の内側空間、連結金具34の内側空間及び貫通孔34dが互いに連通されて、均圧路36を構成する。この均圧路36によって、弁体31の下方の空間と背圧室25とが連通される。
【0035】
パッキン部37は、円形環状に形成されており、その外縁が弁ガイド本体部21の内周面21cに気密状態で摺動可能に接するよう構成されている。パッキン部37は、連結金具34のフランジ部34eと弁体31の上面31dとの間に、皿ばね受け38及び皿ばね39とともに狭持されている。
【0036】
第2開口12、弁座部16、弁ガイド20及び弁部材30は、それぞれの軸心が軸線P上に位置づけられるように配置されている。
【0037】
弁部材駆動部40は、弁部材ホルダ50と、モータ60と、を有している。
【0038】
弁部材ホルダ50は、ホルダ部51と、コイル状の圧縮ばね53と、ばね受け部54と、を有している。ホルダ部51は、下端部51aが開口されかつ上端部51bが上壁52で塞がれた略円筒形状に形成されている。ホルダ部51には、圧縮ばね53が収容されており、さらに、この圧縮ばね53の上端部を受けるようにしてばね受け部54がホルダ部51内を上下方向に移動可能に収容されている。また、ホルダ部51の下端部51aには、弁部材30の連結金具34のばね受け部35が圧縮ばね53の下端部を受けるようにして固定して取り付けられている。これにより、圧縮ばね53によってばね受け部54がホルダ部51の上壁52に押しつけられている。ホルダ部51の上壁52は、後述するモータ60のロータ軸64の下方の先端64aが当該ホルダ部51に対して回転可能に貫通しており、ホルダ部51内で、この先端64aとばね受け部54とが接している。
【0039】
モータ60は、ステッピングモータで構成されており、モータケース61と、マグネットロータ63と、ステータコイル66と、回転ストッパ機構70と、を有している。
【0040】
モータケース61は、下端部61aが開口されかつ上端部61bが上壁62で塞がれた略円筒形状に形成されている。モータケース61は、その下端部61aが弁ガイド本体部21の上端部21bに固定して取り付けられている。
【0041】
マグネットロータ63は、モータケース61内に同軸に収容されている。マグネットロータ63は、ロータ軸64と、ロータ軸64に固定して取り付けられたマグネット部65と、を有している。ロータ軸64は、その軸心が軸線P上に位置づけられるように配置されている。ロータ軸64の外周面の一部には雄ねじ部64bが設けられており、弁ガイド蓋部22の雌ねじ部22aと螺合されている。このように、マグネットロータ63は、弁ガイド20(具体的には弁ガイド蓋部22)と螺合されているので、回転されることにより軸線P方向(即ち、上下方向)に移動する。
【0042】
ステータコイル66は、モータケース61の外周面に固定して取り付けられている。このステータコイル66は、パルス信号が与えられることにより、そのパルス信号に含まれるパルス数に応じてマグネットロータ63を回転させる。
【0043】
回転ストッパ機構70は、モータケース61の上壁52の内面側に設けられている。回転ストッパ機構70は、螺旋ガイド線体71と、マグネットロータ63のマグネット部65に取り付けられた竿65aにより螺旋ガイド線体71の各螺旋間を蹴り回される可動ストッパ部材72と、を有している。回転ストッパ機構70は、マグネットロータ63が所定の上限位置(即ち、弁部材30の弁開上限位置)まで移動したとき、可動ストッパ部材72が、モータケース61に設けられたストッパ(図示なし)に突き当たる。これにより、マグネットロータ63の回転、即ち、上限位置を超えた移動が規制される。
【0044】
次に、
図2〜
図6を参照して、上述した本実施形態の電動弁1における動作(作用)について説明する。
【0045】
図2は、
図1の電動弁の弁部材及び弁座部を模式的に示した拡大断面図であって、弁部材が着座位置(弁閉状態)にある図である。
図3は、
図1の電動弁の弁部材及び弁座部を模式的に示した拡大断面図であって、弁部材が弁座部から離座した位置(弁半開状態)にある図である。
図4は、
図1の電動弁の弁部材及び弁座部を模式的に示した拡大断面図であって、
図3の状態より弁部材が弁座部からさらに離れた位置(弁半開状態)にある図である。
図5は、
図1の電動弁の弁部材及び弁座部を模式的に示した拡大断面図であって、弁部材が弁開上限位置(弁開上限状態)にある図である。
図6は、
図1の電動弁の弁部材及び弁座部を模式的に示した拡大断面図であって、弁部材が弁開上限位置を超えた位置にある図である。
【0046】
電動弁1は、上述したように、弁座部16に着座面17が設けられており、弁体31に弁体テーパ面33が設けられている。また、
図2に示すように、軸線Pに対する着座面17の角度がαに設定され、軸線Pに対する弁体テーパ面33の角度が、角度αより大きいβに設定されている(但し、α<β<90度)。
【0047】
また、弁体31の外径がD1に設定され、着座面17の上端部17aの径が、外径D1より大きいD2に設定されている。これにより、弁体31が弁座部16に着座した着座位置(弁閉状態)にあるときに、弁体テーパ面33の上端箇所33aが着座面17に接して、二次側ポート14が閉じられる。即ち、上端箇所33aは、弁部材30における着座面17に接する箇所となる。
【0048】
このように、弁体31が着座位置にあるとき、上端箇所33aが着座面17に接しているので、弁閉状態において、弁体31における上端箇所33aより内側の部分に、二次側ポート14の流体圧力(第2圧力P2)が加わる。
【0049】
次に、弁体31が着座位置から離れて軸線P方向に徐々に移動したとき、
図3に示すように、弁体31において、上端箇所33aが着座面17と最も近い箇所となる状態を保ちながら移動する。換言すると、弁部材30と着座面17との最短距離を結ぶ直線が弁部材30の上端箇所33aを通過するという状態を保ちながら移動する。そのため、この状態において、上端箇所33aと着座面17との間に、第1開口11側の流体圧力(第1圧力P1)と第2開口12側の流体圧力(第2圧力P2)との境界線kが生じる。つまり、この弁半開状態においても、弁体31における上端箇所33aより内側の部分に、二次側ポート14の第2圧力P2が加わり、弁部材30の軸線P方向に加わる力のバランスが維持される。弁部材30が、このような弁半開状態となる位置にあるときに弁体テーパ面33の上端箇所33aから着座面17に垂線を下ろすと、垂線の足が着座面17上に位置する。この垂線が、上記境界線kとなる。
【0050】
弁部材30における着座位置から弁半開状態の位置までの移動距離をxとすると、弁体テーパ面33の上端箇所33aと着座面17との距離yは、次の(1)式で表され、
y=xsinα ・・・(1)
弁部材30における着座位置からの移動距離xが大きくなるにつれて、弁体テーパ面33の上端箇所33aと着座面17との距離yが大きくなる。
【0051】
そして、弁体31がさらに着座位置から離れて軸線P方向に移動し、
図4に示すように、弁体テーパ面33の上端箇所33aから着座面17に垂線を下ろしたときに垂線の足がその上端部17aに位置するようになっても、弁体31において、上端箇所33aが着座面17と最も近い箇所となる。つまり、この垂線が第1圧力P1と第2圧力P2との境界線kとなり、この状態においても、弁体31における上端箇所33aより内側の部分に、二次側ポート14の第2圧力P2が加わり、弁部材30の軸線P方向に加わる力のバランスが維持される。この垂線は、着座面17の上端部17aにおける法線でもある。
【0052】
そのあと、弁体31がさらに着座位置から離れて軸線P方向に移動し、
図5に示すように、上記とは逆に、着座面17の上端部17aから弁体テーパ面33に垂線を下ろしたときの垂線の足がその上端箇所33aに位置する弁開上限位置になっても、弁体31において、上端箇所33aが着座面17と最も近い箇所となる。つまり、この垂線が第1圧力P1と第2圧力P2との境界線Kとなり、この弁開上限状態においても、弁体31における上端箇所33aより内側の部分に、二次側ポート14の第2圧力P2が加わり、弁部材30の軸線P方向に加わる力のバランスが維持される。この垂線は、弁体テーパ面33の上端箇所33aにおける法線でもある。
【0053】
それから、仮に、弁体31が上記弁開上限位置よりさらに着座位置から離れて軸線P方向に移動すると、
図6に示すように、弁体テーパ面33の上端箇所33aより下方の弁体テーパ面33上の箇所33bが、弁体31における着座面17と最も近い箇所となって、上記箇所33bと着座面17の上端部17aとを結ぶ線が、第1圧力P1と第2圧力P2との境界線K’となる。そのため、この状態においては、弁体31における、上端箇所33aより径の小さい箇所33bより内側の部分に、二次側ポート14の第2圧力P2が加わり、当該箇所33bより外側の部分に一次側ポート13の第1圧力P1が加わって、弁部材30の軸線P方向に加わる力のバランスが変化する。
【0054】
このように、本実施形態の電動弁1では、弁体31における上端箇所33aより内側の部分に二次側ポート14の第2圧力P2が加わる範囲内で、弁部材30(具体的には弁体31)を移動させることにより、弁部材30の軸線P方向に加わる力のバランスを維持して、当該バランスが変化してしまうことを抑制できる。換言すると、電動弁1では、弁部材30と着座面17との最短距離を結ぶ直線が弁部材30の上端箇所33aを通過する範囲内で弁部材30を移動させる。
【0055】
電動弁1においては、
図5に示す弁部材30の位置を弁開上限位置として、弁部材30がこの弁開上限位置を超えて弁座部16から離れないように、回転ストッパ機構70によって弁部材30の移動を規制するように構成している。これ以外にも、モータ60のステータコイル66に与えるパルス信号のパルス数をカウントすることにより、弁部材30が弁開上限位置を超えないように制御する構成などとしてもよい。
【0056】
図5に示すように、弁体31の外径をD1、着座面17の上端部17aの径をD2、軸線Pと着座面17とのなす角をα、軸線Pと弁体テーパ面33とのなす角をβとすると、弁部材30における着座位置から弁開上限位置までの移動距離Lは次の(2)式で表される。
L=h1+h2
=[{(D2−D1)/2}×tan(90−α)]
+[{(D2−D1)/2}×tanβ] ・・・(2)
【0057】
ここで外径D1の半径(即ち、軸線Pから弁体テーパ面33の上端箇所33aまでの距離)をR1、径D2の半径(即ち、軸線Pから着座面17の上端部17aまでの距離)をR2、とすると、
L=(R2−R1)/tanα+(R2−R1)tanβ
=(R2−R1)(1/tanα+tanβ) ・・・(3)
となる。
【0058】
そして、弁部材30の移動距離xは、0からLまでの範囲となるので、
0≦x≦(R2−R1)(1/tanα+tanβ) ・・・(A)
となり、移動距離xが、上記(A)式を満足する範囲であれば、弁部材30と着座面17との最短距離を結ぶ直線が弁部材30における着座面17の上端箇所33aを通過する範囲内で弁部材30を移動させることとなり、弁部材30の軸線P方向に加わる力のバランスを維持することができる。
【0059】
上述した実施形態の電動弁1は、第1開口11及び第2開口12が形成された弁本体10と、弁本体10内に第2開口12と連通して設けられ、すり鉢形状の着座面17を有する環状の弁座部16と、弁座部16の軸心を通る軸線P上に軸心が配置され、当該弁座部16と下端部21aが間隔をあけて対向するように弁本体10内に設けられた弁ガイド20と、弁座部16の着座面17に対して離座及び着座するように弁ガイド20内にピストン状に移動可能に収容された弁部材30と、弁ガイド20内の空間が弁部材30に区画されて形成された当該弁ガイド20内における上端部21b側の背圧室25と第2開口12とを連通するように、弁部材30に設けられた均圧路36と、弁部材30と着座面17との最短距離を結ぶ直線が弁部材30の弁体テーパ面33の上端箇所33aを通過する状態となる範囲内で弁部材30を移動させる弁部材駆動部40と、を有している。
【0060】
また、電動弁1は、弁部材30における弁座部16側の端部に、弁体テーパ面33が設けられ、軸線Pに対する弁体テーパ面33の角度βが、軸線Pに対する着座面17の角度αより大きくされている。
【0061】
以上より、本実施形態によれば、均圧路36によって背圧室25と第2開口12とを連通した圧力バランス型の電動弁1において、弁部材30と着座面17との最短距離を結ぶ直線が弁部材30の弁体テーパ面33の上端箇所33aを通過する範囲内で弁部材30を移動させる弁部材駆動部40を有しているので、このような範囲内で弁部材30を移動した場合、弁部材30における弁体テーパ面33の上端箇所33aが常に着座面17と最も近くなり、そのため、当該上端箇所33aと着座面17との間に第1開口11側の流体圧力(第1圧力P1)と第2開口12側の流体圧力(第2圧力P2)との境界が生じる。これにより、弁部材30を移動しても、弁部材30における当該上端箇所33aより内側の部分に常に第2開口12の第2圧力P2が加わるので、弁部材30における第2開口12の第2圧力P2が加わる第2開口12側の部分の平面視面積が変化せず、弁閉状態にある弁部材30を弁座部16から引き離すように軸線P方向に移動させたときに当該弁部材30の軸線P方向に加わる力のバランスが変化してしまうことを抑制できる。
【0062】
また、弁部材30における弁座部16側の端部(弁体31の下端部31a)に、弁体テーパ面33が設けられ、弁座部16の軸心を通る軸線Pに対する弁体テーパ面33の角度βが、この軸線Pに対する着座面17の角度αより大きくされているので、弁部材30の先端(下端部31a)が弁座部16の内側にあるときに、弁体テーパ面33と着座面17とによって流路が形成されて、流体の流れる整えることができる。また、弁部材30の弁体テーパ面33の上端箇所33aを、弁部材30における着座面17に接する箇所とすることができる。
【0063】
(本発明の第2実施形態)
以下に、本発明の流量制御弁の第2実施形態としての電動弁を、
図7〜
図12を参照して説明する。
【0064】
図7は、本発明に係る流量制御弁の第2実施形態である電動弁の弁部材及び弁座部を模式的に示した拡大断面図であって、弁部材が着座位置(弁閉状態)にある図である。
図8は、第2実施形態である電動弁の弁部材及び弁座部を模式的に示した拡大断面図であって、弁部材が弁座部から離座した位置(弁半開状態)にある図である。
図9は、第2実施形態である電動弁の弁部材及び弁座部を模式的に示した拡大断面図であって
図8の状態より弁部材が弁座部からさらに離れた位置(弁半開状態)にある図である。
図10は、第2実施形態である電動弁の弁部材及び弁座部を模式的に示した拡大断面図であって、弁部材が弁開上限位置(弁開上限状態)にある図である。
図11は、第2実施形態である電動弁の弁部材及び弁座部を模式的に示した拡大断面図であって、弁部材が弁開上限位置を超えた位置にある図である。
図12は、第2実施形態である電動弁の弁座部の変形例の構成を示す拡大断面図である。
【0065】
第2実施形態の電動弁1Aは、上述した第1実施形態の電動弁1において、弁座部16が、単一のすり鉢形状の着座面17に代えて、軸線Pに対する角度が互いに異なる複数のすり鉢形状の環状面部分が設けられた着座面17Aを有していること以外は、第1実施形態の電動弁1と同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
弁座部16の着座面17Aには、互いに軸線Pに対する角度の異なる2つのすり鉢形状の第1環状面部分171及び第2環状面部分172が設けられている。第1環状面部分171と第2環状面部分172とは、互いに連接するように軸線P方向に並べて配置されている。本実施形態では2つの環状面部分が設けられているものであるが、3つ以上の複数の環状面部分が軸線P方向に並べて配設されていてもよい。
【0067】
次に、
図7〜
図12を参照して、上述した本実施形態の電動弁1Aにおける動作(作用)について説明する。
【0068】
電動弁1Aは、弁座部16に第1環状面部分171及び第2環状面部分172を備えた着座面17Aが設けられており、弁体31に弁体テーパ面33が設けられている。また、
図7に示すように、軸線Pに対する弁座部内周面18寄りの第1環状面部分171の角度がα1に設定され、軸線Pに対する弁座部内周面18から離れた第2環状面部分172の角度が、角度α1より大きいα2に設定されている。また、角度α1及び角度α2ともに、軸線Pに対する弁体テーパ面の角度βより小さくなるように設定されている(但し、α1<α2<β<90度)。
【0069】
また、弁体31の外径がD1に設定され、第1環状面部分171と第2環状面部分172との境界部分17bの径が、外径D1より大きいD2に設定され、着座面17Aの上端部17aの径が、外径D2より大きいD3に設定されている。これにより、弁体31が弁座部16に着座した着座位置(弁閉状態)にあるときに、弁体テーパ面33の上端箇所33aが着座面17Aの第1環状面部分171に接して、二次側ポート14が閉じられる。即ち、上端箇所33aは、弁部材30における着座面17Aに接する箇所となる。
【0070】
このように、弁体31が着座位置にあるとき、上端箇所33aが着座面17Aに接しているので、弁閉状態において、弁体31における上端箇所33aより内側の部分に、二次側ポート14の流体圧力(第2圧力P2)が加わる。
【0071】
次に、弁体31が着座位置から離れて軸線P方向に徐々に移動したとき、
図8に示すように、弁体31において、上端箇所33aが着座面17A(具体的は、第1環状面部分171又は第2環状面部分172)と最も近い箇所となる状態を保ちながら移動する。換言すると、弁部材30と着座面17Aとの最短距離を結ぶ直線が弁部材30の上端箇所33aを通過する状態を保ちながら移動する。そのため、この状態において、上端箇所33aと着座面17Aとの間に、第1開口11側の流体圧力(第1圧力P1)と第2開口12側の流体圧力(第2圧力P2)との境界線kが生じる。つまり、この弁半開状態においても、弁体31における上端箇所33aより内側の部分に、二次側ポート14の第2圧力P2が加わり、弁部材30の軸線P方向に加わる力のバランスが維持される。弁部材30が、このような弁半開状態となる位置にあるときに弁体テーパ面33の上端箇所33aから着座面17Aに垂線を下ろすと、垂線の足が着座面17A(この場合において、第2環状面部分172について軸線P側に延長した仮想面を含む)上に位置する。この垂線が、上記境界線kとなる。
図8では、この垂線の足が第1環状面部分171と第2環状面部分172との境界部分17b(即ち、第1環状面部分171の上端部)上となる位置まで弁体31が移動した状態を示している。
【0072】
そして、弁体31がさらに着座位置から離れて軸線P方向に移動し、
図9に示すように、弁体テーパ面33の上端箇所33aから着座面17Aに垂線を下ろしたときに垂線の足がその上端部17a(即ち、第2環状面部分172の上端部)に位置するようになっても、弁体31において、上端箇所33aが着座面17Aと最も近い箇所となる。つまり、この垂線が第1圧力P1と第2圧力P2との境界線Kとなり、この状態においても、弁体31における上端箇所33aより内側の部分に、二次側ポート14の第2圧力P2が加わり、弁部材30の軸線P方向に加わる力のバランスが維持される。この垂線は、着座面17Aの上端部17aにおける法線でもある。
【0073】
そのあと、弁体31がさらに着座位置から離れて軸線P方向に移動し、
図10に示すように、上記とは逆に、着座面17Aの上端部17aから弁体テーパ面33に垂線を下ろしたときの垂線の足がその上端箇所33aに位置する弁開上限位置になっても、弁体31において、上端箇所33aが着座面17Aと最も近い箇所となる。つまり、この垂線が第1圧力P1と第2圧力P2との境界線Kとなり、この弁開上限状態においても、弁体31における上端箇所33aより内側の部分に、二次側ポート14の第2圧力P2が加わり、弁部材30の軸線P方向に加わる力のバランスが維持される。この垂線は、弁体テーパ面33の上端箇所33aにおける法線でもある。
【0074】
それから、仮に、弁体31が上記弁開上限位置よりさらに着座位置から離れて軸線P方向に移動すると、
図11に示すように、弁体テーパ面33の上端箇所33aより下方の弁体テーパ面33上の箇所33bが、弁体31における着座面17Aと最も近い箇所となって、上記箇所33bと着座面17Aの上端部17aとを結ぶ線が、第1圧力P1と第2圧力P2との境界線K’となる。そのため、この状態においては、弁体31における、上端箇所33aより径の小さい箇所33bより内側の部分に、二次側ポート14の第2圧力P2が加わり、当該箇所33bより外側の部分に一次側ポート13の第1圧力P1が加わって、弁部材30の軸線P方向に加わる力のバランスが変化する。
【0075】
このように、本実施形態の電動弁1Aでは、弁体31における上端箇所33aより内側の部分に二次側ポート14の第2圧力P2が加わる範囲内で、弁部材30(具体的には弁体31)を移動させることにより、弁部材30の軸線P方向に加わる力のバランスを維持して、当該バランスが変化してしまうことを抑制できる。換言すると、電動弁1Aでは、弁部材30と着座面17Aとの最短距離を結ぶ直線が弁部材30の上端箇所33aを通過する範囲内で弁部材30を移動させる。
【0076】
電動弁1Aにおいては、
図10に示す弁部材30の位置を弁開上限位置として、上述した第1実施形態と同様に、弁部材30がこの弁開上限位置を超えて弁座部16から離れないように、回転ストッパ機構70によって弁部材30の移動を規制するように構成している。
【0077】
図10に示すように、弁体31の外径をD1、着座面17Aの境界部分17bの径をD2、着座面17Aの上端部の径をD3、軸線Pと第1環状面部分171とのなす角をα1、軸線Pと第2環状面部分172とのなす角をα2、軸線Pと弁体テーパ面33とのなす角をβとすると、弁部材における着座位置から弁開上限位置までの移動距離は次の(4)式で表される。
L=h1+h2=(h11+h12−h13)+h2
=[{(D3−D1)/2}×tan(90−α2)]
+[{(D2−D1)/2}×tan(90−α1)]
−[{(D2−D1)/2}×tan(90−α2)]
+[{(D3−D1)/2}×tanβ] ・・・(5)
【0078】
ここで外径D1の半径(即ち、軸線Pから弁体テーパ面33の上端箇所33aまでの距離)をR1、径D2の半径(即ち、軸線Pから着座面17Aの境界部分17bまでの距離)をR2、径D3の半径(即ち、軸線Pから着座面17Aの上端部17aまでの距離)をR3、とすると、
L=(R3−R1)/tanα2
+(R2−R1)/tanα1
−(R2−R1)/tanα2
+(R3−R1)tanβ
=(R3−R1)(1/tanα2+tanβ)
+(R2−R1)(1/tanα1−1/tanα2)} ・・・(6)
となる。
【0079】
そして、弁部材30の移動距離xは、0からLまでの範囲となるので、
0≦x≦(R3−R1)(1/tanα2+tanβ)
+(R2−R1)(1/tanα1−1/tanα2)} ・・・(B)
となり、移動距離xが、上記(B)式を満足する範囲であれば、弁部材30と着座面17Aとの最短距離を結ぶ直線が弁部材30の上端箇所33aを通過する範囲内で弁部材30を移動させることとなり、弁部材30の軸線P方向に加わる力のバランスを維持することができる。
【0080】
上述した第2実施形態の電動弁1Aでは、軸線Pに対する第2環状面部分の角度α2が、第1環状面部分171の角度α1より大きく設定されているものであったが、これとは逆に、
図12に示す電動弁1Bのように、角度α2の方が角度α1より小さく設定されていてもよい。
【0081】
図13に、弁座部の環状面部分における軸線に対する角度と流量との関係をグラフを用いて模式的に示す。
【0082】
上述した第1実施形態の電動弁1では、
図13において点線で示すように、弁閉位置から弁開位置に至るまで弁部材30の移動距離に対して着座面17の角度α(α=α1)に依存した一定割合で流量が増加していく。一方、第2実施形態の電動弁1A及び電動弁1Bでは、
図13において実線で示すように、弁閉位置から途中までは、第1環状面部分171の角度α1に依存した一定割合で流量が増加し、途中から弁開上限位置までは、第2環状面部分172の角度α2に依存した一定割合で流量が増加する。これにより、弁部材30の移動距離に対する流量の変化、即ち、流量特性を任意に変更することができる。
【0083】
以上より、本実施形態によれば、上述した第1実施形態の電動弁1における効果に加えて、着座面17Aが、軸線Pに対する角度の異なる複数のすり鉢状の第1環状面部分171及び第2環状面部分172を有しているので、これら第1環状面部分171及び第2環状面部分172における軸線Pに対する角度α1、α2を調整することにより、弁部材30の移動距離、即ち、弁開度合に対する流量(流量特性)を容易に設定することができる。本実施形態において2つの環状面部分が設けられているものであるが、3つ以上の複数の環状面部分を設けることにより、さらに細かい流量特性を容易に設定することができる。
【0084】
上述した各実施形態において、弁部材30(具体的には弁体31)の下端部31aに、弁体テーパ面33が設けられていたが、このような弁体テーパ面33が設けられておらず、弁体31の外周面と当該弁体31の下端面とが直交して連接された構成であってもよい。または、弁体テーパ面33は、面取りによって形成される微少なテーパ面などであってもよい。
【0085】
また、各実施形態では、弁座部16、弁ガイド20及び弁部材30が、それぞれ、円形環状、円筒形状及び円柱形状に形成されているものであったが、これに限定されるものではなく、弁座部16、弁ガイド20及び弁部材30について軸線P方向から見た平面視形状が相似関係にあれば、円形以外にも、多角形形状などであってもよく、本発明の目的に反しない限り、弁座部16、弁ガイド20及び弁部材30の形状は任意である。
【0086】
また、各実施形態では、ステッピングモータによって弁部材を駆動する電動弁であったが、これに限定されるものではなく、手動により弁部材を駆動する流量制御弁などであってもよく、電磁コイルとプランジャにより弁部材を駆動する電磁弁式であってもよい。
【0087】
また、各実施形態では、二次側ポート14と背圧室25とを連通する均圧路36が弁部材30に設けられていたが、弁部材30に代えて、弁本体10に設けられていてもよい。
【0088】
また、各実施形態では、一次側継手管A1を入口側とし、二次側継手管A2を出口側とするものであったが、これに限らず、入口側と出口側とを逆にするものであってもよい。
【0089】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。