(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
抄紙工程やフイルム製造工程等では品質管理のため製造物の色を監視する必要がある。このために分光器を利用した色測定装置が一般に用いられている。
図12は、分光器を利用した色測定装置が搭載された面状測定対象物品質監視装置の外観を示す図であり、ここでは紙の色を測定して品質を監視する場合について説明する。
【0003】
面状測定対象物品質監視装置600は、フレーム610を備えており、フレーム610の内側を、測定対象物であるシート状の紙500が、図示しないローラー等により矢印A方向に移動する。フレーム610の上側ビームには、紙500を表面側から監視する上部走査ヘッド620が移動可能に取り付けられており、フレーム610の下側ビームには、紙500を裏面側から監視する下部走査ヘッド630が移動可能に取り付けられている。上部走査ヘッド620と下部走査ヘッド630とは、同期して紙移動方向に直交する方向を往復移動し、同じ領域を表面と裏面から監視するようになっている。
【0004】
色測定装置は、例えば、上部走査ヘッド620に搭載される。色測定装置の測定点は、紙500の搬送と、上部走査ヘッド620の移動により、W字状ライン501に示すような軌跡を描くことになる。
【0005】
図13は、分光器を利用した色測定装置の構造を示す図である。本図に示すように、色測定装置30は、回転対称に形成された樽型ミラー300を備えている。樽型ミラー300の、測定対象物である紙500と対面する部分には測定窓440が設置されており、ゴミや汚れが内部に入り込むのを防いでいる。キセノンランプ410で発光した光は、UVフィルタ420を介して、樽型ミラー300に入射するようになっている。
【0006】
測定対象物の配向特性の影響を受けないで、安定した測定結果を得るためには、照射光は紙500の測定領域Mの垂線に対して回転対称であることが重要である。このため、光源であるキセノンランプ410と測定領域Mは、樽型ミラー300の回転軸上に配置される。
【0007】
測定領域Mからの反射光は、樽型ミラー300の回転軸上に設置されたミラー450で反射され、集光レンズ310を介して光ファイバ320に入射する。光ファイバ320に導かれた反射光は、分光器300本体に取り込まれ、入射スリット330により、光束が制限される。
【0008】
その後、平行レンズ(入射側コリメータレンズ)340により平行光となり、回折器(回折格子、グレーティング)350に照射される。回折器350に照射された光は、波長に応じて異なった方向に反射する。この光を積分レンズ(出射側コリメータレンズ)360で集光すると、波長毎に異なった位置で結像する。
【0009】
線状に並んだ複数個の光電変換素子で構成されたラインディテクタ370が結像位置に配置されており、各位置での光の強度を検出する。位置は波長に対応しているため、ラインディテクタ370の検出結果に基づいて反射光の波長毎の強度分布である分光分布を取得することができる。
【0010】
演算部400は、分光分布測定を制御するとともに、分光分布を電気信号に変換して色を数値的に処理する。
【0011】
色を数値的に処理する際に、色の表現方法として[数1]で表わされる三刺激値が広く用いられている。
【数1】
ここで、
k:絶対値を規定する固定の係数
S(λ):規格で決められた光源の分光分布
x ̄(λ)、y ̄(λ)、z ̄(λ):規格で決められた等色関数と呼ばれる分光感度(ただし、x ̄は、xバーを表わす。y ̄、z ̄についても同様である)
R(λ):測定対象物の分光反射率
Δλ:計算時に用いる波長刻み幅
である。なお、λは可視光の波長範囲で変化し、[数1]では、可視光の波長範囲を400nm〜700nmとしている。
【0012】
[数1]において、測定対象物に応じて変化するのはR(λ)だけであるため、色を測定することは、すなわち測定対象物の分光反射率を測定することである。分光反射率は、測定で得られた分光分布に基づいて算出することができる。[数1]におけるその他のパラメータは、演算部400内のメモリ等に記録しておき、必要に応じて読み出せばよい。
【0013】
分光反射率は、照射光に対する反射光の波長毎の割合であるため、測定で得られた分光分布に基づいて分光反射率を算出する際には、測定領域Mの照射光の光量が基準となる。このため、あらかじめ標準白板等を利用して測定領域Mの照射光の光量を取得しておくようにする。
【0014】
しかしながら、樽型ミラー300は、測定対象物との光軸方向の距離により光量が変化するという特性を有している。このため、測定領域Mの照射光の光量を一定に保つためには、上部走査ヘッド620と紙500との間の距離を一定にしておかなければならないが、一般に、上部走査ヘッド620が移動するビーム長は数mから10m以上もあり、水平位置を一定に保つのは困難である。また、ローラー等で搬送する紙500の水平位置を一定に保つことも困難である。
【0015】
そこで、正確な分光反射率測定を行なうために、例えば、あらかじめ基準位置からの変位と分光反射率変化との関係を調べておき、実際の分光反射率測定の際に、上部走査ヘッド620と紙500との間の変位を測定し、測定された分光反射率を補正することが提案されている。
【0016】
この場合、例えば、
図14に示すように、上部走査ヘッド620に色測定装置30とコイル621とを搭載し、下部走査ヘッド630にエアベアリング631と軟磁性体632とを搭載する。測定対象物である紙500は、エアベアリング631により下部走査ヘッド630からの距離が一定に保たれるようになっている。また、電磁誘導の原理を利用してコイル621と軟磁性体632との距離を測定することができるため、上部走査ヘッド620と下部走査ヘッド630との距離が求められる。これにより、上部走査ヘッド620と紙500との距離が算出され、基準位置からの変位を得ることができるため、分光反射率を補正することができる。
【0017】
あるいは、距離により光量が変化する樽型ミラー430に代えて、円筒ミラーあるいは筒状多面体鏡を用いることで、距離変動に対する光量変化を小さくすることも提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、前者の方式では、コイル621、エアベアリング631、軟磁性体632といった分光反射率測定と直接的には関係のない新たな部品が必要となるため、装置の大型化、高価格化を招くことになる。また、後者の方式も大きな距離変動に対して光量変化を小さくするのには大型のミラーが必要になるため装置の大型化、高価格化を招くことになる。
【0020】
このため、従来の色測定装置30が本来的に備えている分光器300を用いて変位を検出する変位センサを構成することができれば、装置の大型化、高価格化を招くことなく、高精度の分光反射率測定を行なうことができるようになり、好都合である。
【0021】
そこで、本発明は、分光器を用いて変位センサを構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である変位センサは、面状測定対象物の測定領域の変位を測定する変位センサであって、出射方向によって波長が変わる光を、前記測定領域を含む面に対して斜め方向に照射する光源ユニットと、前記測定領域における反射光の分光分布を測定する分光器と、前記分光分布の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記抽出した特徴量と、あらかじめ取得した特徴量と変位との関係に基づいて、前記測定領域の変位を算出する変位算出部とを備えたことを特徴とする。
ここで、前記光源ユニットは、誘電体多層膜を用いた光学素子に対して斜めに光を入射することで、出射方向によって波長が変わる光を生成することができる。
また、前記特徴量抽出部は、前記分光分布のピーク波長を特徴量とすることができる。
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様である分光特性測定装置は、面状測定対象物の測定領域に光を照射する第1光源ユニットと、前記測定領域における反射光の分光分布を測定する分光器とを備え、前記第1光源ユニットに係る反射光の分光分布に基づいて分光特性を測定する分光特性測定装置であって、出射方向によって波長が変わる光を、前記測定領域を含む面に対して斜め方向に照射する第2光源ユニットと、前記第2光源ユニットに係る反射光の分光分布の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記抽出した特徴量と、あらかじめ取得した特徴量と分光特性との関係に基づいて、前記分光特性を補正する分光特性補正部とを備えたことを特徴とする。
ここで、前記第2光源ユニットは、誘電体多層膜を用いた光学素子に対して斜めに光を入射することで、出射方向によって波長が変わる光を生成することができる。
また、前記第1光源ユニットが出射する波長範囲と、前記第2光源ユニットが出射する波長範囲とが重ならないようにしてもよい。
上記課題を解決するため、本発明の第3の態様である色測定装置は、面状測定対象物の測定領域に光を照射する第1光源ユニットと、前記測定領域における反射光の分光分布を測定する分光器とを備え、前記第1光源ユニットに係る反射光の分光分布に基づいて分光反射率を算出し、前記測定領域の色を測定する色測定装置であって、出射方向によって波長が変わる光を、前記測定領域を含む面に対して斜め方向に照射する第2光源ユニットと、前記第2光源ユニットに係る反射光の分光分布の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記抽出した特徴量と、あらかじめ取得した特徴量と分光反射率との関係に基づいて、前記分光反射率を補正する分光反射率補正部とを備えたことを特徴とする。
上記課題を解決するため、本発明の第4の態様である変位センサは、面状測定対象物の測定領域の変位を測定する変位センサであって、波長および光軸の異なる光源を複数個含み、前記測定領域を含む面に対して斜め方向に照射する光源ユニットと、前記測定領域における反射光の分光分布を測定する分光器と、前記分光分布の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記抽出した特徴量と、あらかじめ取得した特徴量と変位との関係に基づいて、前記測定領域の変位を算出する変位算出部とを備えたことを特徴とする。
ここで、前記特徴量抽出部は、それぞれの光源の波長の強度比を特徴量とすることができる。
上記課題を解決するため、本発明の第5の態様である分光特性測定装置は、面状測定対象物の測定領域に光を照射する第1光源ユニットと、前記測定領域における反射光の分光分布を測定する分光器とを備え、前記第1光源ユニットに係る反射光の分光分布に基づいて分光特性を測定する分光特性測定装置であって、波長および光軸の異なる光源を複数個含み、前記測定領域を含む面に対して斜め方向に照射する第2光源ユニットと、前記第2光源ユニットに係る反射光の分光分布の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記抽出した特徴量と、あらかじめ取得した特徴量と分光特性との関係に基づいて、前記分光特性を補正する分光特性補正部とを備えたことを特徴とする。
上記課題を解決するため、本発明の第6の態様である色測定装置は、面状測定対象物の測定領域に光を照射する第1光源ユニットと、前記測定領域における反射光の分光分布を測定する分光器と、前記第1光源ユニットに係る反射光の分光分布に基づいて分光反射率を算出し、前記測定領域の色を測定する色測定装置であって、波長および光軸の異なる光源を複数個含み、前記測定領域を含む面に対して斜め方向に照射する第2光源ユニットと、前記第2光源ユニットに係る反射光の分光分布の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記抽出した特徴量と、あらかじめ取得した特徴量と分光反射率との関係に基づいて、前記分光反射率を補正する分光反射率補正部とを備えたことを特徴とする。
上記課題を解決するため、本発明の第7の態様である面状測定対象物品質監視装置は、上述の色測定装置を走査ヘッドに搭載したことを特徴とする。
上記課題を解決するため、本発明の第8の態様である変位測定方法は、面状測定対象物の測定領域の変位を測定する変位測定方法であって、出射方向によって波長が変わる光を、前記測定領域を含む面に対して斜め方向に照射し、前記測定領域における反射光の分光分布を測定し、前記分光分布の特徴量を抽出し、前記抽出した特徴量と、あらかじめ取得した特徴量と変位との関係に基づいて、前記測定領域の変位を算出することを特徴とする。
上記課題を解決するため、本発明の第9の態様である分光特性測定方法は、面状測定対象物の測定領域に第1光を照射し、前記測定領域における前記第1光の反射光の分光分布に基づいて分光特性を測定する分光特性測定方法であって、出射方向によって波長が変わる第2光を、前記測定領域を含む面に対して斜め方向に照射し、前記測定領域における前記第2光の反射光の分光分布の特徴量を抽出し、前記抽出した特徴量と、あらかじめ取得した特徴量と分光特性との関係に基づいて、前記分光特性を補正することを特徴とする。
上記課題を解決するため、本発明の第10の態様である色測定方法は、面状測定対象物の測定領域に第1光を照射し、前記測定領域における前記第1光の反射光の分光分布に基づいて分光反射率を算出し、前記測定領域の色を測定する色測定方法であって、出射方向によって波長が変わる第2光を、前記測定領域を含む面に対して斜め方向に照射し、前記測定領域における前記第2光の反射光の分光分布の特徴量を抽出し、前記抽出した特徴量と、あらかじめ取得した特徴量と分光反射率との関係に基づいて、前記分光反射率を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、分光器を用いて変位センサを構成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る変位センサを説明する図である。本図に示すように、変位センサ10は、分光器を利用して測定対象物の変位を測定する装置であり、演算部100、光源ユニット200、分光器300を備えている。
【0026】
本例では、測定対象物として紙500を用いた場合について説明するが、本実施形態に係る変位センサ10は、フイルムその他の面状の対象物の変位測定に適している。面状であれば、連続物に限られず、製品の一部分、小片の変位測定に適用することができる。
【0027】
また、変位センサ10は、面状の測定対象物における所望の大きさの領域を変位測定の対象とし、この領域を測定領域Mと称するものとする。レーザ測定のようなピンポイント的な1点ではなく、ある程度の大きさを持った領域を測定対象とするため、変位センサ10は、所望領域の平均的な変位を測定する用途に向いている。また、レーザ測定ではいわゆる潜り込みが発生して正確な測定が行なえない紙等の変位測定を精度よく行なうことができる。
【0028】
分光器300は、従来と同様の構成である。すなわち、入射スリット330、平行レンズ340、回折器350、積分レンズ360、ラインディテクタ370を本体に含み、光ファイバ320を介して集光レンズ310が接続される。もちろん、この構成に限られず、他の構成の分光器であってもよい。
【0029】
光源ユニット200は、光源210と光学素子220とを備えており、出射方向によって波長が変化する光を出射する。光源ユニット200は、出射光が紙500の測定領域Mを含む面を斜めに照射するように設置されている。
【0030】
本例では、光源210として所定範囲の波長、例えば、800nm〜900nmの範囲の拡散光を放射する発光ダイオードを用いている。また、光学素子220として、誘電体多層膜を用いた光学フィルタ、例えば、バンドパスフィルタを用いており、光学フィルタに発光ダイオードの出射光が斜めに入射するように構成されている。
【0031】
誘電体多層膜を用いた光学フィルタは、各層の界面で生じる反射が干渉することで光の透過特性が変わることを利用しているため、斜めに光を入射すると入射角度によって透過する光の波長が異なるという特性を示す。中でも誘電体多層膜を用いたバンドパスフィルタは、光を垂直に入射させると特定の波長のみが透過するようになっているが、本実施形態では、出射方向によって波長が変化する光を生成するため、意図的に斜めから光を入射させるようにしている。
【0032】
図2は、入射角度によって透過する光の波長が異なる特性を説明するための図である。本図は、光の入射角を55度、45度、35度としたときの光学フィルタの透過率を示した図である。本図から55度入射では810nmの光が透過しやすく、45度入射では840nm、35度入射では870nmの光が透過しやすいことがわかる。
【0033】
このような光学フィルタに、所定範囲の波長の光を斜めに照射することで、
図1に示すように、出射方向によって波長が連続的に変化する光が光源ユニット200から出射される。ここでは、
図1において左から右方向に波長が長くなる分布であるものとする。
【0034】
光源ユニット200からの出射光は、紙500の測定領域Mを含む面に斜めに照射されるため、紙500の変位に応じて測定領域Mにおける反射光の分光分布が変化することになる。
【0035】
例えば、光源ユニット200からの距離が近い位置Aにおいては、
図3に示すように、波長の短い方の光の強度が強い分光分布となる。そして、位置B、位置Cと、光源ユニット200からの距離が離れていくに従って、波長の長い方の光の強度が強い分光分布となっていく。
【0036】
この分光分布は変位と対応するため、あらかじめ変位と分光分布との関係を対応付けておれば、分光器300で測定領域Mの分光分布を測定し、得られた分光分布に基づいて紙500の変位を測定することができる。
【0037】
この処理を行なうため、演算部100は、分光分布取得部110、特徴量抽出部120、変位算出部130を備えている。
【0038】
分光分布取得部110は、分光器300が測定した測定領域Mの分光分布を取得する。
【0039】
特徴量抽出部120は、取得した分光分布から特徴量を取得する。本例では、
図3に示すように、分光分布のピーク周波数を特徴量とする。ただし、特徴量は、ピーク周波数に限られない。例えば、分布範囲の中間波長や平均波長等としてもよい。なお、光源210の波長範囲を適切に設定することで、分光分布のピーク周波数が紙500自身の色の影響を受けることを避けることができるが、別途測定した紙500の色に応じて分光分布を補正するようにしてもよい。
【0040】
変位算出部130には、あらかじめ取得した特徴値と変位との対応関係を格納しておく。対応関係は、関数形式であってもよいし、テーブル形式であってもよい。この対応関係に基づいて、特徴量抽出部120が抽出した特徴量から測定領域Mの変位を算出することができる。
【0041】
なお、光源ユニット200の光学素子220は、誘電体多層膜の光学フィルタとしたが、他の光学素子を用いて出射方向によって波長が変化する光を出射するようにしてもよい。例えば、回折格子(グレーティング)、所望の分散を有するガラスで作成したプリズムを用いてもよい。また、場所により透過波長の変化するフィルタを用いたり、色ガラスフィルタを用いるようにしてもよい。これらの光学素子は、角度により透過波長が変化するものである。要は、入射角度または入射位置によって透過波長または反射波長が変わるような光学素子であればどのようなものであってもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、分光器300を用いて変位センサ10を構成することができる。分光器300を用いた変位センサ10は、変位補正を行なうことにより測定精度が向上する測定装置に好適に使用することができ、例えば、色測定装置、白色度測定装置、光沢度測定装置、水分計、坪量計等に適用することができる。
【0043】
次に、上記実施形態の変位センサ10を、色測定装置に適用した実施形態について説明する。なお、本発明は、色測定装置に限られず、広く分光特性測定装置に適用することができる。本実施形態の色測定装置は、分光器を用いて測定した分光反射率を、分光器を利用した変位センサの測定結果を利用して補正する。そして、補正された分光反射率を用いて、色測定の演算を行なう。ただし、変位センサの測定結果を利用して分光分布を補正して、分光反射率を算出するようにしてもよい。
【0044】
図4は、本実施形態に係る色測定装置の構成を示す図である。本図に示すように測定対象物である紙500の測定領域Mの色を測定する色測定装置20は、従来の色測定装置30と同様に、分光器300と樽型ミラー430および関連光学系とを備えており、さらに、樽型ミラー430の底部に光源ユニット200を備えている。なお、測定対象物は、紙500に限られず、面状であればフイルム等の連続物であってもよく、印刷物や塗装面の色測定に用いることもできる。
【0045】
光源ユニット200は、上述の変位センサ10における光源ユニット200と同様であり、出射方向によって波長が変わる光を、紙500の測定領域Mを含む面に対して斜め方向に照射する。
【0046】
従来の色測定装置30と同様に、キセノンランプ410による測定領域Mからの反射光は、集光レンズ310を介して光ファイバ320に入射する。光ファイバ320に導かれた反射光は、分光器300本体に取り込まれ、ラインディテクタ370により分光分布が検出される。ここで、キセノンランプ410の波長範囲は、例えば、400nm〜700nmの可視光とする。
【0047】
また、光源ユニット200による測定領域Mからの反射光も集光レンズ310を介して光ファイバ320に入射する。光ファイバ320に導かれた反射光は、分光器300本体に取り込まれ、ラインディテクタ370により分光分布が検出される。ここで、光源ユニット200の波長範囲は、例えば、800nm〜900nmの赤外光とする。
【0048】
すなわち、キセノンランプ410による色測定用の光の測定領域Mからの反射光、光源ユニット200による変位測定用の光の測定領域Mからの反射光とも集光レンズ310で集光されて分光器300本体に取り込めるため、1台の分光器300で、同じ測定領域Mの波長範囲の異なる分光分布を同時に測定することができる。このため、分光器300は、400nm〜900nmの範囲の測定を行なえるものを使用する。
【0049】
本図に示すように、色測定装置20は、演算部150を備えている。演算部150は、分光分布取得部151、分光反射率算出部152、特徴量抽出部153、補正係数作成部154、分光反射率補正部155、色演算部156を備えている。
【0050】
分光分布取得部151は、分光器300が測定した分光分布を取得する。分光分布は、400nm〜700nmの測定用分光分布と、800nm〜900nmの変位測定用の分光分布とを含んでいる。800nm〜900nmの変位測定用の分光分布は、測定用分光分布の補正に用いるため、以降では、補正用分光分布と称する。
【0051】
分光反射率算出部152は、分光分布取得部151が取得した測定用分光分布から分光反射率を算出する。分光反射率は、あらかじめ基準点で標準白板を用いて測定した分光分布と標準白板の既知の分光反射率とを用いて算出することができる。
【0052】
特徴量抽出部153は、補正用分光分布の特徴量を抽出する。
図6に示すように、補正用分光分布の特徴量は、波長に対応した波長指標であり、例えば、ピーク周波数とすることができる。あるいはピーク付近の分光強度の近似式を求めて、その頂点の波長を波長指標としてもよい。
【0053】
また、特徴量抽出部153は、補正係数作成時に測定用分光分布に基づく分光反射率の特徴量も抽出する。分光反射率の特徴量は、光量に対応した光量指標であり、例えば、測定用波長範囲内のピーク値とすることができる。あるいはピーク付近の分光反射率の近似式を求めて、その頂点を光量指標としたり、分光反射率の平均値を光量指標としてもよい。
【0054】
補正係数作成部154は、測定された分光反射率を補正するための補正関数を作成し、補正関数に基づいて補正係数を算出し、測定された分光反射率を補正する。補正関数の作成は、実際の色測定に先立ち行なうようにする。補正関数の作成手順については後述する。
【0055】
分光反射率補正部155は、実際の色測定において、測定された補正用分光分布に対応した補正係数を用いて分光反射率を補正する。これにより、紙500の変位に応じた分光反射率の補正が行なわれる。
【0056】
色演算部156は、補正された分光反射率を用いて測定領域Mの色演算を行ない、測定結果として出力する。
【0057】
次に、分光反射率を補正する際に用いる補正関数の作成手順について
図5のフローチャートを参照して説明する。本処理は、補正係数作成部154の制御により行なわれる。
【0058】
まず、分光分布取得部151が、基準点において測定対象物の分光分布を取得する(S101)。測定対象物は、実際の測定に用いる紙500でなくてもよい。基準点は、変位の基準点となり、基準点における分光反射率が補正係数の基準となる。
【0059】
そして、基準点で取得した分光分布から特徴量抽出部153が特徴量を抽出する(S102)。具体的には、
図6に示したように、400nm〜700nmの測定用分光分布については、分光反射率を算出して光量指標を抽出し、800nm〜900nmの補正用分光分については波長指標を抽出する。光量指標と波長指標の特徴量を抽出すると、波長指標と光量指標とを対応付けて保存する(S103)。
【0060】
次に、測定対象物の光軸方向の位置を変更する(S104)。変更する距離は任意であり、変位量を取得する必要はない。そして、変更した位置で、分光分布取得部151が分光分布を取得し(S105)、取得した分光分布から特徴量抽出部153が特徴量を抽出する(S106)。ここでも、400nm〜700nmの測定用分光分布については分光反射率から光量指標を抽出し、800nm〜900nmの補正用分光分布については波長指標を抽出する。
【0061】
測定対象物の光軸方向の位置が変化すると、
図7に示すように、測定用分光分布については、分光反射率の値が変化し、補正用分光分布については波長が変化する。そして、分光反射率の値の変化と補正用分光分布の波長の変化は、いずれも変位量に対応するため、相関関係を有している。
【0062】
光量指標と波長指標の特徴量を抽出すると、波長指標と光量指標とを対応付けて保存する(S107)。測定対象物の光軸方向の位置を変更し、分光分布を取得して特徴量を保存する処理(S104〜S107)は、所定回数繰り返し(S108)、所定回数を終了すると、補正係数作成部154が補正関数を算出する(S109)。
【0063】
補正関数の算出は、例えば、基準点における波長指標と光量指標との対応を基準に、測定対象物の光軸方向の位置を変化させたときの波長指標と光量指標との対応関係をプロットし、多項式で近似することで得ることができる。
【0064】
例えば、波長指標と光量指標との対応関係をプロットして、
図8に示すような線が得られた場合、基準点の光量指標を1として、この線を多項式近似した関数を補正関数f(波長
指標)とする。補正関数f(波長
指標)を用いることで、波長指標に基づいて、変位による光量変化に基づく分光反射率の変動を補正することが可能となる。
【0065】
実際の測定の際には、
図9に示すフローチャートにしたがって、測定で得られた分光反射率を補正する。
【0066】
特徴量抽出部153が、測定で得られた補正用分光分布から波長指標を抽出し(S201)、補正係数作成部154が抽出された波長指標に対応する光量対応値を補正関数f(波長
指標)に基づいて算出する(S202)。そして、光量対応値の逆数を補正係数とする(S203)。
【0067】
分光反射率補正部155が、この補正係数を用いて測定で得られた分光反射率を補正する(S204)。これにより、基準点に対する変位が補正された分光反射率を得ることができ、測定領域Mの分光反射率を用いた測定領域Mの色演算を精度よく行なうことができる。
【0068】
なお、上記の例では、測定用分光分布の波長範囲を400nm〜700nmとし、補正用分光分布の波長範囲を800nm〜900nmとして、両光源の波長範囲を異ならせていたが、補正用分光分布の波長範囲を測定用分光分布の波長範囲に重ならせてもよい。例えば、補正用分光分布の波長範囲を500nm〜600nmとしてもよい。この場合、測定用のキセノンランプ410と補正用の光源ユニット200の光源210とを交互に点灯させ、測定用分光分布と補正用分光分布とを交互に取得するようにする。この構成では、分光器300は、400nm〜700nmの範囲の測定を行なえるものであればよい。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、分光器300を利用した変位センサ10を用いて色測定装置30を構成することができる。このため、簡易な構成で変位に基づく分光反射率の補正を行なうことができるため、大型化、高価格化を招くことなく、高精度の色測定装置を実現することができる。
【0070】
以上、変位センサを色測定装置に適用した例を説明したが、これは、近年、色測定装置の重要性が高まっている背景によるものである。色測定装置の重要性が高まっている理由としては、例えば、印刷の品質が向上しているため、ベースとなる紙の品質管理の重要性が増している、省資源のためパルプ使用量は減らしたいが、裏写りを防ぐために不透明度の管理は従来通りに行なう必要があり、このような管理に色測定装置は欠かすことができない等があげられる。
【0071】
また、世界的な地球環境保全に対応し、森林伐採は厳しく制限されるようになっており、リサイクル紙の需要が高まっているが、リサイクル紙に対する品質の要求も高まっている。例えば、色は、バージンパルプを使用した場合と同程度にしたいという要求があり、この要求に応えるためには色測定装置が必要となる。
【0072】
さらに、新聞、雑誌等、従来は黒のみの印刷だったメディアにおいてカラー印刷が拡大したり、カラー段ボール、模様入りの段ボール等梱包材料の高品質化、高付加価値化が進んでおり、色測定装置による品質管理が広く行なわれるようになっている。以上のような理由により、色測定装置の重要性が高まっている
なお、分光器300を利用した変位センサを適用した色測定装置20は、
図12に示した上側走査ヘッド620に搭載することで、面状測定対象物品質監視装置を構成することができる。
【0073】
次に、分光器300を利用した変位センサの変形例について説明する。
図10は、分光器300を利用した変位センサの変形例を説明する図である。上述の実施形態と共通する部分については説明を簡略化する。
【0074】
本図に示すように、変位センサ10は、分光器を利用して測定対象物の変位を測定する装置であり、演算部101、光源ユニット230、分光器300を備えている。分光器300は、従来と同様の構成である。
【0075】
光源ユニット230は、波長の異なる光源240と光源250とを備えており、それぞれの光源の出射光が異なる位置から紙500の測定領域Mを含む面を斜めに照射するように設置されている。本例では、光源240が820nmの光を出射し、光源250が880nmの光を出射するものとする。
【0076】
図10に示すように、光源ユニット230の2つの光源からの出射光は、紙500の測定領域Mを含む面に斜めに照射されるため、紙500の変位に応じて測定領域Mにおける反射光の分光分布が変化することになる。
【0077】
例えば、光源ユニット230からの距離が近い位置Aにおいては、
図11に示すように、光源240の波長の強度aが強い分光分布となる。そして、位置B、位置Cと、光源ユニット230からの距離が離れていくに従って、光源250の波長の強度bが強い分光分布となっていく。
【0078】
光源240の波長と光源250の波長との強度比率a/bは変位と対応するため、あらかじめ変位と、光源240の波長と光源250の波長の強度比率a/bとの関係を対応付けておれば、分光器300で測定領域Mの分光分布を測定し、得られた分光分布の光源240の波長と光源250の波長との強度比率a/bに基づいて紙500の変位を測定することができる。
【0079】
この処理を行なうため、演算部101は、分光分布取得部111、特徴量抽出部121、変位算出部131を備えている。分光分布取得部111は、分光器300が測定した測定領域Mの分光分布を取得する。
【0080】
特徴量抽出部121は、取得した分光分布から特徴量を取得する。本例では、光源240の波長の強度aと光源250の波長の強度bとの比率a/bを特徴量とする。
【0081】
変位算出部131には、あらかじめ取得した特徴値と変位との対応関係を格納しておく。対応関係は、関数形式であってもよいし、テーブル形式であってもよい。この対応関係に基づいて、特徴量抽出部121が抽出した特徴量から測定領域Mの変位を算出することができる。
【0082】
以上説明したように、本変形例によっても、分光器300を用いて変位センサ11を構成することができる。この変位センサ11を用いて色測定装置を構成することももちろん可能であり、この色測定装置を面状測定対象物品質監視装置に適用することも可能である。