特許第5701852号(P5701852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5701852架橋ポリロタキサンを有する材料、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701852
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】架橋ポリロタキサンを有する材料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/00 20060101AFI20150326BHJP
   C08G 65/333 20060101ALI20150326BHJP
   C08B 37/16 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   C08G81/00
   C08G65/333
   C08B37/16
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-503172(P2012-503172)
(86)(22)【出願日】2011年3月1日
(86)【国際出願番号】JP2011054571
(87)【国際公開番号】WO2011108514
(87)【国際公開日】20110909
【審査請求日】2014年1月7日
(31)【優先権主張番号】特願2010-44924(P2010-44924)
(32)【優先日】2010年3月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505136963
【氏名又は名称】アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(72)【発明者】
【氏名】井上 勝成
(72)【発明者】
【氏名】林 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】稲村 淳子
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第01/083566(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/108515(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/136618(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/080469(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/088200(WO,A1)
【文献】 特開2008−045055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 81/00−81/02
65/00−65/48
C08B 37/00−37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリロタキサン及び第2のポリロタキサンを有し、さらに、金属酸化物、金属水酸化物、金属及び炭素からなる群から選ばれる粉末を少なくとも1種を有する材料であって、
前記第1のポリロタキサンは、第1の環状分子の開口部が第1の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第1の擬ポリロタキサンの両端に前記第1の環状分子が脱離しないように第1の封鎖基を配置してなり、
前記第2のポリロタキサンは、第2の環状分子の開口部が第2の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第2の擬ポリロタキサンの両端に前記第2の環状分子が脱離しないように第2の封鎖基を配置してなり、
第1及び第2の環状分子は、各々独立に、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群から選択され、
第1及び第2の直鎖状分子は、各々独立に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれ、
第1及び第2の封鎖基は、各々独立に、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、及びピレン類からなる群から選ばれ、
該第1及び第2のポリロタキサンは前記第1及び第2の環状分子を介して架橋してなり、
前記架橋において、前記第1及び第2の環状分子間に、ポリエーテル、ポリエステル及びポリカーボネートからなる群から選ばれる繰り返し単位を少なくとも5有する重合体部位を有し、
該材料が溶媒フリーであり、
前記材料が、1kHzにおける誘電率が6.0以上であり、
前記材料は、その初期弾性率が10MPa以下である、上記材料。
【請求項2】
前記重合体部位は、その数平均分子量が300以上10000以下である請求項1記載の材料。
【請求項3】
前記第1及び第2の環状分子がそれぞれ第1及び第2の活性基を有し、
前記重合体部位がその両端に第1及び第2の反応基を有し、
前記第1の活性基と前記第1の反応基とが、前記第2の活性基と前記第2の反応基とが、直接、化学結合して架橋が形成される請求項1又は2記載の材料。
【請求項4】
前記第1及び/又は第2の環状分子がそれぞれ第1及び/又は第2のグラフト鎖を有し、該第1及び第2のグラフト鎖はそれぞれ独立に、ポリエステル及びポリカーボネート、並びにそれらの共重合体からなる群から選ばれる請求項1〜3のいずれか1項記載の材料。
【請求項5】
前記第1及び/又は第2の環状分子がそれぞれ第1及び/又は第2のグラフト鎖を有し、該第1及び第2のグラフト鎖はそれぞれ独立に、ポリエステル及びポリカーボネート、並びにそれらの共重合体からなる群から選ばれ、
前記第1及び第2の環状分子が、前記第1のグラフト鎖の一部又は全部、及び/又は第2のグラフト鎖の一部又は全部、並びに前記重合体部位を介して、前記架橋が形成される請求項1〜4のいずれか1項記載の材料。
【請求項6】
前記第1及び/又は第2のグラフト鎖はその他端に、それぞれ独立に、水酸基を有するモノマー又はシアノ基を有するモノマー由来の第3及び/又は第4のグラフト鎖を有する請求項4又は5記載の材料。
【請求項7】
前記粉末が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、アルミナ及び水酸化アルミニウムからなる群から選ばれる請求項1〜6のいずれか1項記載の材料。
【請求項8】
第1のポリロタキサン及び第2のポリロタキサンを有し、さらに、金属酸化物、金属水酸化物、金属及び炭素からなる群から選ばれる粉末を少なくとも1種を有し、該第1及び第2のポリロタキサンは架橋してなり、該材料が溶媒フリーであり、該材料の1kHzにおける誘電率が6以上であり、且つ前記材料は、その初期弾性率が10MPa以下である材料の製造方法であって、
a)第1の環状分子の開口部が第1の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第1の擬ポリロタキサンの両端に前記第1の環状分子が脱離しないように第1の封鎖基を配置してなる前記第1のポリロタキサンであって、第1の環状分子は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群から選択され、第1の直鎖状分子は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれ、第1の封鎖基は、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、及びピレン類からなる群から選ばれる、前記第1のポリロタキサンを準備する工程;
b)第2の環状分子の開口部が第2の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第2の擬ポリロタキサンの両端に前記第2の環状分子が脱離しないように第2の封鎖基を配置してなる前記第2のポリロタキサンであって、第2の環状分子は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群から選択され、第2の直鎖状分子は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれ、第2の封鎖基は、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、及びピレン類からなる群から選ばれる、前記第2のポリロタキサンを準備する工程;
c)ポリエーテル、ポリエステル及びポリカーボネートからなる群から選ばれる繰り返し単位を少なくとも5有する重合体部位を有する架橋剤を準備する工程
)第1のポリロタキサン、第2のポリロタキサン、及び架橋剤を混合し反応させて、第1及び第2のポリロタキサンを、前記重合体部位を介して架橋させる工程;及び
f)金属酸化物、金属水酸化物、金属及び炭素からなる群から選ばれる粉末を少なくとも1種を添加する工程;
を有することにより、前記材料を得る、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒フリーでありながら、所望の高誘電率を有する、架橋ポリロタキサンを有する材料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリロタキサンは、それが有する粘弾特性などにより、種々の応用が考えられ、種々の材料が開発されている(例えば特許文献1を参照のこと)。
一方、高齢社会の急速な進行に伴い、特に介護福祉分野において、軽くて手軽に使用できる動作補助器具に対する強いニーズがある。従来用いられている動作補助器具は、駆動系に電磁モーターが使用されており、軽量化が困難であるという欠点があった。このため、軽量性や応答性、耐久性、安全性に優れたアクチュエータの開発が望まれている。現在、多くのタイプのアクチュエータが提案されているが、これらの問題を解決するものとして、特に高分子を用いた誘電アクチュエータが期待されている(例えば特許文献2を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2008/108411号公報。
【特許文献2】特開2009-124875号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高誘電材料を必要とする用途、例えば、従来の誘電アクチュエータは、応答性が極めて速いものの、高電圧が必要であるという欠点があった。そのため、絶縁破壊や感電などの点から安全性に問題があった。低電圧での駆動を実現するためには、高い柔軟性と高誘電率を有する高誘電エラストマーが必要となるが、これらを十分に満たせる材料は、いまだに無かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決する材料を提供することにある。
具体的には、本発明の目的は、高い柔軟性と高誘電率を有する材料を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記目的に加えて、上記材料の製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明者らは、架橋点が可動であるポリロタキサンを用いることによりきわめて柔軟性に富んだ材料が得られ、且つ該架橋体の可動架橋点に用いている環状分子に修飾を加えることにより、次の発明を見出した。
<1> 第1のポリロタキサン及び第2のポリロタキサンを有する材料であって、
第1のポリロタキサンは、第1の環状分子の開口部が第1の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第1の擬ポリロタキサンの両端に第1の環状分子が脱離しないように第1の封鎖基を配置してなり、
第2のポリロタキサンは、第2の環状分子の開口部が第2の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第2の擬ポリロタキサンの両端に第2の環状分子が脱離しないように第2の封鎖基を配置してなり、
該第1及び第2のポリロタキサンは第1及び第2の環状分子を介して架橋してなり、
該材料が溶媒フリーであり、
材料が、1kHzにおける誘電率が6.0以上、好ましくは8.0以上、より好ましくは10.0以上である、上記材料。
【0007】
<2> 上記<1>において、材料は、その初期弾性率が10MPa以下、好ましくは5MPa以下、より好ましくは1MPa以下であるのがよい。
<3> 上記<1>又は<2>の架橋において、第1及び第2の環状分子間に、ポリエーテル、ポリエステル及びポリカーボネートからなる群から選ばれる繰り返し単位を少なくとも5、好ましくは10以上、より好ましくは20以上有する重合体部位を有するのがよい。好ましくは、繰り返し単位は、ポリエーテル又はポリカーボネートであるのがよく、より好ましくはポリエーテルであるのがよい。
<4> 上記<3>において、重合体部位は、その数平均分子量が300以上10000以下、好ましくは800〜8000、より好ましくは1000〜6000であるのがよい。
【0008】
<5> 上記<3>又は<4>において、第1及び第2の環状分子がそれぞれ第1及び第2の活性基を有し、
重合体部位がその両端に第1及び第2の反応基を有し、
第1の活性基と第1の反応基とが、第2の活性基と第2の反応基とが、直接、化学結合して架橋が形成されるのがよい。
<6> 上記<1>〜<5>のいずれかにおいて、第1及び/又は第2の環状分子がそれぞれ第1及び/又は第2のグラフト鎖を有し、該第1及び第2のグラフト鎖はそれぞれ独立に、ポリエステル及びポリカーボネート、並びにそれらの共重合体からなる群から選ばれるのがよい。好ましくは、第1及び第2のグラフト鎖は、それぞれ独立に、ポリエステル又はポリカーボネートであるのがよく、より好ましくはポリエステルであるのがよい。
【0009】
<7> 上記<3>〜<6>のいずれかにおいて、第1及び/又は第2の環状分子がそれぞれ第1及び/又は第2のグラフト鎖を有し、該第1及び第2のグラフト鎖はそれぞれ独立に、ポリエステル及びポリカーボネート、並びにそれらの共重合体からなる群から選ばれ、
第1及び第2の環状分子が、第1のグラフト鎖の一部又は全部、及び/又は第2のグラフト鎖の一部又は全部、並びに前記重合体部位を介して、架橋が形成されるのがよい。好ましくは、第1及び第2のグラフト鎖は、それぞれ独立に、ポリエステル又はポリカーボネートであるのがよく、より好ましくはポリエステルであるのがよい。
<8> 上記<1>〜<7>のいずれかにおいて、第1及び/又は第2の環状分子がそれぞれ独立に、水酸基を有するモノマー又はシアノ基を有するモノマー由来の第3及び/又は第4のグラフト鎖を有するのがよい。特に、上記<6>又は<7>において、第1及び/又は第2のグラフト鎖はその他端に、それぞれ独立に、水酸基を有するモノマー又はシアノ基を有するモノマー由来の第3及び/又は第4のグラフト鎖を有するのがよい。好ましくは、第3及び第4のグラフト鎖は、それぞれ独立に、ポリアクリロニトリル、ポリ(2-シアノエチルアクリレート)又はポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)であるのがよく、より好ましくはポリアクリロニトリル又はポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)であるのがよい。
【0010】
<9> 上記<1>〜<8>のいずれかにおいて、材料がさらに、金属酸化物、金属水酸化物、金属及び炭素からなる群から選ばれる粉末を少なくとも1種有するのがよい。特に、粉末は、金属酸化物であるのがよい。
<10> 上記<9>において、粉末が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、アルミナ及び水酸化アルミニウムからなる群、好ましくはチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム及びアルミナからなる群から選ばれるのがよく、より好ましくはチタン酸バリウム又はチタン酸ストロンチウムであるのがよい。
【0011】
<11> 第1のポリロタキサン及び第2のポリロタキサンを有し、該第1及び第2のポリロタキサンは架橋してなり、該材料が溶媒フリーであり、該材料の1kHzにおける誘電率が6.0以上、好ましくは8.0以上、より好ましくは10.0以上である材料の製造方法であって、
a)第1の環状分子の開口部が第1の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第1の擬ポリロタキサンの両端に第1の環状分子が脱離しないように第1の封鎖基を配置してなる第1のポリロタキサンを準備する工程;
b)第2の環状分子の開口部が第2の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第2の擬ポリロタキサンの両端に第2の環状分子が脱離しないように第2の封鎖基を配置してなる第2のポリロタキサンを準備する工程;及び
c)ポリエーテル、ポリエステル及びポリカーボネートからなる群から選ばれる繰り返し単位を少なくとも5、好ましくは10以上、より好ましくは20以上有する重合体部位を有する架橋剤を準備する工程;
d)第1のポリロタキサン、第2のポリロタキサン、及び架橋剤を混合し反応させて、第1及び第2のポリロタキサンを、重合体部位を介して架橋させる工程;
を有することにより、材料を得る、上記方法。
【0012】
<12> 上記<11>において、材料は、その初期弾性率が10MPa以下、好ましくは5MPa以下、より好ましくは1MPa以下であるのがよい。
<13> 上記<11>又は<12>において、重合体部位は、その数平均分子量が300以上10000以下、好ましくは800〜8000、より好ましくは1000〜6000であるのがよい。
【0013】
<14> 上記<11>〜<13>のいずれかの、上記工程a)及び/又は工程b)において、ラクトンモノマー及び/又は環状カーボネートモノマーの開環重合により、第1及び/又は第2の環状分子がそれぞれ第1及び/又は第2のグラフト鎖を有する工程をさらに有するのがよく、該第1及び第2のグラフト鎖はそれぞれ独立に、ポリエステル及びポリカーボネート、並びにそれらの共重合体からなる群から選ばれるのがよい。ラクトンモノマーとして、β−プロピオラクトン、β−メチルプロピオラクトン、L−セリン−β−ラクトン誘導体などの4員環ラクトン;γ−ブチロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、γ-デカノラクトン、γ-ドデカノラクトン、α-ヘキシル-γ-ブチロラクトン、α-ヘプチル-γ-ブチロラクトン、α-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトン、γ-メチル-γ-デカノラクトン、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、α, α-ジメチル-γ-ブチロラクトン、D-エリスロノラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ-ノナノラクトン、DL-パントラクトン、γ-フェニルγ-ブチロラクトン、γ-ウンデカノラクトン、γ−バレロラクトン、2,2-ペンタメチレン-1,3-ジオキソラン-4-オン、α-ブロモ-γ-ブチロラクトン、γ‐クロトノラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトンなどの5員環ラクトン;δ−バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、δ-オクタノラクトン、δ-ノナノラクトン、δ-デカノラクトン、δ-ウンデカノラクトン、δ-ドデカノラクトン、δ-トリデカノラクトン、δ-テトラデカノラクトン、DL-メバロノラクトン、4-ヒドロキシ-1-シクロヘキサンカルボン酸δ-ラクトンなどの6員環ラクトン;ε−カプロラクトンなどの7員環ラクトン;ラクチド、1,5-ジオキセパン-2-オンを挙げることができるが、これらに限定されない。また環状カーボネートとして、エチレンカーボネート、炭酸プロピレン、炭酸1,2-ブチレン、グリセロール1,2-カルボナート、4-(メトキシメチル)-1,3-ジオキソラン-2-オン、(クロロメチル)エチレンカーボネート、炭酸ビニレン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソール-2-オン、4-クロロメチル-5-メチル-1,3-ジオキソール-2-オン、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフェニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンなどの5員環カーボネート;1,3-ジオキサン-2-オン、5-メチル-5-プロピル-1,3-ジオキソラン-2-オン、5,5-ジエチル-1,3-ジオキソラン-2-オンなどの6員環カーボネート;などを挙げることができるが、これらに限定されない。好ましくは、ε−カプロラクトン、γ−ブチルラクトン、α−メチル−γ−ブチルラクトン、δ−バレロラクトン、ラクチドであるのが好ましく、より好ましくはε−カプロラクトンであるのがよい。また、第1及び第2のグラフト鎖は、それぞれ独立に、ポリエステル又はポリカーボネートであるのがよく、より好ましくはポリエステルであるのがよい。
【0014】
<15> 上記<14>において、
第1のグラフト鎖の一部又は全部の他端が第3の活性基を有するか、及び/又は第2のグラフト鎖の一部又は全部の他端が第4の活性基を有し、
第1及び第2の環状分子が、それぞれ第1及び第2の活性基を有し、
重合体部位がその両端に第1及び第2の反応基を有し、
上記d)において、第3の活性基及び/又は第4の活性基と、第1及び/又は第2の活性基と、第1及び/又は第2の反応基とが反応することにより、第1のグラフト鎖の一部又は全部、及び/又は第2のグラフト鎖の一部又は全部、並びに重合体部位を介して、架橋が形成されるのがよい。
【0015】
<16> 上記<11>〜<15>において、第1及び第2の環状分子がそれぞれ第1及び第2の活性基を有し、
重合体部位がその両端に第1及び第2の反応基を有し、
上記工程d)において、第1の活性基と第1の反応基とが、第2の活性基と第2の反応基とが、直接、化学結合して架橋が形成されるのがよい。
【0016】
<17> 上記<11>〜<16>において、さらに、e)水酸基を有するモノマー及び/又はシアノ基を有するモノマーを原子移動ラジカル重合することにより、第1及び/又は第2の環状分子がそれぞれ独立に、水酸基を有するモノマー及び/又はシアノ基を有するモノマー由来の第3及び/又は第4のグラフト鎖を有するのがよい。特に、上記<14>〜<16>のいずれかにおいて、e)水酸基を有するモノマー及び/又はシアノ基を有するモノマーを原子移動ラジカル重合することにより、第1及び/又は第2のグラフト鎖の他端に、それぞれ独立に、水酸基を有するモノマー及び/又はシアノ基を有するモノマー由来の第3及び/又は第4のグラフト鎖を形成するのがよい。好ましくは、第3及び第4のグラフト鎖は、それぞれ独立に、ポリアクリロニトリル、ポリ(2-シアノエチルアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)であるのがよく、より好ましくはポリアクリロニトリル、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)であるのがよい。水酸基を有するモノマー及び/又はシアノ基を有するモノマーは、アクリロニトリル、2-シアノエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートであるのが好ましく、より好ましくはアクリロニトリル、2-ヒドロキシエチルメタクリレートであるのがよい。
【0017】
<18> 上記<11>〜<17>のいずれかにおいて、f)金属酸化物、金属水酸化物、金属及び炭素からなる群から選ばれる粉末を少なくとも1種、材料に添加する工程をさらに有するのがよい。特に、粉末は、金属酸化物であるのがよい。工程f)は、工程d)の際、又は工程d)後に行うのがよく、好ましくは、工程d)の際、粉末を添加して、材料に含まれるようにするのがよい。
<19> 上記<18>において、粉末が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、アルミナ及び水酸化アルミニウムからなる群、好ましくはチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム及びアルミナからなる群、より好ましくはチタン酸バリウム及びチタン酸ストロンチウムからなる群から選ばれるのがよい。
【0018】
<20> 上記<1>〜<19>のいずれかにおいて、第1及び第2の環状分子は、各々独立に、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群から選択されるのがよい。
<21> 上記<1>〜<20>のいずれかにおいて、第1及び第2の直鎖状分子は、各々独立に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよく、例えばポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテルからなる群から選ばれるのがよく、より具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれるのがよく、特にポリエチレングリコールであるのがよい。
【0019】
<22> 上記<1>〜<21>のいずれかにおいて、第1及び第2の直鎖状分子は、各々独立に、その重量平均分子量が3,000以上、好ましくは5,000〜100,000、より好ましくは10,000〜50,000であるのがよい。
<23> 上記<1>〜<22>のいずれかにおいて、第1及び第2の封鎖基は、各々独立に、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニルなどを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類(置換基として、上記と同じものを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、及びステロイド類からなる群から選ばれるのがよい。なお、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、及びピレン類からなる群から選ばれるのが好ましく、より好ましくはアダマンタン基類又はトリチル基類であるのがよい。
【0020】
<24> 上記<1>〜<23>のいずれかにおいて、第1及び第2の環状分子は、各々独立に、α−シクロデキストリン由来であり、第1及び第2の直鎖状分子がポリエチレングリコールであるのがよい。
<25> 上記<1>〜<24>のいずれかにおいて、第1及び第2の環状分子が第1及び第2の直鎖状分子により串刺し状に包接される際に第1及び第2の環状分子が最大限に包接される量を1とした場合、第1及び第2の環状分子は、各々独立に、0.001〜0.6、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.4の量で第1及び第2の直鎖状分子に串刺し状に包接されるのがよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、高い柔軟性と高誘電率を有する材料を提供することができる。
また、本発明により、上記効果に加えて、上記材料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の材料中の架橋ポリロタキサンの一態様1を模式的に説明する図である。
図2】本発明の材料中の架橋ポリロタキサンの一態様31を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、第1及び第2のポリロタキサンを有する材料であって、
該第1及び第2のポリロタキサンは、各々の環状分子を介して架橋してなり、
該材料が溶媒フリーであり、
該材料の1kHzにおける誘電率が6.0以上、好ましくは8.0以上、より好ましくは10.0以上である材料を提供する。
【0024】
また、本発明の材料は、その初期弾性率が10MPa以下、好ましくは5MPa以下、より好ましくは1MPa以下であるのがよい。
本発明の材料、即ち第1及び第2のポリロタキサンを有しそれらの架橋体を有する材料は、溶媒フリーであり、且つ1kHzにおける所望の誘電率を有し、架橋ポリロタキサンが有する粘弾特性、例えば高い柔軟性ももたらすことができる。
【0025】
本願において「溶媒フリー」とは、より好ましくは溶媒が全くないことを意味するが、微少量、即ち溶媒を3wt%(材料全体を100wt%とした場合)好ましくは1wt%以下まで含んでもよい。なお、本発明の材料を、通常の条件下で製造する際、もしくは処理又は加工する際には、溶媒を含んでもよいが、最終的な材料の溶媒量が上記範囲内にあることを意味する。
【0026】
本明細書において、誘電率は、従来の手法と同様に求めることができる。
即ち、平行平板電極間に測定サンプルを挟んだサンプルセルに交流電流をかけ、サンプルの作るキャパシターの測定されるインピーダンスとサンプルの複素誘電率の関係から算出した。
また、本明細書において、初期弾性率は、従来の手法と同様に求めることができる。
即ち、ダンベル型(幅2.04mm、初期試料長10mm)に加工した測定試料を引張速度0.2m/秒で一軸伸張して応力-歪曲線を測定し、伸張直後の直線部分の傾きから算出した。
【0027】
さらに、本発明の材料は、破断伸長率が100%超、好ましくは200%超、より好ましくは400%超であるのがよい。
ここで、破断伸長率とは、次の式により表すことができる。式中、Ltは破断時の有効長さ、Loは延伸する前の有効長さである。
破断伸長率(%)={(Lt−Lo)/Lo}×100。
【0028】
このような特性を有する本発明の材料は、既存エラストマーであるウレタンエラストマー、ゴムエラストマーなどにない優れた粘弾特性を幅広い応用分野に適用できる。例えば、架橋点である第1及び/又は第2の環状分子が移動することによって、低応力範囲の広い材料となる。そのため、機能性粉末の添加による機能付加や第1及び/又は第2の環状分子へのグラフト化などの化学修飾を行っても、初期弾性率の低い材料が得られると期待できる。
これらのことから、本発明の材料は、誘電アクチュエータ材料、磁性アクチュエータ材料、有機分散型エレクトロルミネッセンス材料、熱伝導材料のバインダー、コンデンサー材料などへの用途が考えられる。
なお、本発明の材料は、所望の誘電率及び所望の柔軟性を有すると共に、所望の特性をもたらす物質、例えば後述の粉末を有することにより、所望の特性を付与することができる。
【0029】
本発明の材料について、より詳細に説明する。
第1又は第2のポリロタキサンは、それぞれ、つぎのような構成を有する。即ち、第1(第2)のポリロタキサンは、第1(第2)の環状分子の開口部が第1(第2)の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第1(第2)の擬ポリロタキサンの両端に第1(第2)の環状分子が脱離しないように第1(第2)の封鎖基を配置してなる。
第1及び第2のポリロタキサンは、同じであっても異なってもよい。要するに、本発明において、ポリロタキサン分子が2以上存在し、2以上の分子が架橋していることが必要である。
なお、第1(第2)のポリロタキサンを構成する要素、即ち、第1(第2)の環状分子、第1(第2)の直鎖状分子、第1(第2)の封鎖基については、後述する。
【0030】
本発明の材料は、第1及び第2のポリロタキサンが、各々の環状分子を介して架橋してなる。
具体的には、第1及び第2の環状分子間に、重合体部位を有するように架橋が形成されるのがよい。要するに、「第1の環状分子−X−重合体部位−Y−第2の環状分子」という結合により架橋が形成されるのがよい。ここで、X及びYは、単なる結合であるか、又は第1の二価の基及び第2の二価の基を示す。なお、第1及び第2の二価の基については後述する。
重合体部位は、ポリエーテル、ポリエステル及びポリカーボネートからなる群から選ばれる繰返し単位を5以上、好ましくは10以上、より好ましくは20以上有するのがよい。また、該重合体部位の数平均分子量が300以上10,000以下、好ましくは800〜8,000、より好ましくは1,000〜6,000であるのがよい。
【0031】
より具体的には、第1及び第2の環状分子がそれぞれ第1及び第2の活性基を有し、重合体部位の両端にそれぞれ第1及び第2の反応基を有し、第1の活性基と第1の反応基とが、及び、第2の活性基と第2の反応基とが、直接、化学結合して架橋が形成されるのがよい。この場合、上述のX及びYは、単なる結合である。
【0032】
重合体部位、又は第1及び第2の反応基をその両端に有する重合体部位の例として、ポリエーテル、ポリエステル又はポリカーボネートを挙げることができる。
より具体的には、ポリエチレングリコールジオール、ポリエチレングリコールジカルボン酸末端、ポリエチレングリコールジチオール酸末端、ポリプロピレンジオール、ポリテトラヒドロフラン、ポリ(テトラヒドロフラン)ビス(3−アミノプロピル)末端、ポリプロピレングリコールビス(2−アミノプロピルエーテル)、グリセロールプロポキシレート、グリセロールトリス[ポリ(プロピレングリコール)アミノ末端]、ペンタエリトリトールエトキシレート、ペンタエリトリトールプロポキシレートなどのポリエーテル類;ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(1、3−プロピレンアジペート)ジオール末端、ポリ(1、4−ブチレンアジペート)ジオール末端、ポリラクトンなどのポリエステル類;ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(1-メチルトリメチレンカーボネート)、ポリ(2,2-ジメチルトリメチレンカーボネート)、ポリ(テトラメチレンカーボネート)などのポリカーボネート類;を挙げることができるが、これらに限定されない。特に、重合体部は、ポリエーテル類又はポリカーボネートであるのがよい。
【0033】
重合体部位は、該重合体部位が有する基とある基とを反応させることにより、その両端に反応基を有することもできる。例えば、その「ある基」による「反応基」の付与として、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型、イソシアヌレート型、アダクト型、トリレン2,4-ジイソシアネート、ジイソシアン酸イソホロン、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、(4,4’-メチレンジシクロヘキシル)ジイソシアネートなどの多官能イソシアネートによるイソシアネート基の付与;エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンなどのオキシラン化合物によるオキシラン基の付与;3−(クロロメチル)−3−メチルオキセタンなどのオキセタン化合物によるオキセタン基の付与;2、2’−ビス(2−オキサゾリン)などによるオキサゾリン基付与;多官能アジリジンPZ−33、DZ−22E(日本触媒製)などによるアジリジン基の付与;を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0034】
反応基は、上述したものにも含まれるが、イソシアネート基、チオイソシアネート基、オキシラン基、オキセタン基、カルボジイミド基、シラノール基、オキサゾリン基、及びアジリジン基からなる群から選ばれるのがよい。
第1及び第2の反応基はそれぞれ2以上の官能基を有してもよい。
2以上の官能基が、イソシアネート基、チオイソシアネート基、オキシラン基、オキセタン基、カルボジイミド基、シラノール基、オキサゾリン基、及びアジリジン基からなる群から選ばれる2つ以上の基であるのがよい。
【0035】
第1及び第2の環状分子は、上述の第1及び第2の活性基又はそれらを介して有する重合体部位の他に、それぞれ、第1及び第2のグラフト鎖を有してもよい。なお、第1又は第2のグラフト鎖の一端は、各々、第1又は第2の環状分子に結合する。
第1及び第2のグラフト鎖はそれぞれ独立に、ポリエステル及びポリカーボネート、並びにそれらの共重合体からなる群から選ばれ、好ましくはポリエステル又はポリカーボネートであるのがよく、より好ましくはポリエステルであるのがよい
第1及び第2のグラフト鎖は、それぞれ独立に、その重合度が1〜10、好ましくは2〜9、より好ましくは3〜6であるか、及び/又はその数平均分子量が100〜1500、好ましくは200〜1300、より好ましくは300〜1000であるのがよい。
【0036】
その一端が各々、第1又は第2の環状分子に結合する第1又は第2のグラフト鎖は、例えば、ε-カプロラクトンの開環重合により得ることができる。
【0037】
第1及び/又は第2の環状分子が、第1及び/又は第2のグラフト鎖を有する場合、架橋は、該第1及び/第2のグラフト鎖を介してもよい。即ち、上述の「第1の環状分子−X−重合体部位−Y−第2の環状分子」において、i)Xが第1のグラフト鎖であり且つYが単なる結合の場合;ii)Xが単なる結合であり且つYが第2のグラフト鎖である場合;iii)Xが第1のグラフト鎖であり且つYが第2のグラフト鎖である場合である。要するに、本発明の材料は、a)上述の「第1の環状分子−重合体部位−第2の環状分子」だけの場合の他、a)とi)〜iii)のいずれか1つ、2つ又はすべてとの組合せを有することができる。
なお、この場合、第1及び/又は第2のグラフト鎖が架橋を形成する場合、第1又は第2のグラフト鎖が各々独立に、第1’又は第2’の活性基を有し、該活性基と重合体部位の両端の第1及び第2の反応基とが反応して架橋を形成するのがよい。なお、活性基については、環状分子の活性基と同様であるのが、後述する
【0038】
第1及び/又は第2の環状分子が、第1及び/又は第2のグラフト鎖を有する場合、第1及び/又は第2のグラフト鎖の他端に、第3及び/又は第4のグラフト鎖を有してもよい。該第3及び/又は第4のグラフト鎖は、それぞれ独立に、水酸基を有するモノマー及び/又はシアノ基を有するモノマー由来であるのがよい。
シアノ基を有するモノマーとして、例えばアクリロニトリル、シアン化ビニリデン、フマロニトリルなどのアクリロニトリル誘導体;2-シアノエチルアクリレート、2-シアノエチルメタクリレートなどのシアノエチルアクリレート誘導体;などを挙げることができるが、これらに限定されない。
また、水酸基を有するモノマーとして、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシエチルアクリレート誘導体;などを挙げることができるが、これらに限定されない。
好ましくは、アクリロニトリル、2-シアノエチルアクリレート又は2-ヒドロキシエチルメタクリレートであるのがよくアクリロニトリル又は2-ヒドロキシエチルアクリレートであるのがより好ましい。
【0039】
第3及び/又は第4のグラフト鎖は、例えば原子移動ラジカル重合の手法(例えば、特表平10-509475;Matyjaszewski et.al., J. Am. Chem. Soc., 1995, 117, 5614; Science, 1996, 272, 866; Sawamoto et. al., Macromolecules. 1995, 28, 1721;WO1996-30421などを参照のこと(これらの文献はその内容はすべて参考として本明細書に組み込まれる))によって形成することができるが、この手法に限定されない。
第3及び/又は第4のグラフト鎖は、それぞれ独立に、その重合度が2〜30、好ましくは3〜25、より好ましくは5〜20であるか、及び/又はその数平均分子量が100〜4000、好ましくは150〜3500、より好ましくは250〜2500であるのがよい。
なお、第3(第4)のグラフト鎖が有する場合、本発明の材料中、「第1(第2)の環状分子−第1(第2)のグラフト鎖−第3(第4)のグラフト鎖」という構成が存在する。ここで、括弧書きはそれぞれ対応する。
【0040】
なお、原子移動ラジカル重合の手法を用いる場合、第1及び/又は第2のグラフト鎖の他端を、有機ハロゲン化合物残基で置換されてラジカル重合開始部位を形成するのがよい。ここで、有機ハロゲン化合物残基は、「有機ハロゲン化合物」の残基であれば、特に限定されない。「有機ハロゲン化合物」として、2−ブロモイソブチリルブロミド、2−ブロモブチル酸、2−ブロモプロピオン酸、2−クロロプロピオン酸、2−ブロモイソ酪酸、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、及び2−クロロエチルイソシアネートなどを挙げることができるが、これに限定されない。
【0041】
本発明の材料は、金属酸化物、金属水酸化物、金属及び炭素からなる群から選ばれる粉末を少なくとも1種、さらに有するのがよい。
特に、粉末は、金属酸化物又は金属水酸化物であるのがよく、具体的には、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、アルミナ及び水酸化アルミニウムからなる群、好ましくはチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム及びアルミナからなる群、より好ましくはチタン酸バリウム及びチタン酸ストロンチウムからなる群から選ばれるのがよい。
粉末は、単結晶でも多結晶でもよい。また、その形状などは特に限定されないが、平均粒径が0.01〜100μmであるのが好ましく、より好ましくは0.01〜10μmであるのがよい。上記範囲内であれば、粉末の分散性が良く、所望の誘電率などをもたらすことができる。
【0042】
高誘電性をもたらす粉末として、MgSiO4、MgTiO3、ZnTiO3、Zn2TiO4、TiO2、CaTiO3、SrTiO3、SrZrO3、BaTiO3、BaTi2O5、BaTi4O9、Ba2Ti9O20、Ba2(Ti、Sn)9O20、ZrTiO4、(Zr、Sr)TiO4、BaNd2Ti5O14、BaSm2TiO14、Bi2O3BaONd2O3TiO2、PbOBaONd2O3TiO2、(Bi2O3、PbO)BaONd2O3TiO2、La2Ti2O7、Nd2Ti2O7、(Li、Sm)TiO3、Ba(Mg1/3Ta2/3)O3、Ba(Zn1/3Ta2/3)O3、Ba(Zn1/3Nd2/3)O3、Sr(Zn1/3Nd2/3)O3、などを挙げることができるが、これらに限定されない。特に、BaTiO3やSrTiO3などが好ましい。
熱伝導性を改善する粉末として、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ダイアモンド等の高熱伝導性粉末や、窒化珪素、シリカ、二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム等の低熱伝導性粉末を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの中でも特に、熱伝導性を改善するものとしてアルミナが好ましい。
【0043】
難燃性をもたらす粉末として、金属水酸化物を用いることができる。この中でも特に、構造水に優れ、耐酸性や耐アルカリ性にも優れる水酸化アルミニウムが好ましい。
磁性粉末として、磁場を印加したときに磁力線の方向に配向する磁性粉末であれば全て用いることができる。具体例として、フェライト系磁石、希土類系磁石、γ酸化鉄、二酸化クロムまたはコバルト/クロム合金を挙げることができるが、これらに限定されない。フェライト系磁石として、フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライトなどを挙げることができるが、これらに限定されない。希土類磁石に用いられる希土類原子としては、具体的には、サマリウム、ネオジムなどが挙げられる。
蓄光性をもたらす粉末として、硫化亜鉛系蓄光粉末、カルシウムアルミネート系蓄光粉末、ストロンチウムアルミネート系蓄光粉末などを挙げることができるが、これらに限定されない。
これらの粉末を1種以上有することにより、本発明の材料に、該粉末由来の特性をもたらすことができる。
【0044】
以下、第1(第2)のポリロタキサンを構成する要素について、それぞれ説明する。
<<環状分子>>
環状分子は、その開口部に直鎖状分子が串刺し状に包接される分子であれば、特に限定されない。
活性基を有する場合、該活性基として、−OH、−SH、−NH、−COOH、−SOH、及び−POHからなる群から選ばれる基由来であるのがよい。なお、この活性基は、第1’及び/又は第2’の活性基についても同様である。
環状分子として、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群から選択されるのがよい。α−シクロデキストリンなどの−OH基の一部を、他の基、例えば上述の基に置換してもよい。なお、環状分子は、上述の活性基以外の基を有してもよい。
【0045】
活性基以外の基の例として、アセチル基、プロピオニル基、ヘキサノイル基、メチル基、エチル基、プロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、1,2-ジヒドロキシプロピル基、シクロヘキシル基、ブチルカルバモイル基、ヘキシルカルバモイル基、フェニル基、ポリカプロラクトン基、アルコキシシラン基、アクリロイル基、メタクリロイル基又はシンナモイル基、もしくはこれらの誘導体が挙げられる。これらの基を環状分子に設けることにより、例えば、架橋体を作製する工程における該ポリロタキサンの溶媒に対する溶解性の向上、重合体部との相溶性の向上、及び特定の機能性を付与すること(例えば、撥水撥油機能、摩擦制御機能、光硬化機能、表面密着向上機能など)を図ることができる。
【0046】
<<直鎖状分子>>
本発明のポリロタキサンの直鎖状分子は、環状分子の開口部に串刺し状に包接され得るものであれば、特に限定されない。
例えば、直鎖状分子として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよい。例えばポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテルからなる群から選ばれるのがよい。より具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれるのがよく、特にポリエチレングリコールであるのがよい。
【0047】
直鎖状分子は、その重量平均分子量が3,000以上、好ましくは5,000〜100,000、より好ましくは10,000〜50,000であるのがよい。
本発明の第1(第2)のポリロタキサンにおいて、第1(第2)の環状分子がα−シクロデキストリン由来であり、直鎖状分子がポリエチレングリコールであるのがよい。
【0048】
環状分子が直鎖状分子により串刺し状に包接される際に環状分子が最大限に包接される量を1とした場合、前記環状分子が0.001〜0.6、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.4の量で直鎖状分子に串刺し状に包接されるのがよい。
なお、環状分子の最大包接量は、直鎖状分子の長さと環状分子の厚さとにより、決定することができる。例えば、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がα−シクロデキストリン分子の場合、最大包接量は、実験的に求められている(Macromolecules 1993, 26, 5698-5703を参照こと。なお、この文献の内容はすべて本明細書に組み込まれる)。
【0049】
<<封鎖基>>
本発明のポリロタキサンの封鎖基は、擬ポリロタキサンの両端に配置され、環状分子が脱離しないように作用する基であれば、特に限定されない。
例えば、封鎖基として、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニルなどを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類(置換基として、上記と同じものを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、及びステロイド類からなる群から選ばれるのがよい。なお、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、及びピレン類からなる群から選ばれるのが好ましく、より好ましくはアダマンタン基類又はトリチル基類であるのがよい。
【0050】
上述の、本発明の材料、即ち架橋ポリロタキサンを有する材料を、図を用いて説明する。
図1は、本発明の材料中の架橋ポリロタキサンの一態様1を模式的に説明する図である。
図中、左側が第1のポリロタキサン2に由来し、右側が第2のポリロタキサンに由来し、双方が架橋されてなる。
第1のポリロタキサン2は、第1の環状分子5a、5b及び5cの開口部が第1の直鎖状分子6によって串刺し状に包接されてなり、該第1の直鎖状分子6の両端に第1の環状分子5a、5b及び5cが脱離しないように第1の封鎖基7a及び7bが配置してなる。
また、第1の環状分子5aは第1のグラフト鎖8aを、第1の環状分子5bは第1のグラフト鎖8b及び8cを、第1の環状分子5cは第1のグラフト鎖8d及び8eをそれぞれ有してなる。
【0051】
同様に、第2のポリロタキサン4も、第2の環状分子15a、15b及び15cの開口部が第2の直鎖状分子16によって串刺し状に包接されてなり、該第2の直鎖状分子16の両端に第2の環状分子15a、15b及び15cが脱離しないように第2の封鎖基17a及び17bが配置してなる。
また、第2の環状分子15aは第2のグラフト鎖18a及び18bを、第2の環状分子15bは第2のグラフト鎖18c及び18dを、第2の環状分子15cは第2のグラフト鎖18e及び18fを有してなる。
【0052】
第1のポリロタキサン2と第2のポリロタキサン4とは、第1の環状分子5aと第2の環状分子15bとを介して、より具体的には第1の環状分子5a、第1のグラフト鎖8a、重合体部位21a、第2のグラフト鎖18d、及び第2の環状分子15bを介して、架橋される。
また、第1の環状分子5bと第2の環状分子15bとを介しても架橋が形成され、より具体的には、第1の環状分子5b、第1のグラフト鎖8c、重合体部位21b、及び第2の環状分子15bを介して、架橋が形成される。
さらに、第1の環状分子5cと第2の環状分子15cとを介しても架橋が形成され、より具体的には、第1の環状分子5c、重合体部位21c、及び第2の環状分子15cを介して、架橋が形成される。
【0053】
図2は、本発明の材料中の架橋ポリロタキサンの一態様31を模式的に説明する図である。
図2の架橋ポリロタキサンの一態様31は、第1のグラフト鎖8dの他端に第3のグラフト鎖9が、第2のグラフト鎖18cの他端に第4のグラフト鎖19が形成され、それ以外は、図1と同じである。
【0054】
本発明の材料は、誘電アクチュエータ材料、磁性アクチュエータ材料、有機分散型エレクトロルミネッセンス材料、熱伝導材料のバインダー、コンデンサー材料などへの用途が考えられる。また、低応力範囲が広いことを利用して、低駆動圧アクチュエータ材料やその他圧電素子への応用も大いに期待できる。
また、本発明の材料は電機絶縁材料、電気・電子部品材料、光学材料、摩擦制御材料、医療用生体材料、機械・自動車材料、建築材料に応用することができる。
【0055】
<本発明の材料の製造方法>
上述の、本発明の材料は、例えば、次の方法により得ることができる。
即ち、
a)第1の環状分子の開口部が第1の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第1の擬ポリロタキサンの両端に第1の環状分子が脱離しないように第1の封鎖基を配置してなる第1のポリロタキサンを準備する工程;
b)第2の環状分子の開口部が第2の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第2の擬ポリロタキサンの両端に第2の環状分子が脱離しないように第2の封鎖基を配置してなる第2のポリロタキサンを準備する工程;
c)ポリエーテル、ポリエステル及びポリカーボネートからなる群から選ばれる繰り返し単位を少なくとも5、好ましくは10以上、より好ましくは20以上有する重合体部位を有する架橋剤を準備する工程;
d)第1のポリロタキサン、第2のポリロタキサン、及び架橋剤を混合し反応させて、第1及び第2のポリロタキサンを、重合体部位を介して架橋させる工程;
を有することにより、本発明の材料を得ることができる。
【0056】
工程a)及びb)は、いわゆるポリロタキサンを準備する工程である。ポリロタキサンは、本願の出願前に発表された文献(例えばWO2005-080469及びWO2005-108464(本文献は、その内容すべてが参考として本明細書に組み込まれる))を参照することにより、得ることができる。第1及び第2のポリロタキサンが同一であれば、a)及びb)工程を1つの工程で行うことができる。なお、第1及び第2のポリロタキサンについては上述と同じである。
【0057】
工程c)は、架橋剤を準備する工程である。なお、ここで、重合体部位は上述と同じ定義を有する。
工程c)として、上述の「重合体部位」又は「第1及び第2の反応基を有する重合体部位」の例として挙げたものに、反応基を付与することにより、架橋剤を得ることができる。この工程として、i)反応基を付与できる箇所を有する重合体と反応基2個以上を有する化合物とを反応させて、架橋剤を得る手法;ii)モノマーを一般の方法で重合し、重合体部位を作製し、作製工程で、反応基となる化合物を付与する手法;を挙げることができるが、これに限定されない。なお、ここでのモノマーは繰り返し単位を有するモノマーであってもよい。
【0058】
上記i)の手法は一般的には、反応基2個以上を有する化合物を、重合体と過剰に反応させた後、反応物をそのまま使用してもよいし、精製して使用してもよい。反応基2個以上を有する化合物として、「ある基」による「反応基」の付与として上述した化合物([0028])を挙げることができるがこれに限定されない。
上記ii)の具体的な例として、(メタ)アクリル酸メチルの重合にグリシジルメタクリレートを添加して得られる架橋化合物、(メタ)アクリル酸メチルの重合にα−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトンを添加して得られる架橋化合物、エチレングリコールとアジピン酸の縮合重合による末端カルボン酸基を有するようにして得られる架橋化合物、トリエチレングリコールとヘキサメチレンジイソシアネートの重付加によって得られるイソシアネート末端を有する架橋化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
工程d)は、架橋を形成する工程である。
工程d)は、用いるポリロタキサン、用いる重合体部位などに依存するが、一般に、溶媒中で反応させるのがよい。溶媒として、第1及び第2のポリロタキサン、並びに架橋剤に依存するが、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトニトリル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン又はアセトン、もしくはこれらの混合溶媒を挙げることができるが、これらに限定されない。また、反応は、反応基、活性基、及び溶媒に依存するが、室温から100℃、5分間〜24時間、触媒の存在下の条件などを挙げることができるが、これに限定されない。
【0060】
溶媒を用いる場合、得られた架橋体を含む材料を溶媒フリーとするために、種々の乾燥工程を、工程d)後に設けてもよい。さらに、乾燥工程を効率的に行うため、溶媒置換工程を乾燥工程の前に設けてもよい。
乾燥工程として、室温放置して自然乾燥による乾燥工程、常圧加熱による乾燥工程、減圧加熱による乾燥工程、凍結乾燥工程などを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0061】
本発明の方法は、工程a)及び/又は工程b)において、ラクトンモノマー及び/又は環状カーボネートモノマーの開環重合により、第1及び/又は第2の環状分子がそれぞれ第1及び/又は第2のグラフト鎖を有する工程をさらに有するのがよい。
第1及び第2のグラフト鎖は、上述と同じ定義を有する。
ラクトンモノマー及び/又は環状カーボネートモノマーの開環重合は、用いるラクトンモノマー及び/又は環状カーボネートモノマー、用いる第1及び/又は第2のポリロタキサンに依存するが、従来公知の手法により、行うことができる。例えば、ε−カプロラクトンを用いた開環重合である。
【0062】
本発明の方法は、さらに、e)水酸基を有するモノマー又はシアノ基を有するモノマーを原子移動ラジカル重合することにより、第1及び/又は第2の環状分子がそれぞれ独立に、水酸基を有するモノマー又はシアノ基を有するモノマー由来の第3及び/又は第4のグラフト鎖を形成する工程を有するのがよい。
特に、第1及び/又は第2の環状分子がそれぞれ第1及び/又は第2のグラフト鎖を有する場合、e)水酸基を有するモノマー又はシアノ基を有するモノマーを原子移動ラジカル重合することにより、第1及び/又は第2のグラフト鎖の他端に、それぞれ独立に、水酸基を有するモノマー又はシアノ基を有するモノマー由来の第3及び/又は第4のグラフト鎖を形成する工程を有するのがよい。なお、第3及び第4のグラフト鎖は、上述と同じ定義を有する。
原子移動ラジカル重合は、用いるモノマー、用いる第1及び/又は第2のグラフト鎖、用いる第1及び/又は第2のグラフト鎖が有する活性基などに依存するが、上述の文献を参照して行うことができる。
【0063】
本発明の方法は、f)金属酸化物、金属水酸化物、金属及び炭素からなる群から選ばれる粉末を少なくとも1種、材料に添加する工程をさらに有するのがよい。
なお、粉末は、上述と同じ定義を有する。
工程f)は、工程d)の際、又は工程d)後に行うのがよく、好ましくは、工程d)の際、粉末を添加して、材料に含まれるようにするのがよい。
【0064】
工程a)〜f)以外に、他の工程を設けてもよい。例えば、上述の、工程d)後の乾燥工程、工程d)の際及び/又は工程d)後に、材料に他の成分を含ませる工程、工程d)後の溶媒による洗浄工程、などである。他の成分として、他ポリマー又はオリゴマー、可塑剤、低分子量架橋剤、界面活性剤、UV吸収剤、抗菌剤などを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0065】
他の成分のうち、他ポリマー又はオリゴマーとして、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、片末端水酸基化ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリジメチルシロキサン、片末端水酸基化ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、片末端水酸基化ポリカーボネート、ポリエステル、片末端水酸基化ポリエステルなどが挙げられるが、それらに限定されない。なお、この他ポリマー又はオリゴマーに反応基を付与できる箇所を1つのみ有しても良いし、有しなくても良い。これらのポリマー又はオリゴマーを加えることで、本材料の粘弾特性、特に柔軟性を適度に調節することができる。
【0066】
他の成分のうち、可塑剤として、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)、リン酸トリクレジルなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0067】
他の成分のうち、低分子量架橋剤として、塩化シアヌル、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、脂肪族多官能イソシアネート、芳香族多官能イソシアネート、トリレン2,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジビニルスルホン、1,1’−カルボニルジイミダゾール、エチレンジアミン四酢酸二無水物、meso-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物などの酸無水物類、多官能酸ヒドラジン類、多官能カルボイミド類、アルコキシシラン類、およびそれらの誘導体を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0068】
他の成分のうち、界面活性剤として、ポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタンなどの非イオン性界面活性剤;硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸トリエタノールアミン、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルピリジニウムクロリド、などのイオン性界面活性剤などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0069】
他の成分のうち、UV吸収剤として、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、サリチル酸2−エチルヘキシル、2、4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2、2、6、6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、パラメトキシケイ皮酸2エチルヘキシル、パラメトキシケイヒ酸イソプロピル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、メトキシケイヒ酸オクチルなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0070】
他の成分のうち、抗菌剤として、銀、亜鉛、銅化合物または錯体及びそのイオン;有機ケイ素化合物;有機リン化合物などを挙げることができるが、これらに限定されない。
他の成分のうち、粘度調整剤として、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸プロピレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0071】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0072】
<合成例A−1 架橋剤A−1の調製>
窒素雰囲気下で脱水トルエン30mlに溶解させたトリレン-2,4-ジイソシアネート(東京化成)7gを80℃で激しく攪拌した。この溶液に両末端ジオール型ポリプロピレングリコール(Mn=3000、重合度:50〜52、和光純薬)30gを脱水トルエン60mlに溶解させた溶液をゆっくりと滴下した後、2時間攪拌した。反応後、減圧下で溶媒を除去して、両末端イソシアネート変性したポリプロピレングリコールを有する架橋剤A−1を得た。
【0073】
<合成例A−2 架橋剤A−2の調製>
窒素雰囲気下で脱水トルエン30mlに溶解させたトリレン-2,4-ジイソシアネート(東京化成)7gを80℃で激しく攪拌した。この溶液にポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(Mn=2500、重合度:40〜42、Aldrich)20gを脱水トルエン50mlに溶解させた溶液をゆっくりと滴下した後、2時間攪拌した。この溶液に両末端ジオール型ポリプロピレングリコール(Mn=3000、重合度:50〜52、和光純薬)30gを脱水トルエン50mlに溶解させた溶液をゆっくりと滴下した後、更に2時間攪拌した。反応後、減圧下で溶媒を除去して両末端イソシアネート変性したポリプロピレングリコール及び片末端イソシアネート変性したポリプロピレングリコールモノブチルエーテルを有する架橋剤A−2を得た。
【0074】
<合成例A−3 架橋剤A−3の調製>
窒素雰囲気下で脱水トルエン(10ml)に溶解させたトリレン-2,4-ジイソシアネート末端ポリプロピレングリコール(Mn=2300、重合度:33〜36、Aldrich)10gを80℃で激しく攪拌した。この溶液に両末端ジオール型ポリプロピレングリコール(Mn=3000、重合度:50〜52、和光純薬)4.35gを脱水トルエン30mlに溶解させた溶液をゆっくりと滴下した後、5時間攪拌した。反応後、減圧下で溶媒を除去して両末端イソシアネート変性したポリプロピレングリコール(Mn=7600、重合度:83〜88)を有する架橋剤A−3を得た。
【0075】
<合成例A−4 架橋剤A−4の調製>
1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(東京化成製)1.9gをキシレン0.67gに溶かし、ポリカーボネートジオール(ポリアルキレンカーボネートジオール96wt%以上、1,5-ペンタンジオール2wt%以下、1,6-ヘキサンジオール2wt%以下の組成からなるポリカーボネート、旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(登録商標)T−5650J、Mn:800)0.8gを80℃で撹拌しながら滴下して3時間撹拌し、両末端イソシアネート変性ポリカーボネートを有する架橋剤A−4を得た。
【0076】
<合成例M−1 混合液M−1の調製>
両末端ジオール型ポリプロピレングリコール(Mn=400、重合度:5〜7、和光純薬)1.0gとトリレン-2,4-ジイソシアネート(東京化成)0.435gを混合し、50℃で1時間攪拌して両末端イソシアネート変性したポリプロピレングリコールを有する混合液M−1を得た。
【0077】
<合成例M−2 混合液M−2の調製>
合成例M−1で得られた混合液M−1 1.435gに、さらにイソシアン酸ブチル(和光純薬)0.248gを加えて混合液M−2とし、両末端イソシアネート変性したポリプロピレングリコール及び片末端イソシアネート変性したポリプロピレングリコールを有する混合液M−2を得た。
【0078】
<合成例M−3 混合液M−3の調製>
両末端ジオール型ポリプロピレングリコール(Mn=400、重合度:5〜7、和光純薬)1.0gと1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(東京化成)0.485gを混合し、50℃で1時間攪拌して両末端イソシアネート変性したポリプロピレングリコールを有する混合液M−3を得た。
【0079】
<合成例B 修飾ポリロタキサンの調製>
<<合成例B−1 HAPRの調製>>
直鎖分子:ポリエチレングリコール(重量平均分子量3.5万)、環状分子:α−シクロデキストリン(以下、単に「α−CD」と略記する場合がある)、封鎖基:アダマンタンアミン基からなるポリロタキサンのα−CDのOH基の一部を、さらにヒドロキシプロピル化した化合物(以下、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを「HAPR」と略記する)を、WO2005-080469(なお、この文献の内容は全て参考として本明細書に組み込まれる)に記載される方法と同様に調製した。
H−NMR分析により、α−CD包接率:25%、ヒドロキシプロピル基の導入率:48%を確認した。また、GPCにより重量平均分子量Mw:150,000を確認した。
【0080】
なお、合成したポリロタキサンの分子量、分子量分布の測定は、TOSOH HLC-8220GPC装置で行った。カラム:TSKガードカラム Super AW-Hと TSKgel Super AWM-H(2本連結)、溶離液:ジメチルスルホキシド(DMSO)/0.01M LiBr、カラムオーブン:50℃、流速:0.5ml/min、試料濃度を約0.2wt/vol%、注入量:20μl、前処理:0.2μmフィルターでろ過、スタンダード分子量:PEO、の条件下で測定した(合成例B−2及びB−3についても同様である)。H−NMR分析は、400MHzのJEOL JNM−AL400(日本電子株式会社製)で行われた。
【0081】
<<合成例B−2 HAPR−g−PCLの調製>>
合成例B−1で得られたHAPR 1.0gを三口フラスコに入れ、窒素をゆっくり流しながら、ε−カプロラクトン4.5gを導入した。80℃、30分間メカニカル撹拌機によって均一に撹拌した後、反応温度を100℃まで上げ、予めトルエンで薄めた2−エチルヘキサン酸スズ(50wt%溶液)0.16gを添加し、5時間反応させ、溶媒を除去し、反応生成物(HAPR35にポリカプロラクトン基を導入したものであり、以下、「HAPR35にポリカプロラクトンを導入したもの」を一般に「HAPR−g−PCL」と略記する場合がある)5.5gを得た。IRを測定した結果、1736cm−1のエステル由来のピークが見られた。また、GPCにより、重量平均分子量Mwは586,800、分子量分布Mw/Mnは1.7であった。
【0082】
<合成例C HAPR−g−PCLの環状分子α−CDへの原子ラジカル重合開始部位の導入>
窒素雰囲気下で脱水ジメチルアセトアミド50mlにHAPR−g−PCL 3g、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン65mg、及びトリエチルアミン5mlを加えて溶解させた。この溶液を氷冷下で激しく攪拌しながら2-ブロモイソ酪酸ブロミド(東京化成)100μlをゆっくりと滴下した。氷冷下で1時間攪拌した後、更に室温下で15時間攪拌した。反応後、脱イオン水で沈殿精製をした後、凍結乾燥機で乾燥させて原子ラジカル重合開始部位である2-ブロモイソブチリル基がポリカプロラクトン末端に導入されたHAPR−g−PCLを得た。
【実施例1】
【0083】
<架橋体D−1の調製>
合成例B−2で得たHAPR−g−PCL 0.5gをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)4.5gに溶解させた後、架橋剤A−1 0.5gを加えて攪拌し、均一溶液とした。この溶液を脱泡した後、サンプル型に入れて50℃で15時間静置した。得られた物質を型から取り出し、アセトンで洗浄した後、減圧下で乾燥して、HAPR−g−PCL間に、Mnが3000であり重合度が50〜52であるポリプロピレングリコールを有する溶媒フリーの架橋体D−1を得た。
【実施例2】
【0084】
<架橋体D−2の調製>
合成例B−2で得たHAPR−g−PCL 0.5gをDMF4.5gに溶解させた後、架橋剤A−2 0.5gとジラウリン酸ジブチルすず5μl(和光純薬)を加えて攪拌し、均一溶液とした。この溶液を脱泡した後、サンプル型に入れて50℃で15時間静置した。得られた物質を型から取り出し、減圧下で乾燥して、HAPR−g−PCL間に、Mnが3000であり重合度が50〜52であるポリプロピレングリコール、及び/又はMnが2500であり重合度が40〜42であるポリプロピレングリコールモノブチルエーテルを有する溶媒フリーの架橋体D−2を得た。
【実施例3】
【0085】
<架橋体D−3の調製>
HAPR−g−PCLとして、合成例Cで得たものを用いた以外、実施例1と同様な方法により、HAPR−g−PCL間に、Mnが3000であり重合度が50〜52であるポリプロピレングリコールを有し且つHAPR−g−PCLのポリカプロラクトン末端に原子ラジカル重合開始部位である2-ブロモイソブチリル基を有する溶媒フリーの架橋体D−3を得た。
【実施例4】
【0086】
<架橋体D−4の調製>
窒素雰囲気下で架橋体D−3 174mgに脱水ジメチルスルホキシド(DMSO)75mlと蒸留したアクリロニトリル2mlを加えて膨潤平衡に至るまで静置した。膨潤後、ゆっくりと攪拌しながら30分間溶液を窒素バブリングした。この溶液に臭化銅(I)8mgと2,2’-ビピリジン25mgを加えて、室温下でゆっくりと20時間攪拌した。反応後、得られた物質を取り出し、DMSOで洗浄した後、エタノールで溶媒置換を行い、減圧下で乾燥して、架橋体D−3のポリカプロラクトン基の末端にポリアクリロニトリルがグラフト化した溶媒フリーの架橋体D−4を得た。
【実施例5】
【0087】
<架橋体D−5の調製>
アクリロニトリルの代わりに2-シアノエチルアクリレートを用いた以外、実施例4と同様な方法により、架橋体D−3のポリカプロラクトン基の末端にポリ(2-シアノエチルアクリレート)がグラフト化した溶媒フリーの架橋体D−5を得た。
【実施例6】
【0088】
<架橋体D−6の調製>
アクリロニトリルの代わりに2-ヒドロキシエチルメタクリレートを用いた以外、実施例4と同様な方法により、架橋体D−3のポリカプロラクトン基の末端にポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)がグラフト化した溶媒フリーの架橋体D−6を得た。
【実施例7】
【0089】
<架橋体D−7の調製>
架橋体D−6 50mgを0.3N水酸化ナトリウム水溶液60ml中でゆっくりと2時間攪拌した。この溶液に蒸留したアクリロニトリル5mlを加えて、室温下で15時間攪拌した後、酢酸で中和した。得られた物質を脱イオン水で洗浄した後、DMSOで溶媒置換した。更にアセトンで溶媒置換を行った後、減圧下で乾燥して架橋体D−6のポリカプロラクトン基の末端にグラフトされたポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)の水酸基をシアノエチル化した溶媒フリーの架橋体D−7を得た。
【実施例8】
【0090】
<架橋体D−8の調製>
合成例B−2で得たHAPR−g−PCL 0.5gをDMF0.5gとキシレン4gの混合溶媒に溶解させた後、チタン酸バリウム(Aldrich、粒径2μm以下)0.5gを加えて24時間激しく攪拌して均一溶液とした。この溶液に架橋剤A−1 0.5gとジラウリン酸ジブチルすず(和光純薬)5μlを加えて攪拌し、均一溶液とした。得られた溶液を脱泡した後、サンプル型に入れて50℃で15時間静置した。得られた物質を型から取り出し、減圧下で乾燥して、HAPR−g−PCL間に、Mnが3000であり重合度が50〜52であるポリプロピレングリコールを有し、且つ架橋体中にチタン酸バリウムを有する溶媒フリーの架橋体D−8を得た。
【実施例9】
【0091】
<架橋体D−9の調製>
実施例8で用いたチタン酸バリウムの量を0.5gから0.7gに変えた以外、実施例8と同様の方法により、架橋体D−8と同様な構成を有する溶媒フリーの架橋体D−9を得た。
【実施例10】
【0092】
<架橋体D−10の調製>
合成例B−2で得たHAPR−g−PCL 0.415gをDMF3.7gに溶解させた後、チタン酸バリウム(Aldrich、粒径30〜50nm)0.623gを加えて24時間激しく攪拌して均一溶液とした。この溶液に架橋剤A−1 0.415gを加えて攪拌し、均一溶液とした。得られた溶液を脱泡した後、サンプル型に入れて50℃で15時間静置した。得られた物質を型から取り出し、減圧下で乾燥して、架橋体D−8と同様な構成を有する溶媒フリーの架橋体D−10を得た。
【実施例11】
【0093】
<架橋体D−11の調製>
実施例8で用いた「チタン酸バリウム(Aldrich、粒径2μm以下)0.5g」の代わりに『チタン酸ストロンチウム(Aldrich、粒径5μm以下)0.5g』を用いた以外、実施例8と同様の方法により、HAPR−g−PCL間に、Mnが3000であり重合度が50〜52であるポリプロピレングリコールを有し、且つ架橋体中にチタン酸ストロンチウムを有する溶媒フリーの架橋体D−11を得た。
【実施例12】
【0094】
<架橋体D−12の調製>
実施例11のチタン酸ストロンチウムの量を0.5gから0.7gへと変えた以外、実施例11と同様の方法により、架橋体D−11と同様な構成を有する溶媒フリーの架橋体D−12を得た。
【実施例13】
【0095】
<架橋体D−13の調製>
実施例11のチタン酸ストロンチウムの量を0.5gから1.0gへと変えた以外、実施例11と同様の方法により、架橋体D−11と同様な構成を有する溶媒フリーの架橋体D−13を得た。
【実施例14】
【0096】
<架橋体D−14の調製>
実施例11のチタン酸ストロンチウムの粒径を「5μm以下」から『100nm以下』へと変えた以外、実施例11と同様の方法により、架橋体D−11と同様な構成を有する架橋体D−14を得た。
【実施例15】
【0097】
<架橋体D−15の調製>
合成例B−2で得たHAPR−g−PCL 0.5gをDMF1gとキシレン3.5gの混合溶媒に溶解させた後、チタン酸バリウム(Aldrich、粒径:2μm以下)1gを加えて24時間激しく攪拌して均一溶液とした。この溶液に架橋剤A−2 1gとジラウリン酸ジブチルすず(和光純薬)5μlを加えて攪拌し、均一溶液とした。得られた溶液を脱泡した後、サンプル型に入れて50℃で15時間静置した。得られた物質を型から取り出し、減圧下で乾燥して、HAPR−g−PCL間に、Mnが3000であり重合度が50〜52であるポリプロピレングリコール、及び/又はMnが2500であり重合度が40〜42であるポリプロピレングリコールモノブチルエーテルを有し、且つ架橋体中にチタン酸バリウムを有する溶媒フリーの架橋体D−15を得た。
【実施例16】
【0098】
<架橋体D−16の調製>
実施例15のチタン酸バリウムの量を1gから1.5gへと変えた以外、実施例15と同様の方法により、架橋体D−15と同様な構成を有する溶媒フリーの架橋体D−16を得た。
【実施例17】
【0099】
<架橋体D−17の調製>
合成例B−2で得たHAPR−g−PCL 0.31gをDMF2.1gとキシレン2.1gの混合溶媒に溶解させた後、チタン酸バリウム(Aldrich、粒径:2μm以下)0.7gを加えて24時間激しく攪拌して均一溶液とした。この溶液に架橋剤A−3 0.74gとジラウリン酸ジブチルすず(和光純薬)5μlを加えて攪拌し、均一溶液とした。得られた溶液を脱泡した後、サンプル型に入れて50℃で15時間静置した。得られた物質を型から取り出し、減圧下で乾燥して、HAPR−g−PCL間に、Mnが7600であり重合度が83〜88であるポリプロピレングリコールを有し、且つ架橋体中にチタン酸バリウムを有する溶媒フリーの架橋体D−17を得た。
【実施例18】
【0100】
<架橋体D−18の調製>
合成例B−2で得たHAPR−g−PCL 0.4gをDMF0.4gとキシレン3.6gの混合溶媒に溶解させた後、酸化アルミニウム(粒径:2.5〜4.5μm)0.8gを加えて24時間激しく攪拌して均一溶液とした。この溶液に架橋剤A−1 0.4gとジラウリン酸ジブチルすず(和光純薬)5μlを加えて攪拌し、均一溶液とした。得られた溶液を脱泡した後、サンプル型に入れて50℃で15時間静置した。得られた物質を型から取り出し、減圧下で乾燥して、HAPR−g−PCL間に、Mnが3000であり重合度が50〜52であるポリプロピレングリコールを有し、且つ架橋体中に酸化アルミニウムを有する溶媒フリーの架橋体D−18を得た。
【実施例19】
【0101】
<架橋体D−19の調製>
実施例18で用いた酸化アルミニウム(粒径:2.5〜4.5μm)を水酸化アルミニウム(粒径:2μm)へと変えた以外、実施例18と同様の方法により、架橋体D−18と同様な構成を有する溶媒フリーの架橋体D−19を得た。
【実施例20】
【0102】
<架橋体D−20の調製>
合成例B−2で得たHAPR−g−PCL 0.35gをキシレン0.5gに溶解させた溶液を準備し、これに、合成例M−1で得た混合液M−1 0.6gを加えてよく混合し、脱泡した後、サンプル型に流し入れ、40℃で20時間静置した。得られた物質を型から取り出してエタノールで洗浄し、減圧下で乾燥させて、HAPR−g−PCL間に、Mnが400であり重合度が5〜7であるポリプロピレングリコールを有する溶媒フリーの架橋体D−20を得た。
【実施例21】
【0103】
<架橋体D−21の調製>
合成例M−2で得た混合液M−2を混合液M−1の代わりに用いた以外、実施例20と同様の方法により、HAPR−g−PCL間に、Mnが400であり重合度が5〜7であるポリプロピレングリコールを有し、且つ一端がα−CDに結合し他端がフリーであるポリプロピレングリコール(Mn:400;重合度:5〜7)を有する溶媒フリーの架橋体D−21を得た。
【実施例22】
【0104】
<架橋体D−22の調製>
合成例M−3で得た混合液M−3を混合液M−1の代わりに用いた以外、実施例20と同様の方法により、HAPR−g−PCL間に、Mnが400であり重合度が5〜7であるポリプロピレングリコールを有する溶媒フリーの架橋体D−22を得た。
【実施例23】
【0105】
<架橋体D−23の調製>
合成例B−2で得られたHAPR35−g−PCLをキシレンに溶解して35wt%のHAPR35−g−PCLキシレン溶液を調製した。この溶液1.5gとポリカーボネートジオール(ポリアルキレンカーボネートジオール96wt%以上、1,5-ペンタンジオール2wt%以下、1,6-ヘキサンジオール2wt%以下の組成からなるポリカーボネート、旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(登録商標)T−5650J、Mn:800)0.48gを混合し、混合液M−4とした。合成例A−4で得た架橋剤A−4 2.0gを該混合液M−4 1.98gに加えて撹拌し、脱泡した後、厚み0.5mmシート状のモールド注入し、40℃で20時間静置した。得られた物質を減圧下で乾燥して、HAPR−g−PCL間に、Mnが800であるポリカーボネートを有する溶媒フリーの架橋体D−23を得た。
【実施例24】
【0106】
<架橋体D−24の調製>
実施例23で得られた架橋体D−23をエタノールで洗浄した後、減圧下で乾燥して溶媒フリーの架橋体D−24を得た。
【0107】
(比較例1)
<架橋体X−1の調製>
合成例B−2で得たHAPR−g−PCL 0.5gをDMF0.4gとキシレン3.6gの混合溶媒に溶解させ、攪拌して均一溶液とした。この溶液に1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDIC)70mgを加えて攪拌し、均一溶液とした。得られた溶液を脱泡した後、サンプル型に入れて50℃で15時間静置した。得られた物質を型から取り出し、減圧下で乾燥して、HAPR−g−PCL間に、ヘキサメチレン部分を有する溶媒フリーの架橋体X−1を得た。
【0108】
<誘電率及び初期弾性率の測定>
実施例1〜24及び比較例1で得られた架橋体D−1〜D−24及びX−1について、誘電率及び初期弾性率を測定した。
<<誘電率の測定>>
測定は、NovoControl社製Alpha-S High Resolution Dielectric Analyzer及びZGS Alpha Active Sample Cellを用いて、架橋体を直径20mmの金コート真鍮板2枚で挟み、室温下で誘電率を測定した。直径20mm以下のサンプルについては、測定後に補正を行って値を算出した。結果を表1〜表3に示す。
<<初期弾性率の測定>>
架橋体をダンベル型(幅2.04mm、初期試料長10mm)に加工し、測定試料とした。各試料について、Stable Micro Systems社製TA.XTplusを用いて引張速度0.2mm/秒で応力−歪曲線を測定した。初期弾性率は、5%伸長時までの応力−歪曲線を線形近似した傾きから算出した。結果を表1〜表3に示す。
【0109】
表1は、架橋剤による誘電率と初期弾性率の関係を表す表である。表1から、本発明の材料を用いることによって、柔軟性に優れ(初期弾性率1MPa以下、伸び200%以上)、且つ高い誘電率(誘電率6.0以上)を有することがわかる。
表2は、機能性粉末の添加による誘電率と初期弾性率の関係を表す表である。表2から、本発明の材料に機能性粉末を添加したものについても柔軟性に優れ(初期弾性率1MPa以下、伸び200%以上)、且つ高い誘電率(誘電率6.0以上)を有することがわかる。この中でも特にチタン酸バリウム、又はチタン酸ストロンチウムを添加することにより、誘電率が向上すること(誘電率10.0以上)がわかる。
表3は、上述の第3、又は第4のグラフト鎖による誘電率と初期弾性率の関係を表す表である。表3から、本発明の材料に第3又は第4のグラフト鎖を付与したものについても、優れた柔軟性を有することがわかる(初期弾性率10MPa以下、伸び100%以上)。またグラフト鎖を付与していないD−3(誘電率6.3)に比べて、グラフト鎖を付与することによって更に高い誘電率(8.0以上)を有することがわかる。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
図1
図2