特許第5701860号(P5701860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5701860第四級アンモニウムアミドおよび/またはエステル塩
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701860
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】第四級アンモニウムアミドおよび/またはエステル塩
(51)【国際特許分類】
   C10L 10/04 20060101AFI20150326BHJP
   C10L 1/22 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   C10L10/04
   C10L1/22
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-510858(P2012-510858)
(86)(22)【出願日】2010年5月6日
(65)【公表番号】特表2012-526897(P2012-526897A)
(43)【公表日】2012年11月1日
(86)【国際出願番号】US2010033806
(87)【国際公開番号】WO2010132259
(87)【国際公開日】20101118
【審査請求日】2013年4月15日
(31)【優先権主張番号】61/178,509
(32)【優先日】2009年5月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591131338
【氏名又は名称】ザ ルブリゾル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100062409
【弁理士】
【氏名又は名称】安村 高明
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンソン, ポール アール.
(72)【発明者】
【氏名】レイ, ジェームズ シー.
(72)【発明者】
【氏名】モートン, デイビッド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュ, ジェームズ エイチ.
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−544043(JP,A)
【文献】 特開2005−213452(JP,A)
【文献】 特開2006−144011(JP,A)
【文献】 特開昭56−008380(JP,A)
【文献】 米国特許第04248719(US,A)
【文献】 米国特許第04564372(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0081432(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第10019142(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/00− 1/32
C10L 10/04
C10M
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多くの量のアミド基を含む第四級アンモニウム塩清浄剤を含む組成物であって、前記第四級アンモニウム塩清浄剤は、
(a)非四級化清浄剤であって、多くの量のアミド基を含み、第三級アミン官能基を持つ非四級化清浄剤;および
(b)四級化剤
の反応生成物を含み、
ここで、(a)の前記非四級化清浄剤は、ヒドロカルビル置換ジカルボン酸アシル化剤と、前記アシル化剤と縮合できる窒素原子を持ち、さらに少なくとも1つの第三級アミノ基を持つ化合物との縮合生成物を含み、
前記ヒドロカルビル置換ジカルボン酸アシル化剤は、ポリオレフィンと、α,β−一価不飽和C〜C10酸無水物との反応生成物であり、
前記アシル化剤と縮合できる窒素原子を持ち、さらに少なくとも1つの第三級アミノ基を持つ化合物は、1−アミノピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、1−(3−アミノプロピル)−2−ピペコリン、1−メチル−(4−メチルアミノ)ピペリジン、4−(1−ピロリジニル)ピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、2−(2−アミノエチル)−1−メチルピロリジン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジブチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’−エチルエチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’−メチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリエチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,2,2−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、2−アミノ−5−ジエチルアミノペンタン、N,N,N’,N’−テトラエチルジエチレントリアミン、3,3’−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)、またはこれらの組み合わせを含む
組成物。
【請求項2】
(a)と(b)との前記反応中にプロトン性溶媒が存在し、(a)と(b)との前記反応は、前記非四級化清浄剤の構造に存在する任意の酸基以外に任意の追加酸成分を本質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記プロトン性溶媒は1〜10個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルコールを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロカルビル置換ジカルボン酸アシル化剤はポリイソブチレンコハク酸無水物である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記アシル化剤と縮合できる窒素原子を持つ前記化合物は、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
(b)の前記四級化剤はエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の組成物を含み、さらに燃料を含み、任意にさらに前記第四級アンモニウム塩清浄剤以外の1種または複数種の燃料添加剤を含む、燃料組成物。
【請求項8】
内燃機関または開放火炎バーナーを運転する方法であって、前記機関またはバーナーに請求項に記載の燃料組成物を供給することを含む、方法。
【請求項9】
多くの量のアミド基を含有する第四級アンモニウム塩清浄剤の製造プロセスであって、
I. (a)非四級化清浄剤であって、多くの量のアミド基を含み、第三級アミン官能基を持つ非四級化清浄剤を(b)四級化剤と反応させること;
それにより前記四級アンモニウム塩清浄剤を得ること;
を含み、
ここで、(a)の前記非四級化清浄剤は、ヒドロカルビル置換ジカルボン酸アシル化剤と、前記アシル化剤と縮合できる窒素原子を持ち、さらに少なくとも1つの第三級アミノ基を持つ化合物との縮合生成物を含み、
前記ヒドロカルビル置換ジカルボン酸アシル化剤は、ポリオレフィンと、α,β−一価不飽和C〜C10酸無水物との反応生成物であり、
前記アシル化剤と縮合できる窒素原子を持ち、さらに少なくとも1つの第三級アミノ基を持つ化合物は、1−アミノピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、1−(3−アミノプロピル)−2−ピペコリン、1−メチル−(4−メチルアミノ)ピペリジン、4−(1−ピロリジニル)ピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、2−(2−アミノエチル)−1−メチルピロリジン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジブチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’−エチルエチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’−メチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリエチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,2,2−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、2−アミノ−5−ジエチルアミノペンタン、N,N,N’,N’−テトラエチルジエチレントリアミン、3,3’−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)、またはこれらの組み合わせを含み
(a)と(b)との前記反応中にプロトン性溶媒が存在し、(a)と(b)との前記反応は、前記非四級化清浄剤の構造に存在する任意の酸基以外に任意の追加酸成分を含まない
プロセス。
【請求項10】
(b)の前記四級化剤は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、またはこれらの組み合わせを含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記プロセスは、
II. (a)の前記混合物を約50℃〜約130℃の温度に加熱すること;
III. 前記反応が終了するまで保持すること;
それにより前記四級アンモニウム塩清浄剤を得ること
をさらに含む、請求項または10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
多くの量のアミド基を含む第四級アンモニウム塩清浄剤を含む組成物であって、前記四級アンモニウム塩清浄剤は、プロトン性溶媒の存在下での以下:
(a)非四級化清浄剤であって、多くの量のアミドを含み、第三級アミン官能基を持つ非四級化清浄剤;および
(b)四級化剤
の反応生成物を含み、
ここで、(a)の前記非四級化清浄剤は、ヒドロカルビル置換ジカルボン酸アシル化剤と、前記アシル化剤と縮合できる窒素原子を持ち、さらに少なくとも1つの第三級アミノ基を持つ化合物との縮合生成物を含み、
前記ヒドロカルビル置換ジカルボン酸アシル化剤は、ポリオレフィンと、α,β−一価不飽和C〜C10酸無水物との反応生成物であり、
前記アシル化剤と縮合できる窒素原子を持ち、さらに少なくとも1つの第三級アミノ基を持つ化合物は、1−アミノピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、1−(3−アミノプロピル)−2−ピペコリン、1−メチル−(4−メチルアミノ)ピペリジン、4−(1−ピロリジニル)ピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、2−(2−アミノエチル)−1−メチルピロリジン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジブチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’−エチルエチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’−メチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリエチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,2,2−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、2−アミノ−5−ジエチルアミノペンタン、N,N,N’,N’−テトラエチルジエチレントリアミン、3,3’−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)、またはこれらの組み合わせを含む
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第四級アンモニウムアミドおよびエステル塩と、それを製造するプロセスと、ディーゼル燃料および燃料油などの燃料におけるその使用を含む、その添加剤としての使用とに関する。本発明は特に、燃料における清浄剤としての第四級アンモニウムアミドおよびエステル塩の使用と、第四級アンモニウムアミドおよびエステル塩の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素燃料は一般に、多くのデポジット形成物質を含んでいる。内燃機関(ICE:internal combustion engine)に使用される場合、デポジットは、燃料と接触する機関(engine)の圧縮領域上およびその周辺に形成される傾向にある。自動車機関のデポジットは、機関吸気バルブに蓄積し、ガス燃料混合物の燃焼室への流れを次第に限定し、バルブの固着を引き起こす恐れがある。一般に吸気バルブのデポジットには、ヘビーデポジットおよびシンデポジットの2種類がある。これらの異なる種類のデポジットは、若干異なる形で燃料の性能および機関に影響を与える。ヘビーデポジットは炭素質であり、外見は油状である。ヘビーデポジットは、バルブを通る流れを制限し、結果として機関の最大出力を減少させ、燃料経済性を低下させて排出物を増大させる。シンデポジットは、機関の始動時に問題を引き起こし、排出物を増大させる傾向がある。
【0003】
機関がデポジットに対してより敏感になると、機関デポジットの形成を抑制し、さらに機関デポジットを除去しやすくすることにより機関の性能および排出物を改善させることを目的として、燃料組成物に清浄剤を加えることが、一般に行われるようになった。
【0004】
燃料組成物の添加剤として、ある種のポリイソブチルスクシンイミド誘導四級化PIB/アミン分散剤/清浄剤を使用することが知られている。ポリイソブチルスクシンイミドは、ポリイソブチレンスクシンイミドと記載されることもある。これらの四級化分散剤/清浄剤は、プロピレンオキシドなどの四級化剤(quaternizing agent)によりアルキル化できる、すなわち四級化できるペンダント第三級アミン部位を持つ伝統的なPIB/アミン燃料添加剤化合物から誘導される。これらの添加剤の例は、特許文献1に開示されている。
【0005】
しかしながら、上述の利点を提供しつつ、熱安定性および/または油の相溶性の特性の向上をも示す添加剤が求められている。さらに、上述の利点をより効率的に提供し、したがって添加剤をより低い添加率(treat rate)で使用しつつ、同じ性能を獲得することにより、添加剤のみならず、添加剤を使用した組成物の費用および環境影響を抑制できる添加剤も求められている。さらに、上述の利点を提供しつつ、より少ないエネルギーで製造できる添加剤も求められている。
【0006】
本発明は、ポリイソブチルスクシンイミド誘導四級化清浄剤など伝統的なPIB/アミン清浄剤に比べ著しく改善された清浄剤の新しいクラスを扱う。今回、ポリイソブテニルスクシンアミドおよび/またはエステルから誘導される四級化PIB/アミンの新しいクラスが発見された。これらの添加剤は、イミド変異体より熱的に安定であり、より少ないエネルギープロセスにより製造され得る。本発明の四級化添加剤は、同様のポリイソブテニルスクシンイミド四級化添加剤と少なくとも同等の性能を発揮するのみならず、その性能をより効率的に、ならびに/または、熱安定性および/もしくは油の相溶性を向上させて発揮することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0307698号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第四級アンモニウムアミドおよび/または第四級アンモニウムエステル塩清浄剤を含む組成物であって、四級化清浄剤が、(a)第三級アミン官能基を持つ非四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤と、(b)四級化剤との反応生成物を含む、組成物を提供する。これらの添加剤は、上記で論じたイミド基を含む材料ではなく、第三級アミン官能基ならびにアミドおよび/またはエステル基を持つ分散剤/清浄剤である非四級化ポリイソブチルスクシンアミドおよび/またはエステルから誘導してもよい。
【0009】
本発明はさらに、これらの添加剤と、それらの製造方法であって、プロトン性溶媒の存在下で終了し、および/または、清浄剤自体の構造に存在する酸基(単数または複数)以外に任意の追加酸成分を本質的に含まないか、または含まない反応により、添加剤を形成する製造方法と、を提供する。本発明は、非四級化清浄剤が、ヒドロカルビル置換アシル化剤と、そのアシル化剤と縮合できる酸素または窒素原子を持つ化合物との縮合生成物である実施形態を含む。
【0010】
本発明はさらに、本明細書に記載の添加剤を含む燃料および添加剤濃縮組成物であって、燃料、および任意に1種または複数種の追加の燃料添加剤を含んでいてもよい組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、本明細書に記載の添加剤の製造プロセスであって、第三級アミン官能基を持つ非四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤を四級化剤と反応させ、それにより四級化清浄剤を得ることを含む、プロセスも提供する。
【0012】
本発明のプロセスは、(1)アミン官能基を持つ非四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤と、四級化剤と、プロトン性溶媒とを混合するステップ;(2)混合物を約50℃〜約130℃の温度に加熱するステップ;(3)反応を終了させるステップ;それにより四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤を得るステップを含んでもよい。いくつかの実施形態では、このプロセスは、酢酸など任意の酸反応物の添加を含まない。こうした酸反応物が存在しなくても、生成物が得られる。
【0013】
本発明はさらに、内燃機関および/または開放火炎バーナーの運転方法であって、機関および/または開放火炎バーナーに本明細書に記載の燃料組成物を供給することを含む、方法も提供する。本発明はさらに、これらの添加剤の燃料清浄剤としての使用も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、非限定的な例示によって様々な好ましい特徴および実施形態について記載する。
【0015】
第四級アンモニウムアミドおよび/またはエステル塩清浄剤
本発明の第四級アミドおよび/またはエステル清浄剤は、(a)第三級アミン官能基を持つ非四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤と、(b)四級化剤との反応生成物と説明してもよい。いくつかの実施形態では、非四級化清浄剤は、(i)ヒドロカルビル置換アシル化剤と、(ii)前記アシル化剤と縮合できる酸素または窒素原子を持ち、さらに少なくとも1つの第三級アミノ基を持つ化合物との縮合生成物である。
【0016】
a. 非四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤
本発明に使用するのに好適な非四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤は、(i)ヒドロカルビル置換アシル化剤と、(ii)前記アシル化剤と縮合できる酸素または窒素原子を持ち、さらに少なくとも1つの第三級アミノ基を持つ化合物との縮合生成物を含み、得られた清浄剤は、少なくとも1つの第三級アミノ基を持ち、さらにアミド基および/またはエステル基を含む。典型的には、前記アシル化剤と縮合できる酸素または窒素原子を持つ化合物により、得られた清浄剤が、アミド基を含むか、またはエステル基を含むかどうかは決定された(determined)。いくつかの実施形態では、非四級化清浄剤およびそれから得られた四級化清浄剤は、イミド基をまったく含まない。いくつかの実施形態では、非四級化清浄剤およびそれから得られた四級化清浄剤は、エステル基をまったく含まない。こうした実施形態では、本清浄剤は、アミド基を少なくとも1つ、または1つのみ含む。
【0017】
ヒドロカルビル置換アシル化剤は、長鎖炭化水素、一般に(i)フマル酸、イタコン酸、マレイン酸などのα,β−一価不飽和C〜C10ジカルボン酸;(ii)無水物などの(i)の誘導体、もしくは(i)とC〜Cアルコールから得られるモノまたはジエステル;(iii)アクリル酸およびメタクリル酸などのα,β−一価不飽和C〜C10モノカルボン酸;または(iv)(iii)とC〜Cアルコールから得られるエステルなどの(iii)の誘導体など一価不飽和カルボン酸反応物と反応させたポリオレフィンと、下記一般式で表されるオレフィン結合を含む任意の化合物との反応生成物であってもよい。
(R)(R)C=C(R)(CH(R)(R)) (I)
式中、RおよびRは各々独立に水素、または炭化水素系基であり;R、RおよびRは各々独立に水素、または炭化水素系基であり、好ましくは少なくとも1つは少なくとも20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である。
【0018】
一価不飽和カルボン酸と反応させるのに好適なオレフィンポリマーには、多いモル量のC〜C20、たとえばC〜Cモノオレフィンを含むポリマーがある。こうしたオレフィンとして、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンテン、オクテン−1、またはスチレンが挙げられる。このポリマーは、ポリイソブチレンなどのホモポリマーのほか、エチレンとプロピレン;ブチレンとイソブチレン;またはプロピレンとイソブチレンとのコポリマーなど2種以上のこうしたオレフィンのコポリマーであってもよい。他のコポリマーとして、少ないモル量、たとえば1〜10モルパーセントのコポリマーのモノマーがC〜C18ジオレフィンであるもの、たとえばイソブチレンとブタジエンとのコポリマー、またはエチレンと、プロピレンと、1,4−ヘキサジエンとのコポリマーが挙げられる。
【0019】
一実施形態では、式(I)の少なくとも1つのR基は、ポリブテン、すなわち1−ブテン、2−ブテンおよびイソブチレンなどのCオレフィンのポリマーから誘導される。好適なCポリマーとして、ポリイソブチレンがある。別の実施形態では、式(I)の少なくとも1つのR基は、エチレン−プロピレン−ジエンポリマーなどのエチレン−αオレフィンポリマーから誘導される。エチレン−αオレフィンコポリマーおよびエチレン−低級オレフィン−ジエンターポリマーについては、欧州特許第0 279 863号、および以下の米国特許第3,598,738号;同第4,026,809号;同第4,032,700号;同第4,137,185号;同第4,156,061号;同第4,320,019号;同第4,357,250号;同第4,658,078号;同第4,668,834号;同第4,937,299号;同第5,324,800号など多くの特許に記載されている。
【0020】
別の実施形態では、式(I)のオレフィンの結合は主に、以下の式によって表されるビニリデン基である。
【0021】
【化1】
式中、Rはヒドロカルビル基である。
【0022】
【化2】
式中、Rはヒドロカルビル基である。
【0023】
一実施形態では、式(I)のビニリデン含量は、末端ビニリデン基を有し少なくとも約30モルパーセントを構成しても、末端ビニリデン基を有し少なくとも約50モルパーセントを構成しても、または末端ビニリデン基を有し少なくとも約70モルパーセントを構成してもよい。こうした材料、およびそれらの調製方法については、米国特許第5,071,919号;同第5,137,978号;同第5,137,980号;同第5,286,823号、同第5,408,018号、同第6,562,913号、同第6,683,138号、同第7,037,999号、ならびに米国特許出願公開第20040176552A1号、同第20050137363号、および同第20060079652A1号に記載されている。こうした生成物は、BASFからGLISSOPAL(商標)という商標名で、さらにTexas Petrochemical LPからTPC 1105(商標)およびTPC 595(商標)という商標名で市販されている。
【0024】
一価不飽和カルボン酸と式(I)の化合物との反応からヒドロカルビル置換アシル化剤を製造する方法は、当該技術分野においてよく知られており、熱「エン」反応を起こさせる米国特許第3,361,673号および同第3,401,118号;米国特許第3,087,436号;同第3,172,892号;同第3,272,746号、同第3,215,707号;同第3,231,587号;同第3,912,764号;同第4,110,349号;同第4,234,435号;同第6,077,909号;および同第6,165,235号に開示されている。
【0025】
一実施形態では、ヒドロカルビル置換アシル化剤は、ジカルボン酸アシル化剤である。これらの実施形態のいくつかでは、ヒドロカルビル置換アシル化剤は、ポリイソブチレンコハク酸無水物を含む。
【0026】
別の実施形態では、ヒドロカルビル置換アシル化剤は、式中、R、RおよびRが各々独立にH、またはヒドロカルビル基であり;Rが二価のヒドロカルビレン基であり;nが0または1である、以下の式:
(RC(O)(RC(O))R (IV)
および
【0027】
【化3】
で表される少なくとも1種のカルボン酸反応物と、式(I)により表されるオレフィン結合を含む任意の化合物との反応から製造される。化合物、およびこれらの化合物の製造プロセスについては、米国特許第5,739,356号;同第5,777,142号;同第5,786,490号;同第5,856,524号;同第6,020,500号;および同第6,114,547号に開示されている。
【0028】
なお他のヒドロカルビル置換アシル化剤を使用してもよいが、中には生成される安定な第四級塩が少なくなるものもある。一実施形態では、このアシル化剤は、式(I)の化合物と式(IV)の化合物または(V)との反応物であり、この反応は任意に、ホルムアルデヒドなど少なくとも1種のアルデヒドおよび/もしくはケトン、またはその反応性等価物の存在下で行ってもよい。こうした化合物、およびそれを製造するプロセスについては、米国特許第5,840,920号;同第6,147,036号;および同第6,207,839号に開示されている。別の実施形態では、ヒドロカルビル置換アシル化剤は、メチレンビス−フェノールアルカン酸化合物、(i)芳香族化合物と、(ii)上述の式(IV)および(V)の化合物など少なくとも1種のカルボン酸反応物との縮合生成物をさらに含んでもよい。(i)と(ii)との反応は、少なくとも1種のアルデヒドおよび/またはケトンの存在下で行ってもよい。この反応はさらに、有機スルホン酸、ヘテロポリ酸および鉱酸などの酸性触媒の存在下で行ってもよい。こうした化合物、およびそれを製造するプロセスについては、米国特許第3,954,808号;同第5,336,278号;同第5,458,793号;同第5,620,949号;同第5,827,805号;および同第6,001,781号に開示されている。ヒドロカルビル置換アシル化剤の他の製造方法については、米国特許第5,912,213号;同第5,851,966号;および同第5,885,944号で確認できる。
【0029】
本発明の添加剤の調製に使用する非四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤自体は、上述のアシル化剤を、アシル化剤と縮合できる酸素または窒素原子を持ち、さらに少なくとも1つの第三級アミノ基を持つ化合物と反応させると、形成される。
【0030】
一実施形態では、アシル化剤と縮合できる酸素または窒素原子を持ち、さらに第三級アミノ基を持つ化合物は、以下の式で表される。
【0031】
【化4】
式中、Xは1〜4個の炭素原子を含むアルキレン基であり、R、RおよびRはヒドロカルビル基である;および
【0032】
【化5】
式中、Xは、1〜4個の炭素原子を含むアルキレン基であり、RおよびRはヒドロカルビル基である。
【0033】
アシル化剤と縮合できる窒素または酸素を含み、さらに第三級アミノ基を持つ化合物の例として、1−アミノピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、1−(3−アミノプロピル)−2−ピペコリン、1−メチル−(4−メチルアミノ)ピペリジン、4−(1−ピロリジニル)ピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、2−(2−アミノエチル)−1−メチルピロリジン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’−エチルエチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’−メチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリエチルエチレンジアミン、3−ジメチルアミノプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、3−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン,N,N,2,2−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、2−アミノ−5−ジエチルアミノペンタン、N,N,N’,N’−テトラエチルジエチレントリアミン、3,3’−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)、またはこれらの組み合わせがあるが、これに限定されるものではない。そうした実施形態では、得られる添加剤は、アミンおよび第四級アンモニウム塩を含む清浄剤である第四級アンモニウムアミド塩を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、本発明の添加剤は、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、またはこれらの組み合わせから誘導される。
【0035】
窒素または酸素を含む化合物は、1−(3−アミノプロピル)イミダゾールおよび4−(3−アミノプロピル)モルホリン、1−(2−アミノエチル)ピペリジンなどのアミノアルキル置換複素環化合物、3,3−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、3,3−アミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)をさらに含んでもよい。
【0036】
アシル化剤と縮合できる窒素または酸素を含み、第三級アミノ基を持つ化合物の別の種類として、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノプロパノール、N,N−ジエチルアミノプロパノール、N,N−ジエチルアミノブタノール、トリイソプロパノールアミン、1−[2−ヒドロキシエチル]ピペリジン、2−[2−(ジメチルアミン)エトキシ]−エタノール、N−エチルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノールなどのアルカノールアミンがあるが、これに限定されるものではない。アルカノールアミンおよび/または同様の材料を使用する実施形態では、得られる添加剤は、エステル基および第四級アンモニウム塩を含む清浄剤である第四級アンモニウムエステル塩を含む。
【0037】
一実施形態では、窒素または酸素を含む化合物は、トリイソプロパノールアミン、1−[2−ヒドロキシエチル]ピペリジン、2−[2−(ジメチルアミン)エトキシ]−エタノール、N−エチルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、またはこれらの組み合わせである。
【0038】
b. 四級化剤
本発明の四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤は、上述の非四級化清浄剤を四級化剤と反応させると、形成される。好適な四級化剤として、選択された硫酸ジアルキル、ハロゲン化ベンジル、ヒドロカルビル置換カルボネート;酸と組み合わせたヒドロカルビルエポキシド、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
一実施形態では、四級化剤は、クロリド、ヨージドまたはブロミドなどのハロゲン化アルキル;アルキルスルホネート;硫酸ジメチルなどの硫酸ジアルキル;スルトン;アルキルホスフェート;C1〜12トリアルキルホスフェートなど;C1〜12ジアルキルホスフェート;ボレート;C1〜12アルキルボレート;亜硝酸アルキル;硝酸アルキル;炭酸ジアルキル;アルカン酸アルキル;O,O−ジ−C1〜12アルキルジチオホスフェート;またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0040】
一実施形態では、四級化剤は、硫酸ジメチルなどの硫酸ジアルキル、N−オキシド、プロパンスルトンおよびブタンスルトンなどのスルトン;塩化メチルおよび塩化エチル、臭化メチルおよび臭化エチル、もしくはヨウ化メチルおよびヨウ化エチル、または塩化ベンジルなどのハロゲン化アルキル、アシルまたはアラアルキル、ならびにヒドロカルビル(またはアルキル)置換カルボネートから誘導してもよい。ハロゲン化アルキルが塩化ベンジルである場合、芳香環は任意にアルキル基またはアルケニル基でさらに置換されている。
【0041】
ヒドロカルビル置換カルボネートのヒドロカルビル(またはアルキル)基は、1基あたり1〜50個、1〜20個、1〜10個または1〜5個の炭素原子を含んでいてもよい。一実施形態では、ヒドロカルビル置換カルボネートは、同一でも、あるいは異なっていてもよい2つのヒドロカルビル基を含む。好適なヒドロカルビル置換カルボネートの例として、炭酸ジメチルまたは炭酸ジエチルが挙げられる。
【0042】
別の実施形態では、四級化剤は、酸と組み合わせた、以下の式で表されるヒドロカルビルエポキシドであってもよい。
【0043】
【化6】
式中、R、R、RおよびRは独立にHであっても、または1〜50個の炭素原子を含む(contain)ヒドロカルビル基であってもよい。ヒドロカルビルエポキシドの例として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、およびこれらの組み合わせがある。一実施形態では、四級化剤は、スチレンオキシドをまったく含まない。
【0044】
いくつかの実施形態では、ヒドロカルビルエポキシドと一緒に使用する酸は、酢酸など別の成分であってもよい。他の実施形態では、たとえばヒドロカルビルアシル化剤がジカルボン酸アシル化剤である場合、別の酸成分を必要としない。そうした実施形態では、清浄剤は、酢酸など別の成分を本質的に含まないか、または含まない反応物を組み合わせて調製しもよく、代わりにヒドロカルビルアシル化剤の酸基に依存する。他の実施形態では、少量の酸成分が存在してもよい。ただし、ヒドロカルビルアシル化剤1モルあたり酸は<0.2モル、あるいはさらに<0.1モルで存在する。
【0045】
ある種の実施形態では、四級化剤に対するアミン官能基を持つ清浄剤のモル比は、1:0.1〜2、または1:1〜1.5、または1:1〜1.3である。
【0046】
四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤を含む組成物
本発明の四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤は、燃料組成物および添加剤濃縮組成物など様々な種類の組成物中で添加剤として使用してもよい。
【0047】
a. 燃料組成物
本発明の四級化清浄剤は、燃料組成物の添加剤として使用してもよい。本発明の燃料組成物は、上述の燃料添加剤および液体燃料を含み、内燃機関または開放火炎バーナーへの燃料供給に有用である。これらの組成物は、1種または複数種の追加添加剤をさらに含んでもよい。これらの任意の添加剤については以下に記載する。いくつかの実施形態では、本発明に使用するのに好適な燃料として、市販されている任意の燃料が挙げられ、いくつかの実施形態では、市販されている任意のディーゼル燃料および/またはバイオ燃料が挙げられる。
【0048】
本発明に使用するのに好適な種類の燃料についての説明は、本発明の添加剤を含む組成物中に存在し得る燃料のみならず、添加剤を含む組成物を加えてもよい燃料および/または燃料添加剤濃縮組成物に関する。
【0049】
本発明に使用するのに好適な燃料は、あまり限定されるものではない。一般に、好適な燃料は通常、周囲条件、たとえば、室温(20〜30℃)で液体であるか、または通常、運転条件で液体である。燃料は、炭化水素燃料でも、非炭化水素燃料でも、またはこれらの混合物でもよい。
【0050】
炭化水素燃料は、ASTM規格D4814により規定されるガソリンでも、またはASTM規格D975により規定されるディーゼル燃料などの石油留出油でもよい。一実施形態では、液体燃料はガソリンであり、別の実施形態では、液体燃料は無鉛ガソリンである。別の実施形態では、液体燃料はディーゼル燃料である。炭化水素燃料は、たとえばフィッシャートロプシュプロセスなどのプロセスにより調製される炭化水素を含むように、ガストゥリキッドプロセスにより調製された炭化水素であってもよい。いくつかの実施形態では、本発明に使用される燃料はディーゼル燃料、バイオディーゼル燃料、またはこれらの組み合わせである。
【0051】
好適な燃料としてさらに、5号および6号燃料油などのより重質な燃料油があり、この燃料油は、残渣燃料油、重質燃料油、および/または加熱炉燃料油とも呼ばれる。こうした燃料は、単独で使用しても、あるいは、より低粘度の混合物を形成ため他の燃料、典型的にはより軽質な燃料と混合してもよい。さらに、一般に船舶用機関に使用されるバンカー燃料も含まれる。これらの種類の燃料は粘度が高く、周囲条件で固体であることがあるけれども、加熱すると液体になり、機関または機関が燃料供給しているバーナーに供給される。
【0052】
非炭化水素燃料は、酸素を含む組成物であってもよい。この組成物は、アルコール、エーテル、ケトン、カルボン酸のエステル、ニトロアルカンまたはこれらの混合物を含み、オキシゲナートと呼ばれることが多い。非炭化水素燃料は、メタノール、エタノール、メチルt−ブチルエーテル、メチルエチルケトン、菜種油メチルエステルおよび大豆油メチルエステルなど植物および動物由来のエステル交換油および/または脂肪、ならびにニトロメタンを含んでいてもよい。
【0053】
炭化水素燃料と非炭化水素燃料との混合物として、たとえば、ガソリンとメタノールおよび/またはエタノールとの混合物、ディーゼル燃料とエタノールとの混合物、ならびにディーゼル燃料と菜種油メチルエステルなどのエステル交換植物油および他の生物由来の燃料との混合物を挙げることができる。一実施形態では、液体燃料は、炭化水素燃料、非炭化水素燃料、またはこれらの混合物中の水エマルジョンである。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態では、液体燃料の硫黄含量は、重量ベースで50,000ppm以下、5000ppm以下、1000ppm以下、350ppm以下、100ppm以下、50ppm以下、または15ppm以下であってもよい。
【0055】
本発明の液体燃料は燃料組成物中に多量に存在し、一般に95重量%より多く、他の実施形態では、97重量%より多く、99.5重量%より多く、99.9重量%より多く、または99.99重量%より多く存在する。
【0056】
b. 添加剤濃縮組成物
添加剤濃縮物は、1種または複数種の添加剤を含み、さらにある種の燃料、油または希釈液もある程度の量含む組成物である。こうした濃縮物はその後、添加剤の取り扱いおよび提供に都合がよいように、他の組成物に加えてもよく、その結果、上述の燃料組成物などの最終組成物が得られる。
【0057】
本発明の添加剤濃縮組成物は、1種または複数種の上述の四級化清浄剤と、上述の燃料、溶媒、希釈油または同様の材料のいずれでもよい任意の希釈液とを含む。こうした組成物は、以下に記載する追加添加剤の1種または複数種をさらに含んでもよい。
【0058】
c. 任意の追加添加剤
本発明の燃料および添加剤組成物は、上述の四級化清浄剤を含み、さらに1種または複数種の追加添加剤も含む。こうした追加の性能添加剤は、内燃機関の種類、およびその機関に使用されている燃料の種類、燃料の質、ならびに機関を運転する使用条件を含むいくつかの因子に応じて、燃料組成物に加えてもよい。
【0059】
追加の性能添加剤として、ヒンダードフェノールもしくはその誘導体および/またはジアリールアミンもしくはその誘導体などの酸化防止剤;腐食抑制剤;ならびに/または、以下に限定されるものではないが、PIBアミン清浄剤/分散剤、スクシンイミド清浄剤/分散剤、ならびにイミド基および第四級アンモニウム塩を含む清浄剤である第四級アンモニウムイミド塩など他の第四級塩清浄剤/分散剤のような、ポリエーテルアミンまたは窒素を含む清浄剤など本発明の燃料添加剤以外の清浄剤/分散剤添加剤を挙げることができる。
【0060】
追加の性能添加剤として、無水マレイン酸とスチレンとのエステル型コポリマーおよび/またはエチレンと酢酸ビニルとのコポリマーなどの低温流動性向上剤;シリコーン油などの抑泡剤および/もしくは消泡剤;ポリアルコキシル化アルコールなどの抗乳化剤;脂肪カルボン酸などの潤滑性剤;以下に限定されるものではないが、ベンゾトリアゾールなどの芳香族トリアゾールもしくはその誘導体といった金属活性低下剤;ならびに/またはスルホコハク酸アルカリ金属塩などのバルブシートリセッション添加剤を挙げることができる。
【0061】
好適な泡止め剤はさらに、ポリジメチルシロキサン、ポリエチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリアクリラートおよびポリメタクリラート、トリメチル−トリフロウロ(triflouro)−プロピルメチルシロキサン、ならびに同種のものを含む。
【0062】
追加添加剤としてはさらに、殺生剤;帯電防止剤、氷結防止剤、鉱油および/またはポリ(α−オレフィン)および/またはポリエーテルなどの流動性付与剤、ならびにオクタンまたはセタン向上剤などの助燃剤を挙げることができる。
【0063】
本発明の燃料添加剤組成物および燃料組成物中に存在してもよい追加の性能添加剤としてはさらに、任意に周知のエステル化触媒の存在下、ジカルボン酸(酒石酸など)および/またはトリカルボン酸(クエン酸など)と、アミンおよび/またはアルコールとを反応させて調製されるジ−エステル、ジ−アミド、エステル−アミドおよびエステル−イミド摩擦調整剤がある。多くの場合、酒石酸、クエン酸またはその誘導体から誘導されるこれらの摩擦調整剤は、分枝しているアミンおよび/またはアルコールから誘導して、その(it)構造内自体に大量の分枝ヒドロカルビル基を持つ摩擦調整剤を得てもよい。こうした摩擦調整剤の調製に使用するのに好適な分枝アルコールの例として、2−エチルヘキサノール、イソトリデカノール、ゲルベアルコール、およびこれらの混合物がある。
【0064】
追加の性能添加剤として、ヒドロカルビル置換コハク酸無水物とポリ(アルキレンアミン)との縮合生成物であるスクシンイミドなどTBNが高い窒素含有清浄剤/分散剤を挙げることができる。スクシンイミド清浄剤/分散剤については、米国特許第4,234,435号および同第3,172,892号により詳細に記載されている。
【0065】
窒素含有清浄剤/分散剤のもう1つのクラスとしてマンニッヒ塩基がある。これは、比較的高分子量のアルキル置換フェノール、アルキレンポリアミン、およびホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合により形成される材料である。こうした材料については、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。他の窒素含有清浄剤/分散剤としては、ポリマーに分散性特性を付与する窒素含有極性官能基を持つ炭化水素系ポリマーであるのが一般的である高分子分散剤添加剤が挙げられる。
【0066】
TBNが高い窒素含有分散剤の調製には、通常アミンを利用する。1種または複数種のポリ(アルキレンアミン)を使用してもよく、そうしたポリ(アルキレンアミン)は、3〜5個のエチレン単位および4〜6個の窒素単位を持つ1種または複数種のポリ(エチレンアミン)を含んでいてもよい。こうした材料として、トリエチレンテトラミン(TETA:triethylenetetramine)、テトラエチレンペンタミン(TEPA:tetraethylenepentamine)およびペンタエチレンヘキサミン(PEHA:pentaethylenehexamine)がある。こうした材料は通常、一定数のエチレン単位および窒素原子を含む様々な異性体の混合物、ならびに種々の環状構造など様々な異性体構造の混合物として市販されている。同様に、ポリ(アルキレンアミン)は、この産業界においてエチレンアミンスティルボトムとして知られる比較的高分子量のアミンを含んでもよい。
【0067】
追加の性能添加剤は、第四級アンモニウムイミド塩を含んでもよい。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、第四級アンモニウムイミド塩を実質的に含まないか、または含まない。第四級アンモニウムイミド塩は、イミド塩の調製に使用する非四級化清浄剤/分散剤が、本発明により規定されるアミドおよび/またはエステル基ではなく、イミド基を含むこと以外は、本発明の第四級アンモニウムアミドおよび/またはエステル塩と同様である。
【0068】
追加の性能添加剤はそれぞれ、本発明の添加剤および/または燃料組成物に直接加えてもよいが、一般には燃料添加剤と混合して添加剤組成物または濃縮物を形成し、次いでこれを燃料と混合し、燃料組成物を得る。燃料組成物については上記により詳細に記載されている。
【0069】
四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤の調製プロセス
本発明は、四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤の調製プロセスであって、(a)第三級アミン官能基を持つ非四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤と、(b)四級化剤とを反応させ;それにより四級化清浄剤を得ることを含む調製プロセスを提供する。
【0070】
本発明(the present in invention)のプロセスは、四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤の調製プロセスであって、(1)(a)アミン官能基を持つ非四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤と、(b)四級化剤と、(c)いくつかの実施形態ではメタノールを含まないプロトン性溶媒とを混合するステップ;(2)この混合物を50℃〜130℃に加熱するステップ;ならびに(3)反応が終了するまで保持し;それにより四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤を得るステップを含む、調製プロセスとして説明することもできる。一実施形態では、この反応を80℃未満または70℃未満(less then)の温度で行う。他の実施形態では、この反応混合物を約50℃〜120℃、80℃または70℃の温度に加熱する。ヒドロカルビルアシル化剤がモノカルボン酸から誘導されるなお他の実施形態では、反応温度は70℃〜130℃であってもよい。ヒドロカルビルアシル化剤がジカルボン酸から誘導される他の実施形態では、反応温度は50℃〜80℃でも、または50℃〜70℃でもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、酢酸など任意の酸反応物を添加することを含まない。こうした実施形態では、別の酸反応物が存在しなくても、塩生成物が得られる。
【0072】
上記のようないくつかの実施形態では、非四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤は、ヒドロカルビル置換アシル化剤と、前記アシル化剤と縮合できる酸素または窒素原子、さらに少なくとも1つの第三級アミノ基を持つ化合物との縮合生成物である。酸素または窒素原子を持つ好適な四級化剤および化合物については上述してある。
【0073】
a. プロトン性溶媒
本発明の添加剤は、プロトン性溶媒の存在下で誘導してもよい。いくつかの実施形態では、これらの添加剤の調製に使用するプロセスは、メタノールを実質的に含まないか、または含まない。メタノールを実質的に含まないとは、反応混合物中のメタノールが0.5重量パーセント未満、0.1重量パーセント未満または0.05重量パーセント未満であることを意味することがあり、メタノールを完全に含まないことを意味することもある。
【0074】
好適なプロトン性溶媒は、比誘電率が9を超える溶媒を含む。一実施形態では、プロトン性溶媒は、1つ以上のヒドロキシル(−OH)官能基を含む化合物を含み、水を含んでもよい。
【0075】
一実施形態では、溶媒は、グリコールおよびグリコールエーテルである。2〜12個の炭素原子、または4〜10個もしくは6〜8個の炭素原子を含むグリコール、およびそのオリゴマー(たとえば、二量体、三量体および四量体)は一般に使用するのに好適である。例示的グリコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよび同種のもの、ならびにこれらのオリゴマーおよび高分子誘導体および混合物がある。例示的グリコールエーテルとして、プロピレングリコール、エチレングリコールのC〜Cアルキルエーテル、ならびにメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはヘキシルのジ、トリおよびテトラグリコールエーテルなどこれらのオリゴマーがある。好適なグリコールエーテルとして、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールジエチレングリコール、トリエチレングリコールのエーテル;エチルジグリコールエーテル、ブチルジグリコールエーテル、メトキシトリグリコール、エトキシトリグリコール、ブトキシトリグリコール、メトキシテトラグリコール、ブトキシテトラグリコールがある。
【0076】
本発明に使用するのに好適な溶媒としてはさらに、ある種のアルコールが挙げられる。一実施形態では、これらのアルコールは、少なくとも2個の炭素原子、他の実施形態では、少なくとも4個、少なくとも6個または少なくとも8個の炭素原子を含む。別の実施形態では、本発明の溶媒は、2〜20個の炭素原子、4〜16個の炭素原子、6〜12個の炭素原子、8〜10個の炭素原子、またはちょうど8個の炭素原子を含む。これらのアルコールは通常、2−(C1〜4アルキル)置換基、すなわち、メチル、エチル、またはプロピルもしくはブチルの任意の異性体を有する。好適なアルコールの例として、2−メチルヘプタノール、2−メチルデカノール、2−エチルペンタノール、2−エチルヘキサノール、2−エチルノナノール、2−プロピルヘプタノール、2−ブチルヘプタノール、2−ブチルオクタノール、イソオクタノール、ドデカノール、シクロヘキサノール、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、2−メチルプロパン−2−オール、2−メチルプロパン−1−オール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、ペンタノールおよびその異性体、ならびにこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、本発明の溶媒は、2−エチルヘキサノール、2−エチルノナノール、2−プロピルヘプタノール、またはこれらの組み合わせである。一実施形態では、本発明の溶媒は、2−エチルヘキサノールを含む。
【0077】
溶媒は、市販されているアルコール、またはこうしたアルコールの混合物のいずれであってもよく、さらにこうしたアルコール、および水と混合したアルコールの混合物を含む。いくつかの実施形態では、存在する水の量は、溶媒混合物の1重量パーセントを超えてもよい。他の実施形態では、溶媒混合物は、微量の水を含んでもよく、含水量は1または0.5重量パーセント未満である。
【0078】
アルコールは、脂肪族でも、脂環式でも、芳香族でも、または複素環式でもよく、たとえば脂肪族置換脂環式アルコール、脂肪族置換芳香族アルコール、脂肪族置換複素環式アルコール、脂環式置換脂肪族アルコール、脂環式置換芳香族アルコール、脂環式置換複素環式アルコール、複素環式置換脂肪族アルコール、複素環式置換脂環式アルコール、および複素環式置換芳香族アルコールがある。
【0079】
理論に拘泥するわけではないが、酸からのイオンおよびプロトンの解離を促進するには極性プロトン性溶媒が必要とされると考えられる。この解離には、アミン官能基を持つ清浄剤が最初に四級化剤と反応する際に形成されるイオンをプロトン化する必要がある。四級化剤がアルキルエポキシドである場合、得られるイオンは、不安定なアルコキシドイオンと考えられる。解離により、反応中に形成される第四級アンモニウムイオンを安定化する働きをする対イオンが添加剤の酸基から生じ、より安定な生成物が得られる。
【0080】
溶媒は、一組の実施形態では、アミン官能基を持つ清浄剤の量と極性溶媒の量との重量比が、20:1〜1:20;または10:1〜1:10であるように存在してもよい。追加の実施形態では、清浄剤と溶媒との重量比は、1:10〜1:15;15:1〜10:1;または5:1〜1:1であってもよい。
【0081】
産業上の利用性
一実施形態では、本発明のプロセスは、四級化アミドおよび/またはエステル清浄剤を生成する。四級化清浄剤は、内燃機関および/または開放火炎バーナーに使用する燃料に使われる添加剤として使用してもよい。
【0082】
内燃機関は、火花点火機関および圧縮点火機関;2ストロークサイクルまたは4スロークサイクル;直接噴射、間接噴射、ポート噴射およびキャブレターにより供給される液体燃料;コモンレールシステムおよびユニットインジェクターシステム;ライトデューティー機関(たとえば乗用車)およびヘビーデューティー機関(たとえば商用トラック);ならびに炭化水素および非炭化水素燃料およびこれらの混合物を燃料とする機関を含む。機関は、EGRシステム;三元触媒、酸化触媒、NOx吸収材および触媒、触媒担持型パティキュレートトラップおよび任意に燃料添加触媒を利用した非触媒担持型パティキュレートトラップなどの後処理;可変バルブタイミング;ならびに噴射時期および噴射率形状といった要素を搭載した統合型排出システムの一部であってもよい。
【0083】
開放火炎バーナーの燃焼は、液体燃料の燃焼のために装備されたどのような開放火炎燃焼器であってもよい。こうした燃焼器は、家庭用、商業用および工業用バーナーを含む。工業用バーナーには、燃料を適切に処理および霧化するために予熱する必要があるものがある。さらに、石油火力燃焼ユニット、石油火力発電設備、燃焼加熱器およびボイラー、ならびに深喫水船など船舶および海洋分野に使用されるボイラーがある。発電設備、用役設備、ならびに大型の定置および船舶用機関のボイラーもある。開放火炎燃料燃焼器は、ロータリーキルン焼却炉、流動層キルン、セメントキルンおよび同種のものなどの焼却炉であってもよい。さらに、鋼およびアルミニウム鍛造炉も含まれる。開放火炎燃焼器は、排ガス再循環システムを装備していてもよい
上述の添加剤は、燃料組成物中の清浄剤として使用する以外に、潤滑油組成物中の分散剤型添加剤として使用してもよい。こうした潤滑組成物は、少量の、本明細書に記載の第四級アンモニウム塩、および大量の潤滑粘度の油を含んでいてもよい。添加剤が存在してもよい具体的なレベルについては、燃料組成物に関する上述のレベルと同じである。潤滑組成物は、上述の任意の追加添加剤をさらに含んでもよい。
【0084】
本明細書で使用する場合、「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者によく知られた通常の意味で使用される。具体的には、この用語は、炭素原子が分子の残部に直接結合し、主として炭化水素の特性を持つ基をいう。ヒドロカルビル基の例として、炭化水素置換基、すなわち、脂肪族置換基(たとえば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式置換基(たとえば、シクロアルキル、シクロアルケニル)、ならびに芳香族置換芳香族置換基、脂肪族置換芳香族置換基および脂環式置換芳香族置換基のほか、分子の別の部分を介して環が完成する環状置換基(たとえば、2つの置換基が一緒になって環を形成する);置換炭化水素置換基、すなわち、本発明の文脈において、置換基の主な炭化水素特性を変化させない非炭化水素基(たとえば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシ)を含む置換基;ヘテロ置換基、すなわち、本発明の文脈において、主に炭化水素特性を持ちながらも、本来ならば炭素原子からなる環または鎖中に炭素以外の原子を含む置換基がある。ヘテロ原子は硫黄、酸素、窒素を含み、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する。一般に、ヒドロカルビル基には炭素原子10個ごとに2つ以下、好ましくは1つ以下の非炭化水素置換基が存在し、典型的には、ヒドロカルビル基には非炭化水素置換基が存在しない。
【0085】
上述の材料の一部は、最終配合物中で相互作用し得るため、最終配合物の成分が最初に加えた成分と異なることがあることが知られている。たとえば、(たとえば、清浄剤の)金属イオンは、他の分子の他の酸性またはアニオン性部位に移動することがある。こうして形成された生成物は、本発明の組成物をその使用目的で利用して形成される生成物を含め、簡単に説明できない場合がある。しかしながら、こうした修飾体および反応生成物はすべて本発明の範囲内に含まれ、本発明は、上述の成分を混合して調製した組成物を包含する。
【実施例】
【0086】
本発明について、以下の例により詳細に説明する。実施例は本発明を説明するために提供するものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0087】
準備材料A
ポリイソブチレンコハク酸無水物(500g)を、それ自体、数平均分子量1000の高分子ビニリデンポリイソブチレンと無水マレイン酸とを反応させて調製し、70℃に加熱し、スターラー、冷却器、サブラインの添加管に連結したフィードポンプ、窒素ライン、および熱電対/温度制御システムを備えたジャケット付き反応槽に仕込む。反応槽にヘプタン(76.9グラム)を加え、次いで反応温度を70℃に保持しながら、ジメチルアミノプロピルアミン(52.3g)を徐々に加える。添加が終了したら、反応槽を70℃で1時間保持する。得られる生成物、非四級化スクシンアミド清浄剤を冷却して集める。
【0088】
準備材料B
ポリイソブチレンコハク酸無水物(100pbw)を、それ自体、数平均分子量1000の高分子ビニリデンポリイソブチレンと無水マレイン酸とを反応させて調製し、80℃に加熱し、スターラー、冷却器、サブラインの添加管に連結したフィードポンプ、窒素ライン、および熱電対/温度制御システムを備えたジャケット付き反応槽に仕込む。反応槽を100℃に加熱する。バッチ温度を120℃未満に維持しながら、反応物にジメチルアミノプロピルアミン(10.9pbw)を8時間の期間にわたって仕込む。次いで反応混合物を150℃に加熱し、温度で4時間維持する。得られる生成物、非四級化スクシンイミド清浄剤を冷却して集める。
【0089】
比較例1。
【0090】
準備材料B、非四級化スクシンイミド清浄剤(100pbw)をデッキスケール反応槽に仕込む。この槽に酢酸(5.9pbw)および2−エチルヘキサノール(38.4pbw)を加え、混合物を撹拌し、75℃に加熱する。反応温度を75℃に保持しながら、反応槽にプロピレンオキシド(8.7pbw)を4時間にわたって加える。このバッチを温度で4時間保持する。主に四級化スクシンイミド清浄剤である生成物を冷却して集める。
【0091】
比較例2。
【0092】
準備材料B、非四級化スクシンイミド清浄剤(100pbw)を実験室規模の反応槽に仕込む。この槽に酢酸(5.8pbw)および2−エチルヘキサノール(38.4pbw)を加え、混合物を撹拌し、75℃に加熱する。反応温度を75℃に保持しながら、反応槽にプロピレンオキシド(8.5pbw)を4時間にわたって加える。このバッチを温度で4時間保持する。主に四級化スクシンイミド清浄剤である生成物を冷却して集める。
【0093】
実施例3。
【0094】
準備材料A、非四級化スクシンアミド清浄剤(470g)を、水コンデンサーを接続した2リットル丸底フランジフラスコに仕込む。窒素ブランケット下、フラスコに2−エチルヘキサノール(180.6g)を加え、混合物をオーバーヘッドスターラーで撹拌し、55℃に加熱する。次いで反応温度を55℃に保持しながら、反応槽に、シリンジポンプで4時間にわたってプロピレンオキシド(40.2g)を加える。このバッチを温度で16時間保持する。主に四級化スクシンアミド清浄剤である生成物を冷却して集める。
【0095】
各材料を試験して反応の程度を判定し、生成されたアミド型の第四級アンモニウム塩清浄剤とイミド型の第四級アンモニウム塩清浄剤とを見分ける。エレクトロスプレーイオン化(ESI)分光法を用いてサンプルを解析し、内部で開発したプロトコルを使用して、イミドを含む構造物、アミドを含む構造物、および第三級アミン(非四級化)構造物の相対量を算出する。表1に、この試験結果を示す。
【0096】
【表1】
この結果から、実施例3が多くの量の四級化スクシンアミド清浄剤を含むことが示される。他の例は、より多くの量の四級化スクシンイミド清浄剤を含む。実施例3はさらに、サンプル中に残存する第三級アミンの量が最も少ないため、全体的な変換率が最も高いことも示す。第三級アミンの値は、反応中に四級化せずに、サンプル中に依然として存在する非四級化清浄剤を表す。
【0097】
各例を、Haltermann Specialty Productsから入手した標準燃料DF−79にブレンドし、PeugeotのDW−10機関を利用する、欧州規格諮問委員会(CEC:Coordinating European Council)のF−98−08 DW10試験プロトコルを用いたスクリーニング試験で検査する。これは、燃料清浄剤添加剤の効率に関連する機関出力の低下を測定する、コモンレール式のライトデューティー直接噴射機関試験である。この場合、機関の出力低下の値が小さくなると、清浄剤の性能がより良好であることが示される。試験用機関は、新たに市場で販売される機関を代表するものであり、試験方法は、当該分野で公知である。表2に、機関試験の結果を示す。
【0098】
【表2】
この結果から、実施例3の四級化スクシンアミド清浄剤を含む、本発明の添加剤サンプルCを含む燃料組成物を用いると、若干の改善が見られるが、結果は、比較例1の四級化スクシンイミド清浄剤を含むサンプルBと同程度であることが示される。
【0099】
上記の各例で調製したこれら3つの添加剤についてさらに、燃料添加剤と機関油添加剤との相溶性を測定する、油の相溶性試験で検査する。この試験は、燃料添加剤が、機関の運転中に接触する可能性がある機関油添加剤と適合性があるかどうかを判定する無害試験と考えられる。試験手順は、未希釈燃料添加剤を未希釈機関油添加剤パッケージと混合し、次いで混合物を90℃で3日間保持することを含む。次いで混合物を濾過する。安定性試験の試験結果には、混合物が液体の状態が続くか、またはゲルの状態が続くかどうかに関する合否が含まれる。ゲル化は、サンプルの目視検査により判定する。試験結果にはさらに、サンプルが液体の状態が続く場合、3分以内液体であり得るかどうかに関する合否も含まれる。表3に、この試験の結果を示す。
【0100】
【表3】
この結果から、本発明の四級化スクシンアミド清浄剤添加剤は、比較例の四級化スクシンイミド清浄剤添加剤よりも機関油添加剤と適合性があることが示される。
【0101】
上記の各例で調製した添加剤のうち2つについて、熱安定性試験も検査する。添加剤のサンプルを100℃で18時間保存し、次いで添加剤に生じた熱分解量を評価するため、FTIRで再検査する。表4に結果を示す。
【0102】
【表4】
1−塩のFTIRスペクトルのピークは、1560cm−1であり、炭化水素のFTIRのピークは、1460cm−1である。上記の表の値は、これらのピークの比である。
【0103】
比較例2は、塩水素比が75%の低下を示し、サンプル中に存在する第四級アンモニウム塩の量が著しく減少することを表す。このことから、比較例2の添加剤は、相当量が熱分解されることが示唆された。
【0104】
実施例3は、塩水素比が17%の低下を示し、やはり存在する第四級アンモニウム塩の量の減少を示すものの、比較例2の場合に比べて減少幅が著しく小さい。この結果から、本発明の四級化スクシンアミド清浄剤添加剤は、比較例の四級化スクシンイミド清浄剤添加剤より熱的に安定していることが示される。
【0105】
上記に言及した文書はそれぞれ、参照によって本明細書に援用する。実施例を除いて、あるいは他に明示的に記載されている場合を除いて、材料、反応条件、分子量、炭素原子数および同種のものの量を特定する本説明の数量はすべて、「約」という語で修飾されているものと理解すべきである。他に記載がある場合を除いて、材料の量または比率を特定する本説明の数量は、重量ベースである。他に記載がない限り、本明細書に言及した化学物質または組成物は、異性体、副生成物、誘導体、および通常市販グレードに存在するものと理解される他のそうした材料を含むことがある、市販グレードの材料として解釈すべきである。しかしながら、他に記載がない限り、各化学成分の量は、通常市販の材料に存在することがある任意の溶媒または希釈油を含めずに示す。本明細書に記載する量、範囲および比率の上限および下限は、独立に組み合わせてもよいことを理解すべきである。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量と一緒に使用してもよい。本明細書で使用する場合、「から本質的になる」という表現は、検討対象の組成物の基本的および新規な特性に大きく影響しない物質を含み得る。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
アミド基またはエステル基を含む第四級アンモニウム塩清浄剤を含む組成物であって、前記第四級化清浄剤は、
(a)非四級化清浄剤であって、アミド基またはエステル基を含み、第三級アミン官能基を持つ非四級化清浄剤;および
(b)四級化剤
の反応生成物を含む、組成物。
(項2)
(a)の前記非四級化清浄剤はアミド基を含み、前記第四級アンモニウム塩清浄剤は第四級アンモニウムアミド塩清浄剤である、上記項1に記載の組成物。
(項3)
(a)と(b)との前記反応中にプロトン性溶媒が存在し、(a)と(b)との前記反応は、前記清浄剤の構造に存在する任意の酸基以外に任意の追加酸成分を本質的に含まない、上記項1〜2のいずれかに記載の組成物。
(項4)
前記プロトン性溶媒は1〜10個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルコールを含む、上記項3に記載の組成物。
(項5)
(a)の前記非四級化清浄剤は、ヒドロカルビル置換アシル化剤と、前記アシル化剤と縮合できる酸素または窒素原子を持ち、さらに少なくとも1つの第三級アミノ基を持つ化合物との縮合生成物を含む、上記項1〜4のいずれかに記載の組成物。
(項6)
前記ヒドロカルビル置換アシル化剤はポリイソブチレンコハク酸無水物を含む、上記項5に記載の組成物。
(項7)
前記アシル化剤と縮合できる酸素または窒素原子を持つ前記化合物は、1−アミノピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、1−(3−アミノプロピル)−2−ピペコリン、1−メチル−(4−メチルアミノ)ピペリジン、4−(1−ピロリジニル)ピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、2−(2−アミノエチル)−1−メチルピロリジン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジブチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’−エチルエチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’−メチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリエチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,2,2−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、2−アミノ−5−ジエチルアミノペンタン、N,N,N’,N’−テトラエチルジエチレントリアミン、3,3’−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノプロパノール、N,N−ジエチルアミノプロパノール、N,N−ジエチルアミノブタノール、トリイソプロパノールアミン、1−[2−ヒドロキシエチル]ピペリジン、2−[2−(ジメチルアミン)エトキシ]−エタノール、N−エチルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、またはこれらの組み合わせを含む、上記項5〜6のいずれかに記載の組成物。
(項8)
前記アシル化剤と縮合できる酸素または窒素原子を持つ前記化合物は、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、またはこれらの組み合わせを含む、上記項5〜7のいずれかに記載の組成物。
(項9)
(b)の前記四級化剤はエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、またはこれらの組み合わせを含む、上記項1〜8のいずれかに記載の組成物。
(項10)
上記項1〜9のいずれかに記載の組成物を含み、さらに燃料を含み、任意にさらに前記第四級アンモニウムアミド塩清浄剤以外の1種または複数種の燃料添加剤を含む、燃料組成物。
(項11)
内燃機関または開放火炎バーナーを運転する方法であって、前記機関またはバーナーに上記項10に記載の燃料組成物を供給することを含む、方法。
(項12)
第四級アンモニウム塩清浄剤の製造プロセスであって、
I. (a)非四級化清浄剤であって、アミド基またはエステル基を含み、第三級アミン官能基を持つ非四級化清浄剤を(b)四級化剤と反応させること;
それにより前記四級化分散剤を得ること;
を含み、
(a)と(b)との前記反応中にプロトン性溶媒が存在し、(a)と(b)との前記反応は、前記清浄剤の構造に存在する任意の酸基以外に任意の追加酸成分を含まない
プロセス。
(項13)
(a)の前記非四級化清浄剤は、ヒドロカルビル置換アシル化剤と、前記アシル化剤と縮合できる酸素または窒素原子を持ち、さらに少なくとも1つの第三級アミノ基を持つ化合物との縮合生成物を含む、上記項12に記載のプロセス。
(項14)
(b)の前記四級化剤は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、またはこれらの組み合わせを含む、上記項12〜13のいずれかに記載のプロセス。
(項15)
前記プロセスは、
II. (a)の前記混合物を約50℃〜約130℃の温度に加熱すること;
III. 前記反応が終了するまで保持すること;
それにより前記四級化分散剤を得ること
をさらに含む、上記項12〜14のいずれかに記載のプロセス。