【発明が解決しようとする課題】
【0003】
第1の欠点は、シャフトは長くて重い場合が多く、それぞれの軸受により点支持がなされても、片持ち梁状態の長い部分が残り、この状態では、シャフトがシャフト自体の重量およびシャフトが担持するタービンホイールの重量により変形してしまう可能性があるということである。このような静的変形は、シャフトの真直度を変化させ、ターボ機械が動作中でシャフトが軸を中心として回転している時にアンバランスを引き起こす。
【0004】
第2の欠点は、複数の軸受の存在に関連し、そのためにターボ機械の重量を増加させ、ターボ機械の効率を低下させる。
【0005】
最後に、第3の欠点は、燃焼室から下流側に配置される軸受が、ターボ機械の特に高温の領域にあり、ここで軸受は高いレベルの熱応力を受けるということである。軸受が適切に動作できるように、また軸受のコーキングのリスクを避けるために、通常は、冷却油回路を使用する冷却システムを配設する必要がある。このような冷却システムは、設置や維持が複雑であり、ターボ機械の製造コストおよび維持コストを増大させると同時に、さらにターボ機械の重量を増加させる。
【0006】
本発明の目的は、上述の欠点の少なくとも1つを大幅に軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的は、少なくとも1つのタービンホイールを担持する少なくとも1つのシャフトを有するターボ機械であって、シャフトがターボ機械の通常利用状態で実質的に垂直に配向され、シャフトが単一軸受によって保持されているターボ機械によって達成される。
【0008】
前記タービンホイールは、ターボ機械の連結タービンまたはフリータービンのいずれにも属する場合があることは理解されたい。連結タービンは、ターボ機械の圧縮機に機械的に連結されているタービンであるが、フリータービンは、圧縮機から機械的に独立したタービンである。
【0009】
本明細書では、垂直方向は重力の方向に相当する。したがって、「垂直に」配向されるとは、「重力の方向に」配向されるという意味である。副詞「実質的に」は、シャフトが配向される方向が垂直方向から少しずれる可能性があることを意味するのに使用される。
【0010】
用語「ターボ機械の通常利用状態」は、ターボ機械が車両、特に、車両が(地上、水上、空中を)水平に移動する航空機(この場合、ターボ機械は、例えば、ターボジェットまたはターボシャフトエンジンで構成される)に搭載されている状態、またはターボ機械が工業生産現場に取り付けられている状態(この場合、ターボ機械は、例えば、地上ガスタービンで構成されてもよい)を意味するのに使用される。ターボ機械は、動作中でも停止中でもよい。したがって、特に、設置前の輸送またはターボ機械の修理を含む状態は、「通常利用状態」に相当しない。
【0011】
シャフトを垂直方向に位置決めすることによって、シャフトは、シャフト自体の重量により、またタービンホイールの重量により真直度を変化させる可能性のある静的変形を引き起こすような片持ち梁状態にはならないことが理解できる。したがって、先行技術のターボ機械とは違って、本発明のシャフトは、半径方向の静的力(すなわち、シャフトの軸に垂直な方向に作用する力および前記軸と交差する力)を受けない。当然、シャフトは軸方向の力(すなわち、シャフトの軸に沿って作用する力)をほとんどまたは全く受けないので、シャフトが座屈するリスクおよびシャフトの真直度が変化するリスクがない。シャフトおよびタービンホイールの重量は、シャフトにとって軸方向の無視できるほど小さな力である。このことで、シャフトは真っ直ぐな状態を維持することができる。
【0012】
さらに、シャフトは垂直に配置されるので、先行技術にあるように、シャフトの重量を支持するために、シャフトの長さに沿って配置される複数の軸受を使用してシャフトを保持する必要がない。シャフトは、単一軸受によって一か所で保持されることで正確に保持されることが可能である。当然、単一軸受は、シャフトとタービンホイールとで構成されるアセンブリの重量を軸方向に支持するのに適したものでなければならない。
【0013】
さらに、通常利用状態では、ターボ機械は動作中であるが、シャフトは、ジャイロ作用により、その元の軸方向位置(すなわち、停止している時の軸方向位置)の周囲で固定される。ジャイロ作用とは、軸を中心として急速回転している任意の物体がその回転軸方向を変えようとする任意の力に対抗しようとする性質のことである。したがって、シャフトの軸方向位置は、まず第1に、(ターボ機械が停止した時に、シャフトをターボ機械内の元の位置で保持し、シャフトの重量を支持する)軸受により、第二に、(ターボ機械が動作中に、シャフトをターボ機械内の元の位置の周囲で固定する)ジャイロ作用により、ターボ機械のどんな通常利用状態であってもターボ機械内の同じ位置で維持される。
【0014】
また、ターボ機械は単一軸受を有するので、複数の軸受を有する先行技術のターボ機械に比べて重量を抑えることができる。したがって、本発明のターボ機械は、先行技術のターボ機械に比べて、軽量であり、ひいては、効率が改善される。
【0015】
また、単一軸受により、ターボ機械内のスペースを節約することもできる。本発明のターボ機械の単一軸受は、先行技術のターボ機械の複数の軸受に比べて、占めるスペースが小さい。このスペースの節約により、特に、本発明のターボ機械を、例えば、シャフトを短くすることで先行技術のターボ機械よりもコンパクトにすることができる。
【0016】
用語「単一軸受」は、シャフトを支持する単一リングを備えるアセンブリ、またはシャフトを支持し隣接して配置される複数のリングを備えるアセンブリ(これらの隣接配置される支持リングがシャフトの長さの10%未満に配置される場合に限る)を指すのに使用されることに留意されたい。
【0017】
有利には、ターボ機械には高温領域があり、単一軸受は高温領域の外側に配置される。
【0018】
通常は、ターボ機械において、高温領域は、燃焼室の近くの燃焼室からすぐ下流側の領域であり、高温ガスによって駆動される(フリーおよび/または連結)タービンはこの領域に配置される。
【0019】
したがって、軸受は、高温領域の外側のシャフトに沿った任意の領域に配置されてもよいことが理解できる。特に、軸受は、燃焼室から上流側に配置されてもよいし、または燃焼室からすぐ下流側の領域を越えて配置されてもよい。
【0020】
一実施形態では、特に、ターボ機械がターボジェットまたはヘリコプタのタービンエンジンである場合、軸受は、ターボ機械の低温領域、すなわち、温度が200℃(セ氏200℃)を越えない領域に配置される。
【0021】
別の実施形態では、軸受は、ターボ機械の高温領域に配置される。このような状況では、単一軸受を高温から保護するために、単一軸受は冷却される領域および/またはヒートスクリーンで保護された領域に閉じ込められる。
【0022】
本明細書において、用語「上流側」または「下流側」は、ターボ機械内を流れるガスの正常な流れ方向を指すことに留意されたい。
【0023】
ターボ機械は燃焼室を有し、単一軸受は前記燃焼室から下流側に配置されるのが好ましい。
【0024】
燃焼室から上流側のガスの温度は、燃焼室から下流側のガスの温度より低い。したがって、燃焼室から上流側に軸受を配置することにより、確実に、軸受は、燃焼室から下流側に配置された場合に受ける熱応力よりも小さい熱応力を受ける環境に配置されることになる。この燃焼室から上流側の熱応力は、軸受を損傷させない程度に小さいので、軸受のために冷却装置は必要でない。
【0025】
ターボ機械は圧縮機を有し、単一軸受は圧縮機から上流側に配置されるのが好ましい。
【0026】
有利には、ターボ機械は、圧縮機、第1のタービン、および第2のタービンを有し、前記シャフトは、第1のタービンおよび第2のタービンから選択された要素のうちの1つに属する少なくとも1つのタービンホイールを担持する第1のシャフトを構成し、前記単一軸受は第1の単一軸受を構成する。
【0027】
例えば、変形形態では、第1のタービンは連結タービンであり、第2のタービンはフリータービンである。別の変形形態では、第1のタービンは高圧スプールに連結されたタービンであり、第2のタービンは低圧スプールに連結されたタービンである。
【0028】
有利には、ターボ機械はさらに、ターボ機械の通常利用状態で実質的に垂直に配向された第2のシャフトを含み、前記第2のシャフトは第1のタービンおよび第2のタービンから選択された他方の要素に属する少なくとも1つのタービンホイールを担持し、前記第2のシャフトは第2の単一軸受によって保持される。
【0029】
有利には、第1のシャフトと第2のシャフトとは同軸である。さらに、第1のシャフトは、第2のシャフトの内側を通るのが好ましい。さらに、第1および第2の単一軸受は、圧縮機から上流側に配置されるのが好ましい。
【0030】
一実施形態では、本発明のターボ機械は、航空機のターボジェットまたはターボシャフトエンジンである(すなわち、構成する)。好ましくは、本発明のターボ機械は、ヘリコプタのターボシャフトエンジンである(すなわち、構成する)。
【0031】
本発明および本発明の利点は、非限定的な例として挙げられた本発明の実施形態の以下の詳細な説明を読めば、よりよく理解できるであろう。以下の説明は、添付図面を参照して行う。