特許第5701915号(P5701915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5701915-多接点端子を有する電気コネクタ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701915
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】多接点端子を有する電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/71 20110101AFI20150326BHJP
   H01R 13/11 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   H01R12/71
   H01R13/11 302N
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-20278(P2013-20278)
(22)【出願日】2013年2月5日
(62)【分割の表示】特願2008-201583(P2008-201583)の分割
【原出願日】2008年8月5日
(65)【公開番号】特開2013-110122(P2013-110122A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2013年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】土井 健太郎
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−172703(JP,A)
【文献】 特開2002−216914(JP,A)
【文献】 特開2000−299150(JP,A)
【文献】 特開平04−272676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00 − 12/91
H01R 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子が基板に接続される接続部を有すると共に、自由端が篏合側へ向け並んで延び、ハウジングの壁面との間にすき間をもって弾性変位可能な第一弾性部の篏合側端部に第一接触部が形成された第一弾性腕と第二弾性部の篏合側端部に第二接触部が形成された第二弾性腕を有し、該第一弾性腕と第二弾性腕のそれぞれの一方の側に突出形成された上記第一接触部と上記第二接触部が上記第一接触部から上記第二接触部に向かって移動する相手コネクタの相手端子に篏合側から順次弾性接触し、上記相手端子が上記第二接触部との接触位置を超えて更に移動することにより上記第一接触部とともに上記第二接触部についても有効嵌合長を得るようになっており、端子は金属板の板面を維持したまま作られていて、該端子の板厚方向に間隔をもってハウジングに配列されている電気コネクタにおいて、第一弾性腕の第一接触部は、篏合側に対して反対側に位置するとともに上記相手端子の移動方向に対し略直角若しくは篏合側に鋭角を成す縁部と該縁部よりも篏合側に位置する斜縁とで略三角形突状をなし、第二弾性腕は、略三角形突状をなす第二接触部が上記第一接触部の上記縁部の上記反対側位置していると共に、第二弾性部の上記反対側に位置する反対側端部が第一弾性腕の第一弾性部の反対側端部よりもコネクタ嵌合方向で篏合側に対して反対側に位置していることを特徴とする多接点端子を有する電気コネクタ。
【請求項2】
端子の第二弾性腕の第二弾性部は、上記端子の第一弾性腕の第一弾性部よりも幅寸法が小さく形成されていることとする請求項1に記載の多接点端子を有する電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多接点端子を有する電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
端子の接触部が相手端子に対する接触信頼性を向上させることを目的として、端子に二つの接触部を形成している電気コネクタが、特許文献1そして特許文献2で知られている。
【0003】
これらの特許文献での端子は、帯状の金属板の幅方向での一方の側部を屈曲して部分的に二枚の接触片がそれらの板面で対面するように形成している。これらの二つの接触片は長さが異なっており、それぞれの先端側が板厚方向に屈曲されて山型の接触部を形成している。かくして、相手コネクタとの嵌合方向で二つの位置に接触部を有する端子を形成し、このような端子がハウジングにより上記帯状金属板の幅方向に複数配列保持されている。このようなコネクタでは、一つの端子の二つの接触部が、相手コネクタとの嵌合時に、相手端子と順次接触して二つの接点を形成することで、接触信頼性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−236187
【特許文献2】特開2002−175847
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1そして特許文献2のコネクタにあっては、帯状の金属板をその板厚方向に屈曲して端子を得ることとしているが故に、いくつかの問題点を有している。
【0006】
第一には端子の有効嵌合長が非常に短くなってしまうことである。端子は二つの弾性腕を有し、各弾性腕の先端部を板厚方向に加工して接触部を形成するので、加工技術上、コネクタ嵌合方向での二つの接触部同士間距離が大きくならざるを得ない。したがって、上記コネクタ嵌合方向でのコネクタの小型化が求められる場合、いずれかの弾性腕の接触部についての有効嵌合長が短くなる。その結果、該接触部での接触信頼性が低下する。
【0007】
第二には、二つの弾性腕を対面させるための屈曲加工が面倒なことに加え、さらには各弾性腕についての接触部の形成加工に部材の多くの部分が占められてしまい、コネクタ嵌合方向で端子寸法が大きくなる。山型とされる接触部は接圧の確保のために、山型の形状は一定の高さが要求される。この高さのもとに、コネクタの挿抜を楽にするには、山型の傾斜を緩くする必要があり、そうすると、結果として、弾性腕がその分長くなってしまい、さりとて、短くすると挿抜が硬くなって操作しづらくなる。
【0008】
さらに、第三には、端子は幅方向に大きな寸法を有するので、端子の配列のピッチを狭くすることができず、端子配列方向でのコネクタの小型化が実現しない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、コネクタ嵌合方向そして端子配列方向でコネクタを大型化することなく、容易に作れて有効嵌合長を長くすることのできる多接点端子を有する電気コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る発明の多接点端子を有する電気コネクタは、端子が基板に接続される接続部を有すると共に、自由端が嵌合側へ向け並んで延び、ハウジングの壁面との間にすき間をもって弾性変位可能な第一弾性部の嵌合側端部に第一接触部が形成された第一弾性腕と第二弾性部の嵌合側端部に第二接触部が形成された第二弾性腕を有し、該第一弾性腕と第二弾性腕のそれぞれの一方の側に突出形成された上記第一接触部と上記第二接触部が上記第一接触部から上記第二接触部に向かって移動する相手コネクタの相手端子に嵌合側から順次弾性接触し、上記相手端子が上記第二接触部との接触位置を超えて更に移動することにより上記第一接触部とともに上記第二接触部についても有効嵌合長を得るようになっており、端子は金属板の板面を維持したまま作られていて、該端子の板厚方向に間隔をもってハウジングに配列されている。
【0011】
かかる多接点端子を有する電気コネクタにおいて、本発明では、第一弾性腕の第一接触部は、篏合側に対して反対側に位置するとともに上記相手端子の移動方向に対し略直角若しくは篏合側に鋭角を成す縁部と該縁部よりも篏合側に位置する斜縁とで略三角形突状をなし、第二弾性腕の略三角形突状をなす第二接触部が上記第一接触部の上記縁部の上記反対側位置することを特徴とする多接点端子を有することを特徴としている。
【0012】
したがって、相手コネクタの相手端子に対し本発明コネクタの対応端子が第一弾性腕及び第二弾性腕にそれぞれ形成された第一接触部及び第二接触部で接触することとなる。
【0013】
このような構成の本発明の電気コネクタでは、端子が金属板の板面を維持して加工して作られており、屈曲加工を伴わないので、製作が容易となると共に、加工時に、屈曲加工のように加工に或る程度の寸法が必要となるといった加工寸法の制限がなくなり、嵌合方向での端子寸法を大きくしなくとも十分に有効嵌合を長くでき、第一弾性腕及び第二弾性腕の弾性も十分に確保できる。さらには端子は板厚方向に配列されているので狭ピッチ構造のコネクタが実現する。
【0014】
また、本発明において、端子の第二弾性腕の第二弾性部は、上記端子の第一弾性腕の第一弾性部よりも幅寸法が小さく形成されていてもよい。
【0015】
また、本発明において、端子は、第二弾性腕の第二弾性部の反対側端部が第一弾性腕の第一弾性部の反対側端部よりもコネクタ嵌合方向で嵌合側に対して反対側に位置していてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のように、金属板の板面を維持して第一弾性腕及び第二弾性腕を形成し、各弾性腕に接触部を設けることとしたので、端子の加工が容易で、屈曲加工による加工上の制限がなく、各弾性腕が十分に長くなって接触部における有効嵌合長を大きく確保しつつ、しかも弾性が十分に得られて、コネクタ嵌合方向でのコネクタの小型化が図れる。又、端子をその板厚方向に配列することで、端子の狭ピッチ配列が図れ、この方向でもコネクタの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態のコネクタの外観を示す斜視図である。
図2図1コネクタに用いられる第一実施形態の端子の斜視図である。
図3図1コネクタへ相手コネクタを嵌合させるときの断面図で、(A)〜(D)で嵌合の進行順に示している。
図4】第二実施形態の端子を有するコネクタへ相手コネクタを嵌合させるときの要部の断面図であり、(A)〜(C)で嵌合の進行順を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態のコネクタの外観を示す斜視図である。図1にて、コネクタ1は、電気絶縁材料で作られたハウジング10に、金属板から作られた端子20が植設されている。
【0020】
上記ハウジング10は、本体部11と脚部12とを有している。本体部11は平面形状が横方向に長い略台形をなし、縦方向に延びる短筒外面を有し、横方向両端下部に上記脚部12が設けられている。上記ハウジング10の本体部11は、上方に開口して相手コネクタの被嵌合部を受入れる受入凹部13が上記横方向に長く形成されており、該受入凹部13の対向内面には、後述の端子20を植設する端子溝14が上記横方向で定間隔に複数形成されている。上記脚部12は上下方向そして横方向に開口せる切欠部12Aが形成されており、該切欠部12Aには、ハウジングで保持された金具19の一部が屈曲された状態で水平な取付面19Aが位置している。該取付面19Aは、コネクタ1が回路基板(図示せず)上に配置されたときに、該回路基板の対応ランドに接面し、該対応ランドと半田接続され、コネクタ1の回路基板への取付けに寄与する。また、上記ハウジング10の本体部11には、その外周面にシールド板が取り付けられることもある。
【0021】
上記ハウジング10の端子溝14には、図2に示される端子20が下方から挿入されている。
【0022】
端子20は、図2に見られるように、金属板の平坦面をそのまま維持した状態で、打抜き加工等により外形づけられている。
【0023】
該端子20は、下部となる基部21から上方に向け二つの弾性腕、すなわち第一弾性腕22と第二弾性腕23が平行に延びている。第一弾性腕22は、第二弾性腕23よりも幅が広く、また長くなっている。
【0024】
第一弾性腕22は、基部21側の部分の左側縁が延長された被取付部22Aと、該被取付部22Aよりも上方部分が段状に幅が小さくなりそのまま上方へ延びる第一弾性部22Bを有し、該第一弾性部22Bの上端に右方へ突出せる第一接触部22Cが設けられている。
【0025】
これに対し、第二弾性腕23は、上記基部21から、上記第一弾性腕22の第一弾性部22Bよりも若干小さい幅で上方に延びる第二弾性部23Aを有している。該第二弾性部23Aは上記第一弾性腕22の第一接触部22Cの直下まで延びていて、該第二弾性部23Aの上端に右方へ突出する第二接触部23Bが設けられている。該第二弾性腕23の第二接触部23Bと上記第一弾性腕22の第一接触部22Cのそれぞれの突端を通る線X’は、図3(A)に見られる相手コネクタ30の相手端子31の対応接触部31A(の接触面)を通りコネクタ嵌合方向に延びる仮想の接触線Xと平行であり、該接触線Xに対して距離δだけ偏位している。この距離δは、相手コネクタ30の嵌合時に、第一弾性腕22そして第二弾性腕23が相手コネクタ30の相手端子31に当接して変位する弾性変位量となる。このように、本実施形態では、一つの端子20が有する二つの弾性腕、すなわち、第一弾性腕22と第二弾性腕23は、上記接触線Xに対し一方の側に位置し、それらの弾性変位量も同じδである。しかし、第一弾性腕22と第二弾性腕23は、それらの幅、長さが違うので、固有振動数は互いに異なっている。この固有振動数は、コネクタが使用される装置、特に切削加工時に生ずる振動のもとで使用される工作機械等においては、この振動の周波数が予め知られている場合が多いのでこの周波数と異なるように設定される。
【0026】
上記端子20は、その基部21の下端から斜部24Aを経て左方に向け接続部24が延びている。
【0027】
上記端子20を下方から収容するようにハウジング10の本体部11に形成された端子溝14は、図3(A)に見られるように、上方に開口せる受入凹部13の対向せる両内面に形成されている。その形態は、図3(A)のごとく左右対称である。上記受入凹部13の下方には、左右を仕切る中央壁15が設けられていて、左右の端子溝14は該中央壁15の両側で下方に延びハウジング10の下面に開口するように貫通形成されている。
【0028】
上記端子溝14は、図3(A)において、紙面に直角な寸法が上記端子20の板厚寸法よりも僅かに大きい値となっている。該端子溝14の溝深さ、すなわち、同図での溝の左右寸法は、上下方向で上記中央壁15よりも上方の受入凹部13の領域では、第一弾性腕22と第二弾性腕23の殆どが収められ、第一弾性腕22の第一接触部22Cと第二弾性腕23の第二接触部23Bの突端が上記距離δだけ端子溝14から突出する程度となっており、上記中央壁15の領域では、端子20の基部21が幅方向(図にて左右方向)で圧せられながら下方から該端子溝14へ圧入される程度となっている。この端子20が端子溝14へ圧入されると、上記接続部24が、ハウジング10の下方で左右に延出する。
【0029】
一方、コネクタ1に嵌合される相手コネクタ30は、図3(A)に見られるように、上記ハウジング10の本体部11の外側面に嵌合する外壁33と、紙面に直角方向での両端における端壁34と、底壁35とで嵌合凹部36を形成するハウジング32を有している。該ハウジング32には、上記嵌合凹部36の左右方向中央位置で嵌入壁37が下方の開口に向けて上記底壁35から延びている。この嵌入壁37の両面には、紙面に直角方向で所定間隔に溝部が上下に延びて形成されていて、該溝部に相手端子31が圧入されている。勿論、相手端子31はハウジング32と一体成形により保持されていてもよい。この相手端子31は、紙面に直角な方向にて上記コネクタ1の端子20に対応する位置に設けられている。本実施形態においては、該相手端子31はその対応接触部31Aが平面をなして上下に延びており、上記接触線Xがここを通る。上記嵌入壁37は、上記相手端子31が、コネクタ嵌合時に、上記コネクタ1の左右の端子20間を押し拡げつつ進入する厚さに形成されており、また、コネクタ嵌合終了時には、該嵌入壁37の下端が上記コネクタ1の中央壁15の上端に至近あるいは当接する長さに設定されている。
【0030】
かかる形態のコネクタ1,30は、次の要領で使用される。
【0031】
(1)コネクタ1を回路基板(図示せず)上の所定位置に配し、端子20の接続部24を対応回路部と半田接続すると共に、金具19をその取付面19Aにて対応ランドと半田により固定する。
【0032】
(2)次に、このように回路基板に取り付けられたコネクタ1の上方に相手コネクタ30(他の回路基板に取り付けられていることもある)をもたらす(図3(A)参照)。
【0033】
(3)しかる後に、相手コネクタ30を降下させる。相手コネクタ30はその外壁33が上記コネクタ1のハウジング10の本体部11の外面で案内され、該相手コネクタ30の嵌合凹部36で上記本体部11に嵌合し始める。嵌合当初では、相手コネクタ30の嵌入壁37に設けられた相手端子31が、コネクタ1の端子20の第一弾性腕22に設けられた第一接触部22Cに当接し、その当接圧で左右両側の第一弾性腕22同士を左右に押し拡げて弾性変形させる(図3(B)参照)。この第一弾性腕22の第一接触部22Cの弾性変位量は距離δである。このとき、第二弾性腕23は、相手コネクタ30とは当接しておらず、未だ弾性変形していない。
【0034】
(4)さらに、相手コネクタ30を押し下げると、図3(A)における状態からの勢いで降下し、相手コネクタ30の相手端子31がコネクタ1の第二弾性腕23の第二接触部23Bに当接し、第二弾性腕23をも押し拡げて弾性変形させる(図3(C)参照)。この第二弾性腕23の第二接触部23Bの弾性変位量も上記第一接触部22Cと同じ距離δである。第一弾性腕22(前者)を押し拡げるのに要する指圧(操作者がコネクタ嵌合時に相手コネクタを押し込む力であり、接触部での接圧に比例する。)と第二弾性腕23(後者)を押し拡げるのに要する指圧とを比べると、相手端子が第一弾性腕22の方が先に当接するので、通常、前者の指圧の方が大きい。したがって、前者の第一接触部22Cの直下に後者の第二接触部23Bが位置しているので、相手端子は前者を押し拡げた勢いで後者を難なく押し拡げる。具体的には、相手端子との接圧は、前者が後者の2倍以上であると、上記の効果が顕著である。好ましくは、前者と後者の接圧比は2対1である。これらの関係は、接触部における弾性変位量が仮に前者そして後者において同じでも、両者の剛性をそのような関係となるように、長さ・幅を決めることにより得られる。
【0035】
(5)かくして、相手コネクタ30が図3(D)の所定深さまで嵌合して、両コネクタ1,30の嵌合が完了する。本発明では、第一弾性腕22の第一接触部22Cと第二弾性腕23の第二接触部23Bが、コネクタ嵌合方向で、かなり近く位置するようにできるので、第一弾性腕22はもとより第二弾性腕23も長く設定され、第一接触部22Cそして第二接触部23Bともに、有効嵌合長が長くなる。
【0036】
<第二実施形態>
第一実施形態では、第一弾性腕22と第二弾性腕23とは、順次独立して弾性変形したが、本実施形態は、両弾性腕22,23は、一時的に連係して弾性変形する。
【0037】
図4(A)において、第一弾性腕22は第一接触部22Cの下縁に凹部22C−1が形成されていて、該第一接触部22Cの先端部に係止部22C−2を有している。一方、第二弾性腕23は第二接触部23Bの上端部に、上方に向いた突状の被係止部23B−1が設けられている。該被係止部23B−1は上記凹部22C−1内に進入して位置しており、横方向、すなわち接触部22C,23Bの変位方向で、上記係止部22C−2に間隔をもって対面している。なお、図4(A)では一つの端子20のみが図示されているが、コネクタは、図3(A)の場合と同様に、左右対称にもう一つの端子を有している。
【0038】
かかる本実施形態において、コネクタ嵌合時に、該相手端子31は上記第一弾性腕22の第一接触部22Cに当接しながら降下して、これを左方に弾性変位せしめる。第一弾性腕22は、弾性変形中に、その係止部22C−2が第二弾性腕23の被係止部23B−1に当接するようになりこれを左方に押し、第二弾性腕23を同方向に弾性変形させる。この間に相手端子31は降下して、図4(B)のごとく、第二弾性腕23の第二接触部23Bにも接触するようになり、ここで第二弾性腕23を押圧して弾性変形させる。かくして、第二弾性腕23の被係止部23B−1は第一弾性腕22の係止部22C−2から離れるようになる。すなわち、第二弾性腕23は、最初に第一弾性腕22で押圧されて弾性変形し、しかる後に、図4(B)から図4(C)に向けて、相手端子31で押圧されて弾性変形する。第二接触部23Bが相手端子31に接触する際には、既に第二接触部23Bが左方に変位しているので、第二接触部23Bは相手端子31との接触範囲(斜部の長さ)が、斜部での傾斜を変えることなく(すなわち、相手端子の下方への押込み力を変えることなく)、第一実施形態の場合と比べ、短くてすむ。これは、第一接触部22Cの頂部と第二接触部23Bの頂部との上下方向での距離を短くすることができるということを意味する。したがって、第一実施形態の場合と同じ長さの有効嵌合長を確保しつつ、上述の短くなった分だけ上下方向で端子を短くすることができ、同方向での小型化に貢献する。
【0039】
相手端子31が第一接触部22Cの頂部と第二接触部23Bの頂部を通過する際の抵抗力の変化が一連の範囲で起こるので、嵌合時の操作性も良い。
【0040】
本発明では、図示した形態以外にも、種々変形可能である。例えば、端子は弾性腕が二つだけでなく三つ以上設けることも可能である。弾性腕が三つの場合、いずれの弾性腕も基部から平行して上方に延び、順次、側方に突出してそれぞれ接触部を形成すれば良い。
【0041】
また、相手コネクタの端子が段をなして各段に接触部を形成している場合には、各接触部を通るそれぞれの接触線に対応して、各弾性腕の接触部を位置せしめれば良い。
【0042】
さらには、複数の弾性腕の各接触部は、相手端子との当接時における変位量が、それぞれ異なっていても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 コネクタ 23 第二弾性腕
10 ハウジング 23B 第二接触部
20 端子 30 相手コネクタ
22 第一弾性腕 31 相手端子
22C 第一接触部
図1
図2
図3
図4