(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、本明細書で述べるネットワーク設計ツールを適用し得る、またはネットワーク設計最適化ツールと共に使用することのできるネットワークの例10を示す。特に、ネットワーク10は、プラント自動化ネットワーク12および無線HARTネットワーク14を含む。プラント自動化ネットワーク12は、高速大容量回線20を介して接続された1台または複数の据え置き型ワークステーション16および1台または複数の携帯型ワークステーション18を含む。高速大容量回線20は、イーサネット(登録商標)、RS−485、PROFIBUS(プロフィバス)DPまたはその他の適切な通信プロトコルを介して実施される。プラント自動化ネットワーク12と無線HARTネットワーク14はゲートウェイ22を介して接続される。具体的には、ゲートウェイ22は、有線方式で高速大容量回線20に接続され、適切な公知のプロトコルを使ってプラント自動化ネットワーク12と通信する。ゲートウェイ22は、独立型機器として、ホストもしくはワークステーション16または18の拡張スロットに挿入できるカードとして、あるいはPLCベースまたはDCSベースのシステムの入出力サブシステムの一部として、あるいは他の任意のやり方で実施される。ゲートウェイ22は、ネットワーク12上で走る、無線HARTネットワーク14の様々な機器にアクセスするアプリケーションを提供する。プロトコルおよびコマンドの変換に加えて、ゲートウェイ22は、無線HARTネットワーク14のスケジューリング方式のタイムスロットおよびスーパーフレーム(時間的に等間隔の通信タイムスロットの集合)が使用する同期されたクロック制御も提供する。
【0021】
状況によっては、各ネットワークが、複数のゲートウェイ22を有することもある。これら複数のゲートウェイを使って、無線HARTネットワークとプラント自動化ネットワーク12または外界との間の通信にさらに多くの帯域幅を提供することによって、ネットワークの有効スループットおよび信頼性を高めることができる。他方、ゲートウェイ機器22は、無線HARTネットワーク内のゲートウェイ通信の必要に従って適切なネットワークサービスに帯域幅を要求する。ゲートウェイ22はさらにシステムが動作している間に必要な帯域幅を再評価する。例えば、ゲートウェイ22は、大量のデータを検索するよう求める無線HARTネットワーク14の外部にあるホストからの要求を受け取る。その場合ゲートウェイ機器22は、このトランザクションに対応するために、ネットワークマネージャなどの専用サービスに追加の帯域幅を要求する。その後ゲートウェイ22は、トランザクションが完了した直後に不要な帯域幅の解放を要求する。
【0022】
実施形態によっては、ゲートウェイ22は、機能的に、仮想ゲートウェイ24と、1つまたは複数のネットワークアクセスポイント25に分割されていることもある。ネットワークアクセスポイント25は、無線HARTネットワーク14の帯域幅を増大させ、全体的信頼度を高めるために、ゲートウェイ22と有線通信を行う別個の物理機器としてもよい。しかし、
図1には物理的に別個のゲートウェイ22とアクセスポイント25の間の有線接続26が示されているが、要素22〜26は、一体型機器として設けられていてもよいことが理解されるであろう。ネットワークアクセスポイント25はゲートウェイ機器22とは物理的に分離されているため、アクセスポイント25は、戦略的にいくつかの異なる場所に配置されてもよい。帯域幅を増大させることに加えて、複数のアクセスポイント25は、あるアクセスポイントにおける潜在的に低い信号品質を1つまたは複数の他のアクセスポイントにおいて補償することによって、ネットワーク全体の信頼性を高めることもできる。また、複数のアクセスポイント25があれば、アクセスポイント25の1つまたは複数において障害が発生した場合の冗長性も実現される。
【0023】
ゲートウェイ機器22は、さらに、ネットワークマネージャソフトウェアモジュール27およびセキュリティマネージャソフトウェアモジュール28を含んでいてもよい。別の実施形態では、ネットワークマネージャ27および/またはセキュリティマネージャ28は、プラント自動化ネットワーク12上のホストのうちの1台で実行される。例えば、ネットワークマネージャ27はホスト16で実行され、セキュリティマネージャ28はホスト18で実行される。ネットワークマネージャ27は、ネットワークの構成、無線HART機器間の通信のスケジューリング(すなわちスーパーフレームの構成)、経路指定表の管理、および無線HARTネットワーク14の正常性の監視および報告の役割を担う。冗長なネットワークマネージャ27がサポートされているが、有効なネットワークマネージャ27は1つの無線HARTネットワーク14当たり1つだけとすべきことが企図されている。
【0024】
図1に戻って、無線HARTネットワーク14は、1台または複数のフィールド機器30〜40を含む。一般に、化学、石油その他の製造プラントなどのプロセス制御システムは、バルブ、バルブポジショナ、スイッチ、センサ(温度、圧力、流量センサなど)、ポンプ、ファンといったフィールド機器を含む。フィールド機器は、プロセス内で、バルブの開閉やプロセスパラメータ計測といった制御機能を果たす。無線HART通信ネットワーク14において、フィールド機器30〜40は、無線HARTパケットの生産者であり、消費者である。
【0025】
ルータ44を介してさらにプラント自動化ネットワーク12に接続されているネットワーク43に外部ホスト41が接続されていてもよい。ネットワーク43は、例えば、ワールドワイドウェブ(WWW)などとすることができる。外部ホスト41は、プラント自動化ネットワーク12にも無線HARTネットワーク14にも属さないが、ルータ44を介して両ネットワーク上の機器にアクセスすることができる。ネットワーク設計ツール45は、外部ホスト41に置かれ、そこで実行されて、以下でより詳細に論じる無線ネットワーク構成およびシミュレーション機能を提供してもよい。代替として、ネットワーク設計ツール45は、据え置き型ワークステーション16、携帯型ワークステーション18、または無線HARTネットワーク14に直接接続された携帯型機器上で実行されてもよい。実施形態によっては、ネットワーク設計ツール45は、ネットワーク10の複数のホスト上で分散して実行される。さらに別の実施形態では、ネットワーク設計ツール45が独立型ホスト47上で実行され、したがって、ネットワーク12にもネットワーク14にもアクセスすることができず、または周期的にしかアクセスすることができないこともある。この場合、無線ネットワーク14の性能に関連するフィードバック情報は、ホスト47によってネットワーク設計ツール45に手入力されてもよい。
【0026】
ネットワーク設計ツール45は、例えばC/C++やJAVA(登録商標)といった1つまたは複数のプログラミング言語を使ってソフトウェアパッケージとして実施してもよい。ネットワーク設計ツール45のソフトウェアは、従来からのやり方で1台または複数のホスト16、18、41、または47に格納される。代替として、ネットワーク設計ツール45は、CDやDVDなどの携帯型メモリディスクで提供され、動作時にコンピュータホストの揮発性メモリにロードされてもよい。例えば、ホスト16、18、41、および47の一部または全部が、永続的にソフトウェアを格納することのできるハードドライブおよびフラッシュドライブ、ならびにネットワーク設計ツール45を含むCDまたはDVDと適合するCDおよびDVDドライブを含む。別の実施形態では、ネットワーク設計ツール45は、分散Webサービスとして、またはリモートで実行されており、インターネットまたはイントラネットを介してアクセスすることのできるソフトウェアとして提供されてもよい。例えば、リモートホスト41がネットワーク設計ツール45のソフトウェアコンポーネントの一部を含み、ワークステーション16が、キーボード、マウス、コンピュータ画面、および類似の入出力機器を介してオペレータにユーザインターフェースを提供する。この実施形態によれば、オペレータは、ネットワーク設計ツール45の一部または全部にアクセスし、利用することができるが、ネットワーク設計ツール45のソフトウェアは、セキュリティまたは著作権上の理由でリモートに置かれていてもよい。
【0027】
無線HARTネットワーク14は、有線HART機器で得られるのと類似の動作性能を提供するプロトコルを使用し得る。このプロトコルの用途には、プロセスデータの監視、(より厳密な性能要件を伴う)致命的データの監視、較正、機器状況および診断のための監視、フィールド機器のトラブルシューティング、試運転、および監視プロセス制御が含まれ得る。これらの用途は、無線HARTネットワーク14が、必要に応じて高速で更新を行い、必要なときに大量のデータを移動し、試運転および保守作業のために一時的に無線HARTネットワーク14に参入するにすぎないネットワーク機器をサポートすることのできるプロトコルを使用することを必要とする。
【0028】
一実施形態では、無線HARTネットワーク14のネットワーク機器をサポートする無線プロトコルは、広く受け入れられている産業標準であるHARTの、有線環境の単純なワークフローと手法を保持した拡張である。この実施形態によれば、有線HART機器に使用されるのと同じツールが、単に新しい機器記述ファイルを加えるだけで無線機器に容易に適合される。このように、無線HARTプロトコルは、HARTを使って得られる経験と知識を活用して訓練を最小限に抑え、保守とサポートを単純化する。一般的には、機器上で実行されている大部分のアプリケーションが有線ネットワークから無線ネットワークへの移行に「気付かない」ように無線用のプロトコルを適合させることが好都合であろう。明らかに、そうした透過性により、ネットワークをアップグレードする、より一般的には、そのようなネットワークと共に使用され得る機器を開発し、サポートするためのコストが大幅に低減される。HARTの無線拡張のその他の利点の中には、有線機器では取得するのが難しく、高くつくものであった測定値へのアクセスや、ラップトップ機器、ハンドヘルド機器、ワークステーションなどにインストールできるシステムソフトウェアから計器を構成し、操作することができることが含まれる。別の利点は、無線機器から、様々な通信技法によって、中心に位置する診断センタに診断警報を送り返すことができることである。例えば、あらゆる熱交換器に無線HART機器を取り付けることができ、熱交換器が問題を検出したときにエンドユーザおよび供給者に警告することもできる。別の利点は、重大な健康および安全上の問題を生じる条件を監視できることである。例えば、無線HART機器を道路上の浸水区域に配置し、公的機関および運転者に水位を知らせるために使用することもできる。他の利点には、広範囲の診断警報へのアクセスや、無線HART機器への通信が確立されたときに傾向値および計算値をホストに転送できるようにそれらの値を機器に格納することができることが含まれる。よって、無線HARTプロトコルは、ホストアプリケーションが既存のHART対応フィールド機器に無線でアクセスするための技術を提供することができ、バッテリ駆動式の、無線のみのHART対応フィールド機器の配置をサポートする。無線HARTプロトコルは、プロセスアプリケーションの無線通信規格を確立するために使用することができ、無線プロセス自動化アプリケーションをサポートするようにHART技術を改善することによって、HART通信の適用、およびこのプロトコルが産業に与える利益をさらに拡大することもできる。
【0029】
図1に戻って、フィールド機器30〜36は無線HART機器とすることができる。すなわち、フィールド機器30、32、34、または36は、無線HARTプロトコルスタックの全階層をサポートする一体型ユニットとして設けられている。ネットワーク10では、フィールド機器30を無線HART流量計とし、フィールド機器32を無線HART圧力センサとし、フィールド機器34を無線HARTバルブポジショナとすることができ、フィールド機器36は無線HART圧力センサとすることができる。重要なことには、無線HART機器30〜36は、ユーザが有線HARTプロトコルから期待することになるすべてをサポートするHART機器である。当分野の技術者であれば理解するように、HARTプロトコルの中心となる長所の1つはその厳密な相互運用性要件である。実施形態によっては、すべての無線HART装置が、システム動作を損なわずに同種の機器を交換させるための基本的な必須機能を含む。さらに、無線HARTプロトコルは、デバイス記述言語(DDL)などのHART中核技術との後方互換性を維持する。好ましい実施形態では、すべての機器がDDLをサポートし、これによってエンドユーザにはすぐに無線HARTプロトコルの利用を開始するためのツールが確保される。
【0030】
他方では、フィールド機器38を旧来の4〜20mA機器とし、フィールド機器40を有線HART機器とすることができる。フィールド機器38とフィールド機器40は、無線HARTアダプタ(WHA)50を介して無線HARTネットワーク13に接続されていてもよい。加えて、WHA50は、Foundation Fieldbus、PROFIBUS、DevicesNetといった他の通信プロトコルをサポートしていてもよい。これらの実施形態では、WHA50は、プロトコルスタックの下位層でのプロトコル変換をサポートする。加えて、1台のWHA50がマルチプレクサとしても機能し、複数のHARTまたは非HART機器をサポートし得ることも企図されている。
【0031】
プラント要員は、さらに、ネットワーク機器のインストール、制御、監視および保守にハンドヘルド機器を使用してもよい。一般に、ハンドヘルド機器とは、プラント自動化ネットワーク12上のホストとして無線HARTネットワーク14に直接、またはゲートウェイ22を介して接続することのできる携帯型装置である。
図1に示すように、無線HART接続ハンドヘルド機器55は、無線HARTネットワーク14と直接やり取りする。形成済みの無線HARTネットワーク14と共に動作するとき、この機器は、単に別の無線HARTフィールド機器としてネットワーク14に参入し得る。無線HARTネットワークに接続されていないターゲットネットワーク機器と共に動作するとき、ハンドヘルド機器55は、そのターゲットネットワーク機器との独自の無線HARTネットワークを形成することにより、ゲートウェイ機器22とネットワークマネージャ27の組み合わさったものとして動作し得る。
【0032】
プラント自動化ネットワーク接続ハンドヘルド機器(不図示)は、Wi‐Fiなど公知のネットワーキング技術によってプラント自動化ネットワーク12に接続する。この機器は、外部プラント自動化サーバ(不図示)やワークステーション16、18と同様にゲートウェイ機器22を介してネットワーク機器30〜40と対話する。
【0033】
加えて、無線HARTネットワーク14は、ルータ機器60も含む。ルータ機器60は、あるネットワーク機器から別のネットワーク機器にパケットを転送するネットワーク機器である。ルータ機器として動作するネットワーク機器は、内部経路指定表を使って個々のパケットをどのネットワーク機器に転送すべきか決定する。ルータ60などの独立型ルータは、無線HARTネットワーク14上のすべての機器が経路指定をサポートしている実施形態では不要とされることもある。しかし、ネットワークに専用のルータ60を付加することは(例えばネットワークを拡張したり、ネットワーク内のフィールド機器の電力を節約したりするには)有益となり得る。
【0034】
無線HARTネットワーク14に直接接続されているすべての機器をネットワーク機器と呼ぶことができる。詳細には、無線HARTフィールド機器30〜60、アダプタ50、ルータ60、ゲートウェイ22、アクセスポイント25、および無線HART接続ハンドヘルド機器55が、経路指定およびスケジューリングを目的とする場合には、ネットワーク機器または無線HARTネットワーク14のノードである。非常にロバストで拡張が容易なネットワークを提供するために、すべてのネットワーク機器が経路指定をサポートし、各ネットワーク機器をそのHARTアドレスによってグローバルに識別し得ることが企図されている。ネットワークマネージャ27は、ネットワーク機器の完全なリストを含み、各機器に、短いネットワークで一意の16ビットニックネームを割り当てることができる。加えて、各ネットワーク機器は、更新率、接続セッション、および機器リソースに関連する情報を格納することもできる。要するに、各ネットワーク機器は、経路指定およびスケジューリングに関連する最新の情報を維持する。ネットワークマネージャ27は、新しい機器がネットワークに参加するたびに、またはネットワークマネージャが無線HARTネットワーク14のトポロジまたはスケジューリングの変更を検出し、または発生させるたびに、各ネットワーク機器にこの情報を送る。
【0035】
さらに、各ネットワーク機器は、そのネットワーク機器がリスニング動作時に識別している近隣機器のリストを格納し、保持していてもよい。一般に、あるネットワーク機器の近隣機器は、対応するネットワークによって課される規格に従ってそのネットワーク機器との接続を確立することのできる可能性のある任意の種類の別のネットワーク機器である。無線HARTネットワーク14の場合、その接続は無線接続である。しかしながら、近隣機器は、その特定の機器に有線で接続されたネットワーク機器でもよいことが理解されるであろう。後述するように、各ネットワーク機器は、告知によって、または指定されたタイムスロットの間に送出される特殊なメッセージによって、他のネットワーク機器によるそれらのネットワーク機器の発見を促す。無線HARTネットワーク14に動作可能に接続されているネットワーク機器には、告知信号の強度または他の何らかの原理に従って選択し得る1台または複数の近隣機器がある。
図1に戻って、直接無線接続65で接続されているネットワーク機器の各対において、各機器は他方の機器を近隣機器として認識する。よって、無線HARTネットワーク14のネットワーク機器は、多数の接続65を形成し得る。2つのネットワーク機器間で直接無線接続65を確立する可能性およびそれが望ましいかどうかは、ノード間の物理的距離、ノード間の障害物、2つのノードのそれぞれにおける信号強度などといったいくつかの要因によって決まる。さらに、2つ以上の直接無線接続65が、直接無線接続65を形成することのできないノード間の経路を形成してもよい。例えば、無線HARTハンドヘルド機器55と無線HART機器36の間の直接無線接続65は、無線HART機器36とルータ60の間の第2の直接無線接続65と共に、機器55と機器60の間の通信路を形成する。
【0036】
各無線接続65は、伝送周波数、無線リソースへのアクセス方法などに関連する大規模なパラメータ集合を特徴とする。一般に、無線通信プロトコルは、米国の連邦通信委員会(Federal Communications Commission(FCC))によって割り当てられている周波数
などの指定周波数で、または無線スペクトルの認可不要の部分(2.4GHz)で動作し得ることを当分野の技術者は理解するであろう。本明細書で論じるシステムおよび方法はどんな指定周波数または周波数範囲で動作する無線ネットワークにも適用され得るが、以下で論じる実施形態は、無線スペクトルの認可不要または共用の部分において動作する無線HARTネットワーク14に関するものである。この実施形態によれば、無線HARTネットワーク14は、必要に応じて特定の認可不要の周波数範囲で動作するように容易に作動させ、調整することができる。
【0037】
認可不要の周波数帯域を使用する無線ネットワークプロトコルでは、多種多様な通信装置およびインターフェースソースが存在し得るため、共存が基本的要件である。よって、正常に通信を行うために、無線プロトコルを使用する機器はこの帯域を利用する他の装置と共存しなければならない。共存とは、一般に、あるシステムが、他のシステムがそのタスクを実行することのできる所与の共用環境においてタスクを実行することができることを定義するものであり、その場合様々なシステムは同じ規則集合を使用することもしないこともある。無線環境における共存の1つの要件は、その環境内に干渉が存在していてもプロトコルが通信を維持できることである。別の要件は、プロトコルが、他の通信システムに対してできるだけ干渉および阻害を生じさせないことである。
【0038】
言い換えると、無線環境に取り囲まれている無線システムの共存の問題には2つの一般的態様がある。共存の第1の態様は、システムの他のシステムに対する影響の及ぼし方である。例えば、システムのオペレータまたは開発者は、ある送信機の送信信号が、システムに近接して動作する他の無線システムにどのような影響を及ぼすかを問う。より具体的には、オペレータは、送信機が電源を入れるたびに他の何らかの無線機器の通信を阻害するかどうか、または送信機が通信に過度に時間を費やし、事実上その帯域幅を「独占」するかどうかを問う。無線通信を熟知していれば、理想的には、各送信機は、他のどの送信機もその存在に気付かない「静かな隣人」であるべきことを認めるであろう。こうした理想的な特性は、あり得るとしてもまれにしか得られないが、他の無線通信システムが十分にうまく動作し得る共存環境を作り出す無線システムは「よき隣人」と呼ぶことができる。無線システムの共存の第2の態様は、他のシステムまたは無線信号源が存在していてもシステムが十分にうまく動作し得ることである。詳細には、システムのロバスト性は、そのシステムがどの程度受信側における干渉を阻止することができるか、受信側が近接する無線周波数エネルギ源のために過負荷になりやすいかどうか、受信側が時折のビット損失をどの程度許容し得るか、およびこれらに類似の要因に左右される。プロセス制御分野を含むいくつかの産業分野には、無線通信システムの重要な潜在的用途がいくつか存在する。これらの用途では、データ損失が許容できないことが多い。雑音の多い、または動的な無線環境において高信頼通信を提供することのできる無線システムを、「寛容な隣人」と呼ぶことができる。
【0039】
共存は、(一部は)時間、周波数、距離という自由の3つの態様を有効に用いることに依拠する。通信は、1)干渉源(または他の通信システム)が静かなときに、2)干渉とは異なる周波数で、3)干渉源から十分に離れた場所において行われるときに正常に行うことができる。これらの要因の1つだけを使って無線スペクトルの共用部分において通信方式を提供することもできるが、これらの要因のうちの2つまたは全部を組み合わせて考慮すれば、高い信頼性、セキュリティおよび速度を提供することができる。
【0040】
一実施形態では、無線HARTネットワーク14をサポートするプロトコルは無線HARTプロトコル70である。より具体的には、直接無線接続65はそれぞれ、無線HARTプロトコル70の物理的、論理的要件に従ってデータを転送する。
図2に、プロトコル70と、既存の「有線」HARTプロトコル72との実施形態の1つの構造を示す。無線HARTプロトコル70は、2.4GHz ISM無線帯域で動作するセキュアな無線メッシュ型ネットワーキング技術とすることができる(ブロック74)。一実施形態では、無線HARTプロトコル70は、トランザクションごとのチャネルホッピングを用いるIEEE802.15.4b互換の直接シーケンス拡散スペクトル(direct sequence spread spectrum(DSSS))無線機を利用する。この無線HART通信は、時分割多元接
続すなわちTDMAを使ってリンク動作をスケジュールするように調停される(ブロック76)。すべての通信は、好ましくは、指定のタイムスロット内で行われる。1台または複数の送信元機器および1台または複数の宛先機器が所与のスロットでやり取りするようにスケジュールされ、各スロットは、ただ1台の送信元機器からの通信に、または複数の送信元機器間のCSMA/CAの様な共用通信アクセスモードに専用で使用される。送信元機器は、特定のターゲット機器にメッセージを送り、またはスロットに割り当てられたすべての宛先機器にメッセージをブロードキャストする。
【0041】
信頼性を高めるために、無線HARTプロトコル70は、TDMAと、複数の無線周波数を単一の通信リソースと関連付ける方法、すなわちチャネルホッピングとを組み合わせてもよい。チャネルホッピングは、干渉を最小限に抑え、マルチパスフェージングの影響を低減する周波数ダイバーシチを提供する。詳細には、データリンク76は、単一のスーパーフレームと、データリンク76が制御された既定のやり方で繰り返す複数の搬送周波数との関連付けを作成する。例えば、無線HARTネットワーク14の個々のインスタンスの利用可能な周波数帯域は、搬送周波数F
1、F
2、……F
nを有する。あるスーパーフ
レームSの相対フレームRは、サイクルC
nでは周波数F
1で、続くサイクルC
n+1では周
波数F
5で、サイクルC
n+2では周波数F
2で、以下同様に発生するようにスケジュールさ
れ得る。ネットワークマネージャ27は、この情報を用いて関係のあるネットワーク機器を、スーパーフレームSで通信を行うネットワーク機器が、スーパーフレームSの現在のサイクルに従って送信または受信の周波数を調整するように構成する。
【0042】
無線HARTプロトコル70のデータリンク76は、チャネルをブラックリストに入れる、すなわちネットワーク機器による無線帯域内の特定のチャネルの使用を制限する追加機構を提供し得る。ネットワークマネージャ27は、無線チャネル上で過剰な干渉その他の問題を検出したことに応答してそのチャネルをブラックリストに入れる。さらに、オペレータまたはネットワーク管理者が、通常は無線HARTネットワーク14と共用されるはずの無線帯域の決まった部分を使用する無線サービスを保護するためにチャネルをブラックリストに入れてもよい。実施形態によっては、無線HARTプロトコル70は、各スーパーフレームに別々の禁止チャネルのブラックリストがあるように、ブラックリスト作成をスーパーフレームごとに制御する。
【0043】
一実施形態では、ネットワークマネージャ27は、データリンク層76と関連付けられたタイムスロットリソースを割り振り、割り当て、調整する役割を果たす。ネットワークマネージャ27の単一のインスタンスが複数の無線HARTネットワーク14をサポートする場合、ネットワークマネージャ27は、無線HARTネットワーク14の各インスタンスごとに全体スケジュールを作成する。スケジュールは、スーパーフレームの先頭を基準として番号がふられたタイムスロットを含むスーパーフレームに編成される。加えて、ネットワークマネージャ27は、無線HARTネットワーク14の始動からスケジュールされたタイムスロットの総数を反映するグローバル絶対スロット数も維持する。この絶対スロット数は同期のために使用することができる。
【0044】
無線HARTプロトコル70は、さらに、スケジューリングおよび経路指定を論理的に統合するためにリンクまたはリンクオブジェクトを定義してもよい。詳細には、リンクは、特定のネットワーク機器、特定のスーパーフレーム、相対スロット番号、1つまたは複数のリンクオプション(送信、受信、共用)、およびリンクのタイプ(通常、告知、探索)と関連付けられる。
図2に示すように、データリンク76は、周波数可変とすることができる。より具体的には、チャネルオフセットを使って、通信を行うために使用される特定の無線周波数が計算される。ネットワークマネージャ27は、各ネットワーク機器における通信要件を考慮してリンクの集合を定義する。次いで、定義したリンク集合を用いて各ネットワーク機器を構成する。定義されたリンク集合は、ネットワーク機器がいつ起動する必要があるか、ネットワーク機器が起動時に送信すべきか、受信すべきか、それとも送信と受信の両方を行うべきかどうかを決定する。
【0045】
また、
図2には無線HARTプロトコル70の他の層も示されている。既存のHARTプロトコル72も無線HARTプロトコル70も、公知の通信プロトコルのISO/OSI7階層モデルを中心として厳密でなく編成されている。HART技術の無線拡張では、3つの物理層と2つのデータリンク層、すなわち有線および無線のメッシュがサポートされる。本明細書で述べる無線HARTプロトコルはメッシュ型トポロジの展開を可能にするため、有意なネットワーク層78も指定され得る。
【0046】
前述のように、スーパーフレームは、時間的に繰り返すタイムスロットの集合体として理解され得る。所与のスーパーフレーム内のスロットの数(スーパーフレームサイズ)は、各スロットがどれほどの頻度で繰り返すかを決定し、よって、それらのスロットを使用するネットワーク機器の通信スケジュールを設定する。各スーパーフレームは、特定のグラフ識別子と関連付けられる。実施形態によっては、無線HARTネットワーク14は、異なるサイズの複数の同時スーパーフレームを含む。さらに、スーパーフレームは、複数の無線チャネル、すなわち無線周波数を含んでいてもよい。
【0047】
さらに、無線HARTプロトコル70のトランスポート層80は、効率的なベストエフォート通信および高信頼終端間確認通信を可能にする。当分野の技術者には理解されるように、ベストエフォート通信は、機器が、終端間確認も、宛先機器におけるデータ順序付けの保障もなしでデータパケットを送ることを可能にする。ユーザデータグラムプロトコル(UDP)がこの通信戦略の公知の一例である。プロセス制御分野では、この方法はプロセスデータを公開するのに役立ち得る。詳細には、各機器がプロセスデータを周期的に伝搬するため、特に、新しいデータが規則的に生成されることを考えると、終端間確認および再試行の有用性は、限られたものである。
【0048】
これに対して、高信頼通信は、機器が確認応答パケットを送ることを可能にする。データ配信を保証することに加えて、トランスポート層80は、ネットワーク機器間で送られるパケットを順序付ける。この手法は、要求/応答トラフィックに、またはイベント通知を送信するときに望ましい。トランスポート層80の高信頼モードを使用するとき、通信は同期的となり得る。
【0049】
高信頼トランザクションは、マスタが要求パケットを発行し、1つまたは複数のスレーブが応答パケットで応答するものとしてモデル化することができる。例えば、マスタは、ある要求を生成し、その要求をネットワーク全体にブロードキャストすることができる。実施形態によっては、ネットワークマネージャ27は、高信頼ブロードキャストを使って、無線HARTネットワーク14内の各ネットワーク機器に新しいスーパーフレームをアクティブ化するよう通知する。代替として、センサ30などのフィールド機器がパケットを生成し、その要求を、携帯型HART通信機55などの別のフィールド機器に伝搬してもよい。別の例として、フィールド機器34によって生成された警報またはイベントが、ゲートウェイ22に宛先指定された要求として送信されてもよい。この要求を正常に受け取ったことに応答して、ゲートウェイ22は応答パケットを生成し、それを機器34に送って警報の受信を確認する。
【0050】
図2に戻って、セッション層82は、ネットワーク機器間のセッションベースの通信を提供する。終端間通信は、各セッションによってネットワーク層で管理され得る。ネットワーク機器は、所与のピアネットワーク機器に定義された複数のセッションを持つことがある。実施形態によっては、ほとんどすべてのネットワーク機器がネットワークマネージャ27と少なくとも2つのセッション、すなわち機器対間の通信用に1つと、ネットワークマネージャ27からのネットワークブロードキャスト通信用に1つを確立することが企図されている。さらに、すべてのネットワーク機器はゲートウェイセッションキーを持つ。各セッションは、ネットワーク機器に割り当てられたネットワーク機器アドレスによって区別される。各ネットワーク機器は、その機器が関与する各セッションごとのセキュリティ情報(暗号鍵、ノンス(nonce)カウンタ)およびトランスポート情報(高信頼トランスポートシーケンス番号、再試行カウンタなど)を追跡し得る。
【0051】
最後に、無線HARTプロトコル70も有線HARTプロトコル72も、共通のHARTアプリケーション層84をサポートする。無線HARTプロトコル70のアプリケーション層は、さらに、大規模なデータセットの自動セグメント化転送をサポートする副層86を含み得る。アプリケーション層84を共用することにより、プロトコル70とプロトコル72は、HARTコマンドおよびデータの共通のカプセル化を可能にし、プロトコルスタックの最上位層におけるプロトコル変換が不要になる。
【0052】
図3に示す例では、無線ネットワーク14が効率的で信頼性の高い形で確立されるように各タンク上の無線機器の場所を考えることが重要である。場合によっては、プラント装置が無線接続を妨害し、またはこれに重大な影響を与えるおそれのある場所にルータ60を追加することが必要になる。よって、こうした状況では、無線ネットワーク14が自己回復するものであることが望ましい。この設計要件を満たすために、無線ネットワーク14は、1つまたは複数の直接無線接続65の障害を検出したことに応答して、ネットワーク14が代替経路を介してデータを経路指定するように、冗長な経路およびスケジュールを定義する。さらに、各経路は、ネットワークをシャットダウンすることも再起動することもなく追加し、削除され得る。多くの工業環境における障害物および干渉源の中には一時的なものや移動するものもあるため、無線HARTネットワーク14は、ネットワーク14自体を自動的に再編成することができる。具体的には、1つまたは複数の所定の条件に応答して、フィールド機器の各対が互いに近隣機器として認識し合い、よって、直接無線接続65を作成し、あるいは反対に以前の直接無線接続65を無効にする。ネットワークマネージャ27は、さらに、非近隣機器間の経路を作成し、削除し、または一時的に停止してもよい。
【0053】
個々のネットワーク構成が永続的であるかそれとも一時的であるかを問わず、無線HARTネットワーク14は、ノード間でデータを経路指定する高速で高信頼の方法を必要とする。1つの可能な実施形態では、ネットワークマネージャ27は、ネットワークのレイアウトに関する情報、各ネットワーク機器の機能および更新率、ならびにその他の関連情報を分析する。次いで、ネットワークマネージャ27は、これらの要因を考慮に入れて経路およびスケジュールを定義する。
【0054】
図4〜
図6に、本開示の経路指定および機器アドレス指定の技法と適合するいくつかのネットワークトポロジを示す。特に、
図4には、スター型ネットワークトポロジとして配置されたネットワーク150が示されている。スター型ネットワーク150は、経路指定機器152と1台または複数の端末機器154を含む。経路指定機器152は、データを経路指定するように構成されたネットワーク機器とすることができ、端末機器154は、その機器自体のためにのみデータを送り、その端末機器154にアドレス指定されたデータのみを受け取るように構成されたネットワーク機器とすることができる。当然ながら、経路指定機器152は、データの受信および発信をするものでもあり、他のタスクに加えて経路指定機能を果たす。
図4に示すように、端末機器154は経路指定機器152への直接接続165を有するが、スター型トポロジでは端末機器154同士を直接接続することはできない。直接接続165は、直接無線接続65とすることも有線接続とすることもできる。
【0055】
端末機器154は、経路指定機器152と異なっていても、経路指定機器152と同種の物理機器であってもよく、物理的にデータを経路指定することができてもよい。端末機器154の経路指定機能は、端末機器154のインストール時、あるいは、対応するネットワーク(無線HARTネットワーク14など)の動作時には使用不可とされ得る。さらに、端末機器154の経路指定機能は、端末機器154自体によって使用不可とされても、ネットワークマネージャ27などの専用サービスによって使用不可とされてもよい。別の実施形態では、端末機器154は、限られたファームウェアまたはソフトウェアだけを含んでおり、そのためデータを経路指定することが全くできない。スター型ネットワーク150は、ある意味では、可能なトポロジのうちの最も単純なものに相当し、低電力消費および低待ち時間ですむ小規模用途に適する。加えて、スター型ネットワーク150は、経路指定機器152と個々の端末機器154の間にただ1つの可能な経路しかないため決定論的でもあることが、当分野の技術者にはわかるであろう。
【0056】
図5に移って、ネットワーク170は、メッシュ型ネットワークトポロジとして構成されている。メッシュ型ネットワーク170の各ネットワーク機器は経路指定機器152である。メッシュ型ネットワークは、複数の経路を有するロバストなネットワークを提供する。無線用途では、メッシュ型ネットワークは、変化する無線周波数環境によりうまく適応することができる。例えば、ネットワーク170の機器174は機器176にデータを送るために中間ホップ178を介しても中間ホップ180を介してもよい。
図5に示すように、経路182も経路184も経路指定機器174が経路指定機器176にデータを送ることを可能にし、ネットワーク170に冗長性をもたらし、よって信頼性の向上をもたらす。
【0057】
図5に戻って、経路182および経路184はそれぞれ単方向経路である。すなわち、経路指定機器174、178、176は、経路182と共に有向グラフを形成する。無線HARTネットワーク14の一実施形態では、すべての直接無線接続65が単方向である。双方向無線接続を含む別の実施形態も企図されている。しかしながら、直接接続を単方向で定義すれば、無線ネットワークを設計するに際して重要な利点がもたらされ得ることに留意すべきである。より具体的には、単方向接続を定義すれば、ネットワークにおける送信および受信をするものの定義が自動的に示される。他方、双方向接続ではさらに、共に同時に受信と送信を行い得る2つのホストについての共用または競合解消方式が必要になる。
【0058】
図6に別のネットワークトポロジが示されている。ネットワーク190は、スター型トポロジとメッシュ型トポロジ両方の要素を組み込んだものである。詳細には、スターメッシュ型ネットワーク190は、複数の経路指定機器152および端末機器154を含む。経路指定機器152は、メッシュ形式で接続され、冗長経路をサポートしていてもよい。個々のトポロジの選択は、ネットワークマネージャ27などのネットワークコンポによって自動的に行われてもよく、ユーザがネットワークを構成することによって行われてもよい。特にユーザは、ネットワークマネージャ27によって選択されたトポロジまたは無線HARTプロトコル70と関連付けられたデフォルトのトポロジを指定変更するよう選択してもよい。大部分の用途では、メッシュ型トポロジに固有の信頼性、効率性、および冗長性により、このトポロジをデフォルトトポロジとし得ることが企図されている。明らかに、無線HART機器はルータ機器としても機能するため、フィールド機器およびルータの同じ物理的配置といくつかの異なる構成が適合し得る。
【0059】
無線HARTプロトコル70は、様々な適用要件をサポートするためにいくつかの異なるトポロジで構成され得る。その結果、無線HARTは、複数の経路指定方法をサポートすることになる。一般に、経路指定は、各機器にネットワーク上の特定のアドレスが割り当てられることを必要とする。あらゆる潜在的なデータ受信者が他のネットワーク要素に対する何らかの形の明白な識別を獲得すると、経路指定に関連する決定は、フィールド機器30〜40などの個々の機器によって行われても、ネットワークマネージャ27などに集中化された専用サービスによって行われても、集中化サービスと協働して動作する個々の機器によって行われてもよい。経路指定決定は、発信点、すなわちデータパケットの発生源において、または集中化された場所において行うことができる。さらに、経路指定決定は、発信元から宛先までのパケットの経路内の各中間点、すなわち「ホップ」において調整することもできる。
【0060】
企図される一実施形態では、無線HARTプロトコル70は、システムを構成するネットワーク要素の物理的レイアウト、要素の数、各要素間で送信されるべき期待データ量など、所与のシステムの特定の要件および条件に従って選択され得る、少なくとも2つの経路指定手法を提供する。さらに、これら2つの手法を個々のネットワークが同時に使用してもよく、各手法を、特定の種類のデータに、あるいは特定のホストまたはホスト集合に選択的に適用してもよい。以下でより詳細に説明するように、無線HARTプロトコル70は、ある種のデータを、有向グラフの集合を定義し、各ネットワーク機器と関係のある情報を選択し、その関係する情報を各ネットワーク機器に送ることによって経路指定する。別種のデータでは、無線HARTプロトコル70は、ネットワーク機器の各対間の経路を定義し、パケットヘッダで中間ホップの完全なリストを指定することによってデータパケットを経路指定する。
【0061】
数学的理論および応用において、グラフとは、頂点(152や154といったノード)および辺(直接接続65や165)の集合である。無線HARTプロトコル70では、グラフを使って、例えば、機器30などの通信端点をゲートウェイ22に接続する経路を構成してもよい。実施形態によっては、グラフおよび関連する経路が、ネットワークマネージャ27によって構成される。また、ネットワークマネージャ27は、部分的なグラフおよび経路情報を用いてフィールド機器30〜40、ルータ60といった個々のネットワーク機器を構成することもできる。無線HARTネットワーク14は複数のグラフを含んでいてもよく、その一部が重なり合っていてもよい。さらに、特定のネットワーク機器にある機器を通る複数のグラフの経路があってもよく、それらの経路の中にはデータをある機器の同じ近隣機器に導くものがあってもよい。一実施形態では、グラフは単方向であり、ネットワーク内のあらゆるグラフが一意のグラフ識別子と関連付けられている。
【0062】
図7に示す例では、ネットワーク200は、それぞれ、ゲートウェイ機器22または第2のゲートウェイ機器202を端末ノードとして含む複数の有向グラフを定義し得る。すなわち、例示的ネットワーク200内の各グラフの経路は、2つのゲートウェイ22および202の一方に至り、そこで終端する。具体的には、(黒い実線で示す)グラフ210はネットワーク機器212、214、216、218およびゲートウェイ22を含み、グラフ210と関連付けられた経路は直接無線接続222、224、226、228を含む。(黒い点線で示す)グラフ240はネットワーク機器212、216、218、242およびゲートウェイ202を含み、直接無線接続244、246、248、250、252を含む経路を備える。有向グラフ210では、ネットワーク機器212を有向グラフ210の先頭と呼ぶことができ、ゲートウェイ22を有向グラフ210の末尾と呼ぶことができる。同様に、ネットワーク機器212は有向グラフ240の先頭であり、ゲートウェイ202は有向グラフ240の末尾である。ネットワークマネージャ27、または特定の動作条件の下では、バックアップネットワークマネージャ257は、グラフ210および240を定義し、これらのグラフの部分的定義をネットワーク機器212〜218および242に伝える。実施形態によっては、ゲートウェイ機器22および202は、経路がゲートウェイ機器22と202のうちの1つで終端する場合には、グラフ210および240に関する情報を必要としないこともある。しかし、ゲートウェイ機器22および202は、データを発信してもよく、ゲートウェイ機器22または202から発する経路を有する1つまたは複数のグラフに関する情報を格納してもよいことが理解されるであろう。あるグラフの経路はゲートウェイ機器22または202を越えることもある。しかし、例示的ネットワーク200は、ゲートウェイ機器22または202から発し、またはそこで終端する経路を定義している。
【0063】
例示的ネットワーク200は、通信機器の各対ごとに2つの単方向グラフを定義することにより、ネットワーク機器212〜218または242のうちの1つとゲートウェイ機器22および202の間の双方向通信を可能にする。よって、グラフ210に加えて、ネットワーク200は、ゲートウェイ22から発し、通信機器212で終端する「逆」グラフ(不図示)も定義し得る。このグラフとグラフ210は、異なる中間ノードおよび直接無線接続を含んでいてもよい。さらに、グラフ210とグラフ210の逆(グラフ)は同じ機器対を接続するものであるが、これら2つのグラフは、異なるホップ数を有していてもよい。当然ながら、ネットワーク210の可能な構成によっては、これらのグラフが同じノードおよび直接無線接続を含むこともあり、よって、両方のグラフに含まれる隣接ホップの各対が、一方が上流通信を定義し、他方が下流通信を定義する2つの単方向リンクを有することもある。しかしながら、これら2つのグラフは必ずしも同じ遅延または一定の信号品質を提供するとは限らないことも理解されるであろう。
【0064】
あるグラフに沿ってデータパケットを送るために、送信元ネットワーク機器は、データパケットのヘッダまたはトレーラにグラフの識別子を含めてもよい。データパケットはその宛先に到達し、または廃棄されるまで、グラフ識別子に対応する経路を経由して進む。グラフ210においてパケットを経路指定することができるためには、例えば、グラフ210に属する各ネットワーク機器が、同じグラフに属する、宛先に1ホップ近い近隣ネットワーク機器のグラフ識別子およびアドレスを含むエントリを含む接続表と共に構成されている必要がある。例えば、ネットワーク機器216は「表1」に示す接続表を格納し、ネットワーク機器242は「表2」に示す接続表に以下の情報を格納する。これらの接続表の例は、単に、特定のエントリと関連付けられた機器を記載しているにすぎないが、接続表のノードの列は、ネットワーク200または無線HARTネットワーク14のアドレス指定方式で定義されている近隣機器のアドレスを格納していてもよいことがわかるであろう。
【表1】
【表2】
【0065】
別の実施形態では、ノードの列は、近隣機器のニックネーム、近隣機器の完全なアドレスまたは短縮アドレスを格納する配列へのインデックス、またはネットワーク機器を明白に識別する他の任意の手段を格納していてもよい。代替として、接続表は、「表3」に示すようにグラフ識別子/無線接続の組を格納していてもよい。すなわち、「表3」の接続表は、個々のグラフに対応する1つまたは複数の直接無線接続65を記載し得る。ネットワーク機器216は、例えば、接続表を参照し、直接無線接続246または248を介してグラフ識別子240を搬送するパケットを送る。
【表3】
【0066】
図7および上記各表に示すように、同じグラフ識別子と関連付けられた複数の近隣機器を有することにより冗長経路が確立され得る。よって、ネットワーク機器216に到達する、ヘッダまたはトレーラにグラフ識別子240を含むパケットは、ネットワーク機器218とネットワーク機器242のどちらかまたは両方に経路指定され得る。経路指定操作を実行する間に、ネットワーク機器216はグラフ識別子240により接続表において検索を行い、パケットをネットワーク機器218と242のどちらかまたは両方に送る。さらに、2つ以上の可能なホップの間の経路指定選択は、無作為におこなわれても、既定のアルゴリズムに従って実行されてもよい。例えば、この選択は、負荷平衡化目的を考慮して、または配信統計を考慮して行われる。よって、ネットワーク機器216は、ピアネットワーク機器を介して、またはネットワークマネージャ27から、グラフ240に沿ってパケットを経路指定する間に次のホップとしてネットワーク機器218を選択すると、そのパケットを正常に配信する確率がより低くなり、または配信の際の遅延がより長くなることを知る。その場合、ネットワーク機器216は、グラフ240と関連付けられたパケットのより多く、おそらくはすべてを、ネットワーク機器242に経路指定しようと試みる。
【0067】
一実施形態では、近隣機器によるパケットの受信が、確認パケットによって確認される。上記の例では、近隣のネットワーク機器218または242がパケットの受信を確認すると、ネットワーク機器216はそのパケットを解放する。他方、この確認が既定の期間内に受け取られない場合、ネットワーク機器216はこのパケットを代替のホップを介して経路指定しようとする。加えて、ネットワーク機器216は、正常な配信試行と失敗した配信試行両方の統計を収集してもよい。ホップ218、242からの選択などその後の経路指定決定には、調整済みの統計データが含まれる。当然ながら、ネットワーク機器216は、ネットワーク機器218および242に関連する統計を他の関係のあるグラフに適用してもよく、それらの統計を直接またはネットワークマネージャ27を介して他のネットワーク機器に送ってもよい。
【0068】
前述のように、グラフ経路指定手法において、ネットワーク機器はパケットを、ネットワークヘッダに入れたグラフ識別子と共に、1組の経路に沿って宛先まで送る。重要なことには、パケットを経路指定するにはグラフ識別子だけで十分であり、ヘッダには他の経路指定情報も含まれ得るが、各パケットは、もっぱらグラフ識別子だけに基づいて正しく配信することができる。宛先までの途中にあるすべてのネットワーク機器は、各パケットが転送され得る近隣機器を指定するグラフ情報を用いて事前に構成される。グラフ経路指定は、潜在的宛先ごとの中間ネットワーク機器の事前構成を必要とするため、グラフ経路指定は、ネットワーク機器からゲートウェイへ、およびゲートウェイからネットワーク機器への通信により適する。
【0069】
また、無線HARTネットワーク14またはネットワーク200は、送信元経路指定を使用してもよい。送信元経路指定では、転送機器の事前構成は不要である。送信元経路指定を使ってパケットをその宛先に送るために、送信元ネットワーク機器はパケットのヘッダにそのパケットが経由しなければならない機器の順序付きリストを含める。パケットが経路指定される際に、各経路指定機器はパケットから次のノードアドレスを抽出して使用すべき次のホップを決定する。したがって、送信元経路指定を使用するにはネットワークトポロジの知識が必要である。しかし、あるネットワーク機器が経路指定リスト上にないことを当該ネットワーク機器自身が知ると、そのネットワーク機器は、送信元経路指定リストで指定されている最初の機器にパケットを返送する。送信元経路指定は、中間機器を明示的にセットアップせずに任意の宛先にパケットを向かわせることを可能にする。
【0070】
例えば、ネットワーク機器212は、パケットヘッダまたはトレーラで完全なパスを指定することによってゲートウェイ22にパケットを送る。
図7に戻って、ネットワーク機器212は、ネットワーク機器214および218のアドレスを含むリストを生成し、そのリストをパケットと共にリスト上の最初のホップ、すなわちネットワーク機器214に送る。次いでネットワーク機器214は、リストを探索し、ネットワーク機器214の識別情報を特定してリストからこのフィールドを抽出し、ネットワーク機器218を受信パケットの次のホップとして識別し、最後にそのパケットをネットワーク機器218に送る。送信元経路指定リストは、ネットワークヘッダの任意選択領域にあってもよく、宛先までのホップ数に応じた可変サイズとすることができる。
【0071】
一実施形態では、ネットワークマネージャ27から完全なネットワーク情報を取得しているネットワーク機器だけが送信元経路指定を使用する。というのは、ネットワークマネージャ27だけがネットワークのトポロジを知っているからである。送信元経路指定の別の限界は、各パケットが通過すべきホップの明示的リストを含み代替経路を含まないため、中間ネットワーク機器における冗長性が提供されないことである。よって、機器の1つが指定どおりにパケットを送れない場合、代替の宛先指定は行われない。したがって、その障害を検出し、代替の経路で送信元をプログラムし直すのはネットワークマネージャ27の役割である。そうした誤りの検出を円滑に行わせるために、無線HARTプロトコル70は、各ネットワーク機器がネットワークマネージャ27に経路指定失敗通知を送り返すよう求める。別の実施形態では、経路指定リストは、送信者によって選択される経路に加えて代替の経路も指定する。別の実施形態では、パケットヘッダまたはトレーラにおける経路の共通部分の重複を回避するために第1の経路と1つまたは複数の代替経路が併合される。
【0072】
前述の実施形態のいくつかによれば、ネットワークマネージャ27は、ネットワーク内のすべての機器のリストを含む。また、ネットワークマネージャ27は、ネットワークの完全なグラフおよび各機器と通信するグラフの部分を含むすべてのネットワークトポロジを含んでいてもよい。ネットワークマネージャ27は、ネットワークマネージャ27がネットワーク機器30〜40、50、60、55、212〜218などから受け取る情報を使って経路および接続情報を生成する。ネットワークのグラフは、ネットワーク機器および報告された各機器の近隣機器のリストから構築される。また、ネットワークマネージャ27は、ネットワークのすべての経路情報を生成し、維持する役割も果たす。一実施形態では、常に、完全なネットワーク経路と、ゲートウェイ22または202から最終制御コマンドへ設定点その他の設定を送るのに使用されるいくつかの専用経路とがある。さらに、ネットワークマネージャ27または257からネットワーク14または200のすべての機器にブロードキャストメッセージを送るのに使用されるブロードキャスト経路があってもよい。さらに、ネットワークマネージャ27は、経路指定情報およびバーストモード更新率がわかった後で、ネットワークリソースのスケジューリングを実行してもよい。
【0073】
ネットワーク200または14に機器が最初に追加されると、ネットワークマネージャ27は、各ネットワーク機器から報告されるすべての近隣機器エントリを格納する。ネットワークマネージャ27はこの情報を使って、初期の完全なネットワークグラフ(または順方向グラフおよび逆方向グラフを含むネットワークグラフの集合)を構築し、動作に際してグラフを修正する。各ネットワークグラフは、前述の統計収集によって反映されるホップ数、報告率、電力使用量、および全般的トラフィックの流れを含むいくつかの特性を最適化することによって作成される。トポロジの1つの重要な態様は、機器を相互に接続する接続のリストである。個々の接続の有無および正常性は時間の経過と共に変化するため、ネットワークマネージャ27は、さらに、全般的トポロジを更新するようにプログラムされ、または構成されていてもよく、これには各機器における情報の追加および削除が含まれる。実施形態によっては、ネットワークマネージャ27または257およびゲートウェイ22または202だけが送信元経路指定を使用するのに十分な情報を知っている。より具体的には、セキュリティのために任意の2つの機器間のピアツーピア通信を許容しないことが求められることもある。
【0074】
要約すると、グラフ経路指定は、ネットワークマネージャ27またはゲートウェイ22に対して上流と下流両方にトラフィックを宛先指定し、グラフ経路も送信元経路も、待ち時間要件が低い用途を満足させるように最適化することができ、これにはネットワーク機器からゲートウェイに転送される測定情報と、ゲートウェイ機器から、調整バルブ、オン/オフバルブ、ポンプ、ファン、ダンパ、ならびに他の多くのやり方で使用されるモータといった最終制御コマンドに転送される制御情報が含まれる。
【0075】
実施形態によっては、経路冗長性は、グラフの偶然のオーバーラップではなく、ネットワークマネージャ27のポリシの問題である。すなわち、ネットワークマネージャ27は、各機器ごとに少なくとも2台の近隣機器を定義しようとする。よって、ネットワークマネージャ27は、メッシュ型またはスターメッシュ型トポロジを積極的に追及するように構成されている。よって、無線HARTプロトコル70は、極めて高い終端間データ信頼性を提供する。物理的視点から見ると、各フィールド機器は、そのフィールド機器からメッセージを受信し、それらのメッセージを転送することのできる少なくとも2台の別の機器の通信範囲内に配置される必要がある。
【0076】
加えて、ネットワークマネージャ27は、ループが形成されていないことを確認するために各グラフ定義を検証してもよい。ネットワークマネージャ27が経路冗長性を積極的に追及し、様々なサイズの多くのグラフを定義する実施形態では、データパケットを送信元から同じ送信元に戻すように通信路が誤って定義されることもある。かかる欠陥を有するグラフ定義に従えば、パケットは、送信元から直接その送信元に戻るように経路指定されることもあり、1つまたは複数の中間ホップを通過してから送信元に戻ることもある。ループ検証は、機器の追加や除去などにより関連するネットワークのトポロジが変化するたびに、またはネットワークマネージャ27が何らかの理由で経路指定グラフおよびスケジュールを調整するたびに行われ得る。代替として、ネットワークマネージャ27は、ループチェックを、バックグラウンドとして周期的に行ってもよい。
【0077】
前述のように、経路指定に関与する機器は、データパケットを配信し、正しく中継するために、異なるグラフ経路、送信元経路、または宛先アドレスを格納し、または獲得する。各ネットワーク機器のアドレスは、無線HARTネットワーク14が、有線HART機器を含み得るより大規模なネットワークと正しく協働するように、グローバルに一意なものとしなければならない。このために、無線HARTプロトコル70は、あいまいでないアドレス指定方式を提供し、さらに、より大規模なネットワークコンテキストへの効率のよいアドレスのマッピングも提供する。無線HARTプロトコル70が、有線HART機器と共に使用されるアドレス指定方式と互換性を有するアドレス指定方式を提供することは重要である。
【0078】
図8に、ネットワーク設計ツールのアーキテクチャの例45を示す。エンジン300はツール論理を持ち、グラフ生成器302およびスケジュール生成器(または「スケジューラ」)304を含んでおり、これらは、さらに、相互に対話し合って経路指定とスケジューリングが組み合わさった決定を生成し、または作成する。また、エンジン300は、最適化規則306の集合も含む。最適化規則306はそれぞれ、最適化戦略の特定の側面のアルゴリズム記述を含み、また、1つまたは複数のユーザパラメータにも依存し得る。例えば、最適化規則306の1つは、特定のノードへのX個を超える数の接続の作成が禁じられていることを示すものである。ユーザは、エンジン300が動作時に規則を適用することができるように、ユーザインターフェース312を介してXに特定の値を割り当ててもよい。要約すると、エンジン300は、ネットワーク設計ツール45のインテリジェントコンポーネントをカプセル化したものである。エンジン300は、ユーザインターフェースの1つまたは複数のインスタンス310〜312と対話する。実施形態によっては、ネットワーク設計ツール45は、分散方式で実行され、複数のオペレータからのエンジン300の機能への同時アクセスを可能にすることもある。例えば、ワークステーション16はインターフェース310を実行または提供し、リモートホスト41はエンジン302およびユーザインターフェース312を実行する。ユーザインターフェースインスタンス310および312はそれぞれ、それぞれの対応ホストにおけるハードウェア利用可能性に従ってカスタマイズされてもよく、さらに、言語など、オペレータの特定の要件および基本設定に合わせてカスタマイズされてもよい。
図8に示すように、ユーザインターフェース312は、マウス314、キーボード316、モニタ318、そしておそらくは印刷装置(不図示)といった物理機器と対話する。当分野の技術者はさらに、ユーザインターフェース312またはユーザインターフェース310が、同様に他の入出力機器に接続することもできることを理解するであろう。
【0079】
前述のように、ネットワーク設計ツール45は、1つまたは複数の対話式ウィンドウによるユーザインターフェースを提供し得る。マイクロソフトウィンドウズ(登録商標)や類似のグラフィック環境を熟知した人にはわかるように、対話式ウィンドウは、一般的には、テキストおよびグラフィックスを含むキャンバス領域、対応するソフトウェアの様々な機能へのアクセスを可能にするツールバー、頻繁に使用される機能またはグラフィックオブジェクトへのショートカットを提供するツールバー上に配置されたボタン、およびユーザが可視ウィンドウをキャンバスの特定の部分に合わせることを可能にする垂直と水平のスクロールバーを含む。一般には、ネットワーク設計ツール45は、任意のオペレーティングシステム上で実施される。しかしながら、ネットワーク設計ツール45のユーザインターフェースコンポーネントがその上で実行されるオペレーティングシステムは、好ましくは、グラフィカルインターフェースをサポートする。以下で論じる実施形態では、ネットワーク設計ツール45は、円、正方形、矢印などといった幾何学形状として視覚オブジェクトを操作することを可能にするが、他のグラフィックオブジェクトを使用してもよい。さらに、ネットワーク設計ツール45は、グラフィックオブジェクトの状態を示し、またはその他の追加情報を伝えるために、モニタ318上の各オブジェクトを異なる色で描写してもよい。
【0080】
図8に戻って、エンジン300は、ライブネットワークインターフェース320の1つまたは複数のインスタンスとも対話する。ライブネットワークインターフェース320は、無線HARTネットワーク14からのデータをエンジン300に報告する。詳細には、ライブネットワークインターフェース320は、ネットワーク14の各ネットワーク機器によって測定される信号強度、時間遅延、その他のネットワーク性能データに関連する測定値を報告する。ライブネットワークインターフェース320を介してネットワーク14からネットワーク性能データを受け取ったことに応答して、エンジン300は、これらの報告を、ユーザインターフェース310または312を介して1人または複数のユーザに伝える。加えて、エンジン300は、無線ネットワーク14に対応するネットワークモデル324の経路指定およびスケジューリングを自動的に調整する。
図8に示すように、ネットワークモデル324は、ホスト16、18、41、47または55のうちの1つに結合されたメモリ326に格納される。
【0081】
図9を参照すると、ネットワーク設計ツール45は、ユーザインターフェースモジュール310または312と対話する1人または複数のユーザに、ネットワーク構成やネットワークシミュレーションといったネットワーク設計ツール45の機能へのアクセスを可能にするメインメニュー340を提示する。
図9に示す例示的実施形態では、メインメニュー340はファイルサブメニュー342、グラフ生成オプションサブメニュー344、トポロジサブメニュー346、およびスケジュールサブメニュー348を含む。具体的には、ファイルサブメニュー342は、ネットワークモデル324をメモリ326その他の記憶場所に保存する、ネットワークモデル324を含むファイルを印刷装置に送るといった標準のファイル操作機能セットを提供する。一方、グラフ生成オプションサブメニュー344は、経路選択規則350、グラフタイプ選択352、およびその他のユーザ構成可能規則およびパラメータへのアクセスを可能にする。
【0082】
メインメニュー340からトポロジサブメニュー346を呼び出すことにより、ユーザは、ネットワークモデル324に対応する図面を含む対話式キャンバス画面にアクセスする。トポロジサブメニュー346は、ノードの追加および削除、信号強度の編集、ネットワークモデル324のビューの変更、および自動グラフ生成のためのインターフェース354を含む。他方、スケジュールサブメニュー348は、生成したスケジュールの表示に関するいくつかのオプションを提示する。例えば、グラフビュー356は、マスタスケジュールともいう、ネットワークスケジュール全体の多色のユーザにわかりやすい視覚表現を表示する。テキストビュー358は、同じマスタスケジュールのテキスト記述を提供する。最後に、XMLビュー360は、XMLの規則に従ったマスタスケジュールのテキスト記述を生成する。
【0083】
図10に移って、対話式ウィンドウ380は、トポロジサブメニュー346を介してユーザがアクセスすることのできるネットワークモデル324のビューを提示する。対話式ウィンドウ380は、キャンバス領域382、ツールバー384、およびスクロールバー386〜388を含む。ツールバー384は、例えばプルダウンリストなどとしてサブメニュー342〜348への対話式アクセスを可能にする。加えて、ツールバー384は、1つまたは複数のショートカットボタン390も含む。ショートカットボタン390は、ユーザに、様々なネットワーク機器を表す記号をキャンバス領域382に追加する簡単で効率のよい方法を提供する。詳細には、ユーザは、ショートカットボタン390の1つを操作して、ゲートウェイ機器、ネットワークアクセスポイント、フィールド機器、ルータなどを表す記号を選択する。加えて、ツールバー384は、壁などの物理的障害物に対応する非ネットワーク要素ボタン392も含む。その場合ユーザは、マウス314または類似のポインティング装置を使って選択した記号をキャンバス領域382上にドラッグする。別の実施形態では、ユーザは、キーボードキーを操作して、記号を選択し、それらの記号をキャンバス領域382に配置するためのテキストコマンドを入力する。
【0084】
キャンバス領域382は、無線HARTネットワーク14が動作するプラント領域の記号的表現であってよい。ネットワーク機器を表す記号の配置は、機器間の相対距離を正確に反映する。すなわち、キャンバス領域382上のモデル324のグラフィック表現は縮尺どおりとすることができる。また、各記号を相互に対して正確に配置する作業を簡単にするためにキャンバス領域382がグリッド(不図示)を含むことも企図されている。別の実施形態では、キャンバス領域382がプラントの概略図を含む。例えば、キャンバス領域382は、モデル324と対応する物理機器の実際の地理的位置決めとの対応関係がユーザに容易にわかるように、タンク、バルブ、パイプ、およびプロセス制御システムのその他の構成要素の2次元または3次元の縮尺どおりの表現を含む。さらに、キャンバス領域382は、壁などの現実の物理的障害物、ならびに通路や事業所といったアクセス不能領域または「禁止」領域も概略的に表す。この実施形態によれば、ネットワーク設計ツール45は、ユーザが障害物要素ボタン392を操作して障害物記号の描画を指定することを必要とせずに物理的障害物を考慮に入れる。
【0085】
キャンバス領域382上にネットワーク機器または障害物を表す記号を配置した後、ユーザは、記号を選択し、対話式パラメータウィンドウを呼び出し、モデル化した機器に特有のパラメータ集合を入力することによってモデル化した機器をさらに構成する。
図10に示す例では、ユーザは、キャンバス領域382上に、機器記号400を含む複数のネットワーク機器記号を配置している。より具体的には、ユーザは、ショートカットボタン390の中からフィールド機器を表す記号を選択し、マウスクリックまたは類似の方法でその記号をアクティブ化し、記号のコピーをキャンバス領域382内の所望の場所にドラッグしている。この例示的実施形態では、フィールド機器記号は、「D」の文字を囲む円であり、文字は様々な種類のネットワーク機器を視覚的に区別するために使用される。次いでユーザは、例えば既定のマウスボタンをクリックしてパラメータ表示メニューを呼び出し、機器記号400に対応する物理フィールド機器が電池によって電源供給されることを指定している。その結果、無線ネットワーク機器ツール45は、機器記号400の隣に電池記号402を表示する。
【0086】
ユーザは、さらに、各フィールド機器ごとに、その機器が別のネットワーク機器に測定値その他のデータを報告する率を指定する。この報告率はバースト率ともいう。無線HARTネットワーク14の例では、フィールド機器が上流のゲートウェイ機器22にデータを報告する。無線ネットワーク機器ツール45は、機器記号400の隣に配置された指標404としてバースト率を表示する。ユーザは、さらに、機器記号400に対応する物理機器が無線信号を送信する電力を指定する。一実施形態では、ユーザは、既定のキーボードまたはマウスのキーを押して電力設定オプションを呼び出す。キー押し下げイベントを検出したことに応答して、ネットワーク設計ツール45は、例えば、ユーザがワット単位で測定される信号強度を入力するための対話式ウィンドウを表示する。代替として、ユーザは、ネットワークモデル324を構成するプロセスを簡単にするために、各ネットワーク機器を同じ所定の電力レベルと関連付けるようにネットワーク設計ツール45を構成してもよい。
【0087】
機器記号がキャンバス領域382に追加される際に、ネットワーク設計ツール45は、新しい記号ごとに順序番号を割り当てる。別の実施形態では、ネットワーク設計ツール45は、対応するグラフの幅優先探索で各記号が見つかる順序に従って番号を割り当て、ゲートウェイ記号の1つに順序番号0が割り当てられ、グラフの先頭に配置される。
図10に示す例では、ネットワーク設計ツール45は、機器記号400の隣に指標406として順序番号を表示する。
【0088】
図10に戻って、ユーザは、キャンバス領域382上にゲートウェイ記号410およびネットワークアクセスポイント記号412を配置している。先に
図1を参照して論じたように、ゲートウェイ機器22は、1対の専用配線を介するなど、信頼性と効率性の高いよいやり方で複数のネットワークアクセスポイント25に接続されている。ネットワーク設計ツール45は、ゲートウェイからネットワークアクセスポイントへの接続の相対的信頼度を、有線リンク414を表す実線によって示す。これに対して、ネットワーク設計ツール45は無線リンクを、例えば、機器記号400と412の間の無線リンク416の場合のように点線によって示す。当然ながら、ネットワーク機器間の無線および有線接続は他の任意のやり方で描かれてもよく、線414および線416は例として示すにすぎない。
【0089】
次に、ネットワーク設計ツール45はネットワークモデル324の分析を開始し、各機器における信号強度、機器間の距離、各機器の電力、受信側機器のタイプ、無線信号を減衰させる可能性のある障害物の有無といった要因を考慮に入れ、あらゆるネットワーク機器対間のあらゆる無線リンクの品質を評価する。各機器は固有の電力レベルで無線信号を送信するため、機器Aから機器Bまでの単方向リンクのパラメータは、機器Bから機器Aまでの単方向リンクのパラメータとは異なる。例えば、ネットワーク設計ツール45は、機器記号400に対応する物理機器が記号400と記号412で表わされる物理ネットワーク機器間の距離を越えて送信する無線信号の減衰を計算することにより、単方向無線リンク404の品質を推定する。前述のように、記号400と記号412で表わされる物理ネットワーク機器間の距離は、モデル324が縮尺どおり描かれている場合、記号400または記号412の相対的配置によって正確に反映される。代替として、ユーザは、ネットワーク機器対間の距離を、例えば、ネットワークモデル324上の無線リンクを選択し、適切な設定画面をアクティブ化し、フィートまたはメートル単位で距離を入力することによって指定してもよい。計算を完了すると、ネットワークツール45は、無線リンク416の隣に信号品質指標420を表示する。
図10に戻って、フィールド機器を表す記号422とルータ機器を表す記号424は、無線リンクで接続され、距離Xだけ離れており、記号422と記号426は距離Yだけ離れている。したがってネットワーク設計ツールは、それに応じて、機器422から機器424と機器426とに延びる単方向リンクの隣に指標428と指標430とを表示する。
【0090】
ネットワーク設計ツール45は、ユーザがキャンバス382に新しいネットワーク機器を追加する際に、各無線リンクを評価する。よって、ネットワークモデル324がネットワーク機器記号S1、S2、……Snを含む場合、機器記号Sn+1を追加するには、ネットワーク設計ツール45が各記号対、すなわち{S1,Sn+1}、{S2,Sn+1}、……、{Sn,Sn+1}の間のn個の新しいリンクを評価することが必要である。混乱を回避するために、ツールバー384は最適化提示モードを切り換えるボタン432を含む。より具体的には、切り換えボタン432の1つは、ネットワーク設計ツール45に、例えば−10dBを超える信号品質など、既定の品質基準を満たす無線リンクだけを表示させる。逆に、別の切り換えボタン432は、ネットワーク設計ツール45に、品質にかかわらず、すべての無線リンクを表示させる。
【0091】
既定の品質基準集合を満たすリンクの集合は、ゲートウェイ機器をネットワークアクセスポイントに接続する有線リンクと共に、マスタグラフ435を形成する。加えて、フィールド機器記号422からゲートウェイ機器記号412までの経路など、ネットワーク機器対間の各経路も個別グラフを形成する。さらに、各グラフはゲートウェイの1つに対する上流または下流のグラフとすることができる。ネットワーク設計ツール45は、リンク416が上流グラフの一部であることを示すためにネットワークアクセス記号412の方向を指し示すリンク416上の矢印などの矢印によって各無線リンクの方向を示す。また、ツールバー384は、ユーザが、下流グラフのみの表示、上流グラフのみの表示、上流と下流両方のグラフの同時表示といった表示オプションの中から選択するために操作するグラフモードセレクタ437も含む。
【0092】
図11に示すように、対話式画面450は、グラフ生成オプションサブメニュー344に対応する。ユーザは、対話式画面450を使って、ネットワークモデル324によってシミュレートされるネットワーク上の経路選択およびスケジューリングに関する基本設定を構成する。この例示的実施形態では、対話式画面450は、スター型とメッシュ型とスターメッシュ型の各トポロジの中からの選択を可能にするネットワーク型セレクタ452を含む。例えば、ユーザがネットワーク型セレクタ452によってスター型トポロジを選択した場合、ネットワーク設計45は、ゲートウェイ機器またはネットワークアクセスポイントを中心とするスター型トポロジと適合する無線接続を自動的に定義する。
図10に示すネットワークモデルの場合、フィールド機器対間の各無線接続は除去される。代わりに、ネットワーク設計ツール45は、412と422、412と424といった機器記号間の無線接続をシミュレートする。
【0093】
さらに、対話式画面450は閾値信号強度セレクタ455を含む。セレクタ455を使ってユーザは、グラフで使用するのに許容できる送信側機器と受信側機器の間のリンクを考慮するために受信側機器によって検出されなければならない、送信側機器から送信される信号の最小強度を指定する。当然ながら、ユーザは、セレクタ455を使ってネットワークモデル324の構成中にいつでもこの最小信号強度信号強度値を変更してよい。ユーザがセレクタ455によって新しい値を入力したことに応答して、ネットワーク設計ツール45は、各機器対を再評価し、場合によっては無線リンクを削除または追加する。
図11に示す例では、セレクタ455はスクロールバーおよびテキスト指標を含む。しかしながら、セレクタ455、および本明細書で論じる他のセレクタを、任意の図表またはテキストによって実施することも同様に可能であることを当分野の技術者は理解するであろう。
【0094】
ヒステリシスレベルセレクタ457は、ネットワーク設計ツール45がネットワークグラフの再評価を開始する信号強度をユーザが指定することを可能にする。ライブ無線HARTネットワーク14からネットワーク設計ツール45に報告されるフィードバック情報が1つまたは複数のリンクの信号の変化を示す場合、ネットワーク設計ツール45は、ヒステリシスレベルセレクタ457を介して設定された値を参照してグラフ再評価をいつ開始しなければならないか判断する。例えば、特定のリンクにおける信号の強度が、セレクタ455を介して構成された最小レベルをわずかに下回るが、依然としてセレクタ457を介して構成されたヒステリシスレベルを上回ることもある。この場合、ネットワーク設計ツール45は、例えば、信号強度が周期的にわずかに閾値信号レベルを下回り、その後に閾値信号レベルを上回ることを繰り返しているときにネットワークグラフを再評価するといった状況を回避するために、まだグラフ評価には進まない。
【0095】
また、対話式画面450は、近隣機器数セレクタ459も含む。セレクタ459を使ってユーザは、グラフ構築時に個々のネットワーク機器において考慮すべき近隣機器の最大数を指定する。例えば、記号400で表わすネットワーク機器は、潜在的には、ネットワークモデル324に対応する7台すべての無線ネットワーク機器との無線リンクを確立し得る。当然ながら、各無線リンクは、送信側機器からの距離その他の物理的要因により異なる信号強度を有し、したがって、異なる全体リンク品質を有する。よって、潜在的な各近隣機器ごとに接続を確立しようと試みるのは賢明ではないこともある。そうではなく、効率のよいグラフ選択戦略は、限られた数の潜在的近隣機器だけに絞るものである。セレクタ459によって選択される値は、例えば、ある機器に、セレクタ455によって構成された信号強度要件を満たす3台を上回る近隣機器があっても、潜在的近隣機器の数を3などの小さい値に制限する。
【0096】
さらに、対話式画面450は、比較的良好な信号強度を特徴とするマルチホップリンクと比較的低品質の信号強度を特徴とするシングルホップリンクの間で選択を行うための基準を指定するセレクタ461を含む。一般に、機器対間のシングルホップリンクが好ましいのは、諸要件の中でも特に、待ち時間がより低く、スケジューリングが比較的簡単だからである。しかしながら、シングルホップの信号品質は、同じ機器対を接続するマルチホップリンクと比べると劣る。これらの選択肢の間で正しい選択を行うためには、各手法と関連付けられるトレードオフを量子化し、比較しなければならない。
図11に示す例示的実施形態では、ユーザは、ネットワーク設計45がシングルホップリンクに優先してマルチホップリンクを選択するために、マルチホップの信号強度が対応するシングルホップリンクの信号強度を上回らなければならないデシベル数を指定する。
【0097】
図11に戻って、対話式画面450は、さらに、最小ホップ数セレクタ463を含む。ユーザは、ネットワーク設計ツール45がグラフを構築するときに考慮すべき最小ホップ数を指定する。最小ホップ数はデフォルトで「1」に指定され得るが、必要に応じて別の数にデフォルト指定することもできる。
【0098】
最大ホップ数セレクタ465は、ユーザがホップ数で測定される個々のグラフの最大長を指定することを可能にし、「4」などの特定の数にデフォルト指定されるが、このデフォルト設定は用途によって異なっていてもよい。例えば、ユーザは、無線HARTネットワーク14を使ったプロセス制御システムが、機器間経路の4ホップのデフォルト設定に伴う遅延を許容しないと判断し、セレクタ465を介してホップ制限を3に設定する。その結果、ネットワーク設計ツール45は、この制限の結果として比較的低品質の無線リンクが選択されることになるとしても、3を超えるホップ数を含むグラフすなわち経路を定義しなくなる。セレクタ450およびセレクタ465は、ツールまたはエンジン300が、ネットワークのグラフおよびスケジュールの集合を作成するときに、最小ホップ数(デフォルト設定1になど)および最大ホップ数(デフォルト設定4など)を考慮することを可能にする。加えて、必要に応じて、これらのセレクタおよび本明細書で述べるその他のセレクタをノードごとに設定できるようにすることもでき、これによりユーザは、バルブなどの致命的な項目の待ち時間を低減することができるようになる。
【0099】
対話式画面450の例示的実施形態では、ユーザは、さらに、電池式ネットワーク機器と比べて、110V ACラインなどの永続的電源で電源供給されるネットワーク機器を介してデータを経路指定することの望ましさを量子化することもできる。例えば、ユーザは、不利益度(disadvantage factor)セレクタ467のウィンドウに「3」という数字を
入力する。その結果、ネットワーク設計ツール45は、電源供給されるネットワークノード3を通る各ホップを、他のすべての要因が同じであれば、電源供給されないネットワークノードを通るホップの3倍好ましいものとみなすようになる。
【0100】
一般に、ネットワーク設計ツール45、特にエンジン300は、グラフおよびスケジューリングの決定を行うとき、潜在的リンクまたはグラフに数値による望ましさの指標を割り当て、既定の順序で最適化規則306を適用することによって複数の要因を検討する。規則の中にはネットワーク設計ツール45を、ある規則では特定のノードを迂回し、別の規則ではデータが同じノードを通るよう経路指定するなど、両立し得ない手法に誘導することもあるため、最適化規則306に相対的優先度を割り当てれば、ネットワーク設計ツール45がこうした競合を解決するのに役立つ。
図11Aに、ネットワーク設計ツール45が自動グラフ定義の一部として実行し得る例示的手順500を示す。前述のように、ネットワーク設計ツール45は、ユーザがキャンバス382に新しい機器を追加したとき、無線HARTネットワーク14の実際の性能に関するフィードバック情報がライブネットワークインターフェース320に届いたとき、または既定のキー押し下げやメニューオプション選択といったユーザ操作に応答して手順500を呼び出す。
図11Aでは、最適化規則306の適用が一連のステップとして示されているが、これらのステップのうちの一部は同時に実行されてもよいことが理解されるであろう。さらに、最適化規則306の中には常にその他の規則と競合せず、したがって、手順500のどの段階においても適用され得るものもある。
【0101】
手順500を実行する第1のステップとして原則502を適用する。詳細には、手順500はまず、可能なときは常に、ゲートウェイ22までの、または、冗長ゲートウェイ機器が利用できる場合には、仮想ゲートウェイ24までのシングルホップ経路を定義しようとする。ゲートウェイ22が1つまたは複数のネットワークアクセスポイント25を介して無線HARTネットワーク14とやり取りする実施形態では、シングルホップ経路は、ネットワークアクセスポイントのうちの1つに対して定義される。当然ながら、手順500は、対話式画面450を介して構成される制限、特に、セレクタ455を介して指定される閾値信号強度制限に違反することはない。
図10に示すネットワークモデル324に戻って、手順500は、例えば、機器記号400に対応する物理機器は、記号412に対応するネットワークアクセスポイントまでのシングルホップ無線リンク416を確立し得るが、記号422に対応する機器は、ネットワークアクセスポイント(記号412)と、記号426で表わされるフィールド機器などの中間ノードを介して通信しなければならないと判断している。
【0102】
図11Aに戻って、原則502は、電源供給される機器を通ってデータを経路指定するという選択に対応する。原則502によれば、手順500は、記号400に対応するデバイスは電池式であるため、この機器を迂回しようとする。しかしながら、手順500は、ユーザがセレクタ467によって指定している値も考慮に入れて、この機器を迂回すべきかどうか決定する。前述のように、他の要因が代替ノードを同様に、またはより望ましくないものとすることもあり、手順500は、代替ノードを比較するときには定量的基準を使用しなければならない。
【0103】
次に、手順500は、個々のグラフのホップ数を可能な限り低く保とうとしながら、引き続き残りのグラフの定義を行う。企図される一実施形態では、手順500は、最初に、その品質にかかわらず各潜在的無線リンクすべてを含むマスタグラフを構築する。次いで、手順500は、各ネットワーク機器を順次考察し、初期のマスタグラフをトラバースしてすべての潜在的経路を識別し、前述の要因およびその他の考慮事項に鑑みて最善の候補を選択する。具体的には、初期のマスタグラフに原則506を適用するとき、手順500は、対話式画面450を介して構成されたユーザ要件も満たす、ホップ数のより低いグラフを選択する。
【0104】
経路選択時に個々の機器の近隣機器の間で選択を行うとき、手順500は原則508を適用、それによってよりよい信号強度を有するリンクが優先される。しかし、手順500は、必ずしも、原則502〜508を考察した直後に経路の確定的選択を行うとは限らない。ブロック510で、手順500は、各リンクと原則502〜508の1つまたは複数との呼応(agreement)に従って、各リンクに数値、すなわち重みを割り当てる。例えば、
手順500は、あるネットワーク機器から発するリンクの重みを、そのネットワーク機器が電源供給されているためにセレクタ467を介して入力された係数で乗じる。他方、手順500は、同じネットワーク機器から発する異なるリンクの重みを、このリンクがホップ数で測るとゲートウェイまでのより短い経路の一部であるために増大させる。次いで手順500は、ブロック512で、2つの数値の間の単純比較を実行して、これら2つのリンクの中から選択する。
【0105】
手順500は、原則502〜508に従ってグラフを定義する間にホップ数および近隣機器数の制限を適用する。すなわち、手順500は、ブロック512で実行されるあらゆる経路およびリンク選択が対話式画面450を介して指定されたあらゆる規則と整合性を有するかどうかチェックする。代替として、手順500は、ブロック512で重み付き経路の選択を完了した直後に、ブロック514とブロック516でそれぞれ、ホップ数と近隣機器数の制限を適用してもよい。この場合、手順500は、前に選択したリンクおよび経路の一部を削除し、ブロック512に戻る。
【0106】
さらに、手順500は、例えば経路冗長性を保証するなどのために、ブロック512で各機器ごとに少なくとも2つの経路を選択しようとする。すなわち、手順500は、選択した第1の経路に加えて、同じ機器対を接続するための少なくとも1つの異なる重複(duplicate)経路を割り振ろうと試みる。このようにして、第1の経路の各ノードのうちの1
つで障害が発生し、または第1の経路内のノード対の間に予期しない障害物があっても、必ずしも機器が通信を妨げられるとは限らない。ネットワーク設計ツール45は、対応する記号に着色することによってフィールド機器をゲートウェイまで接続する冗長経路が利用できるかどうかを示す。
図12に、
図10に示すネットワークモデル324が構築された後に、ユーザが対話式ウィンドウ450を呼び出した後でネットワーク設計ツール300によって生成されるネットワークモデルを示す。詳細には、ユーザは、閾値信号強度セレクタ455を操作して閾値を増やしている。その結果ネットワーク設計ツール450は、重複するリンクの一部を削除しており、記号400は
図12では
図10と異なる色で表示されている。これに対して、記号426は、記号400をネットワークアクセスポイント記号412に接続する経路内のノードとしても、記号520と記号522を記号412に接続する経路内のノードとしても表示されるため、元の色で表示されている。さらに、
図12に示すように、記号422で表わされる機器は、今度は、この機器をその近隣機器に潜在的に接続するリンクのいずれも新しいユーザ要件を満たさないために無線HARTネットワーク14から切断されている。
【0107】
次に
図13を参照すると、ユーザは、障害物ボタン392を操作してキャンバス領域382に障害物記号530を配置する。一実施形態では、ユーザは、さらに、記号530を広げ、または公知の描画手段の1つを使って不規則な形を描くことによって障害物をカスタマイズする。別の実施形態では、ユーザは、さらに、記号530をクリックし、障害物構成メニューを介してデシベル単位の数値を入力することによって、記号530で表わされる障害物信号減衰率を指定する。別の実施形態では、ユーザは、さらに、1つまたは複数の動画パラメータを指定することによって動く障害物をシミュレートする。ネットワーク設計ツール45は、指定した速度で移動する障害物によって生じる外乱を、その障害物の影響を被る機器のバースト率を考慮に入れてシミュレートし得ることが企図されている。当然ながら、1分間に1度しか測定値を報告しない機器は、わずか1、2秒間にわたって機器の通信リンクを実質的に遮断する障害物には「気付かない」こともあり、毎秒測定値を報告する別の機器は、同じ条件集合下での1つまたは複数の報告を伝搬し損なうこともある。よって、ネットワーク設計450の実施形態の中には、様々なネットワーク機器に対する静止した障害物と移動する障害物両方の影響をシミュレートするものもある。
【0108】
図13および
図14には、ネットワーク設計ツール45によって提供されるネットワークシミュレーションの一態様が示されている。
図13では、障害物530は、記号400、412、および532で表わされるネットワーク機器を接続する無線リンクに大きな外乱を生じないように、これらの機器から十分に外れている。他方、
図14に示すネットワークモデル324の状態では、同じ障害物が、記号400に対応する機器から記号412で表わされるネットワークアクセスポイントへの無線信号の伝搬を事実上阻止する。前述のように、
図13と
図14では、ネットワークモデルは、記号530で表わされる静止した障害物が各ネットワークノードのより近くに再配置されている静止した状態として、または動く障害物が無線リンク416に一時的に干渉するネットワークモデル324の過渡状態のスナップショットとして示される。どちらにしても、ネットワーク設計ツール45は、ネットワークモデル342上に対するシミュレートされた障害物の影響を計算し、無線リンク416を削除し得る。
【0109】
グラフを生成し、自動的に調整することに加えて、ネットワーク設計ツール45は、最適化規則306、および任意選択でユーザ指定のパラメータに従ってスケジュールを自動的に生成する。
図14A〜14Cに、ネットワーク設計ツール45、詳細には、スケジューラ304が、無線HARTネットワーク14のマスタスケジュールを生成し、最適化することの一部として実行し得るいくつかの例示的ステップシーケンスを示す。より具体的には、スケジューラ304は、制約条件実施(enforcement)、データスーパーフレーム構
成、ネットワーク管理構成、ゲートウェイスーパーフレーム構成、および専用スーパーフレーム構成を行うための各手順を含む。
【0110】
手順500と同様に、手順550は、原則552〜572の少なくとも一部を同時に適用してもよく、作成されるマスタスケジュールに原則552〜572を適用する順序を変えてもよい。手順550は、主として、マスタスケジュールに対してのみならず個々のスケジュールに対して様々な設計制約条件を実施する役割を果たす。ブロック552で、手順550は、同時チャネルの数を制限するという原則を適用する。当然ながら、同時チャネルの数は、無線HARTネットワーク14が利用できる無線周波数の数によって制限される。企図される一実施形態では、ユーザは、画面450または類似の対話式メニューによってこの制限を構成する。加えて、ネットワーク設計ツール45は、構成誤りに対する予防措置として比較的高いハードコード制限を含む。例えば、絶対同時チャネル制限を16とする。
【0111】
次に、手順550は、どんな機器も同じタイムスロットで2回リッスンすることがないようにスケジュールするための原則554を適用する。次の原則556により、手順552は、機器が複数の宛先からデータを受け取ることを可能にする。
図11に示す例に戻って、記号426に対応する機器は、記号400に対応する機器と記号422に対応する機器の両方からデータを受け取る。
【0112】
原則558を適用する間に、手順552は、マルチホップネットワーク上の後方のホップよりも先に前方のホップをスケジュールする。すなわち、手順552は、各ノードが新しく受け取ったデータパケットの転送に利用できるタイムスロットが可能な限り多くなるようにすることによって、各マルチホップ経路上での待ち時間を最小限に抑えようと試みる。例えば、ノードN1は、32タイムスロットスーパーフレームの相対番号5を有するタイムスロットでN2のパケットを受け取る。よって、ノードN1は、そのスーパーフレームの残りの部分に27個の潜在的タイムスロットを有する。スケジューラ304は、そのスーパーフレーム内の次に利用できるタイムスロット(例えば8など)を識別し、N1からN2への伝送がそのスロットで行われるようにスケジュールする。
【0113】
スーパーフレームの整列を最適化するために、スケジューラ304は、すべてのバースト率が、したがってスーパーフレームサイズが既定の式と一致することを必要とする原則560を執行する。例えば、バースト率は、nを整数とする2n秒として定義される。よって、あるネットワーク機器は、2−2または1秒間に4回のバースト率を有し、別の機器は23または8秒ごとに1回のバースト率を有する。さらに、手順550は、バーストモード通信とネットワーク管理通信を組み合わせたものが、無線HARTネットワーク14が利用できる総帯域幅の既定の割合を超えないようにする(原則562)。企図される一実施形態では、この既定の割合は30%に設定される。同様に、手順550は、原則564に従って、どのスケジュールも、利用可能なタイムスロットの総数の既定の割合、例えば50%を超えないようにする。このようにして、スケジューラ304は、再試行やその他の予定外の伝送のために十分な数の空きスロットを確保しようとする。
【0114】
次に
図14Bを参照すると、データスーパーフレーム構成を行うための手順565は、原則566を適用し、スロット0から各ネットワーク機器をチャネルオフセットに割り当てる。次に、手順565は、最速の走査速度からタイムスロットを割り振る(ブロック568)。最速の走査速度から開始することにより、スケジューラ304は、まず、より高い帯域幅需要が満たされるようにする。というのは、一般に、まれにしか送信せず、よって、走査速度のより低い機器に利用可能なタイムスロットを見つける方が容易だからである。
【0115】
各経路ごとに、手順565は、ゲートウェイから最も遠い機器からスロット割り振りを開始する(ブロック570)。詳細には、手順565は、ゲートウェイ機器までの経路上で1スロットを割り振り、経路内の次のホップに移動し、ゲートウェイに到達するまでスロット割り振りを続ける。個々のスロットを正常に割り振ると、手順は、起こり得る再試行のために最も近い利用可能スロットも割り振る。
【0116】
手順565が各フィールド機器とゲートウェイの間の1つの経路にタイムスロットを割り振った後で、スケジューラ304は、さらに、各重複経路上でタイムスロットを割り振ろうと試みる。前述のように、重複経路は、第1の経路と同じ機器対を接続するが、少なくとも1つの中間ホップにおいて第1の経路とは異なる。手順550は、ブロック572で重複経路用のタイムスロットを割り振ろうと試みる。
【0117】
図14Cに、スケジューラ304が手順550および565の後で、またはこれらと同時に実行し得る手順580を示す。手順580は、主に、管理構成を行うためのものである。詳細には、この手順は、管理スーパーフレームを構成するための原則582〜590、参入プロセスを構成するための原則592〜596、およびネットワーク管理コマンド伝搬を構成するための原則598を適用する。
【0118】
手順580によって適用される原則582は、ネットワーク管理スーパーフレームにデータスーパーフレームより高い優先度が与えられるようにする。次に、手順580は、原則584に従って、ネットワーク管理スーパーフレームのサイズを既定の数、例えば6000スロットなどに制限する。さらに、スケジューラ304は、次の優先度を告知スロットに割り当てる(原則586)。各機器は、告知スロットを使って無線HARTネットワーク14に参入する
【0119】
ブロック588で、手順580は、ネットワークグラフの幅優先探索を行い、各機器が見つかった順序で各機器に番号をふる。当然ながら、ブロック588に対応する探索は、潜在的無線リンクが定義された後、いつ行なわれてもよい。前述のように、指標406は、対応する機器記号の隣に機器に割り当てられた番号を差し支えないように表示する。ユーザは任意の順序でキャンバス領域382に機器記号を追加し得るため、手順580は、新しいオブジェクトがネットワークモデル324に追加されるたびに各機器に番号をふり直す必要がある。
【0120】
次に、手順580は、キープアライブメッセージ用のスロットを割り振る。一般に、あらゆるネットワーク機器は、好ましくは、キープアライブ送信用に確保されたタイムスロットを有する。機器のある近隣機器が既定の時間間隔(60秒間など)内に機器を介して情報を伝搬しない場合、機器は近隣機器にキープアライブパケットを送って、その近隣機器の動作状態を検証する。
【0121】
また、手順580は、ブロック592で、参入要求用に確保されたスロットを割り振ることによって参入プロセスの構成も行う。各経路ごとに、手順580は、ゲートウェイから最も遠い機器から開始し、経路に沿ってゲートウェイへ向かって進む。企図されるいくつかの実施形態では、手順580は、参入要求タイムスロットに冗長性を提供しない。次に、手順580は、参入応答用のスロットを同様に割り振る。しかし、この手順は、今度は、ゲートウェイから開始し、ゲートウェイから最も遠い機器の方向に移動する。次いで手順580は、ブロック596で、各機器における告知パケットを割り振る。企図される一実施形態では、個々の機器に割り振られる告知パケットの数は、その機器をゲートウェイから隔てるホップ数に逆比例する。
【0122】
原則598に従って、手順580は、参入要求と参入応答とのネットワーク管理リンクの共用を構成する。この手法は、スケジューラ304が2つの異なる目的に同じリンク集合を使用することを可能にする。
【0123】
スケジューラ304は、前述の原則および戦略に従って無線HARTネットワーク14の各機器の個々のスケジュールを含むマスタスケジュールを生成する。次いで、ネットワーク設計45は、ユーザがスケジュールサブメニュー348によって選択し得るいくつかのビュー356〜360を提供する。
図15に、グラフモードで提示されるスケジュールの例を示す。
【0124】
図表620はタイムスロットグリッド622を含む。
図15に示す例示的実施形態では、グリッド622の各縦線が5タイムスロットに相当する。グリッド622は、調整可能な、または拡大可能な目盛を含めて、ユーザにとって好都合な任意の目盛を含んでいてもよいことを当分野の技術者は理解するであろう。チャネルスケジュールリスト625と機器スケジュールリスト627が、グリッド622上に横方向に配置されている。すなわち、ネットワーク機器ツール45は、各チャネルのタイムスロットへの区分化と各機器のタイムスロットとの関連付けを、縦線で連続する5スロット間隔を表す横の時間進行として示す。さらに、個々のチャネルおよび個々の機器には、それぞれ、その個々のチャネルまたは機器のタイムスロット割り振りを明白に示す別々の横方向の帯がある。
【0125】
凡例630は、タイムスロット割り当てと1つまたは複数の色との関連付けを示す。当然ながら、ネットワーク機器ツール45は、異なる形または記号を使用するものや、モニタ318が多色をサポートしていない場合には、異なるシェーディング法によるなど、各タイムスロットの状態を図表によって指定する別の方法を使ってもよい。
図15に示す例で、凡例630は、色632の縦のバーはある機器対が排他的に使用するために確保されたタイムスロットを表し、色634の縦のバーは複数の機器が共用するために割り振られたタイムスロットを表すことをユーザに指示する。チャネルリスト625は、非割り当てタイムスロットに対応する空白と、色632および634の縦のバーとを含む。
図15に示す例では、図表620は、空白および着色バーによって、チャネル3がタイムスロット11における共用伝送と、タイムスロット0、1、3、5、7、10、14、19、35、39における排他的伝送にスケジュールされており、チャネル3上の残りのタイムスロットは利用可能であることを示している。
【0126】
他方、機器スケジュールリスト627は、同様に非割り当てタイムスロットに対応する空白に加えて、色636と色638の縦のバーを含む。例示的凡例630によれば、色636の縦のバーは受信用に確保されたタイムスロットを表し、色638の縦のバーは送信用に確保されたタイムスロットを表す。
図15に示す例では、図表620は、機器11が、タイムスロット0および7において送信に、タイムスロット32、34、39において受信にスケジュールされていることを示している。
【0127】
状況によっては、ユーザは、図表ではなく、テキスト形式またはXML形式でネットワークスケジュールを表示させようとすることもある。
図16Aに、ネットワークスケジュールを一連の拡張可能なXMLタグとしてリストする画面650を示す。この例では、
図16Aおよび
図17は、ネットワークモデル324と同一ではないが類似するネットワークモデルの同じネットワークスケジュールに対応する。
図16Bを参照すると、画面652は、機器3の拡張スケジュールを含む。図表620のテキストによる代替表示を提示することに加えて、画面650および652は、スケジュールに関する追加情報も提示する。詳細には、画面652は、機器3が関与する複数のスーパーフレームのスロット割り振りのリンクごとのリストを含む(ペイン655およびペイン657)。
【0128】
同様に、ネットワーク設計ツール45は、XML形式の経路指定情報も表示する。
図17に、ネットワークモデル324のトポロジのXMLリストの例670を示す。各機器ペイン672は、機器タイプ、論理機器アドレス、バー674上の完全な機器アドレスといった基本情報を表示する。拡張モードでは、各ペインは、さらに、近隣機器ペイン680の近隣機器情報およびグラフペイン682のグラフ情報を表示する。各近隣機器ごとに、XMLリスト670は、機器アドレス686の隣に信号品質指標684を含む。
【0129】
動作に際して、ネットワーク設計ツール45は、対話式画面380および450を介して入力されたユーザ入力に基づき、既定の最適化規則306を考慮に入れて初期経路指定およびスケジューリング情報を生成する。ネットワーク設計ツール45は、ライブネットワークインターフェース320を介して受け取られる無線HARTネットワーク14の性能に関するフィードバック情報に基づいて初期グラフおよびスケジュールを再評価する。この意味において、無線ネットワーク14に対応するネットワークモデル324は適応型の、自動調整モデルである。さらに、ネットワーク設計ツール45は、ユーザがキャンバス領域382でネットワーク機器および障害物の記号を削除または追加し、あるいは対話式画面450によって様々なパラメータを変更することによって指示し得る1つまたは複数のユーザ基本設定の変更によってもネットワークモデル324を調整する。
【0130】
特に、ユーザは、もっぱら無線HARTネットワークをシミュレートする目的でネットワーク設計ツール45を使用する。例えば、プロセス制御技術者、またはその他のユーザは、ある環境に無線HARTネットワークをインストールすることの一般的有用性または無線HARTネットワークの企図される設計の効率性を調査する。対話式画面380および450、ならびに前述のネットワーク設計ツール45のその他の機能を使って、ユーザは、ルータ、フィールド機器、ゲートウェイ、アクセスポイント、無線信号への障害物、およびその他の関連機器およびオブジェクトをキャンバス領域に配置することによってネットワークモデルを構築し、実際のハードウェアの様々な潜在的構成を容易に評価する。ユーザは、機器および様々なオブジェクトを表す記号を容易に移動し、追加し、削除することができるため、例えば、ルータのフリート(fleet)を低減する、ネットワークアクセ
スポイントを追加するといった技術的決定の影響を効率よく正確に評価することができる。前述のように、ユーザは、シミュレートされた各機器をパラメータ表示することもできる。プロセス制御分野に精通していれば、様々な機器は、機器製造者、価格、クラスおよび機器のタイプ、ならびに機器の寿命、機器の電力要件およびいくつかのその他の要因の違いにより、異なる動作パラメータを有することを理解するであろう。よってユーザは、ある物理構成の代替構成との違いを評価することに加えて、一例を挙げると、類似の機能を果たす能力の低い機器の代わりにより能力の高い機器を使用することの影響もさらに評価する。シミュレートされる性能に対する企図される置換の影響を、2つの代替構成の間の価格差や設置の複雑さの違いといった要因を考慮に入れて比較することにより、ユーザは、高度な情報に基づく決定を行い、最終的には、より適切なネットワーク設計に到達する。
【0131】
ネットワーク設計ツール45のユーザが、ネットワークモデルと、モデルに従って構築される実際の物理無線HARTネットワークの間の対応関係に関して高度の信頼を置くことができることは重要である。無線HARTネットワークの経路指定およびスケジューリングの決定は好ましくはネットワークマネージャ27に集中するため、ネットワーク設計ツール45およびネットワークマネージャ27は、類似のエンジン300を使って、グラフおよびスケジュールの定義、グラフおよびスケジュールの適応、ならびにその他の構成決定を行う。エンジン300は、ネットワークマネージャ27とネットワーク設計ツール45の両方が、それぞれのソフトウェアフレームワーク内で同一のエンジン300オブジェクトをインスタンス化するように、1組の標準インターフェースを備えるソフトウェアライブラリまたはソフトウェアオブジェクトとして設けられ得ることがさらに企図されている。実施形態によっては、エンジン300は、ネットワークが(無線HARTネットワーク14のような)実際のものであるか、それとも(ネットワークモデル324のような)シミュレートされたものであるかを知らずに、ネットワークを構成し、調整し、その他の管理を行う。当然ながら、この実施形態は、さらに、共用のエンジン300にシミュレートされたネットワークトラフィックを供給するために、ネットワーク設計ツール45と協働して(またはその内部で)動作する「ダミーの」バーストデータ、ダミーのネットワーク管理要求およびその他のシミュレートデータを生成するモジュールを伴う。
【0132】
明らかに、ネットワークマネージャ27とネットワーク設計ツール45において同じエンジン300、または少なくとも若干の同じコンポーネントを使用すれば、シミュレーションの信頼度は著しく改善される。加えて、ユーザは、ネットワーク設計ツール45の動画機能を使ってネットワークモデルの性能を、ある期間にわたって、特に、物理無線ネットワークが動作し得る領域内に障害物が存在する期間にわたって評価してもよい。前述のように、ユーザは、減衰強度と、速度や方向といった障害物の運動パラメータの両方をシミュレートし得る。ネットワーク設計ツール45がもたらす別の利点は、ユーザが、シミュレートされたネットワークに対する障害物の影響を、視覚的に、分かりやすいやり方で観察できることである。当然ながら、ネットワーク設計ツール45は、ネットワークモデルの、よって物理無線ネットワークの動作のあらゆる面に対する視覚化も可能にする。ネットワークグラフの視覚的描写またはスケジュールの視覚的表現はネットワークモデルの品質評価を簡単にし得ることを当分野の技術者は理解するであろう。例えば、結果的にもたらされるグラフを視覚的に考察することができれば、ユーザが低品質のネットワーク機器構成から生じる非効率的な経路を認識する可能性がより高くなる。
【0133】
他方、ユーザは、実際の物理ネットワークからのフィードバックデータを使って既存のネットワークモデルをさらに改善し得る。例えば、ユーザが初期ネットワークモデルを作成し、その初期モデルに従って無線HARTネットワーク14を実施しているとする。当然ながら、物理機器の中には、それらに対応するネットワークモデル内の記号と全く同様には動作しないこともある。特に、機器の中には、シミュレートされたものより低い信号強度、例えばシミュレートされた6dBではなく4dBなどを検出するものもある。同様に、無線HARTネットワーク14がある経路の実際の待ち時間を5ミリ秒と測定し、同じ経路のシミュレートされた待ち時間が4ミリ秒であることもある。さらに、無線HARTネットワーク14は、あるチャネル上で大量の干渉を発見し、その結果として、そのチャネルおよび対応する搬送周波数をブラックリストに入れることもある。ネットワーク設計ツール45は、前述のライブネットワークインターフェース320によって無線HARTネットワーク14から上記その他の利用可能なデータを取り出し、ネットワークモデルを自動的に調整する。実施形態によっては、ネットワーク設計ツール45は、常にライブネットワークインターフェース320からのデータを「優先」し、実際のデータが利用できるときにはいつでもシミュレートされたパラメータを指定変更する。当然ながら、ライブデータの中には、例えば、無線HARTネットワーク45のある部分がまだインストールされていない場合や、対応するプラントの部分が保守を受けている場合などは、常に利用できるとは限らないものもある。
【0134】
この意味において、ネットワーク設計ツール45は、ネットワークシミュレーションと、無線HARTネットワーク14から受け取られるライブデータとをリアルタイムで組み合わせる。ネットワーク設計ツール45は、ライブデータが利用できるネットワーク部分については、そのシミュレーションをライブ無線HARTネットワーク14と効果的に同期させる。一方、ユーザは、無線HARTネットワーク14への特定のネットワーク機器の追加または削除を企図し、企図される変更がライブネットワークに与える影響を効率よく評価するために、まず、ネットワーク設計ツール45を使ってネットワークモデルを更新する。少なくとも一部の実施形態では、ネットワーク設計ツール45は、ネットワークモデルが、インターフェース320を介して性能関連データを報告するライブ無線HARTネットワークに完全に対応していなくてもなお、データの一部がネットワークモデルを調整するのに使用され得ることを理解する。よって、ユーザは、実際にネットワーク機器を追加し、除去し、または再構成する前に、その機器を追加し、除去し、または再構成することが物理ネットワークに与える影響を効率よく正確に推定し得る。さらに、ユーザが、ライブフィードバックデータを使用するネットワークモデルに対して、既存の規則の優先度を再構成したり、異なるトポロジを選択したりすることも企図されている。ネットワーク設計ツール45は、新しい規則集合または新しいトポロジを、物理ネットワークから報告されるフィードバックデータを使ってシミュレートする。この意味において、ユーザは、より小さい、機器特有の変更に加え、大きなシステム全体の変更がライブネットワークに与える影響も迅速かつ正確に推定する。
【0135】
また、ユーザがネットワーク設計ツール45をライブネットワークと連携させて、ネットワークモデル324に様々な機器特有のパラメータを取り込むことも企図されている。詳細には、ユーザは、ネットワークモデル324を構築し、(ネットワーク14などの)稼働中の無線HARTネットワークに接続し、ネットワーク設計ツール45に指示して、バースト率、信号強度測定値、待ち時間測定値、および稼働中の無線HARTネットワークからのその他のデータを獲得させる。このようにして、ユーザは、ネットワークモデルをセットアップするのに要する時間を短縮すると共に、その他の利点も達成する。
【0136】
以上のテキストでは多数の異なる実施形態の詳細な説明を行っているが、本特許の範囲は、添付の特許請求の範囲の文言およびその均等物によって定義されるものであることを理解すべきである。詳細な説明は例示にすぎず、あらゆる可能な実施形態を記述するものではないと解釈すべきである。というのは、あらゆる可能な実施形態を記述することは、不可能ではないとしても実際的ではないはずだからである。現在の技術または本特許の出願日後に開発される技術を使って、多くの代替の実施形態を実施することもできるはずであり、それらもやはり本特許請求の範囲に含まれるものである。
【0137】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその開示が本明細書に明示的に組み込まれる、2007年8月31日に出願した「ワイヤレスメッシュネットワークの構成および最適化(Configuring and Optimizing a Wireless Mesh Network)」という名称の米国仮特許出願第60/969,420号の利益を主張するものである。