(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701926
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】折損した先細り中空柱状物の仮固定装置
(51)【国際特許分類】
E04H 12/22 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
E04H12/22
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-85243(P2013-85243)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2014-206024(P2014-206024A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2013年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】杉本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 樹広
(72)【発明者】
【氏名】矢谷 弘二
【審査官】
土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平6−323040(JP,A)
【文献】
特開2009−046831(JP,A)
【文献】
特開2007−31954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 12/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折損した先細り中空柱状物の地中残存部の空洞部に、上側部が地上に臨出するように挿入される補強管と、
地上に臨出する補強管の上側部に、折損した先細り中空柱状物の地上残存部を抱持させて仮固定する仮固定手段とを備えた、折損した先細り中空柱状物の仮固定装置において、
前記空洞部内で前記補強管を支持できるように、前記補強管の周方向および軸方向に所定の間隔をおいて配置され、前記空洞部のテーパ内面に接離可能に設けられる複数の支持部と、
該複数の支持部を前記空洞部のテーパ内面に対して進退させる駆動部と、
個々の支持部を前記空洞部のテーパ内面に所定の位置で圧接させる位置規制部とで構成される補強管支持手段を備えたことを特徴とする、折損した先細り中空柱状物の仮固定装置。
【請求項2】
前記支持部は、ロッドの先端部に着脱可能に取り付けられ、前記空洞部のテーパ内面に当接する当接板を備えたことを特徴とする請求項1に記載の、折損した先細り中空柱状物の仮固定装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記補強管に、該補強管の軸線に沿って挿入される操作軸と、該操作軸を正方向に回転操作することによって近接するとともに、前記操作軸を逆方向に回転操作することによって離間する一対の可動子と、互いの対向する一端部が回動自在に連結され、互いの他端部が前記一対の可動子に連結される屈伸アームと、前記操作軸を中心にして前記空洞部のテーパ内面に向かって延出するように、前記屈伸アームの両一端部の連結部に配置されるロッドとで構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の、折損した先細り中空柱状物の仮固定装置。
【請求項4】
前記位置規制部は、前記ロッドに対して、前記空洞部のテーパ内面に応じて、前記ロッドの延出長さが設定されるように構成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の、折損した先細り中空柱状物の仮固定装置。
【請求項5】
前記位置規制部は、前記一対の可動子に対して、操作軸に所定のトルク値を越えるトルクが加わると空回りするように構成されることを特徴とする請求項3に記載の、折損した先細り中空柱状物の仮固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折損した先細り中空柱状物、例えば、電柱が車輌などに追突され、根元付近である地際で折損し、折損した電柱の地上残存部が地中残存部から位置ずれした場合に、折損した電柱の地上残存部を地中残存部内に支持された補強管に応急措置として仮固定するための折損した先細り中空柱状物の仮固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先細りした中空柱状物、例えば、配電線などを架設している電柱は、鉄筋コンクリート製であると、中空孔が成形された筒状体であり、下側の6分の1ほどが地中に埋められている。このような電柱の地際に車輌Aなどが衝突すると、
図8(a)に示すように、地際のコンクリートが損壊し、鉄筋5が曲がり、折損した電柱Pの地上残存部P2が損壊することなく配電線に掛止した状態で、折損した電柱Pの地中残存部P1から位置ずれすることがある。
【0003】
このような場合、
図9に示すように、仮固定手段3によって、折損した電柱Pの地中残存部P1と地上残存部P2とが仮固定されることにより、仮復旧されることがある。具体的に説明すると、補強管60の上側部が地上に臨出するように、折損した電柱Pの地中残存部P1内に、該地中残存部P1よりも小径の補強管60が挿入される。そして、地上に臨出した補強管60の上側部と、折損した電柱Pの地上残存部P2とがチェーン31などで連結される。すなわち、地上に臨出した補強管60の上側部に、折損した電柱Pの地上残存部P2が抱持されて仮固定される。
【0004】
そして、折損した電柱Pの地中残存部P1内に挿入した補強管2を支持する手段としては、例えば、
図8(b)に示すように、折損した電柱Pの地中残存部P1の開口端部と補強管60との間に楔状のスペーサSを差し込んで、前記地中残存部P1内において補強管60を支持するものが知られている(特許文献1)。
【0005】
また、例えば、
図10および
図11に示すように、一対の屈伸アーム7と、該一対の屈伸アーム7の端部のそれぞれに取り付けられた当接板8,8とで構成されるアウトリガー10が、補強管60の内部に軸方向に沿って複数配置されているものが知られている(特許文献2)。
【0006】
特許文献2に示す装置の場合、上側部が地上に臨出するように、折損した電柱Pの地中残存部P1に、該地中残存部P1よりも小径の補強管60が挿入される。つぎに、補強管60に配置されたアウトリガー10の屈伸アーム7,7が伸長されて、前記地中残存部P1の内面に、アウトリガー10の当接板8,8が圧接する。そうすることで、前記地中残存部P1内において、補強管60が支持される。そして、支持された補強管60の上側部に、前記地上残存部P2が仮固定手段3によって所定期間仮固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−293274号公報
【特許文献2】特開平6−323040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示す装置の場合、折損した電柱Pの地中残存部P1の開口端部と補強管60との間にスペーサSを差し込んでいるため、車輌Aの衝突によってもろくなっている前記地中残存部P1の開口端部の強度をより低下させてしまうことが考えられる。この場合、折損した電柱Pの地上残存部P2は、補強管60に所定期間仮固定されることになるが、仮固定期間中に前記地中残存部P1の開口端部が崩れて、前記地上残存部P2が傾斜する可能性もある。また、スペーサSに対する作業工程が増えるため、作業性もよくない。また、復旧後に、前記地中残存部P1の開口端部から差し込んだスペーサSを引き抜く作業も容易ではなく、多大の時間と労力を要する。
【0009】
特許文献2に示す装置の場合、折損した電柱Pの地中残存部P1の内面がテーパ内面であるにも拘わらず、アウトリガー10の屈伸アーム7,7の伸長長さはどの位置にあっても一定になっている。このため、実際には、前記地中残存部P1内に安定した状態で、補強管60を支持できるような構成にはなっていない。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、折損した先細り中空柱状物の地中残存部内に挿入した補強管を、前記地中残存部内で容易にかつ安定して支持できるようにした、折損した先細り中空柱状物の仮固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る、折損した先細り中空柱状物の仮固定装置は、折損した先細り中空柱状物の地中残存部の空洞部に、上側部が地上に臨出するように挿入される補強管と、地上に臨出する補強管の上側部に、折損した先細り中空柱状物の地上残存部を抱持させて仮固定する仮固定手段とを備えた、折損した先細り中空柱状物の仮固定装置において、前記空洞部内で前記補強管を支持できるように、前記補強管の周方向および軸方向に所定の間隔をおいて配置され、前記空洞部のテーパ内面に接離可能に設けられる複数の支持部と、該複数の支持部を前記空洞部のテーパ内面に対して進退させる駆動部と、個々の支持部を前記空洞部のテーパ内面に所定の位置で圧接させる位置規制部とで構成される補強管支持手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、駆動部によって、前記空洞部のテーパ内面に向かって複数の支持部が進出し、位置規制部によって、進出した個々の支持部が前記空洞部のテーパ内面に所定の位置で圧接するので、前記空洞部内に補強管を安定した状態で支持することができる。したがって、補強管に、折損した先細り中空柱状物の地上残存部を所定期間仮固定できるようになる。
【0013】
また、本発明の一態様として、前記支持部は、ロッドの先端部に着脱可能に取り付けられ、前記空洞部のテーパ内面に当接する当接板を備えるような構成を採用することもできる。
【0014】
この場合、操作軸を正方向に回転操作すると、前記空洞部のテーパ内面に当接板が当接することになる。一方、操作軸を逆方向に回転操作すると、前記空洞部のテーパ内面から当接板が離間することになる。
【0015】
また、本発明の他態様として、前記駆動部は、前記補強管に、該補強管の軸線に沿って挿入される操作軸と、該操作軸を正方向に回転操作することによって近接するとともに、前記操作軸を逆方向に回転操作することによって離間する一対の可動子と、互いの対向する一端部が回動自在に連結され、互いの他端部が前記一対の可動子に連結される屈伸アームと、前記操作軸を中心にして前記空洞部のテーパ内面に向かって延出するように、前記屈伸アームの両一端部の連結部に配置されるロッドとで構成されることが好ましい。
【0016】
この場合、操作軸を正方向に回転操作すると、一対の可動子が近接する方向に移動するとともに、屈伸アームが屈曲して、前記空洞部のテーパ内面に向かってロッドが進出することになる。一方、操作軸を逆方向に回転操作すると、一対の可動子が離間する方向に移動するとともに、屈伸アームが伸長して前記空洞部のテーパ内面からロッドが後退することになる。
【0017】
また、本発明の他態様として、前記位置規制部は、前記ロッドに対して、前記空洞部のテーパ内面に応じて、前記ロッドの延出長さが設定されるように構成されることが好ましい。
【0018】
この場合、前記空洞部のテーパ内面に応じて、ロッドの延出長さが設定されるので、前記空洞部の軸方向のテーパ内面の内径に合わせて当接板を圧接することができ、前記空洞部に対して、補強管を略直立した状態に支持することができる。
【0019】
また、本発明の他態様として、前記位置規制部は、前記一対の可動子に対して、操作軸に所定のトルク値を越えるトルクが加わると空回りするように構成されてもよい。
【0020】
この場合、当接板が前記空洞部のテーパ内面に圧接した際に、操作軸に所定のトルク値を越えたトルクが加わると、一対の可動子の近接方向の移動が空回りする、すなわち、一対の可動子が停止するので、前記空洞部のテーパ内面に当接板が圧接した位置で、当接板の進出位置が規制されるようになり、前記空洞部のテーパ内面に圧接した当接板によって、補強管が支持されることになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、折損した先細り中空柱状物の地中残存部内に挿入した補強管を、前記地中残存部内で容易にかつ安定して支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、折損した先細り中空柱状物(電柱)の仮固定装置を示す正面図、および、該仮固定装置の支持部を示す拡大図。
【
図2】駆動部の屈伸アームが伸長して、支持部が、折損した電柱の地中残存部の内面から離間している状態を示す拡大斜視図。
【
図3】前記仮固定装置の使用態様を示す図であり、前記地中残存部内に補強管を挿入する状態を示す断面図。
【
図4】前記地中残存部内に補強管を挿入した状態を示す断面図。
【
図5】前記地中残存部内に挿入した補強管を支持した状態を示す断面図。
【
図6】駆動部の屈伸アームが屈曲して、支持部が、折損した中空柱状物の地中残存部の内面に圧接する状態を示す拡大斜視図。
【
図7】地上に臨出した、前記地中残存部内に支持された補強管の上側部に、折損した電柱の地上残存部を仮固定手段によって仮固定する状態を示す断面図。
【
図8】(a)は、電柱に車輌が衝突して、電柱が折損した状態を示す図、(b)は、従来の折損した電柱の仮固定装置を示す図であり、折損した電柱の地中残存部の開口端部と補強管との間に、楔状のスペーサを差し込んだ状態を示す斜視図。
【
図9】
図8(b)に示す従来の折損した電柱の仮固定装置において、地上に臨出した、前記地中残存部内に支持された補強管の上側部に、前記地上残存部を仮固定手段によって仮固定する状態を示す断面図。
【
図10】他の従来の折損した電柱の仮固定装置を示す断面図。
【
図11】
図10に示す折損した電柱の仮固定装置の要部を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る、折損した先細り中空柱状物の仮固定装置について
図1〜
図7を参照しながら説明する。なお、本実施形態においては、折損した先細り中空柱状物として、電線が架設された電柱Pに車輌が衝突して、電柱が折損した場合を例にとって説明する。また、
図2および
図6においては、折損した電柱の地中残存部、補強管、緩衝部材は省略して、補強管支持手段のみを図示している。また、
図1,
図3,
図4,
図5においては、正確に図示していないが、ロッドの長さは、地中残存部のテーパ内面に応じて調整されているものとする。
【0024】
本実施形態に係る、折損した先細り中空柱状物の仮固定装置1は、
図1に示すように、補強管2と、仮固定手段3と、補強管支持手段4とを備えている。
【0025】
補強管2は、金属製または硬質合成樹脂製の長尺の管体で構成されている。そして、補強管2は、折損した電柱Pの地中残存部P1の内径よりも小径になっている。また、補強管2は、折損した電柱Pの地中残存部P1の空洞部Hに挿入した状態において、補強管2の上側部が地上に臨出する長さに設定されている。地上に臨出した補強管2の臨出部に、折損した電柱Pの地上残存部P2が仮固定手段3によって仮固定される(
図7参照)。
【0026】
仮固定手段3は、一対の介挿部材30,30と、チェーン31,31と、締め付け具とで構成され、地上に臨出する補強管2の上側部に、折損した電柱Pの地上残存部P2を抱持させて仮固定する。そして、仮固定手段3の一対の介挿部材30,30と、チェーン31,31とは、予め補強管2に取り付けられている。
【0027】
一対の介挿部材30,30は、地上に臨出する補強管2の上側部と前記地上残存部P2との間に介挿されるもので、地上に臨出する補強管2の上側部表面、および、前記地上残存部P2の表面に密着するように、円弧状の当接面が形成されている(図示せず)。
【0028】
チェーン31,31は、図示しない締め付け具によって、地上に臨出する補強管2の上側部と、介挿部材30,30と、前記地上残存部P2とを締め付けて一体化するために使用される。
【0029】
補強管支持手段4は、
図2に示すように、支持部40と、駆動部41と、位置規制部とを備えている。
【0030】
支持部40は、
図2に示すように、ロッド400と、当接板401と、緩衝部材(図示せず)とを備えている。
【0031】
ロッド400は、
図2に示すように、前記空洞部H内で補強管2を支持できるように、補強管2の周方向および軸方向に所定の間隔をおいて配置されるとともに、前記空洞部Hのテーパ内面に対して近接・離間するように設けられる。そして、ロッド400は、短尺の金属製のねじ棒で構成されている。そして、ロッド400は、後述する駆動部41の操作軸410を中心にして前記空洞部Hのテーパ内面に向かって延出するように、後述する駆動部41の屈伸アーム412の両一端部の連結部、すなわち、支持板4120の略中央部のねじ孔(図示せず)に螺合して、支持板4120に取り付けられている。
【0032】
当接板401は、金属製または合成樹脂製の矩形状の板部材で構成されている。そして、
図2に示すように、当接板401の背面中央部が、ロッド400の先端部に着脱可能に取り付けられ、当接板401の表面が前記空洞部Hのテーパ内面に対して接離する。
【0033】
緩衝部材402は、当接板401の表面に固着されたゴム製の板材で構成されている。そして、緩衝部材402は、
図1に示すように、前記空洞部Hのテーパ内面に密着するように、表面に凹凸が形成されている。なお、緩衝部材402としては、ゴム製のものに限らず、柔軟性を有する合成樹脂製のシートであってもよい。
【0034】
駆動部41は、
図2に示すように、操作軸410と、一対の可動子411a,411bと、屈伸アーム412とで構成されている。そして、駆動部41は、支持部40の複数のロッド400,…を前記空洞部Hのテーパ内面に対して進退するように構成されている。
【0035】
操作軸410は、長尺の金属製のねじ棒で構成されている。そして、操作軸410は、
図2に示すように、補強管2に、該補強管2の軸線に沿って挿入されるとともに、回転自在に軸支されている。また、操作軸410は、
図1に示すように、その上端部が補強管2の開口端部から臨出するとともに、略90度に折り曲げられている。なお、操作軸410の上端部をラチェット等の操作工具が嵌合するように六角形に形成してもよい。
【0036】
一対の可動子411a,411bは、正方向にねじ孔が形成された雌ねじ411aと、逆方向にねじ孔が形成された雌ねじ411bとで構成されている。そして、一対の可動子411a,411bは、
図6に示すように、操作軸410を正方向に回転操作することによって近接するとともに、
図2に示すように、前記操作軸410を逆方向に回転操作することによって離間する。
【0037】
屈伸アーム412,412は、
図2に示すように、互いの対向する一端部が、後述する支持板4120の両端部に回動自在に連結され、互いの他端部が前記一対の可動子411a,411bに連結される。そして、一対の屈伸アーム412,412の連結部は、一対の可動子411a,411bの中間位置にある。
【0038】
支持板4120は、
図2に示すように、矩形状の板部材で構成され、その中央部に、ロッド400が螺着するねじ孔(図示せず)を有している。そして、支持板4120は、上述したように、屈伸アーム412,412の互いの対向する一端部に回転自在に連結されており、ロッド400に対して直交した状態で、前記空洞部Hのテーパ内面に対して進退するように構成されている。
【0039】
位置規制部は、個々のロッド400,…を前記空洞部Hのテーパ内面に所定の位置で圧接させるべく、個々のロッド400,…に対して、前記空洞部Hのテーパ内面に応じて、個々のロッド400,…の支持板4120(屈伸アーム412,412の連結部)から当接板401までの長さ(延出長さL1〜L3)が設定されている(
図1の拡大図参照)。
【0040】
つぎに使用態様について
図1〜
図7を参照して説明する。電柱Pが折損した場合、まず、
図3に示すように、折損した電柱Pの地中残存部P1の空洞部Hに、補強管2を挿入する。この際、
図2および
図4に示すように、仮固定手段3の一対の介挿部材30,30と、チェーン31,31とは、予め補強管2に取り付けられている。また、補強管2における補強管支持手段4の駆動部41の屈伸アーム412,412が伸長して、前記地中残存部P1内に周方向および軸方向に配置された複数のロッド400,…が前記地中残存部P1のテーパ内面から後退した状態になっている。また、複数のロッド400,…を、地上から見た場合は、操作軸410を中心にして放射状(直交する中心線上)に配置されている。
【0041】
また、上述したように、個々のロッド400,…は、
図1の拡大図に示すように、前記地中残存部P1のテーパ内面に応じて個々のロッド400,…の支持板4120(屈伸アーム412,412の連結部)から当接板401までの長さ(延出長さL1〜L3)が設定されている。すなわち、前記地中残存部P1の基端部側に配置された個々のロッド400,…の支持板4120から当接板401までの延出長さ(L1)が最も長く設定され、前記地中残存部P1の先端部に向かうにしたがって、個々のロッド400,…の支持板4120から当接板401までの延出長さ(L1<L<L3)が短くなるように設定され、前記地中残存部P1の先端部側に配置された個々のロッド400,…の支持板4120から当接板401までの延出長さ(L3)が最も短くなるように設定されている。
【0042】
つぎに、
図5および
図6に示すように、駆動部41の操作軸410を正方向に回転操作すると、一対の可動子411a,411bが近接する方向に移動するとともに、屈伸アーム412,412が屈曲して、前記地中残存部P1の空洞部Hのテーパ内面に向かって複数のロッド400,…が進出し、前記空洞部Hのテーパ内面に当接板401が密接することになる。
【0043】
これによって、前記地中残存部P1内において、複数のロッド400,…が前記地中残存部P1の内面に向かって放射状に進出して、補強管2が略直立した状態で、かつ、安定した状態で支持されるようになる。
【0044】
つぎに、
図7に示すように、折損した電柱Pの地上残存部P2がクレーン等の移動手段で近付けられる(図示せず)。そして、地上に臨出した補強管2の上側部と前記地上残存部P2とにチェーン31,31が巻付けられて、図示しない締付け具で締付け固定されて、前記地上残存部P2が補強管2を介して前記地中残存部P1に仮固定されるようになる。その後、送電が開始される。
【0045】
仮復旧後、仮固定装置1を取り外す場合は、図示しない締め付け具を緩めて、チェーン31,31を取り外し、補強管2の上側部と前記地上残存部P2との間に介挿された介挿部材30,30を取り出す。そして、補強管支持手段4の駆動部41の操作軸410を逆方向に回転させて、屈伸アーム412,412を伸張させて、支持部40の複数のロッド400,…を前記地中残存部P1のテーパ内面から後退させて、支持部40の当接板(緩衝部材402)401,…を前記地中残存部P1のテーパ内面から離脱させる。その後、前記地中残存部P1の空洞部Hから補強管2を引き抜く。
【0046】
以上、本実施形態に係る、折損した先細り中空柱状物の仮固定装置1によれば、補強管支持手段4の駆動部41によって、前記空洞部Hのテーパ内面に向かって、支持部40の複数のロッド400,…が進出し、位置規制部によって、進出した個々のロッド400,…が前記空洞部Hのテーパ内面に所定の位置で圧接するので、前記空洞部H内に補強管2を容易に且つ安定した状態で支持することができる。したがって、補強管2に、折損した電柱Pの地上残存部P2を所定期間仮固定できるようになる。
【0047】
なお、本発明に係る折損した先細り中空柱状物の仮固定装置1は、前記実施形態に限定することなく種々変更することができる。
【0048】
例えば、前記実施形態の場合、位置規制部として、個々のロッド400,…の延出長さL1〜L3を設定するようにしたが、一対の可動子411a,411bに対して、操作軸410に所定のトルク値を越えるトルクが加わると空回りするように構成してもよい。この場合も、前記と同様に、当接板401を前記地中残存部P1のテーパ内面に密接させることができる。
【0049】
また、前記実施形態の場合、中空の柱状物として、電線が架設された電柱Pを例にとって説明したが、電灯柱、搭状の構築物にも適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1…折損した先細り中空柱状物の仮固定装置、2…補強管、3…仮固定手段、4…補強管支持手段、40…支持部、41…駆動部、400…ロッド、401…当接板、402…緩衝部材、410…操作軸、411a,411b…可動子、412…屈伸アーム、P…電柱(折損した先細りの中空柱状物)、P1…地中残存部、P2…地上残存部、H…空洞部