特許第5701936号(P5701936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5701936-埋込磁石型回転電機 図000002
  • 特許5701936-埋込磁石型回転電機 図000003
  • 特許5701936-埋込磁石型回転電機 図000004
  • 特許5701936-埋込磁石型回転電機 図000005
  • 特許5701936-埋込磁石型回転電機 図000006
  • 特許5701936-埋込磁石型回転電機 図000007
  • 特許5701936-埋込磁石型回転電機 図000008
  • 特許5701936-埋込磁石型回転電機 図000009
  • 特許5701936-埋込磁石型回転電機 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701936
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】埋込磁石型回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20150326BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20150326BHJP
   H02K 21/16 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   H02K1/27 501M
   H02K1/27 501A
   H02K1/27 501K
   H02K1/27 502A
   H02K15/03 C
   H02K21/16 M
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-123572(P2013-123572)
(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公開番号】特開2014-18056(P2014-18056A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2013年6月12日
【審判番号】不服2014-6340(P2014-6340/J1)
【審判請求日】2014年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-134450(P2012-134450)
(32)【優先日】2012年6月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】木藤 敦之
(72)【発明者】
【氏名】浅野 能成
(72)【発明者】
【氏名】荒木 辰太郎
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 堀川 一郎
【審判官】 矢島 伸一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−91911(JP,A)
【文献】 特開2010−11640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子(1,19)と、
回転軸(J)を回転中心として前記電機子に対して相対的に回転する界磁子(2,29)と
を備え、
前記界磁子は、コア(21)と、前記回転軸に平行な方向たる軸方向に延在して前記コアに埋め込まれた、樹脂磁石である複数の永久磁石(22,221,222,223,229)とを含み、
前記複数の永久磁石の各々は、前記軸方向から見て前記電機子に対して凹む円弧を呈する一対の磁極面(22a,22b,221a,221b,222a,222b,223a,223b,229a,229b)を有し、
前記複数の永久磁石の前記各々において、前記一対の磁極面のうち前記電機子に近い方(22a,221a,222a,223a,229a)が呈する前記円弧たる第1円弧の半径(R1,R3,R5,R19)よりも、前記一対の磁極面のうち前記電機子から遠い方(22b,221b,222b,223b,229b)が呈する前記円弧たる第2円弧の半径(R2,R4,R6,R29)が大きく、前記第1円弧の焦点(P1,P3,P5,P19)よりも前記第2円弧の焦点(P2,P4,P6、P29)の方が前記永久磁石よりも遠く、
前記複数の永久磁石の前記各々における前記第1円弧の前記焦点及び前記第2円弧の前記焦点並びに前記回転軸は、前記軸方向から見て一の直線上に並ぶ、埋込磁石型回転電機。
【請求項2】
電機子(1,19)と、
回転軸(J)を回転中心として前記電機子に対して相対的に回転する界磁子(2,29)と
を備え、
前記界磁子は、コア(21)と、前記回転軸に平行な方向たる軸方向に延在して前記コアに埋め込まれた、樹脂磁石である複数の永久磁石(22,221,222,223,229)とを含み、
前記複数の永久磁石の各々は、前記軸方向から見て前記電機子に対して凹む円弧を呈する一対の磁極面(22a,22b,221a,221b,222a,222b,223a,223b,229a,229b)を有し、
前記複数の永久磁石の前記各々において、前記一対の磁極面のうち前記電機子に近い方(22a,221a,222a,223a,229a)が呈する前記円弧たる第1円弧の半径(R1,R3,R5,R19)よりも、前記一対の磁極面のうち前記電機子から遠い方(22b,221b,222b,223b,229b)が呈する前記円弧たる第2円弧の半径(R2,R4,R6,R29)が大きく、前記第2円弧の焦点(P2,P4,P6、P29)よりも前記第1円弧の焦点(P1,P3,P5,P19)の方が前記永久磁石に近く、
前記複数の永久磁石の前記各々における前記第1円弧の前記焦点及び前記第2円弧の前記焦点並びに前記回転軸は、前記軸方向から見て一の直線上に並ぶ、埋込磁石型回転電機。
【請求項3】
前記界磁子(2)は、一の前記複数の永久磁石において、前記一対の磁極面とは異なる端部に設けられた磁気障壁(23)を更に含む、請求項1又は請求項2記載の埋込磁石型回転電機。
【請求項4】
前記端部から最も離れた位置における前記磁気障壁と、前記電機子(1)に最も近い方の前記コアの側面(210)が形成する部位の長さ(23c)は、前記一の前記複数の永久磁石の前記一の直線上における幅(22d)よりも小さい、請求項3記載の埋込磁石型回転電機。
【請求項5】
前記複数の永久磁石は、前記回転軸と前記電機子との間で積層された複数の永久磁石(221,222,223)を含む、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の埋込磁石型回転電機。
【請求項6】
前記樹脂磁石を射出成形する際、前記樹脂磁石を得るために外部からの供給する着磁磁束を、前記軸方向から見て前記一の直線に平行とする、請求項1または請求項2記載の埋込磁石型回転電機。
【請求項7】
前記樹脂磁石は射出成形され、前記永久磁石の厚さ方向が磁化容易軸となる異方性を有する、請求項1または請求項2記載の埋込磁石型回転電機。
【請求項8】
前記電機子(1)は、集中巻で巻回された電機子巻線(12)を有する、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の埋込磁石型回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は界磁子に永久磁石が埋め込まれた、いわゆる埋込磁石型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
埋込磁石型回転電機は、いわゆるリラクタンストルクが利用される観点で望まれる回転電機である。埋込磁石型回転電機の界磁子に埋め込まれる永久磁石は、下記特許文献1〜4に例示されるような種々の形状が提案されている。
【0003】
埋込型回転電機において、その出力を高めるべく界磁磁束を高めるには、界磁磁束を発生させる永久磁石の磁極面の表面積を稼ぐことが望ましい。かかる要求に鑑み永久磁石の磁極面の形状は、当該回転電機の回転中心となる回転軸に平行な方向から見て、電機子に対して凹むことが望まれる。かかる形状は例えば特許文献3,4に示されている。
【0004】
なお特許文献3,4には、当該永久磁石として樹脂磁石を用いた場合の製造方法も例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/114692号
【特許文献2】特開2011−91911号公報
【特許文献3】特開平11−206075号公報
【特許文献4】特開2003−47212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電機子巻線によって発生する磁界(以下「電機子磁界」)は、永久磁石に対して減磁する向きに印加される場合がある。特に上述のように、永久磁石の磁極面が電機子に対して凹む形状を呈する場合には、永久磁石の両端はその中央部よりも電機子に近いので、減磁されやすい。
【0007】
電機子磁界が大きいと永久磁石の減磁は不可逆減磁にまで達する場合がある。この場合、永久磁石の磁極面を稼いで埋込型回転電機の出力を高めるべく、磁極面を電機子に向けて凹ませたことが、却って埋込型回転電機の出力の向上を阻むことになってしまう。
【0008】
以上の点に鑑み、この発明の目的は、永久磁石の磁極面の面積を稼ぎつつ、電機子磁界による減磁の影響を受けにくい構造の埋込磁石型回転電機を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明にかかる埋込磁石型回転電機は、電機子(1,19)と、回転軸(J)を回転中心として前記電機子に対して相対的に回転する界磁子(2,29)とを備える。
【0010】
そしてその第1の態様において前記界磁子は、コア(21)と、前記回転軸に平行な方向たる軸方向に延在して前記コアに埋め込まれた、樹脂磁石である複数の永久磁石(22,221,222,223,229)とを含む。前記複数の永久磁石の各々は、前記軸方向から見て前記電機子に対して凹む円弧を呈する一対の磁極面(22a,22b,221a,221b,222a,222b,223a,223b,229a,229b)を有する。前記複数の永久磁石の前記各々において、前記一対の磁極面のうち前記電機子に近い方(22a,221a,222a,223a,229a)が呈する前記円弧たる第1円弧の半径(R1,R3,R5,R19)よりも、前記一対の磁極面のうち前記電機子から遠い方(22b,221b,222b,223b,229b)が呈する前記円弧たる第2円弧の半径(R2,R4,R6,R29)が大きい。前記第1円弧の焦点(P1,P3,P5,P19)よりも前記第2円弧の焦点(P2,P4,P6、P29)の方が前記永久磁石よりも遠い。あるいは前記第2円弧の焦点の方が前記第1円弧の焦点よりも前記永久磁石に近い。前記複数の永久磁石の前記各々における前記第1円弧の前記焦点及び前記第2円弧の前記焦点並びに前記回転軸は、前記軸方向から見て一の直線上に並ぶ。
【0011】
この発明にかかる埋込磁石型回転電機の第2の態様は、その第1の態様であって、前記界磁子(2)は、一の前記複数の永久磁石において、前記一対の磁極面とは異なる端部に設けられた磁気障壁(23)を更に含む。
【0012】
この発明にかかる埋込磁石型回転電機の第3の態様は、その第2の態様であって、前記端部から最も離れた位置における前記磁気障壁と、前記電機子(1)に最も近い方の前記コアの側面(210)とが形成する部位の長さ(23c)は、前記一の前記複数の永久磁石の前記一の直線上における幅(22d)よりも小さい。
【0013】
この発明にかかる埋込磁石型回転電機の第4の態様は、その第1の態様乃至第の態様のいずれかであって、前記複数の永久磁石は、前記回転軸と前記電機子との間で積層された複数の永久磁石(221,222,223)を含む。
【0015】
この発明にかかる埋込磁石型回転電機の第の態様は、その第の態様であって、前記樹脂磁石を射出成形する際、前記樹脂磁石を得るために外部からの供給する着磁磁束を、前記軸方向から見て前記一の直線に平行とする。
【0016】
この発明にかかる埋込磁石型回転電機の第の態様は、その第の態様であって、前記樹脂磁石は射出成形され、前記永久磁石の厚さ方向が磁化容易軸となる異方性を有する。
【0017】
この発明にかかる埋込磁石型回転電機の第の態様は、その第1の態様乃至第6の態様のいずれかであって、前記電機子(1)は、集中巻で巻回された電機子巻線(12)を有する。
【発明の効果】
【0018】
この発明にかかる埋込磁石型回転電機の第1の態様によれば、永久磁石の磁極面が電機子に向けて凹み、永久磁石の厚みを一対の磁極面とは異なる端部の近傍において厚くしつつも、中央近傍において薄くする。よって永久磁石の磁極面の面積を稼ぎつつ、電機子磁界による減磁の影響を受けにくく、しかも磁石体積を低減する。そして射出成形により、コアに永久磁石を設けることが容易となる。
【0019】
この発明にかかる埋込磁石型回転電機の第2の態様によれば、永久磁石の一対の磁極面同士の間で磁束が短絡的に流れることを防ぐ。
【0020】
この発明にかかる埋込磁石型回転電機の第3の態様によれば、回転電機の停止時に、磁気障壁が第1の態様の効果を毀損することを防ぐ。
【0021】
この発明にかかる埋込磁石型回転電機の第4の態様によれば、回転電機のリラクタンストルクを増大する。
【0023】
この発明にかかる埋込磁石型回転電機の第の態様によれば、永久磁石の中央近傍における着磁を確保する。
【0024】
この発明にかかる埋込磁石型回転電機の第の態様によれば、一対の磁極面のうち電機子に近い方における残留磁束密度を高め、界磁磁束を大きくし易い。
【0025】
この発明にかかる埋込磁石型回転電機の第の態様によれば、永久磁石に対する減磁が発生しやすい集中巻が採用された電機子においても、減磁に強い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施の形態にかかる回転電機の構成を示す断面図である。
図2】従来の界磁子の構成を示す断面図である。
図3】第1の実施の形態にかかる回転電機の界磁子の構成を示す断面図である。
図4】第2の実施の形態にかかる回転電機の界磁子の構成を示す断面図である。
図5】第2の実施の形態にかかる回転電機の界磁子の構成を示す断面図である。
図6】第2の実施の形態にかかる回転電機の界磁子の構成を示す断面図である。
図7】第2の実施の形態にかかる回転電機の界磁子の構成を示す断面図である。
図8】第4の実施の形態にかかる回転電機の構成を示す断面図である。
図9】第5の実施の形態にかかる回転電機の界磁子の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
第1の実施の形態.
図1を参照して、第1の実施の形態にかかる回転電機はいわゆるインナーロータ型であり、界磁子2と、これを囲む電機子1とを備えている。界磁子2は電機子1に対して、回転軸Jを回転中心として相対的に回転する。図1はこの回転軸Jに対して垂直な面における断面を、回転軸に平行な方向(以下「軸方向」と称す)から見た断面図である。
【0028】
界磁子2は、コア21と、コアに埋め込まれた複数の永久磁石22とを含んでいる。永久磁石22は軸方向(図1において紙面垂直方向)に延在する。永久磁石22の各々は、軸方向から見て電機子1に対して凹んでいる。
【0029】
電機子1は、ティース11と、電機子巻線12と、ヨーク13とを有している。ヨーク13は界磁子2とは反対側で、ティース11を連結する。
【0030】
電機子巻線12はティース11に対して集中巻で巻回されている。このような集中巻が採用された電機子1では、界磁子2に対する減磁効果が顕著となる。
【0031】
なお、本願では特に断らない限り、電機子巻線12は、これを構成する導線の一本一本を指すのではなく、導線が一纏まりに巻回された態様を指す。これは図面においても同様である。また、巻き始め及び巻き終わりの引き出し線、及びそれらの結線も図面においては省略した。
【0032】
図2には参考のため、従来の界磁子の構造を示す。但し、軸方向に対して垂直な断面の一部分のみが示されている。永久磁石22はコア21に埋め込まれ、その電機子(図示せず:図1参照)に近い方の磁極面22aも、電機子から遠い方の磁極面22cも円弧を呈する。既述のように、磁極面の面積を稼ぐためである。
【0033】
具体的には、軸方向から見て、磁極面22aが呈する円弧の半径R01よりも、磁極面22cが呈する円弧の半径R02の方が大きく、かつこれらの円弧の焦点はいずれも焦点P0である。つまり、磁極面22a,22bは軸方向から見て、同心円の一部たる円弧を呈する。よって磁極面22a,22bの間隔、つまり永久磁石22の厚みは(R02−R01)で均一となる。
【0034】
なるほど、電機子からの減磁を受けにくくするためには、半径の差(R02−R01)を大きくすればよい。しかしながら、上記円弧の中央付近では、その両端ほどには永久磁石22の減磁は大きくならないため、単に差(R02−R01)を大きくすることは、永久磁石22の体積を不要に大きくし、永久磁石22を有効に利用しなくなってしまう。
【0035】
そこで第1の実施の形態では、永久磁石22の厚さを円弧の中央付近で薄く、円弧の両端部で厚くする。
【0036】
図3は、第1の実施の形態にかかる回転電機の界磁子の構成を示し、軸方向に対して垂直な断面の一部分のみが示されている。ここでは一つの永久磁石22のみについて説明するが、図1に示された永久磁石22のいずれにおいても同様の構成が採用される。
【0037】
以下、軸方向から見た位置関係について説明する。永久磁石22は、いずれも円弧を呈する一対の磁極面22a,22bを有している。そして電機子(図示せず:図1参照)に近い方の磁極面22aが呈する円弧の半径R1よりも、電機子から遠い方の磁極面22bが呈する円弧の半径R2の方が大きい。そして磁極面22aが呈する円弧の焦点P1よりも、磁極面22bが呈する円弧の焦点P2の方が永久磁石22から遠い。換言すれば、焦点P1の方が、焦点P2よりも永久磁石22に近い。更に、焦点P1,P2と回転軸Jとは一つの直線(図3において二点鎖線で図示)上に並ぶ。
【0038】
比較のため、図2に示された磁極面22c並びに磁極面22cが呈する円弧の半径R02を一点鎖線で併記した。図2における焦点P0、半径R01、磁極面22aは、それぞれ図3における焦点P1、半径R1、磁極面2aと一致する。
【0039】
図3から明白なように永久磁石22は、円弧の中央部から離れるほど、より具体的には焦点P1,P2と回転軸Jとを結ぶ直線から離れるほど、その厚みが増大する。換言すれば、円弧の中央近傍では永久磁石22は薄く、両端では厚く設けられている。
【0040】
このように、永久磁石22の磁極面22a,22bが電機子1に向けて凹み、永久磁石22の厚みを磁極面22a,22bとは異なる端部(即ち円弧の両端)の近傍において厚くしつつも、中央近傍において薄くする。よって永久磁石22は磁極面22a,22bの面積を稼ぎつつ、電機子磁界による減磁の影響を受けにくい。しかも永久磁石22の体積を低減して、これが有効に利用される。
【0041】
第2の実施の形態.
界磁子2に埋め込まれる永久磁石は、回転軸Jと電機子1との間で積層されてもよい。
【0042】
図4図6図7図3に対応しており、複数の永久磁石221,222が積層された構成を採っている。また、図5図3に対応しており、複数の永久磁石221,222,223が積層された構成を採っている。このように複数層の永久磁石を積層してコア21に埋め込むことにより、回転電機のリラクタンストルクが増大する。
【0043】
永久磁石221,222,223のいずれについても第1の実施の形態の永久磁石22と同様の形状の磁極面を呈する。以下、軸方向から見た位置関係について説明すると、具体的には、永久磁石221は、いずれも円弧を呈する一対の磁極面221a,221bを有している。そして電機子(図示せず:図1参照)に近い方の磁極面221aが呈する円弧の半径R1よりも、電機子から遠い方の磁極面221bが呈する円弧の半径R2の方が大きい。そして磁極面221aが呈する円弧の焦点P1よりも、磁極面221bが呈する円弧の焦点P2の方が永久磁石221から遠い(換言すれば、焦点P1の方が焦点P2よりも永久磁石221に近い)。同様に、永久磁石222について、電機子に近い方の磁極面222aが呈する円弧の半径R3よりも、電機子から遠い方の磁極面222bが呈する円弧の半径R4の方が大きい。そして磁極面222aが呈する円弧の焦点P3よりも、磁極面222bが呈する円弧の焦点P4の方が永久磁石222から遠い(換言すれば、焦点P3の方が焦点P4よりも永久磁石222に近い)。また図5については更に、永久磁石223について、電機子に近い方の磁極面223aが呈する円弧の半径R5よりも、電機子から遠い方の磁極面223bが呈する円弧の半径R6の方が大きい。そして磁極面223aが呈する円弧の焦点P5よりも、磁極面223bが呈する円弧の焦点P6の方が永久磁石223から遠い(換言すれば、焦点P5の方が焦点P6よりも永久磁石223に近い)。焦点P1,P2,P3,P4,P5,P6と回転軸Jとは一つの直線(図4図5において二点鎖線で図示)上で並ぶ。
【0044】
参考のため、永久磁石221,222,223のそれぞれにおいて、図2に例示された永久磁石22のように厚さが等しい場合を一点鎖線で併記した。
【0045】
このような場合も、第1の実施の形態と同様の作用により、永久磁石221,222,223は磁極面の面積を稼ぎつつ、電機子磁界による減磁の影響を受けにくい。しかも永久磁石221,222,223の体積を低減して、これらが有効に利用される。
【0046】
図4では焦点P1,P3が一致し、焦点P2,P4が一致する場合が例示されたが、図6図7に示されたようにこれらは一致しなくてもよい。また図示を省略するが、焦点P1が回転軸Jに対して焦点P3よりも遠くてもよいし、焦点P2が回転軸Jに対して焦点P4よりも遠くてもよい。これらの変形であっても、永久磁石221,222が中央で薄く、両端で厚くなる形状は維持され、かかる形状が維持されれば減磁の影響を低減しつつも必要な永久磁石の体積を低減できるからである。
【0047】
図5についても焦点P1,P3,P5が一致し、焦点P2,P4,P6が一致する場合が例示されたが、かかる一致がなくてもよい。
【0048】
第3の実施の形態.
第1の実施の形態や第2の実施の形態で説明された形状の永久磁石22,221,222,223は、公知の手法、例えば特許文献3,4で開示された樹脂磁石によって形成することができる。樹脂磁石は射出成形によってコア21に永久磁石22、221,222,223を設けることが容易となる。樹脂磁石はボンド磁石とも称される。
【0049】
なお、樹脂磁石を射出成形する際、樹脂磁石を得るために外部から供給する着磁磁束は、軸方向から見て、回転軸Jと焦点P1,P2,…が並ぶ直線に平行とすることが望ましい。永久磁石の中央近傍(つまり当該直線近傍)における着磁を確保するためである。
【0050】
射出成形される樹脂磁石は、その磁化容易軸が永久磁石22,221,222,223の厚さ方向である異方性を有していることが望ましい。例えば永久磁石22に採用される樹脂磁石の磁化容易軸は永久磁石22の電機子側の磁極面22aが呈する円弧に垂直であることが望ましい。樹脂磁石がこのような異方性を有することにより、着磁磁束の乱れがあっても、電機子側の磁極面22aにおける残留磁束密度を高め、界磁磁束を大きくし易くなる。永久磁石221,222,223についても同様である。
【0051】
第4の実施の形態.
図8は第4の実施の形態にかかる回転電機の構成を示し、軸方向に対して垂直な断面の一部分のみが示されている。第4の実施の形態ではいわゆるアウターロータ型の回転電機が説明される。
【0052】
ここでは界磁子29がコア219と永久磁石229を含み、電機子19がティース119とヨーク139とを含む場合が例示されている。電機子19は界磁子29に囲まれており、ヨーク139は回転軸J側でティース119を連結する。
【0053】
このようなアウターロータ型の回転電機であっても、永久磁石229の形状は第1の実施の形態と同様に説明される。即ち、軸方向から見た位置関係について説明すると、永久磁石229は、いずれも円弧を呈する一対の磁極面229a,229bを有している。そして電機子19に近い方の磁極面229aが呈する円弧の半径R19よりも、電機子19から遠い方の磁極面229bが呈する円弧の半径R29の方が大きい。そして磁極面229aが呈する円弧の焦点P19よりも、磁極面229bが呈する円弧の焦点P29の方が永久磁石229から遠い(換言すると焦点P19の方が焦点P29よりも永久磁石229に近い)。更に、焦点P19,P29と回転軸Jとは一つの直線(図8において二点鎖線で図示)上に並ぶ。但しここでは焦点P19が回転軸Jと一致する場合が例示されている。
【0054】
参考のため、永久磁石229の厚さが等しい場合を一点鎖線で併記した。
【0055】
このように、アウターロータ型の場合も、第1の実施の形態と同様の作用により、永久磁石229は磁極面の面積を稼ぎつつ、電機子磁界による減磁の影響を受けにくい。しかも永久磁石229の体積を低減して、これらが有効に利用される。
【0056】
もちろん、第4の実施の形態にかかる永久磁石229も、第3の実施の形態と同様にして樹脂磁石の射出成形によって形成することができる。
【0057】
第5の実施の形態.
図9は第5の実施の形態にかかる回転電機の界磁子の構成を示し、第1の実施の形態で示された図3に対応している。ここでも永久磁石22の厚さが均一な場合が一点鎖線で併記されている。
【0058】
この実施の形態では界磁子2(図1参照)が、永久磁石22において磁極面22a,22bとは異なる端部に設けられた磁気障壁23を更に含む。磁気障壁23は例えば軸方向に貫通する孔であり、永久磁石22の磁極面22a,22b同士の間で磁束が短絡的に流れることを防ぐ。
【0059】
但し、永久磁石22の両端において電機子磁界が集中することを防ぐため、永久磁石22よりも磁気障壁23の方が、電機子磁界を流しやすくすることが望ましい。
【0060】
具体的には、永久磁石22の端部から最も離れた位置における磁気障壁23と、電機子1に最も近い方のコア21の側面210(インナーロータでは回転軸Jから遠い方の側面と把握することもできる)とが形成する部位の長さ23cは、永久磁石22の幅22dよりも小さいことが望ましい。ここで幅22dは、回転軸Jと焦点P1,P2とを結ぶ直線上における永久磁石22の幅(厚さ)であり、永久磁石22の厚さの最小値となる。
【0061】
通常、永久磁石22自体は磁気障壁23と同程度の透磁率しか有さないので、磁気障壁23が永久磁石22よりも厚くなると、電機子磁界は磁気障壁23を避けて永久磁石22を通りやすくなる。特に減磁が問題となる永久磁石22の端部において磁気障壁23が設けられるので、磁気障壁23は電機子磁界の経路として、永久磁石22よりも磁気抵抗が高くなることは望ましくない。これは回転電機が停止しているときに特に顕著な問題となる。
【0062】
よって永久磁石22の厚さの最小値(幅22d)よりも小さい長さ23cで、コア21が磁気障壁23よりも電機子1側で残置されていることが望ましい。
【0063】
なお、磁極面22a,22b同士の間で磁束が短絡的に流れることを防ぐため、磁気障壁23はその永久磁石22側の幅23aが、永久磁石22の両端における幅と同程度以上に選定される。上述の通り、全ての実施の形態において永久磁石22の両端の厚さは中央部分の厚さ22dよりも大きい。よって長さ23cは幅23aよりも短くなる。
【0064】
もちろん、第4の実施の形態にかかる永久磁石229の磁極面229a,229bとは異なる端部にも、第5の実施の形態と同様にして磁気障壁23を設けることができる。この場合、コア219の、回転軸Jに近い方の側面290が、電機子19に近い側の側面となって、上記側面210に相当する。
【符号の説明】
【0065】
1,19 電機子
12 電機子巻線
2,29 界磁子
21 コア
210 側面
22,221,222,223,229 永久磁石
22a,22b,221a,221b,222a,222b,223a,223b,229a,229b 磁極面
22d (永久磁石の)幅
23 磁気障壁
23c (部位の)長さ
J 回転軸
P1,P2,P3,P4、P5,P6,P19,P29 (円弧の)焦点
R1,R2,R3,R4、R5,R6,R19,R29 (円弧の)半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9