(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701937
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】津波避難タワー
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-127120(P2013-127120)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-1131(P2015-1131A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2013年7月8日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [掲載年月日] 平成24年12月20日 [掲載アドレス] http://www.n−sharyo.co.jp/business/tekko/floodgate/tunami_tower.htm
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 大介
【審査官】
土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−255259(JP,A)
【文献】
特開2007−239451(JP,A)
【文献】
特開2001−070871(JP,A)
【文献】
特開2012−246721(JP,A)
【文献】
特開2008−180055(JP,A)
【文献】
特開2007−224557(JP,A)
【文献】
特開2011−122424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/14
E04H 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎によって立設された複数の支柱と、前記複数の支柱に支持され所定の高さに設けられた避難デッキと、地上と前記避難デッキとの間を昇降するための階段とを有する津波避難タワーにおいて、
前記避難デッキは、
長辺と短辺からなる長方形の床面に対して、角部の位置と長辺の所定位置とに前記支柱が配置され、前記支柱同士が上フレームと下フレームとによって周状に連結され、
長辺側の前記上フレーム及び下フレームが第1、第2上弦材及び第1、第2下弦材となり、
短辺側の前記上フレーム及び下フレームが第1、第2上大梁材及び第1、第2下大梁材となり、
前記長辺の所定位置に配置された前記支柱同士の間に、第3上大梁材と第3下大梁材は設けられ、
前記上大梁材同士の間に、複数の上小梁材が平行に設けられ、且つ前記下大梁材同士の間に、複数の下小梁材が平行に設けられ、
複数の斜材によって、前記第1上弦材及び前記第1下弦材が連結され、且つ前記第2上弦材及び前記第2下弦材が連結されたトラス構造であり、
前記斜材の節点位置で、両長辺側の前記第1、第2上弦材が前記上小梁材によって連結され、且つ両長辺側の前記第1、第2下弦材が前記下小梁材によって連結され、
前記下大梁材に床受けを介して、前記下小梁材上に前記床面が構成されたものであることを特徴とする津波避難タワー。
【請求項2】
請求項1に記載する津波避難タワーにおいて、
前記床面の角部の位置に配置された短辺側の2本の支柱同士に連結されて前記階段が設けられたものであることを特徴とする津波避難タワー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する津波避難タワーにおいて、
前記長辺側に並んだ支柱同士の間隔が10m超であることを特徴とする津波避難タワー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海抜の低い土地にあって津波から避難するために建てられる施設であり、特に、支柱が破損した際の安全が保たれるようにした津波避難タワーに関する。
【背景技術】
【0002】
巨大な地震により発生する大津波に対しては、一刻も早く高台に避難することが重要である。しかし、高台までの距離が遠ければ、津波の到達時間までに避難しきれないこともあり得る。そのような場合には、近くの高層建造物に避難することが考えられるが、場所によっては適当な高さの建物が存在しないこともあり、津波に対する避難場所を失いかねない。そこで、海抜が低くて適当な建物などがないような地域には、緊急避難を行うことが可能な施設の設置が求められている。下記特許文献1,2には、そうした施設の一例が示されている。
【0003】
図5は、下記特許文献1に記載された津波避難タワーを示した図である。この津波避難タワー100は、地中に複数本の支持杭101が打ち込まれ、その支持杭101に対して支柱102が溶接によって一体に形成されている。支柱102は、その下端部が受け部材を兼ねた連結部材によって連結され、上端部には梁部材103が架け渡され、避難部110が構成されている。避難部110は、屋根、床、壁が面梁パネル115により構成されている。その面梁パネル115は、2枚の波板が3枚の平板パネルによって重ねられたものである。そして、津波避難タワー100は、長方形をした避難部110の長手方向が海岸線に対して直角になるように配置され、その長手方向端部には補強のためのワイヤ120が連結されている。なお、避難部110と地上との間には、不図示の階段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−184323号公報
【特許文献2】特開2007−239451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内陸へと押し寄せる津波は、破壊した建物や自動車などを押し流してくるため、津波避難タワー100の支柱102には、津波だけではなく、そうした漂流物が衝突することになる。前記特許文献1の津波避難タワー100は、長手方向が海岸線に対して直角になっているが、これは漂流物との衝突の確率を低くするためと考えられる。しかし、勢い良く当たってしまう漂流物によって支柱102の破損が回避できる訳ではない。そこで、ワイヤ120が連結されているが、それでも十分とは考えられない。また、設置箇所によっては、必ずしも津波避難タワー100の長手方向を、海岸線に対して直角に建設することができる訳でもない。
【0006】
そこで他の従来例では、漂流物の衝突によって支柱が破損しないように、鋼管杭からなる支柱の周囲を円錐状のコンクリートで固めるものがある。また、前記特許文献2には、漂流物が支柱に直接衝突しないように、支柱の手前にガードレールや丸パイプ、鋼管矢板などの防護手段を設けたものが開示されている。しかし、支柱をコンクリートで固めたり、支柱の前に防護手段を設けることは、それぞれにおいて支柱保護の効果を発揮するものの、施工が大がかりになり、その分コストもかかってしまう。その一方で、コンクリートによって支柱の強度を高めたり、支柱に防護手段を設けたとしても、支柱の破損防止が保証されるわけではない。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、支柱が破損した際の安全が保たれる津波避難タワーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の津波避難タワーは、基礎によって立設された複数の支柱と、前記複数の支柱に支持され所定の高さに設けられた避難デッキと、地上と前記避難デッキとの間を昇降するための階段とを有するものであり、前記避難デッキは、長辺と短辺からなる長方形の床面に対して、角部の位置と長辺の所定位置とに前記支柱が配置され、前記支柱同士が上フレームと下フレームとによって周状に連結され、長辺側の前記上フレーム及び下フレームが
第1、第2上弦材及び
第1、第2下弦材となり、
短辺側の前記上フレーム及び下フレームが第1、第2上大梁材及び第1、第2下大梁材となり、前記長辺の所定位置に配置された前記支柱同士の間に、第3上大梁材と第3下大梁材は設けられ、前記上大梁材同士の間に、複数の上小梁材が平行に設けられ、且つ前記下大梁材同士の間に、複数の下小梁材が平行に設けられ、複数の斜材によって
、前記第1上弦材及び前記第1下弦材が連結され、且つ前記第2上弦材及び前記第2下弦材が連結され
たトラス構造であり、前記斜材の節点位置で、両長辺側の前記
第1、第2上弦
材が前記上
小梁材によって連結され、且つ両長辺側の前記
第1、第2下弦
材が前記下
小梁材によって連結され、
前記下大梁材に床受けを介して、前記下
小梁材上に前記床面が構成されたものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る津波避難タワーは、前記床面の角部の位置に配置された短辺側の2本の支柱同士に連結されて前記階段が設けられたものであることが好ましい。
また、本発明に係る津波避難タワーは、前記長辺側に並んだ支柱同士の間隔が10m超であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
よって、本発明の津波避難タワーによれば、長辺側の側面がトラス構造であることによって避難デッキの剛性を高めることができ、それにより長辺側に並んだ支柱の間隔を広くとることができる。そして、支柱の間隔が広ければ、漂流物の滞留による支柱の破損が生じにくくなる。また、トラス構造の避難デッキが高剛性であるため、床面の大きな撓み変形を抑えることができ、支柱が破損した際の安全が保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】津波避難タワーの実施形態を示した斜視図である。
【
図2】津波避難タワーの実施形態を示した長辺側の側面図である。
【
図3】避難デッキの長辺側側面の一部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る津波避難タワーについて、その実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、津波避難タワーの実施形態を示した斜視図である。この津波避難タワー1は、床面が略長方形の避難デッキ2を有し、その避難デッキ2の床面高さは、例えば6〜12m程に設定可能である。避難デッキ2の床面は、短辺6m、長辺30mによる床面積180m
2の広さがあり、予定の避難人数は360人である。そうした避難デッキ2を支える支柱3は、長方形の角部に位置する4本と、長辺側の中央に位置する2本の合計6本である。
【0013】
ところで、前記従来例は、長手方向が海岸線に対して直角に配置されるようにしたものであるが、本実施形態の津波避難タワー1は、長辺側が海岸線に対して向かい合うように配置される。これにより、津波の進行方向に対して長辺側に並んだ3本の支柱3が海岸線から等距離に配置され、隣り合う支柱3同士は10m超の広い間隔をとることができる。
【0014】
そして、この津波避難タワー1の長手方向両端部には、短辺側に沿って階段5が形成されている。両側にある階段5は、短辺側に位置する各々2本の支柱3を連結するようにして構成されている。しかも、地上から避難デッキ2まで階段5が形成されているが、特に向きを交互に変えた4つの階段部51があり、3つの踊り場部52を介して2本の支柱3同士が連結されている。
【0015】
ここで
図2は、津波避難タワー1を海側から見た長辺側の側面図であり、地中の基礎部分を含めて示している。この支柱3は、例えば直径700mm程度の円形の鋼管であり、その下端部には、複数の頭付きスタッド11が放射状に飛び出すようにして取り付けられている。こうした支柱3は、基礎部分に対して固定され、一体になって垂直に立設されている。基礎部分は、地中に基礎杭12が打ち込まれ、その基礎杭12に対してコンクリート打ちしたフーチング13が設けられている。そして、支柱3は、凸形状のフーチング13に対して、内部に設けられた不図示のアンカー鉄筋によりフーチング13と一体になっている。
【0016】
津波避難タワー1は、こうして立設された6本の支柱3の上方に避難デッキ2が設けられている。避難デッキ2は、床面が略長方形をなし、その外周に沿って、隣り合う支柱3同士を連結するようにした上フレーム21と下フレーム22とが設けられている。特に、上フレーム21が屋根面を構成し、下フレーム22が避難フロアを構成するものである。そして、こうした上フレーム21と下フレーム22は、いずれもH形鋼によって構成されている。
【0017】
ここで、
図3は、そうした避難デッキ2の長辺側側面の一部を示した図である。避難デッキ2は、その長辺側の両方の側面がトラス構造になっている。つまり、上フレーム21と下フレーム22のうち、長辺側に位置するものが、それぞれ上弦材21Aと下弦材22Aとなり、複数の斜材23が、その上弦材21Aと下弦材22Aとに連結され、平行弦トラスが構成されている。上弦材21A及び下弦材22Aは、H形鋼のフレーム部材によって構成されている。支柱3に対しては、短尺のフレーム部材211,221が溶接によって接合され、それに対して、長尺のフレーム部材212,222が添接板31を介してボルトとナットによって締結されている。特に長辺側の支柱3同士の間は、2本のフレーム部材212又は222が、添接板31を介してボルトとナットによって締結されている。
【0018】
そして、こうした上弦材21Aには、複数の接合プレート25が下向きに溶接され、下弦材22Aには複数の接合プレート26が上向きに溶接されている。接合プレート25,26は、トラス構造の節点部分を構成するものであり、複数の斜材23は、長手方向に傾きを交互に変えて、両端が接合プレート25,26に連結されている。斜材23は、円形の鋼管であり、両端部には継手プレート27が溶接によって一体に形成され、接合プレート25,26に対して、両端の継手プレート27がそれぞれ重ね合わされ、ボルトとナットによって締結されている。
【0019】
次に、
図4は、避難デッキ2の短辺側側面を示した図である。なお、
図4では、柵29の記載を省略している。この短辺側には、上フレーム21や下フレーム22の一部をなす、上大梁材21Bと下大梁材22Bが設けられている。上大梁材21Bと下大梁材22BもH形鋼のフレーム部材によって構成されている。支柱3には、短尺のフレーム部材213,223が溶接によって接合され、それに長尺のフレーム部材214,224が添接板32を介してボルトとナットによって締結されている。なお、上大梁材21Bと下大梁材22Bは、長辺側の中央に位置する支柱3同士の間にも同じように設けられている。
【0020】
そして、避難デッキ2の屋根面には、長手方向に配置された上大梁材21Bの間に、複数の上小梁材35が平行に並べられ、それぞれ両端が接合プレート25の位置に合わせて上弦材21Aに接合されている。更に、棒状のクロス材36も上弦材21Aに連結されている。なお、こうした避難デッキ2の屋根面は、上小梁材35やクロス材36だけではなく、不図示の太陽光プレートを上に配置し、津波避難タワー1に設けられる照明灯などの電源とするようにしてもよい。
【0021】
また、避難デッキ2の床面には、長手方向に配置された下大梁材22Bの間に、複数の下小梁材37が平行に並べられている。下小梁材37は、接合プレート26の位置と、その中間位置に設けられ、それぞれの両端が下弦材22Aに接合されている。更に、棒状のクロス材38も下弦材22Aに連結されている。そして、下大梁材22Bには床受けを介して、下小梁材37には直接、床プレート28が載せられている。また、避難デッキ2には、床プレート28から所定高さの柵29が、略長方形をした床面を囲むようにして周状に形成されている。
【0022】
そこで、こうした本実施形態の津波避難タワー1が設置されることにより、地震によって津波が発生したような場合には、高台などに避難できない人が階段5から避難デッキ2へ上がることによって、津波から避難することができる。また、津波避難タワー1は、長辺側の側面がトラス構造であることによって避難デッキ2の剛性を高めることができるため、支柱3の間隔を広くとることができる。そして、本実施形態では、支柱3の数が合計で6本と少なく、その間隔も10m超である。そのため、避難デッキ2の下の空間が広く、出入りがし易いため、通常時には駐車場などとしての使用が可能である。
【0023】
更に、津波避難タワー1は、支柱3同士の間隔が広いため、津波による漂流物が引っかかり難く、滞留を起こし難くなっている。つまり、滞留が生じてしまうと、それによって津波の抵抗が大きくなり、更なる漂流物の衝突などによって支柱3が破損するなどの問題があるが、本実施形態では、そうした支柱3の破損を生じにくくしている。そして、長手方向両端にある各2本の支柱3同士が階段5によって連結されているため、その強度が高められている。また、仮に支柱3が1本破損し、その支柱3が十分に荷重を支えられない状態になったとしても、トラス構造の避難デッキ2が高剛性であるため、床面の大きな撓み変形を抑えることができ、支柱3が破損した際の安全が保たれる。この場合、いずれの位置の支柱3であっても安全が保たれ得るように設計されている。
【0024】
以上、本発明に係る津波避難タワーについて実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、階段5を長手方向の両側2箇所に設けているが、避難する人の通路を確保するほか、更に強度を増すため、中央に位置する2本の支柱3同士を連結する階段を設けるようにしてもよい。
また、斜材23には円形の鋼管ではなく、角形の鋼管を使用するようにしてもよい。
また、床プレート28は、下小梁材37に対して直接載せられているが、下大梁材22Bと同様に床受けを介して載せるようにしてもよい。
また、柱の間隔が広いほどに漂流物が滞留する可能性は減じられ、あるいは柱を省略する事で、漂流物と柱が衝突する事を防ぐことが出来る。すなわち、柱の間隔を例えば、30m以上としたり、あるいは中央の柱を省略した構造とする事で、漂流物に対してより安全な津波避難タワーとする事が出来る。
【符号の説明】
【0025】
1 津波避難タワー
2 避難デッキ
3 支柱
5 階段
21 上フレーム
22 下フレーム
21A 上弦材
22A 下弦材
21B 上大梁材
22B 下大梁材
23 斜材
35 上小梁材
37 下小梁材