(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、交流を用いる方法は、電極表面での分極を減少させることはできるが、周囲の電磁気擾乱に影響されやすく、リアルタイム分析が困難であるという欠点があった。
【0005】
本発明は、溶液の電気伝導度をより正確に測定できる電気伝導度測定方法、及びそれを用いた電気伝導度計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様による電気伝導度測定方法は、伝導度標準溶液を用いて電気伝導度測定セル(conductance cell)のセル定数(cell constant)を求める段階と、測定する溶液を前記電気伝導度測定セルに入れ、前記電気伝導度測定セルに備えられた電極に所定直流電圧を所定時間(t)毎に段階的に変化させて印加する段階と、前記電圧毎に測定されたピーク電流を用いて、前記ピーク電流に対する前記電圧の直線関係から傾きである前記溶液の抵抗値を取得する段階と、前記セル定数及び前記溶液の抵抗値を用いて前記溶液の電気伝導度を算出する段階とを含む。
【0007】
本発明の一例によれば、前記所定直流電圧を段階的に変化させて印加する段階は、前記電圧を前記所定時間毎に段階的に増加又は減少させて印加する段階であってもよい。
【0008】
本発明の他の例によれば、前記所定時間は、前記電極表面で分極が生じ始める時間より短い時間であることが好ましい。
【0009】
前記所定時間は、前記電極表面での分極を防止するように、0に収斂する(t→0)時間であってもよい。
【0010】
本発明のさらに他の例によれば、前記ピーク電流は、前記所定直流電圧が印加される瞬間に測定される電流であってもよい。
【0011】
本発明のさらに他の例によれば、前記セル定数を求める段階は、前記電極に所定直流電圧を所定時間(T)毎に段階的に変化させて印加する段階と、前記電圧毎に測定されたピーク電流を用いて、前記ピーク電流に対する前記電圧の直線関係から傾きである前記伝導度標準溶液の抵抗値を取得する段階とを含む。
【0012】
前記セル定数を求める段階のうち、前記所定直流電圧を段階的に変化させて印加する段階は、前記電圧を前記所定時間毎に段階的に増加又は減少させて印加する段階であってもよい。
【0013】
前記所定時間は、前記電極表面で分極が生じ始める時間より短い時間であることが好ましい。
【0014】
前記所定時間は、前記電極表面での分極を防止するように、0に収斂する(T→0)時間であってもよい。
【0015】
そして、上記課題を解決するために、本発明の他の態様による電気伝導度計測システムは、電極を備えて特定のセル定数を有する電気伝導度測定セルと、前記電極に所定直流電圧を所定時間毎に段階的に変化させて印加するように形成される電圧印加部と、前記電圧毎にピーク電流を測定する電流測定部と、前記ピーク電流に対する前記電圧の直線関係から傾きである前記溶液の抵抗値を取得し、前記セル定数及び前記溶液の抵抗値を用いて前記溶液の電気伝導度を算出する制御部とを含む。
【0016】
本発明の一例によれば、前記電圧印加部は、前記電極表面で分極が生じ始める時間より短い時間毎に、前記電圧を段階的に増加又は減少させるようにしてもよい。
【0017】
本発明の他の例によれば、前記電流測定部は、前記所定直流電圧が印加される瞬間の電流を測定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、所定直流電圧を所定時間毎に段階的に変化させて印加し、各電圧毎に測定されたピーク電流を用いて溶液の抵抗値を測定することにより、分極による測定誤差を最小限に抑え、セル定数の電気伝導度依存性(いわゆるパーカー効果)を除去し、溶液の電気伝導度をより正確に測定することができる。
【0019】
本発明においては、直流電圧を用いるため、交流電圧を用いると測定が困難な高濃度のイオンを含む溶液の電気伝導度の分析における測定誤差を最小限に抑えることができ、周辺の電子機器による影響を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一態様による電気伝導度測定方法を示すフローチャートである。
【
図2】直流電圧を段階的に増加させて各電圧毎に測定した電流値を示すグラフである。
【
図3】
図2の電圧及びピーク電流値を用いて取得した溶液の抵抗値を示すグラフである。
【
図4】本発明の他の態様による電気伝導度計測システムの一例を示す概念図である。
【
図5A】0.001MのKCl伝導度標準溶液の電圧(電圧印加時間:0.001秒)と電流の関係を示すグラフである。
【
図5B】0.001MのKCl伝導度標準溶液の電圧(電圧印加時間:0.01秒)と電流の関係を示すグラフである。
【
図5C】0.001MのKCl伝導度標準溶液の電圧(電圧印加時間:0.1秒)と電流の関係を示すグラフである。
【
図5D】0.001MのKCl伝導度標準溶液の電圧(電圧印加時間:1秒)と電流の関係を示すグラフである。
【
図5E】0.001MのKCl伝導度標準溶液の電圧(電圧印加時間:10秒)と電流の関係を示すグラフである。
【
図5F】0.001MのKCl伝導度標準溶液の電圧(電圧印加時間:100秒)と電流の関係を示すグラフである。
【
図6A】3MのKCl伝導度標準溶液の電圧(電圧印加時間:0.00001秒)と電流の関係を示すグラフである。
【
図6B】3MのKCl伝導度標準溶液の電圧(電圧印加時間:0.0001秒)と電流の関係を示すグラフである。
【
図6C】3MのKCl伝導度標準溶液の電圧(電圧印加時間:0.001秒)と電流の関係を示すグラフである。
【
図6D】3MのKCl伝導度標準溶液の電圧(電圧印加時間:0.01秒)と電流の関係を示すグラフである。
【
図6E】3MのKCl伝導度標準溶液の電圧(電圧印加時間:0.1秒)と電流の関係を示すグラフである。
【
図6F】3MのKCl伝導度標準溶液の電圧(電圧印加時間:1秒)と電流の関係を示すグラフである。
【
図6G】3MのKCl伝導度標準溶液の電圧(電圧印加時間:10秒)と電流の関係を示すグラフである。
【
図7A】3MのKCl伝導度標準溶液に印加された電圧の測定範囲(−0.7V〜0.1V)内で電圧を段階的(9段階)に変化させて測定した結果を示すグラフである。
【
図7B】3MのKCl伝導度標準溶液に印加された電圧の測定範囲(−5V〜5V)内で電圧を段階的(11段階)に変化させて測定した結果を示すグラフである。
【
図7C】3MのKCl伝導度標準溶液に印加された電圧の測定範囲(−10V〜10V)内で電圧を段階的(2段階)に変化させて測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明による電気伝導度測定方法及びそれを用いた電気伝導度計測システムについて添付図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
本明細書においては、異なる実施形態であっても同一又は類似の構成要素には同一又は類似の符号を付し、その説明は省略する。本明細書で用いられる単数の表現は、特に断らない限り、複数の表現を含む。
【0023】
図1は、本発明の一態様による電気伝導度測定方法を示すフローチャートであり、
図2は、直流電圧を段階的に増加させて各電圧毎に測定した電流値を示すグラフである。
図3は、
図2の電圧及びピーク電流値を用いて取得した溶液の抵抗値を示すグラフである。
図2及び
図3に示す方法は、伝導度標準溶液の抵抗値の測定と測定対象溶液の抵抗値の測定の両方に適用することができる。
【0024】
溶液10(
図4参照)の電気伝導度を測定するためには、一対の通電用電極111(
図4参照)を備えた電気伝導度測定セル110(
図4参照)に溶液10を入れ、実験により抵抗値を取得し、それに基づいて電気伝導度を算出する過程を経る。溶液10の電気伝導度(X)は、電流が流れる電極111の表面積(A)と溶液10の抵抗値(R)との積に対する電極111間の距離(L)[X=L/(A×R)]により算出される。
【0025】
従って、抵抗値(R)に基づいて電気伝導度(X)を算出するためには、電極111の表面積(A)及び電極111間の距離(L)によって決定される電気伝導度測定セル110固有の定数であるセル定数(C=L/A)が既知でなければならない。しかし、前記実験だけでセル定数を正確に推定することはほぼ不可能なので、比伝導度の正確な値が既知である伝導度標準溶液を、電気伝導度測定セル110に入れたときの抵抗値を測定してセル定数を求める。
【0026】
伝導度標準溶液を用いてセル定数を求めるためには、まず、電気伝導度測定セル110に伝導度標準溶液を入れ、直流電圧を所定時間(T)毎に段階的に変化させて印加する(S10)。前記所定時間(T)とは、所定直流電圧が印加される時間を意味する。
【0027】
図2においては、電圧を所定時間毎に段階的に(階段状に)増加させること(v1→v2→v3→v4→v5)を例示している。なお、電圧を所定時間毎に段階的に減少させるようにしてもよく、任意の異なる電圧を瞬間的に印加するようにしてもよい。
【0028】
その後、各電圧毎にピーク電流を測定する。
図2に示すように、電流は、電圧を印加した時点から、電極111表面で生じる分極により曲線を描いて次第に減少する。従って、分極が生じる前のピーク電流値(p1、p2、p3、p4、p5)を測定すると、分極による測定誤差が除去され、より正確なセル定数の算出のための基礎データが得られる。
【0029】
ここで、所定直流電圧が印加される時間である前記所定時間は、電気伝導度測定セル110に備えられた電極111表面で分極が生じ始める時間より短い時間に設定することが好ましい。電圧を印加するとすぐに分極が生じるため、電極111表面での分極を防止するように、前記所定時間(T)は、0に収斂する時間であることが好ましい。
【0030】
つまり、第1電圧を瞬間的に印加してそのときの第1電流値(すなわち、第1ピーク電流)を測定し、その後、より高い第2電圧を瞬間的に印加してそのときの第2電流値(すなわち、第2ピーク電流)を測定する方法により、電圧とそれに対応するピーク電流のデータを取得することができる。
【0031】
次に、
図3に示すように、前記ピーク電流に対する前記電圧の直線関係から傾きである前記伝導度標準溶液の抵抗値を取得する(S20)。その結果、抵抗値に基づいてセル定数を算出することができる。
【0032】
セル定数が決定されると、電気伝導度測定セル110に入れた伝導度標準溶液を除去する(S30)。このとき、電気伝導度測定セル110に伝導度標準溶液が残らないように、蒸留水などを用いて洗浄過程を行うことが好ましい。
【0033】
次に、電気伝導度測定セル110に測定する溶液10を入れ、所定直流電圧を所定時間(t)毎に段階的に変化させて印加し(S40)、そのときの電圧毎に測定されたピーク電流を用いて、前記ピーク電流に対する前記電圧の直線関係から傾きである溶液10の抵抗値を取得する(S50)。前記所定時間(t)とは、所定直流電圧が印加される時間を意味する。
【0034】
例えば、
図2に示すように、電圧を所定時間(t1、t2、t3、t4、t5)毎に段階的に増加させ(v1→v2→v3→v4→v5)、そのときのピーク電流値(p1、p2、p3、p4、p5)を測定してもよい。逆に、電圧を所定時間毎に段階的に減少させ、そのときのピーク電流値を測定してもよい。抵抗は、電流に対する電圧を示すグラフにおいて直線の傾きで表されるので、異なる大きさの2つの電圧を印加してそのときのピーク電流値をそれぞれ測定することにより容易に取得することができる。もちろん、電圧を印加する回数が多くなるほどより多くのデータに基づいてより正確な抵抗値が得られるということは自明である。
【0035】
図2に示すように、電流は、電圧を印加した時点から、電極111表面で生じる分極により曲線を描いて次第に減少する。従って、分極が生じる前の電圧が印加されたときのピーク電流値を測定すると、分極による測定誤差が除去され、より正確な溶液10の電気伝導度の取得のための基礎データである抵抗値が得られる。
【0036】
ここで、電圧を変化させる時間である前記所定時間は、電気伝導度測定セル110に備えられた電極111表面で分極が生じ始める時間より短い時間に設定することが好ましい。電圧を印加するとすぐに分極が生じるため、電極111表面での分極を防止するように、前記所定時間(t)は、0に収斂する時間であることが好ましい。前記所定時間は、0に収斂する時間、例えばミリ秒、マイクロ秒、ナノ秒単位の短時間であってもよい。
【0037】
つまり、第1電圧を瞬間的に印加してそのときの第1電流値(すなわち、第1ピーク電流)を測定し、その後、より高い第2電圧を瞬間的に印加してそのときの第2電流値(すなわち、第2ピーク電流)を測定する方法により、電圧とそれに対応するピーク電流のデータを取得することができる。
【0038】
前記ピーク電流に対する前記電圧の直線関係から傾きである溶液10の抵抗値を取得した後、溶液10の抵抗値及び前記伝導度標準溶液を用いて求めたセル定数に基づいて、溶液10の電気伝導度を算出する(S60)。
【0039】
図4は、本発明の他の態様による電気伝導度計測システムの一例を示す概念図である。
【0040】
図4に示すように、電気伝導度計測システム100は、電気伝導度測定セル110、電圧印加部120、電流測定部130及び制御部140を含む。
【0041】
電気伝導度測定セル110は、電極111を備え、特定のセル定数を有する。ここで、セル定数は、電極111の表面積(A)及び電極111間の距離(L)によって決定される電気伝導度測定セル110固有の定数であって、前述したように伝導度標準溶液を用いて求めることができる。
【0042】
電圧印加部120は、電極111に所定直流電圧を所定時間毎に段階的に変化させて印加するように構成される。電圧印加部120は、電極111表面で分極が生じ始める時間より短い時間毎に、電圧を段階的に増加又は減少させるように構成されることが好ましい。
【0043】
電流測定部130は、電圧毎にピーク電流を測定するように構成される。電流は電圧が印加されたときに最大値(ピーク)を示すので、電流測定部130は、電圧印加部120により電圧が印加された瞬間の電流値を読み取るように構成されることが好ましい。
【0044】
制御部140は、前記ピーク電流に対する前記電圧の直線関係から傾きである溶液10の抵抗値を取得し、その後前記セル定数及び溶液10の抵抗値を用いて溶液10の電気伝導度を算出するように構成される。
【0045】
一方、
図4に示す電気伝導度計測システム100は本発明による電気伝導度計測システムの一例に過ぎず、本発明による電気伝導度計測システムが前述した構成に限定されるものではない。電気伝導度計測システム100は、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば様々な形態に変形することができる。
【0046】
以下、実施例1〜4により本発明をより詳細に説明する。
なお、各実施例で使用された電気伝導度測定セルが異なるため、セル定数も実施例毎に異なる。ただし、実施例1と実施例2とでは同一の電気伝導度測定セルが使用され、セル定数も同一である。
【実施例1】
【0047】
0.001MのKCl伝導度標準溶液を用いた電気伝導度測定セルのセル定数の測定
実施例1は、電気伝導度測定セルのセル定数を求める過程に関する。
【0048】
まず、18℃での電気伝導度が127.3(μS/cm)である0.001MのKCl伝導度標準溶液及び電極を電気伝導度測定セルに入れ、−5V〜5Vの電圧を1V間隔で0.001秒ずつ電極に印加し、それぞれの電圧での電流値を測定した。その後、その値をグラフ化して直線の傾きを求めた。
【0049】
【表1】
【0050】
0.001MのKCl伝導度標準溶液での抵抗が1/傾き(傾きは電圧の変化量に対する電流の変化量)であるので、前記測定値を用いて前記傾きの値[194.34(nA/V)]を求めると、溶液の抵抗値[5.15×10
6(Ω)]を取得することができる。
【0051】
溶液の抵抗値を用いて電気伝導度測定セルのセル定数を求める式は次の通りである。
【0052】
【数1】
【0053】
上記数式1に溶液の抵抗値と既知の電気伝導度値を代入して計算すると、次のようにセル定数が決定される。
セル定数=127.3(μS/cm)×5.15×10
6(Ω)=656cm
−1
【実施例2】
【0054】
0.1MのKCl伝導度標準溶液の電気伝導度の測定
実施例2は、実施例1で得られた電気伝導度測定セルのセル定数を用いて、0.1MのKCl伝導度標準溶液の電気伝導度を求める過程に関する。
【0055】
まず、0.1MのKCl伝導度標準溶液での抵抗を測定するために、0.1MのKCl伝導度標準溶液を電気伝導度測定セルに入れ、−5V〜5Vの電圧を1V間隔で0.0001秒ずつ電極に印加し、それぞれの電圧での電流値を測定した。
【0056】
【表2】
【0057】
前記測定値を用いて求めた傾き(電圧の変化量に対する電流の変化量)の値は17.052(μA/V)であり、0.1MのKCl伝導度標準溶液の抵抗値は5.8644×10
4(Ω)である。0.1MのKCl伝導度標準溶液の電気伝導度は、上記数式1の関係から、セル定数を抵抗値で割ることにより求めることができる。
【0058】
0.1MのKCl伝導度標準溶液の電気伝導度=セル定数/0.1MのKCl伝導度標準溶液の抵抗値=656cm
−1/5.8644×10
4(Ω)=11,186(μS/cm)
【0059】
このような計算結果は、0.1MのKCl伝導度標準溶液の18℃での電気伝導度が、既知の値[11,167(μS/cm)]と比較すると、0.2%の誤差範囲内で一致することを示す。
【実施例3】
【0060】
電圧印加時間に対する電気伝導度の測定
実施例3は、電気伝導度測定セルのセル定数を決定したり、電気伝導度測定セルを用いて溶液の抵抗を測定する上で、電圧印加時間が短ければ短いほどより正確な値が得られることを示す。すなわち、電圧印加時間は、電極表面で分極が生じない程度に短い時間であることが好ましい。実験結果から分かるように、電圧印加時間が0に収斂するほどより正確な値が得られる。
【0061】
一方、電流は電圧印加時間内に測定しなければならない。従って、電流の測定時間は、電圧印加時間と同様に短くしなければならない。
【0062】
本実施例においては、低濃度の0.001MのKCl伝導度標準溶液と高濃度の3MのKCl伝導度標準溶液とで、電圧の印加による電極表面での分極が異なるため、溶液の濃度に応じて電圧印加時間を変更して設定することができ、また、高濃渡であるほど低濃度に比べて電圧印加時間を短くすることが好ましいことを示す。
【0063】
低濃度の0.001MのKCl伝導度標準溶液においては、電圧印加時間を0.001秒、0.01秒、0.1秒、1秒、10秒、100秒に設定し、電圧の変化に応じた電流の変化を
図5A〜
図5Fのようにグラフ化して直線の傾きを計算し、次のようにセル定数を取得した。その結果、セル定数は電圧印加時間0.1秒以下の値で収斂することが分かる。
【0064】
【表3】
【0065】
高濃度の3MのKCl伝導度標準溶液においては、電圧印加時間を0.00001秒、0.0001秒、0.001秒、0.01秒、0.1秒、1秒、10秒に設定し、電圧の変化に応じた電流の変化を
図6A〜
図6Gのようにグラフ化した。次の結果から、電圧印加時間0.00001秒以下で、低濃度の0.001MのKCl伝導度標準溶液におけるセル定数と類似したセル定数に収斂することが分かる。従って、電圧印加時間は、0.00001秒以下にすることが適切である。
【0066】
【表4】
【0067】
このように、電圧印加時間(T又はt)は、0秒を超え、0.1秒以下であることが好ましい。もちろん、実験結果からも分かるように、電圧印加時間は濃度に応じて異なる。すなわち、高濃渡であるほど低濃度に比べて電圧印加時間を短くすることが好ましい。
【0068】
一方、実験の結果、現在の装置では電圧印加時間を0.0000033秒(すなわち、3.3μs)まで減少させることができ、このとき測定した伝導度標準溶液の電気伝導度の誤差が最も少なかった。電圧印加時間は、装置の技術発展によってさらに短くなり、電圧印加時間が短くなれば短くなるほどより正確な電気伝導度を取得できるものと予想される。
【実施例4】
【0069】
測定電圧の範囲及び測定資料の数に対する依存性
実施例4は、電気伝導度の測定のために電気伝導度計測システムに使用できる電圧の範囲に制限がなく、また、電圧の段階的変更もその段階数に制限がないことを示す。
【0070】
1つの電気伝導度測定セルを用い、電圧印加時間を0.0001秒に設定し、3MのKCl伝導度標準溶液に対して測定された抵抗値及びセル定数を比較した。
【0071】
印加された電圧の測定範囲はそれぞれ−0.7V〜0.1V、−5V〜5V、−10V〜10V、電圧の段階的変更数はそれぞれ9段階、11段階、2段階にして
図7A〜7Cに示し、それぞれの測定された抵抗値及びセル定数は次の通りである。その結果、電圧は最小2段階から適切に増加することが分かる。
【0072】
【表5】
【0073】
前述したように、本発明においては、所定直流電圧を所定時間毎に段階的に変化させて印加し、各電圧毎に測定されたピーク電流を用いて溶液の抵抗値を測定することにより、分極による測定誤差を最小限に抑え、セル定数の電気伝導度依存性(いわゆるパーカー効果)を除去し、溶液の電気伝導度をより正確に測定することができる。
【0074】
本発明は、環境分野の水質モニタリング、原子力分野の冷却水モニタリングなどの産業分野に加え、電気化学反応関連の技術分野、溶液中のイオン構造の解析分野などに広く活用することができる。
【0075】
本発明による電気伝導度測定方法及びそれを用いた電気伝導度計測システムは、上記実施形態(実施例)の構成と方法に限定されるものではない。本発明は、技術思想が保護される範囲内で様々に応用することができる。