特許第5701971号(P5701971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クレハの特許一覧

特許5701971錠剤型の経口投与用組成物及びその製造方法
<>
  • 特許5701971-錠剤型の経口投与用組成物及びその製造方法 図000029
  • 特許5701971-錠剤型の経口投与用組成物及びその製造方法 図000030
  • 特許5701971-錠剤型の経口投与用組成物及びその製造方法 図000031
  • 特許5701971-錠剤型の経口投与用組成物及びその製造方法 図000032
  • 特許5701971-錠剤型の経口投与用組成物及びその製造方法 図000033
  • 特許5701971-錠剤型の経口投与用組成物及びその製造方法 図000034
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701971
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】錠剤型の経口投与用組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/20 20060101AFI20150326BHJP
   A61K 33/44 20060101ALI20150326BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20150326BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20150326BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20150326BHJP
   A61K 47/42 20060101ALI20150326BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20150326BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20150326BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20150326BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20150326BHJP
   A61P 39/00 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   A61K9/20
   A61K33/44
   A61K47/32
   A61K47/36
   A61K47/38
   A61K47/42
   A61K47/46
   A61P1/16
   A61P13/12
   A61P25/18
   A61P39/00
【請求項の数】10
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2013-503532(P2013-503532)
(86)(22)【出願日】2012年3月5日
(86)【国際出願番号】JP2012055538
(87)【国際公開番号】WO2012121202
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2014年10月1日
(31)【優先権主張番号】特願2011-47251(P2011-47251)
(32)【優先日】2011年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】貝ノ瀬 歩
(72)【発明者】
【氏名】神谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】町 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 佐市
(72)【発明者】
【氏名】千葉 忠彦
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−187405(JP,A)
【文献】 特開2002−308786(JP,A)
【文献】 特表2005−524604(JP,A)
【文献】 特開昭55−95611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/20
A61K 33/44
A61K 47/32
A61K 47/36
A61K 47/38
A61K 47/42
A61K 47/46
A61P 1/16
A61P 13/12
A61P 25/18
A61P 39/00
CA/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として65重量%以上の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤からなる、錠剤型の経口投与用組成物であって、
前記錠剤型経口投与用組成物が、1つ以上の粒子製剤用添加剤を錠剤型経口投与用組成物に対して合計1重量%以上含み、前記粒子製剤用添加剤が、プルラン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポピドン、完全アルファー化デンプン、酸化デンプン、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルスターチ、デキストリン、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、寒梅粉、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、グルコマンナン、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、タラガム、タマリンドガム、カラギーナン、メチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、部分アルファー化デンプン、トラガント、グァーガム、キサンタンガム、クインスシードガム、ローカストビーンガム、リン酸架橋デンプン、ガティガム、ジェランガム、トウモロコシデンプン、及び結晶セルロースカルメロースナトリウムからなる群から選択されるものであること、
を特徴とする経口投与用組成物。
【請求項2】
式(1)
/V≦1.53(1)
〔式中、Vは錠剤型経口投与用組成物の体積であり、Vは錠剤型経口投与用組成物中に含まれる球状活性炭を最密充填したときの嵩体積である〕
を満たす、請求項1に記載の経口投与用組成物。
【請求項3】
球状活性炭の平均粒子径が0.02〜1mmであり、比表面積が500m/g以上である、請求項1又は2に記載の経口投与用組成物。
【請求項4】
有効成分として1gの球状活性炭あたり、錠剤型経口投与用組成物の体積が3.06cm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の経口投与用組成物。
【請求項5】
錠剤型経口投与用組成物に含まれる球状活性炭の80%以上において、球形が維持されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の経口投与用組成物。
【請求項6】
錠剤型経口投与用組成物の硬度が20N以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の経口投与用組成物。
【請求項7】
錠剤型経口投与用組成物の摩損度が7%以内である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の経口投与用組成物。
【請求項8】
前記粒子製剤用添加剤の重量平均分子量が10,000以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の経口投与用組成物。
【請求項9】
(1)球状活性炭及び1つ以上の添加剤を合計100重量部、並びに溶媒10重量部以上を練合する工程であって、球状活性炭が65〜99重量部であり、添加剤が1〜35重量部であり、そして
前記添加剤として、1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計1重量部以上含み、前記粒子製剤用添加剤が、プルラン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポピドン、完全アルファー化デンプン、酸化デンプン、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルスターチ、デキストリン、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、寒梅粉、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、グルコマンナン、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、タラガム、タマリンドガム、カラギーナン、メチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、部分アルファー化デンプン、トラガント、グァーガム、キサンタンガム、クインスシードガム、ローカストビーンガム、リン酸架橋デンプン、ガティガム、ジェランガム、トウモロコシデンプン、及び結晶セルロースカルメロースナトリウムからなる群から選択されるものである、
前記練合工程;
(2)前記練合物を錠剤型に成形する工程;及び
(3)前記成形物を乾燥する工程;
を含む、錠剤型の経口投与用組成物の製造方法。
【請求項10】
前記乾燥工程が、凍結乾燥、減圧乾燥、送風乾燥又は加熱乾燥によって行われる、請求項に記載の錠剤型経口投与用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤型の経口投与用組成物に関する。特には、球状活性炭を有効成分として含む、有害物質の吸着用である錠剤型経口投与用組成物(以下、錠剤型経口投与用吸着剤組成物と称することがある)に関する。
【背景技術】
【0002】
経口投与用吸着剤は、経口的な服用が可能で、消化管内で有害物質を吸着することによって、腎臓や肝臓の機能障害を治療することができる(特許文献1)。この経口投与用吸着剤が、有害物質の吸着という薬理効果を発揮するためには、球状活性炭の球形を維持し、そしてその細孔構造を維持することが重要である。この経口投与用吸着剤は、例えば商品名「クレメジン(登録商標)カプセル200mg」及び「クレメジン(登録商標)細粒分包2g」(以下「クレメジン」と称する)として販売されている。
【0003】
腎臓病患者に対するクレメジンの1日あたりの投与量は6gであり、それを3回に分けて服用するため、1回あたりの服用量は2gである。クレメジンの細粒剤2gの体積は約4cmであり、服用する体積は決して少なくない。そのため、4cmの細粒剤を服用する場合、球状活性炭が水に溶解しないため口腔内にジャリジャリ感が残り、嫌悪感を抱く患者も存在していた。
一方、クレメジンのカプセル剤の場合は、口腔内のジャリジャリ感は発生しない。しかしながら、カプセル剤中に球状活性炭以外のデッドボリュームができるため、細粒剤の体積と比較するとカプセル剤の体積は約1.5倍(約6cm)に増加する。具体的には、約0.613cmの体積のカプセル剤を、一回に10カプセルずつ服用しなければならず、服用量の多さを訴える患者も存在していた。
また、細粒剤のジャリジャリ感を解消するため、又はカプセル剤の服用量の多さのため、多量の水と一緒でないと細粒剤やカプセル剤を服用することができない患者も多数存在する。腎臓病患者、又は腎不全患者の中には、水分摂取量を制限されている患者が存在し、それらの患者が、細粒剤又はカプセル剤などを服用する際には、できる限り少量の水と一緒の服用が求められるので、多量の水の助けを本来的に必要としている患者には、大きな苦痛が伴うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭62−11611号公報
【特許文献2】特開2006−8602号公報
【特許文献3】特開2006−36734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、経口投与用吸着剤の細粒剤における口腔内のジャリジャリ感を解消し、カプセル剤と比較して投与ボリュームを減らし、そして服用しやすい経口投与用吸着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、細粒剤における口腔内のジャリジャリ感を解消し、カプセル剤と比較して投与ボリュームを減らし、そして服用しやすい経口投与用吸着剤の剤型について鋭意研究を行った。その結果、薄膜形成能を有する粒子製剤用添加剤を用いた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物により、前記の課題を解決できることを見出した。
なお、本明細書において、「粒子製剤用添加剤」とは、粒子製剤用添加剤の1重量%の水溶液又は水分散液をフッ素樹脂平面上に0.5mL滴下し加熱乾燥した場合、薄膜を形成することのできる添加剤を意味する。
【0007】
球状活性炭は、一般的な医薬の有効成分である化合物と異なり、水などの溶媒に溶解しない、膨潤しない、硬い、及び圧縮性がないなどの特殊な物性を有している。従って、通常の錠剤の製造法である湿式顆粒圧縮法、乾式顆粒圧縮法、又は直接粉末圧縮法などの打錠成形に適したものではない。実際に、特許文献2には、クレメジンは球形吸着炭であるため、圧縮等による打錠成形はその球形形態を破壊し、不可能であることが記載されている。従って、経口投与用吸着剤は、前記のように球状活性炭をそのまま細粒剤として、又は球状活性炭を充填したカプセル剤として提供されており、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、及び結合剤などを添加し、錠剤に成形した製剤は市販されていなかった。
一般的な錠剤においては、錠剤としての形状維持と、実用的な硬度及び摩損度を得るために、錠剤の有効成分以外に十分な量の添加剤、例えば賦形剤及び結合剤等の添加剤の添加が必要である。これらの賦形剤又は結合剤は、錠剤を成形するために必要な粉体としての性質を保有している。すなわち、賦形剤や結合剤に用いられる粉体は、ゴムのような弾性体の性質と、粘性流体のような性質を兼ね備えており、短時間に強く圧縮することによって成形できるようになる。また、通常、有効成分である化合物自体も、粉体、又は顆粒として提供され、圧縮成形に適した性質を有している。一般に固体の力学特性は、外部から力学刺激を与えた時の応答を調べる形で行われる。すなわち、力学刺激−応答関係である。この関係は、物質に刺激を加える時間に対する応答の速さを示す物質固有の特性時間との比(De)を見出すことによって明らかにされる。Deが1に比べて非常に大きい物質は粘弾性の小さいガラスや金属のような固体であり、Deが0に近いものは液体の性質を示す。一般的な粉体はその中間の性質を持つことから、錠剤の有効成分が一般的な粉体としての性質を備えていれば(すなわち、Deが極端に大きかったり、0に近くない限り)有効成分の粉体としての特性と添加剤の特性の組み合わせにより、適切な錠剤として圧縮成形法により打錠できる。
【0008】
ところが、球状活性炭は、それ自体硬く焼結された物質であり、ガラスと同様にDeが無限大に大きい特徴を持つ。通常の粉体であれば適切な応力に応じてひずみが生じて変形し、力を除くとある時間を経過して元に戻る性質を有するが、球状活性炭は応力をかけると変形するが、一定以上の力がかかるとばらばらに破壊されてしまう性質を持っており、すなわちガラスと同様にDeが無限大である。ある程度の変形性がある通常の粉体(すなわち、賦形剤及び結合剤等)と、変形する性質を持たない粒子(すなわち、球状活性炭等)とを混合して圧縮成形しようとすると、変形する性質を持たない粒子が圧縮成形に対して妨害的に働き、圧縮成形が困難になる。
従って、前記特許文献2に記載のように、球状活性炭は、圧縮等による打錠成形が不可能である。
【0009】
本発明者らは、球状活性炭を有効成分とする経口投与用吸着剤について、球状活性炭の形状を維持し、優れた硬度及び摩損度を有する錠剤について検討した。しかしながら、既存の打錠機を用いて圧縮成形しようとする限り、どのような賦形剤及び結合剤等の組成を用いても、十分な量の球状活性炭を含有する錠剤を作製することはできなった。すなわち、賦形剤及び結合剤などの添加剤の含有量が少ない錠剤は、成形ができないか、又は球状活性炭が破壊された。例えば、特許文献3の実施例4には、44.4重量%の球状活性炭を含み、油圧プレス機により圧縮成形した錠剤が開示されている。しかしながら、後述の比較例16〜18に示すように、球状活性炭を20重量%、15重量%又は50.5重量%含有し、打錠により得られた錠剤は、錠剤として成形されず、更に球状活性炭が破壊された。従って、特許文献3に記載の錠剤も球状活性炭の形状が破壊されているものと推定される。
【0010】
本発明の錠剤型経口投与用組成物は、十分な量の粒子状物質(例えば、球状活性炭)を含み、且つ粒子状物質が破壊されていない。更に、本発明の錠剤型経口投与用組成物は、十分な硬度と摩損度を有するものであり、当業者の技術常識からは、驚くべきことである。
本発明者らは、薄膜形成能を有する粒子製剤用添加剤1つ以上を、錠剤型経口投与用組成物に対して合計1重量%以上含む錠剤型経口投与用組成物が、十分な量の粒子状物質を含むことができることに加えて、更に錠剤として優れた硬度、及び摩損度が得られることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
【0011】
従って、本発明は、
[1]有効成分として65重量%以上の粒子状物質、及び1つ以上の添加剤からなる、錠剤型の経口投与用組成物であって、
(a)前記粒子状物質が、水への溶解性及び膨潤性を示さず、2MPaの圧力を受けた場合の歪率が2%以下であり、そして圧壊強度が5MPa以上であり、
(b)前記錠剤型経口投与用組成物が、1つ以上の粒子製剤用添加剤を錠剤型経口投与用組成物に対して合計1重量%以上(好ましくは、1.5重量%以上、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは3重量%以上、更に好ましくは4重量%以上、更に好ましくは5重量%以上)含み、前記粒子製剤用添加剤が、その1重量%の水溶液又は水分散液をフッ素樹脂平面上に0.5mL滴下し加熱乾燥した場合、薄膜を形成すること、
を特徴とする経口投与用組成物、
[2]式(1)
/V≦1.53(1)
〔式中、Vは錠剤型経口投与用組成物の体積であり、Vは錠剤型経口投与用組成物中に含まれる粒子状物質を最密充填したときの嵩体積である〕(V/Vは、好ましくは1.53以下、より好ましくは1.4以下、更に好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下、最も好ましくは1.1以下)
を満たす、[1]に記載の経口投与用組成物、
[3]前記粒子状物質が球状活性炭である、[1]又は[2]に記載の経口投与用組成物、
[4]球状活性炭の平均粒子径が0.02〜1mmであり、比表面積が500m/g以上である、[3]に記載の経口投与用組成物、
[5]有効成分として1gの球状活性炭あたり、錠剤型経口投与用組成物の体積が3.06cm以下である、[3]又は[4]に記載の経口投与用組成物、
[6]錠剤型経口投与用組成物に含まれる球状活性炭の80%以上において、球形が維持されている、[3]〜[5]のいずれかに記載の経口投与用組成物、
[7]錠剤型経口投与用組成物の硬度が20N以上(好ましくは、30N以上、更に好ましくは50N以上)である、[1]〜[6]のいずれかに記載の経口投与用組成物、
[8]錠剤型経口投与用組成物の摩損度が7%以内(好ましくは5%以内、より好ましくは3%以内、更に好ましくは2%以内、更に好ましくは1%以内)である、[1]〜[7]のいずれかに記載の経口投与用組成物、
[9]前記粒子製剤用添加剤の重量平均分子量が10,000以上である、[1]〜[8]のいずれかに記載の経口投与用組成物、
[10]前記粒子製剤用添加剤が、プルラン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポピドン、完全アルファー化デンプン、酸化デンプン、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルスターチ、デキストリン、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、寒梅粉、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、グルコマンナン、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、タラガム、タマリンドガム、カラギーナン、メチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、部分アルファー化デンプン、トラガント、グァーガム、キサンタンガム、ペクチン、ヒアルロン酸、加工デンプン、アセチル化デンプン、酢酸デンプン、可溶性デンプン、アミロース、アミロペクチン、クインスシードガム、アマシードガム、カシヤガム、ローカストビーンガム、カゼインナトリウム、コラーゲン、及び大豆ペプチド、リン酸架橋デンプン、ガティガム、ジェランガム、からなる群から選択される、[1]〜[9]のいずれかに記載の経口投与用組成物、
[11](1)粒子状物質及び1つ以上の添加剤を合計100重量部、並びに溶媒10重量部以上を練合する工程であって、粒子状物質が65〜99重量部であり、添加剤が1〜35重量部であり、そして
(a)前記粒子状物質が、水への溶解性及び膨潤性を示さず、2MPaの圧力を受けた場合の歪率が2%以下であり、そして圧壊強度が5MPa以上であり、(b)前記添加剤として、1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計1重量部以上(好ましくは、1.5重量部以上、より好ましくは2重量部以上、更に好ましくは3重量部以上、更に好ましくは4重量部以上、更に好ましくは5重量部以上)含み、前記粒子製剤用添加剤が、粒子製剤用添加剤の1重量%の水溶液又は水分散液をフッ素樹脂平面上に0.5mL滴下し加熱乾燥した場合、薄膜を形成するものである、前記練合工程;(2)前記練合物を錠剤型に成形する工程;及び(3)前記成形物を乾燥する工程;を含む、錠剤型の経口投与用組成物の製造方法、
[12]前記粒子状物質が球状活性炭である、[11]に記載の錠剤型経口投与用組成物の製造方法、
[13]前記乾燥工程が、凍結乾燥、減圧乾燥、送風乾燥又は加熱乾燥によって行われる、[11]又は[12]に記載の錠剤型経口投与用組成物の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の錠剤型の経口投与用組成物によれば、同量の粒子状物質(特には、球状活性炭)を含むカプセル剤と比較して、体積を小さくすることが可能であり、服用性が改善された経口投与用組成物を提供することができる。また、本発明の錠剤型経口投与用組成物によれば、有効成分である粒子状物質をそのまま服用する細粒剤と比較して、ジャリジャリ感などの服用性の欠点を改善した経口投与用組成物を提供することができる。
また、本発明の錠剤型の経口投与用組成物は、粒子状物質の含有量が多いにもかかわらず、錠剤としての硬度、摩損度、及び安定性において優れている。
特に、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物によれば、球状活性炭の機能を十分維持し、服用性の改善した経口投与用吸着剤組成物を提供することができる。すなわち、球状活性炭の球形が維持され、細孔構造が破壊されず、経口投与用吸着剤の機能を十分発揮することのできる経口投与用吸着剤組成物を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の1つの実施態様を示す図である。
図2】添加剤として、マルチトールを用いて錠剤型の経口投与用吸着剤組成物を製造した比較例1〜6の結果を示す写真である。
図3】薄膜を形成した粒子製剤用添加剤ポリビニルアルコールの写真(A)及び薄膜を形成できない添加剤カルメロースの写真(B)を示す。
図4】薄膜形成能を示す粒子製剤用添加剤プルランを用いた錠剤表面の電子顕微鏡写真(A)及び薄膜形成能を持たない添加剤コポリビドンを用いた錠剤表面の電子顕微鏡写真(B)を示す。
図5】薄膜形成能を示す粒子製剤用添加剤プルランを用いた錠剤の内部の電子顕微鏡写真(A)及び薄膜形成能を持たない添加剤コポリビドンを用いた錠剤の内部の電子顕微鏡写真(B)を示す。
図6】球状活性炭の荷重と変位の関係を示したグラフであり、この結果から粒子が破壊されたときの圧壊強度及び歪率が求められる。(A)は、製造例1において製造された球状活性炭を示し、(B)は製造例2において製造された球状活性炭を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[1]錠剤型経口投与用組成物
本発明の錠剤型の経口投与用組成物は、有効成分として65重量%以上の粒子状物質及び1つ以上の添加剤からなる組成物であり、前記粒子状物質は、水への溶解性及び膨潤性を示さず、2MPaの圧力を受けた場合、歪率が2%以下であり、圧壊強度が5MPa以上である。
【0015】
(粒子状物質)
前記粒子状物質は、水への溶解性を示さない。本明細書において、「水への溶解性を示さない」とは、1gの物質を溶解させるために必要な水が10000mL以上であることを意味する。より具体的には、試験物質を粉末にした後、水に入れ20±5℃の温度で5分ごとに強く30秒間攪拌し30分以内に溶けた量を確認する。1gの物質を溶解させるために必要な水が10000mL以上であれば、水への溶解性を示さないと判定する。
【0016】
また、前記粒子状物質は、水への膨潤性を示さない。本明細書において、「水への膨潤性を示さない」とは、試験物質に水を添加した場合、体積の増加率が5%以下であることを意味する。具体的には、試験物質1gの体積を測定し、水を10mL加え、攪拌し1時間放置する。試験物質をろ過し、40℃以下で30分間、送風乾燥した後、全量を回収し体積を測定する。体積の増加率が5%以下であれば、水への膨潤性を示さないと判定する。あるいは、試験物質をろ過し、それを適当な背景下で写真を撮影し、水を加えて攪拌する前の試験物質の写真と比較した場合、平均直径の増加率が2%以下である場合も「水への膨潤性を示さない」ことを意味する。
【0017】
本発明に用いる粒子状物質は、2MPaの圧力(ここでの「圧力」とは、粒子状物質に加えた荷重を粒子状物質の断面積で除した値のことをいう。)を受けた場合、歪率が2%以下である。すなわち、前記粒子状物質は、圧力をかけて圧縮する場合に、実質的に変形しない。粒子状物質の歪率を求める試験は、全自動型粉体硬度測定器(BHT−500、セイシン企業製)を用い、破断のための荷重と変位をプロットし、その傾きから求めることができる。
【0018】
本発明に用いる粒子状物質は、圧壊強度が5MPa以上であり、そして破断したときに見かけ上の応力(荷重)がゼロになる。すなわち、前記粒子状物質は一定以上の力をかけた場合、変形せずに破壊される特徴を有する。粒子状物質の圧壊強度を求める試験は、全自動型粉体硬度測定器(BHT−500、セイシン企業製)を用い、次の式によって求めることができる。
圧壊強度(MPa)=破断時の荷重(N)/荷重面の断面積(mm
【0019】
本発明に用いる粒子状物質として、例えば球状活性炭を挙げることができる。球状活性炭を有害物質の吸着用として含む錠剤型経口投与用組成物は、錠剤型経口投与用吸着剤組成物である。球状活性炭は、前記のように、水への溶解性及び膨潤性を示さず、実施例に示すように、2MPaの圧力を受けた場合、歪率が2%以下であり、そして圧壊強度が5MPa以上である。すなわち、球状活性炭は応力をかけても変形しにくく、且つ一定以上の応力がかかるとばらばらに破壊される。従って、このような物性を有する球状活性炭を、従来の方法により、打錠成形することは不可能である。
しかしながら、本発明の錠剤型経口投与用組成物は、薄膜形成能を有する粒子製剤用添加剤を含むことによって、球状活性炭を含む錠剤型経口投与用組成物として成形することが可能であり、更に錠剤としての、実用的な硬度、及び摩損度を有することができる。
【0020】
(添加剤)
本発明の錠剤型経口投与用組成物は、粒子状物質及び1つ以上の添加剤からなる組成物である。
本明細書において「添加剤」とは、有効成分以外の、錠剤に含むことのできるすべての物質を意味する。
本発明の錠剤型経口投与用組成物は、添加剤として前記粒子製剤用添加剤を含むことを特徴とするものであるが、粒子製剤用添加剤以外の添加剤(以下、「その他の添加剤」と称することがある)を含んでもよい。すなわち、本発明の錠剤型経口投与用組成物は、添加剤として、前記粒子製剤用添加剤以外の添加剤(その他の添加剤)及び粒子製剤用添加剤を含んでもよく、また粒子製剤用添加剤のみを含むものでもよい。換言するならば、本発明に用いる添加剤は、粒子製剤用添加剤以外の添加剤(その他の添加剤)及び粒子製剤用添加剤からなるものでもよく、粒子製剤用添加剤からなるものでもよい。
【0021】
(粒子製剤用添加剤)
本発明の錠剤型経口投与用組成物は、前記1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計1重量%以上含み、好ましくは1.5重量%以上含み、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは3重量%以上、更に好ましくは4重量%以上、更に好ましくは5重量%以上含む。粒子製剤用添加剤が1重量%未満の場合、錠剤として実用的な硬度及び/又は摩損度を得ることができないことがある。前記粒子製剤用添加剤の含有量は、錠剤型経口投与用組成物に対して合計1重量%以上である。すなわち、1つの粒子製剤用添加剤の含有量が錠剤型経口投与用組成物に対して1重量%以上でもよく、2つ以上の粒子製剤用添加剤の合計の含有量が錠剤型経口投与用組成物に対して1重量%以上でもよい。
【0022】
本発明の錠剤型経口投与用組成物に含まれる粒子製剤用添加剤は、その1重量%水溶液又は水分散液を、フッ素樹脂平面上に0.5mL滴下し125℃で加熱乾燥した場合、薄膜を形成する性質を有する添加剤である。すなわち、1重量%水溶液、又は水分散液を溶液非浸透性の面に薄く塗布して加熱乾燥させた場合、薄膜を形成する「薄膜形成能」を有する。
【0023】
前記粒子製剤用添加剤は、前記のように、その1重量%液を溶液非浸透性の面に薄く塗布して加熱乾燥させた場合、薄膜を形成する。薄膜形成能の試験方法は、以下のとおりである。
[試験方法]
(1)ヒーターつきスターラーの熱板表面にフッソ樹脂粘着テープ(ニトフロンテープ;日東電工株式会社)を12cm×12cmの面積になるように貼り付ける。
(2)粒子製剤用添加剤の1重量%水溶液又は水分散液を作製する。溶解又は分散のために精製水を加熱してもよい。
(3)得られた水溶液又は水分散液を、フッソ樹脂粘着テープの上に0.5mL滴下する。滴下された水溶液及び水分散液は、直径1〜5cm程度の円を形成する。
(4)ヒーターの温度設定を約125℃とし、10分間加熱乾燥する。
なお、試験を行う場合の雰囲気条件は以下のとおりである。
雰囲気:空気存在下
湿度:20〜80%RH
気流:一般試験室環境下
気圧:大気圧下
[判定]
(5)フッソ樹脂粘着テープと薄膜との間にピンセットを入れて丁寧に剥離する。
(6)1枚の薄膜として剥離できたものを、薄膜が形成したものと判定する。薄膜が形成されない添加剤の多くは、薄膜に亀裂が入りフッソ樹脂粘着テープから剥離することができない。また「1枚の薄膜として剥離できる」とは、丁寧に剥離したとき薄膜が2つ以上に分離しないものを意味する。
10分で判定ができない場合、すなわち薄膜が形成されず、且つ薄膜が分離しない場合は、20分間加熱乾燥して判定を行う。また、30分加熱乾燥を行い薄膜の形成及び薄膜の分離が起こらない場合は、薄膜形成能がないと判定する。
【0024】
医薬品に用いられる添加剤としては、「医薬品添加物規格2003」(薬事日報社、2003年)に、479品目の医薬品添加剤が収載されている。また、「医薬品添加物事典2007」(日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社、2007年)には、1228品目の医薬品添加剤が収載されている。更に、食品添加剤としては、[既存添加物名簿]に、418品目(2007年8月3日現在)が記載されているが、高級脂肪酸などのように多くの種類の化合物を1品目として記載しているものもあり、実際には418品目以上の添加剤が使用されている。食品添加剤のうち、増粘剤(増粘多糖類)、粘稠剤、安定化剤、結合剤、又は糊料の用途で使用されることがある化合物を、本発明の錠剤型経口投与用組成物において、添加剤として用いることもできる。
【0025】
粒子製剤用添加剤としては、前記の医薬品添加剤、及び食品添加剤などの化合物の中で、薄膜形成能を有するものであれば、制限なく使用することができる。例えば、医薬品添加剤の賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、若しくは結合剤、又はその組み合わせの何れも用いることが可能である。しかしながら、粒子製剤用添加剤は、錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の体積を可能な限り増加させないで、且つ実用的な硬度、及び摩損度を得るために、少なくとも結合剤としての機能を有している添加剤が好ましく、結合性及び崩壊性を両立する添加剤が、更に好ましい。
【0026】
粒子製剤用添加剤として、具体的には、多糖類(例えば、デンプン類、アルギン酸誘導体、天然ガム類、単純多糖類、複合多糖類、及びムコ多糖類)、タンパク質、半合成高分子、及び合成高分子を挙げることができ、より具体的には、プルラン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポピドン、完全アルファー化デンプン、酸化デンプン、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルスターチ、デキストリン、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、寒梅粉、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、グルコマンナン、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、タラガム、タマリンドガム、カラギーナン、メチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、部分アルファー化デンプン、トラガント、グァーガム、キサンタンガム、ペクチン、ヒアルロン酸、加工デンプン、アセチル化デンプン、酢酸デンプン、可溶性デンプン、アミロース、アミロペクチン、クインスシードガム、アマシードガム、カシヤガム、ローカストビーンガム、カゼインナトリウム、コラーゲン、大豆ペプチド、リン酸架橋デンプン、ガティガム、及びジェランガム、並びにそれらの2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
なお、部分アルファー化デンプンは、通常のデンプンを加熱してアルファー化したもの、例えば、トウモロコシデンプンを熱水に溶解して部分的にアルファー化したものを使用することもできる。また、カルメロースナトリウムは、例えばカルメロースを0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に溶解して調製されるカルメロースナトリウムを用いることも可能である。
【0027】
また、錠剤型経口投与用組成物の摩損度及び崩壊性の観点から、好ましい粒子製剤用添加剤は、プルラン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポピドン、完全アルファー化デンプン、酸化デンプン、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルスターチ、デキストリン、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、寒梅粉、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、グルコマンナン、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、タラガム、タマリンドガム、カラギーナン、メチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、部分アルファー化デンプン、トラガント、グァーガム、及びキサンタンガムであり、より好ましい粒子製剤用添加剤は、プルラン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポピドン、完全アルファー化デンプン、酸化デンプン、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルスターチ、デキストリン、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、寒梅粉、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、グルコマンナン、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、タラガム、及びタマリンドガムであり、更に好ましい粒子製剤用添加剤は、プルラン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポピドン、完全アルファー化デンプン、酸化デンプン、及びヒプロメロースであり、最も好ましい粒子製剤用添加剤は、プルラン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、及びポピドンである。
【0028】
また、粒子製剤用添加剤の錠剤型経口投与用組成物の含有量は、1重量%以上であり、好ましくは1.5重量%以上であり、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは3重量%以上、更に好ましくは4重量%以上、更に好ましくは5重量%以上である。特に、プルラン、ゼラチン、ポピドン、完全アルファー化デンプン、ヒプロメロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、グルコマンナン、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、タラガム、ヒアルロン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、トラガント、グァーガム、及びキサンタンガムの錠剤型経口投与用組成物における含有量は、1重量%以上であり、好ましくは1.5重量%以上であり、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは3重量%以上、更に好ましくは4重量%以上、更に好ましくは5重量%以上である。また、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルスターチ、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、カラギーナン、メチルセルロース、部分アルファー化デンプン、デキストリン及びクインスシードガムの錠剤型経口投与用組成物における含有量は、1重量%以上であり、好ましくは2.0重量%以上であり、より好ましくは3.5重量%以上、更に好ましくは4重量%以上、更に好ましくは5重量%以上である。また、ローカストビーンガム、及び寒梅粉の錠剤型経口投与用組成物における含有量は、1重量%以上であり、好ましくは3.0重量%以上であり、より好ましくは4.5重量%以上、更に好ましくは5重量%以上である。また、酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、ガティガム、及びジェランガムの錠剤型経口投与用組成物における含有量は、1重量%以上であり、好ましくは5.0重量%以上であり、より好ましくは7.0重量%以上である。タマリンドガムの錠剤型経口投与用組成物における含有量は、1重量%以上であり、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは13重量%以上である。ペクチン、ヒアルロン酸、加工デンプン、アセチル化デンプン、酢酸デンプン、可溶性デンプン、アミロース、アミロペクチン、アマシードガム、カシヤガム、カゼインナトリウム、コラーゲン、及び大豆ペプチドの錠剤型経口投与用組成物における含有量は、1重量%以上であり、好ましくは1.5重量%以上であり、より好ましくは2重量%以上であり、より好ましくは3.0重量%以上であり、より好ましくは3.5重量%以上であり、更に好ましくは4.5重量%以上であり、更に好ましくは5.0重量%以上であり、より好ましくは7.0重量%以上であり、更に好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは13重量%以上である。
錠剤型経口投与用吸着剤組成物に含まれる粒子製剤用添加剤の含有量の上限は、35重量%以下であれば、特に限定されるものではないが、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下であり、最も好ましくは20重量%以下である。
【0029】
前記粒子製剤用添加剤の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、10,000以上が好ましい。重量平均分子量が10,000以上であると、薄膜形成能が優れる傾向にある。粒子製剤用添加剤の重量平均分子量は、以下の方法で測定することができる。
粒子製剤用添加剤10mgを蒸留水1mLに溶解し、以下の分析条件でサイズ排除高速液体クロマトグラフィーに供する。測定値を重量平均分子量既知のプルランから作成した検量線に当てはめて重量平均分子量を決定する。
【0030】
【表1】
【0031】
前記粒子製剤用添加剤は、水に1重量%以上の濃度で混合した場合、溶解して水溶液となるか、膨潤して水分散液となるか、又は一部が溶解し、一部が分散した混合液となる。この場合の溶解の方法は、日本薬局方の通則に示された方法、即ち、粒子製剤用添加剤を粉末にした後、溶媒中に入れ、20±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜる方法でもよいし、それぞれの粒子製剤用添加剤が、その供給業者によって示されている溶解方法に従ってもよい。粒子製剤用添加剤を混合する水の温度は、1℃〜99℃のものを用いることができ、最終的に、1重量%以上の濃度で溶解するか、膨潤して分散すればよい。これらの溶液、又は分散液は澄明であるか、あるいは、僅かに濁りがある。
【0032】
本発明の錠剤型経口投与用組成物に用いる粒子製剤用添加剤は、薄膜形成能を有している。錠剤型経口投与用組成物の有効性分である粒子状物質は、後述の実施例に示すように、応力がかかってもほとんど変形せず、一定以上の力がかかると破壊される性質、すなわちDeが無限大に大きいという性質を有する。本発明の錠剤型経口投与用組成物においては、このような変形しない粒子状物質同士を、粒子製剤用添加剤が薄膜によって被覆するように結合させることによって、硬度及び摩損度の優れた錠剤を形成できるものと考えられる。すなわち、本発明に用いる粒子製剤用添加剤は薄膜形成能を有しており、本発明の錠剤型経口投与用組成物においては、図4Aに示すように、粒子状物質(例えば、球状活性炭)の表面に薄膜が形成される。この薄膜は、ある程度の引っ張り強度及び一定の粘着性を有しており、この薄膜を介して粒子状物質が広い面積で結合し、結合状態が安定化すると推定される。一方、薄膜が形成されない添加剤を用いた場合は、図4Bに示すように、添加剤が粒子状物質の表面を覆っても乾燥後にひび割れてしまうため、脆く錠剤型組成物を形成することができない。
【0033】
錠剤型経口投与用組成物の粒子状物質の表面の薄膜は、溶媒に溶解又は分散した粒子製剤用添加剤を乾燥させることによって形成される。従って、本発明の錠剤型経口投与用組成物は、溶媒に溶解又は分散した粒子製剤用添加剤を乾燥させることによって、粒子状物質に薄膜を形成させる錠剤型経口投与用組成物の製造方法によって、製造することができる。例えば、後述の錠剤型経口投与用組成物の製造方法によって製造することが可能であるが、それに限定されるものではない。
【0034】
(粒子製剤用添加剤以外の添加剤)
本発明に用いる「添加剤」は、前記粒子製剤用添加剤と、粒子製剤用添加剤以外の添加剤(その他の添加剤)とに分類することができる。粒子製剤用添加剤以外の添加剤は、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、及び結合剤、並びにその他の錠剤の製造に用いることのできる物質を含むが、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、及び結合剤等には、前記粒子製剤用添加剤として用いることのできる化合物が含まれる。
【0035】
本発明の錠剤型経口投与用組成物は、錠剤として実用的な硬度、摩損度、及び崩壊分散性を得ることができる限り、粒子製剤用添加剤以外の添加剤を含むことができる。粒子製剤用添加剤以外の添加剤の含量は、34重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下であり、更に好ましくは10重量%以下であり、更に好ましくは5重量%以下であり、最も好ましくは2重量%以下である。
但し、本発明の錠剤型経口投与用組成物に含まれる添加剤は、そのすべてが実質的に粒子製剤用添加剤であることが好ましい。従って、本発明の錠剤型経口投与用組成物は、粒子状物質及び粒子製剤用添加剤からなるものが、最も好ましい。すなわち、有効成分として65〜99重量%の粒子状物質、及び1〜35重量%の粒子製剤用添加剤からなるものが最も好ましい。
【0036】
しかしながら、錠剤型経口投与用組成物に含まれる粒子製剤用添加剤を添加することによって、十分な硬度、摩損度を確保しても、崩壊分散性が不十分である場合がある。このような場合には、粒子製剤用添加剤以外の添加剤として適当な崩壊剤を添加することにより、結合性と崩壊性のバランスを取ることができる。本発明の錠剤型経口投与用組成物に用いることのできる崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、及びカルメロースカルシウムなどを例示することができるが、その限りではない。
【0037】
(その他の添加剤)
以下に粒子製剤用添加剤以外の添加剤(その他の添加剤)として用いることのできる添加剤について説明するが、これらの添加剤の中で、前記薄膜形成能を有する添加剤は、粒子製剤用添加剤として用いることが可能である。
一般に、医薬品に用いる添加剤は、前記「医薬品添加物規格2003」及び「医薬品添加物事典2007」に記載されており、例えば賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、及び結合剤などを挙げることができる。賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、及び結合剤の機能は、必ずしも単一ではなく、例えば賦形剤として分類される結晶セルロースは、多くの場合崩壊剤としての機能もあり、また直接打錠法においては成形性を向上させるための結合剤としての機能も有している。従って、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、及び結合剤のそれぞれの機能は重複している場合がある。
賦形剤は、主として、増量(増量剤)又は希釈(希釈剤)のために用いられる添加剤であり、具体的にはデンプン、リン酸水素カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、又は三ケイ酸マグネシウム等を挙げることができる。
また、結合剤は、主薬や増量剤に結合力を与え、成形するために用いられる添加剤であり、剤形を維持し、包装工程や輸送時の破損を防止し、そして機械的強度を高めるために用いられるものである。具体的には、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、粉末セルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、完全アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、デキストリン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント、精製ゼラチン、ポリビニルアルコール、又はポビドン等を挙げることができる。
更に、崩壊剤は、錠剤を服用した場合、消化管内で湿潤して製剤を微粒子まで崩壊、及び分散させるために用いられる添加剤である。具体的には、カルメロース、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、粉末セルロース、デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、又はヒドロキシプロピルスターチ等を挙げることができる。
滑沢剤は、打錠において、粉体の流動性、充填性、付着性、及び成形性などの諸性質を改善する機能を有する添加剤であり、錠剤の品質と製造効率の向上のために用いられるものである。具体的には、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、又はステアリン酸等を挙げることができる。
【0038】
(粒子状物質及び粒子製剤用添加剤の含有量)
本発明の錠剤型経口投与用組成物に含まれる粒子状物質の含量は、65重量%以上であり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは75重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは85重量%以上である。例えば、球状活性炭が65重量%未満の場合、球状活性炭に対する添加剤の量が増加し、従って、1回に服用する錠剤の体積が多くなることにより、飲水量が増加するため好ましくない。また、粒子状物質の含量の上限は、特に限定されないが、99重量%以下であり、好ましくは98.5重量%以下であり、より好ましくは98重量%以下、更に好ましくは97重量%以下、更に好ましくは96重量%以下、更に好ましくは95重量%以下である。
本発明の錠剤型経口投与用組成物は、65重量%以上の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤からなり、添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計1重量%以上含む。そして、本発明の錠剤型経口投与用組成物は、(b)その他の添加剤を含んでもよい。すなわち、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物は、65〜99重量%の球状活性炭及び1つ以上の添加剤からなり、添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計1〜35重量%、及び(b)0〜34重量%のその他の添加剤を含む。
より好ましくは、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物は、65重量%以上の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤からなり、添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計1.5重量%以上含む。そして、本発明の錠剤型経口投与用組成物は、(b)その他の添加剤を含んでもよい。すなわち、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物は、65〜98.5重量%の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤からなり、添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計1.5〜35重量%、及び(b)0〜33.5重量%のその他の添加剤を含む。
更に好ましくは、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物は、65重量%以上の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤からなり、添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計2重量%以上含む。そして、本発明の錠剤型経口投与用組成物は、(b)その他の添加剤を含んでもよい。すなわち、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物は、65〜98重量%の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤からなり、添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計2〜35重量%、及び(b)0〜33重量%のその他の添加剤を含む。
更に好ましくは、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物は、65重量%以上の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤からなり、添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計3重量%以上含む。そして、本発明の錠剤型経口投与用組成物は、(b)その他の添加剤を含んでもよい。すなわち、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物は、65〜97重量%の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤からなり、添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計3〜35重量%、及び(b)0〜32重量%のその他の添加剤を含む。
更に好ましくは、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物は、65重量%以上の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤からなり、添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計4重量%以上含む。そして、本発明の錠剤型経口投与用組成物は、(b)その他の添加剤を含んでもよい。すなわち、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物は、65〜96重量%の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤からなり、添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計4〜35重量%、及び(b)0〜31重量%のその他の添加剤を含む。
更に好ましくは、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物は、65重量%以上の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤からなり、添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計5重量%以上含む。そして、本発明の錠剤型経口投与用組成物は、(b)その他の添加剤を含んでもよい。すなわち、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物は、65〜95重量%の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤からなり、添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計5〜35重量%、及び(b)0〜30重量%のその他の添加剤を含む。
球状活性炭、粒子製剤用添加剤、及びその他の添加剤は、前記の範囲であれば、特に制限されずに錠剤型経口投与用吸着剤組成物に含まれることができる。
【0039】
(球状活性炭)
粒子状物質に含まれる球状活性炭は、医療用に使用することが可能な球状活性炭である限り、特に限定されるものではないが、経口投与用球状活性炭、すなわち、医療用に内服使用することが可能な球状活性炭が好ましい。
本発明の経口投与用吸着剤組成物に含まれる球状活性炭の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.02〜1mmが好ましく、0.03〜0.90mmがより好ましく、0.05〜0.80mmが更に好ましい。また、前記球状活性炭の粒径(直径)の範囲は、0.01〜2mmであることが好ましく、0.02〜1.5mmであることがより好ましく、0.03〜1mmであることが更に好ましい。
「球状活性炭」とは、比表面積が100m/g以上であるものを意味するが、本発明に用いる球状活性炭の比表面積は500m/g以上が好ましく、700m/g以上がより好ましく、1300m/g以上が更に好ましく、1650m/g以上が特に好ましい。
【0040】
本発明の錠剤型の経口投与用組成物(以下、錠剤型組成物と称することがある)は、好ましくは、錠剤型組成物の体積をVとし、錠剤型組成物中に含まれる粒子状物質を最密充填したときの嵩体積をVとした場合に、
/V≦1.53(1)
の式を満たすものである。すなわち、V/Vは、好ましくは1.53以下であり、より好ましくは1.4以下、更に好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下、最も好ましくは1.1以下である。V/Vが、1.53以下であることにより、同じ量の粒子状物質(例えば、球状活性炭)を含むカプセル剤より、錠剤の体積は小さくなり、服用性が改善する。すなわち、経口投与用吸着剤を服用する場合の、飲水量を減らすことができる。
例えば、市販されているクレメジンカプセル200mgの1カプセルの体積は0.613cmであり、従って、1回あたりに服用する10カプセルの体積は、6.13cmである。この場合の球状活性炭の重量は2gである。本発明の錠剤型の経口投与用吸着剤組成物に嵩密度0.50g/cmの球状活性炭2gを用いた場合、その最密充填した嵩体積は4cmであり、V/Vが1.53の場合のVは、6.12cmとなり、10カプセルの体積よりも少なくなる。従って、本発明の錠剤型の経口投与用吸着剤組成物は、通常のカプセル剤の体積よりも少なく、服用性が改善し、服用時の飲水量を減少させることが可能である。
本発明に用いる粒子状物質は、水への溶解性及び膨潤性を示さず、硬く、そして圧縮性がない。従来、このような性質を有する粒子状物質の粒子形状を維持したままで、錠剤の体積を粒子状物質の嵩体積の1.53以下に抑えて錠剤化したものは、全く存在しなかった。更に、錠剤としての硬度、摩損度、崩壊分散性、及び安定性を維持しながら、V/Vの値を1.4以下、1.3以下、1.2以下、又は1.1以下にできることは、驚くべきことである。
【0041】
前記式(1)中の「錠剤型組成物の体積(V)」は、外寸法を測定し、計算によって求めることができる。錠剤の形状には、円形錠剤、楕円錠剤、不完全円形錠剤、不完全楕円形錠剤、円筒形錠剤、円盤形錠剤、レンズ形錠剤、竿形錠剤、矩形錠剤、多角形錠剤(例えば、三角形、四角形、五角形又は六角形など)があるが、ほとんどの錠剤の体積は、直径、厚み等の外寸法から計算することが可能である。また、錠剤型組成物を熱収縮性プラスチックフィルムで包み、加熱収縮させることによって錠剤型組成物への水の吸収を抑えた後、これを水に浸して、増加した体積を測定することも可能である。
【0042】
前記式(1)中の「錠剤型組成物中に含まれる球状活性炭を最密充填したときの嵩体積(V)」は、実際に錠剤型組成物中に含まれている球状活性炭の最密充填嵩体積を測定してもよく、原料として用いる球状活性炭の錠剤型組成物に含まれる重量分を最密充填したときの嵩体積を測定してもよく、更に錠剤型組成物に用いられる球状活性炭と同じように品質管理された球状活性炭(例えば、細粒剤又はカプセル剤の球状活性炭)の錠剤型組成物に含まれる重量分を最密充填したときの嵩体積を測定したものでもよい。
具体的には、「錠剤型組成物中に含まれる粒子状物質を最密充填したときの嵩体積(V)」は、次のように求めることができる。
重量既知の粒子状物質をメスシリンダに充填し、50回タップした後で、体積を求め、重量を体積で除することにより、タップ密度を算出する。1錠あたりの粒子状物質の重量をタップ密度で除したものを「錠剤型組成物中に含まれる粒子状物質を最密充填したときの嵩体積(V)」とする。例えば、50mLのメスシリンダに球状活性炭20gを充填し、50回タップした後で体積を求め、20gを体積で除することにより、タップ密度を算出する。1錠あたりの粒子状物質の重量をタップ密度で除算することによって、1錠あたりの「錠剤型組成物中に含まれる粒子状物質を最密充填したときの嵩体積(V)」を求めることができる。
【0043】
本発明の錠剤型経口投与用組成物の粒子状物質の割合(重量又は嵩体積)は、洗浄法によって測定することができる。洗浄法とは、錠剤型組成物適量に水を加えて超音波処理等の処理を行い、組成物を崩壊分散させる。錠剤型組成物の添加剤が水溶性の場合、粒子状物質以外のものは水に溶けてしまうので、ろ過や遠心分離などの適当な方法で粒子状物質を分離し、必要に応じて水で更に洗浄し、105℃で4時間乾燥することにより検体を得る。この検体の重量又は嵩体積を、最初に添加した錠剤型組成物の重量又は体積で除することにより、本発明の経口投与用組成物の粒子状物質の割合(重量又は嵩体積)を直接求めることができる。
本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物の球状活性炭の割合は、元素分析法によって測定することができる。元素分析法とは、錠剤型組成物適量を乳鉢に取り、乳棒で細かく砕く。あるいは振動ボールミルのような適当な粉砕機を用いて細かく砕く。破砕物を均一に混合し、その一部をとって元素分析装置により、その炭素含量を定量する。その炭素含量値が概ね79パーセント以上の場合、球状活性炭を65重量%以上含むことになる。
【0044】
本発明の錠剤型の経口投与用組成物の体積は、経口的に服用可能な体積である限り、特に限定されるものではないが、薬効成分として粒子状物質(例えば、球状活性炭)1gあたり、組成物の体積は、3.06cm以下であり、好ましくは2.80cm以下であり、より好ましくは2.60cm以下であり、更に好ましくは2.40cm、最も好ましくは2.20cm以下である。1錠の体積が少ないほうが、服用性がよいからである。
【0045】
経口投与用吸着剤組成物に含まれる球状活性炭の形態は、便秘などの副作用を防ぐ観点から球形を維持することが好ましい。また、後述のように毒性物質の吸着能、例えば選択吸着率は、直径、平均粒子径、比表面積、及び特定の細孔直径範囲における細孔容積などに影響を受けることから、球状活性炭が破損しておらず、直径、又は平均粒子径に影響する球形が維持され、比表面積や細孔容積に影響する細孔構造が維持されていることが望ましい。
従って、本発明の経口投与用吸着剤組成物に含まれる球状活性炭は、好ましくは80%以上が球形であり、より好ましくは85%以上が球形であり、最も好ましくは90%以上が球形である。80%以上の球状活性炭の球形が維持されていることにより、経口投与用吸着剤としての機能を発揮することができる。
錠剤型組成物中の球状活性炭の球形率は、粒度・形状分布測定器(PITA−2型 株式会社セイシン企業製)を用いて測定することができる。その場合の測定方法は以下のとおりである。
錠剤型組成物から球状活性炭(粉砕された粒子も含む)を分離する前処理として、この錠剤1.5g〜2.5gをとり、50mL容のプラスチック製遠心管に入れ、精製水50mLを加え、超音波処理を10分間行うことにより、錠剤を崩壊分散させる。その後、ろ紙でろ過することにより球状活性炭を回収する。回収した球状活性炭を105℃で4時間乾燥し、検体とする。凝集塊による装置の目詰まりを防止するため、必要に応じて適当なふるいを用いてこれを除去する。
粒度・形状分布測定器(PITA−2型、株式会社セイシン企業製)を用いた測定条件及び解析条件は以下のとおりである。
【0046】
【表2】
【0047】
錠剤型の経口投与用組成物は、輸送あるいは包装などの操作において、破損しないように、実用的な硬度を有することが望ましい。錠剤型組成物の硬度は、特に限定されるものではないが、好ましくは20N以上であり、より好ましくは30N以上であり、更に好ましくは50N以上である。硬度が20N未満の場合、錠剤型組成物の輸送中の破損、又は錠剤型組成物の包装材からの取り出し時の破損が起きることがある。また、錠剤型組成物の硬度の上限は、特に限定されるものではないが、錠剤型組成物の崩壊性に影響を与えない範囲であることが好ましい。
【0048】
錠剤型組成物の硬度測定については、錠剤硬度計(TBH320、ERWEKA社製)を用いて錠剤試料の厚さを計測し、測定値を硬度計に入力した後、測定を室温で行った。測定条件は以下に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
本発明の経口投与用組成物の摩損度は、特に限定されるものではないが、7%以内が好ましく、5%以内であることがより好ましく、3%以内が更に好ましく、2%以内が更に好ましく、1%以内が最も好ましい。摩損度が大きくなると、錠剤型組成物の輸送中の振動負荷等により包装容器内で摩損することにより微粉が発生し錠剤型組成物の破損が起こるからである。
【0051】
摩損度の測定は、「第15改正日本薬局方」参考情報の摩損度試験法に準じて以下のように行うことができる。
即ち、錠剤型組成物試料を1〜6.5gに相当する錠数用意し、試験前に錠剤型組成物に付着する粉末を取り除いた後、錠剤型組成物試料の質量を精密に量り、ドラムに入れ100回転させた後、錠剤型組成物を取り出す。試験前と同様に錠剤型組成物に付着した粉末を取り除いた後、錠剤型組成物試料の質量を精密に量る。
摩損度の計算式を下に示す。
(計算式)
摩損度(%)=(試験前錠剤型組成物試料質量(g)−試験後錠剤型組成物試料質量(g))/試験前錠剤型組成物試料質量(g)×100
【0052】
有効成分として球状活性炭を含む錠剤型の経口投与用吸着剤組成物は、体内(消化管内)において崩壊し、含まれていた球状活性炭が分離した状態で、吸着剤として働くものである。すなわち崩壊していない錠剤の状態や、添加剤が球状活性炭に結合している状態では、吸着剤として毒性物質を吸着することが困難である。従って、球状活性炭を含む錠剤型の経口投与用吸着剤組成物において、崩壊時間が長い場合は、適切な崩壊剤を添加して、崩壊時間を調節することが好ましい。経口投与用吸着剤組成物の崩壊時間は、日本薬局方に記載された崩壊試験法の基準に合致するものであり、好ましくは30分以内であり、より好ましくは20分以内であり、最も好ましくは10分以内である。
【0053】
本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物に用いる球状活性炭としては、例えば、特開平11−292770号公報、特開2002−308785号公報(特許第3522708号公報)、WO2004/39381号公報、WO2004/39380号公報、特開2005−314415号公報、特開2005−314416号公報、特開2004−244414号公報、特開2007−197338号公報、及び特開2008−303193号公報に記載の球状活性炭を用いることができる。以下、それぞれの特許文献に記載の球状活性炭について、順に説明する。
【0054】
特開平11−292770号公報に記載の球状活性炭は、好ましくは直径0.05〜2mm、より好ましくは0.1〜1mmの球状活性炭である。また、好ましくは比表面積が500〜2000m/g、より好ましくは700〜1500m/gの球状活性炭である。また、好ましくは細孔半径100〜75000オングストロームの空隙量が0.01〜1mL/g、より好ましくは0.05〜0.8mL/gの球状活性炭である。なお、上記の比表面積は、自動吸着量測定装置を用いたメタノール吸着法により測定した値である。空隙量は、水銀圧入ポロシメータにより測定した値である。前記の球状活性炭は、粉末活性炭に比べ、服用時に飛散せず、しかも、連続使用しても便秘を惹起しない点で有利である。球状活性炭の形状は、重要な因子の1つであり、実質的に球状であることが重要である。
【0055】
特開平11−292770号公報に記載の球状活性炭の製造には、任意の活性炭原料、例えば、オガ屑、石炭、ヤシ殻、石油系若しくは石炭系の各種ピッチ類又は有機合成高分子を用いることができる。球状活性炭は、例えば、原料を炭化した後に活性化する方法によって製造することができる。活性化の方法としては、水蒸気賦活、薬品賦活、空気賦活又は炭酸ガス賦活などの種々の方法を用いることができるが、医療に許容される純度を維持することが必要である。
【0056】
特開平11−292770号公報に記載の球状活性炭としては、炭素質粉末からの造粒活性炭、有機高分子焼成の球状活性炭及び石油系炭化水素(石油系ピッチ)由来の球状活性炭などがある。
【0057】
本発明において有効成分の球状活性炭としては、(1)アンモニア処理などを施した球状活性炭、(2)酸化及び/又は還元処理を施した球状活性炭なども使用することができる。これらの処理を施すことのできる球状活性炭は、前記の石油系ピッチ由来の球状活性炭、炭素質粉末の造粒活性炭、有機高分子焼成の球状活性炭の何れであってもよい。
【0058】
前記の酸化処理とは、酸素を含む酸化雰囲気で高温熱処理を行うことを意味し、酸素源としては、純粋な酸素、酸化窒素又は空気などを用いることができる。また、還元処理とは、炭素に対して不活性な雰囲気で高温熱処理を行うことを意味し、炭素に対して不活性な雰囲気は、窒素、アルゴン若しくはヘリウム又はそれらの混合ガスを用いて形成することができる。
【0059】
特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭は、直径が0.01〜1mmであり、BET法により求められる比表面積が700m/g以上であり、細孔直径20〜15000nmの細孔容積が0.04mL/g以上で0.10mL/g未満であり、全酸性基が0.30〜1.20meq/gであり、全塩基性基が0.20〜0.70meq/gである球状活性炭である。特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭は、特定範囲の細孔容積を有する。すなわち、細孔直径20〜15000nmの細孔容積が0.04mL/g以上で0.10mL/g未満である。また、本発明においては、全塩基性基が0.20〜1.00meq/gである球状活性炭(特願2002−293906号又は特願2002−293907号参照)も使用することができる。
【0060】
一方、前記特開平11−292770号公報に記載の球状活性炭は、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙容積(すなわち、細孔直径20〜15000nmの細孔容積)が0.1〜1mL/gである。特開2002−308785号公報の記載によれば、細孔直径20〜15000nmの細孔容積を0.04mL/g以上で0.10mL/g未満に調整すると、毒性物質であるβ−アミノイソ酪酸に対する高い吸着特性を維持しつつ、有益物質であるα−アミラーゼに対する吸着特性が有意に低下する。球状活性炭の細孔直径20〜15000nmの細孔容積が大きくなればなるほど消化酵素等の有益物質の吸着が起こりやすくなるため、有益物質の吸着を少なくする観点からは、前記細孔容積は小さいほど好ましい。しかしながら、一方で、細孔容積が小さすぎると毒性物質の吸着量も低下する。従って、経口投与用吸着剤においては、毒性物質の吸着量(T)の有益物質の吸着量(U)に対する比(T/U)、すなわち、選択吸着率が重要である。例えば、球状活性炭の選択吸着率を、DL−β−アミノイソ酪酸(毒性物質)の吸着量(Tb)のα−アミラーゼ(有益物質)の吸着量(Ua)に対する比(Tb/Ua)として評価することができる。すなわち、選択吸着率は、例えば、以下の式:
A=Tb/Ua
(ここで、Aは選択吸着率であり、TbはDL−β−アミノイソ酪酸の吸着量であり、Uaはα−アミラーゼの吸着量である)
によって評価することができる。
【0061】
特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭は、細孔直径20〜15000nmの細孔容積が0.04mL/g以上で0.10mL/g未満の範囲内で優れた選択吸着率を示し、前記細孔容積が0.05mL/g以上で0.10mL/g未満の範囲内で一層優れた選択吸着率を示す。
【0062】
特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭は、直径が0.01〜1mmである。直径は、好ましくは0.02〜0.8mmである。なお、本明細書で「直径がDl〜Duである」という表現は、JIS K 1474に準じて作成した粒度累積線図(平均粒子径の測定方法に関連して後で説明する)において、ふるいの目開きDl〜Duの範囲に対応するふるい通過百分率(%)が90%以上であることを意味する。
特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭は、BET法により求められる比表面積(以下「SSA」と省略することがある)が700m/g以上である。SSAが700m/gより小さい球状活性炭では、毒性物質の吸着性能が低くなるので好ましくない。SSAは、好ましくは800m/g以上である。SSAの上限は特に限定されるものではないが、嵩密度及び強度の観点から、SSAは、2500m/g以下であることが好ましい。
【0063】
更に、特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭では、官能基の構成において、全酸性基が0.30〜1.20meq/gであり、全塩基性基が0.20〜0.70meq/gである。官能基の構成において、全酸性基が0.30〜1.20meq/gであり、全塩基性基が0.20〜0.70meq/gの条件を満足しない球状活性炭では、有毒物質の吸着能が低くなるので好ましくない。官能基の構成において、全酸性基は0.30〜1.00meq/gであることが好ましく、全塩基性基は0.30〜0.60meq/gであることが好ましい。その官能基の構成は、全酸性基が0.30〜1.20meq/g、全塩基性基が0.20〜0.70meq/g、フェノール性水酸基が0.20〜0.70meq/g、及びカルボキシ基が0.15meq/g以下の範囲にあり、且つ全酸性基(a)と全塩基性基(b)との比(a/b)が0.40〜2.5であり、全塩基性基(b)とフェノール性水酸基(c)とカルボキシ基(d)との関係〔(b+c)−d〕が0.60以上であることが好ましい。
【0064】
特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭が有する各物性値、すなわち、平均粒子径、比表面積、細孔容積、全酸性基、及び全塩基性基は、以下の方法によって測定する。
(1)平均粒子径
球状活性炭についてJIS K 1474に準じて粒度累積線図を作成する。平均粒子径は、粒度累積線図において、横軸の50%の点の垂直線と粒度累積線との交点から、横軸に水平線を引いて交点の示すふるいの目開き(mm)を求めて、平均粒子径とする。
【0065】
(2)比表面積
連続流通式のガス吸着法による比表面積測定器(例えば、MICROMERITICS社製「Flow Sorb II 2300」)を用いて、球状活性炭試料のガス吸着量を測定し、BETの式により比表面積を計算することができる。具体的には、試料である球状活性炭を試料管に充填し、その試料管に窒素30vol%を含有するヘリウムガスを流しながら以下の操作を行い、球状活性炭試料への窒素吸着量を求める。すなわち、試料管を−196℃に冷却し、球状活性炭試料に窒素を吸着させる。次に、試料管を室温に戻す。このとき球状活性炭試料から脱離してくる窒素量を熱伝導度型検出器で測定し、吸着ガス量(v)とする。
BETの式から誘導された近似式:
=1/(v・(1−x))
を用いて液体窒素温度における、窒素吸着による1点法(相対圧力x=0.3)によりvを求め、次式:
比表面積=4.35×v(m/g)
により試料の比表面積を計算する。前記の各計算式で、vは試料表面に単分子層を形成するのに必要な吸着量(cm/g)であり、vは実測される吸着量(cm/g)であり、xは相対圧力である。
【0066】
(3)水銀圧入法による細孔容積
水銀ポロシメータ(例えば、MICROMERITICS社製「AUTOPORE 9200」)を用いて細孔容積を測定することができる。試料である球状活性炭を試料容器に入れ、2.67Pa以下の圧力で30分間脱気する。次いで、水銀を試料容器内に導入し、徐々に加圧して水銀を球状活性炭試料の細孔へ圧入する(最高圧力=414MPa)。このときの圧力と水銀の圧入量との関係から以下の各計算式を用いて球状活性炭試料の細孔容積分布を測定する。
具体的には、細孔直径15μmに相当する圧力(0.07MPa)から最高圧力(414MPa:細孔直径3nm相当)までに球状活性炭試料に圧入された水銀の体積を測定する。細孔直径の算出は、直径(D)の円筒形の細孔に水銀を圧力(P)で圧入する場合、水銀の表面張力を「γ」とし、水銀と細孔壁との接触角を「θ」とすると、表面張力と細孔断面に働く圧力の釣り合いから、次式:
−πDγcosθ=π(D/2)・P
が成り立つ。従って
D=(−4γcosθ)/P
となる。
本明細書においては、水銀の表面張力を484dyne/cmとし、水銀と炭素との接触角を130度とし、圧力PをMPaとし、そして細孔直径Dをμmで表示し、下記式:
D=1.27/P
により圧力Pと細孔直径Dの関係を求める。本発明における細孔直径20〜15000nmの範囲の細孔容積とは、水銀圧入圧0.07MPaから63.5MPaまでに圧入された水銀の体積に相当する。
【0067】
(4)全酸性基
0.05mol/LのNaOH溶液50mL中に、200号の篩を通過するように粉砕した球状活性炭試料1gを添加し、48時間振とうした後、球状活性炭試料をろ別し、中和滴定により求められるNaOHの消費量である。
【0068】
(5)全塩基性基
0.05mol/LのHCl溶液50mL中に、200号の篩を通過するように粉砕した球状活性炭試料1gを添加し、24時間振とうした後、球状活性炭試料をろ別し、中和滴定により求められるHClの消費量である。
【0069】
更に、本発明の錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の有効成分である球状活性炭としては、WO2004/39381号公報に記載の球状活性炭あるいはその表面改質球状活性炭、すなわち、熱硬化性樹脂を炭素源として製造され、直径が0.01〜1mmであり、そしてラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m/g以上である球状活性炭、あるいはその表面改質球状活性炭を用いることができる。
【0070】
WO2004/39381号公報に記載の球状活性炭あるいはその表面改質球状活性炭において、全塩基性基が0.4meq/g以上であると、更に優れた吸着性能を得ることができる。また、全塩基性基は、より好ましくは0.6meq/g以上、最も好ましくは0.7meq/g以上である。
【0071】
出発材料として用いる前記の熱硬化性樹脂として、具体的には、フェノール樹脂、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型アルキルフェノール樹脂、若しくはレゾール型アルキルフェノール樹脂を挙げることができ、その他にもフラン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、又はエポキシ樹脂などを用いることができる。熱硬化性樹脂としては、更に、ジビニルベンゼンと、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、又はメタクリル酸との共重合体を用いることができる。
【0072】
また、前記の熱硬化性樹脂として、イオン交換樹脂を用いることもできる。イオン交換樹脂は、一般的に、ジビニルベンゼンと、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、又はメタクリル酸との共重合体(すなわち、熱硬化性樹脂)からなり、基本的には三次元網目骨格をもつ共重合体母体に、イオン交換基が結合した構造を有する。イオン交換樹脂は、イオン交換基の種類により、スルホン酸基を有する強酸性イオン交換樹脂、カルボン酸基又はスルホン酸基を有する弱酸性イオン交換樹脂、第四級アンモニウム塩を有する強塩基性イオン交換樹脂、第一級又は第三級アミンを有する弱塩基性イオン交換樹脂に大別され、このほか特殊な樹脂として、酸及び塩基両方のイオン交換基を有するいわゆるハイブリッド型イオン交換樹脂があり、WO2004/39381号公報によれば、これらのすべてのイオン交換樹脂を原料として使用することができるが、出発材料としてフェノール樹脂を用いるのが特に好ましい。
【0073】
WO2004/39381号公報に記載の球状活性炭又は表面改質球状活性炭は、ラングミュア(Langmuir)の吸着式により求められる比表面積が1000m/g以上である。SSAが1000m/gより小さい球状活性炭又は表面改質球状活性炭では、毒性物質の吸着性能が低くなるので好ましくない。SSAは、好ましくは1000m/g以上である。SSAの上限は特に限定されるものではないが、嵩密度及び強度の観点から、SSAは、3000m/g以下であることが好ましい。
【0074】
WO2004/39381号公報に記載の球状活性炭又は表面改質球状活性炭において、特定細孔直径範囲内の細孔容積は特に限定されないが、一層優れた選択吸着性を得る観点から、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満、特に0.2mL/g以下であることが好ましい。
【0075】
WO2004/39381号公報に記載の表面改質球状活性炭(すなわち、前記の球状活性炭を更に酸化処理及び還元処理することによって製造される生成物)では、官能基の構成において、全酸性基が0.40〜1.00meq/gであり、全塩基性基が0.40〜1.10meq/gである。官能基の構成において、全酸性基が0.40〜1.00meq/gであり、全塩基性基が0.40〜1.00meq/gの条件を満足すると、前記の選択吸着特性が向上し、特に前記の有毒物質の吸着能が高くなるので好ましい。官能基の構成において、全酸性基は0.40〜0.90meq/gであることが好ましく、全塩基性基は0.40〜1.00meq/gであることが好ましい。
【0076】
WO2004/39381号公報に記載の球状活性炭又は表面改質球状活性炭が有する各物性値のうち、平均粒子径、細孔容積、全酸性基、及び全塩基性基は、前記特開2002−308785号公報に記載の方法によって測定することができる。なお、水銀圧入法による細孔容積の測定において、細孔直径7.5〜15000nmの範囲の細孔容積とは、水銀圧入圧0.085MPaから169MPaまでに圧入された水銀の体積に相当する。
また、比表面積については、以下の方法によって測定する。
【0077】
(6)比表面積(ラングミュアの式による比表面積の計算法)
ガス吸着法による比表面積測定器(例えば、MICROMERITICS社製「ASAP2010」)を用いて、球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料のガス吸着量を測定し、ラングミュアの式により比表面積を計算することができる。具体的には、試料である球状活性炭又は表面改質球状活性炭を試料管に充填し、300℃で減圧乾燥した後、乾燥後の試料重量を測定する。次に、試料管を−196℃に冷却し、試料管に窒素を導入し球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料に窒素を吸着させ、窒素分圧と吸着量の関係(吸着等温線)を測定する。
窒素の相対圧力をp、その時の吸着量をv(cm/g STP)とし、ラングミュアプロットを行う。すなわち、縦軸にp/v、横軸にpを取り、pが0.05〜0.3の範囲でプロットし、そのときの傾きをb(g/cm)とすると比表面積S(単位=m/g)は下記の式により求められる。
【数1】
ここで、MAは窒素分子の断面積で0.162nmを用いた。
【0078】
更に、本発明の錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の有効成分である球状活性炭としては、WO2004/39380号公報に記載の球状活性炭あるいはその表面改質球状活性炭、すなわち、直径が0.01〜1mmであり、ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m/g以上であり、そして式(1):
R=(I15−I35)/(I24−I35) (1)
〔式中、I15は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I35は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I24は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕
で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球状活性炭あるいはその表面改質球状活性炭を用いることができる。
【0079】
WO2004/39380号公報に記載の球状活性炭あるいはその表面改質球状活性炭は、WO2004/39381号公報に記載の球状活性炭あるいはその表面改質球状活性炭と、平均粒子径、比表面積、細孔容積、全酸性基、及び全塩基性基について、同じ特徴を有する。一方、WO2004/39381号公報に記載の球状活性炭あるいはその表面改質球状活性炭は、熱硬化性樹脂を炭素源として製造されることを特徴の1つとしているに対し、WO2004/39380号公報に記載の球状活性炭あるいはその表面改質球状活性炭は、前記式(1)を満たす回折強度比(R値)を有することを主要な特徴とする。回折強度比(R値)が1.4以上の表面改質球状活性炭は、回折強度比(R値)が1.4未満の表面改質球状活性炭と比較すると、β−アミノイソ酪酸の吸着能が向上しており、毒性物質の選択吸着性が向上した経口投与用吸着剤として有効である。また、WO2004/39380号公報に記載の球状活性炭あるいはその表面改質球状活性炭においては、前記式(1)によって計算される回折強度比(R値)が、好ましくは1.4以上であり、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.6以上である。
【0080】
なお、本発明の錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の有効成分である球状活性炭としては、更に、特開2005−314415号公報に記載の平均粒子径が小さい球状活性炭、すなわち、平均粒子径が50〜200μmであり、BET法により求められる比表面積が700m/g以上である球状活性炭、あるいは特開2005−314416号公報に記載の平均粒子径が小さい表面改質球状活性炭、すなわち、平均粒子径が50〜200μmであり、BET法により求められる比表面積が700m/g以上であり、全酸性基が0.30meq/g〜1.20meq/gであり、そして全塩基性基が0.20meq/g〜0.9meq/gである表面改質球状活性炭を用いることもできる。
【0081】
特開2005−314415号公報に記載の球状活性炭は、前記のとおり、特定範囲の平均粒子径を有する。すなわち、平均粒子径が50〜200μmであり、好ましくは50〜180μmであり、より好ましくは50〜150μmである。なお、本明細書において平均粒子径(Dv50)とは、体積基準の粒度累積線図において粒度累積率50%における粒径である。
【0082】
特開2005−314415号公報に記載の球状活性炭は、その粒度分布が狭いことが好ましい。例えば、個数基準平均の長さ平均粒子径D(=ΣnD/Σn)と、重量基準分布の重量平均粒子径D(=Σ(nD)/Σ(nD))との比(D/D)によって表した場合、本発明による経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭は、前記の比(D/D)が、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下である。ここで、前記の比(D/D)が1に近いほど粒度分布が狭いことを示している。なお、前記の計算式で、Dは測定粒子径区分の代表粒子径であり、nは個数である。
【0083】
特開2005−314415号公報に記載の球状活性炭は、炭素源として、任意の炭素含有材料を用いることができる。使用可能な炭素含有材料としては、例えば、合成樹脂又はピッチを用いることができる。合成樹脂としては、熱溶融性樹脂又は熱不融性樹脂を用いることができる。ここで、熱溶融性樹脂とは、不融化処理を行わずに賦活処理を行うと、温度上昇に伴って溶融・分解してしまう樹脂であり、活性炭を得ることができない樹脂である。しかしながら、予め不融化処理を実施してから賦活処理を行うと、活性炭とすることができる。これに対して、熱不融性樹脂とは、不融化処理を行わずに賦活処理を行っても、温度上昇に伴って溶融することなく炭素化が進み、活性炭を得ることができる樹脂である。なお、不融化処理とは、後述するように、例えば、酸素を含有する雰囲気にて、150℃〜400℃で酸化処理を行うことである。
【0084】
熱溶融性樹脂の代表例は、熱可塑性樹脂であり、例えば、架橋ビニル樹脂を挙げることができる。一方、熱不融性樹脂の代表例は、熱硬化性樹脂であり、フェノール樹脂又はフラン樹脂を挙げることができる。公知の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の中から、球状体を形成することのできる任意の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を使用することができる。なお、架橋ビニル樹脂から表面改質球状活性炭を得る場合には、前記の不融化処理が必要であるのに対し、架橋ビニル樹脂に官能基を付与することによって製造されるイオン交換樹脂から球状活性炭を得る場合には、前記の不融化処理が不要である。これは、官能基付与処理や導入された官能基によって架橋ビニル樹脂が熱溶融性樹脂から熱不融性樹脂に変性されるものと考えられる。すなわち、架橋ビニル樹脂は本明細書における熱溶融性樹脂に含まれるのに対し、イオン交換樹脂は、本明細書における熱不融性樹脂に含まれる。特開2005−314415号公報に記載の球状活性炭の炭素源としては、イオン交換樹脂、架橋ビニル樹脂又はピッチを用いることが好ましく、イオン交換樹脂又は架橋ビニル樹脂を用いることがより好ましい。
【0085】
特開2005−314415号公報に記載の球状活性炭は、BET法により求められる比表面積が700m/g以上である。SSAが700m/gより小さい球状活性炭では、毒性物質の吸着性能が低くなるので好ましくない。SSAは、好ましくは1000m/g以上である。SSAの上限は特に限定されるものではないが、嵩密度及び強度の観点から、SSAは、3000m/g以下であることが好ましい。
【0086】
特開2005−314415号公報に記載の球状活性炭における細孔容積は、特に限定されない。例えば、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積は、0.01mL/g〜1mL/gであることができる。また、細孔直径20〜15000nmの細孔容積が、好ましくは0.01mL/g〜1mL/g、特に好ましくは0.04mL/g〜1mL/gであることができる。また、特開2005−314415号公報に記載の球状活性炭における嵩密度は、特に限定されないが、0.54g/mL未満が好ましく、0.50g/mL未満が更に好ましい。
【0087】
特開2005−314415号公報に記載の球状活性炭が有する各物性値のうち、平均粒子径、比表面積(BET法による比表面積の計算法)、及び水銀圧入法による細孔容積は、前記特開2002−308785号公報、又はWO2004/39381号公報に記載の方法によって測定することができる。
また、嵩密度については、後述の実施例に記載の方法によって測定する。更に、粒度分布については、以下の方法によって測定する。
【0088】
(7)粒度分布
レーザー回折式粒度分布測定装置〔(株)島津製作所:SALD−3000S〕を用い、個数基準の粒度分布を測定し、測定粒子径区分の代表粒子径D、及びその測定粒子径区分内の個数nの値を求め、以下の式により長さ平均粒子径D、及び重量平均粒子径Dを計算する。
【数2】
【数3】
【0089】
特開2005−314416号公報に記載の表面改質球状活性炭は、2005−314415号公報に記載球状活性炭と、平均粒子径、比表面積、細孔容積について、同じ特徴を有する。すなわち、特開2005−314416号公報に記載の表面改質球状活性炭は、実質的に特開2005−314415号公報に記載の球状活性炭を酸化及び還元することによって得ることができる。
具体的には、特開2005−314416号公報に記載の表面改質球状活性炭は、酸性点が0.30meq/g以上の球状活性炭を意味する。これに対して、特開2005−314415号公報に記載の表面非改質球状活性炭とは、酸性点が0.30meq/g未満の球状活性炭を意味する。表面改質球状活性炭は、炭素前駆体を熱処理した後に、賦活処理を行い、更にその後で、酸化処理及び還元処理による表面改質処理を実施することによって得られる多孔質体であり、酸及び塩基に対して適度な相互作用を示すことができる。一方、表面非改質球状活性炭は、例えば、炭素前駆体を熱処理した後に、賦活処理を行うことによって得られる多孔質体であり、その後の酸化処理及び還元処理による表面改質処理を実施していない球状活性炭、あるいは、前記賦活処理の後に非酸化性雰囲気での熱処理を実施して得られる球状活性炭である。
【0090】
本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物は、インドール吸着速度試験における測定値が、有効成分である球状活性炭を充てんしたカプセル剤の測定値の70〜130%の範囲であることが好ましく、当該カプセルの85〜115%の範囲であることがより好ましい。錠剤型経口投与用吸着剤組成物は、従来の細粒剤、又はカプセル剤の経口投与用吸着剤と同等の吸着特性を示す。すなわち、添加剤を含有する錠剤とすることによって、インドール吸着速度が低下しない。本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物のインドール吸着速度が低下しない理由は、限定されるわけではないが、前記粒子製剤用添加剤の分子量が10,000以上であること、及び粒子製剤用添加剤が水溶性又は水分散性に富み、球状活性炭が体内で速やかに分散することにより、その吸着特性を妨害しないためであると推定される。
球状活性炭を充填したカプセル剤及び本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物のインドール吸着試験は、日本薬局方の溶出試験器を用いて、以下のとおり行う。
インドール0.1gを溶出試験第2液1Lに溶解し、試験液とする。これを41℃に加温し、0.45μmメンブランフィルターを用いて吸引ろ過することにより脱気する。脱気済の試験液900mLを溶出試験器のベッセルに注ぎ、37℃になるまで放置する。球状活性炭200mg含有カプセル剤1個又は球状活性炭200mg相当を含有する錠剤型組成物1個を溶出試験器のベッセルに投入し、パドル法で回転数を毎分100回転とする吸着試験を開始する。1時間後に試験液10mLをサンプリングし、0.45μmメンブランフィルターでろ過する。最初の5mLは廃棄し、残りのろ液を回収し、試料溶液とする。試料溶液中のインドール濃度の定量は高速液体クロマトグラフィーを用い、以下の分析条件で測定する。
【0091】
【表4】
【0092】
錠剤型の経口投与用吸着剤組成物は、更にコーティング剤により、コーティングを付すことができる。コーティングは、素錠の硬度及び摩損度の改善、悪味、悪臭、若しくは色のマスク、又は主薬の安定化などの目的で行われる。コーティング剤としては、タルク、沈降炭酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、ヒプロメロースフタル酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシエチルセルロース、エチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、又はアクリル酸エチル・メタクリル酸メチル・共重合体乳濁液等を挙げることができる。
なお、本明細書においては、錠剤を成形した後に、表面にコーティングするコーティング剤も、添加剤に含まれる。なお、一般的にコーティング剤に分類される化合物であっても、前記の粒子製剤用添加剤の「薄膜形成能」を満たせば、本発明において錠剤の成形のために粒子製剤用添加剤として使用することができる。
【0093】
[2]錠剤型経口投与用組成物の製造方法
本発明の錠剤型経口投与用組成物は、以下の本発明の錠剤型経口投与用組成物の製造方法により、製造することができる。しかしながら、本発明の錠剤型経口投与用組成物の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
【0094】
本発明の錠剤型の経口投与用組成物の製造方法は、(1)粒子状物質65〜99重量部、添加剤1〜35重量部、及び溶媒10重量部以上を練合する工程であって、粒子状物質と添加剤との合計が100重量部である練合工程、(2)前記練合物を錠剤型に成形する工程、及び(3)前記成形物を乾燥する工程を含む。前記粒子状物質は、水への溶解性及び膨潤性を示さず、2MPaの圧力を受けた場合の歪率が2%以下であり、そして圧壊強度が5MPa以上である。また、前記添加剤は、1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計1重量部以上含む。そして、前記粒子製剤用添加剤は、粒子製剤用添加剤の1重量%の水溶液又は水分散液をフッ素樹脂平面上に0.5mL滴下し加熱乾燥した場合、薄膜を形成するものである。
【0095】
具体的には、本発明の製造方法においては、球状活性炭65〜99重量部に対して、添加剤を合計100重量部になるように添加することができる。すなわち、添加剤は1重量部〜35重量部であり、添加剤中に粒子製剤用添加剤を1重量部以上含むが、好ましくは1.5重量部以上含み、より好ましくは2重量部以上、更に好ましくは3重量部以上、更に好ましくは4重量部以上、更に好ましくは5重量部以上、含む。粒子製剤用添加剤を1重量部以上含むことによって、錠剤として実用的な硬度、摩損度、及び崩壊分散性を得ることができる。また、製造された錠剤が、実用的な硬度、摩損度、及び崩壊分散性を得ることができる限り、粒子製剤用添加剤以外の添加剤(その他の添加剤)を含むことができる。なお、本発明の錠剤型の経口投与用組成物の製造方法に用いる粒子状物質、添加剤、粒子製剤用添加剤、及び粒子製剤用添加剤以外の添加剤は、前記「[1]錠剤型経口投与用組成物」の欄で説明したものを用いることができる。
より具体的には、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物の製造方法においては、球状活性炭と1つ以上の添加剤との合計が100重量部であり、65〜99重量部の球状活性炭、及び1〜35重量部の添加剤を用い、前記添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計1重量部以上含む。そして、(b)その他の添加剤を含んでもよい。すなわち、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物の製造方法においては、65〜99重量部未満の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤を合計1〜35重量部含み、前記添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計1〜35重量部、及び(b)0〜34重量部のその他の添加剤を含む。
より好ましくは、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物の製造方法においては、球状活性炭と1つ以上の添加剤との合計が100重量部であり、65〜98重量部の球状活性炭、及び1.5〜35重量部の添加剤を用い、前記添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計1.5重量部以上含む。そして、(b)その他の添加剤を含んでもよい。すなわち、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物においては、65〜98.5重量部の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤を合計1.5〜35重量部含み、前記添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計1.5〜35重量部、及び(b)0〜33.5重量部のその他の添加剤を含む。
更に好ましくは、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物の製造方法においては、球状活性炭と1つ以上の添加剤との合計が100重量部であり、65〜98重量部の球状活性炭、及び2〜35重量部の添加剤を用い、前記添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計2重量部以上含む。そして、(b)その他の添加剤を含んでもよい。すなわち、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物においては、65〜98重量部の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤を合計2〜35重量部含み、前記添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計2〜35重量部、及び(b)0〜33重量部のその他の添加剤を含む。
更に好ましくは、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物の製造方法においては、球状活性炭と1つ以上の添加剤との合計が100重量部であり、65〜97重量部の球状活性炭、及び3〜35重量部の添加剤を用い、前記添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計3重量部以上含む。そして、(b)その他の添加剤を含んでもよい。すなわち、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物においては、65〜97重量部の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤を合計3〜35重量部含み、前記添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計3〜35重量部、及び(b)0〜32重量部のその他の添加剤を含む。
更に好ましくは、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物の製造方法においては、球状活性炭と1つ以上の添加剤との合計が100重量部であり、65〜96重量部の球状活性炭、及び4〜35重量部の添加剤を用い、前記添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計4重量部以上含む。そして、(b)その他の添加剤を含んでもよい。すなわち、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物においては、65〜96重量部の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤を合計4〜35重量部含み、前記添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計4〜35重量部、及び(b)0〜31重量部のその他の添加剤を含む。
更に好ましくは、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物の製造方法においては、球状活性炭と1つ以上の添加剤との合計が100重量部であり、65〜95重量部の球状活性炭、及び5〜35重量部の添加剤を用い、前記添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計5重量部以上含む。そして、(b)その他の添加剤を含んでもよい。すなわち、本発明の錠剤型経口投与用吸着剤組成物においては、65〜95重量部の球状活性炭、及び1つ以上の添加剤を合計5〜35重量部含み、前記添加剤として(a)1つ以上の粒子製剤用添加剤を合計5〜35重量部、及び(b)0〜30重量部のその他の添加剤を含む。
【0096】
溶媒は、球状活性炭及び添加剤を練合し、また粒子製剤用添加剤が球状活性炭表面に薄膜を形成せしめるために、添加されるものである。従って、溶媒は、球状活性炭と添加剤の混合物に添加することもできるし、粒子製剤用添加剤を予め溶解又は分散させておいた溶媒を、球状活性炭に添加することもできる。溶媒の添加量は、球状活性炭及び添加剤が、十分に練合され、粒子製剤用添加剤が球状活性炭表面に薄膜を形成せしめる量であれば、特に限定されない。また溶媒は、後述の乾燥工程(3)において、そのほとんどが錠剤型組成物から除かれる。従って、溶媒の添加量は、球状活性炭の量及び添加剤の量に応じて適宜調整することができるが、10重量部以上でよく、好ましくは10〜100,000重量部であり、より好ましくは10〜10,000重量部であり、より好ましくは10〜1,000重量部であり、更に好ましくは20〜500重量部であり、更に好ましくは30〜300重量部であり、最も好ましくは40〜200重量部である。10重量部未満では、球状活性炭が十分に練合されないことがある。また、100,000重量部を超えても、溶媒が、乾燥により除かれることから大きな問題はないが、乾燥効率等の経済的理由から必要以上に多量の溶媒を加えることは好ましいことではない。
また、比較的大量の溶媒、例えば500重量部以上の溶媒を用いる場合は、大量の溶媒で均一に球状活性炭及び添加剤を分散又は溶解させた後に、溶媒をろ過によって除くこともできる。
【0097】
錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の製造に使用することのできる溶媒は、特に限定されることはなく、水性溶媒及び有機溶媒などを用いることができる。具体的には、水(特には精製水)、エタノール、イソプロパノール、塩化メチレン又はそれらの混合溶媒を挙げることができるが、特には精製水が好ましい。
【0098】
本発明の製造方法における成形工程(2)において、得られた練合物(スラリー)を、成形型に充填し、成形を行う。成形はスラリーを成形型において押圧することによって行うことができるが、打錠機を用いて低圧で行うこともできる。加圧を行う場合、その圧力は球状活性炭の破壊が20%未満であれば、特に制限されるものではない。
【0099】
本発明の製造方法における乾燥工程(3)において、成形型の練合物を乾燥する。乾燥方法は、練合物の溶媒が蒸発する限り限定されるものではないが、例えば、凍結乾燥、減圧乾燥、送風乾燥、又は加熱乾燥によって行うことができる。
【0100】
本発明の錠剤型経口投与用組成物の製造方法における粒子状物質としては、球状活性炭を挙げることができ、有害物質の吸着用の場合、錠剤型経口投与用吸着剤組成物を製造することができる。錠剤型経口投与用吸着剤組成物の製造において、球状活性炭の吸着特性を担保するためには、乾燥を減圧下で行うことが好ましい。
【0101】
本発明の錠剤型の経口投与用吸着剤組成物は、肝疾患憎悪因子や腎臓病での毒性物質の吸着性に優れているので、腎疾患の治療用又は予防用経口投与用吸着剤として用いるか、あるいは、肝疾患の治療用又は予防用経口投与用吸着剤として用いることができる。
腎疾患としては、例えば、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、慢性腎炎、急性腎炎症候群、急性進行型腎炎症候群、慢性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、腎硬化症、間質性腎炎、細尿管症、リポイドネフローゼ、糖尿病性腎症、腎血管性高血圧、若しくは高血圧症候群、あるいは前記の原疾患に伴う続発性腎疾患、更に、透析前の軽度腎不全を挙げることができ、透析前の軽度腎不全の病態改善や透析中の病態改善にも用いることができる(「臨床腎臓学」朝倉書店、本田西男、小磯謙吉、黒川清、1990年版及び「腎臓病学」医学書院、尾前照雄、藤見惺編集、1981年版参照)。
また、肝疾患としては、例えば、劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、肝線維症、肝硬変、肝癌、自己免疫性肝炎、薬剤アレルギー性肝障害、原発性胆汁性肝硬変、振せん、脳症、代謝異常、又は機能異常を挙げることができる。その他、体内に存在する有害物質による病気、すなわち、精神病等の治療にも用いることができる。
【0102】
従って、本発明による経口投与用吸着剤組成物は、腎臓疾患治療薬として用いる場合には、前記の表面改質球状活性炭を有効成分として含有する。本発明の経口投与用吸着剤組成物を腎臓疾患治療薬又は肝臓疾患治療薬として用いる場合、その投与量は、投与対象がヒトであるかあるいはその他の動物であるかにより、また、年令、個人差、又は病状などに影響されるので、場合によっては下記範囲外の投与量が適当なこともあるが、一般にヒトを対象とする場合の経口投与量は、球状活性炭の重量として、1日当り1〜20gを3〜4回に分けて服用し、更に症状によって適宜増減することができる。例えば、前記クレメジンを腎臓疾患治療薬として用いる場合、球状活性炭として1日あたりの投与量は6gである。そして、それを3回に分けて服用するため、1回あたりの服用量は2gである。例えば、1錠中に500mgの球状活性炭を含む錠剤型組成物の場合、1回4錠、1日12錠の服用となる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0104】
本実施例において、錠剤型組成物に含まれる球状活性炭を最密充填したときの嵩体積、嵩密度、錠剤型組成物の硬度、錠剤型組成物の摩損度、錠剤型組成物中の球状活性炭の球形率、及びインドール吸着速度試験は以下の方法で測定した。なお、以下の測定方法は球状活性炭を用いた測定方法であるが、インドール吸着試験以外は、本発明に用いる粒子状物質にも適用することができる。
【0105】
(1)タップ密度
50mLのメスシリンダに球状活性炭の試料20gを充填し、50回タップした後で、試料重量を体積で除算してタップ密度とした。なお、この方法によって得られた測定値は、JIS K 1474−5.7.2の充てん密度測定法によって得られた測定値と、製造例2に記載の有効数字範囲内で全く差異がなかった。
【0106】
(2)錠剤型組成物中に含まれる球状活性炭を最密充填したときの嵩体積
錠剤1錠に用いた球状活性炭の重量を前記の方法で得られたタップ密度で割ったものを、錠剤1錠当たりの「錠剤型組成物中に含まれる球状活性炭を最密充填したときの嵩体積(V)」とした。
【0107】
(3)錠剤型組成物の硬度
錠剤型組成物の硬度測定については、錠剤硬度計(TBH320、ERWEKA製)を用いて錠剤型組成物試料の厚さを計測し、測定値を硬度計に入力した後、測定を室温で行った。測定条件は下に示す。
【0108】
【表5】
この操作をn=1で実施した。
【0109】
(4)錠剤型組成物の摩損度
摩損度の測定は、「第15改正日本薬局方」参考情報の摩損度試験法に準じて以下のように行った。
錠剤型組成物試料を1〜6.5gに相当する数を用意し、試験前に錠剤型組成物に付着する粉末を取り除いた後、錠剤型組成物試料の質量を精密に量り、摩損度試験機(TFT−120、富山産業製)ドラムに入れ100回転させた後、錠剤を取り出した。試験前と同様に錠剤型組成物に付着した粉末を取り除いた後、錠剤型組成物試料の質量を精密に量った。
摩損度の計算式を下に示す。
(計算式)
摩損度(%)=(試験前錠剤型組成物試料質量(g)−試験後錠剤型組成物試料質量(g))/試験前錠剤型組成物試料質量(g)×100
【0110】
(5)錠剤型組成物の崩壊試験
崩壊試験は、崩壊試験器(NT-20H、富山産業製)を用い、日本薬局方の崩壊試験法に準じて以下のとおり行った。
試験液に水を用い、錠剤型組成物を試験器のガラス管1〜6本にそれぞれ入れた後に補助盤を入れ、30分間上下運動を行った後、ガラス管内の錠剤型組成物について崩壊の適合を確認した。崩壊の定義は、ガラス管内から錠剤型組成物の形状が完全になくなる状態、もしくはガラス管内に残留物を認めるが明らかに原形を留めない軟質の物質である状態とした。
【0111】
(6)錠剤型組成物中の球状活性炭の球形率
(粒度・形状分布測定器を用いた測定)
錠剤型組成物中の球状活性炭の球形率の測定は、粒度・形状分布測定器(PITA−2型、株式会社セイシン企業製)を用い、以下のとおり行った。
錠剤型組成物から球状活性炭(粉砕された粒子も含む)を分離する前処理として、この錠剤1.5g〜2.5gをとり、50mL容のプラスチック製遠心管に入れ、精製水50mLを加え、超音波処理を10分間行うことにより、錠剤を崩壊分散させた。その後、ろ紙でろ過することにより球状活性炭を回収した。回収した球状活性炭を105℃で4時間乾燥し、検体とした。凝集塊による装置の目詰まりを防止するため、必要に応じて目開き500μmのふるいを用いてこれを除去した。
粒度・形状分布測定器(PITA−2型、株式会社セイシン企業製)を用いた測定及び解析は以下のとおりとした。
【0112】
【表6】
【0113】
(CCDカメラを用いた測定)
比較例16においては、CCDカメラを用いた簡易的な方法により、錠剤型組成物中の球状活性炭の球形率を測定した。錠剤型組成物から球状活性炭(粉砕された粒子も含む)を分離する前処理として、この錠剤6錠をとり、50mL容のプラスチック製遠心管に入れ、精製水50mLを加え、超音波処理を10分間行うことにより、錠剤を崩壊分散させた。3500rpm×5分の条件で遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿を水適量に再分散させ、ろ紙でろ過することにより球状活性炭を回収した。回収した球状活性炭を105℃で4時間乾燥し、検体とした。これを白紙の上に適当に広げ、その5箇所をCCDカメラで撮影し、一視野に写っている球状活性炭と破損した粒子をそれぞれ計数した。比較のために、打錠前の球状活性炭を同様の処理を行って、その中の破損した粒子も計数した。結果を表11及び表13に示す。
【0114】
(7)インドール吸着速度試験
錠剤型組成物のインドール吸着速度試験を、日本薬局方の溶出試験器を用いて、以下の方法で実施した。
インドール0.1gを溶出試験第2液1Lに溶解し、試験液とした。これを41℃に加温し、0.45μmメンブランフィルターを用いて吸引ろ過することにより脱気した。脱気済の試験液900mLを溶出試験器のベッセルに注ぎ、37℃になるまで放置した。球状活性炭約200mg相当を含有する錠剤型組成物1個、又は対照として球状活性炭約200mg含有カプセル剤1個を溶出試験器のベッセルに投入し、パドル法で回転数を毎分100回転とする吸着試験を開始した。1時間後に試験液10mLをサンプリングし、0.45μmメンブランフィルターでろ過した。最初の5mLは廃棄し、残りのろ液を回収し、試料溶液とした。試料溶液中のインドール濃度の定量は高速液体クロマトグラフィーを用い、以下の分析条件で測定した。
【0115】
【表7】
本発明の錠剤のインドール吸着量は、経口投与用吸着剤のカプセル剤の吸着量を100とした場合の、本発明の錠剤のインドール吸着量を百分率として表した「インドール相対吸着率」で示した。
【0116】
(8)添加剤の重量平均分子量の測定
粒子製剤用添加剤の重量平均分子量は、以下の方法で測定した。
粒子製剤用添加剤10mgを蒸留水1mLに溶解し、以下の分析条件でサイズ排除高速液体クロマトグラフィーに供した。測定値を重量平均分子量既知のプルランから作成した検量線に当てはめて重量平均分子量を決定した。
【0117】
【表8】
添加剤の重量平均分子量は、表15に示す。
【0118】
(9)添加剤の薄膜形成能の測定
粒子製剤用添加剤の薄膜形成能は、一般試験室において、以下の方法で判定した。
(1)ヒーターつきスターラーの熱板表面にフッソ樹脂粘着テープ(ニトフロンテープ;日東電工株式会社)を12cm×12cmの面積になるように貼り付けた。
(2)粒子製剤用添加剤の1重量%水溶液又は水分散液を作製した。なお、溶解又は分散しにくい場合は、精製水を加熱した。
(3)得られた水溶液又は水分散液を、フッソ樹脂粘着テープの上に0.5mL滴下した。
(4)ヒーターの温度設定を約125℃とし、10分間加熱乾燥した。
[判定]
(5)フッソ樹脂粘着テープと薄膜との間にピンセットを入れて丁寧に剥離する。
(6)1枚の薄膜として剥離できたものを、薄膜が形成したものと判定した。なお、10分間の加熱乾燥で判定ができない場合、すなわち薄膜が形成されず、且つ薄膜が分離しない場合は、20分間加熱乾燥して判定を行った。また、30分加熱乾燥を行い薄膜の形成及び薄膜の分離が起こらない場合は、薄膜形成能がないと判定した。
【0119】
図3に薄膜を形成する粒子製剤用添加剤であるポリビニルアルコール(A)、及び薄膜を形成できない添加剤であるカルメロース(B)の結果を示す。また、表15に薄膜形成能を示す粒子製剤用添加剤及び薄膜形成能を持たない添加剤をまとめて示す。
【0120】
《製造例1:多孔性球状炭素質物質の製造》
特許第3522708号(特開2002−308785号公報)の実施例1に記載の方法と同様にして多孔性球状炭素質物質を得た。具体的な操作は、以下の通りである。
石油系ピッチ(軟化点=210℃;キノリン不溶分=1重量%以下;H/C原子比=0.63)68kgと、ナフタレン32kgとを、攪拌翼のついた内容積300Lの耐圧容器に仕込み、180℃で溶融混合を行った後、80〜90℃に冷却して押し出し、紐状成形体を得た。次いで、この紐状成形体を直径と長さの比が約1〜2になるように破砕した。
0.23重量%のポリビニルアルコール(ケン化度=88%)を溶解して93℃に加熱した水溶液中に、前記の破砕物を投入し、攪拌分散により球状化した後、前記のポリビニルアルコール水溶液を水で置換することにより冷却し、20℃で3時間冷却し、ピッチの固化及びナフタレン結晶の析出を行い、球状ピッチ成形体スラリーを得た。
大部分の水をろ過により除いた後、球状ピッチ成形体の約6倍重量のn−ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。このようにして得た多孔性球状ピッチを、流動床を用いて、加熱空気を通じながら、235℃まで昇温した後、235℃にて1時間保持して酸化し、熱に対して不融性の多孔性球状酸化ピッチを得た。
続いて、多孔性球状酸化ピッチを、流動床を用い、50vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中で、900℃で170分間賦活処理して多孔性球状活性炭を得、更にこれを流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素との混合ガス雰囲気下で470℃で3時間15分間、酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下で900℃で17分間還元処理を行い、多孔性球状炭素質物質を得た。こうして得られた多孔性球状炭素質物質を、以下の薬理試験例において、球状活性炭として使用した。
得られた炭素質材料の主な特性は以下の通りである。
比表面積=1300m/g(BET法);
細孔容積=0.08mL/g
(水銀圧入法により求めた細孔直径20〜15000nmの範囲の細孔容積);
平均粒子径=350μm;
全酸性基=0.67meq/g;
全塩基性基=0.54meq/g;
圧壊強度=31.2MPa;及び
2MPaの圧力をかけたときの歪率=0.7%。
【0121】
《製造例2:多孔性球状炭素質物質の製造》
特開2005−314416号公報の実施例1に記載の方法と同様にして多孔性球状炭素質物質(表面改質球状活性炭)を得た。具体的な操作は、以下の通りである。
脱イオン交換水220g、及びメチルセルロース58gを1Lのセパラブルフラスコに入れ、これにスチレン105g、純度57%ジビニルベンゼン(57%のジビニルベンゼンと43%のエチルビニルベンゼン)184g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.68g、及びポロゲンとして1−ブタノール63gを適宜加えたのち、窒素ガスで系内を置換し、この二相系を200rpmで攪拌し、55℃に加熱してからそのまま20時間保持した。得られた樹脂を濾過し、ロータリーエバポレーターで乾燥させたのち、減圧乾燥機にて1−ブタノールを樹脂から蒸留により除去してから、90℃において12時間減圧乾燥させ、平均粒子径180μmの球状の多孔性合成樹脂を得た。多孔性合成樹脂の比表面積は約90m/gであった。
得られた球状の多孔性合成樹脂100gを目皿付き反応管に仕込み、縦型管状炉にて不融化処理を行った。不融化条件は、3L/minで乾燥空気を反応管下部より上部に向かって流し、5℃/hで260℃まで昇温したのち、260℃で4時間保持することにより球状の多孔性酸化樹脂を得た。球状の多孔性酸化樹脂を窒素雰囲気中600℃で1時間熱処理したのち、流動床を用い、64.5vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中、820℃で10時間賦活処理を行い、球状活性炭を得た。得られた球状活性炭を、更に流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素の混合ガス雰囲気下470℃で3時間15分間酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下900℃で17分間還元処理を行い、表面改質球状活性炭を得た。
得られた表面改質球状活性炭の主な特性は以下の通りである。
比表面積=1763m/g(BET法);
細孔容積=0.05mL/g
(水銀圧入法により求めた細孔直径20〜15000nmの範囲の細孔容積);
平均粒子径=111μm(Dv50);
全酸性基=0.59meq/g;
全塩基性基=0.61meq/g;
嵩密度=0.50g/cm
圧壊強度=436.5MPa;及び
2MPaの圧力をかけたときの歪率=0.2%。
【0122】
《実施例1》
本実施例では、粒子製剤用添加剤として完全アルファー化デンプンを用いて、錠剤型の経口投与用吸着剤組成物を製造した。
前記製造例2で得られた球状活性炭10g(20cm)、及び完全アルファー化デンプン0.3gを、ビーカー内で均一に分散させ、更に精製水12mLを加えた。得られた混合物を、添加剤の継粉ができないように、スパーテルを用いて練合した。調製した練合物(スラリー)を成形型(直径13mm、深さ8mm)に充填し、スパーテルで擦り切り、錠剤表面を整えた。成形型を凍結乾燥機にセットし、25℃〜40℃、気圧1.5×10−1Paで、5時間以上、減圧乾燥を行った。詳細な温度条件及び時間は以下のとおりである。
【0123】
【表9】
減圧乾燥後に、成形型から錠剤型組成物を取り出した。得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物1の体積は、1.1cmであった。得られた錠剤型組成物の8個の平均質量は0.5023gであり、そこに含まれる球状活性炭の質量は0.4877gである。使用した球状活性炭の最密充填したときの嵩体積(V)は0.98cmであり、錠剤型組成物の体積(V1)は1.1cmであったので、V/Vは1.13であった(表12)。
また、錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の硬度、摩損度、及び粒度・形状分布測定器を用いた球状活性炭の球形率を測定した。結果を表13に示す。錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の硬度は30.2N、及び摩損度は4.6%であり、優れたものであった。また、球形率は100%であり、球状活性炭の破壊は、全く見られなかった。なお、本実施例で得られた組成物の崩壊時間は30分以内であった。
【0124】
《実施例2〜34》
実施例2〜34では、粒子製剤用添加剤の種類及び含有量を変更して、錠剤型の経口投与用吸着剤組成物を製造した。使用した粒子製剤用添加剤の種類及び含有量を表12に示す。
前記製造例2で得られた球状活性炭1g(2cm)及び粒子製剤用添加剤を、ビーカー内で均一に分散させ、更に精製水(使用した量は表12に示す)を加えた。得られた混合物を、添加剤の継粉ができないように、スパーテルを用いて練合した。調製した練合物(スラリー)を成形型(直径13mm、深さ8mm)に充填し、スパーテルで擦り切り、錠剤表面を整えた。減圧乾燥は実施例1と同じ条件で行った。
得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物2〜34の質量、体積、V/V等を表12に、硬度、摩損度、及び粒度・形状分布測定器を用いた球形率等を表13に示す。V/Vは、1.31以下であり、硬度、及び摩損度も、優れたものであった。
【0125】
《実施例35、36、及び38〜42》
実施例35、36、38〜42では、粒子製剤用添加剤の種類及び含有量を変更し、また減圧乾燥を凍結乾燥に変更して、錠剤型の経口投与用吸着剤組成物を製造した。使用した粒子製剤用添加剤の種類及び含有量を表12に示す。
前記製造例2で得られた球状活性炭1g(2cm)、及び添加剤を、ビーカー内で均一に分散させ、更に精製水(使用した量は表12に示す)を加えた。得られた混合物を、添加剤の継粉ができないように、スパーテルを用いて練合した。調製した練合物(スラリー)を成形型(直径13mm、深さ8mm)に充填し、スパーテルで擦り切り、錠剤表面を整えた。成形型を凍結乾燥機にセットし、−50℃〜40℃、気圧1.5×10−1Paで、8時間以上、凍結乾燥を行った。詳細な温度条件及び時間は以下のとおりである。
【0126】
【表10】
得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物35、36、38〜42の質量、体積、及びV/V等を表12に、硬度、摩損度、及び粒度・形状分布測定器を用いた球形率等を表13に示す。実施例35、36、38〜42ではV/Vは、1.28以下であり、硬度、及び摩損度も優れたものであった。
【0127】
《実施例37》
実施例37では、トウモロコシデンプンを加熱することでアルファー化したデンプンを用いて、錠剤型の経口投与用吸着剤組成物を製造した。
加熱した精製水1.2mLにトウモロコシデンプン0.1gを溶解させ、前記製造例2で得られた球状活性炭1g(2cm)を加えた。得られた混合物を、スパーテルを用いて練合した。調製した練合物(スラリー)を成形型(直径13mm、深さ8mm)に充填し、スパーテルで擦り切り、錠剤表面を整えた。凍結乾燥を実施例35、36、38〜42と同じ条件で行い、経口投与用吸着剤組成物37を得た。
得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物37の質量、体積、及びV/V等を表12に、硬度、摩損度、及び粒度・形状分布測定器を用いた球形率等を表13に示す。
【0128】
《実施例43》
前記製造例2で得られた球状活性炭10g(20cm)、及び完全アルファー化デンプン0.5gを、ビーカー内で均一に分散させ、更に精製水12mLを加えた。得られた混合物を、添加剤の継粉ができないように、スパーテルを用いて練合した。調製した練合物(スラリー)を成形型(直径10mm、高さ6mm、標準R加工14mm)に充填し、スパーテルで擦り切り、上部を撹拌機に取り付けた成形棒で軽く圧縮して、錠剤表面を整えた。減圧乾燥を実施例1と同じ条件で行い、経口投与用吸着剤組成物43を得た。
得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物のインドール吸着速度を測定した。1時間後のインドール相対吸着率を表14に示す。なお、インドール相対吸着率は、コントロールであるカプセル剤の吸着量を100とした場合の、経口投与用吸着剤組成物のインドール吸着量を百分率で表したものである。
【0129】
《実施例44〜48》
前記製造例2で得られた球状活性炭1g(2cm)、及び添加剤(使用した添加剤の種類と量は表14に示す)を、ビーカー内で均一に分散させ、更に精製水1.2mLを加えた。得られた混合物を、添加剤の継粉ができないように、スパーテルを用いて練合した。調製した練合物(スラリー)を、球状活性炭0.2g相当量になるように成形型(直径13mm、深さ8mm)に充填し、スパーテルで上部を軽く圧縮して、錠剤表面を整えた。減圧乾燥を実施例1と同じ条件で行い、経口投与用吸着剤組成物44〜48を得た。
得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物44〜48のインドール吸着速度を測定した。1時間後のインドール相対吸着率を表14に示す。
【0130】
《実施例49〜54》
前記製造例2で得られた球状活性炭1g(2cm)、及び添加剤(使用した添加剤の種類と量は表14に示す)を、ビーカー内で均一に分散させ、更に精製水(使用した量は表14に示す)を加えた。得られた混合物を、添加剤の継粉ができないように、スパーテルを用いて練合した。調製した練合物(スラリー)を、球状活性炭0.2g相当量になるように成形型(直径13mm、深さ8mm)に充填し、スパーテルで上部を軽く圧縮して、錠剤表面を整えた。凍結乾燥を実施例35〜42と同じ条件で行い、投与用吸着剤組成物49〜54を得た。得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物49〜54のインドール吸着速度を測定した。1時間後のインドール相対吸着率を表14に示す。
【0131】
《実施例55》
前記製造例2で得られた球状活性炭10g(20cm)、プルラン0.3gを、ビーカー内で均一に分散させ、更に精製水12mLを加えた。得られた混合物を、添加剤の継粉ができないように、スパーテルを用いて練合した。調製した練合物(スラリー)を成形型(直径10mm、高さ6mm、標準R加工14mm)に充填し、スパーテルで擦り切り、上部を撹拌機に取り付けた成形棒で軽く圧縮して、錠剤表面を整えた。減圧乾燥を実施例1と同じ条件で行い、経口投与用吸着剤組成物55を得た。得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の質量、体積、及びV/V等を表12に、硬度、摩損度、及び粒度・形状分布測定器を用いた球形率を表13に示す。また、インドール吸着速度を測定し、1時間後のインドール相対吸着率を表14に示す。
実施例43〜55で得られた経口投与用吸着剤組成物43〜55のインドール相対吸着率は、カプセル剤の81%〜106%であり、球状活性炭を錠剤とすることよるインドール吸着量の減少は見られず、有害物質の吸着能は維持されていた。
【0132】
《実施例56》
前記製造例1で得られた球状活性炭10g(20cm)、及びプルラン0.75gを用いた以外は、実施例43の操作を繰り返して、経口投与用吸着剤組成物56を得た。
得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の質量、体積、及びV/V等を表12に、硬度、摩損度、及び粒度・形状分布測定器を用いた球形率を表13に示す。
【0133】
《実施例57〜68》
実施例57〜68では、複数種類の粒子製剤用添加剤を用いて、錠剤型の経口投与用吸着剤組成物を製造した。使用した粒子製剤用添加剤の種類及び含有量を表12に示す。
前記製造例2で得られた球状活性炭1g(2cm)及び粒子製剤用添加剤を、ビーカー内で均一に分散させ、更に精製水(使用した量は表12に示す)を加えた。得られた混合物を、添加剤の継粉ができないように、スパーテルを用いて練合した。調製した練合物(スラリー)を成形型(直径13mm、深さ8mm)に充填し、スパーテルで擦り切り、錠剤表面を整えた。減圧乾燥は実施例1と同じ条件で行った。
得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物57〜68の質量、体積、V/V等を表12に、硬度、摩損度、及び粒度・形状分布測定器を用いた球形率等を表13に示す。
【0134】
《実施例69》
本実施例では、球状活性炭が68重量%の錠剤型経口投与用吸着剤組成物を製造した。前記製造例2で得られた球状活性炭1g(2cm)及びプルラン及び結晶セルロース(使用した量は表12に示す)を、ビーカー内で均一に分散させ、更に精製水(使用した量は表12に示す)を加えた。得られた混合物を、添加剤の継粉ができないように、スパーテルを用いて練合した。調製した練合物(スラリー)を成形型(直径10mm、高さ6mm、標準R加工14mm)に充填し、スパーテルで擦り切り、上部を撹拌機に取り付けた成形棒で軽く圧縮して、錠剤表面を整えた。減圧乾燥を実施例1と同じ条件で行い、経口投与用吸着剤組成物を得た。得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の質量、体積、及びV/V等を表12に、硬度、摩損度、及び粒度・形状分布測定器を用いた球形率を表13に示す。
【0135】
《比較例1》
本比較例では、特許文献3に記載の添加剤であるマルチトール(分子量:344.31)を用いて、球状活性炭を30重量%含む錠剤型経口投与用組成物を製造した。マルチトールとして、還元麦芽糖水飴(アマルティMR−50:東和化成工業(株)製)を用いた。なお、マルチトールは、「薄膜形成能」を持たず、分子量10,000以下の添加剤である。
精製水50mLに還元麦芽糖水飴50gを加温しながら溶解させた。溶解後の溶液量は80mLであり、溶液の還元麦芽糖水飴の濃度は0.625g/mLである。クレメジン細粒2.1gに、還元麦芽糖水飴溶液7.84mL(還元麦芽糖水飴4.9g)を加え、ビーカー内で十分に練合した。得られた練合物をテフロン(登録商標)製の成形型(直径10mm、高さ6mm、標準R加工14mm)に充填し、スパーテルで擦り切り、低圧圧縮成形し、錠剤表面を整えた。得られた成形型を、熱風循環式定温恒温器を用いて、60℃で一昼夜、加熱乾燥させ、乾燥終了後、デシケーター内で30分放冷した。
得られた錠剤の写真を図2(A)に示し、その物性等を表12及び表13に示す。得られた錠剤は、触れると崩れる脆いものであったため物性の評価ができなかった。また、練合物の水分が多いため、成形型への均一な充填が困難であり、乾燥後の錠剤の大きさが均一ではなかった。
【0136】
《比較例2》
本比較例では、比較例1における圧縮成形の圧力を上げて、錠剤型経口投与用組成物を製造した。
比較例1における低圧での圧縮成形を、強い力による1分間の圧縮成形に変更したことを除いては、比較例1の操作を繰り返し、錠剤を製造した。
得られた錠剤の写真を図2(B)に示し、その物性等を表12及び表13に示す。得られた錠剤は、十分な硬度が得られず、硬度の測定ができなかった。また、練合物の水分が多いため、成形型への均一な充填が困難であり、乾燥後の錠剤の大きさが均一ではなかった。
【0137】
《比較例3》
本比較例では、マルチトールを用いて、球状活性炭を50重量%含む錠剤型経口投与用組成物を製造した。
クレメジン細粒を2.0g、還元麦芽糖水飴溶液を3.2mL(還元麦芽糖水飴2g)を用いたことを除いては、比較例1の操作を繰り返し、錠剤を製造した。
得られた錠剤の写真を図2(C)に示し、その物性等を表12及び表13に示す。得られた錠剤は、上部のみが固形化していたが、下部は粉状で固形化しなかった。硬度等の測定はできなかった。
【0138】
《比較例4》
本比較例では、比較例3における圧縮成形の圧力を上げて、錠剤型経口投与用組成物を製造した。
比較例3における低圧での圧縮成形を、強い力による1分間の圧縮成形に変更したことを除いては、比較例3の操作を繰り返し、錠剤を製造した。
得られた錠剤の写真を図2(D)に示し、その物性等を表12及び表13に示す。比較例8の錠剤と同じように、得られた錠剤は、上部のみが固形化していたが、下部は粉状で固形化しなかった。
【0139】
《比較例5》
本比較例では、マルチトールを用いて、球状活性炭を70重量%含む錠剤型経口投与用組成物を製造した。
クレメジン細粒を2.1g、還元麦芽糖水飴溶液を1.44mL(還元麦芽糖水飴0.9g)を用いたことを除いては、比較例1の操作を繰り返し、錠剤を製造した。
得られた錠剤の写真を図2(E)に示し、その物性等を表12及び表13に示す。錠剤は固形化しなかった。
【0140】
《比較例6》
本比較例では、比較例5における圧縮成形の圧力を上げて、錠剤型経口投与用組成物を製造した。
比較例5における低圧での圧縮成形を、強い力による1分間の圧縮成形に変更したことを除いては、比較例5の操作を繰り返し、錠剤を製造した。
得られた錠剤の写真を図2(F)に示し、その物性等を表12及び表13に示す。錠剤は固形化しなかった。
【0141】
《比較例7》
本比較例では、1重量%未満の粒子製剤用添加剤を含む錠剤型経口投与用組成物を製造した。
前記製造例2で得られた球状活性炭10g(20cm)、及びプルラン0.05gを用いた以外は、実施例43の操作を繰り返し、錠剤を製造した。
得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の質量、体積、及びV/V等を表12に、硬度、摩損度、及び粒度・形状分布測定器を用いた球形率を表13に示す。
【0142】
《比較例8〜10》
比較例8〜10では、薄膜形成能を持たない添加剤を用いて、錠剤型経口投与用組成物を製造した。
前記製造例2で得られた球状活性炭1g(2cm)、及び重量平均分子量が10,000未満の添加剤であるマクロゴール6000、乳糖水和物、又はβ−シクロデキストリン(使用した添加剤の種類と量は表12に示す)を用いた以外は、実施例2の操作を繰り返し、錠剤を製造した。
得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の質量、体積、及びV/V等を表12に、硬度、摩損度、及び粒度・形状分布測定器を用いた球形率を表13に示す。錠剤は固形化しなかった。
【0143】
《比較例11〜12》
比較例11〜12では、薄膜形成能を持たない添加剤を用いて、錠剤型経口投与用組成物を製造した。
前記製造例2で得られた球状活性炭1g(2cm)、及び薄膜を形成することができない添加剤であるカルメロース又はカルメロースカルシウム(使用した添加剤の種類と量は表12に示す)を用いた以外は、実施例2の操作を繰り返し、錠剤を製造した。
得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の質量、体積、及びV/V等を表12に、硬度、摩損度、及び粒度・形状分布測定器を用いた球形率を表13に示す。錠剤は固形化しなかった。
【0144】
《比較例13〜15》
比較例13〜15では、薄膜形成能を持たない添加剤を用いて、錠剤型経口投与用組成物を製造した。
前記製造例2で得られた球状活性炭1g(2cm)、及び薄膜を形成することができない添加剤である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレンオキサイド、又はコポリビドン(使用した添加剤の種類と量は表12に示す)を用いた以外は、実施例2の操作を繰り返し、錠剤を製造した。
得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の質量、体積、及びV/V等を表12に、硬度、摩損度、及び粒度・形状分布測定器を用いた球形率を表13に示す。
【0145】
《比較例16》
本比較例では直接打錠法により、球状活性炭を含む錠剤を製造した。
前記製造例2で得られた球状活性炭10g、乳糖水和物(ダイラクトーズR、フロイント産業株式会社)37g、ポビドン(コリドン30、BASF製)2.5g、ステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業製)0.5gをビニール袋の中で均一に混合し、単発式打錠機(ミニプレスMII、RIVA製)を用いて、直接打錠法により、直径12mm、平均重量375mgの錠剤を135錠製造した。得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物について、質量、体積、V/V、硬度、及び摩損度を測定した。結果を表12及び表13に示す。
【0146】
また、比較例16で得られた経口投与用吸着剤組成物については、CCDカメラを用いた測定方法に従って、球形率を測定した。結果を表12に示す。なお、以下の表11に比較例16の打錠前及び打錠後の5視野のデータを示す。
【0147】
【表11】
【0148】
《比較例17》
本比較例では直接打錠法により、球状活性炭を含む錠剤を製造した。
前記製造例1で得られた球状活性炭7.5g、乳糖水和物39.5g、ポビドン2.5g、ステアリン酸マグネシウム0.5gをビニール袋の中で均一に混合し、単発式打錠機(ミニプレスMII、RIVA製)を用いて、直接打錠法により、直径10mm、平均重量404.5mgの錠剤を製造した。得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物について、質量、体積、V/V、硬度、摩損度、及び粒度・形状分布測定器で球形率を測定した。結果を表12及び表13に示す。
【0149】
《比較例18》
本比較例では湿式顆粒圧縮法により、球状活性炭を含む錠剤を製造した。
前記製造例1で得られた球状活性炭50g、乳糖水和物24g、ヒドロキシプロピルセルロース10g、ポビドン12g、プルラン3gを、転動流動層造粒乾燥コーティング装置を用いて混合し、湿式造粒した。造粒後乾燥して得られた顆粒を、単発式打錠機(ミニプレスMII、RIVA製)を用いて、直径10mm、平均重量250mgの錠剤を製造した。得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物について、質量、体積、V/V、硬度、摩損度、及び粒度・形状分布測定器による球形率を測定した。結果を表12及び表13に示す。
【0150】
《比較例19》
本比較例では、球状活性炭が65重量%未満の錠剤型経口投与用吸着剤組成物を製造した。前記製造例2で得られた球状活性炭1g(2cm)及びプルラン及び結晶セルロース(使用した量は表12に示す)を、ビーカー内で均一に分散させ、更に精製水(使用した量は表12に示す)を加えた。得られた混合物を、添加剤の継粉ができないように、スパーテルを用いて練合した。調製した練合物(スラリー)を成形型(直径10mm、高さ6mm、標準R加工14mm)に充填し、スパーテルで擦り切り、上部を撹拌機に取り付けた成形棒で軽く圧縮して、錠剤表面を整えた。減圧乾燥を実施例1と同じ条件で行い、経口投与用吸着剤組成物を得た。得られた錠剤型の経口投与用吸着剤組成物の質量、体積、及びV/V等を表12に、硬度、摩損度、及び粒度・形状分布測定器を用いた球形率を表13に示す。
【0151】
【表12-1】
【0152】
【表12-2】
【0153】
【表12-3】
【0154】
【表12-4】
【0155】
【表13-1】
【0156】
【表13-2】
【0157】
【表13-3】
【0158】
【表13-4】
【0159】
【表14】
【0160】
【表15】
【0161】
《錠剤型経口投与組成物の服用試験》
本発明の錠剤型経口投与組成物は、錠剤体積が小さいことにより、服用時の飲水量が従来のカプセル剤より少なくなることを確認するために、服用試験を行った。
/V=1.02〜2.00を示す錠剤型経口投与組成物及びカプセル剤について、球状活性炭として2g相当量の製剤を服用するときに必要な水の量を測定した。服用する錠剤は、実施例55(V/V=1.02)の錠剤、実施例69(V/V=1.23)の錠剤、及びV/V=2.00に相当する錠剤の体積に合わせて、球状活性炭を含まないプラセボ錠剤(直径10mm、高さ6mm、標準R加工14mm、体積0.42cm)を調製した。このときの球状活性炭2gに相当する錠数は、実施例55(V/V=1.02)については10錠、実施例69(V/V=1.23)については12錠であった。また、実施例55及び実施例69から計算したV/V=2.00に相当する錠数は19錠であった。
モニター男性4名に球状活性炭2gに相当する数量のプラセボ錠剤(V/V=1.02、1.23、2.00)(即ち、10錠、12錠、19錠)及びカプセル剤(カプセル剤はクレメジンカプセル200mgを使用した)を渡し、それぞれの全量を服用するために必要な水の量を測定した。結果を表16に示す。服用に必要な水の量は、モニターによってそれぞれ異なったが、全てのモニターでプラセボ錠(V/V=1.02)、プラセボ錠(V/V=1.23)、カプセル剤(V/V=1.533)、プラセボ錠(V/V=2.00)の順に服用に必要な水が少なかった。
【0162】
【表16】
【0163】
《走査型電子顕微鏡による錠剤の表面及び内部の観察》
実施例55及び比較例15において作製した錠剤型経口投与組成物について、走査型電子顕微鏡(JSM7401F型、日本電子株式会社製)を用いて、錠剤の表面及び内部を観察した結果を図4及び図5に示す。実施例55の錠剤型経口投与組成物では、球状活性炭の粒子の周りを粒子製剤用添加剤が覆い、粒子同士が添加剤の薄膜を介して広い面積で結合していた。一方、比較例15の錠剤型経口投与組成物では、球状活性炭の粒子の周りを粒子製剤用添加剤が覆っているものの、薄膜を形成できないために粒子間でひび割れており、十分に結合していなかった。
【0164】
《球状活性炭の圧壊強度及び歪率の測定》
硬度測定器を用いて、球状活性炭の圧壊強度及び歪率を測定した。測定は粒子1個に対して行い、全自動型粒体硬度測定器(BHT−500、セイシン企業製)を用いて、常法に従って行った。製造例1において調製した13個の球状活性炭の測定結果(n=13)を表17及び図6Aに示す。また、製造例2において調製した14個の球状活性炭の測定結果(n=14)を表18及び図6Bに示す。また、2MPaの圧力をかけたときの歪率を、以下の計算式によって求めた。
2MPaの圧力をかけたときの歪率=破断時の歪率(%)÷圧壊強度(MPa)×2MPa
【0165】
【表17】
製造例1の球状活性炭の平均の圧壊強度は、31.2MPaであった。また、2MPaの圧力をかけたときの歪率は、以下の計算式から0.76%であった。
11.8(%)÷31.2×2=0.76%
【0166】
【表18】
製造例2の球状活性炭の平均の圧壊強度は、436.5MPaであった。また、2MPaの圧力をかけたときの歪率は、以下の計算式から0.23%であった。
49.2(%)÷436.5×2=0.23%
また、図6A及び図6Bから明らかなように、製造例1及び2の球状活性炭に荷重をかけた場合、一定の荷重で破断し、その後は荷重が0になることがわかる。従って、球状活性炭は、応力がかかってもほとんど変形せず、一定以上の力がかかると破壊される性質を有している。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明の錠剤型の経口投与用吸着剤組成物は、腎疾患の治療用若しくは予防用経口投与用吸着剤として用いるか、又は肝疾患の治療用若しくは予防用吸着剤として用いることができる。
腎疾患としては、例えば、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、慢性腎炎、急性腎炎症候群、急性進行型腎炎症候群、慢性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、腎硬化症、間質性腎炎、細尿管症、リポイドネフローゼ、糖尿病性腎症、腎血管性高血圧、若しくは高血圧症候群、あるいは前記の原疾患に伴う続発性腎疾患、更に、透析前の軽度腎不全を挙げることができ、透析前の軽度腎不全の病態改善や透析中の病態改善にも用いることができる(「臨床腎臓学」朝倉書店、本田西男、小磯謙吉、黒川清、1990年版及び「腎臓病学」医学書院、尾前照雄、藤見惺編集、1981年版参照)。
また、肝疾患としては、例えば、劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、肝線維症、肝硬変、肝癌、自己免疫性肝炎、薬剤アレルギー性肝障害、原発性胆汁性肝硬変、振せん、脳症、代謝異常、又は機能異常を挙げることができる。その他、体内に存在する有害物質による病気、すなわち、精神病等の治療にも用いることができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
図6
図1
図2
図3
図4
図5