(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5701982
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 6/32 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
H01M6/32 A
【請求項の数】36
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-516984(P2013-516984)
(86)(22)【出願日】2011年6月30日
(65)【公表番号】特表2013-533590(P2013-533590A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】CN2011076696
(87)【国際公開番号】WO2012000446
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2013年5月9日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2010/074855
(32)【優先日】2010年6月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512008118
【氏名又は名称】エコ グループ アジア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】バッカー,ニールス
【審査官】
前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−325771(JP,A)
【文献】
特開平06−302323(JP,A)
【文献】
特開平07−094193(JP,A)
【文献】
特開平02−079924(JP,A)
【文献】
特開昭61−224265(JP,A)
【文献】
特開昭63−143753(JP,A)
【文献】
特開昭63−143754(JP,A)
【文献】
特開昭63−143755(JP,A)
【文献】
特開2006−059546(JP,A)
【文献】
特開2008−171762(JP,A)
【文献】
特開2009−301720(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3152998(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 6/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体で活性化できる電池であって、
対向する第1及び第2端と、中に液体で活性化できる混合粉が配置されるチャンバを定める内側周囲表面とを有する金属管であって、前記金属管の第1端は第1端キャップによりシールされ、前記金属管の第2端は第2端キャップにより取り外し可能にシールされ、前記金属管の第2端は、シール解除されたとき液体がそこを通って前記金属管から前記チャンバの中へ送られることを可能にする、金属管と、
前記混合粉を前記金属管から絶縁するための透過性のセパレータシートと、
前記金属管の前記第1端付近に位置する第1端を有し、前記混合粉と接触する第2端を有する導電性ロッドと、
前記金属管の前記対向する第1及び第2端の間に延びている通路であって、前記通路は、液体が前記金属管の第2端を介してチャンバ内に送られて、前記混合粉を活性化するために液体が前記通路から流れて前記金属管の長さに実質的に沿った前記透過性のセパレータシートを介して前記混合粉と接触するよう構成され、活性化された前記混合粉が前記導電性ロッドと前記金属管との間に電位差を生成する、通路と
を含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項2】
請求項1記載の液体で活性化できる電池において、前記金属管は、亜鉛、マグネシウム、アルミニウムのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項3】
請求項2記載の液体で活性化できる電池において、前記金属管は、前記金属管の重量パーセントで亜鉛を99%含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項4】
請求項3記載の液体で活性化できる電池において、前記金属管は前記混合粉を中に受け取る前にインジウムでめっきされることを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記金属管の前記第1端はプラスチック材料を含む前記第1端キャップによりシールされることを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項6】
請求項5記載の液体で活性化できる電池において、前記第2端キャップと前記金属管の前記第2端とは同様の直径を含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項7】
請求項6に記載の液体で活性化できる電池において、前記第2端キャップは、前記金属管の前記第2端を取り外し可能にシールするとき前記金属管と電気通信するように構成された金属材料を含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記導電性ロッドの前記第1端は、前記第1端キャップに配置された開口を介して前記金属管の前記第1端の外へ延びることを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記導電性ロッドの前記第2端は前記混合粉内に埋め込まれることを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記導電性ロッドは、真ちゅう、炭素、及びステンレス鋼材料のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記通路は前記金属管の全長に延びることを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記通路は、前記金属管の前記対向する第1及び第2端の間の実質的な直線路に延びることを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項13】
請求項12記載の液体で活性化できる電池において、前記通路は、前記金属管の長軸に対する実質的な平行路に延びることを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記通路は曲線路を含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記通路は、前記金属管の前記内側周囲表面に形成された溝を含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項16】
請求項15記載の液体で活性化できる電池において、該電池は前記金属管の前記内側周囲表面に形成された少なくとも6つの溝を含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項17】
請求項16記載の液体で活性化できる電池において、前記少なくとも6つの溝は前記内側周囲表面の全体に等間隔に離されていることを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項18】
請求項1から17のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記液体は、水性の液体を含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項19】
請求項1から18のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、該電池は前記金属管を囲うアウターケーシングを含み、前記アウターケーシングは前記金属管を変形に対して実質的に補強するように構成されることを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項20】
請求項19記載の液体で活性化できる電池において、前記アウターケーシングは、金属性材料またはプラスチック材料を含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項21】
請求項20記載の液体で活性化できる電池において、前記金属性材料は、ステンレス鋼であることを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項22】
請求項19から21のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記アウターケーシングは、0.2から1mm範囲の厚さを含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項23】
請求項1記載の液体で活性化できる電池において、前記第2端キャップは、前記金属管の前記第2端を取り外し可能にシールすることで前記第2端キャップが前記金属管と電気通信するようにするために、前記金属管の前記第2端とねじ込み係合するように構成されることを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項24】
請求項1から23のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記混合粉は金属酸化物粉を含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項25】
請求項24記載の液体で活性化できる電池において、前記金属酸化物粉は、二酸化マンガン、酸化鉄、または結晶性の酸化銀を含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項26】
請求項24又は25に記載の液体で活性化できる電池において、前記混合粉は、重量パーセントで、塩化アンモニウム粒子3%、塩化亜鉛粒子16%、二酸化マンガン粒子68%、アセチレンカーボンブラック12.4%、及び酸化亜鉛粒子0.6%を含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項27】
請求項1から26のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記混合粉は、4.32マイクロメートルの直径の粒子を含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項28】
請求項1から27のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記透過性のセパレータシートは、透過性の紙材料、透過性の合成ポリマー材料、または透過性の天然ポリマー材料を含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項29】
請求項1から28のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、該透過性のセパレータシートは厚さ0.08mmのクラフト紙の二重層のシートを含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項30】
請求項1から29のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記透過性のセパレータシートは、前記金属管の前記内側周囲表面にぴったりついていることを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項31】
請求項1から30のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記透過性のセパレータシートの一部は前記金属管の第2端付近の前記混合粉に折り重ねられていることを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項32】
請求項31記載の液体で活性化できる電池において、該電池は、前記金属管の前記第2端付近の前記チャンバに配置された保持部材を含み、前記金属管の前記第2端は前記透過性のセパレータシートの折り重ね部に隣接することを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項33】
請求項32記載の液体で活性化できる電池において、前記保持部材は流体連通を可能にする少なくとも1つの開口を含み、前記流体連通は前記金属管の前記第2端から前記開口を通り前記透過性のセパレータシートの前記折り重ね部へ接触することを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項34】
請求項32又は33のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、前記保持部材は、Oリングと係合するよう構成された3次元構成体を含み、前記Oリングをシールされた前記第2端キャップ付近の実質的な静止位置に維持できるようにして、前記金属管からの液体の漏出を軽減するようにすることを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項35】
請求項1から34のいずれかに記載の液体で活性化できる電池において、該電池は、単3形電池または単4形電池の形及び大きさを含むことを特徴とする液体で活性化できる電池。
【請求項36】
電池を活性化する方法であって、前記電池は、
対向する第1及び第2端と、中に液体で活性化できる混合粉が配置されるチャンバを定める内側周囲表面とを有する金属管であって、前記金属管の第1端は第1端キャップによりシールされ、前記金属管の第2端は第2端キャップにより取り外し可能にシールされ、前記金属管の第2端は、シール解除されたとき液体がそこを通って前記チャンバの中へ送られることを可能にするよう構成される、金属管と、
前記混合粉を前記金属管から絶縁するための透過性のセパレータシートと、
前記金属管の前記第1端付近に位置する第1端と、前記混合粉に埋め込まれた第2端とを有する導電性ロッドと、を含み、
前記方法は、
(i)シール解除されたときに前記金属管の第2端を介して液体を前記チャンバに送るステップと、
(ii)前記チャンバ内に形成された通路に沿って前記液体を導くステップであって、前記液体は、前記混合粉を活性化するために前記通路に沿って流れ、前記金属管の長さに実質的に沿った前記透過性のセパレータシートを介して前記混合粉と接触し、該活性化された前記混合粉が前記導電性ロッドと前記金属管との間に電位差を生成する、ステップと
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再利用可能な電池の分野に関し、特に水等の液体を加えることにより活性化される電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の市販タイプの電池、例えば単3、単4、単1電池等の多くには、保管中に時の経過とともに有効性が劣化するという問題がある。これは、緊急事態が発生して、懐中電灯、ラジオ、又は他の救命に役立つような装置に電源供給するために、正常に機能する電池が必要なときに特に問題になる。
【0003】
水電池は不活性状態で―つまり、水又は水性の物質が電解質混合粉にまだ加えられていないとき―比較的長期間保存することができるため、上述の問題に対処しようとするために採用されてきた。このような電池は必要な時に水又は水性の物質を加えることで活性化して使用することができ、電池の性能を大幅に損失することがない。
【0004】
しかし、既存の水電池はいくつかの欠点も示している。例えば、電池内の電解質混合粉に水を加えて電池を活性化するためには、電池の端にある小さな開口を介して電池のケーシングの中に圧力をかけて水を注入するために、ピペットが必要であることが通常である。これは特に小さな子供にとっては厄介で面倒な手順であり、ピペットをうっかり紛失すれば、水を開口に注入して電池を正常に動作させることができなくなる。さらに、既存の内部電池構成では、電池内の電解質粉の大部分に効率的に水を送ることが難しく、これが電池の電気性能に不利な影響を与える。
【0005】
現在の水電池に関するさらなる問題は、ケーシングがマグネシウム又はその他の使用中に時の経過とともに膨張及び変形する材料で作られる傾向にあることである。電池が変形すると、電子装置から外すのが大変になり、外す際に電子装置に損傷を与える場合もある。さらに、マグネシウム陽極を用いた現在の水電池は、水又は水性の物質との反応が強いために劣化しやすく活性状態の寿命が比較的短い。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、従来技術に関して上述した問題の少なくとも1つを軽減しようとするものである。
【0007】
本発明は、いくつかの広義の形態を含む。本発明の実施形態は本明細書で述べる異なる広義の形態の1つ又は任意の組み合わせを含むことができる。
【0008】
第1の広義の形態では、本発明は、
対向する第1及び第2端と、中に液体で活性化できる混合粉が配置されるチャンバを定める内側周囲表面とを有する金属管と、
混合粉を金属管から絶縁するための透過性のセパレータシートと、
金属管の第1端付近に位置する第1端を有し第2端へ延びて混合粉と接触する導電性ロッドと、
金属管の対向する第1及び第2端の間に延びてそこを通って液体が流れることを可能にする通路であって、液体は、混合粉を活性化するために通路から送られて金属管の長さに実質的に沿った透過性のセパレータシートを介して混合粉と接触することができ、それにより活性化された混合粉が導電性ロッドと金属管との間に電位差を生成するように構成される、通路と
を含む電池を提供する。
【0009】
好ましくは、金属管は、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、及びその組み合わせのうち少なくとも1つを含む。より好ましくは、金属管は少なくとも亜鉛を99%含む。さらに、好ましくは金属管は腐食を遅らせる又は軽減するためにインジウムの溶液に浸される。
【0010】
好ましくは、金属管の第1端は第1端キャップにより実質的にシールされ、金属管の第2端は第2端キャップにより取り外し可能にシール可能である。好ましくは、液体は、金属管の第2端から放出されるとき、金属管の第2端を介してチャンバの中へ送られるように構成される。典型的には、第1端キャップはプラスチック材料を含み、第2端キャップはめっきしたステンレス鋼等の腐食を遅らせる又は軽減するのを助ける金属材料を含む。
【0011】
好ましくは、第2端キャップ及び金属管の第2端は、実質的に同様の直径を含む。好ましくは、第2端キャップは、金属管の第2端と直接螺合するよう構成するか、又は金属管を囲うアウターケーシングと螺合するように構成するかのいずれかで構成されて、第2端キャップが金属管の第2端を取り外し可能にシールできるようにする。さらに、好ましくは第2端キャップは金属管の第2端を取り外し可能にシールするとき金属管と電気通信するように構成された金属材料を含む。典型的には、第2端キャップは、使用中の電池の負電極として機能する金属管の第2端を取り外し可能にシールするとき、金属管とも直接物理的に接触する。
【0012】
利点は、シール解除された金属管の第2端を介して液体を金属管の中に注ぐかその他の方法ですくい入れることにより、混合粉を活性化するために液体を比較的簡単に素早く金属管のチャンバの中に送ることができることである。好ましくは、本発明は、理想的には純水に一定期間沈められる。取り外し可能にシール可能な第2端キャップを外すことにより、中へ液体を送るために金属管の第2端を開くことができる便利な性能は、電池のケーシングの比較的小さな開口を介して電池の中に液体をかけるためにピペットを用いる必要があるいくつかの従来技術の電池に付随する、追加的な費用及び包装のスペースを軽減することもできる。この点について、本発明は金属管の中に電池を活性化する適量の水が注入されたかを、目視検査でより容易に判断することが可能であることでも有益である。これに対し、いくつかの既存の水で活性化できる電池では、電池の端キャップは固定され使用者が手動で外して目視検査を行えるように設計されていないので、ピペットを用いて開口を介して電池の中に適量の水がかけられたかを正確に判断することが難しい。過剰な水が電池のケーシングの開口から漏出してはじめて、電池内の水量をある程度指示するものが明らかになるが、これは要領が悪く不正確な手段である。さらに、過剰な水が開口から漏出したことは、電池を正常に機能させるために適量の水が送られて電池内で混合粉と接触したことを必ずしも正確に指示するものではない。
【0013】
金属管の第2端を取り外し可能にシールするように構成された金属性第2端キャップを使用することも、必要であればリサイクル及び/再利用を簡単にするために使用者が第2端キャップを金属管から容易に分離することができるという点で有益である。つまり、一体に成形された従来の電池を分離するのに通常必要な、金属を粉砕し、溶鉱炉に入れ、磁気分離するなどの比較的費用のかかるリサイクル処理をする必要性が、金属性第2端キャップを電池の金属管から容易に分離することができることにより軽減される。金属管(亜鉛材料から形成されるのが典型的である)は、アウターケーシング(ステンレス鋼材料から形成されるのが典型的である)から比較的容易に外すことができ、金属管を比較的低いエネルギ必要量でリサイクルできるようにし、アウターケーシング及び取り外し可能にシール可能な第2端キャップは、新しい電池の製造に再利用することができる。
【0014】
好ましくは、導電性ロッドの第1端は、第1端キャップに配置された開口を介して金属管の第1端の外へ延びる。好ましくは、導電性ロッドの第2端は、混合粉内に事実上埋め込まれる。典型的には、導電性ロッドは、真ちゅう、炭素、ステンレス鋼材料、及びその組み合わせのうち少なくとも1つを含む。
【0015】
好ましくは、通路は金属管の全長に延びる。さらに、好ましくは、通路は金属管の対向する第1及び第2端の間の実質的な直線路に延びる。典型的には、通路は、金属管の長軸に対する実質的な平行路に延びる。より好ましくは、通路は、金属管の内側周囲表面に形成された溝を含む。典型的には、複数のそのような溝が金属管の内側周囲表面壁に形成される。好適な実施形態では、少なくとも6つの溝を内側周囲表面に形成することができる。典型的には、複数の溝は、内側周囲表面の全体に等間隔に離されている。溝は、適切な機械及び既知の技術を用いて金属管の内側周囲表面からエッチングすることができる。あるいは、金属管をダイカストで鋳造して、ダイカスト処理の間に溝を内側周囲表面に形成することもできる。
【0016】
あるいは、通路は透過性のセパレータシート及び/又は混合粉の表面領域へより多く触れさせることを可能にする金属管の長さに沿った曲線を含むことができる。
【0017】
利点は、通路を含むことで、液体が透過性のセパレータシートを介して送られ金属管の混合粉の表面領域全体にわたりより一様に均等に接触することが可能になることであり、通路は、好適な実施形態では金属管の内側周囲表面に配置された少なくとも1つの溝を含む。これは、液体が実質的に金属管の長さに沿って通路を流れ通ることができるためである。
【0018】
それに対し、いくつかの従来技術の水で活性化できる電池では、混合粉の上部表面のみを介して水が混合粉を貫通するのは難しい。さらに、いくつかの他の従来技術の水電池は金属管内にスポンジを含み、スポンジは水を吸収するとその後簡単には吸収した水を放出して混合粉と接触させない傾向にある。したがって、このような従来技術の電池の電気性能は本発明の電気性能に比べて効率が劣る傾向にある。
【0019】
好ましくは、液体は水又は任意の水性の液体を含む。より好ましくは、液体は蒸留水又は純水を含む。典型的には、本発明の実施形態を適切に活性化させるために少なくとも約1.7グラムの水が電池の金属管の中に送られる。
【0020】
好ましくは、本発明は金属管を囲うアウターケーシングを含み、アウターケーシングは金属管を熱等の影響による変形に対して実質的に補強するように構成される。このようなアウターケーシングを用いない従来技術の電池は、電池が熱による変形の影響をより受けやすくなる可能性があり、電子装置にさらなる損傷を与えることなく電池を電子装置の電池コンパートメントから外すのが難しくなる。さらにいくつかの従来技術の電池は、金属管からアウターケーシングを簡単に分離することができず、したがってリサイクルの間に粉砕する必要がある。典型的には、アウターケーシングは約0.2から1mmの間の厚さを含み、0.5mmの厚さが好ましい。
【0021】
好ましくは、第2端キャップが金属管の第2端を取り外し可能にシールするとき、第2端キャップはアウターケーシングと取り外し可能に係合される。また、好ましくは第2端キャップは螺合によりアウターケーシングと取り外し可能に係合される。さらに、好ましくは、第2端キャップがアウターケーシングと取り外し可能に係合されて金属管の第2端を取り外し可能にシールするとき、第2端キャップは金属管と電気通信している。あるいは、いくつかの実施形態では、第2端キャップはアウターケーシングと取り外し可能に係合されているとき、金属管の第2端と直接物理的に接触している。
【0022】
典型的には、アウターケーシングはステンレス鋼等の金属を含む。利点は、第2端キャップがアウターケーシングと取り外し可能に係合された実施形態では、第2端キャップがアウターケーシングを介して金属管と電気通信することができることである。
【0023】
あるいは、いくつかの実施形態では、アウターケーシングがプラスチック材料を含むのが好ましい。利点は、プラスチックのアウターケーシングは、金属等他の材料を使用することに比べて電池の重量を低減することができることである。したがってこれにより本発明の実施形態を大量に輸送するときに送料を軽減することができる。プラスチックのケーシングを使用することでさらに、金属管内で遊離し得る混合粉がアウターケーシングと接触する場合に起こり得る電池の短絡を軽減することができる。さらにまた、プラスチックのアウターケーシングは、適切な機械を用いて商業的なマークを比較的簡単に安価でデボス加工することができること、及び/又は、必要であればマーケティング及び/又は美観のために製造の間に装飾加工を行うこと(例えば、色を使って)ができる。典型的には、プラスチックのアウターケーシングを用いる場合、第2端キャップがプラスチックのアウターケーシングと取り外し可能に係合されたときに第2端キャップと金属管との間に電気通信を提供するために、プラスチックのケーシングの一部は導電性材料で覆われる。典型的には、導電性材料は、プラスチックのアウターケーシングの内側表面上にあるこのアウターケーシングのネジ山部を覆う。
【0024】
好ましくは、混合粉は金属酸化物粉を含むのが好ましい。典型的には、金属酸化物は、活性炭、二酸化マンガン、酸化鉄、及び結晶性の酸化銀のうち少なくとも1つを含む。
【0025】
典型的には、電解質混合粉は、塩化アンモニウム粒子、塩化亜鉛粒子、二酸化マンガン粒子、アセチレンカーボンブラック粒子、及び酸化亜鉛粒子の混合物から形成される粒子を含む。より典型的には、好適な実施形態では、混合粉は、混合粉の重量パーセントでおよそのところ、塩化アンモニウム粒子3%、塩化亜鉛粒子16%、二酸化マンガン粒子68%、アセチレンカーボンブラック12.4%、及び酸化亜鉛粒子0.6%を含む。
【0026】
典型的には、混合粉は回転又は遊星型のボールミルを用いてボールミルされる。典型的には、混合粉をボールミルするのに用いるボールミルは、セラミックボールを含む。典型的には、混合粉粒子はナノメートルからマイクロメートルの範囲の直径を含む。より典型的には、混合粉は、実質的にナノメートルからマイクロメートルの範囲の直径を有する粒子を含む。より典型的には、混合粉粒子は、実質的に約4.32マイクロメートルの直径を含む。
【0027】
好ましくは、透過性のセパレータシートは、内側周囲表面の長さに沿って実質的に延びて内側周囲表面にぴったりついており、電解質混合粉を金属管の内側周囲表面から物理的及び電気的に分離する。典型的には、透過性のセパレータシートは、クラフト紙等透過性の紙材料、透過性の合成ポリマー材料、及び透過性の天然ポリマー材料のうち少なくとも1つを含む。好ましくは、透過性のセパレータシートは、実質的に約0.08mmの厚さを含む。さらに、好ましくは、透過性のセパレータシートは、液体を送って混合粉と接触させるのを助ける二重層の0.08mmの透過性のセパレータシートを含む。
【0028】
典型的には、透過性のセパレータシートは、金属管の内側周囲表面の輪郭を補うようにプリフォームされるか又は折り重ねられる。好ましくは、金属管の第2端付近に位置するよう構成された透過性のセパレータシートの一部は、遊離混合粉が金属管の第2端の外へ漏出することを軽減するために、金属管の第2端付近の混合粉の上部領域に折り重ねられるように構成される。
【0029】
好ましくは、保持部材は金属管の第2端付近のチャンバに配置され、金属管の第2端は透過性のセパレータシートの折り重ね部の終端になる。好ましくは、保持部材は流体連通を可能にする少なくとも1つの開口を含み、この流体連通はシール解除された金属管の第2端からこの開口を通り透過性のセパレータシートの折り重ね部へ接触し、その後混合粉と接触するものである。典型的には、複数の開口が保持部材に配置され、好適な実施形態では4つの開口が提供される。
【0030】
利点は、保持部材は、例えば子供が本発明をうっかりいじるなどして金属管の第2端から第2端キャップによるシールが解除されている場合、保持部材が透過性のセパレータシートを第2端付近の混合粉の上部領域にしっかり折り重ねられた状態に維持する助けをするという点で、安全機構の提供に役立つことである。したがって混合粉は、子供が口に入れること又は他の方法で金属管から漏れ出す可能性が潜在的にない。さらに、保持部材の開口は、そこを液体が通って、混合粉の上部を介して混合粉と接触することも可能にする。
【0031】
好ましくは、保持部材は、Oリングと係合するよう構成された3次元構成体を含み、Oリングを電池の金属管内の実質的な固定位置に維持して、使用中の電池の金属管からの液体の漏出を軽減するようにする。典型的には、3次元構成体は、Oリングを装着するためのくぼみ、ほり、又は溝を含む。典型的には、3次元構成体は、保持部材の周囲に沿って配置され、典型的には金属管の第2端の外に面するように構成された保持部材の面上に配置される。典型的には、Oリングは厚さ約0.5mmで、それにより金属管の第2端を取り外し可能にシールする第2端キャップの圧力により、保持部材の3次元構成体に装着されたOリングを押し付け平らにしてアウターケーシングの内側表面にぴったり寄り添うようにさせ、金属管とアウターケーシングの内側表面との間の隙間を介した漏出を軽減する。
【0032】
第2の広義の形態では、本発明は、
対向する第1及び第2端であって、第1端は第1端キャップにより実質的にシールされ、第2端第2端キャップにより取り外し可能にシール可能である第1及び第2端と、中に液体で活性化できる混合粉が配置されるチャンバを定める内側周囲表面とを有する金属管と、
混合粉と内側周囲表面との間に配置され、混合粉を金属管から絶縁するための透過性のセパレータシートと
第1端キャップに配置された開口を介して金属管の第1端の外に位置する第1端を有し、第1端は混合粉に埋め込まれた第2端へ延びる、導電性ロッドと
金属管の内側周囲表面に形成された溝であって、対向する第1及び第2端の間に延びてそこを通って液体が流れることを可能にし、液体は、混合粉を活性化するために溝から送られて金属管の長さに実質的に沿った透過性のセパレータシートを介して混合粉と接触することができ、それにより活性化された混合粉が導電性ロッドと金属管との間に電位差を生成するように構成される、溝と
を含む電池を提供する。
【0033】
第3の広義の形態では、本発明は電池を活性化する方法を提供し、電池は、
対向する第1及び第2端と、中に液体で活性化できる混合粉が配置されるチャンバを定める内側周囲表面とを有する金属管と、
混合粉を金属管から絶縁するための透過性のセパレータシートと、
金属管の第1端付近に位置する第1端と、混合粉に埋め込まれた第2端とを有する導電性ロッドと、を含み、
この方法は、
(i)液体をチャンバに送るステップと、
(ii)通路に沿って液体を導くステップであって、液体は、混合粉を活性化するために通路から送られて金属管の長さに実質的に沿った透過性のセパレータシートを介して混合粉と接触することができ、それにより活性化された混合粉が導電性ロッドと金属管との間に電位差を生成するように構成される、ステップと
を含む。
【0034】
第4の広義の形態では、本発明は中に取り外し可能に電池をシールするコンパートメントを含む、包装を提供する。
【0035】
好ましくは、電池は、本発明の第1及び第2の広義の形態のうちいずれかに従い形成された電池を含む。
【0036】
好ましくは、包装コンパートメントは中にシールした電池のまわりに液密及び/又は気密のシーリングを提供するように構成される。好ましくは、電池のコンパートメント内への取り外し可能なシーリングは、水分がコンパートメント内に閉じ込められるのを軽減するために湿度制御された環境で行われる。典型的には、本発明は、少なくともいくらかの水分をコンパートメントから吸収するように構成されたゲルパック等の水分吸収性材料を含み、中で電池が早発活性化することを軽減する。
【0037】
好ましくは、包装は、ストリップ状に構成された複数の包装コンパートメントを含む。典型的には、複数のコンパートメントは、実質的に同じ形及び大きさである。典型的には、ストリップは長方形を形成する。
【0038】
好ましくは、本発明は空きを有するディスペンサを含み、ディスペンサは包装コンパートメントを空きから徐々に出すように構成される。典型的には、ディスペンサはストリップを巻きつける糸巻きを含む。
【0039】
好ましくは少なくとも第1及び第2の隣接するコンパートメントは、包装材料の第1及び第2の隣接するコンパートメントの間に配置された引き裂き線を介して互いから分離される。
【0040】
本発明は、以下に添付図面とともに詳細に述べる本発明の好適であるが限定的ではない実施形態からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明に従った第1の実施形態である水で活性化できる電池の分解斜視図を示す。
【
図2a】第1の実施形態の亜鉛の円筒金属管の斜視図を示す。
【
図2b】第1の実施形態の亜鉛の円筒金属管の斜視断面図を示す。
【
図2c】金属管の内側周囲表面に配置された溝が見える状態の、第1の実施形態の亜鉛の円筒金属管の側面断面図を示す。
【
図2d】金属管の内側周囲表面に等間隔に離された溝が見える状態の、第1の実施形態の亜鉛の円筒金属管の端面図を示す。
【
図3a】第1の実施形態の金属管を囲って補強する鋼の円筒アウターケーシングの斜視図を示す。
【
図3b】第1の実施形態の鋼の円筒アウターケーシングの斜視断面図を示す。
【
図3c】ネジ山領域が見える状態の、鋼の円筒アウターケーシングの斜視図を示す。
【
図4a】第1の実施形態の鋼の円筒アウターケーシングに取り外し可能にシール可能に取りつけるように構成された第2端キャップの形態図を示す。
【
図4b】第1の実施形態の第2端キャップの側面断面図を示す。
【
図4c】第1の実施形態の第2端キャップの側面図を示す。
【
図4d】第1の実施形態の第2端キャップの形態斜視図を示す。
【
図4e】第1の実施形態の第2端キャップの底面斜視図を示す。
【
図5a】第1の実施形態の保持部材の底面図を示す。
【
図5b】第1の実施形態の保持部材の形態図を示す。
【
図5c】第1の実施形態の保持部材の第1の形態斜視図を示す。
【
図5d】第1の実施形態の保持部材の第2の形態斜視図を示す。
【
図6a】第1の実施形態の保持部材の3次元装着部構成体と係合するように構成されたOリングの斜視図を示す。
【
図6b】
図6(a)に示すOリングの側面図を示す。
【
図7a】プラスチックの第1端キャップ、鋼接触、及びカーボンスティックからなる組立体であって、カーボンスティックは電解質混合粉と接触するように構成され、鋼接触は第1端キャップの開口から突出する組立体の側面図を示す。
【
図7b】プラスチックの第1端キャップ、鋼キャップ、及びカーボンスティックからなる組立体であって、カーボンスティックは電解質混合粉と接触するように構成され、鋼接触は第1端キャップの開口から突出する組立体の第1の斜視図を示す。
【
図7c】プラスチックの第1端接触、鋼接触、及びカーボンスティックからなる組立体であって、カーボンスティックは電解質混合粉と接触するように構成され、鋼接触は第1端キャップの開口から突出する組立体の第2の斜視図を示す。
【
図8】第1の実施形態に従って用いられる、二重層のクラフト紙からなるプリフォームされた透過性のセパレータシートの斜視図を示す。
【
図9】第1の実施形態に従って形成された電池等の電池の例示的なストリップ包装を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の好適な実施形態を図面を参照して説明する。ここで述べる例示的な実施形態は、市販タイプの単3及び単4電池の形、大きさ、及び電力出力の要件に応じて使用するのに適した、水で活性化できる電池を含む。ただし、当業者であれば本発明の実施形態が、異なる形及び大きさで従来の単4形電池等に匹敵する電気出力を有する他のタイプの電池を含んでもよいことが分かるであろう。
【0043】
まず
図1を参照すると、第1の実施形態電池(1)が分解斜視図で示されている。電池(1)は、水又は任意の他の適切な水性の液体等の液体が加えられるまで不活性のままであり、初めは不活性状態であるため、類似したタイプのアプリケーション向けの従来電池よりもかなり長い保存可能期間を享受することが可能であり、これは従来型電池には製造のほぼ直後から劣化していく傾向があるためである。水が送られて電池内部に配置された混合粉(11)と接触するとき、混合粉(11)が活性化して電池の絶縁された正電極と負電極との間に電位差を生成し、それで電池を懐中電灯、ラジオ、及び他の電気装置の電源として用いることができる。この実施形態の特徴及び動作を以下に詳細に述べる。
【0044】
電池(1)は、
図1及び
図2(a)〜(c)に示すように対向する第1及び第2端を有する円筒形金属管(2)を含む。金属管の第1端(2a)は、ABS材料(3b)及びそこに配置された開口(3a)とを含む円盤形の第1端キャップ(3)によりシールされる。金属管(2)の第2端(2b)は、第2端キャップ(4)により取り外し可能にシールでき、第2端キャップ(4)は、金属管(2)を囲うアウターケーシング(6)の一端に位置する内側表面上の相補的ネジ山と螺合するように構成される。第1端キャップ及び第2端キャップ(3,4)は、金属管(2)の第1端及び第2端(2a,2b)の形及び大きさを実質的に補うような形にされている。第1端キャップ及び第2端キャップ(3,4)を
図1、
図4(a)〜(e)及び
図7(a)〜(e)に示す。
【0045】
第2端キャップ(4)は、ステンレス鋼等の金属性材料から形成され、金属管(2)の第2端(2b)付近のシーリング位置にねじ込まれたとき、金属管(2)及び第2端キャップ(4)が電気通信するようにする。この実施形態では、第2端キャップ(4)が取り外し可能に金属管(2)の第2端(2b)をシーリングするとき、第2端キャップ(4)は、金属管(2)を囲む鋼のアウターケーシング(6)に螺合により実際に取り付けられる。鋼のアウターケーシング(6)については以下でより詳細に述べる。第2端キャップ(4)が鋼のアウターケーシング(6)へねじ込まれたとき、第2端キャップ(4)は金属管(2)の第2端(2b)とも直接物理的に接触しており、第2端キャップ(4)と金属管(2)との間の電気通信を可能にして、第2端キャップ(4)と金属管(2)とがともに、使用中の電池の負電極を形成する。
【0046】
図2(a)〜(d)を参照すると、金属管(2)は、混合粉(11)を格納するためのチャンバ(2d)を定める内側周囲表面(2c)を含むことがわかる。6つの等間隔の溝(2e)は、金属管(2)の内側周囲表面(2c)に沿って形成され、金属管(2)の第1端と第2端(2a,2b)との間の実質的な直線路に延びる。溝(2e)は、水が自由にそこを流れて金属管(2)の第2端(2b)から第1端(2a)へ向かうことを可能にするのに適したサイズ及び大きさになるように、内側周囲表面から切削又はエッチングされる。いくつかの実施形態では、溝が形成されている金属管(2)をダイカストで鋳造することもできる。
【0047】
本発明の実施形態の電解質混合粉(11)は、二酸化マンガン、酸化鉄又は結晶性の酸化銀等の金属酸化物粉を含み、これが金属管(2)のチャンバ(2d)を実質的に充填する。好適な実施形態では、混合粉(11)は、混合粉(11)の重量パーセントでおよそのところ、塩化アンモニウム粒子3%、塩化亜鉛粒子16%、二酸化マンガン粒子68%、アセチレンカーボンブラック粒子12.4%、及び酸化亜鉛粒子0.6%含む。
【0048】
混合粉は、回転又は遊星型のボールミル及びめのう(カーネリアン)等のセラミックボールを用いてボールミルされる。テストでは、容積500mlの実験室のボールミルマシンに、重さ110g直径22.4mmのセラミック製粉砕用ボール、又は、重さ190g直径10.0mmの小さいサイズのボールを用いた。さらに、テストでは、どんな場合も150gの混合粉が粉砕された。混合粉のボールミルは、はるかに大きな製品に適合するように工業用のサイズに適宜スケールアップできることが分かるであろう。
【0049】
ボールミルの結果生じた混合粉粒子は、ナノメートルからマイクロメートルの範囲の直径を含む。好適な実施形態では、混合粉粒子の直径は約4.32マイクロメートルである。
【0050】
いくつかの実施形態では、透過性のセパレータシート(9)が金属管(2)の内側周囲表面(2c)を覆うように位置された後に、混合粉(11)がマシンにより金属管(2)のチャンバ(2d)内へ配置される。それから、チャンバ(2d)内に混合粉(11)がより均一に分布するように金属管を振ることができる。次にプランジャを用いて混合粉(11)を圧縮してもよい。これらのステップは、金属管(2)のチャンバ(2d)内の混合粉の量を最大化するのを補助するために必要であれば、1又は複数回繰り返すことができる。
【0051】
混合粉(11)は、透過性のセパレータシート(9)により、金属管(2)の内側周囲表面(2c)から実質的に物理的かつ電気的に分離される。透過性のセパレータシートは、0.08mmクラフト紙の二重層を含む。1枚のクラフト紙を2つに折ってこの目的を果たしてもよい。透過性のセパレータシート(9)の外側表面は、金属管(2)の内側周囲表面(2c)にぴったりついており、内側表面は金属管(2)内の混合粉(11)に接触する。
【0052】
透過性のセパレータシート(9)は透過性の紙からなるが、代替的な実施形態では合成又は天然のポリマー材料を用いてもよい。
【0053】
好都合なことに、透過性のセパレータシート(9)は、そこを通る液体のウィッキングを可能にして使用中の混合粉(11)と接触させることができ、スポンジ状材料の場合のように液体を過度に保つことがない。
図8に示すように、透過性のセパレータシート(9)の端部(9a)は、金属管(2)の第2端(2b)付近の混合粉(11)の領域に対して折り重ねられ、シール解除されたときに、遊離混合粉(11)が金属管(2)の第2端(2b)から漏れ出ないように補助する。
【0054】
電池(1)は、鋼接触(5a)からなる第1端とカーボンスティック(5b)からなる第2端とを有する導電性ロッド(5)も含む。カーボンスティック(5b)は、金属管(2)の第1端(2a)から実質的に金属管(2)の第2端(2b)へ向かって金属管(2)の中へ延び、混合粉(11)内に埋め込まれている。カーボンスティック(5b)と結合された鋼接触(5a)は、第1のプラスチックの端キャップ(3)の開口(3a)を介して金属管(2)の第1端(2a)の外に突出する。導電性ロッド(5)は、金属管(2)及び金属第2端キャップ(4)から絶縁されている。この実施形態の電池を組み立てる際には、鋼接触(5a)とカーボンスティック(5b)とからなる導電性ロッド(5)は、開かれた第2端(2b)から第1端(2a)の方向へ、鋼接触(5a)がプラスチックの第1端キャップ(3)の開口(3a)から突出するまで金属管(2)の中で動かされる。開口(3a)は、導電性ロッド(5)が開口(3a)を完全に貫通することは不可能なサイズになっている。
【0055】
第1端キャップ(3)の開口(3a)の直径は、金属管(2)の第1端(2a)付近の任意の遊離混合粉(11)が逃げ出るのを軽減するように、鋼接触(5a)の直径とぴったり合うように設計されている。Oリングが、シーリングのために第1端キャップ(3)と金属管(2)の第1端(2a)との間に配置される。
【0056】
電池(1)が動作中は、導電性ロッド(5)は電池(1)の正電極として機能し、そこに金属管(2)で化学反応の結果生成された正イオンが、透過性のセパレータシート(9)及び混合粉(11)を介して流れる。
【0057】
電池(1)を活性化するために、第2端キャップ(4)はねじって鋼のアウターケーシング(6)から外され、水が金属管(2)に送られて混合粉と接触できるようにする。最適な電気性能を得るためには、シール解除された電池をコップ1杯の純水又は蒸留水に少なくとも5分間沈めて、金属管のシール解除された第2端(2b)を介して、水が金属管(2)の内側周囲表面(2c)の溝(6e)の長さに実質的に沿って流れ、それから透過性のセパレータシート(9)を介して溝(6e)から流れて混合粉に接触するようにすることが好ましい。これは水が金属管(2)の内側周囲表面(2c)の溝をより完全に流れ通ることを助けることになる。ただし、この電池の実施形態が水に完全には沈められれなかった場合、金属管(2)を第2端(2b)の第2端キャップ(4)で再びシールする前に、少なくとも約1.7グラムの水をシール解除された金属管(2)の第2端(2b)にすくい入れる又は注ぐことにより混合粉(11)を活性化することが可能である。
【0058】
水は、溝(2e)から電池(1)の全長に実質的に沿って流れ、ウィッキング効果により透過性のセパレータシート(9)を通り、混合粉(11)と接触する。別の実施形態では、溝は、水が混合粉(11)と接触できる量をさらに増大させるために曲線路を含んでもよい。水が接触して浸透することができる混合粉(11)の表面領域は、混合粉(11)の上部表面のみで水を混合粉に浸透させる必要がある従来技術の水で活性化できる電池の場合よりも、相当大きいことが分かるであろう。
【0059】
第2端キャップ(4)が、金属管(2)の第2端(2b)を取り外し可能にシールするために鋼のアウターケーシング(6)に再びねじ込まれると、電池(1)は活性化されて電子装置の電源供給に使える状態になる。いくつかの実施形態では、シールされた金属管(2)の第2端(2b)の比較的小さめの空きに差し込まれたピペットを用いることにより、圧力をかけて水をチャンバ(2d)に注入することができると考えられる。しかし、金属管に水をかけるために追加のピペットが必要であることと、電池(1)に適量の水が注入されたかの判断を助けるような視覚的に指示するものがないことを考慮すると、このオプションはあまり好ましくない。
【0060】
水が混合粉(11)と接触すると、混合粉(11)は金属管(2)と化学反応を起こし、それにより、導電性ロッド(5)からなる正電極と第2端キャップ(4)と金属管(2)との組み合わせからなる負電極との間に電位差が生成される。電池(1)の正電極(すなわち導電性ロッド)と負電極(すなわち金属管及び第2端キャップ)の間に配置された透過性のセパレータシート(9)は、電池の正電極及び負電極を物理的及び電気的に分離し、さらに、化学反応の結果作り出された正イオンが、使用中の金属管(2)の負電極から正電極へ自由に流れて電位差を引き続き生成かつ維持すことを可能にする。負電極で形成された電子はしたがって負電極から負荷装置を通って流れ電池(1)の正電極へ戻ることができる。
【0061】
好適な実施形態では、金属管(2)は、金属管(2)の重量パーセントで少なくとも99%は亜鉛から形成される。金属管(2)に亜鉛材料を用いると、電池(1)内で生じるエネルギ化学反応が比較的小さくなり、このことが電池の活性化後の動作寿命を延ばす助けとなるが、これは金属管(2)の亜鉛材料が、マグネシウムの金属管を用いるような従来の電池よりも使用中に腐食にいたるまでの時間が長いからである。亜鉛の金属管(2)はさらにインジウムに浸して腐食を軽減する。代替的な実施形態では、金属管(2)はマグネシウム、アルミニウム、又はこれらの任意の組み合わせから実質的に形成することができる。しかしマグネシウムを用いて金属管(2)を形成すると、電池(1)内で比較的活発な化学反応が発生し、そのためマグネシウムの金属管(2)の消耗がより早くなり活性化後の電池(1)の動作寿命を短くしがちである。
【0062】
亜鉛の金属管(2)の使用はさらに、比較的長い活性化時の寿命を通して比較的低いがより制御された従来型の電気出力を提供し、これに比べてマグネシウムの金属管(2)の使用は比較的短い活性化時の寿命を通して比較的高い出力電力を提供する。マグネシウムの金属管の使用は非従来型の2.1Vの初期電圧を生じることもあり、この電圧は直列で用いると製品に損傷を与えかねない。典型的には、金属管(2)がマグネシウムから形成される場合、このような実施形態の使用可能な寿命は、活性化後約2〜3週間であるが、金属管(2)に亜鉛を用いた実施形態の使用可能な寿命は活性化後約6〜12か月である。本発明のさらなる代替的な実施形態では、金属管材料の腐食を遅らせる働きをする犠牲陽極を電池に含むこともできる。
【0063】
電池(1)の両端間の電位差が使用不可能なレベルまで降下すると、上述したように水を電池(1)に補充して、混合粉(11)を再活性化させ、電池(1)の正電極と負電極との間に使用可能な電位差を再び生成することができる。
【0064】
上述したように、鋼のアウターケーシング(6)が、熱による変形及び使用中に典型的に生じるその他のひずみに対し金属管(2)を補強するものとして、金属管(2)を囲っている。この実施形態では、鋼のアウターケーシング(6)はぴったり合う外側スリーブとして金属管(2)の上をスライドするように構成される。
図9に示すように、アウターケーシング(6)は、金属管及び第1端キャップがアウターケーシング(6)の端から出ることを防止するために、金属管(2)の第1端(2a)と第1端キャップ(3)の周辺エッジとに折り重ねられる。アウターケーシング(6)の反対側のネジ山(6a)が位置する端は、下記で詳しく述べるリサイクルの目的で分離する間に、金属管(2)がアウターケーシング(6)のこの端から出ることを妨げないようにするために、金属管(2)の第2端(2b)に折り重ねられていない。
【0065】
アウターケーシング(6)が金属材料の場合、アウターケーシングの内側周囲表面が金属管(2)の外側周囲表面に対してぴったりと隣接してその間の電気通信を促進するため、アウターケーシングは金属管(2)と電気通信することになる。
【0066】
アウターケーシング(6)は、
図3(c)に示す内部のネジ山(6a)を含み、これは
図4(b)〜(e)に示す第2端キャップ(4)に配置された相補的ネジ山構成(4a)と取り外し可能に係合するためのものである。第2端キャップ(4)は、外に面した表面に配置された十字形のへこみ(4d)を含み、スクリュードライバの先端、コイン又は指の爪で鋼のアウターケーシング(6)に第2端キャップ(4)をねじり入れる又はそこから外すことが可能である。第2端キャップ(4)は周辺エッジの周りに構成された畝も含み、使用者は指でこの畝をつかみ、アウターケーシング(6)から第2端キャップ(4)をねじって外すことができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、プラスチックのアウターケーシング(6)を用いてもよい。プラスチックのアウターケーシングは金属管(2)の周りにぴったり合うようにプリフォーム及び/又はモールドすることができる。プラスチックのアウターケーシング(6)が用いられる場合、確実に第2端キャップ(4)がプラスチックのアウターケーシング(6)の中へしっかりとねじ込まれて金属管(2)の第2端(2b)と接触するようにし、これらが電気的に接続されて第2端キャップ(4)及び金属管(2)が使用中の負電極として機能するようにすることが望ましい。いくつかの実施形態では、第2端キャップ(4)と金属管(2)との間に電気通信を提供するのを助けるために、プラスチックのアウターケーシング(6)のネジ山部(6a)は導電性材料で覆われる。利点は、プラスチックのアウターケーシング(6)の外側表面には、ブランドを示すマーク及び/又は他の商業的なマークを比較的容易にデボス加工及び/又は装飾加工することができることである。さらに、プラスチックのアウターケーシングは比較的重量が軽く、分解したプラスチックのアウターケーシングを新しい電池の製造に再利用するために工場に返送する際に、費用の節約になるため望ましい場合がある。
【0068】
金属のアウターケーシング(6)が用いられる場合、第2端キャップ(4)が第2端キャップ(4)と金属管(2)との間に電気通信を提供し、第2端キャップ(4)は金属管(2)と直接的に接触している必要はない。第2端キャップ(4)は依然としてしっかりねじ込まれアウターケーシング(6)と取り外し可能に係合されていなければならず、圧力が
図6a及び
図6bに示すOリング(10)にかかりOリングを実質的に静止位置に保つのを助け、Oリングが亜鉛の金属管(2)とアウターケーシング(6)の内側表面との間の隙間からの液体の漏出を軽減するようにする。
【0069】
アウターケーシングを用いない代替的な実施形態では、第2端キャップ(4)は、螺合又は任意の他の適宜の取りつけ手段により、金属管(2)の第2端(2b)へ直接取り外し可能に係合される。
【0070】
図5(a)〜(d)を参照すると、プラスチックの円形保持部材(8)が示され、この保持部材は、金属管(2)の第2端(2b)付近の電解質混合粉(11)の上部を包囲する透過性のセパレータシート(9)の折り重ね部(9a)の上に乗るように構成される。保持部材(8)は、金属管(2)の第2端(2b)の直径と同様の直径の円筒横断面を含み、金属管(2)の第2端(2b)にぴったり合うようにされる。
【0071】
保持部材(8)は、一方の面からもう一方の面へ完全に貫通する4分割された形の開口(8a)も含む。利点は、保持部材(8)は透過性のセパレータシート(9)の折り重ね部(9a)を適所に保つ補助をし、遊離混合粉(11)が金属管(2)の第2端(2b)を介して逃げ出ることを防ぐこと、及び水が保持部材(8)を通って流れ透過性のセパレータシート(9)の折り重ね部(9a)を介して混合粉(11)と接触できるようにすることである。水がシール解除された金属管(2)の第2端(2b)の中へ送られると、水は金属管(2)の長さに沿って金属管(2)の内側周囲表面(2c)の溝(2e)を介して流れ、さらに、いくらかの水が保持部材(8)の開口(8a)を通って流れ、透過性のセパレータシート(9)の折り重ね部(9a)で覆われた混合粉(11)の上部を介して混合粉(11)と接触することができる。いくつかの代替的な実施形態では、水は金属管(2)の内側周囲表面の溝(2e)に沿って流れ込む前に、まず保持部材(8)の開口(8a)を通る。
【0072】
また上述したように、保持部材(8)は別のOリング(10)と係合するように構成された3次元構成体(8b)を含む。したがって、3次元構成体は、保持部材(8)の周囲の外に面した面の周りに広がる装着部を含む。Oリング(10)は、厚さ約0.5mmで、したがって金属管(2)の第2端(2b)を取り外し可能にシールする第2端キャップ(4)の圧力により、保持部材(8)の3次元構成体(8b)に装着されたOリング(10)を押し付け平らにしてアウターケーシング(6)の内側表面にぴったり寄り添うようにさせ、金属管(2)とアウターケーシング(6)の内側表面との間の隙間を介した漏出を軽減する。
【0073】
電池(1)の動作中に、金属管(2)の腐食は金属管(2)に老廃物が蓄積する結果を生じる傾向があり、これが時の経過とともに溝(2e)を介した液体の流れを少なくとも部分的に塞ぐ可能性があることが分かるであろう。この点で、保持部材(8)の水を通過させて混合粉(11)の上部表面と接触させる能力が有益である。
【0074】
本発明の実施形態は、通常「乾燥室」と呼ばれる湿度制御された環境で組み立てられ、混合粉(11)を活性化させる水分のリスクを軽減し、したがって電池が機能しなくなるリスクを軽減する。
【0075】
実際の電池の実施形態が湿度制御された環境で組み立てられることに加え、電池の実施形態はさらに、過剰な水分が包装内に閉じ込められるリスクを軽減するために、湿度制御された環境で包装される。
【0076】
図9に示した好適な実施形態では、包装(12)は、ストリップを形成する複数の実質的に同一のコンパートメント(12a)を含む。コンパートメント(12a)のそれぞれが、第1の実施形態に従って形成された電池(1)のまわりに液密及び気密のシーリングを提供する。コンパートメント(12a)は、環境にやさしい透明プラスチック材料から形成される。コンパートメント(12a)は、例えば適宜の機械類を用いてプラスチック材料を電池(1)のまわりにヒートシールすることで形成される。
【0077】
包装(12)のコンパートメント(12a)のそれぞれは、引き裂き線(12b)に沿って引き裂くことにより互いから分離することができる。
【0078】
利点は、本発明の実施形態は、懐中電灯、ラジオ、携帯電話等の使用に適した標準的な単3、単4形電池等の物理的パラメータに応じて設計することができ、同時にこれらの装置への電源供給に適した出力性能を提供することができることである。例えば、亜鉛の金属管を含む本発明の単3形電池の実施形態は、1.7Vで4500〜5000mA短絡(最大アンペア)の電気出力を生成し、25mAの定電流ドレインはおよそ600〜700mAhに達することが確認され、この600〜700mAhの電気出力は類似のアプリケーションで使用される通常の単3形電池の電気出力に匹敵するものである。
【0079】
本発明の実施形態について、電解質混合粉のさまざまな配合を用いてテストを行い、それらが電気性能に与える影響を評価した。
【0080】
テストした実施形態で用いた第1の粉の配合は、混合粉の重量パーセントでおよそのところ、酸化マンガン60%、塩化アンモニウム3%、塩化亜鉛16%、酸化亜鉛0.6%、及びアセチレンカーボンブラック20%からなる。この電解質混合粉には比較的少量の酸化マンガン及び比較的多量のアセチレンカーボンブラックがあり、初期電圧1.62V及び最大又は短絡アンペア1.75Aで電気出力250mAhが生じた(定電流ドレイン200mA及びカットオフ電圧0.9Vに基づく)。初期電圧1.61V及び最大又は短絡アンペア2.05Aでは、電気出力254mAhが生じた。(定電流ドレイン200mA及びカットオフ電圧0.9Vに基づく)。
【0081】
テストした実施形態で用いた第2の粉の配合は、混合粉の重量パーセントでおよそのところ、酸化マンガン71%、塩化アンモニウム3%、塩化亜鉛16%、酸化亜鉛0.6%、及びアセチレンカーボンブラック9.2%からなる。この電解質混合粉には若干多い量の酸化マンガン及び若干少ない量のアセチレンカーボンブラックがあり、初期電圧1.65V及び最大又は短絡アンペア1.62Aで電気出力280mAhが生じた(定電流ドレイン200mA及びカットオフ電圧0.9Vに基づく)。初期電圧1.64V及び最大又は短絡アンペア1.53Aでは、電気出力279mAhが生じた(定電流ドレイン200mA及びカットオフ電圧0.9Vに基づく)。
【0082】
テストした実施形態で用いた第3の粉の配合は、混合粉の重量パーセントでおよそのところ、酸化マンガン68%、塩化アンモニウム3%、塩化亜鉛16%、酸化亜鉛0.6%、及びアセチレンカーボンブラック12.4%からなる。初期電圧1.75V及び最大又は短絡アンペア3.78Aで電気出力368mAhが生じた(定電流ドレイン200mA及びカットオフ電圧0.9Vに基づく)。初期電圧1.75V及び最大又は短絡アンペア3.3Aでは、電気出力375mAhが生じた(定電流ドレイン200mA及びカットオフ電圧0.9Vに基づく)。この粉の配合が、テストした本発明の実施形態のうち最良の電気性能を提供すると認められた。
【0083】
利点は、本発明の実施形態に従う液体で活性化される電池は、液体を電池の中の混合粉に加えるとき初めて活性化することを考えると、従来の電池よりも比較的長い保存可能期間を提供することである。これに対し、従来の電池は製造後すぐに劣化が始まる傾向にあり、比較的短い保管期間がたつと使用不可能になる場合がある。本明細書で述べた本発明の実施形態は保存可能期間が長いため、緊急事態での使用に特によく適しており、そのためのものであるが、このような電池の実施形態の実際の出力性能は、いくつかの従来の電池に期待される電力出力に匹敵するか又はそれより優れている場合がある。
【0084】
さらなる利点は、本発明の実施形態の機械的設計が、構成部品の容易な再利用性及びリサイクル性の提供を助けることである。例えば、第2端キャップ(4)を鋼のアウターケーシング(6)からねじって外した後、保持部材及びOリングを金属管(2)から容易に取り除くことができ、次に導電性ロッド(5)及び第1端キャップ(3)を、金属管(2)の第2端(2b)を介してアウターケーシング(6)から打ち出し、続いて透過性のセパレータシート(9)を外すことができる。金属管(2)も、金属管(2b)の第2端に折り重ねられていない鋼の外管(6)の端を介して、鋼のアウターケーシング(6)から容易に分離することができる。構成部品の分離は、手を使って手動で、自動機械を使って、又はこれらの組み合わせにより行うことができる。
【0085】
その後、アウターケーシング、第2端キャップ(4)、及び導電性ロッドを回収して工場に送返して新しい電池の製造に再利用することができ、このような部品のリサイクルにかかる時間、費用及びエネルギを負担しなくてよい。これらの再利用可能な構成部品を回収して費用効果の高い製造管轄の工場にまとめて輸送することで、さらに費用を節約することができる。
【0086】
プラスチックのアウターケーシングを用いた実施形態では、金属と比べてプラスチックの重量が比較的軽いことで、比較的長距離を輸送する場合は特に、再利用のためにアウターケーシングを工場に返送する費用をさらに軽減することができる。プラスチックのアウターケーシングは、亜鉛の金属管と係るボンディングやフュージングがないのが通常であり、これにより再利用のために工場へ返送する前に亜鉛の金属管(2)から比較的分離しやすくなるため、再利用又はリサイクルがより容易である。
【0087】
亜鉛の金属管、透過性のセパレータシート、及びプラスチックの第1端キャップは、従来の電池のリサイクルと比べて、比較的便宜的でエネルギ効率のよい方法でリサイクルすることができる。すなわち従来の電池は、まず粉砕してから溶鉱炉に入れて、さまざまな材料を異なる温度で取りださなければならない。亜鉛の金属管(2)はアウターケーシング(6)から簡単に分離することができるので粉砕する必要がない。さらに、亜鉛の金属管の融解温度は、従来の電池の金属管の融解温度よりも低い傾向にあるので、亜鉛管のリサイクルの間に使われるエネルギはより少ない。
【0088】
上で概説した利点に加え、本発明の実施形態は、電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する指令2002/95/EC(Restriction on the Use of Hazardous Substances in Electronic Equipment Directive 2002/95/EC(ROHS))の要件を満たすことがテストで確認された。したがって、電池の実施形態はROHS指令に従いリサイクル/再利用できる構成部品の割合が高いため、従来技術の電池に対する環境にやさしい代替物を提供するものと考えられる。さらに、本発明の実施形態は、電池の水銀量に関する電池指令2006/66/EC第4条1項及びEN71パート3(Article 4(1) of Directive 2006/66/EC and EN 71 Part 3)の要件を満たすことがテストで確認された。実施形態は所定の制限を超えたレベルの水銀を含んでおらず、そのため人間が安全に使用できると考えられることが確認された。
【0089】
当業者であれば、本明細書で述べた発明は、本発明の範囲から逸脱することがなければ、特に述べたもの以外にも変形及び修正が可能であることが分かるであろう。当業者には明らかなこのような変形及び修正は全て、本明細書で広く述べた発明の精神及び範囲内にあるものとすべきである。本発明は、これらの変形及び修正を全て含むものとする。本発明はさらに本明細書で言及された又は示されたステップ及び特徴を、個別に又は集合的に含み、複数の上記ステップ又は特徴の任意の及び全ての組み合わせを含む。
【0090】
本明細書で任意の従来技術を参照しても、これは、その従来技術が技術常識の一部をなすことを認めるもの又はそれを何らかの形で示唆するものではなく、またそう解釈すべきではない。