【実施例1】
【0018】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。
まず符号1は、本発明を適用する一例としての舗装材切断装置であって、このものは、舗装面Pに作用し、切削溝Psを形成する。なお装置の名称としては、切断装置としたが切削溝等を加工する場合もあり、必ずしも切断しない場合も生ずるが装置名称として慣用されていることから、舗装材切断装置1とする。このものの概略は、まず本体ボディ10に対し車輪装置2が設けられ、適宜エンジン駆動あるいは作業者の押し引きによる移動が可能となっている。そして、本体ボディ10内にカッター装置3や車輪装置2を駆動する内燃機関を適用したエンジン4を具える。
本発明は、このエンジン4の冷却を行う装置に関するものである。
【0019】
以下、更に舗装材切断装置1について具体的に説明する。
まず本体ボディ10は、シャーシフレーム100に対し、内部機構を覆うカバーパネル11が設けられ、この内部にエンジン4や、エンジン4から前記カッター装置3への駆動系統の諸装置や、エンジンの冷却を行う装置や、操作伝達系の諸装置が設けられている。また本体ボディ10の前方に伸びるように倒伏自在のゲージロッド12を具えるものであり、このゲージロッド12は、先端にゲージ片121と舗装面P上を円滑に移動させるためのローラ122を具えている。
また本体ボディ10には、その後方に延びる進行操作ハンドル13が具えられるとともに昇降操作ハンドル14を具える。
【0020】
次にこの本体ボディ10の下方に設けられる車輪装置2について説明する。
車輪装置2としては、装置後方に主輪21が設けられる。なお以下、本実施例では、作業者が前記進行操作ハンドル13を操舵した状態で舗装材切断装置1を押し進めるものであり、その移動方向を前方と定義する。この主輪21は、自由転動するものであってもよいし、適宜操作の負荷等を考慮して駆動されるものであってもよい。なお駆動にあたってはエンジン4により駆動される油圧ポンプでHST装置を駆動し、車輪の速度調整、正逆転を行うようにすることが好ましい。
更に主輪21の前方には、副輪22が設けられる。この副輪22は、副輪アーム23の先端に設けられるとともに、副輪アーム23の基部はアームピボット231において支持され、図示を省略するが、アームピボット231から延長するリンク部材等が副輪アーム23を一定角度回動させ、本体ボディ10を前上がり状態からほぼ水平状態の適宜の角度になるように設定できるものである。なおこの設定操作は、前記昇降操作ハンドル14により行われる。
因みに通常の舗装面Pの切断作業を行う際には、本体ボディ10はその下面をほぼ水平にした状態で作業がなされる。
【0021】
次にカッター装置3について説明する。
カッター装置3は、カッターブレード30を主要部材とするものであり、このものは本体ボディ10の下面に取り付けられた軸受31によって支持される主軸32の外端部に取り付けられている。この主軸32に対して、エンジン4から回転が伝達され、カッターブレード30が回転駆動される。
【0022】
以下カッターブレード30の駆動源となるエンジン4、並びにエンジン4の出力を伝達するカッター駆動系装置5、更にはエンジン4の冷却系装置6を説明する。
まず符号40は、エンジン本体であって、このものは、本体ボディ10のシャーシフレーム100に搭載するにあたり、クランク軸を前記舗装材切断装置1の移動方向に対し、直交するように配置して搭載される。即ちエンジン4は、いわゆる横置きされた状態となる。そして、このエンジン本体40は、その出力端としてフライホイール401を具えるものであり、このフライホイール401は一例として、前記カッターブレード30と反対の側面に設けられている。このエンジン4は、そのエンジンブロック402がアダプタ状のエンジンベース41を介して、シャーシ110に搭載される。エンジンベース41は、適宜の位置にシャーシ110に搭載するためのマウントブラケット410を具える。そしてシャーシ110とマウントブラケット410とは、ラバーブッシュ411を介して本体ボディ10に緩衝的に取り付けられている。
もちろんエンジンベース41とエンジンブロック402とは、適宜固定ボルトにより固定されるものであり、エンジンベース41はいわばエンジンブロック402と一体的になったものである。
【0023】
更に前記エンジン本体40のフライホイール401には、出力軸42が固定状態に接続される。即ち出力軸42は、フランジ421と軸状のプーリーシャフト422とを具えるものであり、前記フランジ421の部位をフライホイール401の外面にあわせてボルト等による固定がなされる。結果的に出力軸42は、フライホイール401から張り出すように設けられる。この出力軸42におけるプーリーシャフト422に対して外嵌されるように出力プーリー43がキー構造により回転方向への固定がなされた状態で設けられるものである。
この出力プーリー43の外周部には、プーリー溝が設けられており、このプーリー溝としては、ブレードプーリー溝431と、補機系プーリー溝432とを具える。即ち、ブレードプーリー溝431は、カッターブレード30を駆動するためのベルトを捲回させる溝であり、一方補機系プーリー溝432は、例えば本装置を自動走行させる場合にHST機構のオイルポンプを駆動したり、更には切削粉の回収用のバキュームポンプを駆動するためのベルトを捲回させるものである。
【0024】
このような出力軸42と出力プーリー43との支持構造として、サポートブラケット44を具える。
即ちサポートブラケット44は、前記出力軸42の先端側(自由端側)を支持するものであって、ブラケットステー441とベアリングケースホルダー442を具える。このブラケットステー441は、前記エンジンベース41と一体に形成されるものであって、エンジンベース41から出力軸42の突出方向と同じ向きに平行する状態で突出形成されている。
そしてブラケットステー441の先端部の端面にはメネジ441aが形成され、この部位を利用して前記ベアリングケースホルダー442が締付ボルト444により固定される。このような構成の結果、サポートブラケット44は、全体としてエンジンブロック402に対して固定状態に設けられている形態を採る。
【0025】
更にこのベアリングケースホルダー442は、その先端に円孔状のベアリングスペース442aを設けるとともに、基端側に前記441aに対応したボルト孔442bを具える。このベアリングケースホルダー442に対して出力軸42がベアリング45によって支持される。この支持状態は、まずベアリング45を支持するベアリングケース451が、前記サポートブラケット44におけるベアリングケースホルダー442のベアリングスペース442aに嵌め込まれるようにして取り付けられる。その取り付けにあたっては、ベアリングケースホルダー442のベアリングスペース442a内にOリング溝442cを形成し、ここにOリング453を内嵌めするようにしてベアリングケース451をフローティング支持するような状態に保持する。そして、適宜のスペーサ454を介して軸止ボルト455によって前記出力軸42の端部を固定する。一方、前記ベアリングケース451の外側面には、ベアリングケースストッパー456をあてがい、両者をボルト締めすることによりベアリングケース451とベアリングケースストッパー456とによって、サポートブラケット44におけるベアリングケースホルダー442を挟み込むようにして固定する。この結果出力軸42は、サポートブラケット44に対して先端で支持され、フライホイール401側と、先端との両端支持状態となる。一方これをサポートブラケット44による支持態様として見ると、
図5に示すようにサポートブラケット44は、出力軸42をあたかも片持ち状態で支持している。そしてベアリングケースホルダー442を支持するブラケットステー441は、出力軸42に対し、カッター駆動系装置5のカッター駆動軸50側に配設された形態を採る。一方、ブラケットステー441の反対側は、ベアリングケースホルダー442を支持する部材はない。
なおこの実施例では、サポートブラケットステー441とベアリングケースホルダー442との2部材が組み合わされているが、これらは一体部材として構成されていてももとより差し支えない。
【0026】
次に出力軸42並びに出力プーリー43により駆動されるカッター駆動系装置5について説明する。
まず符号50は、カッター駆動軸であり、このものは、前記本体ボディ10の下面に幅方向に伸びるように配設された主軸32に対して動力を伝達する部材であり、適宜変速機構等を介して、主軸32に対して動力を伝達している。もちろん変速機を介さないで動力伝達がされる場合もある。
一方カッター駆動軸50に対しては、カッター駆動ベルト51からエンジン4の回転が伝達されるものであって、カッター駆動ベルト51は、前記出力軸42に取り付けられた出力プーリー43からテンションプーリー52及びカッター駆動軸50に設けられた従動プーリー53、ガイドプーリー54を通るように無端状に捲回されているものである。なお特許請求の範囲において、カッター駆動ベルト51について「無端帯」としたのは、チェーン駆動等の手法が考慮しうるものであるからである。必ずしもエンジン回転駆動は、ベルト駆動に限定されるものではない。
【0027】
次に本発明に係るエンジン4の冷却系装置6について説明する。この冷却系装置6は、
図1、3、6、7、8、9に示すようにラジエタースタンド60を支持部材とし
、ラジエター本体61、ラジエターファン63、ファンプーリー64、ファンブラケット65を主要部材として構成される。
まずラジエタースタンド60は、ラジエター本体61とシュラウド62を支持するものであって、枠本体601に対し、本体ボディ10のシャーシフレーム100に取り付けるためのフレーム取り付けブラケット602を突出させるとともに、前方にラジエター保持ブラケット603を設ける。
なおラジエター保持ブラケット603は、下部の部材は、受け板部材状となっており、これを符号603aとして示す、また上部はラジエター平面方向に見て、ラジエターを取り付けるためのボルト穴を具えた平板状の部材であり、この上部のラジエター保持ブラケットを符号603bで示す。
【0028】
更に枠本体601には、シュラウドガイド604を設けるものであって、下部シュラウドガイド604aと上部シュラウドガイド604bとで構成される。そしてそれぞれのシュラウドガイド604は、一例としてアングル断面を有する部材であって、長ボルト孔604cを枠本体601
への取り付け面に具え、枠本体601
との間にシュラウドを挟み込む適切な間隔が得られるよう構成されている。なお符号604dは、それらの固定ボルトである。
このシュラウドガイド604の垂直部位には、更にプランジャボルト604eが捻じ込まれるものであり、この捻じ込まれるボルト孔を調整ボルト孔604fとする。なお上部シュラウドガイド604bは、エンジン4のエアクリーナーを支持するクリーナーブラケット604gを一体に支持している。
【0029】
更に枠本体601には、シュラウド側にシュラウド面板605を設けるものであって、このものは、一例として幾分か横幅が長い長円状のシュラウド開口605aを具える。更にこのシュラウド面板605の前方には、導流ブレード606を配設する。この導流ブレード606は、複数の金属板状部材がほぼS字状に曲成されたものが組み合わされて、全体として渦巻状になるような形状に構成されている。この導流ブレード606の中心部である基部606aは、基部支持板606bにより収束状態に固定されており、一方の導流ブレード606の先端606Cは、枠本体601の内側周面近くに延び、シュラウド面板605に溶接固定される。そして導流ブレード606は、その先端部606cにおいてその幅寸法が幾分か小さくなるよう形成されている。なお導流ブレード606は、後述するラジエターファン63による冷却風の送風を受けて、その冷却風を満遍なくラジエター本体61に導く作用をしている。
【0030】
次にラジエター本体61について説明する。このラジエター本体61は、常法に従った構成を採るものであり、中央部にラジエターコア611を設け、その上方にアッパータンク612を設け、その下方にロアタンク613を設ける。これらアッパータンク612、ロアタンク613からラジエターホースがエンジン4に連なり、常法に従い冷却水の循環がなされるものであり、一般的構造であるので詳細な説明は省略する。
そしてラジエタースタンド60に対して、取り付けるにあたっては枠本体601との緩衝的な支持や、冷却風の漏れを防ぐためにパッキン614を介在させる。
【0031】
次にシュラウド62について説明する。このものは、ファンネル部621に対し、フランジ部622を有するものであって、このファンネル部621は、ラジエターファン63がほぼ密に入るような円形形状を採る。そしてフランジ部622の上下端縁をスライド縁622aとするものであり、このものは、前記ラジエタースタンド60とシュラウドガイド604との間に摺動自在に嵌まり込み、シュラウド62がラジエタースタンド60に対して左右方向に移動できるような構成をとっている。そのための機構としてシュラウド62には、シフト受けアーム622bを一方の側縁に設けている。
【0032】
次にラジエターファン63について説明する。
ラジエターファン63は、ファンブレード631とファンボス632とを具える樹脂性の部材であり、一例としてファンブレード631は、7枚羽根の形態を採る。このファンボス632に対し、ファンプーリー64が固定され、ラジエターファン63の回転駆動を行う。なおこのものは、ファンボス632に対し、プーリーベアリング642を中心部に嵌め込み、更にプーリーシャフト643を後方に突出させてファンブラケット側にこのプーリーを固定するようにしている。即ちプーリーシャフト643は、後方にメネジロッド643aを突出させるとともに、ここに固定ナット643bを嵌め込んでファンブラケット65に固定する。
【0033】
次にファンブラケット65について説明する。
このファンブラケット65は、前記ファンプーリー64のプーリーシャフト643のメネジロッド643aを支持する部材であって、ファンブラケット本体651が本体ボディ10のシャーシフレーム100に固定される。ファンブラケット本体651は、フレームに取り付けるためのフレーム取付部652を具えるとともに、そこから水平に伸びるようにファン支持板653を具える。このファン支持板653は、長穴状の調整孔653aを具えるとともに、端面にテンションボルト孔653bを設け、ここにアジャストボルト653cが嵌まるように構成されている。
【0034】
このようなファンブラケット本体651に対し、可動ファンブラケット654が支持される。即ち可動ファンブラケット654は、前記ファン支持板654aに支承されながら、左右方向に取り付け位置が調整できるものであって、その中央部にシャフト受け孔654aを開口させる。更にその側傍にガイド突起654bを具えるものであり、このものは、前記調整孔653aに嵌まり込み、可動ファンブラケット654の左右方向への移動を確実にしているものである。更に、可動ファンブラケット654の端面にはアジャストメネジ654cが設けられるものであり、このアジャストメネジ654cは、アジャストボルト653cの捻じ込みにより前記可動ファンブラケット654を左右にずらすような作用を行う。
即ちこの機構は、ラジエターファン63を伴ったファンプーリー64を左右にスライドさせ、実質的にはファンベルト644のテンションを調整する作用を行う。
【0035】
そして
本発明では、前記シュラウド62は、ラジエターファン63の外径とほぼ密なファンネル部621の寸法を有しているから、ラジエターファン63の左右へのテンション調整に伴う動きに対しては、これに追従しない限りは、ファンブレード631とファンネル部621との干渉接触のおそれがある。そのためこの
本発明では、前記可動ファンブラケット654に対し、シュラウドシフトロッド655を突出形成させ、この先端部と前記シュラウド62におけるシフト受けアーム622bとを適宜のスペーサ655aを介して接続している。
この構成により、前記ラジエターファン63を伴ってファンプーリー64を左右に移動させてファンベルト644の調整を行った結果、ラジエターファン63の位置がずれたとしても、これに伴って、シュラウド62も共に移動できるように構成されている。
因みに従来のファンブレードとシュラウドとは、相互の干渉接触を回避するためにシュラウドの開口は円形ではなく横に拡がったやや長円形状を呈していた。その結果ラジエターファンが生起する冷却風の漏洩は避けられなかった。
【0036】
本発明を適用した舗装材切断装置1は、以上述べたような構成を具えるものであり、以下このものによる舗装材の切断態様について説明する。
まず切断の概要について説明すると、適宜エンジン4を起動してカッターブレード30に常法に従い回転を伝達する。このような回転起動がなされた後、このカッターブレード30を舗装面Pに作用させ、適宜切削溝Psを形成してゆく。
≪駆動機構の作動≫
【0037】
このとき、本発明を適用する舗装材切断装置1の上記実施例にあってはエンジン4の出力軸42は、その自由端側がサポートブラケット44におけるベアリング45によって支持される。この構成によりベアリング45で支持された部位より内側、即ちサポートブラケット44におけるベアリングケースホルダー442と、フライホイール401との間に、出力プーリー43が設けられることとなる。結果的にクランクシャフト長が大きくなって、フライホイールの位置が従来の小型エンジンより側方に張り出したとしても、片持ち状としていた従来型のベアリングないしはベアリングホルダが存在しないから出力プーリー43は、フライホイール401の至近位置に設定でき、その結果全体として横幅を広げることなく、出力プーリーが配設し得る。
そして、出力軸42は、いわばフライホイール401側での強固な支持と、その自由端側での支持のため、いわば両持ち支持されたような形態となっており、大型のエンジン4により高出力を受けたとしても、これをバランスよく支持することができる。特に駆動にあたっては、カッター駆動ベルト51は、カッター駆動系装置5のテンションプーリー52側に引かれるような負荷となるが、その方向にサポートブラケット44におけるベアリングケースホルダー442が基部を具えているから、その出力を有効に支承することができる。
またこのレイアウトは、サポートブラケット44が片持ち状に出力軸42の自由端を支持しており、出力軸42周りにおいてこれを覆うような部材を少なく抑えている。結果的に、周辺機器へのメンテナンスや、カッター駆動ベルト51等の交換作業等も容易に行い得る。
なおこの補機系プーリー溝432は、ここに補機用ベルトが捲回されて、HTSやバキュームポンプの駆動がなされている。
≪冷却系装置作動≫
【0038】
この状態でエンジン4の運転を行った場合、当然エンジン4冷却のための冷却水の安定的な作動を冷却系装置6によって行わなければならない。
本発明にあっては、まず一例としてラジエタースタンド60を利用して導流ブレード606を設けてあり、このものの作用によりラジエターファン63により生起させた冷却風は、特にファンボス632の影響で通常は、冷却風が行き渡らない中心部にも充分導かれる。結果的にラジエターコア611全体に冷却風が案内される。特に冷却風を案内するにあたってのシュラウド62は、ファンネル部621の外周至近位置を囲んでおり、無用な隙間がないから有効にラジエターファン63が冷却風を送り出すことができる。
そしてラジエターファン63を伴ってファンプーリー64を移動させてファンベルト644のテンション調整を行う場合、ラジエターファン63の位置がずれることになるがこれに対応し次のような作動がなされる。即ちファンブラケット65の可動ファンブラケット654が移動するが、これに伴い、これと連設されているシュラウドシフトロッド655が前記シュラウド62を移動させるような作用を行う。この結果、ラジエターファン63の移動に応動してシュラウド62も移動するものであり、結果的にシュラウド62の開口形態を横移動を許容するような長円形状にする必要がなく、効果的に冷却風をラジエター本体61に吹き込むことができる。