(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の誘電基板上にアンテナエレメントをパターン形成した後これを積層するアンテナ装置では、生産設備が過大で、製造コストが高くなるという問題点があった。また、従来のアンテナ装置では、必然的にアンテナエレメントは平面的な構造となり、また外部に露出した構成となるため、良好なアンテナ特性を得ることが困難であるという問題点があった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、製造効率の向上を図ることができ、しかも特性の向上を図ることができるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、第1の観点からは、
導電性金属板をメアンダ形状に形成してなる第1のアンテナエレメント及び第2のアンテナエレメントと、
前記第1のアンテナエレメント及び第2のアンテナエレメントを封止する封止材とを有し、
前記第1のアンテナエレメント及び第2のアンテナエレメントを平行に配置し、前記封止材内にインサート成形により埋設したアンテナ装置であって、
前記第1のアンテナエレメント及び前記第2のアンテナエレメントは、前記第1のアンテナエレメントと前記第2のアンテナエレメントの離間距離を一定に保持する離間保持部材を有することを特徴とするアンテナ装置により解決することができる。
【発明の効果】
【0008】
開示のアンテナ装置によれば、インサート成型を行うことにより製造効率の向上を図ることができ、しかも第1及び第2のアンテナエレメントは高誘電材料からなる封止材内に埋設されるためアンテナ特性の向上を図りうるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態であるアンテナ装置10を示している。本実施形態に係るアンテナ装置10は、二つの周波数帯域で動作する2共振アンテナ装置である。このアンテナ装置10は、例えば携帯電話機等の携帯端末装置に搭載されるものである。
【0012】
アンテナ装置10は、第1のアンテナエレメント11、第2のアンテナエレメント12、及び封止材13等により構成されている。
【0013】
第1及び第2のアンテナエレメント11,12は、導電性金属板をプレス打加工等を用いて一体的に形成したものである。本実施形態では、上部に位置する第1のアンテナエレメント11はGPS用アンテナであり、下部に位置する第2のアンテナエレメント12はブルートゥース(登録商標)用アンテナである。
【0014】
また本実施形態では、第1のアンテナエレメント11と第2のアンテナエレメント12は同一形状とされている。しかしながら、各アンテナエレメント11,12は必ずしも同一形状とする必要はなく、後述するように容量性カップリングが可能であれば異なる形状とすることも可能である。
【0015】
また、後述するように第1のアンテナエレメント11と第2のアンテナエレメント12の離間距離が所定値となるように高精度に位置決めする必要がある。このため第1のアンテナエレメント11と第2のアンテナエレメント12との間には連結部16を一体的に形成している。この連結部16により、第1のアンテナエレメント11と第2のアンテナエレメント12の離間距離を一定に保つことができる。
【0016】
上記の課題は、第1の観点からは、
導電性金属板をメアンダ形状に形成してなる第1のアンテナエレメント及び第2のアンテナエレメントと、
前記第1のアンテナエレメント及び
前記第2のアンテナエレメントを封止する封止材とを有し、
前記第1のアンテナエレメント及び
前記第2のアンテナエレメントを平行に配置し、前記封止材内にインサート成形により埋設したアンテナ装置であって、
前記第1のアンテナエレメント
と前記第2のアンテナエレメント
との間に、
前記第1のアンテナエレメントと前記第2のアンテナエレメントとを連結し、前記第1のアンテナエレメントと前記第2のアンテナエレメントの離間距離を一定に保持する
導電性金属板よりなる離間保持部材を
一体的に形成したことを特徴とするアンテナ装置により解決することができる。
【0017】
また、第1及び第2のアンテナエレメント11,12は、
図2に拡大して示すように、メアンダ部11A,12A、給電端子部11B,12B、及び連結部16を一体的に形成している。メアンダ部11A,12Aは、ジグザグのパターンとされた部分である。このように、メアンダ部11A,12Aを形成することにより、アンテナの実質的な長さを長くしつつ、小形化を図ることができる。本実施形態では、アンテナ装置10の外形の大きさを3mm×10mm×3.5mmとすることができた。
【0018】
給電端子部11B,12Bはメアンダ部11A,12Aの端部に側方に延出するよう形成されている。
図1に示すように、給電端子部11B,12Bは封止材13の外部に延出する部位である。この給電端子部11B,12Bは、携帯端末装置内の電子回路に接続される。尚、本実施形態では、第1及び第2のアンテナエレメント11,12の幅は0.5mm〜2.0mmとしている。
【0019】
封止材13は、高誘電樹脂材料により形成されている。この本実施形態で使用している高誘電樹脂材料は、例えば液晶ポリマー樹脂(LCP樹脂)に所定のQ値や比誘電率を有するセラミック粉末を添加することにより高誘電特性を調整したものである。このように、封止材13を高誘電樹脂材料とすることにより、波長短縮効果によりアンテナ装置10の小形化を図ることができる。
【0020】
この封止材13の比誘電率は、例えば4以上30以下が望ましい。封止材13の比誘電率をこの範囲に設定することにより、封止材13のアンテナ特性を低下することなく小形化を図ることができる。即ち,比誘電率が4未満になると封止材13の形状を有効に小さくすることが困難となり、逆に比誘電率が30を超えると共振周波数帯域が狭くなりアンテナ特性が低下してしまう。
【0021】
尚、本実施形態では封止材13が樹脂材にセラミック粉末を添加した構成を例示したが、封止材13の材質はこれに限定されるものではない。上記の比誘電率が実現できる材料であれば、セラミック単体及び樹脂単体からなる封止材を用いることも可能である。
【0022】
上記した第1及び第2のアンテナエレメント11,12は、インサート成型により封止材13内に埋設される。
図3は、第1及び第2のアンテナエレメント11,12を封止材13内にインサート成型する際に使用する金型20を示している。
【0023】
金型20は、上型21と下型22とにより構成されている。上型21には図示しないプランジャーが装着されるポット28が設けられている。上型21は、基台26の上部にホルダベース27が設けられている。ホルダベース27の中央部にはダイブロック23が装着されており、このダイブロック23にはアンテナ装置10の形状に対応したキャビティ24が形成されている。
【0024】
本実施形態では、ダイブロック23に4個のキャビティ24が形成されている。各キャビティ24はランナ25により接続されており、上型21と下型22を組み合わせた状態において、ポット28はランナ25に接続する。尚、位置決め支柱29は、上型21と下型22の位置決めを行うための部材である。
【0025】
インサート成型を行うには、先ず第1及び第2のアンテナエレメント11,12をキャビティ24内に装着する。この際、第1のアンテナエレメント11と第2のアンテナエレメント12はキャビティ24内で平行となるよう装着される。また、各アンテナエレメント11,12は、キャビティ24に装着された状態で、キャビティ24の内壁から離間するよう金型20に取り付けられる。
【0026】
上記のように第1及び第2のアンテナエレメント11,12がダイブロック23に装着されると、上型21は下型22に装着される。続いて、ポット28に封止材13となる高誘電樹脂材料が装填されると共に図示しないプランジャーにより樹脂は加圧され、ランナ25を介して各キャビティ24に導入される。これにより、封止材13の内部に第1及び第2のアンテナエレメント11,12が埋設されたアンテナ装置10が製造される。
【0027】
この際、第1のアンテナエレメント11と第2のアンテナエレメント12は連結部16で連結されているため、キャビティ24内に樹脂が充填しても、各アンテナエレメント11,12の離間距離を所定値に保つことができる。
【0028】
上記のように、アンテナ装置10はインサート成型法を用いて製造されるため、従来のように基板を積層したりアンテナエレメントをパターン形成したりする方法に比べ、製造設備は少なくて済み、また製造工程も簡単化するため、製造効率の向上及び製造コストの低減を図ることができる。
【0029】
尚、
図4は、各アンテナエレメント14,15の離間距離を所定値に保つ変形例を示している。この変形例では、各アンテナエレメント14,15に脚部14C,15Cを形成した構成としている。この脚部14C,15Cの長さに差を設けておくことにより、各アンテナエレメント14,15の離間距離を所定値に保つことが可能となる。
【0030】
この
図4に示す変形例では、第1のアンテナエレメント14にはメアンダ部14Aの端部に一本の脚部14Cのみが設けられた構成とされており、この脚部14Cの下端に給電端子部14Bが形成された構成とされている。また、第2のアンテナエレメント15は、メアンダ部15Aの両端に脚部15Cが設けられており、その一方の脚部15Cに給電端子部15Bが一体的に形成された構成とされている。
【0031】
次に、上記のように製造されたアンテナ装置10の構造に注目する。前記のように第1のアンテナエレメント11と第2のアンテナエレメント12は封止材13内で平行状態を維持した状態となっている。また、この一対のアンテナエレメント11,12の間には、高誘電率を有した封止材13が介在した構成となっている。
【0032】
よって、この一対のアンテナエレメント11,12は、封止材13を介して容量性カップリングされた状態となる。本実施形態に係るアンテナ装置10は、この一対のアンテナエレメント11,12間に発生する容量性キャパシタを利用して二つの周波数帯域で動作するアンテナ装置を実現している。
【0033】
即ち、二つのメアンダ形状のアンテナエレメント11,12の距離を変化させることで、結合容量も変化する。この結合容量と距離との関係を利用して、本実施形態に係るアンテナ装置10では、任意の周波数でインピーダンス調整を行っている。
【0034】
図5は、本実施形態に係るアンテナ装置10のVSWR特性を示している。同図に示すように、アンテナ装置10のGPS帯(約1575MHz)においてVSWRは0.2となっており、またブルートゥース帯(約2400MHz)においてVSWRは2.5となっている。よって、小型アンテナ装置として、良好な性能であることが実証された。
【0035】
一方、
図6はアンテナ装置10の指向性特性を示している。測定方法としはて、同図(G)に示すように、所定形状(例えば、携帯電話に用いられる一般的な基板形状)の基板30にアンテナ装置10を実装し指向性の評価を行った。
【0036】
図6は、
図1に示したアンテナ装置10について、アンテナ利得及び放射指向性を測定した結果を示している。また、本測定では二つの伝播周波数について測定している。具体的には特性を測定する周波数として、GPSの周波数に対応する第1の周波数(周波数1)と、ブルートゥースに対応する第2の周波数(周波数2)を設定した。
図6(A),(B),(C)は周波数1のX−Y面、Y−Z面、X−Z面の夫々の特性を示し、
図6(D),(E),(F)は周波数2のX−Y面、Y−Z面、X−Z面の夫々の特性を示している(X,Y,Zの方向は
図6(G)参照)。また、いずれの指向性特性測定においても、垂直偏波成分と水平偏波成分を測定することとした。
【0037】
先ず、周波数1の特性に注目すると、X−Y面では垂直偏波の利得が低いものの、水平偏波においては高い利得を有すると共に無指向性であることが分かった。また、Y−Z面及びX−Z面では、垂直偏波及び水平偏波の双方において高利得で無指向性であることが分かった。
【0038】
また、周波数2の特性も周波数1と同様の特性を示し、X−Y面では垂直偏波の利得が低いものの水平偏波においては高い利得を有すると共に無指向性を有し、Y−Z面及びX−Z面では垂直偏波及び水平偏波の双方において高利得で無指向性であることが分かった。
【0039】
従って
図6に示す結果より、本実施形態に係るアンテナ装置10は高利得で無指向性に優れたアンテナであることが立証された。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。