(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記超音波伝達ユニットが前記所定の共振周波数で振動する前記状態において、前記基端側当接部及び前記先端側当接部は、前記超音波振動の腹位置及び節位置とは異なる位置に位置し、
前記超音波伝達ユニットが前記所定の共振周波数で振動する前記状態において前記凸部の前記突出端部と前記凹部の前記底部との間に位置する腹位置である基準腹位置は、前記超音波振動の前記腹位置の中で前記基端側当接部及び前記先端側当接部に最も近い近設腹位置である、
請求項1の超音波伝達ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について
図1乃至
図12を参照して説明する。
図1は、本実施形態の超音波処置装置1を示す図である。
図1に示すように、超音波処置装置1は、長手軸Cを有する。ここで、長手軸Cに平行な2方向の一方を先端方向(
図1の矢印C1の方向)とし、先端方向と反対方向を基端方向(
図1の矢印C2の方向)とする。超音波処置装置1は、振動子ケース2と、振動子ケース2の内部から先端方向に向かって長手軸Cに沿って延設される超音波伝達ユニット3と、を備える。
【0012】
振動子ケース2の基端には、ケーブル5の一端が接続されている。ケーブル5の他端は、電源ユニット6に接続されている。電源ユニット6は、電流供給部7と、入力部9とを備える。
【0013】
図2は、振動子ケース2の内部構成を示す図である。
図3及び
図4は、超音波伝達ユニット3の構成を示す図である。
図2乃至
図4に示すように、超音波伝達ユニット3には、電流を超音波振動に変換する複数の圧電素子11A〜11Cを備える振動発生部である超音波振動子12が設けられている。超音波振動子12は、振動子ケース2の内部に設けられている。超音波振動子12には、電気配線13A,13Bの一端が接続されている。電気配線13A,13Bは、ケーブル5の内部を通って、他端が電源ユニット6の電流供給部7に接続されている。電流供給部7から電気配線13A,13Bを介して超音波振動子12に電流を供給することにより、超音波振動子12で超音波振動が発生する。
【0014】
超音波伝達ユニット3は、超音波振動子12から超音波振動が伝達される基端側伝達部材15を備える。基端側伝達部材15は、超音波振動子12が装着される棒状部16と、棒状部16の先端方向側に連続するホーン17と、を備える。棒状部16には、圧電素子11A〜11C等によって構成される超音波振動子12が挿通される。そして、挿通された超音波振動子12は、棒状部16に固定される。これにより、基端側伝達部材15に超音波振動子12が取付けられる。また、ホーン17は、振動子ケース2に取付けられている。ホーン17により、超音波振動の振幅が拡大される。
【0015】
超音波伝達ユニット3は、基端側伝達部材15から超音波振動が伝達される先端側伝達部材21を備える。先端側伝達部材21は、例えば超音波プローブである。先端側伝達部材21は、基端側伝達部材15の先端方向側に取付けられる。超音波振動子12で発生した超音波振動は、先端側伝達部材21の先端まで、基端方向から先端方向へ伝達される。なお、超音波振動は、振動方向及び伝達方向が長手軸Cに対して平行な縦振動である。
【0016】
超音波伝達ユニット3は、超音波振動の腹位置(例えばA1〜A3)及び節位置(例えばN1,N2)を有する。超音波伝達ユニット3の基端(超音波振動子12の基端)には、腹位置A1が位置している。また、超音波伝達ユニット3の先端(先端側伝達部材21の先端)には、腹位置A3が位置している。したがって、長手軸Cに平行な方向についての超音波伝達ユニット3の寸法は、超音波振動の半波長の整数倍に等しい寸法となる。これにより、基端方向から先端方向へ超音波振動を伝達する状態において、超音波伝達ユニット3は、所定の共振周波数f0で振動する
先端側伝達部材21は、先端側部材本体22と、先端側部材本体22の基端に設けられる先端側当接部23と、を備える。先端側当接部23は、長手軸Cに垂直な平面状に、形成されている。また、先端側当接部23は、先端側伝達部材21と基端側伝達部材15とが接続された状態において、超音波振動の腹位置(A1〜A3)及び節位置(N1,N2)とは異なる中途位置Mに、位置している。
【0017】
また、先端側伝達部材21は、先端側当接部23から基端方向に向かって突出する凸部25を備える。凸部25は、先端側伝達部材21の基端に位置する突出端部27を備える。突出端部27は、先端側当接部23から基端方向へ突出寸法Lだけ離れて位置している。凸部25の外周部には、雄ネジ部28が設けられている。
【0018】
基端側伝達部材15は、基端側部材本体31と、先端側当接部23と当接する基端側当接部32と、を備える。基端側当接部32は、基端側伝達部材15の先端(基端側部材本体31の先端)に設けられ、長手軸Cに垂直な平面状に形成されている。また、基端側当接部32は、先端側伝達部材21と基端側伝達部材15とが接続された状態において、先端側当接部23と当接しているため、超音波振動の腹位置(A1〜A3)及び節位置(N1,N2)とは異なる中途位置Mに、位置している。基端側当接部32及び先端側当接部23を介して、基端側伝達部材15から先端側伝達部材21に超音波振動が伝達される。
【0019】
基端側伝達部材15は、基端側当接部32から基端方向に向かって凹む凹部33を備える。凹部33は、側部35と、底部36と、を備える。凹部33の側部35に、雌ネジ部37が形成されている。凸部25の雄ネジ部28が雌ネジ部37と螺合することにより、凸部25が凹部33と係合する。これにより、基端側伝達部材15に先端側伝達部材21が取付けられる。
【0020】
凹部33の底部36は、基端側当接部32から凸部25の突出寸法L以上の凹み寸法Tだけ基端方向に離れて、位置している。凹み寸法Tは、基端側伝達部材15のヤング率Eに対応した大きさに設定されている。前述のように凸部25の突出寸法L及び凹部33の凹み寸法Tが設定されることにより、長手軸Cに平行な方向について凸部25の突出端部27と凹部33の底部36との間の間寸法(空間寸法)Dが規定される。超音波伝達ユニット3が所定の共振周波数f0で振動する状態に、間寸法Dの大きさが設定されている。間寸法Dがゼロでない場合、凸部25の突出端部27と凹部33の底部36との間に空洞部(空間部)39が形成される。
【0021】
凸部25の突出端部27、凹部33の底部36、又は、突出端部27と底部36との間(すなわち空洞部39)に、超音波振動の腹位置(A1〜A3)の1つである基準腹位置A2が、位置している。すなわち、基準腹位置A2は、基端側当接部32より基端方向側に位置している。基準腹位置A2は、腹位置(A1〜A3)の中で中途位置Mに最も近い近設腹位置である。
【0022】
次に、超音波伝達ユニット3の製造方法について説明する。
図5は、超音波伝達ユニット3の製造方法を説明する図である。
図5に示すように、超音波伝達ユニット3の製造においては、振動発生部である超音波振動子12が形成される(ステップS101)。また、超音波振動子12の形成と並行して、基端側伝達部材15が形成され(ステップS102)、先端側伝達部材(超音波プローブ)21が形成される(ステップS103)。そして、基端側伝達部材15の棒状部16に超音波振動子12が取付けられる(ステップS104)。そして、基端側伝達部材15の先端方向側に、先端側伝達部材21が取付けられる(ステップS105)。これにより、超音波伝達ユニット3が製造される。
【0023】
図6は、先端側伝達部材21を形成する方法を説明する図である。
図7は、先端伝達部材21となる先端側準備体21´を示す図である。
図6及び
図7に示すように、先端側伝達部材21は、柱状の先端側準備体21´から形成される。本実施形態では、先端側準備体21´は、64チタンから形成されている。先端側伝達部材21の形成においては、先端側準備体21´に先端側当接部23を形成する(ステップS111)。先端側当接部23は、超音波振動の腹位置(A1〜A3)及び節位置(N1,N2)とは異なる中途位置Mに、形成される。すなわち、
図3に示すように、基端側伝達部材21と基端側伝達部材15とが接続された状態において、先端側当接部23が超音波振動の腹位置(A1〜A3)及び節位置(N1,N2)とは異なる位置(中途位置M)となるように形成される。 そして、先端側準備体21´に、凸部25を形成する(ステップS112)。この際、凸部25の外周部に、雄ネジ部28が形成される。凸部25は、先端側当接部23から基端方向に向かって突出する状態に、形成される。凸部25を形成することにより、凸部25の突出端部27が先端側伝達部材21の基端となる。凸部25は、先端側当接部23から基端方向へ突出寸法Lだけ離れて突出端部27が位置する状態に、形成される。凸部25の突出寸法Lは、形成される全ての先端側伝達部材21において同一の大きさL0に、設定される。なお、先端側準備体21´への先端側当接部23及び凸部25形成は、例えば切削加工によって、行われる。
【0024】
図8及び
図9は、基端側伝達部材15を形成する方法を説明する図である。
図8及び
図9に示すように、基端側伝達部材15は基端側準備体15´a,15´bから形成される。そして、基端側準備体15´aは柱状のロッド部材15´´aから形成され、基端側準備体15´bは柱状のロッド部材15´´bから形成される。全てのロッド部材15´´aは、ロット(lot)Aから形成され、全てのロッド部材15´´bは、ロットAとは異なるロットBから形成されている。本実施形態では、ロッド部材15´´a及びロッド部材15´´bは、64チタンから形成されている。すなわち、ロットAのロッド部材15´´aとロットBのロッド部材15´´bは、同一の種類の材料から形成されている。
【0025】
しかし、ロットAとロットBとでは、64チタンにおけるアルミの含有率、α相チタンに対するβ相チタンの比率等が異なる。材料の種類が同一の64チタンであっても、アルミの含有率、α相チタンに対するβ相チタンの比率等に対応して、ヤング率Eは変化する。したがって、ロットAから形成されるロッド部材15´´aとロットBから形成されるロッド部材15´´bとでは、ヤング率Eが異なる。なお、以下の説明では、ロットAからの基端側伝達部材15の形成について説明するが、ロットBからの基端側伝達部材15の形成についても、同様である。
【0026】
基端側伝達部材15の形成においては、ロットA(B)から複数のロッド部材15´´a(15´´b)を形成する(ステップS121)。そして、ロッド部材15´´a(15´´b)を加工して、基端側準備体15´a(15´b)が形成される(ステップS122)。この際、基端側伝達部材15の棒状部16及びホーン17が形成される。また、基端側準備体15´a(15´b)の先端に、基端側当接部32が形成される。
【0027】
全ての基端側準備体15´aにおいて、外観形状は同一に形成される。また、基端側準備体15´aの外観形状は、基端側準備体15´bの外観形状と同一に、形成される。したがって、全ての基端側伝達部材15において、外観形状が同一となる。なお、基端側伝達部材15(基端側準備体15´a,15´b)の外観形状とは外部から基端側伝達部材15を視た形状を意味し、凹部33の形状は基端側伝達部材15の外観形状に含まれない。また、棒状部16及びホーン17の形成は、例えば切削加工によって、行われる。
【0028】
なお、ステップS122では、全てのロッド部材15´´a(15´´b)が基端側準備体15´a(15´b)に変形されてもよく、複数のロッド部材15´´a(15´´b)から1つを選択し、選択されたロッド部材15´´a(15´´b)のみが基端側準備体15´a(15´b)に変形されてもよい。
【0029】
そして、基端側準備体15´a(15´b)を含む仮振動ユニット40を形成し、仮振動ユニット40が超音波振動によって振動する周波数である測定共振周波数fを測定する(ステップS123)。
図10Aは、ある実施例に係る仮振動ユニット40を示す図である。本実施例の仮振動ユニット40は、基端側準備体15´a(15´b)の棒状部16に振動発生部である超音波振動子12を取付けることにより、形成される。そして、超音波振動子12によって、超音波振動を発生させる。仮振動ユニット40の測定共振周波数fの測定は、超音波振動子12によって発生する超音波振動を用いて行われる。
【0030】
図10Bは、別のある実施例に係る仮振動ユニット40を示す図である。本実施例では、基端側準備体15´a(15´b)において、仮凹部33´が形成されている。仮凹部33´は、基端側当接部32から基端方向に向かって凹む状態に、形成される。仮凹部33´aは、仮側部35´と、仮底部36´と、を備える。仮凹部33´の仮底部36´は、基端側当接部32から基端方向へ、凹部33の凹み寸法Tより小さい仮凹み寸法T´だけ離れて、位置している。なお、仮凹み部33´の仮凹み寸法T´は、凸部25の突出寸法Lより小さくてもよい。また、基端側準備体15´a(15´b)への仮凹部33´形成は、例えば切削加工によって、行われる。
【0031】
そして、仮凹部33´を介して、振動発生体41を基端側準備体15´a(15´b)取付ける。振動発生体41は雄ネジ部42を備え、雄ネジ部42が仮凹部33´の仮側部35´に設けられる雌ネジ部43と螺合することにより、振動発生体41が基端側準備体15´a(15´b)に取付けられる。振動発生体41が基端側準備体15´a(15´b)に取付けられることにより、仮振動ユニット40が形成される。ここで、振動発生体41は、超音波振動子(振動発生部)12とは別体であり、圧電素子45A〜45Cを備える。本実施例では、振動発生体41(圧電素子45A〜45C)によって、超音波振動を発生させる。仮振動ユニット40の測定共振周波数fの測定は、振動発生体41によって発生する超音波振動を用いて行われる。
【0032】
そして、測定された仮振動ユニット40の測定共振周波数fに基づいて、基端側準備体15´a(15´b)のヤング率Eを決定する(ステップS124)。前述のように、アルミの含有率、α相チタンに対するβ相チタンの比率等に対応して、ヤング率Eは変化するため、ロットAのロッド部材15´´aとロットBのロッド部材15´´bとでは、ヤング率Eが異なる。したがって、ロッド部材15´´aから形成される基端側準備体15´aとロッド部材15´´bから形成される基端側準備体15´bとでは、ヤング率Eが異なる。
【0033】
前述のように、基端側準備体15´aの外観形状は基端側準備体15´bの外観形状と同一に形成される。このため、仮振動ユニット40の測定共振周波数fは、仮振動ユニット40に含まれる基端側準備体(15´a,15´b)のヤング率Eに対応して変化する。基端側準備体15´aと基端側準備体15´bとではヤング率Eが異なるため、ステップS123において、基端側準備体15´aが含まれる仮振動ユニット40では測定共振周波数fはfaとなり、基端側準備体15´bが含まれる仮振動ユニット40では測定共振周波数fはfbとなる。そして、ステップS124において、測定共振周波数fの値faに基づいて基端側準備体15´aのヤング率EがEaと決定され、測定共振周波数fの値fbに基づいて基端側準備体15´bのヤング率EがEbと決定される。
【0034】
なお、ステップS123及びステップS124では、複数の基端側準備体15´a(15´b)から1つを選択し、選択された基端側準備体15´a(15´b)のみについて測定共振周波数fの測定、及び、ヤング率Eの決定が行われればよい。この場合、選択された基端側準備体15´a(15´b)のヤング率Eの値Ea(Eb)が、全ての基端側準備体15´a(15´b)のヤング率Eとして決定される。また、全ての基端側準備体15´a(15´b)について、測定共振周波数fの測定、及び、ヤング率Eの決定が行われてもよい。
【0035】
そして、基端側準備体15´a(15´b)のヤング率Eに基づいて、凹部33の凹み寸法Tが決定される(ステップS125)。凹部33の凹み寸法Tは、凸部25の突出寸法L以上の大きさとなる範囲で、決定される。また、凹部33の凹み寸法Tは、超音波伝達ユニット3が所定の周波数f0で振動する状態に、決定される。
【0036】
図11は、超音波伝達ユニット3が所定の周波数f0で振動する状態での、基端側準備体15´a,15´b(基端側伝達部材15)のヤング率Eと凹部33の凹み寸法Tとの関係を示す図である。
図11において、基端側伝達部材15の材料の種類が64チタンの場合は実線で示され、基端側伝達部材15の材料の種類がジュラルミンの場合は破線でしめされている。
図11に示すヤング率Eと凹み寸法Tとの関係は、予め認識されている。
【0037】
超音波伝達ユニット3の超音波振動の共振周波数は、基端側伝達部材15のヤング率Eに加え、長手軸Cに平行な方向についての凸部25の突出端部27と凹部33の底部36との間の間寸法Dの大きさの影響を受ける。前述のように、基端側準備体15´aから形成される基端側伝達部材15と基端側準備体15´bから形成される基端側伝達部材15とでは、ヤング率Eは異なる。このため、基端側準備体15´a(15´b)のヤング率E(仮振動ユニット40の測定共振周波数f)に対応させて凸部25の突出端部27と凹部33の底部36との間の間寸法Dの大きさを調整することにより、基端側準備体15´a(15´b)のヤング率Eに関係なく、超音波伝達ユニット3が所定の共振周波数f0で振動する状態になる。前述のように、凸部25の突出寸法Lは、全ての先端側伝達部材21において、同一の大きさL0となる。したがって、凹部33の凹み寸法Tを調整することにより、凸部25の突出端部27と凹部33の底部36との間の間寸法Dが調整され、基端側準備体15´a(15´b)のヤング率Eに関係なく、全ての超音波伝達ユニット3が所定の共振周波数f0で振動する状態になる。
【0038】
本実施形態では、基端側準備体15´a,15´bは64チタンから形成されるため、
図11の実線で示す関係に基づいて、凹部33の凹み寸法Tが決定される。ヤング率EがEaとなる基端側準備体15´aでは、凹み寸法TはTaに決定される。また、ヤング率EがEbとなる基端側準備体15´bでは、凹み寸法TはTbに決定される。これにより、ヤング率EがEaとなる基端側準備体15´aから基端側伝達部材15が形成される場合、及び、ヤング率EがEbとなる基端側準備体15´bから基端側伝達部材15が形成される場合いずれにおいても、超音波伝達ユニット3が所定の周波数f0で振動する状態に、凹み寸法Tが決定される。
【0039】
そして、基端側当接部32から基端方向へ凹み寸法Tだけ離れて底部36が位置する状態に、凹部33を基端側準備体15´a(15´b)に形成する(ステップS126)。凹部33が形成されることにより、基端側伝達部材15が形成される。また、凹部33の形成において、凹部33の側部35に雌ネジ部37が形成される。
図10Aに示す実施例では、基端側準備体15´a(15´b)に仮凹部33´は設けられていない。したがって、長手軸Cから外周端まで平面状に形成される基端側当接部32に、基端方向へ向かって凹む凹部33が形成される。
【0040】
また、
図10Bに示す実施例では、基端側準備体15´a(15´b)に仮凹部33´が形成されている。したがって、基端側準備体15´a(15´b)のヤング率Eに基づいて仮凹部33´を変形することにより、凹部が形成される。前述のように、仮凹部33´の仮凹み寸法T´は、凹部33の凹み寸法Tより小さい。基端側準備体(15´a,15´b)の材料の種類が64チタンの場合、基端側準備体(15´a,15´b)のヤング率E及び凹部33の凹み寸法Tは、
図11の実線の範囲でばらつく。したがって、仮凹み寸法T´は、バラツキの範囲内における凹み寸法Tの最小値Tminより小さくなる。ヤング率E及び凹み寸法Tのバラツキの範囲は、予め認識されている。仮凹部33´の仮凹み寸法T´が凹部33の凹み寸法Tより小さいため、仮凹み部33´を凹み部33に変形可能である。
【0041】
なお、本実施形態では、基端側伝達部材15の材料の種類が64チタンの場合について説明したが、基端側伝達部材15の材料の種類がジュラルミンの場合は、
図11の破線で示す関係に基づいて、凹部33の凹み寸法Tが決定される。そして、決定された凹み寸法Tの凹部33が形成される。
【0042】
また、ステップS124において選択された1つの基端側準備体15´a(15´b)のヤング率Eの値Ea(Eb)が全ての基端側準備体15´a(15´b)のヤング率Eとして決定された場合は、ステップS125及びステップS126では、全ての基端側準備体15´a(15´b)において、凹部33の凹み寸法Tが同一の大きさTa(Tb)となる。一方、ステップS124において全ての基端側準備体15´a(15´b)についてヤング率Eの決定が行われた場合は、基端側準備体15´a(15´b)ごとにヤング率Eの値に微差が生じる。したがって、基端側準備体15´a(15´b)ごとのヤング率Eの値の微差に対応させて、基端側準備体15´aごとに凹部33の凹み寸法Tも調整される。
【0043】
図12は、基端側伝達部材15に先端側伝達部材21を取付ける方法を示す図である。
図12に示すように、基端側伝達部材15への先端側伝達部材21の取付けにおいては、雄ネジ部28と雌ネジ部37とを螺合し、凸部25を凹部33に係合させる(ステップS131)。凸部25が凹部33に係合することにより、基端側伝達部材15の基端側当接部32に先端側伝達部材21の先端側当接部23が当接する(ステップS132)。これにより、基端側伝達部材15から先端側伝達部材21に超音波振動が伝達可能になる。先端側当接部23は、超音波振動の腹位置(A1〜A3)及び節位置(N1,N2)とは異なる中途位置Mで、基端側当接部32と当接する。
【0044】
また、凸部25が係合する凹部33では底部36が基端側当接部32から基端方向へ凹み寸法Tだけ離れて位置し、凹部33の凹み寸法TはステップS125で前述のように調整されている。このため、凸部25を凹部33に係合させることにより、長手軸Cに平行な方向についての凸部25の突出端部27と凹部33の底部36との間の間寸法Dが設定される(ステップS133)。間寸法Dの大きさは、超音波伝達ユニット3が所定の共振周波数f0で振動する状態に設定される。
【0045】
また、凸部25を凹部33に係合させることにより、凸部25の突出端部27、凹部33の底部36、又は、突出端部27と底部36との間(すなわち空洞部39)に、超音波振動の腹位置(A1〜A3)の1つである基準腹位置A2を、位置させる(ステップS134)。すなわち、基準腹位置A2を、基端側当接部32より基端方向側に位置させる。
【0046】
前述のように超音波伝達ユニット3が製造されるため、超音波伝達ユニット3ごとに異なる基端側伝達部材15のヤング率Eの大きさに対応させて、凹部33の凹み寸法Tを調整可能である。全ての先端側伝達部材21で凸部25の突出寸法Lは同一の大きさL0となるため、基端側伝達部材15の凹部33の凹み寸法Tが調整されることにより、長手軸Cに平行な方向についての凸部25の突出端部27と凹部33の底部36との間寸法Dが調整される。超音波伝達ユニット3の超音波振動の共振周波数に影響を与える間寸法Dの大きさが基端側伝達部材15のヤング率Eに対応して調整されるため、基端側伝達部材15ごとのヤング率Eが異なる場合でも、所定の共振周波数f0で振動する状態に全ての超音波伝達ユニット3を設定可能となる。これにより、超音波振動の共振周波数について、製造される超音波伝達ユニット3(製品)ごとのバラツキを、有効に抑制することができる。
【0047】
また、超音波伝達ユニット3では、基端側伝達部材15のヤング率Eの大きさに対応して、凹部33の凹み寸法Tの大きさを基端側伝達部材15ごとに調整している。すなわち、基端側伝達部材15のヤング率Eの大きさに対応して、外観形状を基端側伝達部材15ごとに変更しているわけではない。このため、超音波伝達ユニット3の製造において、コスト及び手間が削減される。したがって、基端側伝達部材15ごとにヤング率Eの大きさが異なる場合でも、容易に超音波伝達ユニット3を製造することができる。
【0048】
次に、超音波伝達ユニット3の作用について説明する。超音波伝達ユニット3を用いて生体組織等の処置対象の処置を行う際には、入力部9での操作により、電流供給部7から電気配線13A,13Bを介して超音波振動子12に電流を供給する。これにより、超音波振動子12で超音波振動が発生し、基端側伝達部材15を通って超音波プローブである先端側伝達部材21に超音波振動が伝達される。基端方向から先端方向へ超音波振動を伝達する状態において、超音波伝達ユニット3は所定の共振周波数f0で振動する。超音波伝達ユニット3を振動させた状態で、先端側伝達部材21の先端部が処置対象の処置を行う。
【0049】
ここで、間寸法Dがゼロでない場合、凸部25の突出端部27と凹部33の底部36との間に空洞部39が形成される。空洞部39を通る長手軸Cに垂直な超音波伝達ユニット3の断面形状は、筒状(中空)である。これに対し、空洞部39以外の部分を通る長手軸Cに垂直な超音波伝達ユニット3の断面形状は、柱状(中肉)である。すなわち、空洞部39が設けられることにより、凹部33の底部36で長手軸Cに垂直な超音波伝達ユニット3の断面形状が柱状から筒状に大きく変化し、凸部25の突出端部27で長手軸Cに垂直な超音波伝達ユニット3の断面形状が筒状から柱状に大きく変化する。超音波振動の伝達方向及び振動方向に垂直な超音波伝達ユニット3の断面形状が大きく変化する位置では、超音波振動が長手軸Cに垂直な方向への応力の影響を受け易い。応力の影響を受けることにより、超音波振動の振動モードが変化し、超音波伝達ユニット3の先端(先端側伝達部材21の先端部)まで超音波振動が適切に伝達されない可能性がある。
【0050】
このため、超音波伝達ユニット3では、凸部25の突出端部27、凹部33の底部36、又は、突出端部27と底部36との間(すなわち空洞部39)に、超音波振動の腹位置(A1〜A3)の1つである基準腹位置A2が、位置している。これにより、超音波振動の伝達方向及び振動方向に垂直な超音波伝達ユニット3の断面形状が大きく変化する凸部25の突出端部27及び凹部33の底部36が、基準腹位置A2の近傍に位置する。基準腹位置A2を含む超音波振動の腹位置(A1〜A3)では、振幅は最大となるが、長手軸Cに垂直な方向への応力はゼロとなる。したがって、基準腹位置A2の近傍に位置する凸部25の突出端部27及び凹部33の底部36では、長手軸Cに垂直な方向への応力は小さい。このため、超音波振動の伝達方向及び振動方向に垂直な超音波伝達ユニット3の断面形状が大きく変化する凸部25の突出端部27及び凹部33の底部36において、超音波振動が、長手軸Cに垂直な方向への応力の影響をほとんど受けない。したがって、空洞部39を設けた場合でも、超音波振動の振動モードの変化が抑制され、超音波伝達ユニット3の先端(先端側伝達部材21の先端部)まで超音波振動を適切に伝達することができる。
【0051】
(変形例)
なお、第1の実施形態では、凸部25の突出端部27、凹部33の底部36、又は、突出端部27と底部36との間(すなわち空洞部39)に位置する基準腹位置A2は、超音波振動の腹位置(A1〜A3)の中で中途位置Mに最も近い近設腹位置であるが、これに限るものではない。例えば、第1の変形例として
図13に示すように、凸部25の突出端部27、凹部33の底部36、又は、突出端部27と底部36との間(すなわち空洞部39)に位置する基準腹位置A2が、近設腹位置A4とは異なってもよい。すなわち、超音波振動の腹位置(A1〜A4)の中で中途位置Mに最も近い近設腹位置A4より基端方向側に、基準腹位置A2が位置している。
【0052】
本変形例では、凸部25との突出端部27が、近設腹位置A4より基端方向側に位置している。そして、凹部33の底部36が、近設腹位置A4より基端方向側に位置している。本変形例でも、凸部25の突出端部27と凹部33の底部36との間の間寸法Dは、超音波伝達ユニット3が所定の周波数f0で振動する状態に、調整されている。
【0053】
また、第1の実施形態では、凸部25の雄ネジ部28が雌ネジ部37と螺合することにより、凸部25が凹部33と係合するが、これに限るものではない。例えば、第2の変形例として
図14に示すように、接合剤51によって凸部25の外周部と凹部33の側部35とを接合してもよい。凸部25の外周部と凹部33の側部35とが接合することにより、凸部25が凹部33に係合する。
【0054】
本変形例でも、基端側当接部32に先端側当接部23が当接している。また、凸部25の突出端部27と凹部33の底部36との間の間寸法Dは、超音波伝達ユニット3が所定の周波数f0で振動する状態に、調整されている。
【0055】
前述の変形例より、先端側伝達部材21は、超音波振動の腹位置(A1〜A3;A1〜A4)及び節位置(N1,N2)とは異なる中途位置Mに位置する先端側当接部23と、先端側当接部23から基端方向に向かって突出した状態で設けられる凸部25と、を備えればよい。そして、凸部25の突出端部27が、先端側伝達部材21の基端に位置し、先端側当接部23から基端方向へ突出寸法L(L0)だけ離れて位置すればよい。また、基端側伝達部材15は、基端側伝達部材15の先端に設けられ、先端側当接部23と当接する基端側当接部32と、基端側当接部32から基端方向に向かって凹んだ状態で設けられ、凸部25が係合する凹部33と、を備えればよい。そして、凹部33の底部36は、突出寸法L以上で、かつ、基端側伝達部材15のヤング率Eに対応した大きさに設定される凹み寸法Tだけ、基端側当接部32から基端方向に離れて位置すればよい。これにより、超音波伝達ユニット3が所定の共振周波数f0で振動する状態に、長手軸Cに平行な方向についての凸部25の突出端部27と凹部33の底部36との間の間寸法Dの大きさが設定される。
【0056】
以上、本発明の実施形態及び変形理恵について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形ができることは勿論である。