(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
点灯される前記素子が1個となる状態における前記蓄電装置の最大蓄電量と最小蓄電量の差は、点灯される前記素子が2つ以上のいずれかの個数となる状態における前記蓄電装置の最大蓄電量と最小蓄電量の差より大きい、
請求項9に記載の作業車両。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る作業車両1の側面図である。作業車両1は、例えば、ホイールローダである。
図1に示すように、作業車両1は、車体フレーム2と、作業機3と、走行輪4,5と、運転室6とを備えている。作業車両1は、走行輪4,5が回転駆動されることにより走行する。作業車両1は、作業機3を用いて掘削等の作業を行うことができる。
【0026】
車体フレーム2には、作業機3および走行輪4,5が取り付けられている。作業機3は、作業機ポンプ23(
図2参照)からの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム11とバケット12とを有する。ブーム11は、車体フレーム2に装着されている。作業機3は、リフトシリンダ13とバケットシリンダ14とを有している。リフトシリンダ13とバケットシリンダ14とは、油圧シリンダである。リフトシリンダ13の一端は車体フレーム2に取り付けられている。リフトシリンダ13の他端はブーム11に取り付けられている。リフトシリンダ13が作業機ポンプ23からの作動油によって伸縮することによって、ブーム11が上下に揺動する。バケット12は、ブーム11の先端に取り付けられている。バケットシリンダ14の一端は車体フレーム2に取り付けられている。バケットシリンダ14の他端はベルクランク15を介してバケット12に取り付けられている。バケットシリンダ14が、作業機ポンプ23からの作動油によって伸縮することによって、バケット12が上下に揺動する。
【0027】
車体フレーム2には、運転室6及び走行輪5が取り付けられている。運転室6は、車体フレーム2上に載置されている。運転室6内には、オペレータが着座するシート、オペレータが視認するモニタ、及び、後述する操作装置などが配置されている。車体フレーム2は、前フレーム16と後フレーム17とを有する。前フレーム16と後フレーム17とは互いに左右方向に揺動可能に取り付けられている。
【0028】
前フレーム16には、作業機3が取り付けられている。後フレーム17には、運転室6が載置されている。また、後フレーム17には、後述するエンジン21、動力伝達装置24、冷却装置26などの装置が搭載されている。動力伝達装置24は、エンジン21の前方に位置している。冷却装置26は、エンジン21の後方に位置している。冷却装置26は、エンジン21の冷却液を冷却するためのラジエータを有する。
【0029】
作業車両1は、ステアリングシリンダ18を有している。ステアリングシリンダ18は、前フレーム16と後フレーム17とに取り付けられている。ステアリングシリンダ18は、油圧シリンダである。ステアリングシリンダ18が、後述するステアリングポンプ30からの作動油によって伸縮することによって、作業車両1の進行方向が左右に変更される。
【0030】
図2は、作業車両1の構成を示す模式図である。
図2に示すように、作業車両1は、エンジン21、作業機ポンプ23、トランスミッションポンプ29、ステアリングポンプ30、動力伝達装置24、走行装置25などを備えている。
【0031】
エンジン21は、例えばディーゼルエンジンである。エンジン21は、走行装置25、作業機ポンプ23、トランスミッションポンプ29、ステアリングポンプ30などを駆動するための駆動力を発生させる。
【0032】
作業機ポンプ23とトランスミッションポンプ29とステアリングポンプ30とは、油圧ポンプである。作業機ポンプ23とトランスミッションポンプ29とステアリングポンプ30とは、エンジン21からの駆動力によって駆動される。
【0033】
作業機ポンプ23は、可変容量型の油圧ポンプである。作業機ポンプ23から吐出された作動油は、作業機制御弁41を介して、上述したリフトシリンダ13とバケットシリンダ14とに供給される。
【0034】
トランスミッションポンプ29は、固定容量型の油圧ポンプである。トランスミッションポンプ29から吐出された作動油は、クラッチ制御弁32を介して、後述する動力伝達装置24の各種のクラッチに供給される。
【0035】
ステアリングポンプ30は、可変容量型の油圧ポンプである。ステアリングポンプ30から吐出された作動油は、ステアリング制御弁43を介して、上述したステアリングシリンダ18に供給される。
【0036】
動力伝達装置24は、エンジン21からの駆動力を走行装置25に伝達する。動力伝達装置24は、エンジン21からの駆動力を変速して出力する。動力伝達装置24の構成については後に詳細に説明する。
【0037】
走行装置25は、エンジン21によって駆動される。走行装置25は、伝達軸46と、アクスルシャフト45と、上述した走行輪5とを有する。伝達軸46は、動力伝達装置24からの駆動力をアクスルシャフト45に伝達する。アクスルシャフト45は、車幅方向に延びており、走行輪5に接続されている。アクスルシャフト45は、動力伝達装置24からの駆動力を走行輪5に伝達する。これにより、走行輪5が回転する。
【0038】
次に、動力伝達装置24の構成について詳細に説明する。動力伝達装置24は、入力軸61と、第1動力取り出し機構22(以下、「第1PTO22」と呼ぶ)と、第2動力取り出し機構27(以下、「第2PTO27」と呼ぶ)と、歯車機構62と、出力軸63と、第1モータMG1と、第2モータMG2と、第3モータMG3と、を備えている。
【0039】
入力軸61には、エンジン21からの回転が入力される。歯車機構62は、入力軸61の回転を出力軸63に伝達する。出力軸63は、上述した走行装置25に接続されており、歯車機構62からの回転を走行装置25に伝達する。
【0040】
第1PTO22は、入力軸61に接続されており、エンジン21からの駆動力の一部を作業機ポンプ23及びトランスミッションポンプ29に伝達する。第2PTO27は、第1PTO22と並列に入力軸61に接続されており、エンジン21からの駆動力の一部をステアリングポンプ30に伝達する。
【0041】
歯車機構62は、エンジン21からの駆動力を伝達する機構である。歯車機構62は、モータMG1, MG2, MG3の回転速度の変化に応じて、入力軸61に対する出力軸63の回転速度比を変化させるように構成されている。歯車機構62は、FR切換機構65と、変速機構66とを有する。
【0042】
FR切換機構65は、前進用クラッチCFと、後進用クラッチCRと、各種のギアとを有している。前進用クラッチCFと後進用クラッチCRとは、油圧式クラッチである。前進用クラッチCFの接続及び切断と、後進用クラッチCRの接続及び切断とが切り換えられることによって、FR切換機構65から出力される回転の方向が切り換えられる。
【0043】
変速機構66は、中間軸67と、第1遊星歯車機構68と、第2遊星歯車機構69と、Hi/Lo切換機構70と、出力ギア71と、を有している。中間軸67は、FR切換機構65に連結されている。第1遊星歯車機構68及び第2遊星歯車機構69は、中間軸67と同軸上に配置されている。
【0044】
第1遊星歯車機構68は、第1サンギアS1と、複数の第1遊星ギアP1と、複数の第1遊星ギアP1を支持する第1キャリアC1と、第1リングギアR1とを有している。第1サンギアS1は、中間軸67に連結されている。複数の第1遊星ギアP1は、第1サンギアS1と噛み合い、第1キャリアC1に回転可能に支持されている。第1キャリアC1の外周部には、第1キャリアギアGc1が設けられている。第1リングギアR1は、複数の遊星ギアP1に噛み合うとともに回転可能である。また、第1リングギアR1の外周には、第1リング外周ギアGr1が設けられている。
【0045】
第2遊星歯車機構69は、第2サンギアS2と、複数の第2遊星ギアP2と、複数の第2遊星ギアP2を支持する第2キャリアC2と、第2リングギアR2とを有している。第2サンギアS2は第1キャリアC1に連結されている。複数の第2遊星ギアP2は、第2サンギアS2と噛み合い、第2キャリアC2に回転可能に支持されている。第2リングギアR2は、複数の遊星ギアP2に噛み合うとともに回転可能である。第2リングギアR2の外周には、第2リング外周ギアGr2が設けられている。第2リング外周ギアGr2は出力ギア71に噛み合っており、第2リングギアR2の回転は出力ギア71を介して出力軸63に出力される。
【0046】
Hi/Lo切換機構70は、動力伝達装置24における駆動力伝達経路を、車速が高い高速モード(Hiモード)と車速が低い低速モード(Loモード)で切り替えるための機構である。このHi/Lo切換機構70は、Hiモード時にオンにされるHiクラッチCHと、Loモード時にオンにされるLoクラッチCLとを有している。HiクラッチCHは、第1リングギアR1と第2キャリアC2とを接続又は切断する。また、LoクラッチCLは、第2キャリアC2と固定端72とを接続又は切断し、第2キャリアC2の回転を禁止又は許容する。
【0047】
なお、各クラッチCH,CLは油圧式クラッチであり、各クラッチCH,CLには、それぞれトランスミッションポンプ29からの作動油が供給される。各クラッチCH,CLへの作動油は、クラッチ制御弁32によって制御される。
【0048】
第1モータMG1と第2モータMG2と第3モータMG3とは、電気エネルギーによって駆動力を発生させる駆動モータとして機能する。また、第1モータMG1と第2モータMG2と第3モータMG3とは、入力される駆動力を用いて電気エネルギーを発生させるジェネレータとしても機能する。
【0049】
第1モータMG1の回転軸Sm1には第1モータギアGm1が固定されている。第1モータギアGm1は、第1キャリアギアGc1に噛み合っている。第2モータMG2の回転軸Sm2には第2モータギアGm2が固定されている。第2モータギアGm2は、第1リング外周ギアGr1に噛み合っている。
【0050】
第3モータMG3は、第1モータMG1と第2モータMG2とを補助する。変速機構66は、モータ切換機構73を有しており、モータ切換機構73は、第3モータMG3による補助対象を、第1モータMG1と第2モータMG2とに選択的に切り換える。
【0051】
詳細には、モータ切換機構73は、第1モータクラッチCm1と、第2モータクラッチCm2と、第1接続ギアGa1と、第2接続ギアGa2とを有する。第3モータMG3の回転軸Sm3には第3モータギアGm3が接続されており、第3モータギアGm3は、第1接続ギアGa1に噛み合っている。第1モータクラッチCm1は、第1モータMG1の回転軸Sm1と第1接続ギアGa1との接続及び切断を切り換える。第1接続ギアGa1は、第2接続ギアGa2と噛み合っている。第2モータクラッチCm2は、第2モータMG2の回転軸Sm2と第2接続ギアGa2との接続及び切断を切り換える。
【0052】
第1モータクラッチCm1と第2モータクラッチCm2とは油圧式のクラッチである。各モータクラッチCm1, Cm2には、それぞれトランスミッションポンプ29からの作動油が供給される。各モータクラッチCm1, Cm2への作動油は、クラッチ制御弁32によって制御される。
【0053】
第1モータクラッチCm1が接続され、且つ、第2モータクラッチCm2が切断されている状態では、第3モータギアGm3は、第1モータMG1を補助する。第2モータクラッチCm2が接続され、且つ、第1モータクラッチCm1が切断されている状態では、第3モータギアGm3は、第2モータMG2を補助する。
【0054】
第1モータMG1は第1インバータI1を介してキャパシタ64に接続されている。第2モータMG2は第2インバータI2を介してキャパシタ64に接続されている。第3モータMG3は第3インバータI3を介してキャパシタ64に接続されている。第1インバータI1、第2インバータI2、及び、第3インバータI3は、それぞれ、第1モータMG1、第2モータMG2、及び、第3インバータI3を駆動する。第1インバータI1、第2インバータI2、及び、第3インバータI3は、昇圧器BTに接続している。昇圧器BTは、キャパシタ64の電圧を所定の電圧に変換する。所定の電圧とは、インバータI1,I2,I3がモータMG1,MG2,MG3を駆動するために必要な電圧である。
【0055】
キャパシタ64は、モータMG1,MG2,MG3で発生する電気を蓄える蓄電装置として機能する。すなわち、キャパシタ64は、各モータMG1,MG2,MG3の合計発電量が多いときに、各モータMG1,MG2,MG3で発電された電力を蓄電する。また、キャパシタ64は、各モータMG1,MG2,MG3の合計電力消費量が多いときに、電力を放電する。なお、キャパシタに代えてバッテリーが蓄電装置として用いられてもよい。
【0056】
なお、キャパシタとバッテリーでは、蓄積されている電気の大きさを表す表現が異なる。例えば、キャパシタでは電圧によって表現することが一般的であるが、バッテリーではアンペア・アワー(Ah)によって表現することが一般的である。本実施形態では、蓄電装置が蓄える電気の大きさを電気の量又は電気量と表現し、電気の量又は電気量を上述した概念を包含するものとして用いる。キャパシタ64が蓄える電気量は、蓄電量表示部53によって表示される。蓄電量表示部53は、運転室6内にあるモニタに設けられる。蓄電量表示部53の詳細については後述する。
【0057】
作業車両1は、制御部31を備える。制御部31は、モータMG1,MG2,MG3への指令トルクを示す指令信号を各インバータI1, I2, I3に与える。また、制御部31は、各クラッチCF,CR,CH,CL,Cm1,Cm2のクラッチ油圧を制御するための指令信号をクラッチ制御弁32に与える。クラッチ制御弁32は、各クラッチCF,CR,CH,CL,Cm1,Cm2を制御するための複数のバルブを含む。
【0058】
制御部31からの指令信号によってモータMG1,MG2,MG3及びクラッチCF,CR,CH,CL,Cm1,Cm2が制御されることにより、動力伝達装置24の変速比及び出力トルクが制御される。以下、動力伝達装置24の動作について説明する。
【0059】
ここでは、エンジン21の回転速度を一定に保ったまま車速が0から前進側に加速する場合における動力伝達装置24の概略動作を、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、各モードにおけるモータMG1,MG2,MG3の機能とクラッチの状態とを示している。Loモードは、L1モードとL2モードとを有する。Hiモードは、H1モードとH2モードとを有する。
図3において、“M”は、モータMG1,MG2,MG3が駆動モータとして機能していることを意味する。”G”は、モータMG1,MG2,MG3がジェネレータとして機能していることを意味する。”O”は、クラッチが接続状態であることを意味する。”X”は、クラッチが切断状態であることを意味する。
【0060】
図4は、車速に対する各モータMG1,MG2,MG3の回転速度を示したものである。エンジン21の回転速度が一定である場合には、車速は、動力伝達装置24の回転速度比に応じて変化する。回転速度比は、入力軸61の回転速度に対する出力軸63の回転速度の比である。従って、
図4において車速の変化は、動力伝達装置24の回転速度比の変化に一致する。すなわち、
図4は、各モータMG1,MG2,MG3の回転速度と動力伝達装置24の回転速度比との関係を示している。
図4において、実線が第1モータMG1の回転速度、破線が第2モータMG2の回転速度、一点鎖線が第3モータMG3の回転速度を示している。
【0061】
車速が0以上V1未満の領域では、LoクラッチCLが接続され、HiクラッチCHが切断され、第1モータクラッチCm1が接続され、第2モータクラッチCm2が切断される(L1モード)。HiクラッチCHが切断されているので、第2キャリアC2と第1リングギアR1とが切断される。LoクラッチCLが接続されるので、第2キャリアC2が固定される。また、第1接続ギアGa1が第1モータMG1の回転軸Sm3に接続され、第2接続ギアGa2が第2モータMG2の回転軸Sm2から切断される。これにより、第3モータギアGm3と第1接続ギアGa1と第1モータクラッチCm1とを介して、第3モータMG3が第1モータMG1に接続される。また、第2モータクラッチCm2が切断されるので、第3モータMG3は第2モータMG2から切断される。
【0062】
このL1モードにおいては、エンジン21からの駆動力は、中間軸67を介して第1サンギアS1に入力され、この駆動力は第1キャリアC1から第2サンギアS2に出力される。一方、第1サンギアS1に入力された駆動力は第1遊星ギアP1から第1リングギアR1に伝達され、第1リング外周ギアGr1及び第2モータギアGm2を介して第2モータMG2に出力される。第2モータMG2は、このL1モードにおいては、主としてジェネレータとして機能しており、第2モータMG2によって発電された電力の一部は、キャパシタ64に蓄電される。
【0063】
また、L1モードにおいては、第1モータMG1及び第3モータMG3は、主として電動モータとして機能する。第1モータMG1及び第3モータMG3の駆動力は、第1モータギアGm1→第1キャリアギアGc1→第1キャリアC1の経路で第2サンギアS2に出力される。以上のようにして第2サンギアS2に出力された駆動力は、第2遊星ギアP2→第2リングギアR2→第2リング外周ギアGr2→出力ギア71の経路で出力軸63に伝達される。
【0064】
車速がV1以上V2未満の領域では、LoクラッチCLは接続され、HiクラッチCHは切断され、第1モータクラッチCm1が切断され、第2モータクラッチCm2が接続される(L2モード)。従って、第2接続ギアGa2が第2モータMG2の回転軸Sm2に接続され、第1接続ギアGa1が第1モータMG1の回転軸Sm1から切断されている。これにより、第3モータギアGm3と第1接続ギアGa1と第2接続ギアGa2と第2モータクラッチCm2とを介して、第3モータMG3が第2モータMG2に接続される。また、第1モータクラッチCm1が切断されるので、第3モータMG3は第1モータMG1から切断される。
【0065】
このL2モードにおいては、エンジン21からの駆動力は、中間軸67を介して第1サンギアS1に入力され、この駆動力は第1キャリアC1から第2サンギアS2に出力される。一方、第1サンギアS1に入力された駆動力は第1遊星ギアP1から第1リングギアR1に伝達され、第1リング外周ギアGr1及び第2モータギアGm2を介して第2モータMG2に出力される。また、駆動力は、第2モータギアGm2から第2モータクラッチCm2と第2接続ギアGa2と第1接続ギアGa1と第3モータギアGm3を介して、第3モータMG3に出力される。第2モータMG2及び第3モータMG3は、このL2モードにおいては、主としてジェネレータとして機能しており、第2モータMG2及び第3モータMG3によって発電された電力の一部は、キャパシタ64に蓄電される。
【0066】
また、L2モードにおいては、第1モータMG1は、主として電動モータとして機能する。第1モータMG1の駆動力は、第1モータギアGm1→第1キャリアギアGc1→第1キャリアC1の経路で第2サンギアS2に出力される。以上のようにして第2サンギアS2に出力された駆動力は、第2遊星ギアP2→第2リングギアR2→第2リング外周ギアGr2→出力ギア71の経路で出力軸63に伝達される。
【0067】
車速がV2以上V3未満の領域では、LoクラッチCLが切断され、HiクラッチCHが接続され、第1モータクラッチCm1が切断され、第2モータクラッチCm2が接続される(H1モード)。このH1モードでは、HiクラッチCHが接続されているので、第2キャリアC2と第1リングギアR1とが接続される。また、LoクラッチCLが切断されるので、第2キャリアC2が解放される。従って、第1リングギアR1と第2キャリアC2の回転速度とは一致する。また、第2接続ギアGa2が第2モータMG2の回転軸Sm2に接続され、第1接続ギアGa1が第1モータMG1の回転軸Sm1から切断されている。これにより、第3モータギアGm3と第1接続ギアGa1と第2接続ギアGa2と第2モータクラッチCm2とを介して、第3モータMG3が第2モータMG2に接続される。また、第1モータクラッチCm1が切断されるので、第3モータMG3は第1モータMG1から切断される。
【0068】
このH1モードでは、エンジン21からの駆動力は第1サンギアS1に入力され、この駆動力は第1キャリアC1から第2サンギアS2に出力される。また、第1サンギアS1に入力された駆動力は、第1キャリアC1から第1キャリアギアGc1及び第1モータギアGm1を介して第1モータMG1に出力される。このH1モードでは、第1モータMG1は主としてジェネレータとして機能するので、この第1モータMG1で発電された電力の一部は、キャパシタ64に蓄電される。
【0069】
また、H1モードでは、第2モータMG2と第3モータMG3とは、主として電動モータとして機能する。第3モータMG3の駆動力は、第3モータギアGm3から第1接続ギアGa1と第2接続ギアGa2と第2モータクラッチCm2とを介して第2モータMG2の回転軸Sm2に伝達される。そして、第2モータMG2の駆動力と第3モータMG3の駆動力とが、第2モータギアGm2→第1リング外周ギアGr1→第1リングギアR1→HiクラッチCHの経路で第2キャリアC2に出力される。以上のようにして第2サンギアS2に出力された駆動力は第2遊星ギアP2を介して第2リングギアR2に出力されるとともに、第2キャリアC2に出力された駆動力は第2遊星ギアP2を介して第2リングギアR2に出力される。このようにして第2リングギアR2で合わさった駆動力が、第2リング外周ギアGr2及び出力ギア71を介して出力軸63に伝達される。
【0070】
車速がV3以上V4未満の領域では、LoクラッチCLが切断され、HiクラッチCHが接続され、第1モータクラッチCm1が接続され、第2モータクラッチCm2が切断される(H2モード)。このH2モードでは、第1接続ギアGa1が第1モータMG1の回転軸Sm3に接続され、第2接続ギアGa2が第2モータMG2の回転軸Sm2から切断される。これにより、第3モータギアGm3と第1接続ギアGa1と第1モータクラッチCm1とを介して、第3モータMG3が第1モータMG1に接続される。また、第2モータクラッチCm2が切断されるので、第3モータMG3は第2モータMG2から切断される。
【0071】
このH2モードでは、エンジン21からの駆動力は第1サンギアS1に入力され、この駆動力は第1キャリアC1から第2サンギアS2に出力される。また、第1サンギアS1に入力された駆動力は、第1キャリアC1から第1キャリアギアGc1及び第1モータギアGm1を介して第1モータMG1及び第3モータGm3に出力される。このH2モードでは、第1モータMG1及び第3モータGm3は主としてジェネレータとして機能するので、この第1モータMG1及び第3モータGm3で発電された電力の一部は、キャパシタ64に蓄電される。
【0072】
また、H2モードでは、第2モータMG2は主として電動モータとして機能する。第2モータMG2の駆動力は、第2モータギアGm2→第1リング外周ギアGr1→第1リングギアR1→HiクラッチCHの経路で第2キャリアC2に出力される。以上のようにして第2サンギアS2に出力された駆動力は第2遊星ギアP2を介して第2リングギアR2に出力されるとともに、第2キャリアC2に出力された駆動力は第2遊星ギアP2を介して第2リングギアR2に出力される。このようにして第2リングギアR2で合わさった駆動力が、第2リング外周ギアGr2及び出力ギア71を介して出力軸63に伝達される。
【0073】
なお、以上は前進駆動時の説明であるが、後進駆動時においても同様の動作となる。
【0074】
制御部31は、状態決定部51を含む。状態決定部51は、キャパシタ64へ供給される電気もしくはキャパシタ64から放出される電気に対応するパラメータをもとに、状態表示部52において表示する状態を決定する。状態表示部52は、キャパシタ64が充電状態か、放電状態かを表示する。状態表示部52は、運転室6内にあるモニタに設けられる。状態表示部52の詳細については後述する。
【0075】
状態決定部51は、上述するパラメータとして、昇圧器BTを通過する電力、もしくは、当該電力の所定時間Δt1あたりの平均値を用いる。別の言い方をすれば、状態決定部51は、上述するパラメータとして、キャパシタ64に充電または放電される電力、もしくは、当該電力の所定時間Δt1あたりの平均値を用いる。状態決定部51による状態の決定方法については後述する。
【0076】
次に、状態表示部52、及び、蓄電量表示部53の詳細について説明する。
図5は、運転室6のモニタ6aの一部を表した図である。
図5には、状態表示部52及び蓄電量表示部53の拡大図も図示している。モニタ6aは、運転室6の内部の座席の前方に配置される。
図5に示すように、モニタ6aは、パーキングブレーキ等の機器の作動中に点灯する各種のパイロットランプ57、燃料計58、選択されている減速比を示すシフトインジケーター59などが表示される。
【0077】
状態表示部52及び蓄電量表示部53は、モニタ6aの中央上部付近に表示される。状態表示部52は、蓄電量表示部53の近傍に配置される。以降の説明では、状態表示部52と蓄電量表示部53とを合わせた表示部をキャパシタ表示部54と呼ぶこととする。
【0078】
状態表示部52は、第1表示素子55と第2表示素子56とを含む。第1表示素子55は、キャパシタ64が充電状態であることを表す。第2表示素子56は、キャパシタ64が放電状態であることを表す。第1表示素子55及び第2表示素子56は、それぞれ3つ以上の素子を含む。
図5では、第1表示素子55の各素子を、左から順に55a,55b,55cと表している。また、第2表示素子56の各素子を、左から順に56a,56b,56cと表している。素子55cは、第1表示素子55の中で最も蓄電量表示部53から遠い素子である。素子55aは、第1表示素子55の中で最も蓄電量表示部53に近い素子である。素子55bは、素子55aと素子55cとの中間に位置する素子である。素子56aは、第2表示素子56の中で最も蓄電量表示部53から遠い素子である。素子56cは、第2表示素子56の中で最も蓄電量表示部53に近い素子である。素子56bは、素子56aと素子56cとの中間に位置する素子である。
【0079】
第1表示素子55は蓄電量表示部53の第1の側に配置され、第2表示素子56は蓄電量表示部53の第2の側に配置される。
図5では、第1表示素子55は蓄電量表示部53の右側に配置され、第2表示素子56は蓄電量表示部53の左側に配置される例を示している。しかし、第1表示素子55と第2表示素子56の蓄電量表示部53に対する位置関係は、
図5の例に限られない。例えば、第1表示素子55は蓄電量表示部53の左側に配置され、第2表示素子56は蓄電量表示部53の右側に配置されてもよい。あるいは、第1表示素子55は蓄電量表示部53の上側に配置され、第2表示素子56は蓄電量表示部53の下側に配置されてもよい。さらには、第1表示素子55と第2表示素子56とは、蓄電量表示部53に対して対称となる位置に配置されなくてもよい。例えば、第1表示素子55は蓄電量表示部53の上側に配置され、第2表示素子56は蓄電量表示部53の左側に配置されてもよい。つまり、第1表示素子55の蓄電量表示部53に対する相対位置と、第2表示素子56の蓄電量表示部53に対する相対位置とが異なっていればよい。
【0080】
第1表示素子55の各表示素子55a,55b,55cは、蓄電量表示部53に向かうアローヘッド(arrow head)の形状を有している。第2表示素子56の各表示素子56a,56b,56cは、蓄電量表示部53に向かう方向と反対の方向へ向かうアローヘッド(arrow head)の形状を有している。なお、各素子55a,55b,55c,56a,56b,56cの形状は、方向を指し示す他の形状(たとえば、矢印など)であってもよい。
図5の例では、第1表示素子55が蓄電量表示部53の右側、第2表示素子56が蓄電量表示部53の左側に配置されているので、各素子55a,55b,55c,56a,56b,56cは、左方向へ向かうアローヘッド(arrow head)の形状を有している。
【0081】
つぎに、第1表示素子55による充電状態の表示方法と、第2表示素子56による放電状態の表示方法について説明する。
図6は、第1表示素子55による充電方法の表示方法を表した図である。
図7は、第2表示素子56による放電方法の表示方法を表した図である。
図6において図示されるキャパシタ表示部54の表示例54-1〜54-4は、54-1→54-2→54-3→54-4→54-1→(以下、同様)の順に表示される。
図7において図示されるキャパシタ表示部54の表示例54-5〜54-8は、54-5→54-6→54-7→54-8→54-5→(以下、同様)の順に表示される。
図6と
図7では、点灯する素子をハッチングで表示している。
図6によれば、キャパシタ64が充電状態である場合において、状態表示部52は、第1表示素子55のうち、蓄電量表示部53から最も遠い素子55cから蓄電量表示部に最も近い素子55aに向かって、点灯する素子が順に移動するように表示することによって、充電状態を表示している。
図7によれば、キャパシタ64が放電状態である場合において、状態表示部52は、第2表示素子56のうち、蓄電量表示部53に最も近い素子56cから蓄電量表示部から最も遠い素子56aに向かって、点灯する素子が順に移動するように表示することによって、放電状態を表示している。後に詳細に説明するが、状態決定部51が充電状態且つ放電状態とであると決定することはないため、第1表示素子55と第2表示素子56とは、同時に点灯されない。なお、
図6において、54-2→54-3の変化に代えて、中間素子55bのみを点灯させてもよい。同様に、
図7において、54-6→54-7の変化に代えて、中間素子56bのみを点灯させてもよい。
【0082】
さらに、
図6によれば、キャパシタ64が充電状態である場合において、状態表示部52は、蓄電量表示部53に向かうアローヘッドを表示している。
図7によれば、キャパシタ64が放電状態である場合において、状態表示部52は、蓄電量表示部53に向かう方向と反対の方向へ向かうアローヘッドを表示している。なお、各素子55a,55b,55c,56a,56b,56cの形状が矢印である場合、上述するアローヘッドに代えて、矢印であるとよい。
【0083】
第1表示素子55が表示する色と、第2表示素子56が表示する色は異なる。このため、
図6と
図7では、点灯する素子に異なるハッチングが付されている。
【0084】
つぎに、蓄電量表示部53の詳細について説明する。
図5に示すように、蓄電量表示部53は、少なくとも3つのバー(bar)状素子を含む。蓄電量表示部53は、点灯するバー状素子の個数によってキャパシタ64が蓄えている電気量を表す。下記の表1に点灯するバー状素子の数に対応する電気量の一例を示す。
【0086】
ここで、ΔV(i)=V(i)−V(i-1)(iは自然数)とすると、ΔV(1)は、ΔV(2)…ΔV(7)よりも大きい。つまり、点灯されるバー状素子が1個となる状態におけるキャパシタ64の最大蓄電量と最小蓄電量の差は、点灯されるバー状素子が2つ以上のいずれかの個数となる状態におけるキャパシタ64の最大蓄電量と最小蓄電量の差より大きい。なお、V(2)〜V(7)までの電圧は、キャパシタ64が通常使用される電圧で、ΔV(2)…ΔV(7)の値は小さい値が設定されている。
【0087】
つぎに、状態決定部51による具体的な決定方法について説明する。
図8A及び
図8Bは、状態決定部51が充電状態を決定する処理の流れを示すフローチャートである。まず、ステップS1において、状態決定部51は、昇圧器BTを通過する電力の平均値を算出する。この算出された平均値を平均通過電力と呼ぶ。ここで、昇圧器BTを通過する電力は、キャパシタ64からインバータI1,I2,I3に出力される電力を正とし、インバータI1,I2,I3からキャパシタ64に出力される電力を負とする。つまり、当該電力が負であるとき、キャパシタ64は充電していることを意味し、当該電力は正であるとき、キャパシタ64は放電していることを意味する。状態決定部51は、所定のサンプリング時間ごとに昇圧器BTを通過する電力を取得し、所定時間Δt1あたりの平均値を平均通過電力として算出する。
【0088】
つぎに、ステップS11において、状態決定部51は、状態表示部52が直前に「充電状態」を表示したかどうか判定する。直前に「充電状態」を表示した場合(ステップS11でYes)、状態決定部51は、平均通過電力が第1閾値未満であるか否かを判定する(ステップS12)。直前に「充電状態」を表示していない場合(ステップS11でNo)、状態決定部51は、平均通過電力が第2閾値未満であるか否かを判定する(ステップS13)。ここで、第2閾値は第1閾値より小さく、第1閾値及び第2閾値はともに負の値である。すなわち、第2閾値の絶対値は、第1閾値の絶対値より大きい。第1閾値及び第2閾値は予め定められた値であり、制御部31によって記憶されている。
【0089】
平均通過電力が第1閾値もしくは第2閾値未満である場合(ステップS12又はS13でYes)、充電フラグをTrueとする(ステップS14またはステップS15)。平均通過電力が第1閾値もしくは第2閾値以上である場合(ステップS12又はS13でNo)、充電フラグをFalseとする(ステップS20)。ここで、充電フラグとは、状態決定部51が「充電状態」もしくは「放電状態」を決定するために利用するBoolean型のフラグでTrueもしくはFalseのいずれかの値を有する。
【0090】
ステップS14が終了すると、ステップS16において、状態決定部51は、第1カウンタ値が最小表示回数未満であるかどうかを判定する。ここで、第1カウンタは、状態表示部52において「充電状態」を表示した時間を計測するためのカウンタである。このカウンタ値にステップS1を実行する時間間隔Δtsを乗ずれば、「充電状態」を表示した時間を算出することができる。最小表示回数とは、制御部31によって記憶されている予め定められた値であり、「充電状態」を連続して表示する最低限の時間Δt2を表すカウンタ値である。したがって、第1カウンタ値が最小表示回数未満である(ステップS16でYes)とき、「充電状態」を連続して表示する最低限の時間に達していないことを意味する。このとき、ステップS17において、第1カウンタに1を加える。別の言い方をすれば、第1カウンタをインクリメントする。そして、ステップS19において、状態決定部51は、状態表示部52において表示する状態を「充電状態」と決定し、状態表示部52に「充電状態」を表示させる。第1カウンタ値が最小表示回数以上である(ステップS16でNo)とき、状態決定部51は、第1カウンタ値を変更せずに、状態表示部52において表示する状態を「充電状態」と決定し、状態表示部52に「充電状態」を表示させる(ステップS19)。
【0091】
ステップS15が終了すると、ステップS18において、状態決定部51は、第1カウンタをリセットする。つまり、状態決定部51は、第1カウンタのカウンタ値に0をセットする。その後、状態決定部51は、状態表示部52において表示する状態を「充電状態」と決定し、状態表示部52に「充電状態」を表示させる(ステップS19)。ステップS19の終了後は、ステップS1に戻る。
【0092】
ステップS20が終了すると、ステップS21において、状態決定部51は、放電フラグがTrueであるか否かを判定する。放電フラグとは、状態決定部51が「充電状態」もしくは「放電状態」を決定するために利用するBoolean型のフラグでTrueもしくはFalseのいずれかの値を有する。放電フラグの値の設定方法については後述する。放電フラグがTrueである(ステップS21でYes)とき、状態決定部51は、第1カウンタのカウンタ値として最小表示回数をセットする(ステップS22)。すなわち、後述のステップS23〜S25によって、状態表示部52に「充電状態」を表示させないようにする。放電フラグがFalseであるとき(ステップS21でNo)、もしくは、ステップS22が終了したとき、ステップS23において、状態決定部51は、第1カウンタ値が最小表示回数未満であるかどうかを判定する。第1カウンタ値が最小表示回数未満である(ステップS23でYes)とき、ステップS24において、第1カウンタに1を加える。別の言い方をすれば、第1カウンタをインクリメントする。その後、状態決定部51は、状態表示部52において表示する状態を「充電状態」と決定し、状態表示部52に「充電状態」を表示させる(ステップS25)。ステップS23〜S25によれば、充電フラグがFalseであるにも関わらず、放電フラグがTrueでなく、且つ、状態表示部52にて表示する状態が充電状態に変化してから所定時間Δt2を経過するまでは、状態決定部51は、充電状態(すなわち、変化してからの状態)を状態表示部52にて表示する状態として決定する。第1カウンタ値が最小表示回数以上である(ステップS23でNo)とき、もしくはステップS25が終了すると、ステップS1に戻る。
【0093】
図9A及び
図9Bは、状態決定部51が放電状態を決定する処理の流れを示すフローチャートである。この場合も、まず、ステップS1において、状態決定部51は、平均通過電力を算出する。つぎに、ステップS31において、状態決定部51は、状態表示部52が直前に「放電状態」を表示したかどうか判定する。直前に「放電状態」を表示した場合(ステップS31でYes)、状態決定部51は、平均通過電力が第3閾値より大きいか否かを判定する(ステップS32)。直前に「放電状態」を表示していない場合(ステップS31でNo)、状態決定部51は、平均通過電力が第4閾値より大きいか否かを判定する(ステップS33)。ここで、第4閾値は第3閾値より大きく、第3閾値及び第4閾値はともに正の値である。すなわち、第4閾値の絶対値は、第3閾値の絶対値より大きい。第3閾値及び第4閾値は予め定められた値であり、制御部31によって記憶されている。
【0094】
平均通過電力が第3閾値もしくは第4閾値より大きい場合(ステップS32又はS33でYes)、放電フラグをTrueとする(ステップS34またはステップS35)。平均通過電力が第3閾値もしくは第4閾値以下である場合(ステップS32又はS33でNo)、放電フラグをFalseとする(ステップS40)。
【0095】
ステップS34が終了すると、ステップS36において、状態決定部51は、第2カウンタ値が最小表示回数未満であるかどうかを判定する。ここで、第2カウンタは、状態表示部52において「放電状態」を表示した時間を計測するためのカウンタである。このカウンタ値にステップS1を実行する時間間隔Δtsを乗ずれば、「放電状態」を表示した時間を算出することができる。最小表示回数とは、制御部31によって記憶されている予め定められた値であり、「放電状態」を連続して表示する最低限の時間Δt2を表すカウンタ値である。したがって、第2カウンタ値が最小表示回数未満である(ステップS36でYes)とき、「放電状態」を連続して表示する最低限の時間に達していないことを意味する。このとき、ステップS37において、第2カウンタに1を加える。別の言い方をすれば、第2カウンタをインクリメントする。そして、ステップS39において、状態決定部51は、状態表示部52において表示する状態を「放電状態」と決定し、状態表示部52に「放電状態」を表示させる。第2カウンタ値が最小表示回数以上である(ステップS36でNo)とき、状態決定部51は、第2カウンタ値を変更せずに、状態表示部52において表示する状態を「放電状態」と決定し、状態表示部52に「放電状態」を表示させる(ステップS39)。
【0096】
ステップS35が終了すると、ステップS38において、状態決定部51は、第2カウンタをリセットする。つまり、状態決定部51は、第2カウンタのカウンタ値に0をセットする。その後、状態決定部51は、状態表示部52において表示する状態を「放電状態」と決定し、状態表示部52に「放電状態」を表示させる(ステップS39)。ステップS39の終了後は、ステップS1に戻る。
【0097】
ステップS40が終了すると、ステップS41において、状態決定部51は、充電フラグがTrueであるか否かを判定する。充電フラグがTrueである(ステップS41でYes)とき、状態決定部51は、第2カウンタのカウンタ値として最小表示回数をセットする(ステップS42)。すなわち、後述のステップS43〜S45によって、状態表示部52に「放電状態」を表示させないようにする。充電フラグがFalseであるとき(ステップS41でNo)、もしくは、ステップS42が終了したとき、ステップS43において、状態決定部51は、第2カウンタ値が最小表示回数未満であるかどうかを判定する。第2カウンタ値が最小表示回数未満である(ステップS43でYes)とき、ステップS44において、第2カウンタに1を加える。別の言い方をすれば、第2カウンタをインクリメントする。その後、状態決定部51は、状態表示部52において表示する状態を「放電状態」と決定し、状態表示部52に「放電状態」を表示させる(ステップS45)。ステップS43〜S45によれば、放電フラグがFalseであるにも関わらず、充電フラグがTrueでなく、且つ、状態表示部52にて表示する状態が放電状態に変化してから所定時間Δt2を経過するまでは、状態決定部51は、放電状態(すなわち、変化してからの状態)を状態表示部52にて表示する状態として決定する。第2カウンタ値が最小表示回数以上である(ステップS43でNo)とき、もしくはステップS45が終了すると、ステップS1に戻る。
【0098】
なお、ステップS43〜S45が実行されるのは、放電フラグも充電フラグもともにFalseの場合に限られる。充電フラグと放電フラグの一方がTrueであれば、ステップS19又はS39が必ず実行されるため、状態決定部51は、第1〜第4閾値を利用して状態表示部52にて表示する状態を充電状態と放電状態のいずれか一方に決定できている。したがって、ステップS43〜S45が実行されるのは、状態決定部51が、第1〜第4閾値を利用して状態表示部52にて表示する状態を充電状態とするか、放電状態とすることに決定できない場合に限られる。同様に、ステップS23〜S25が実行されるのは、放電フラグも充電フラグもともにFalseの場合に限られる。したがって、ステップS23〜S25が実行されるのは、状態決定部51が、第1〜第4閾値を利用して状態表示部52にて表示する状態を充電状態とするか、放電状態とすることに決定できない場合に限られる。
【0099】
上述する「放電状態」か否かの決定処理と、「充電状態」か否かの決定処理は、並列的に実行されてもよい。その場合、ステップS34,S35,S40のいずれかのステップが終了した後、ステップS21が実行されるとよい。また、ステップS14,S15,S20のいずれかのステップが終了した後、ステップS41が実行されるとよい。
【0100】
あるいは、「放電状態」か否かの決定処理と、「充電状態」か否かの決定処理は、逐次的に実行されてもよい。この場合、例えば、ステップS1〜ステップS15、ステップS20の処理と、ステップS1〜ステップS35、ステップS40の処理とが先に実行され、ステップS16〜S19、S21〜S25の処理と、ステップS36〜S39、S41〜S45の処理とが後から実行されるとよい。
【0101】
つぎに、本実施形態に係る作業車両1の特徴について説明する。まず、状態決定部51の状態決定方法の効果について説明する。
図10は、本実施形態に係る状態決定処理を行わない場合の充電表示と放電表示の例を示した図である。
図10(a)は、作業車両1がある作業を行った場合の作業車両1の車速の変化を示す。この作業は、土砂などの荷物を掘削してダンプトラックの荷台に積み込む作業である。時刻0からt1まで、作業車両1は前進する。時刻t1からt2まで、作業車両1は前進しながら掘削する。時刻t2からt4まで、作業車両1は後進する。時刻t4からt6まで、作業車両1は、前進しながらダンプトラックに近づき(以下、「ダンプアプローチ」と呼ぶ)、荷物をバケット12からダンプトラックの荷台に下ろす(以下、「排土」と呼ぶ)。時刻t3からt5まで、作業車両1は、後進しながら、前進用クラッチCFに切り換える所謂シャトル動作を行う。時刻t6からt8まで、作業車両1は後進する。時刻t8以降は、作業車両1は前進する。時刻t7からt9までは、作業車両1は、後進しながら、前進用クラッチCFに切り換える所謂シャトル動作を行う。
【0102】
図10(b)は、作業車両1が
図10(a)の作業を行った際の昇圧器BTを通過する電力の時系列変化である。ここで、電力が正である場合、キャパシタ64が放電していることを示している。そして、電力が負である場合、キャパシタ64が充電していることを示している。作業車両1は、一般的な自動車と異なり、作業機3の動作のためにもエンジン21の出力が利用される。したがって、キャパシタ64の充電/放電による電力の変動が一般の自動車よりも激しい。このため、電力の変動がスパイク(spike)状に変化する状態も生じている。
【0103】
図10(c)は、
図10(b)の電力変動をもとに充電表示/放電表示を行った例を示している。この例では、
図10(b)において電力が正の値だった場合、放電表示とし、電力が負の値だった場合、充電表示としている。もし、
図10(c)のような充電表示/放電表示をオペレータに表示した場合、短時間の放電/充電が切り換わることによってオペレータは視認しづらくなっている。
【0104】
図11は、本実施形態に係る状態決定処理を行う場合の充電表示と放電表示の例を示している。
図11(a)は、
図10(a)と同じ車速の変化を示している。
図11(d)は、
図10(b)の電圧に対し、所定時間Δt1あたりの平均値(平均通過電力)を表示したものである。この場合のΔt1は0.5秒である。この処理によって、
図10(b)に見られたスパイク状の急激な変動が除去され、電力の変動が滑らかとなっている。
【0105】
図11(e)は、
図11(d)の平均通過電力の変動をもとに充電表示/放電表示を行った例を示している。この例では、
図11(d)において平均通過電力が正の値だった場合、放電表示とし、平均通過電力が負の値だった場合、充電表示としている。
図11(d)では、時刻t1からt4の間で平均通過電力が0付近となり、頻繁に正負の変化が生じている。このため、特に時刻t1からt4の間において短時間の放電/充電が切り換わることによってオペレータは視認しづらくなっている。
【0106】
図11(f)は、ステップS12,S13,S32,S33の処理を加えた結果を示している。これによって、平均通過電力が0付近となり、頻繁に正負の変化が生じたとしても、第1閾値〜第4閾値を利用して判定方法にヒステリシスを加えることにより、短時間で頻繁に充電表示/放電表示が切り換わることが抑止されている。しかし、ヒステリシスを加えることで、充電表示と決定される時間の長さ、放電処理と決定される時間の長さがそれぞれ短くなるので、
図11(f)において(i)(ii)(iii)で示された区間のように、充電表示/放電表示が極めて短時間となってしまうこともある。
【0107】
図11(g)は、
図11(f)の処理に加えて、さらにステップS16〜S18,S22〜S25,S36〜S38,S42〜S45の処理を加えた結果を示している。これによって、充電表示/放電表示が最低限、時間Δt2だけ行われる。時間Δt2は具体的には1秒である。これによって、充電表示/放電表示が極めて短時間となってしまうことにより、オペレータが充電表示/放電表示を視認できなくなることが抑止される。
【0108】
以上によって、キャパシタ64の充電/放電による電力の変動が一般の自動車よりも激しい作業車両1であっても、オペレータがキャパシタ64の蓄電状態/放電状態を容易に視認することができる。
【0109】
さらに、蓄電量表示部53は、少なくとも3つのバー状素子を含む。点灯されるバー状素子が1個となる状態からすぐに充電不足になれば、作業性が低下してしまう。しかし、本蓄電量表示部53では、点灯されるバー状素子が1個となる状態におけるキャパシタ64の最大蓄電量と最小蓄電量の差は、点灯されるバー状素子が2つ以上のいずれかの個数となる状態におけるキャパシタ64の最大蓄電量と最小蓄電量の差より大きい。したがって、上述する作業性の低下は防止される。さらに、キャパシタ64が通常使用される電圧では、最大蓄電量と最小蓄電量の差を小さくし、その蓄電量に対応するバー状素子が設けられる。したがって、オペレータがキャパシタ64の蓄電量が通常の充電量よりも多いか/少ないかを容易に判断することができる。
【0110】
キャパシタ64が充電状態であることを表す第1表示素子55は蓄電量表示部53の第1の側に配置され、キャパシタ64が放電状態であることを表す第2表示素子56は蓄電量表示部53の第2の側に配置される。したがって、充電状態/放電状態の表示位置が異なるので、オペレータによる視認性が向上される。なお、
図5等に示すように、第1表示素子55と第2表示素子56とは、蓄電量表示部53に対して対称となる位置に配置されると、オペレータが充電状態と放電状態とを識別することがさらに容易となる。また、第1表示素子55が表示する色と、第2表示素子56が表示する色は異なる。このため、オペレータが充電状態と放電状態とを識別することがさらに容易となる。
【0111】
キャパシタ64が充電状態である場合において、状態表示部52は、蓄電量表示部53に向かうアローヘッドを表示している。また、キャパシタ64が放電状態である場合において、状態表示部52は、蓄電量表示部53に向かう方向と反対の方向へ向かうアローヘッドを表示している。蓄電量表示部53に向かうアローヘッドによって、オペレータが充電状態であることが視覚的に理解しやすくなる。また、蓄電量表示部53に向かう方向と反対の方向へ向かうアローヘッドによって、オペレータが放電状態であることが視覚的に理解しやすくなる。ゆえに、オペレータが充電状態と放電状態とを識別することがさらに容易となる。
【0112】
キャパシタ64が充電状態である場合において、状態表示部52は、第1表示素子55のうち、蓄電量表示部53から最も遠い素子55cから蓄電量表示部に最も近い素子55aに向かって、点灯する素子が順に移動するように表示する。これによって、キャパシタ64が充電状態である場合、電力がキャパシタ64に向かって出力されていることが、オペレータに理解しやすくなる。ゆえに、オペレータが充電状態を識別することがさらに容易となる。
【0113】
また、キャパシタ64が放電状態である場合において、状態表示部52は、第2表示素子56のうち、蓄電量表示部53に最も近い素子56cから蓄電量表示部から最も遠い素子56aに向かって、点灯する素子が順に移動するように表示する。これによって、キャパシタ64が充電状態である場合、電力がキャパシタ64から出力されていることが、オペレータに理解しやすくなる。ゆえに、オペレータが放電状態を識別することがさらに容易となる。
【0114】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0115】
図8A及び
図9Aにおいて、キャパシタ64からインバータI1,I2,I3に出力される電力を正とし、インバータI1,I2,I3からキャパシタ64に出力される電力を負とする平均通過電力を利用して、ステップS12,S13,S32,S33の処理が実行されている。しかし、キャパシタ64からインバータI1,I2,I3に出力される電力を負とし、インバータI1,I2,I3からキャパシタ64に出力される電力を正とする平均通過電力を利用する場合、S12,S13,S32,S33において、平均通過電力と第1〜第4閾値との大小関係が逆となる。すなわち、ステップS12では、状態決定部51は、平均通過電力が第1閾値より大きいか否かを判定する。ステップS14は、平均通過電力が第1閾値より大きい場合に実行される。ステップS13では、状態決定部51は、平均通過電力が第2閾値より大きいか否かを判定する。ステップS15は、平均通過電力が第2閾値より大きい場合に実行される。ステップS32では、状態決定部51は、平均通過電力が第3閾値未満であるか否かを判定する。ステップS34は、平均通過電力が第3閾値未満である場合に実行される。ステップS33では、状態決定部51は、平均通過電力が第4閾値未満であるか否かを判定する。ステップS35は、平均通過電力が第4閾値未満である場合に実行される。
【0116】
上述の実施形態では、昇圧器BTを通過する電力をもとに、状態決定部51は、充電状態もしくは放電状態を決定しているが、状態決定部51は、他のパラメータを使用して決定してもよい。例えば、キャパシタ64へ供給される電気もしくはキャパシタ64から放出される電気を表すパラメータとして、キャパシタ64へ流入する電流/キャパシタ64から流出する電流や、キャパシタ64の電圧の変化などが考えられる。また、キャパシタ64の代わりにバッテリーを使用する場合、昇圧器BTが不要となるので、その場合、バッテリーへ流入する電流/バッテリーから流出する電流を当該パラメータとして使用するとよい。状態決定部51は、このようなパラメータを利用して、充電状態もしくは放電状態を判定してもよい。このとき、電気がキャパシタ64から放出されるときに当該パラメータが正の値となり、電気がキャパシタ64に流入されるときに当該パラメータが負の値となる場合、ステップS12,S13,S32,S33の判定が
図8A及び
図9Aと同じ処理が実行される。しかし、このとき、電気がキャパシタ64から放出されるときに当該パラメータが負の値となり、電気がキャパシタ64に流入されるときに当該パラメータが正の値となる場合、ステップS12,S13,S32,S33において、上述するようにパラメータと第1〜第4閾値との大小関係が逆となる。なお、他のパラメータが使用される場合、当該パラメータに対応する第1閾値〜第4閾値が予め設定される。
【0117】
また、
図8B、
図9Bにおいて、ステップS22とステップS42が実行される代わりに、以下の処理を行ってもよい。放電フラグがTrueである(ステップS21でYes)とき、ステップS1に進んでもよい。また、充電フラグがTrueである(ステップS41でYes)とき、ステップS1に進んでもよい。
【0118】
蓄電量表示部53の素子の形状は、バー状でなくてもよい。例えば、蓄電量表示部53の素子の形状は、燃料計58のような円弧状の形状であってもよい。
【0119】
動力伝達装置24の構成は上記の実施形態の構成に限られない。例えば、2つの遊星歯車機構68,69の各要素の連結、配置は、上記の実施形態の連結、配置に限定されるものではない。遊星歯車機構の数は2つに限らない。例えば、動力伝達装置は1つの遊星歯車機構を備えてもよい。モータの数は3つに限らない。例えば、第3モータMG3が省略されてもよい。また、第1〜第3モータMG1-MG3の位置は、上記の実施形態の位置に限られず、変更されてもよい。
【0120】
動力伝達装置は、上述したような遊星歯車機構を用いた所謂スプリット方式の装置に限られない。動力伝達装置として、所謂シリーズ方式、パラレル方式の装置が採用されてもよい。
オペレータが蓄電装置の蓄電状態/放電状態を容易に視認できる作業車両及び作業車両の制御方法を提供する。状態表示部は、蓄電装置が充電状態か、放電状態かを表示する。状態決定部は、蓄電装置へ供給される電気もしくは蓄電装置から放出される電気に対応するパラメータをもとに、状態表示部において表示する状態を決定する。状態決定部は、状態表示部にて直前に表示した状態が充電状態(放電状態)であるか否かによって、状態表示部において表示する状態を充電状態(放電状態)と決定するためのパラメータの閾値を変える。状態決定部は、状態表示部において表示する状態が充電状態もしくは放電状態に変化してから所定の第1時間を経過するまでは、変化してからの状態を状態表示部において表示する状態として決定する。