特許第5702104号(P5702104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5702104
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】絶縁継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 25/02 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
   F16L25/02
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-228095(P2010-228095)
(22)【出願日】2010年10月8日
(65)【公開番号】特開2012-82878(P2012-82878A)
(43)【公開日】2012年4月26日
【審査請求日】2013年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】松林 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一聡
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−10587(JP,U)
【文献】 実開昭60−23390(JP,U)
【文献】 特開平9−60774(JP,A)
【文献】 特開2003−97777(JP,A)
【文献】 特開2008−248983(JP,A)
【文献】 特開2005−351434(JP,A)
【文献】 実開昭59−139690(JP,U)
【文献】 独国特許出願公開第4424162(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手本体の一端にブッシュの内周に形成しためねじと前記継手本体の一端外周に形成したおねじとを螺着固定し、前記ブッシュの先端外周にフランジ部を突設形成し、このフランジ部の外径より小さい鍔部内径を持つ異種金属材質の袋ナットを前記フランジ部に固定した絶縁リングを介在させて取付けると共に、前記ブッシュの螺合時にブッシュの後部側に形成した段部を前記継手本体外周に形成した突部に当接することにより前記ブッシュを位置決め固定して前記フランジ部の端面と前記継手本体との端面とを略同一平面上に配置し、前記ブッシュと前記継手本体との螺着部位を跨ぐようにして双方の端面をシール部材でシールするようにしたことを特徴とする絶縁継手。
【請求項2】
前記絶縁リングの先端内周側に係合突部を設け、この係合突部を前記継手本体に螺着した前記ブッシュのフランジ部にスナップ嵌合した請求項に記載の絶縁継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水等の給水やその他の液体や気体等の流体の流路に設けられる絶縁継手に関し、特に、袋ナットと継手本体との電位差による電気的腐食を防止する絶縁継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、継手本体に袋ナットが備えられ、この袋ナットを介して外部の配管と継手本体とを接続するようにした管継手が知られている。通常、この種の管継手では継手本体はステンレスによって形成されるが、袋ナットは、接続する配管部材と同族材質とすることを目的として継手本体とは異なる金属、例えば、青銅などにより形成されることが多くなっている。この場合、継手本体と袋ナットとが異種金属になることでこれらの間に電位差が生じて腐食が発生しやすくなり、特に、地中に埋設された管継手に流体として水が流れる場合にはより腐食が起こりやすくなる。このような腐食を防ぐために、袋ナットと継手本体との間に絶縁部材を設けた絶縁継手が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1の腐食防止金属製配管継手においては、先端フランジを有する継手胴の外周側に、立ち上がりフランジを設けた絶縁筒体と抜け止めリング筒とを配設し、この絶縁筒体、抜け止めリング筒を袋ナットと継手胴の接続部に嵌着することで、袋ナットと継手胴とが直接接触することを防ごうとするものである。この絶縁筒体と抜け止めリング筒の側部には割裂部が設けられ、この割裂部により絶縁筒体、抜け止めリング筒を拡径させ、継手胴のフランジを乗り越えさせて取付けるようになっている。
【0004】
一方、図5の配管継手1は、継手部2の内周位置に螺合可能なブッシュ部材3と、先端側に拡径筒部4を有し、継手部2の外周側に装着される絶縁筒体5と、袋ナット状のナット部材6とを有する継手である。この配管継手1では、継手部2の内周位置に取付けたブッシュ部材3に形成されたフランジ7で絶縁筒体5を抜け止めし、この絶縁筒体5で継手部2とナット部材6とを絶縁しようとするものである。絶縁筒体5を装着する場合には、継手部2の外周にこの絶縁筒体5を遊嵌状態に装着し、この状態で継手部2の内周側にブッシュ部材3を螺合し、次いで、フランジ7に拡径筒部4を嵌合させるようにして継手部2の先端側に絶縁筒体5を配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−351434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の腐食防止金属製配管継手は、継手胴の外周側に絶縁筒体と抜け止めリングとを配設するために、この絶縁筒体、抜け止めリング筒に継手胴の先端フランジを乗り越えるための割裂部を設け、組立時にはこの割裂部により絶縁筒体、抜け止めリング筒を拡径しながら装着する必要があった。このため、組立てが難しくなり、かつ、先端フランジを継手胴に一体に形成しているため、この継手胴の面間が延びて構造も複雑化していた。継手胴や外部の継手に斜め方向の外力が加わった場合には、継手胴と外部の継手との間に傾きが生じ、この傾きによって割裂部に隙間が発生したり絶縁継手全体が変形・破断することでこの部分から漏れを生じたり、電位差による腐食が発生するおそれがある。
【0007】
図5の配管継手1は、継手部2の内周位置にブッシュ部材3が螺合され、このブッシュ部材3に設けたフランジ7で絶縁筒体5を抜け止めしていることから、絶縁筒体5にフランジ7を乗り越えさせるための拡径用の割裂部位を形成する必要はない。しかし、この配管継手1では、図6に示すように絶縁筒体5が継手部2に常時固定されておらず、ナット部材6が管軸L方向に移動したときには絶縁筒体5も移動できる構造になっているため、絶縁筒体5によるフランジ7の被覆状態が維持されずにこのフランジ7がナット部材6に形成された雌ネジ8に接触するおそれがあった。この接触により、この配管継手1は、輸送中や保管中などに雌ネジ8が変形したり破損する可能性が生じて、外部の配管部材9を接続できなくなったり接続後に流体漏れが生じることがあった。また、継手部2とブッシュ部材3との間から流体が配管継手1の外部に漏出するおそれもあった。更には、継手部2の内周位置にブッシュ部材3を螺着している構造により、継手部の内径が小さくなって圧力損失が大きくなると共に製作も困難になっていた。
【0008】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、電気的腐食を防ぎつつ外部の配管を接続できる絶縁継手であって、袋ナットの変形や破損を防止して外部への漏れを防ぎつつ強固に配管を接続でき、接続作業や製作も容易であり圧力損失の少ない絶縁継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、継手本体の一端にブッシュの内周に形成しためねじと前記継手本体の一端外周に形成したおねじとを螺着固定し、前記ブッシュの先端外周にフランジ部を突設形成し、このフランジ部の外径より小さい鍔部内径を持つ異種金属材質の袋ナットを前記フランジ部に固定した絶縁リングを介在させて取付けると共に、前記ブッシュの螺合時にブッシュの後部側に形成した段部を前記継手本体外周に形成した突部に当接することにより前記ブッシュを位置決め固定して前記フランジ部の端面と前記継手本体との端面とを略同一平面上に配置し、前記ブッシュと前記継手本体との螺着部位を跨ぐようにして双方の端面をシール部材でシールするようにした絶縁継手である。
【0012】
請求項に係る発明は、絶縁リングの先端内周側に係合突部を設け、この係合突部を継手本体に螺着したブッシュのフランジ部にスナップ嵌合した絶縁継手である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によると、継手本体と袋ナットとの間を絶縁リングで絶縁して電気的腐食を防いだ状態で外部の配管を接続でき、フランジ部の外周に固定機構を介して絶縁リングを固定していることにより、袋ナットの雌螺子がフランジ部に直接接触することを回避でき、袋ナットの変形や破損を防いで外部への漏れを防ぎながら継手本体と外部の配管とを強固に接続できる。しかも、構造を簡略化できるため接続作業や製作も容易である。
さらには、ブッシュ内周のめねじと継手本体外周のおねじとによりブッシュを継手本体の外周に螺着していると共に、ブッシュの螺合時にブッシュの後部側に形成した段部を継手本体外周に形成した突部に当接することによりブッシュを位置決め固定しているので、継手本体による流路面積を大きく確保でき、略同一平面上に配置されたフランジ部の端面と継手本体の端面を共通のシール部材でシールすることで、これらの隙間を塞いでシール性を向上できる。
【0015】
縁リング又はフランジ部の何れの側にも係止部を形成でき、この係止部に他方側を係止固定して絶縁リングをフランジ部に固定できる。このため、簡単な構造により固定機構を設けることができ、この固定機構を各種の形状に設けることもできる。
【0016】
また、フランジ部を継手本体とは別体のブッシュの螺着固定により構成して着脱できることから、絶縁リングにスリットを設けることなく直接継手本体に取付けできる。このため、継手本体に絶縁リングを容易に組付けることが可能になり、全体の構造も簡略化できる。継手本体に斜め方向の力が加わった場合には、袋ナットの傾きを抑制して絶縁リングの変形や破断を回避して袋ナットとの絶縁状態を確保できることで腐食を防止できる。
【0017】
しかも、袋ナットが管軸方向に移動した場合でも絶縁リングのブッシュへの強固な取付け状態を維持することができ、袋ナットの雌螺子がフランジ部に接触することを阻止してその変形や破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の絶縁継手の好ましい実施形態を示す半截断面図である。
図2図1の要部拡大断面図である。
図3】本発明の絶縁継手の分離斜視図である。
図4】袋ナット付近を示した断面図である。
図5】従来の配管継手を示した縦断面図である。
図6図5における袋ナットが移動した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明における絶縁継手の好ましい実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1においては、本発明の絶縁継手の好ましい実施形態を示しており、図2においては、図1の絶縁継手の要部、図3においては、絶縁継手の分離斜視図を示している。
【0021】
図1図3において、本発明における絶縁継手は、継手本体10と、袋ナット11と、絶縁リング12とを有し、図2に示すように、継手本体10は、袋ナット11によりシール部材13を介して外部の配管14と接続可能になっている。継手本体10の一端にはフランジ部15が設けられており、このフランジ部15に袋ナット11が絶縁リング12を介在した状態で取付けられている。
【0022】
図1において、この絶縁継手における継手本体10は、例えば、ステンレス等の材料によって略円筒形状に形成され、この継手本体10の一端の先端外周にはおねじ16が形成されている。
【0023】
一方、前記フランジ部15は、継手本体10と別体に設けられるブッシュ17の端外周に突設形成され、更に、このフランジ部15よりも後部側には縮径部18が形成されている。ブッシュ17は、例えば、継手本体10と同じステンレス材料により形成され、このブッシュ17の内周にはおねじ16に螺合可能なめねじ19が形成され、おねじ16とめねじ19との螺合により継手本体10の一端にブッシュ17が固定されてフランジ部15が構成される。このとき、縮径部18の端部内径には切り欠き段部18aが形成されており、この切り欠き段部18aを継手本体10外周に設けた突部10bに当接することでブッシュ17の位置決めを行なっている。おねじ16とめねじ19との螺合時には、フランジ部15の端面15aと継手本体10の端面10aとが継手本体10の先端側において略同一平面上に配置した状態になる。


【0024】
継手本体10に係合される袋ナット11は、継手本体10及びブッシュ17とは異種金属材質の材料により形成され、例えば、青銅材料により形成される。袋ナット11の後方部内周には環状の鍔部20が形成され、この鍔部20よりも先方側には、配管14に形成された雄螺子21に螺合可能な雌螺子22が形成されている。
【0025】
図2に示すように、絶縁リング12は、例えば、POM(ポリアセタール)等の樹脂材料により環状に形成され、ブッシュ17のフランジ部15を被覆可能な大径部25と、縮径部18を被覆可能な小径部26と、大径部25と小径部26とを結び、フランジ部15後端側の当接面15bに当接可能な当接部27とを有している。
絶縁リング12は、フランジ部15の外周位置に固定機構30を介して固定され、これにより、当該絶縁リング12が常時フランジ部15に固定保持される。
【0026】
固定機構30は、絶縁リング12に形成した係止部31を、対応するフランジ部15に係止固定することで絶縁リング12とフランジ部15(ブッシュ17)とを固定する機構であり、本実施形態においては、係止部31として係合突部が設けられている。
係合突部31は、絶縁リング12の先端内周側に環状に形成され、フランジ部15に継手本体10に螺着したブッシュ17のフランジ部15にスナップ嵌合可能な形状に設けられている。これにより、固定機構30によって絶縁リング12がフランジ部15に係止固定されてブッシュ17から抜け止めされている。
【0027】
係止部31は、必ずしも係合突部として絶縁リング12の内周側の先端に形成される必要はなく、絶縁リング内周の適宜位置に形成されていればよい。このため、図示しないが、例えば、係止部を拡径部の内周の途中位置に突設形成し、この係止部が嵌合可能な凹状の嵌合部をブッシュの外周側に形成して、これらを嵌合させて絶縁リングを抜け止めしてもよい。更に、図示しないが、固定機構として、フランジ部に係止部を形成し、この係止部を対応する絶縁リングの適宜位置に係止固定することも可能である。
【0028】
絶縁リング12の継手本体10側端部には、継手中心方向への折曲部12aを形成している。この折曲部12aにより、ブッシュ17の縮径部18の端部の露出を防ぎ、絶縁を更に確実にしており、また、継手本体10側から、絶縁リング12の固定状態を視認することができる。
【0029】
配管14のおねじ12、袋ナットのめねじ22を管用平行ねじとした場合を図2における管軸Pよりも上半分Aに示し、おねじ12、めねじ22を金門ねじとした場合を管軸Pよりも下半分Bに示している。この上半分A、下半分Bは、何れも継手呼び径20Aの形状を示しており、金門ねじを形成した袋ナット11のめねじ22bの内径は、管用平行ねじを形成した袋ナットのめねじ22aの内径よりもやや大きい。
【0030】
従って、下半分Bにおけるめねじ22bの内径と絶縁リング12との間には、隙間tが形成されるが、めねじ22bよりも鍔部20側の袋ナット11の内周11aは、上半分Aにおけるめねじ22aを形成した袋ナット11と同様に、絶縁リング12とは略隙間なく対向した状態となっている。従って、下半分Bの場合でも袋ナット11が傾くのを抑制することができ、絶縁をより確実に得ることができる。なお、内周11aは、絶縁リング12を介してフランジ部15と対向するように形成することにより、袋ナット11の傾きを効果的に抑制することができる。
【0031】
外部配管14の雄螺子21、袋ナット11の雌螺子22として、上水ねじと呼ばれる規格のねじ以外の螺子を用いることも可能であり、その態様は、実施に応じて任意である。この絶縁継手は、水道用メータに限定されることはなく、例えば、分水栓等の器具やその他の各種の一般的な配管継手にも適用できる。
【0032】
図1において、継手本体10の袋ナット11の他端側には、例えば、適宜の構造の配管接続部32を設けることができ、例えば、この配管接続部32をいわゆるワンタッチ接続可能な構造に設けることで、外部の継手配管33を挿入してワンタッチで接続できる。
【0033】
上記実施形態の絶縁継手を一体に組立てる場合には、図4に示すように、継手本体10の端部側から袋ナット11を差し込むように装着し、この袋ナット11をおねじ16よりも後退させた状態にする。次いで、絶縁リング12をブッシュ17のフランジ部15の外周に被せるように固定し、おねじ16の周囲に図示しない適宜の接着剤を塗布してからブッシュ17をおねじ16に停止するまで螺合して継手本体10に固定させる。その後、外部にはみ出た接着剤を拭き取り、ブッシュ17の固着後に袋ナット11を継手本体10から先端側に引き出してこの継手本体10に対して円滑に回ることを確認する。前記の接着剤は塗布しないようにしてもよい。
【0034】
このように絶縁リング12をブッシュ17の外周位置に固定させ、このブッシュ17を継手本体10に螺着して継手本体10に絶縁リング12を固定しているので、組立時にフランジ部15を乗り越えさせながら絶縁リング12を継手本体10に装着する必要が無く、絶縁リング12を継手本体10に差し込むだけで装着でき、かつ、継手本体10の面間を短く形成できることで内部構造も簡略化できる。切り欠き段部18aを突部10bに当接することでめねじ16とおねじ19とを位置決めしながら螺合させて継手本体10とブッシュ17と固定しているので組立てが容易になり、継手本体10とブッシュ17との間にシール剤やシール機構を設ける必要もない。更に、ブッシュ17のシール部材13を押圧する側の面積を大きく形成できることから、シール部材13とのシール性を向上させることもできる。このシール部材13は、円環状であって、ニトリルゴム等の合成ゴム材料などにより設けることができ、シール性を高めることができる。
【0035】
本発明の絶縁継手は、絶縁リング12とフランジ部15とを係止部31により係止固定した固定機構30を構成することによって、フランジ部15の外周位置に絶縁リング12を常時固定保持させているので、図4に示すように袋ナット11が管軸P方向に後退移動したときにも絶縁リング12によるフランジ部15の被覆状態を維持でき、袋ナット11がフランジ部15に対して移動してもフランジ部15と袋ナット11の雌螺子22とが接触することがない。このため、袋ナット11の輸送中や保管中などに雌螺子22が変形したり破損したりすることが防がれ、接続時にはシール状態を確保しつつ継手本体10と外部配管14(例えば、サドル付分水栓の分岐配管)とを接続できる。この場合、別体のブッシュ17を継手本体10の外周位置に螺着固定してフランジ部15を構成しているので継手本体10の端部付近の肉厚を確保でき、この端部付近におねじ16を加工することも容易になる。ブッシュ17を継手本体10に取付ける際には、特殊な工具等を用いることなく簡単に取付けできる。
【0036】
この場合、絶縁リング12の先端内周側に係止部として係合突部31を設け、この係合突部31をフランジ部15にスナップ嵌合しているので、ブッシュ17への絶縁リング12の取付け状態が強固に維持され、この絶縁リング12がフランジ部15から簡単に脱落することがない。
【0037】
図2に示すように、継手本体10に配管14を接続する場合、継手本体10に装着した袋ナット11を配管14に螺合すればよい。このとき、当接部27が鍔部20の先端側に形成される鍔部端面20aによりフランジ部15の方向に押され、この当接部27が当接面15bと鍔部端面20aと間に挟まれた状態で、絶縁リング12が装着される。このように絶縁リング12は、ブッシュ17のフランジ部15に密着した状態で固定される。絶縁リング12は、袋ナット11の雌螺子22から鍔部20にかけての内周側とブッシュ17の外周面との間に密着可能な厚さに設けられているため、袋ナット11とブッシュ17との隙間が塞がれた状態でこの絶縁リング12が装着される。
【0038】
このとき、ブッシュ17、絶縁リング12を一端に配置した継手本体10と配管14との間にシール部材13を介在させ、この状態で袋ナット11を配管14に螺合させるようにする。これにより、シール部材13によって継手本体10の少なくとも端面10aと、配管14の端面14aとが水密状態にシールされ、接続後にブッシュ17を覆っている絶縁リング12がスリップワッシャの役割を果たし、ブッシュ17が袋ナット11の回転に同調して共回りすることが防がれる。このため、絶縁リング12がブッシュ17から脱落することがない。ブッシュ17は、非接液、非耐圧部材となり、ブッシュ17と継手本体10との間からの漏れもない。
【0039】
接続後には、フランジ部の端面15aと継手本体の端面10aとが略同一平面上に配置され、双方の端面15a、10aに共通のシール部材13が跨るように配設される。このシール部材13により、端面15a、10aが段差の無い状態でシールされるため、継手本体10・ブッシュ17と、配管14との間の密封性が向上し、高いシール性が確保されてブッシュ17の非接液状態による装着が維持される。従って、少なくとも端面10aと端面15aとが、シール部材13を介して水密状態にシールされていることにより、継手本体10とブッシュ17との接合部であるおねじ16とめねじ19の間から外部に流体が漏れるおそれもない。
【0040】
絶縁リング12によって袋ナット11とブッシュ17との間が隙間の無い状態で均一に保持されるため、継手本体10や配管14に何らかの外部応力が加わったとしても継手本体10と配管14との間に傾きが発生しにくくなり、シール部材13の面圧の偏りが抑えられて高いシール性が保持される。
【0041】
絶縁リング12は、割れの無い環状の形状であることから、外部応力により応力集中が加わった場合にも変形や破断したりすることが抑制され、この絶縁リング12によってブッシュ17外周側と袋ナット11内周側とを均一に保持して漏れや電位差による腐食の発生を確実に防止できる。
【符号の説明】
【0042】
10 継手本体
10a 端面
11 袋ナット
12 絶縁リング
13 シール部材
15 フランジ部
15a 端面
16 おねじ
17 ブッシュ
19 めねじ
30 固定機構
31 係合突部(係止部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6