特許第5702131号(P5702131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5702131テレスコピックカバーのオイルシール構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5702131
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】テレスコピックカバーのオイルシール構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/32 20060101AFI20150326BHJP
   B66C 23/82 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   F16J15/32 301D
   B66C23/82 E
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-281865(P2010-281865)
(22)【出願日】2010年12月17日
(65)【公開番号】特開2012-127474(P2012-127474A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平下 忠正
(72)【発明者】
【氏名】木村 靖志
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−120450(JP,U)
【文献】 実開昭57−032257(JP,U)
【文献】 特開2001−233585(JP,A)
【文献】 特開2000−084306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/32
B66C 23/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンのジブを駆動するギヤジャッキのスクリューロッドの外周を、該スクリューロッドの張出・引込動作と連動して伸縮するよう複数の筒体を嵌合せしめたテレスコピックカバーによって覆い、
該テレスコピックカバーの外側に位置する筒体と内側に位置する筒体との間の嵌合部に、オイルシールを介装してなるテレスコピックカバーのオイルシール構造において、
前記オイルシールの断面形状を、外側に位置する筒体の内周面側に固着される矩形状の台座部と、該台座部の幅方向中央部から内周側へ突出する腰部と、該腰部から内周側へハの字状に延び且つ内側に位置する筒体の外周面に圧接されるリップ部とを有する形状とし、且つ該リップ部のハの字状に延びる先端側が広がる方向へ弾性変形することにより、前記リップ部の前記内側に位置する筒体の外周面に対向する面が前記内側に位置する筒体の外周面に面接触するよう構成したことを特徴とするテレスコピックカバーのオイルシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレスコピックカバーのオイルシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、港湾での岸壁における荷役作業には各種クレーンが利用されているが、その中でダブルリンク式クレーンと称されるものがあり、該ダブルリンク式クレーンの一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【0003】
図3は特許文献1に開示されたダブルリンク式クレーンを示すものであって、1は走行架台であり、該走行架台1の上面側にはセンターポスト1aが立設され、下面側には複数組のタイヤ走行装置2が配設されている。
【0004】
前記センターポスト1a上には、旋回機構3を介して旋回台4が旋回自在に設けられ、該旋回台4上の後部側には機械室5が設けられ、前側にはAフレーム6が立設されている。
【0005】
前記旋回台4上における前端には、フロントリンク7の基端部が軸7aを介して起伏自在に枢着され、該フロントリンク7の基端に近い部分がAフレーム6の上部に回動可能に支持されたバランシングレバー8の先端にテンションバー9を介して連結され、又、前記フロントリンク7の基端に近い部分には、基端部をAフレーム6の中段に枢支せしめたギヤジャッキ10のスクリューロッド11先端が連結されており、該ギヤジャッキ10のスクリューロッド11の張出・引込動作によって前記フロントリンク7が起伏されるようになっている。
【0006】
一方、前記Aフレーム6の上部には上部リンク12の基端が軸12aを介して枢着され、前記フロントリンク7の先端部と、上部リンク12の先端部とがトップジブ13の中間部と基端部とに軸7bと軸12bとを介しそれぞれ連結されてダブルリンクが構成され、前記トップジブ13の先端が水平に引き込み可能となるよう構成されている。
【0007】
前記トップジブ13の先端には吊フレーム14が枢着され、該吊フレーム14より、前記機械室5内に設けられた巻上装置15から繰り出されるワイヤロープ16にて、コンテナ等の荷17を着脱自在な吊具18が吊り下げられている。
【0008】
又、前記旋回台4上の機械室5、Aフレーム6及びフロントリンク7の側部には、トラス組の軌道桁19が陸側から海側へ張り出すように配置されており、該軌道桁19には、海側先端部に運転室20が一体に設けられた移動桁21がその長手方向へ駆動機構(図示せず)により移動可能に搭載されている。
【0009】
尚、前記ダブルリンク式クレーンは、吊具18として、コンテナスプレッダの他、バラ荷用バケットや各種の鋼材の専用吊具等を適宜付け替えることによって、多目的に使用することができるようになっている。
【0010】
前記ダブルリンク式クレーンにおいては、前記ギヤジャッキ10のスクリューロッド11を張り出させると、フロントリンク7が倒伏して、トップジブ13の先端部が図3中、実線で示される如く、海側へ水平に移動する一方、前記ギヤジャッキ10のスクリューロッド11を引き込ませると、フロントリンク7が起立して、トップジブ13の先端部が図3中、仮想線で示される如く、陸側へ水平に移動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−246170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、前記ギヤジャッキ10のスクリューロッド11は、該スクリューロッド11に螺嵌されたナット状部材(図示せず)をモータ等の駆動装置によって回転駆動することにより、張出・引込動作が行われるようになっているが、該スクリューロッド11の張出・引込動作を円滑に行わせるために、前記ナット状部材とスクリューロッド11との間には、潤滑油が供給されている。
【0013】
仮に、前記スクリューロッド11を露出させておくと、該潤滑油が滴下したり、或いはスクリューロッド11に埃等の異物が付着したりするため、図4及び図5に示される如く、スクリューロッド11の外周を、該スクリューロッド11の張出・引込動作と連動して伸縮するよう複数の筒体22を嵌合せしめたテレスコピックカバー23によって覆い、該テレスコピックカバー23の外側に位置する筒体22と内側に位置する筒体22との間の嵌合部に、図6に示される如く、オイルシール24を介装することにより、潤滑油の滴下やスクリューロッド11に対する異物の付着を防止することが一般に行われている。
【0014】
ここで、図6に示される例では、前記外側に位置する筒体22の基端部に、外周側へ張り出すベースフランジ25を設けると共に、該ベースフランジ25に対峙するフランジ部26aと前記外側に位置する筒体22の基端部内に嵌入されるシール受部26bとからなるシール受26を設け、該シール受26内に、テフロン(登録商標)等のフッ化炭素樹脂からなるシール部材27と、ニトリルゴムからなる前記オイルシール24と、銅合金製のシールブッシュ28とを組み込み、シール押え29で蓋をし、該シール押え29及びシール受26のフランジ部26aを前記ベースフランジ25に対しボルト・ナット等の締結部材30で固定するようになっている。
【0015】
尚、前記オイルシール24は、帯状のシール部材の両端を接着剤で接合し、環状にしたものであり、又、前記内側に位置する筒体22の先端部外周には、外側に位置する筒体22の内周面に対して摺動する軸受31を嵌着してある。
【0016】
一方、前記テレスコピックカバー23を構成する筒体22の製作精度はあまり高くなく、しかも、前記テレスコピックカバー23の伸縮動作に伴ってその軸線方向中央部が自重により垂れ下がるように湾曲する量が変化するため、外側に位置する筒体22と内側に位置する筒体22との間の嵌合部における隙間は常に変化する形となっている。
【0017】
そして、前記オイルシール24の断面形状は、従来、図7に示される如く、外側に位置する筒体22の内周面側に前記シール受26(図6参照)を介して固着される矩形状の台座部24aと、該台座部24aから内周側へ延び且つ内側に位置する筒体22の外周面に圧接される四連の櫛歯状のリップ部24bとを有する形状となっている。
【0018】
しかしながら、図7に示されるような従来のオイルシール24では、前記四連の櫛歯状のリップ部24bにおける弾性変形代が小さいため、前記筒体22間の嵌合部における隙間の変化に対する追従性が悪く、潤滑油の漏れが発生すると共に、局部的に摺動抵抗が増加してリップ部24bが捩れたり、蛇行したりして塑性変形し、シール効果が期待できなくなり、結果的に、漏れた潤滑油を受けるための樋状の付帯設備をテレスコピックカバー23の下方位置に配置しなければならなくなるという欠点を有していた。
【0019】
更に、前記オイルシール24のリップ部24bの塑性変形に伴って、内側に位置する筒体22表面に付着した石炭、鉄粉、石灰粉等の粉塵がリップ部24bの溝に侵入して詰りを生じ、テレスコピックカバー23の円滑な伸縮動作が妨げられると共に、シール性にも悪影響を及ぼすこととなっていた。
【0020】
又、前記オイルシール24を前記筒体22間の嵌合部におけるシール受26に組み込む作業に関しても、前記四連の櫛歯状のリップ部24bにおける弾性変形代が小さいことから、手間と時間がかかり効率が悪くなっていた。
【0021】
本発明は、斯かる実情に鑑み、筒体間の嵌合部における隙間の変化に対する追従性が良く、潤滑油の漏れを確実に防止し得、漏れた潤滑油を受けるための付帯設備を不要とし得ると共に、テレスコピックカバーの伸縮動作を円滑に行うことができ、又、オイルシールの筒体間の嵌合部に対する組込作業性の向上をも図り得るテレスコピックカバーのオイルシール構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、クレーンのジブを駆動するギヤジャッキのスクリューロッドの外周を、該スクリューロッドの張出・引込動作と連動して伸縮するよう複数の筒体を嵌合せしめたテレスコピックカバーによって覆い、
該テレスコピックカバーの外側に位置する筒体と内側に位置する筒体との間の嵌合部に、オイルシールを介装してなるテレスコピックカバーのオイルシール構造において、
前記オイルシールの断面形状を、外側に位置する筒体の内周面側に固着される矩形状の台座部と、該台座部の幅方向中央部から内周側へ突出する腰部と、該腰部から内周側へハの字状に延び且つ内側に位置する筒体の外周面に圧接されるリップ部とを有する形状とし、且つ該リップ部のハの字状に延びる先端側が広がる方向へ弾性変形することにより、前記リップ部の前記内側に位置する筒体の外周面に対向する面が前記内側に位置する筒体の外周面に面接触するよう構成したことを特徴とするテレスコピックカバーのオイルシール構造にかかるものである。
【0023】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0024】
前述の如く、前記オイルシールの断面形状を、外側に位置する筒体の内周面側に固着される矩形状の台座部と、該台座部の幅方向中央部から内周側へ突出する腰部と、該腰部から内周側へハの字状に延び且つ内側に位置する筒体の外周面に圧接されるリップ部とを有する形状とすると、従来のオイルシールと比べ、前記腰部から内周側へハの字状に延びるリップ部における弾性変形代が大きいため、前記筒体間の嵌合部における隙間の変化に対する追従性が良好となり、潤滑油の漏れが発生しなくなると共に、局部的に摺動抵抗が増加しなくなり、リップ部が捩れたり、蛇行したりせず、安定したシール効果が得られ、漏れた潤滑油を受けるための樋状の付帯設備をテレスコピックカバーの下方位置に配置しなくて済む。
【0025】
更に、前記オイルシールのリップ部が捩れたり、蛇行したりしないため、内側に位置する筒体表面に付着した石炭、鉄粉、石灰粉等の粉塵がリップ部の溝に侵入して詰りを生じることはなく、テレスコピックカバーの円滑な伸縮動作が妨げられる心配がなくなると共に、シール性に悪影響を及ぼす心配もなくなる。
【0026】
又、前記オイルシールを前記筒体間の嵌合部に組み込む作業に関しても、前記腰部から内周側へハの字状に延びるリップ部における弾性変形代が大きいことから、手間と時間がかからず効率が良くなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のテレスコピックカバーのオイルシール構造によれば、筒体間の嵌合部における隙間の変化に対する追従性が良く、潤滑油の漏れを確実に防止し得、漏れた潤滑油を受けるための付帯設備を不要とし得ると共に、テレスコピックカバーの伸縮動作を円滑に行うことができ、又、オイルシールの筒体間の嵌合部に対する組込作業性の向上をも図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のテレスコピックカバーのオイルシール構造の実施例を示す要部拡大断面図である。
図2】本発明のテレスコピックカバーのオイルシール構造の実施例におけるオイルシールの組込状態前の断面形状を示す断面図である。
図3】従来のダブルリンク式クレーンの一例を示す全体概要構成図である。
図4】ギヤジャッキのスクリューロッドを引き込んでテレスコピックカバーを収縮させた状態を示す断面図である。
図5】ギヤジャッキのスクリューロッドを張り出してテレスコピックカバーを伸長させた状態を示す断面図である。
図6】従来のテレスコピックカバーのオイルシール構造の一例を示す要部拡大断面図であって、図5のVI部相当図である。
図7】従来のテレスコピックカバーのオイルシール構造の一例におけるオイルシールの組込状態前の断面形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0030】
図1及び図2は本発明のテレスコピックカバーのオイルシール構造の実施例であって、図中、図3図7と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図3図7に示す従来のものと同様であるが、本実施例の特徴とするところは、図1及び図2に示す如く、オイルシール24の断面形状を、外側に位置する筒体22の内周面側にシール受26を介して固着される矩形状の台座部24aと、該台座部24aの幅方向中央部から内周側へ突出する腰部24cと、該腰部24cから内周側へハの字状に延び且つ内側に位置する筒体22の外周面に圧接されるリップ部24bとを有する形状とした点にある。
【0031】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0032】
前述の如く、前記オイルシール24の断面形状を、外側に位置する筒体22の内周面側に固着される矩形状の台座部24aと、該台座部24aの幅方向中央部から内周側へ突出する腰部24cと、該腰部24cから内周側へハの字状に延び且つ内側に位置する筒体22の外周面に圧接されるリップ部24bとを有する形状とすると、図7に示されるような従来のオイルシール24と比べ、前記腰部24cから内周側へハの字状に延びるリップ部24bにおける弾性変形代が大きいため、前記筒体22間の嵌合部における隙間の変化に対する追従性が良好となり、潤滑油の漏れが発生しなくなると共に、局部的に摺動抵抗が増加しなくなり、リップ部24bが捩れたり、蛇行したりせず、安定したシール効果が得られ、漏れた潤滑油を受けるための樋状の付帯設備をテレスコピックカバー23の下方位置に配置しなくて済む。
【0033】
更に、前記オイルシール24のリップ部24bが捩れたり、蛇行したりしないため、内側に位置する筒体22表面に付着した石炭、鉄粉、石灰粉等の粉塵がリップ部24bの溝に侵入して詰りを生じることはなく、テレスコピックカバー23の円滑な伸縮動作が妨げられる心配がなくなると共に、シール性に悪影響を及ぼす心配もなくなる。
【0034】
又、前記オイルシール24を前記筒体22間の嵌合部におけるシール受26に組み込む作業に関しても、前記腰部24cから内周側へハの字状に延びるリップ部24bにおける弾性変形代が大きいことから、手間と時間がかからず効率が良くなる。
【0035】
こうして、筒体22間の嵌合部における隙間の変化に対する追従性が良く、潤滑油の漏れを確実に防止し得、漏れた潤滑油を受けるための付帯設備を不要とし得ると共に、テレスコピックカバー23の伸縮動作を円滑に行うことができ、又、オイルシール24の筒体22間の嵌合部に対する組込作業性の向上をも図り得る。
【0036】
尚、本発明のテレスコピックカバーのオイルシール構造は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、ダブルリンク式クレーンに限らず、ギヤジャッキを有するものであれば、どのようなクレーンにも適用可能なこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1 走行架台
4 旋回台
7 フロントリンク
8 バランシングレバー
9 テンションバー
10 ギヤジャッキ
11 スクリューロッド
12 上部リンク
13 トップジブ
22 筒体
23 テレスコピックカバー
24 オイルシール
24a 台座部
24b リップ部
24c 腰部
25 ベースフランジ
26 シール受
26a フランジ部
26b シール受部
29 シール押え
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7