【実施例】
【0020】
実施例A−ヘミアセタール予備実験:
種々の濃度(0.5%〜1.0%)のアセトニトリル及びメタノールの溶液を用いて紫外線分光計を較正した。較正後、メタノール中約1重量%のAcHの溶液をバイアルに移し、密封し、60℃のGCオーブン内に15分間配置した。15分後、バイアルを素早く取り出し、これを用いて分光計セルに充填した。セルの内部に更に熱電対を配置した後、分光計を閉止し、スキャン及び温度の読み値をとった。結果を
図1に示す。285nMにおける「遊離」AcHの吸光が、試料を冷却するにつれて温度と共に減少したことが分かる。
【0021】
UV/可視光フォトダイオードアレイ検出器を取り付けた改造高圧液体クロマトグラフィー装置を用いて、更なる実験(実施例B)を行った。
実施例B−2回目のヘミアセタール実験:
HPLCグレードのアセトニトリル中で調製したAcH標準試料を用いて、通常のHPLC(高圧液体クロマトグラフィー)装置のUV/可視光フォトダイオードアレイ検出器を較正した。標準溶液は、AcHに関するベールの法則のモル吸光度係数を求めるために0.1重量%〜1.5重量%の範囲の濃度のAcHを含んでいた。0.5重量%〜1.5重量%の範囲の濃度のAcHを含むメタノール溶液をHPLC検出器中に注入し、一定範囲の温度(30℃〜100℃)にわたって吸光度の読み値をとった。結果を
図2及び表2並びに
図3に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
実験データから平衡定数を算出し、Ln Keqと1/T°Kとのアレニウスプロットは異なるデータの組と文献値との間の非常に良好なデータの適合性及び一致性を示した。HPLC実験からの平均データを2つの文献データ点と共に用いて、対応するヘミアセタールを形成するMeOH中のAcHの反応に関する温度に対するKeqの最も良く適合した関係式を作成した(下式2を参照)。
【0024】
【化2】
【0025】
Keq式(式2)を用い、0.12重量%の初期AcH濃度を用いて、種々の温度及び初期MeOH濃度における平衡組成を算出した。例えば、温度と、1000ppm〜5重量%の範囲の初期MeOH濃度から出発して平衡において期待される「遊離」AcH%の計算値とのプロットを
図3に示す。
【0026】
図3から、遊離アセトアルデヒドの量は混合物中のメタノールの量が増加するにつれて減少するが、この傾向は温度及び圧力を上昇させることによって遊離アセトアルデヒドの形成を促進させる方向に逆転させることができることが認められる。
【0027】
実施例1〜16:
図4を参照すると、60段のOldershaw蒸留装置10を用いて、加圧下、昇温下において、MeAc、MeOH、及びAcHの三元混合物を蒸留した。装置10は、トレー40における供給流入口14;16における塔頂流出口ライン;及び18における残渣出口;を備えた60段のトレーを有するカラム12を有する。塔頂流ラインには、冷却剤のための入口22及び出口24を有する凝縮器20が備えられている。凝縮器20は、凝縮された塔頂流を受容し、それを還流ライン28(場合によってはプレヒーター30が備えられている)に供給する受容器26に接続されている。
【0028】
装置10は、MeAc、MeOH、及びAcHの三元混合物をカラム12の入口14に供給し、凝縮器20においてカラム塔頂流を凝縮し、凝縮された塔頂流を還流としてライン28を通してカラムに戻して供給することによって運転した。残渣を18において排出し、一方、凝縮された物質を再沸騰させてカラム内の流束を維持した。
【0029】
約1200ppmの目標AcH含量を有する塔供給材料を達成するためにAcHを混入したMeAcを用いて、約45psigの蒸留運転圧力において一連の蒸留実験を行った。表3に示す種々の還流/供給(R/F)、供給速度、及び塔頂流凝縮器20の冷却剤温度を用いて蒸留実験を行った。冷却剤入口22及び冷却剤出口24を通して冷却剤を通すことによって保持した凝縮器20の温度によって、塔頂流受容器26の蒸留物の温度が影響を受け、これを還流のために用い、冷却された還流流によって、内部還流比、並びに還流流中のAcH及びその対応するMeOHヘミアセタールの平衡濃度の両方が影響を受けた。塔頂流凝縮器20の冷却器入口22の冷却剤温度は、(実施例1〜7に関する概して<10℃の値から)実施例8で始まる約37℃の新しいレベルに上昇した。また、実施例14で始まる一連の実施例の間においては、還流流プレヒーター30を加えた。供給ラインも予備加熱して温度を制御した。
【0030】
実施例1〜16に関する運転の詳細及び結果を、表3及び4に要約し、以下において議論する。
実施例1〜7は、2.63:1.0〜6.45:1.0の範囲の還流/供給(R/F)比の値に相当する10.4±0.4g/分の速度で、約7℃±4℃のサブクーリングされた還流流を用いて行った。表3を参照。この組における初めの3つの実施例(1、2、及び3)は、残渣生成物流18の試料中に検出できないレベルのAcHを有していた。表3を参照。実施例4においては、始動前にMeAc/MeOH供給材料中1246ppmのAcHを装置に充填し、AcHを5.33重量%の濃度に更に混入した材料を塔頂流受容器26に充填した。実施例5は実施例4の継続であった。これらの実施例(4及び5)の両方とも、2.24重量%及び1.69重量%のAcHを含む混入塔頂流(OH)受容器充填物及びその後の還流流(OH試料)を用いても、低い残渣生成物流のAcH濃度(則ち79ppm及び1ppm)を有していた。
【0031】
実施例6においては、塔頂流凝縮器20内の約5重量%のAcHを装置に充填し、実施例7は、約10%のAcH含量で充填した塔頂流受容器を用いて始動した。1重量%の初期塔頂流AcH濃度を用い、これを実験中に増加させて実施した実施例8においては、残渣流のAcH濃度が約76ppmの許容できるレベルに低下した。10.7g/分の還流比(R/F=3.47:1.0)が典型的であり、塔頂流凝縮器30の冷却剤温度は約37℃に上昇した。
【0032】
表3において、実施例9〜14に関してR/F比が<2.32:1.0に減少し、塔頂流冷却剤温度が38±2℃に維持されたことが分かる。実施例9及び10はいずれも、先の実験である実施例8からのレボイラー及び塔頂流受容器26の材料を用いて始動した。表4におけるデータから分かるように、実施例9及び10に関して、残渣流のAcH濃度は約115±20ppmであり、対応する塔頂流(OH)受容器(還流)のAcH濃度は約3.3±0.3重量%の範囲であった。
【0033】
実施例11、12、13、及び14は、約1.94±0.2:1.0のより低い還流/供給比において行い(表3参照)、これらの蒸留実施例の全てで許容できないほど高い残渣AcH濃度が得られた。実施例11は、5.6重量%のAcHを含む初期塔頂流受容器充填物を用いて開始し、937〜1434ppmのAcHを有する残渣試料が得られた。実施例12の残渣は、約737ppmのAcHを含んでおり、先の実施例11からのレボイラー及び塔頂流混合物を用いて始動した。実施例13は、先の実施例からのレボイラー及びOH受容器材料を用いて始動し、残渣試料は1568ppm以下のAcHレベルを示した。実施例14は、約2重量%のAcHしか混入しなかった新しい塔頂流受容器MeAc/MeOH充填物を用いて行い、約1050ppmに僅かしか低下しなかった残渣流のAcH濃度を与えた。
【0034】
実施例15に関しては、2重量%のAcHを含むように混入したMeAc/MeOHを塔頂流受容器26に充填し、これまでの<2.32:1.0のR/F比を4.3:1.0のより高いR/F比に増加させた。実施例15に関して、残渣流は約0.16重量%のAcHを含んでいた。次の実験(実施例16)は、塔頂流受容器26内のより低い初期AcH濃度(則ち1重量%のAcH)、約0.12重量%のAcHのレボイラー充填物を用いて始動し、更に高いR/F比(則ち6.19:1.0)において運転した。この実験中において、残渣流のAcH含量は<500ppmに低下した。
【0035】
図5は、生成物(残渣)のAcH(ppm)とR/F比とのプロットであり、約2よりも大きいR/F比において除去効率が劇的に増加したことが分かる。残渣のAcH含量(ppm)は、次式にしたがってR/F比と相関した。
【0036】
【化3】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4-1】
【0039】
【表4-2】
【0040】
【表4-3】
【0041】
【表4-4】
【0042】
【表4-5】
【0043】
【表4-6】
【0044】
実施例17:
上記に示した手順及び装置を用いて、4日間にわたって運転する連続蒸留実験(実施例17)を行った。供給流の組成及び運転パラメーターを表5及び6に示す。初めの3日半の間は約45psigの圧力において実験を行い、4日目のほぼ最後の8.5時間について約30psigに低下させた。還流/供給比は実験中に約4.6:1.0に保持した。実験を通してとられたデータによって、残渣生成物のAcH濃度は通常は約100±50ppmとなり、一方、約45psigでの運転は約1.4±0.5重量%の塔頂流AcHレベルに相当した。4日目に圧力を約30psigに低下させると、残渣流のAcH濃度は250ppmを僅かに超える値に増加した。
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【0047】
図6は、4日間の連続実験中の塔頂流及び残渣流のアセトアルデヒドの濃度のプロットであり、加圧カラムによって供給混合物からアセトアルデヒドが有効に除去されることが分かる。
図6から、大気圧(0psig)において蒸留した場合の高いMeOH含量を有するMeAc流からの実質的にゼロのAcH除去率と比較して、AcH除去率(%)がそれぞれ〜30psig及び〜45psigの運転圧力において(〜4.6:1.0のR/F比の範囲で1200ppmAcHの供給材料を用いた)〜82%及び〜93%に増加したことが認められる。従来の低圧蒸留が酢酸メチルとメタノールとの混合物からアセトアルデヒドを除去する効果を有しないことを鑑みると、この結果は全く予期しなかったことである。上昇した温度及び圧力並びにR/F比の効果は、
図7を参照することによって更に認められる。
【0048】
図7は、AcH除去率(%)及び生成物のAcH含量と温度とのプロットであり、約70℃を超える塔頂流温度において除去効率及び生成物純度が劇的に増加することが分かる。
【0049】
したがって、本発明は、昇圧、好ましくは少なくとも10psigにおける蒸留によって、酢酸メチル、メタノール、及びアセトアルデヒドの三元混合物を精製する手段を提供する。10psig〜75psig、例えば20psig〜50psig、又は25〜50psigの運転圧力が好適である。これらの圧力において、塔頂流の温度を、好適には約70℃〜約150℃、例えば約85℃〜約115℃、又は約90℃〜約100℃に保持する。2〜7の還流/供給比が好適であり、このR/F比の範囲内において、R/F比は、2より大きく、2.5より大きく、3より大きく、又は4より大きい。
【0050】
本発明の種々の態様において、本方法は、100ppmより大きく、250ppm又は500ppmより大きく、或いは1000ppmより大きいAcH含量を有する供給流を、100ppm未満、又は50ppm未満のAcH含量に精製するのに有効である。供給混合物は、1200ppm、例えば2000ppmより多く、或いは5000ppm以下、又は1重量%以下のアセトアルデヒド、及び場合によってはそれ以上のAcHを含んでいてよい。また、供給混合物は、約5%〜50%のメタノール、例えば約10%〜40%のメタノール、又は幾つかの場合においては約15%〜約30%のメタノールを含んでいてもよい。
【0051】
精製した酢酸メチル/メタノール混合物を用いた酢酸の製造:
本発明にしたがって精製した酢酸メチル/メタノール混合物を、メタノールカルボニル化ユニットに供給材料として直接供給して酢酸を製造することができる。この種のカルボニル化ユニット110を、関係する精製装置と共に
図8に概略的に示す。一酸化炭素及び本発明の精製MeAc/MeOH流(及び場合によっては更なるメタノール又はその反応性誘導体)を、適度な混合を行いながら一酸化炭素と共に加圧下で反応器112中に連続的に導入する。非凝縮性の副生成物を反応器から排気して、最適な一酸化炭素分圧を保持する。反応器内において、好適な反応混合物を保持しながらカルボニル化反応を行って酢酸を製造する。反応器112内の反応混合物は、以下により詳細に議論するように、第VIII族の金属触媒、場合によってはヨウ化物塩、アルキルハロゲン化物促進剤、一酸化炭素、酢酸、メタノール及び/又はその反応性誘導体、並びに水を含む。
【0052】
第VIII族の触媒金属は、ロジウム及び/又はイリジウム触媒であってよい。ロジウム金属触媒は、[Rh(CO)
2I
2]
−アニオンなどのロジウムが平衡混合物として触媒溶液中に存在するような、当該技術において周知の任意の好適な形態で加えることができる。ロジウム溶液が反応器の一酸化炭素に富む雰囲気中に存在する場合には、ロジウム/ヨウ化カルボニルのアニオン種が水及び酢酸中に概して可溶であるので、ロジウムの可溶性が概して保持される。しかしながら、フラッシャー、軽質留分カラムなどの中に典型的に存在するような一酸化炭素に乏しい雰囲気に移した場合には、より少ない一酸化炭素しか利用できないので平衡のロジウム/触媒の組成が変化する。例えば、ロジウムはRhI
3として沈殿する。反応器の下流の連行ロジウムの形態に関する詳細は良く理解されていない。当業者によって認識されるように、ヨウ化物塩は、所謂「低水分」条件下においてフラッシャー内での沈殿を軽減することを助ける。
【0053】
反応混合物中に保持されるヨウ化物塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の可溶性塩、或いは第4級アンモニウム又はホスホニウム塩の形態であってよい。幾つかの態様においては、触媒共促進剤は、ヨウ化リチウム、酢酸リチウム、又はこれらの混合物である。塩共促進剤は、ヨウ化物塩を生成する非ヨウ化物塩として加えることができる。ヨウ化物触媒安定剤は反応系中に直接導入することができる。また、反応システムの運転条件下では広範囲の非ヨウ化物塩前駆体がヨウ化メチルと反応して対応する共促進剤であるヨウ化物塩安定剤を生成するので、ヨウ化物塩をその場で生成させることができる。ヨウ化物塩の生成に関する更なる詳細については、Smithらへの米国特許5,001,259;Smithらへの5,026,908;及びこれもSmithらへの、5,144,068(これらの開示は参照として本明細書中に包含する)を参照。
【0054】
同様に、液体カルボニル化反応組成物中のイリジウム触媒は、液体反応組成物中に可溶の任意のイリジウム含有化合物を含んでいてよい。イリジウム触媒は、液体反応組成物中に溶解するか、又は可溶性形態に転化させることができる任意の好適な形態で、カルボニル化反応のための液体反応組成物に加えることができる。液体反応組成物に加えることができる好適なイリジウム含有化合物の例としては、IrCl
3、IrI
3、IrBr
3、[Ir(CO)
2I]
2、[Ir(CO)
2Cl]
2、[Ir(CO)
2Br]
2、[Ir(CO)
2I
2]
−H
+、[Ir(CO)
2Br
2]
−H
+、[Ir(CO)
2I
4]
−H
+、[Ir(CH
3)I
3(CO
2]
−H
+、Ir
4(CO)
12、IrCl
3・3H
2O、IrBr
3・3H
2O、Ir
4(CO)
12、イリジウム金属、Ir
2O
3、Ir(acac)(CO)
2、Ir(acac)
3、酢酸イリジウム、[Ir
3O(OAc)
6(H
2O)
3][OAc]、及びヘキサクロロイリジウム酸[H
2IrCl
6]が挙げられる。通常は、酢酸塩、シュウ酸塩、及びアセト酢酸塩のような塩化物を含まないイリジウムのコンプレックスを出発物質として用いる。液体反応組成物中のイリジウム触媒の濃度は、100〜6000ppmの範囲であってよい。イリジウム触媒を用いるメタノールのカルボニル化は周知であり、以下の米国特許:5,942,460;5,932,764;5,883,295;5,877,348;5,877,347;及び5,
696,284(これらの開示は参照としてそれらの全てを示されているように本明細書中に包含する)に一般的に記載されている。
【0055】
一般に、第VIII族金属触媒成分と組み合わせて、アルキルハロゲン化物共触媒/促進剤を用いる。ヨウ化メチルが、アルキルハロゲン化物促進剤として好ましい。好ましくは、液体反応組成物中のアルキルハロゲン化物の濃度は、1〜50重量%、好ましくは2〜30重量%の範囲である。
【0056】
アルキルハロゲン化物促進剤は、塩安定剤/共促進剤化合物と組み合わせることができ、これとしては第IA又はIIA族の金属の塩、或いは第4級アンモニウム又はホスホニウム塩を挙げることができる。ヨウ化物又は酢酸塩、例えばヨウ化リチウム又は酢酸リチウムが特に好ましい。
【0057】
ヨーロッパ特許公開EP−0849248(その開示は参照として本明細書中に包含する)に記載されているような他の促進剤及び共促進剤を、本発明の触媒系の一部として用いることができる。好適な促進剤は、ルテニウム、オスミウム、タングステン、レニウム、亜鉛、カドミウム、インジウム、ガリウム、水銀、ニッケル、白金、バナジウム、チタン、銅、アルミニウム、スズ、アンチモンから選択され、より好ましくはルテニウム及びオスミウムから選択される。米国特許6,627,770(その全てを参照として本明細書中に包含する)に特定の共促進剤が記載されている。
【0058】
促進剤は、液体反応組成物及び/又は酢酸回収段階からカルボニル化反応器へ再循環される全ての液体プロセス流中におけるその溶解度の限界値以下の有効量で存在させることができる。用いる場合には、促進剤は、好適には、[0.5〜15]:1、好ましくは[2〜10]:1、より好ましくは[2〜7.5]:1の促進剤と金属触媒とのモル比で液体反応組成物中に存在させる。好適な促進剤の濃度は400〜5000ppmである。
【0059】
メタノール及び一酸化炭素反応物質を反応器に連続的に供給すると、カルボニル化反応が反応器112内で進行する。一酸化炭素反応物質は、実質的に純粋であってよく、或いは二酸化炭素、メタン、窒素、希ガス、水、及びC
1〜C
4パラフィン系炭化水素のような不活性不純物を含んでいてもよい。水性ガスシフト反応によってその場で生成する一酸化炭素中の水素の存在は、水素化生成物の形成を引き起こす可能性があるので、好ましくは例えば1bar未満の低い分圧に保持する。反応中の一酸化炭素の分圧は、好適には、1〜70bar、好ましくは1〜35bar、最も好ましくは1〜15barの範囲である。
【0060】
カルボニル化反応の圧力は、好適には、10〜200bar、好ましくは10〜100bar、最も好ましくは15〜50barの範囲である。カルボニル化反応の温度は、好適には、100〜300℃の範囲、好ましくは150〜220℃の範囲である。酢酸は、典型的には、液相反応で約150〜200℃の温度及び約20〜約50barの全圧において製造する。
【0061】
酢酸は、典型的には反応のための溶媒として反応混合物中に含ませる。
好適なメタノールの反応性誘導体としては、酢酸メチル、ジメチルエーテル、ギ酸メチル、及びヨウ化メチルが挙げられる。メタノール及びその反応性誘導体の混合物を、本発明方法において反応物質として用いることができる。好ましくは、反応物質としてメタノール及び/又は酢酸メチルを用いる。メタノール及び/又はその反応性誘導体の少なくとも一部は、液体反応組成物中において、酢酸生成物又は溶媒との反応によって酢酸メチルに転化し、したがって酢酸メチルとして存在する。液体反応組成物中の酢酸メチルの濃度は、好適には、0.5〜70重量%、好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは1〜35重量%、最も好ましくは1〜20重量%の範囲である。
【0062】
水は、例えばメタノール反応物質と酢酸生成物との間のエステル化反応によって、液体反応組成物中においてその場で形成することができる。水は、液体反応組成物の他の成分と一緒か又は別々にカルボニル化反応器に導入することができる。水を反応器から排出される反応組成物の他の成分から分離して、液体反応組成物中における水の求められる濃度を保持するように制御された量で再循環することができる。好ましくは、反応器112内の液体反応組成物中に保持する水の濃度は、0.1〜16重量%、より好ましくは1〜14重量%、最も好ましくは1〜10重量%、好適には10重量%未満の水の範囲である。
【0063】
反応器112から、反応混合物の流れを、導管118を通してフラッシャー116へ連続的に供給する。フラッシャーを通して、生成物酢酸及び軽質留分(ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水)の大部分を反応器触媒溶液から分離し、粗プロセス流117を溶解ガスと共に単一段階フラッシュ内の蒸留又は精製区域119に送る。触媒溶液を、導管132を通して反応器に再循環する。フラッシュのプロセス条件下においては、ロジウムはフラッシュ容器内の低い一酸化炭素分圧において失活を受けやすく、精製システム119に同伴される可能性がある。
【0064】
酢酸の精製は、典型的には、軽質留分カラム、脱水カラム、及び場合によっては重質留分カラム内での蒸留を含む。フラッシャーからの粗蒸気プロセス流117を軽質留分カラム120中に供給する。ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水の一部が軽質留分カラム内で塔頂流中に濃縮されて二つの相(有機及び
水性)が形成される。両方の塔頂相を、再循環ライン134を通して反応区域に戻す。軽質留分カラムからの溶解ガスは、蒸留区域を通して排気する。この排気流を燃焼させる前に、残留軽質留分をスクラビングしてプロセスに再循環する。場合によっては、軽質留分カラムからの液体再循環流135も反応器に戻すことができる。
【0065】
精製されたプロセス流140を軽質留分カラム120の側部から抜き出し、脱水カラム122に供給する。このカラムから水及び若干の酢酸が分離され、これは、示すように再循環ライン134を通して反応システムに再循環する。精製し乾燥した脱水カラム122からのプロセス流152は樹脂床136に供給し、示されるようにそこから生成物を回収する。カルボニル化システム110は、2つのみの精製カラムを用い、好ましくは「低エネルギーカルボニル化プロセス」と題されたScatesらへの米国特許6,657,078(その開示を参照として本明細書中に包含する)により詳細に記載されているように運転する。
【0066】
好ましい態様を参照して本発明を説明したが、本開示の利益を有する明白な修正及び変更が当業者に可能である。したがって、本発明は、それらが特許請求の範囲及びその均等範囲内である限りにおいて全てのかかる修正及び変更を包含すると意図される。