(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
緩衝剤、ヌクレオチド、塩、安定化剤、プライマー及びヌクレアーゼ不含水からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーをさらに含んでなる、請求項3に記載の組成物。
【背景技術】
【0002】
背景技術
現在の分子生物学において、核酸の検出、分析、転写、及び増幅は最も重要な方法である。RNA分析のためのこのような方法の応用は、いくつか例を挙げると、遺伝子発現の調査、感染性因子又は遺伝性疾患の診断、cDNAの作製、及びレトロウイルスの分析において特に重要である。RNAの逆転写後にポリメラーゼ連鎖反応増幅を行う方法は、一般的にRT−PCRと呼ばれ、RNAの検出及び定量のために広く使用されるようになっている。
【0003】
RT−PCR法には、2つの別々の分子合成が必要であり:(i)RNAテンプレートからのcDNAの合成;及び(ii)新規に合成されたcDNAのPCR増幅による複製、がある。RT−PCRは、3つの一般的なプロトコルで行うことができる:(1)2ステップRT−PCRとも言われる非連結(uncoupled)RT−PCR;(2)単一酵素連結(coupled)RT−PCR(連結RT−PCRは、1ステップRT−PCR又は連続RT−PCRとも言われる)、ここで単一ポリメラーゼが、RNAからのcDNA作製並びに続くDNA増幅の両方で使用される;及び(3)2つ(又はそれ以上)の酵素連結RT−PCR、ここで少なくとも2つの別々のポリメラーゼが、初期のcDNA合成及び続く複製及び増幅で使用される。
【0004】
非連結RT−PCRにおいて、逆転写は、逆転写酵素活性のために最適な緩衝液及び反応条件を用いて、独立のステップとして行われる。cDNA合成の後、RT反応生成物の一定量を、PCR増幅に最低な条件下で、Taq DNAポリメラーゼ等の熱安定性DNAポリメラーゼと共に、PCR増幅のためにテンプレートとして用いる。
【0005】
連結RT−PCRにおいて、逆転写及びPCR増幅は、単一の反応混合物に組み込まれる。単一酵素RT−PCRは、Taq DNAポリメラーゼ及びTth DNAポリメラーゼ等のいくつかのDNAポリメラーゼの逆転写酵素活性を活用し、一方、2つの酵素RT−PCRは、レトロウイルス又は細菌性逆転写酵素(例えば、AMV−RT、MMLV−RT、HIV−RT,EIAV−RT、RAV2−RT、カルボキシドサーマス・ハイドロゲノフォルマン(Carboxydothermus hydrogenoformam)DNAポリメラーゼ、又はその変異体、変種もしくは誘導体)、及び熱安定性DNAポリメラーゼ(例えば、Taq、Tbr、Tth、Till、Tfi、Tfl、Pfu、Pwo、Kod、VENT、DEEPVENT、Tma、Tne、Bst、Pho、Sac、Sso、ES4等、又はその変異体、変種もしくは誘導体)を典型的に用いる。
【0006】
連結RT−PCRは、非連結RT−PCRを超える多数の利点を提供する。連結RT−PCRは、必要な反応混合試薬及び核酸産物の処理が、非連結RT−PCRよりも少ない(例えば、2つの反応ステップの間の、成分又は酵素の添加のために反応管の開封、等)、したがって労力が少なくなり、必要なマンアワーの低減がなされる。連結RT−PCRは、必要なサンプルの低減、及びコンタミネーションの危険性の低減もする(Selmer and Turbett, 1998)。
【0007】
単一酵素連結RT−PCRは、これまでで最も単純なRT−PCR法である。しかしながら、このシステムは、DNAポリメラーゼの量が必要であるため、実行するには高価である。さらに、単一酵素連結RT−PCR法は、非連結RT−PCRより感度が低いことが判明しており(Cusi et al., 1994)、重合する核酸の長さが1キロベースペア(>1kb)未満に限定される。2つの酵素RT−PCRシステムは、単一反応混合物において組み合わされた場合でも、一般的に単一酵素システムをよりも感度の向上を示す。この効果は、DNAポリメラーゼの逆転写酵素活性と比較して、逆転写酵素の有効性がより高いことに寄与している(Sellner and Turbett, 1998)。
【0008】
2つの酵素連結RT−PCRシステムは、非連結プロトコルよりも感度が高いが、cDNAの複製の際に逆転写酵素がDNAポリメラーゼを妨害するため、この方法の感度及び有効性を低減することがわかっている(Sellner et al., 1992; Aatsinki et al., 1994; Mallet et al., (1995))。逆転写酵素のDNAポリメラーゼに対する阻害活性を克服するための様々な解決方法が試みられており、例えば、テンプレートRNA量の増加、逆転写酵素に対するDNAポリメラーゼの比率の増加、逆転写酵素のDNAポリメラーゼへの阻害効果を低減できる調節試薬(例えば、非ホモログtRNA、T4遺伝子32タンパク質、硫黄又は酢酸塩含有分子等)の添加、及びDNAポリメラーゼ添加前の逆転写酵素の熱不活性化がある。
【0009】
しかしながら、これら全ての修正RT−PCR法は重大な欠点を有する。テンプレートRNAの増量は、限られた量のサンプルしか利用できない場合不可能である。DNAポリメラーゼに対する逆転写酵素の比率を個別に最適化することは、1ステップRT−PCRのためのすぐに使用できる試薬キットとしては実用的でない。現在提案される調整試薬の、DNA重合から逆転写酵素阻害を取り除く最終的な効果は、議論の余地があり、未解決である。これらの試薬による正の効果は、RNAテンプレート量、RNA組成に大きく依存するか、特定の逆転写酵素−DNAポリメラーゼの組み合わせが必要な可能性がある(例えば、Chandler et al, 1998を参照されたい)。最後に、DNAポリメラーゼ試薬添加前の逆転写酵素の熱不活性化は、結合RT−PCRの利点を無効にし、且つ既に議論した非連結RT−PCRの全ての不利点がもたらされる。
【0010】
RT−PCR応用が重要なので、一般化したすぐに使用できる組成物の状態で、RT阻害を低減した1ステップRT−PCRシステムであって、高感度を呈し、少量の初期サンプルを必要とし、実行者の操作量を低減し、コンタミネーションの危険性を最小限にし、試薬の費用を最小限にし、特定の反応緩衝液の使用に限定されず、且つ核酸最終産物の量を最大限にするシステムが、当該技術分野で必要とされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1a】
図1a−1fは、配列非特異的二本鎖DNA結合タンパク質SSO7dの添加により、逆転写酵素の阻害が低減し、1ステップRT−PCRの特異性が向上することを示す。
図1aは、SSO7d不存在下での、ナノグラム単位のlog初期量に対する閾値サイクル(threshold cycle)を示す。
【
図1b】
図1bは、SSO7d不存在下での、温度に対する−d(FRU)/dTを示す。
【
図1c】
図1cは、0.1μM SSO7dの存在下での、ナノグラム単位のlog初期量に対する閾値サイクルを示す。
【
図1d】
図1dは、0.1μM SSO7dの存在下での、温度に対する−d(FRU)/dTを示す。
【
図1e】
図1eは、0.2μM SSO7dの存在下での、ナノグラム単位のlog初期量に対する閾値サイクルを示す。
【
図1f】
図1dは、0.2μM SSO7dの存在下での、温度に対する−d(FRU)/dTを示す。
【0017】
【
図2a】
図2a−2dは、Aluメチラーゼの添加により、逆転写酵素の阻害が低減し、1ステップRT−PCRの特異性が向上することを示す。
図2aは、2.5μM AluIメチラーゼ存在下での、ナノグラム単位のlog初期量に対する閾値サイクルを示す。
【
図2b】
図2bは、2.5μM AluIメチラーゼ存在下での、温度に対する−d(FRU)/dTを示す。
【
図2c】
図2cは、AluIメチラーゼ不存在下での、ナノグラム単位のlog初期量に対する閾値サイクルを示す。
【
図2d】
図2dは、AluIメチラーゼ不存在下での、温度に対する−d(FRU)/dTを示す。
【0018】
【
図3a】
図3a−3fは、スラミンの添加により、逆転写酵素の阻害が低減し、1ステップRT−PCRの特異性が向上することを示す。
図3aは、スラミン存在下での、サイクルに対するRFUを示す。
【
図3b】
図3bは、スラミン不存在下での、ナノグラム単位のlog初期量に対する閾値サイクルを示す。
【
図3c】
図3cは、スラミン不存在下での、温度に対する−d(FRU)/dTを示す。
【
図3d】
図3dは、4 ng/μlスラミン存在下での、ナノグラム単位のlog初期量に対する閾値サイクルを示す。
【
図3e】
図3eは、4 ng/μlスラミン存在下での、サイクルに対するRFUを示す。
【
図3f】
図3fは、4 ng/μlスラミン存在下での、温度に対する−d(FRU)/dTを示す。
【0019】
【
図4a】
図4a−4hは、ホスホロチオエートオリゴデオキシシトシン(SdC)の添加により、逆転写酵素の阻害が低減し、1ステップRT−PCRの特異性が向上することを示す。
図4aは、0.1 nM SdC存在下での、ナノグラム単位のlog初期量に対する閾値サイクルを示す。
【
図4b】
図4bは、0.1 nM SdC存在下での、温度に対する−d(FRU)/dTを示す。
【
図4c】
図4cは、0.5 nM SdC存在下での、ナノグラム単位のlog初期量に対する閾値サイクルを示す。
【
図4d】
図4dは、0.5 nM SdC存在下での、温度に対する−d(FRU)/dTを示す。
【
図4e】
図4eは、2 nM SdC存在下での、ナノグラム単位のlog初期量に対する閾値サイクルを示す。
【
図4f】
図4fは、2 nM SdC存在下での、温度に対する−d(FRU)/dTを示す。
【
図4g】
図4gは、10 nM SdC存在下での、ナノグラム単位のlog初期量に対する閾値サイクルを示す。
【
図4h】
図4hは、10 nM SdC存在下での、温度に対する−d(FRU)/dTを示す。
【0020】
【
図5a】
図5a−5dは、ポリ(rA)(dT)の添加により、逆転写酵素の阻害が低減し、1ステップRT−PCRの特異性が向上することを示す。
図5aは、10 nM ポリ(rA)(dT)存在下での、ナノグラム単位のlog初期量に対する閾値サイクルを示す。
【
図5b】
図5bは、10 nM ポリ(rA)(dT)存在下での、温度に対する−d(FRU)/dTを示す。
【
図5c】
図5cは、ポリ(rA)(dT)不存在下での、ナノグラム単位のlog初期量に対する閾値サイクルを示す。
【
図5d】
図5dは、ポリ(rA)(dT)不存在下での、温度に対する−d(FRU)/dTを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.核酸分子増幅のための方法
核酸の定量的増幅を行うための様々な方法が知られている。これらの技術には、5'〜3'エキソヌクレアーゼアッセイ、例えば、Taqman(登録商標)プローブの使用がある(例えば、米国特許第5,210,015号及び第5,487,972号;Heid et al, Genome Res. 6:986-994, 1996;Holland et al, Proc. Nat'l Acad. Sci USA 88:7276-7280, 1991;及び Lee et al, Nuc. Acids Res. 21:3761-3766, 1993を参照されたい)。他の方法論では、(1又は複数の)オリゴヌクレオチドが標的核酸とハイブリダイズされる場合、蛍光の変化が発生するように構築した、1又は複数のプローブオリゴヌクレオチドを使用する。例えば、当該方法の1つでは、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を利用する、2つの蛍光色素分子、例えばLightCycler(商標)ハイブリダイゼーションプローブ等のアプローチがあり、ここでは2つのオリゴプローブをアニール化してアンプリコンにする(例えば、米国特許第6,174,670号を参照されたい)。当該オリゴヌクレオチドを、有効なエネルギー転移に適合するある距離で分離された蛍光色素分子と、頭−尾(head-to-tail)方向でハイブリダイズするよう設計する。核酸に結合するか、伸長産物に組み込まれる場合、シグナルを放出するように構築される標識されたオリゴヌクレオチドのその他の例には、スコーピオン(Scorpions)(商標)プローブ(例えば、Whitcombe et al, Nature Biotechnology 17:804-807, 1999、及び米国特許第6,326,14号)、サンライズ(Sunrise)(又はアンプリフロア(Ampliflour)(商標))プライマー(例えば、Nazarenko et al, Nuc. Acids Res. 25:2516-2521, 1997、及び米国特許第6,117,635号)、ラックス(LUX)(商標)プライマー及びモレキュラー・ビーコンズ(Molecular Beacons)(商標)プローブ(例えば、Tyagi et al, Nature Biotechnology 14:303-308, 1996、及び米国特許第5,989,823号)がある。
【0022】
本発明は、核酸分子を増幅するための方法を提供する。本方法には、RNAテンプレートを、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、及びRT阻害低減剤を含む組成物と混合することが必要である。RT阻害低減剤は、Sso7d、Sac7d、Sac7e、Sso7e、AluIメチラーゼ、スラミン、ホスホロチオエートオリゴデオキシシトシン(SdC)、ホスホロチオエートオリゴデオキシアデニン、ホスホロチオエートオリゴデオキシチミン及びポリ(rA)(dT)であってもよい。当該混合は混合物を形成し、これをRNAテンプレートの全てもしくは一部と相補的なDNA分子を合成するのに十分な条件下でインキュベートし、それにより核酸分子を増幅する。
【0023】
RT−PCRにおいて、反応混合物を、最初に、RNAテンプレートの少なくとも一部と相補的なDNA分子を合成するのに十分な温度で(適切な緩衝剤中で)インキュベートする。逆転写反応混合物の成分には、典型的には、RNAテンプレート及びDNAプライマー(オリゴdT、ランダムヘキサマー、又は遺伝子特異的プライマー)であって、そこから相補的DNA(cDNA)が作製されるもの;逆転写酵素活性を呈する核酸ポリメラーゼ;及び核酸合成に必要な適切なヌクレオチド構成要素、がある。本発明の目的に応じて、cDNA分子は、その核酸配列がRNA分子に相補的である、任意のDNA分子として定義される。RNAテンプレートは、cDNA分子がそこから合成できる、核酸配列を提供するために使用される任意のRNA分子として定義される。RNAテンプレートからのcDNAの合成は、逆転写酵素活性を呈する核酸ポリメラーゼを活用することにより典型的に達成される。本発明の目的に応じて、逆転写酵素活性とは、RNAテンプレートからcDNA分子を重合する酵素の能力のことを言い、逆転写酵素は、広く逆転写酵素活性を有する任意の酵素のことを言う。逆転写は、典型的には約20℃〜約75℃、好ましくは約35℃〜約70℃の範囲の温度で起きる。
【0024】
cDNA分子を作製するためのRNAテンプレートの逆転写後、当該cDNAを、cDNA分子の複製に十分な条件下、(適切な緩衝剤中で)インキュベートする。当該反応混合物は、連結(別名、連続又は1ステップ)RT−PCRで使用されるような、従来の逆転写酵素反応混合物のものと同じとすることができ、又は当該反応混合物は、従来の逆転写反応混合物の一定量を含むことができ、且つ、非連結(又は2ステップ)RT−PCRのように、核酸複製をさらに修正することができる。複製反応混合物の成分には、典型的には、核酸テンプレート(この例ではcDNA);DNAプライマー;核酸ポリメラーゼ;及び核酸の合成に必要な適切なヌクレオチド構成要素、がある。核酸複製とは、その配列が別の核酸により決定され、且つその別の核酸と相補的である核酸の重合のことを言う。本明細書で使用されるDNA複製は、DNA増幅と同義語である。好ましくはDNA増幅は、繰り返し起き、核酸配列の両方の鎖、すなわち、RNAテンプレートに相補的なDNAと、その核酸配列がRNAテンプレートと実質的に同一であるDNAを複製することである。反復又は循環式のDNA複製は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)における熱安定性ポリメラーゼを用いて都合よく達成することができる。
【0025】
PCRは、当該技術分野で周知の技術である。PCRは、反応混合物に以下のサイクルを受けさせることにより核酸を増幅するために使用する。サイクルは、(i)核酸変性、(ii)オリゴヌクレオチドプレイマーのアニーリング、及び(iii)核酸重合である。増幅のための好ましい反応条件には、熱サイクル、すなわち、PCRサイクルの各ステップを促進するように、反応混合物の温度を変化させること、が含まれる。PCRは、典型的には、変性、アニーリング、及び複製の複数サイクルを通じて伸長され、(任意に及び好ましくは)初期の変性ステップの延長、及び最後の伸長(重合)ステップの延長で増大される。熱サイクルは、典型的には、約23℃〜約100℃、及び好ましくは約37℃〜約95℃の範囲の温度で行う。核酸変性は、典型的には、約90℃〜約100℃で、好ましくは約94℃で起きる。アニーリングは、典型的には、約37℃〜約75℃、好ましくは約60℃で起きる。重合は、典型的には、約55℃〜約80℃、好ましくは約72℃で起きる。熱サイクルの数は、実施者の好み、使用されるDNAテンプレートの量、及び所望のDNA産物の量により、大きく変動させることができる。好ましくは、PCRサイクル数は、約5〜約99サイクルの範囲、より好ましくは約20サイクル以上、最も好ましくは約40サイクル以上である。
【0026】
プライマーは、18〜25ヌクレオチドの長さ、及びGC含量が40〜65%の、標準的PCR指針に従って設計すべきである。プライマー設計は、内部二次構造化、及び各プライマーとプライマー対内の3'末端の相補性を回避すべきである。最適な結果には、プライマー濃度100〜500 nMでの滴定を要する可能性がある。プライマー当たり300 nMの終濃度が、反応に最も有効である。一般的には、反応効率及び/又は特異性は、各プライマーを等濃度で使用することにより最適化できる。最良の結果のためには、定量RT−PCRで、アンプリコンサイズを50〜200 bpに限定すべきである。
【0027】
提案するテンプレート投入量としては、0.1 pg〜100 ngの全RNA;10 fg〜100 ngのポリA(+)RNAである。第一の鎖合成は、40℃〜52℃の間で行うことができる。一般的に、50℃で10分のインキュベーションにより、最適な結果が得られる。
【0028】
A.RNAテンプレート
テンプレートRNAは、実施者にとって既知又は未知の、注目の任意のリボ核酸とすることができる。テンプレートRNAは、人工的に合成することも、天然供給源から単離することもできる。ある実施態様によれば、RNAテンプレートは、RNA、mRNA、piRNA、tRNA、rRNA,ncRNA、gRNA、shRNA、siRNA、snRNA、miRNA及びsnoRNA等のリボ核酸があり得る。好ましくは、当該RNAはmRNAである。より好ましくは、RNAは生物活性であるか、生物活性ポリペプチドをコードする。
【0029】
RNAテンプレートは、任意の有用な量で存在させることができる。ある実施態様によれば、RNAテンプレート濃度は、50 pg/μL以下である。他のRNAテンプレート濃度が、本発明において有用であることは、当業者に容易に理解されるはずである。
【0030】
B.逆転写酵素
本発明に有用である逆転写酵素は、逆転写酵素活性を呈する任意のポリメラーゼがあり得る。好ましい酵素には、低減したRNase H活性を呈するものがある。いくつかの逆転写酵素は、当業者に既知であり、市販されている(例えば、Boehringer Mannheim Corp., Indianapolis, Ind.; Life Technologies, Inc., Rockville, Md.; New England Biolabs, Inc., Beverley, Mass.; Perkin Elmer Corp., Norwalk, Conn.; Pharmacia LKB Biotechnology, Inc., Piscataway, NJ. ; Qiagen, Inc., Valencia, Calif.; Stratagene, La Jolla, Calif等から)。ある実施態様によれば、当該逆転写酵素は、ニワトリ骨髄芽球腫ウイルス逆転写酵素(AMV−RT)、モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(M−MLV−RT)、ヒト免疫ウイルス逆転写酵素(HIV−RT)、EIAV−RT、RAV2−RT、C.ヒドロゲノフォルマンスDNAポリメラーゼ、rTth DNAポリメラーゼ、SUPERSCRIPT I、SUPERSCRIPT II、及びその変異体、変種もしくは誘導体があり得る。発明又はその好ましい実施態様の範囲を逸脱しない限り、特に上で記載されていない逆転写酵素等の、様々な逆転写酵素を本発明で使用することができる。他の実施態様によれば、逆転写酵素は、M−MLV逆転写酵素である。
【0031】
C.DNAポリメラーゼ
本発明で有用であるDNAポリメラーゼは、DNA分子を複製することができる任意のポリメラーゼがあり得る。好ましいDNAポリメラーゼは、熱安定性ポリメラーゼであり、これは特にPCRにとって有用である。熱安定性ポリメラーゼは、様々な好熱細菌から単離され、当該好熱細菌には、例えば、サーマス・アクティクス(Thermus aquaticus)(Taq)、サーマス・ブロキアナス(Thermus brockianus)(Tbr)、サーマス・フラバス(Thermus flavus)(Tfl)、サーマス・ルベル(Thermus ruber)(Tru)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(Tth)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)(Tli)、及びサーモコッカス属の他の種、サーモプラズマ・アシドフィラム(Thermoplasma acidophilum)(Tac)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)(Tne)、サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)(Tma)、及びサーモトガ属の他の種、プロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)、ピロコッカス・ウォエセイ(Pyrococcus woesei)(Pwo)、及びピロコッカス属の他の種、バチルス・ストロサーモフィラス(Bacillus sterothermophilus)(Bst)、スルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)(Sac)、スルホロブス・ソルファタリクス(Sulfolobus solfataricus)(Sso)、ピロジクチウム・オクルタム(Pyrodictium occultum)(Poc)、ピロジクチウム・アビシ(Pyrodictium abyssi)(Pab)、及びメタノバクテリウム・サーモアウトトロフィクス(Methanobacterium thermoautotrophicum)(Mth)、及びその変異体、変種もしくは誘導体等がある。
【0032】
いくつかのDNAポリメラーゼは、既知であり市販されている(例えば、Boehringer Mannheim Corp., Indianapolis, Ind.; Life Technologies, Inc., Rockville, Md; New England Biolabs, Inc., Beverley, Mass.; Perkin Elmer Corp., Norwalk, Conn.; Pharmacia LKB Biotechnology, Inc., Piscataway, N.J.; Qiagen, Inc., Valencia, Calif.; Stratagene, La Jolla, Calif等から)。ある実施態様によれえば、当該DNAポリメラーゼは、Taq、Tbr、Tfl、Tm、Tth、Tli、Tac、Tne、Tma、Tih、Tfi、Pfu、Pwo、Kod、Bst、Sac、Sso、Poc、Pab、Mth、Pho、ES4、VENT(商標)、DEEPVENT(商標)及びその活性変異体、変種および誘導体があり得る。発明又はその好ましい実施態様の範囲を逸脱しない限り、特に上で記載されていないDNAポリメラーゼ等の、様々なDNAポリメラーゼを本発明で使用することができる。他の実施態様によれば、DNAポリメラーゼは、Taq DNAポリメラーゼである。他のDNAポリメラーゼが本発明に有用であることは、当業者に理解されるはずである。
【0033】
本発明の方法において有用である他のDNAポリメラーゼには、限定するものではないが、好熱性DNAポリメラーゼがある。
【0034】
逆転写酵素は、DNAポリメラーゼに対して任意の適切な比率で存在することができる。ある実施態様によれば、活性単位での、DNAポリメラーゼに対する逆転写酵素の比率は、3以上である。DNAポリメラーゼに対する逆転写酵素の他の比率が本発明で有用であることは、当業者に理解されるはずである。
【0035】
D.RT阻害低減剤
RT阻害低減剤は、RT−PCRにおける逆転写酵素阻害を低減する任意の部分があり得る。ある実施態様によれば、本発明は、RT阻害低減剤を提供するが、当該RT阻害低減剤にはSso7d、Sac7d、Sac7e、Sso7e、AluIメチラーゼ、スラミン、ホスホロチオエートオリゴデオキシシトシン(SdC)、ホスホロチオエートオリゴデオキシアデニン、ホスホロチオエートオリゴデオキシチミン及びポリ(rA)(dT)があり得る。他のRT阻害低減剤が本発明で有用であることは、当業者に理解されるはずである。
【0036】
ある実施態様によれば、RT阻害低減剤は、配列非特異性二本鎖DNA結合タンパク質である。配列非特異性二本鎖DNA結合タンパク質は、任意の温度で機能する。他の実施態様によれば、配列非特異性二本鎖DNA結合タンパク質は70℃未満で機能する。他の実施態様によれば、配列非特異性二本鎖DNA結合タンパク質は55℃未満で機能する。
【0037】
別の実施態様によれば、配列非特異性二本鎖DNA結合タンパク質は、DNA修飾酵素とすることができ、限定するものではないが、Aluメチラーゼ等のメチラーゼ、二本鎖DNA特異的ヌクレアーゼ又は組み換え体がある。本発明において有用なDNA修飾酵素は、酵素活性を低減するか、酵素活性がないが、dsDNA基質に結合する能力は維持している。
【0038】
他の実施態様によれば、配列非特異性二本鎖DNA結合タンパク質は、Sso7d、Sac7、Sac7e又はSso7eがあり得る。他の配列非特異性二本鎖DNA結合タンパク質が本発明で有用であることは、当業者に理解されるはずである。
【0039】
さらなる実施態様によれば、本発明は、RT阻害低減剤としてスルホン酸分子を提供する。ある実施態様によれば、スルホン酸分子は、スルホン酸アンモニウム、スルホン酸マグネシウム、スルホン酸マンガン、スルホン酸カリウム、スルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩があり得る。他の実施態様によれば、スルホン酸分子は、AMPSO(3−[(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−ヒドロキシ−プロパンスルホン酸)、BES(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]−2−アミノメタンスルホン酸)、MOPS(3−N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸)、MOPSO(3−N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、TES(2−{[トリス−(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸)、HEPES(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N'−2−エタンスルホン酸)、HEPPS(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N'−3−プロパンスルホン酸)、HEPPSO(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N'−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TAPS(TES(3−[[トリス−(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸、CHES(2−(N−シクロ−ヘキシルアミノ)エタンスルホン酸)、MES(2−N−モルホリノ)エタンスルホン酸、PIPES(ピペラジン−N,N'−ビス−2−エタンスルホン酸)、POPSO(ピペラジン−N,N'−ビス[2−ヒドロキシ]プロパンスルホン酸)、TAPS(N−トリス[ヒドロキシメチル]メチル−3−アミノプロパンスルホン酸)、TAPSO(3−[N−トリス{ヒドロキシメチル}メチルアミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)、ACES(N−2−アセトアミド−2−アミノエタンスルホン酸)、DIPSO(3−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)、CAPSO(3−[シクロヘキシルアミノ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸)及びCAPS(3−[シクロヘキシルアミノ]プロパンスルホン酸)等の緩衝剤があり得る。さらに他の実施態様によれば、スルホン酸分子はスラミンである。さらに他の実施態様によれば、スルホン酸分子は、スルホン酸ポリマーがあり得る。他のスルホン酸分子が、本発明のRT阻害低減剤として有用であることは、当業者に理解されるはずである。
【0040】
他の実施態様によれば、RT阻害低減剤は、式:
オリゴデオキシヌクレオチド−O−P(S)(OH)−O−オリゴデオキシヌクレオチド
のホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドがあり得る。
【0041】
ある実施態様によれば、ホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドは、ホスホロチオエートオリゴデオキシシトシン(SdC)、ホスホロチオエートオリゴデオキシアデニン(SdA)、ホスホロチオエートオリゴデオキシチミン(SdT)又はホスホロチオエートオリゴデオキシグアニン(SdG)があり得る。他の実施態様によれば、RT阻害低減剤はSdCである。本発明のホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドは、任意の大きさがあり得る。本発明で有用なホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドは、限定するものではないが、10マー、12マー、14マー、16マー、18マー、20マー、22マー、24マー、26マー、28マー等がある。当業者は、他のホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドが本発明で有用であることを理解するはずである。
【0042】
さらなる実施態様によれば、RT阻害低減剤は、DNAとRNA尾部を含んでなるRNAとの二重鎖である。二重鎖のDNA部分は、別々に任意の好適なヌクレオチド配列とすることができ、任意の組み合わせでdA、dC、dG及びdTを含む同種接合及び異種接合型の配列がある。二重鎖のDNA部分は、別々に任意の好適なヌクレオチド配列とすることができ、任意の組み合わせで、rA、rC、rG及びrTを含む同種接合及び異種接合型の配列がある。ある実施態様によれば、DNA部分は、オリゴ(dT)であり、RNA部分はポリ(rA)である。RNA尾部は、ポリ(rA)、ポリ(rC)、ポリ(rG)、又はポリ(rT)等の任意の適切な尾部があり得る。他の実施態様によれば、RNA尾部はポリ(rA)である。
【0043】
RT阻害低減剤は、任意の有用な量で存在することができる。ある実施態様によれば、RT阻害低減剤は、約0.01 nM〜約1000 nMの量で存在する。他の実施態様によれば、RT阻害低減剤は、約0.1 nM〜約100 nMの量で存在する。さらに他の実施態様によれば、RT阻害低減剤は、約1 nM〜約10 nMの量で存在する。当業者は、他の量のRT阻害低減剤が本発明で有用であることを理解するはずである。
【0044】
E.プライマー
ある実施態様によれば、本発明の方法は、核酸プライマーを含むことができる。本発明において有用であるオリゴヌクレオチドプライマーは、長さが2以上のヌクレオチドの、任意のオリゴヌクレオチドがあり得る。好ましくは、PCRプライマーは、長さが約15〜約30塩基であり、回文構造(自己相補的)又は反応混合物で使用できる他のプライマーと相補的ではない。限定するものではないが、プライマーは、ランダムプライマー、ホモポリマー、又は標的RNAテンプレートに特異的なプライマー(例えば、配列特異的プライマー)があり得る。オリゴヌクレオチドプライマーは、相補的核酸の重合を促進する、標的核酸の領域とハイブリダイズするために使用されるオリゴヌクレオチドである。好ましいRT−PCR法においては、プライマーはRNAテンプレートの部分に相補的な第一の核酸分子(例えば、cDNA分子)の逆転写の促進に役立ち、そして核酸の複製(例えば、DNAのPCR増幅)の促進にも役立つ。任意のプライマーは、当該技術分野の通常の技能を有する実行者により合成できるか、任意の多数の供給業者(例えば、Boehringer Mannheim Corp., Indianapolis, Ind.; New England Biolabs, Inc., Beverley, Mass.; Pharmacia LKB Biotechnology, Inc., Piscataway, N.J.; Integrated DNA Technology, Coralville, Iowa; Eurogentec, San Diego, CA; Sigma Genesys, The Woodlands, TX)から購入できる。多数のアレイのプライマーが本発明で有用である可能性があり、発明の範囲又はその好ましい実施態様から逸脱しない限り、本明細書に具体的に記載されないものが含まれる。他の実施態様によれば、核酸プライマーは、RNAテンプレート部分と相補的である。
【0045】
F.ヌクレオチド塩基
本発明において有用であるヌクレオチド塩基は、核酸の重合において有用である任意のヌクレオチドがあり得る。ヌクレオチドは、天然に存在する、ありふれていない、改変された、誘導体化された、又は人工的なものがあり得る。ヌクレオチドは、未標識であるか、当該技術分野で既知の方法で検出可能に標識することができる(例えば、放射性同位体、ビタミン、蛍光性又は化学発光性部分、ジオキシゲニン)。好ましくは、当該ヌクレオチドは、デオキシヌクレオシド3リン酸、dNTP(例えば、dATP、dCTP、dGTP、dTTP、dITP、dUTP、α−チオ−dNIT、ビオチン−dUTP、フルオレセイン−dUTP、ジゴキシゲニン−dUTP、7−デアザ−dGTP)である。dNTPは、当該技術分野で周知であり、供給業者から市販されている(例えば、Boehringer Mannheim Corp., Indianapolis, Ind.; New England Biolabs, Inc., Beverley, Mass.; Pharmacia LKB Biotechnology, Inc., Piscataway, N.J.から)。
【0046】
本発明のヌクレオチドは、任意の濃度で存在することができる。ある実施態様によれば、ヌクレオチドは、約1μM〜約1000μMの量で存在する。他の実施態様によれば、ヌクレオチドは、約10μ〜約750μMの量で存在する。さらに他の実施態様によれば、ヌクレオチドは、約100μM〜約500μMの量で存在する。他の濃度のヌクレオチドが本発明で有用であることは、当業者に理解されるはずである。
【0047】
G.緩衝剤及び塩
本発明において有用である緩衝剤及び塩は、核酸合成のため、例えば逆転写酵素及びDNAポリメラーゼ活性のために、適切で安定なpH及びイオン条件を提供する。本発明において有用であり得る様々な緩衝剤及び塩溶液及び修正緩衝液が既知であり、本明細書に特に開示されていない剤も含まれる。好ましい緩衝剤には、限定するものではないが、TRIS、TRICINE、BIS−TRICINE、HEPES、MOPS、TES、TAPS、PIPES、CAPSがある。好ましい援用液には、限定するものではないが、酢酸カリウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、硫酸マンガン、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化リチウム、及び酢酸リチウムがある。
【0048】
本発明の緩衝剤は、任意の濃度で存在することができる。ある実施態様によれば、緩衝剤は、約0.1 mM〜約1000 mMの量で存在する。他の実施態様によれば、緩衝剤は、約1 mM〜約500 mMの量で存在する。さらに他の実施態様によれば、緩衝剤は、約5 mM〜約250 mMの量で存在する。他の濃度の緩衝剤が本発明で有用であることは、当業者に理解されるはずである。
【0049】
本発明の塩は、任意の濃度で存在することができる。ある実施態様によれば、塩は、約0.01 mM〜約1000 mMの量で存在する。他の実施態様によれば、塩は、約0.1 mM〜約500 mMの量で存在する。さらに他の実施態様によれば、塩は、約1 mM〜約100 mMの量で存在する。他の濃度の塩が本発明で有用であることは、当業者に理解されるはずである。
【0050】
H.他の添加剤
逆転写、複製、及び/又は両反応の組み合わせを促進できる他の添加剤(例えば、RT−PCR促進のための剤)、本発明により最初に開示されたもの以外の他のものが、当該技術分野で既知である。本発明の組成物及び方法によれば、リボ核酸テンプレートからの核酸の作製及び複製を最適化するため、1又は複数のこれらの添加剤を本組成物に組み込むことができる。添加剤は、有機又は無機の化合物があり得る。本発明において有用である阻害緩和剤は、限定するものではないが、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン、アルブマックス(albumax)、カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、グロブリン、リゾチーム、トランスフェリン、ミオグロビン、ヘモグロビン、α−ラクトアルブミン、フマラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、アミログルコシダーゼ、カルボニックアンヒドラーゼ、β−ラクトグロブリン、アプロチニン、ダイズトリプシン阻害剤、トリプシノーゲン、ホスホリラーゼb、ミオシン、アクチン、β−ガラクトシダーゼ、カタラーゼ、ダイズトリプシン消化物、トリプトース(tryptose)、レクチン、E.coli一本鎖結合(SSB)タンパク質、ファージT4遺伝子32タンパク質等のポリペプチドがある。非ポリペプチド添加剤の例には、限定するものではないが、tRNA、rRNA、硫酸含有化合物、酢酸含有化合物、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、ホルムアミド、ベタイン、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、ポリエチレングリコール(PEG)、TWEEN20非イオン性界面活性剤、NP40非イオン性界面活性剤、エクトイン(ectoine)、ポリオール、E.coli(SBB)タンパク質、ファージT4遺伝子32タンパク質、BSAがある。
【0051】
さらに、増幅産物の検出のための手段を提供する剤の存在下で、増幅を行うことができる。例えば、当該反応容器に、増幅産物の同種リアルタイム検出のための、適切なハイブリダイゼーションプローブをあらかじめ入れておくことができる。好ましくは、これらのプローブを、蛍光部分で適切に標識することができる。他の成分には、二本鎖DNAと結合する色素がある。ある実施態様によれば、当該色素は、SYBRグリーンがあり得る。他の色素が、本発明で有用であることは、当業者に理解されるはずである。
【0052】
II.組成物及びキット
ある実施態様によれば、本発明は、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、及びSso7d、Sac7d、Sac7e、Sso7e、AluIメチラーゼ、スラミン、ホスホロチオエートオリゴデオキシシトシン(SdC)、ホスホロチオエートオリゴデオキシアデニン、ホスホロチオエートオリゴデオキシチミン及びポリ(rA)(dT)からなる群から選択されるRT阻害低減剤を含んでなる組成物を提供する。他の実施態様によれば、当該RT阻害低減剤は、ホスホロチオエートオリゴデオキシシトシン(SdC)である。さらに他の実施態様によれば、組成物は、緩衝剤、ヌクレオチド、塩、安定化剤、プライマー又はヌクレアーゼ不含水のうち少なくとも1つを含むことができる。
【0053】
別の実施態様によれば、本発明は、DNAポリメラーゼ、及びSso7d、Sac7d、Sac7e、Sso7e、AluIメチラーゼ、スラミン、ホスホロチオエートオリゴデオキシシトシン(SdC)、ホスホロチオエートオリゴデオキシアデニン、ホスホロチオエートオリゴデオキシチミン及びポリ(rA)(dT)からなる群から選択されるRT阻害低減剤を含んでなる第一溶液混合物を有するキットを提供する。当該キットは、緩衝剤、ヌクレオチド、塩、安定化剤、指示書、プライマー、RNAテンプレート、色素及びヌクレアーゼ不含水のうちの少なくとも1つを任意に含む。プライマー及びRNAテンプレートを一緒にした両方の溶液混合物は、選択されたRNA標的のRT−PCRを可能にするはずである。任意の緩衝剤、ヌクレオチド、塩、安定化剤、指示書、プライマー、RNAテンプレート、色素及びヌクレアーゼ不含水のいずれかを、第一溶液に個別に存在させることも、1又は複数の別々の溶液に存在させることもできる。
【0054】
他の実施態様によれば、当該キットは、逆転写酵素も含む。他の実施態様によれば、逆転写酵素は、第一溶液中にある。さらに他の実施態様によれば、キットは、逆転写酵素を有する第二溶液を含む。さらに他の実施態様によれば、第一溶液は、緩衝剤、ヌクレオチド及び塩、をさらに含んでなり、第三溶液は、ヌクレアーゼ不含水を含んでなる。さらに他の実施態様によれば、第一溶液は、緩衝剤、ヌクレオチド、色素及び塩をさらに含んでなり、第三溶液は、ヌクレアーゼ不含水を含んでなる。
【0055】
ある実施態様によれば、RT阻害低減剤は、Sso7d、AluIメチラーゼ、スラミン、ホスホロチオエートオリゴデオキシシトシン(SdC)、及びポリ(rA)(dT)からなる群から選択されるメンバーである。他の実施態様によれば、RT阻害低減剤は、ホスホロチオエートオリゴデオキシシトシン(SdC)である。他の実施態様によれば、DNAポリメラーゼはTaqである。さらに他の実施態様によれば、逆転写酵素は、M−MLV逆転写酵素である。さらに他の実施態様によれば、塩は、マグネシウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩又はその組み合わせのいずれかがあり得る。さらに他の実施態様によれば、当該キットは、ヌクレアーゼ不含水をさらに含むことができる。
【0056】
本発明において有用である安定化剤には、限定するものではないが、ポリオール(グリセロール、トレイトール等)、環状ポリエーテル等のポリエーテル、ポリエチレングリコール、有機もしくは無機の塩、例えば、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、有機スルホン酸塩等、糖、ポリアルコール、アミノ酸、ペプチド、又はカルボン酸、消光剤及び/又はスカベンジャー、例えば、マンニトール、グリセロール、還元グルタチオン、スーパーオキシドジスムターゼ、ウシ血清アルブミン(BSA)、又はゼラチン、スペルミジン、ジチオトレイトール(又はメルカプトエタノール)及び/又は洗浄剤、例えば、TRITON(登録商標)X−100[オクトフェノール(エチレングリコールエーテル)]、THESIT(登録商標)[ポリオキシエチレン9ラウリルエーテル(C
12E
9)]、TWEEN(登録商標)(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート20,NP40)及びBRIJ(登録商標)−35(ポリオキシエチレン23ラウリルエーテル)がある。他の安定化剤が本発明で有用であることは、当業者に理解されるはずである。
【0057】
本発明の組成物及びキットは、ハイブリダイゼーションプローブも含むことができる。ハイブリダイゼーションプローブは、DNA及びRNAサンプルにおけるヌクレオチド配列の存在を検出するために使用されるDNA断片である。当該プローブは、一本鎖核酸(DNA又はRNA)の相補部分とハイブリダイズする。本発明で有用であるハイブリダイゼーションプローブを、検出を促進するために、例えば、放射活性又は蛍光色素分子で標識することができる。
【実施例】
【0058】
III.実施例
実施例1:RT−PCRにおけるRT阻害の低減
逆転写酵素以外の全ての成分を室温で溶解させる。穏やかに、しかし完全に混合し、その後、4℃で遠心分離し、管の底に内容物を集める。使用前に氷上で冷却する。必要ならば、4℃で再び短時間の遠心分離をする。
【0059】
TaqDNAポリメラーゼ、dNTP(dATP、dCTP、dGTP及びdTTP)、塩化マグネシウム、安定化剤及びSdCの混合物に、順方向プライマー、逆方向プライマー、ヌクレアーゼ不含水及び逆転写酵素を添加する。サンプルテンプレート(全RNA)以外の全ての必要な成分を有する反応カクテルを集め、各反応管に同量ずつ分注する。最終段階として、標的サンプル(RNAテンプレート)を各反応物に5〜10μlの量で添加する。
【0060】
その後、反応混合物を、リアルタイム熱検出システムで以下の通りにインキュベートした。
cDNA合成:50℃で10分、
逆転写酵素不活性化:95℃で5分、
PCRサイクル及び検出(30〜45サイクル):95℃で10秒、その後、55℃〜60℃で30秒。
【0061】
実施例2:キット
以下の濃度に従ってキットを調製できる。
【0062】
【表1】
【0063】
本明細書に添付の請求の範囲において、「1つの(a、an)」なる用語は、「1又は複数」を意味することにする。「含んでなる(comprise)」なる用語、及び「含んでなる(comprises)」及び「含むこと(comprising)」等のその変形は、ステップ又は要素の記載の前にある場合、さらなるステップ又は要素の追加が、任意であり且つ排除されないことを意味することにする。本明細書で引用される全ての特許、特許出願、及び他の発行文献は、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で引用される任意の文献と、本明細書の明らかな教示との間の任意の不一致は、本明細書の教示を優先して解消することにする。これは、単語又は用語の技術的に理解される定義と、同じ単語又は用語について本明細書で明らかに提供される定義との間の任意の不一致にも適用される。