(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水不溶性薬剤は、ペプチド、環状ペプチド、エイコサノイド、抗炎症剤、自律神経薬、生物製剤、遺伝子治療薬、抗感染薬、レチノイド、RNAi、光感作薬、ステロイド、混合薬物、免疫調節薬、化学療法剤、Gタンパク質共役型受容体アンタゴニスト、受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤、成長ホルモン阻害剤、インテグリン阻害剤、Sdfl/CXCR4経路阻害剤、およびnACh受容体アンタゴニストからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
ポリ(アルキレンオキシド)、ポリビニルアルコール、ポリピロリドン、ポリビニルピロリドン、水溶性ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリ(ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ無水物、ポリカプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、ソルビトール、ソルビトール誘導体、ポリソルベート、多糖類、ポロゲン、酸化防止剤、可塑剤、浸透促進剤および界面活性剤からなる群から選択される一以上の追加成分をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
眼インプラント、涙点プラグ、コンタクトレンズ、フィルム、注入可能な粒子またはマイクロスフェア懸濁、粘膜付着製剤、in−situ形成ゲルまたはフィルム、ゲル、イオントフォレシス製剤、錠剤、ロッド、中空ロッド、ミクロスフェア、ナノスフェア、繊維マット、繊維、皮膚パッチ、皮下埋め込み、あるいは軟膏として加工されることによって特徴づけられる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
前記ペンダントカルボン酸エステル基を有するチロシン由来のジフェノール化合物モノマーユニットは、メチル、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチルおよびベンジルエステルからなる群から選択されるデスアミノチロシル−チロシンエステルである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
前記ドラッグデリバリー製品は、眼インプラント、涙点プラグ、コンタクトレンズ、フィルム、注入可能な粒子またはマイクロスフェア懸濁、粘膜付着製剤、in−situ形成ゲルまたはフィルム、軟膏、ゲルまたはイオントフォレシス製剤、錠剤、ロッド、中空ロッド、ミクロスフェア、ナノスフェア、繊維マット、繊維、皮膚パッチ、皮下埋め込み、あるいは軟膏として形成される、請求項10または11に記載の方法。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
かような需要は本発明によって満たされる。米国特許第6,120,491号のある種のポリマー類、例えば、ペンダントカルボン酸基を有するチロシン由来のジフェノールモノマーのホモポリマーおよびコポリマーである、ポリカーボネート、ポリアリレート、およびこれらのポリ(アルキレンオキシド)ブロックコポリマーのような、生体適合性ジフェノール化合物のあるポリマーを有する水不溶性薬剤に対して、擬0次放出を得ることができることを見出した。米国特許第6,120,491号の全ての開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。特に、ペンダントの遊離カルボン酸基を有するジフェノールモノマーユニットを一部に含む、ジフェノール化合物モノマーユニットおよびポリ(アルキレンオキシド)ブロックのランダムブロックコポリマーが混合された水不溶性薬剤に対して、分解放出を伴う拡散のスローダウンが、ポリマー中の遊離カルボン酸モノマーおよびポリ(アルキレンオキシド)ブロックのモル量の選択により、阻害されうることを見出した。これらのユニットのモル分率が増加するほど、分解放出速度は上がる。
【0008】
したがって、本発明の一実施形態によれば、生体適合性分解性ポリマー組成物が提供され、組成物において、水不溶性薬剤と、ペンダントカルボン酸エステル基を有する生体適合性ジフェノール化合物モノマーユニットが重合された、ペンダントカルボン酸基を有する生体適合性ジフェノール化合物モノマーユニット、およびポリ(アルキレンオキシド)ブロックのコポリマーと、が混合され、この際、ペンダントカルボン酸基を有する生体適合性ジフェノール化合物モノマーユニットおよびポリアルキレンオキシドブロックのコポリマーにおける、組成物中の薬剤の重量パーセンテージに対するモル分率が、生理的条件下でドラッグデリバリーの持続放出相の間、組成物から薬剤が擬0次放出することに有効である。
【0009】
本発明の目的のために、生体適合性化合物とは、接触により毒性を与えないまたは組織損傷反応を引き起こさない、および組織との接触後に組織に対して毒性のまたは有害である分解産物を形成しない化合物として定義される。一実施形態によれば、生体適合性ジフェノール化合物は、米国特許第6,120,491号の生体適合性ジフェノール化合物、特にここに開示されているチロシン由来のジフェノール化合物およびデスアミノチロシル由来のジフェノール化合物である。他の実施形態によれば、コポリマーは、ペンダントカルボン酸基を有するチロシン由来のジフェノール化合物モノマーユニット、例えば非エステルデスアミノチロシル−チロシンフリーカルボン酸(DT)を約1モル%から約75モル%、好ましくは約2モル%から約60モル%、またはより好ましくは約3モル%から約25モル%、ペンダントカルボン酸エステル基を有するチロシン由来のジフェノール化合物モノマーユニット、例えば、デスアミノチロシル−チロシンエステル(DTR)を約25モル%から約99モル%、およびポリ(アルキレンオキシド)コポリマーブロックを約1モル%から約40モル%、好ましくは約2モル%から約30モル%、より好ましくは約3モル%から約25モル%、またはより好ましくは約4モル%から約20モル%を含む、米国特許第6,120,491号のポリマーである。一実施形態では、ポリ(アルキレンオキシド)は、ポリエチレングリコール(PEG)である。本発明の具体的なターポリマーに対して本明細書で用いられる簡便な標記として、ポリ(DTR−co−y% DT−co−z% PEGカーボネート)とする。
【0010】
一実施形態によれば、水不溶性薬剤としては、ペプチド、エイコサノイド、抗炎症剤、自律神経薬、生物製剤、遺伝子治療薬、抗感染薬、レチノイド、RNAi、光感作薬(photosensitizers)、ステロイド、混合薬物、免疫調節薬、化学療法剤、Gタンパク質共役型受容体アンタゴニスト、受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤、成長ホルモン阻害剤、インテグリン阻害剤、Sdfl/CXCR4経路阻害剤、およびnACh受容体アンタゴニストから選択される。より具体的な実施形態によれば、水不溶性薬剤は、環状ペプチドのボクロスポリン(voclosporin)である。他の実施形態によれば、水不溶性薬剤は、組成物の約0.5重量%から約80重量%の量で存在する。
【0011】
一実施形態によれば、組成物は、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリビニルアルコール、ポリピロリドン、ポリビニルピロリドン、水溶性ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリ(ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ無水物、ポリカプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、ソルビトール、ソルビトール誘導体、ポリソルベート、多糖類、ポロゲン(porogen)、酸化防止剤、可塑剤、浸透促進剤および界面活性剤から選択される、擬0次放出を調節するための一以上の追加成分をさらに含む。
【0012】
他の実施形態によれば、組成物は、眼インプラント、涙点プラグ、コンタクトレンズ、フィルム、粘膜付着製剤、in−situ形成ゲルまたはフィルム、軟膏、ゲル、イオントフォレシス製剤または懸濁として加工される。他の実施形態によれば、本発明は、本発明の生体適合性分解性ポリマー組成物を患者の目に接触させることによって、必要とする患者の眼疾患を治療する方法をも提供する。具体的な実施形態によれば、水不溶性薬剤は、環状ペプチドのボクロスポリンである。
【0013】
一実施形態によれば、ポリマー組成物は、局所的に患者に薬剤を運搬する。他の実施形態によれば、ポリマー組成物は、患者に全身的に薬剤を運搬する。組成物は、局所に、眼周囲に、または硝子体内に、患者へと薬剤を投与することができる。また、薬剤を運搬するために、組成物を患者の涙管に接触させることができる。
【0014】
他の実施形態によれば、本発明の方法にしたがった治療の対象となる眼疾患は、特発性ブドウ膜炎、角膜移植、ドライアイ症候群、加齢性黄斑変性症(AMD、wetおよびdry)、糖尿病性眼疾患、眼瞼炎、緑内障、高眼圧症、術後の眼痛および炎症、後眼部血管新生(PSNV)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、サイトメガロウイルス性網膜炎(CMV)、眼内炎、脈絡膜新生血管膜(CNVM)、血管閉塞性疾患、アレルギー性眼疾患、腫瘍、網膜色素変性、眼感染症、強膜炎、眼瞼下垂症、縮瞳、眼痛、散瞳、神経痛、加齢(例えば、筋弛緩および他の美的産物)、瘢痕性眼表面疾患、眼感染症、炎症性眼疾患、眼表面疾患、角膜疾患、網膜疾患、全身性疾患の眼症状発現、遺伝性目疾患、眼腫瘍および眼内圧上昇から選択される。
【0015】
本発明のチロシン由来の生体適合性ポリマーは、ガラス転移温度が低く、温度感受性薬剤のこれまで知られていない負荷レベルでのドラッグデリバリーに対する薬剤−ポリマー混合物の製造を可能とする。したがって、本発明は、水不溶性薬剤と、ペンダントカルボン酸基を有するチロシン由来のジフェノール化合物モノマーユニット、ペンダントカルボン酸エステル基を有するチロシン由来のジフェノール化合物モノマーユニット、およびポリ(アルキレンオキシド)コポリマーブロックを含むランダムブロックコポリマーと、を混合し、次いで、混合物を用いて組成物を形成することによって生体適合性分解性ポリマー組成物を製造する方法をも提供するが、この際、(i)組成物は、組成物の約0.5重量%から約80重量%の薬剤負荷を含み、(ii)組成物中の薬剤重量%に対する、ペンダントカルボン酸基を有するジフェノール化合物モノマーユニット、およびポリ(アルキレンオキシド)コポリマーブロックのポリマー中のモルパーセントが、生理学的条件下でドラッグデリバリーの持続放出相の間、組成物から薬剤が実質的0次放出することに有効である。本発明の方法は、水不溶性薬剤がペプチドである場合に、ドラッグデリバリー組成物の製造に特に有利である。
【0016】
本発明の他の特徴は、下記説明および特許請求の範囲において記述し、これらは、発明の原理、および発明を実施するために現在考えられるベストモードを開示している、
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、ポリカーボネートまたはポリアリレートのような生体適合性ジフェノールポリマーと混合した水不溶性薬剤を含む、生体適合性分解性ポリマー組成物を提供する。生体適合性ポリマーは、生理学的条件下(例えば、37℃でpH7.4)で分解性であり、ペンダントカルボン酸を有する生体適合性ジフェノール化合物モノマーユニット、ペンダントカルボン酸エステル基を有する生体適合性ジフェノール化合物モノマーユニット、およびポリ(アルキレンオキシド)ブロックを含む。組成物中の薬剤重量パーセンテージに対する、ペンダントカルボン酸基を有する生体適合性ジフェノール化合物モノマーユニットおよびポリアルキレンオキシドブロックのポリマー中のモル分率が、生理学的条件下でドラッグデリバリーの持続放出相の間、組成物から薬剤が擬−0次放出するのに有効である。
【0019】
本明細書で用いられるように、「コポリマー」という用語は、二(2)以上(例えば、2、3、4、5、など)のモノマー種由来の非ホモポリマーを指す。「ターポリマー」という用語は、ちょうど三(3)モノマー種由来の非ホモポリマーを指す。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、生体適合性ポリマーは、米国特許第6,120,491号で開示されている、チロシン由来のポリカーボネートまたはポリアリレートである。擬−0次放出を与える、米国特許第6,120,491号のポリカーボネートおよびポリアリレートの例としては、約1モル%から約75モル%、好ましくは約2モル%から約60モル%、またはより好ましくは約3モル%から約25モル%の、ペンダントカルボン酸基を有するチロシン由来のジフェノール化合物モノマーユニットと、約25モル%から約99モル%の、ペンダントカルボン酸エステル基を有するチロシン由来のジフェノール化合物モノマーユニットと、を有するポリカーボネートおよびポリアリレートが挙げられる。ポリカーボネートまたはポリアリレートモノマー由来ユニットは、ポリアルキレンオキシドで共重合されたランダムブロックであり、得られたポリマーは、約1モル%から約40モル%、好ましくは約2モル%から約30モル%、より好ましくは約3モル%から約25モル%、またはより好ましくは約4モル%から約20モル%のポリ(アルキレンオキシド)コポリマーブロックおよび約60モル%から約99モル%のポリカーボネートまたはポリアリレートブロックを含む。
【0021】
薬剤−ポリマー混合物は、多相薬剤放出プロファイルを示すことができ、該プロファイルは、典型的には、当業者にはその境界が容易に定められる、初期の薬剤のバーストおよび持続した薬剤放出の期間を含む。「擬−0次」放出は、浸食によって放出速度の拡散スローダウンと加速との平衡を保つことによって得られる実質的0次放出と等価の動的薬剤放出プロファイルを指す本分野の公知の用語である。本発明の目的のために、「実質的0次放出」および「ほぼ0次放出」は、生理学的条件下でドラッグデリバリーの持続放出相にわたって、0次の、または0次に近い薬剤放出速度を指す。0次の、または0次に近い薬剤放出の組成物は、生理学的条件下で、ドラッグデリバリーの持続放出相にわたって、算術平均と比べて原則的に不変である薬剤放出率を有する。
【0022】
例えば、一実施形態において、「実質的0次放出」および「ほぼ0次放出」は、生理学的条件下でのポリマー組成物の放出動態を指し、その中で、約1週間から約4年の期間、初期のバーストに続く持続放出相の間、±10%未満で組成物からの薬剤の放出が変化する。一実施形態では、約1ヶ月から約3年の期間、持続放出が存在する。他の実施形態としては、初期バーストに続く持続放出相の間、±9%、±7.5%、または±5%未満で、組成物からの薬剤放出速度が変化する組成物が挙げられる。
【0023】
本明細書によって導かれるように、当業者は、組成物のある特徴、例えば、ポリマー(類)、薬剤(類)、薬剤負荷レベル、表面積などを調節することによって、放出プロファイルをコントロールすることができる。さらに、初期バーストは、表面でまたは表面近傍で薬剤を除去するために混合物を洗うような後工程によって、あるいは、薬剤を含まないか、または薬剤含量が少ない生体内分解性ポリマーで組成物を被覆することによって、1週間未満にまで短縮することができる。
【0024】
好ましくは、チロシン由来のジフェノール化合物モノマーユニットは、ポリ(アルキレンオキシド)と、ジカルボン酸またはトリホスゲンとで共重合され、その結果得られるポリアリレートまたはポリカーボネートランダムブロックコポリマーは、約1モル%から約40モル%、好ましくは約2モル%から約30モル%、より好ましくは約3モル%から約25モル%、またはより好ましくは約4モル%から約20モル%のポリ(アルキレンオキシド)由来ブロックおよび約60モル%から約99モル%のポリカーボネートまたはポリアリレートブロックを含む。一般的に、ポリ(アルキレンオキシド)の分子量が増加するにつれて、コポリマー中の量は減少する。好適なポリマー類(式I参照)としては、全体として参照により本明細書に内容が組み込まれる米国特許第6,120,491号に開示されるポリマー種が挙げられる。
式I:
【0026】
式Iにおいて、xおよびfは、種々のサブユニットのモル比であり、擬−0次放出を可能とするポリマーの例では、0.25<X<0.99および0.01<f<0.40である。式Iの表示は図式であり、式Iによって表されるポリマー構造は、ポリマー骨格全体にどんなランダム配列中にも異なるサブユニットが生じうる真のランダムコポリマーであると解される。式Iは、Aが
【0028】
のとき、ポリカーボネートの一般的化学記載となり、Aが
【0030】
のとき、ポリアリレートの一般的化学記載となる。R
8は、18までの炭素原子を含む、飽和および不飽和、置換および非置換のアルキル、アルキレンオキシド、アリールおよびアルキルアリール基から選ばれる。各アルキレンオキシドブロック内の、およびポリマーにわたるR
7の各々は、独立して4炭素まで含むアルキレン基であり、kは5および3,000の間である。R
9は18炭素までを有するアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、ただし、該基は、構造の一部にカルボン酸基を含む。R
9はまた、窒素および酸素のような非炭素原子を含むこともできる。特に、R
9は、天然アミノ酸のチロシン、桂皮酸、または3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の誘導体に関連する構造を有することができる。これらの場合、R
9は、式IIおよびIIIで示される特定の構造とされる:
【0032】
式IIおよびIII中、aおよびbは、独立して、0、1、または2でありうる。R
2は水素である。
【0033】
R
12は、カルボン酸エステル基で置換された、アルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、この際、エステルは、18までの炭素原子を含む直鎖および分岐のアルキル、アルキレンオキシドおよびアルキルアリールエステルから選択される。R
12もまた、窒素および酸素のような非炭素原子を含むことができる。特に、R
12は、天然アミノ酸のチロシン、桂皮酸、または3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の誘導体に関連する構造を有することができる。チロシン、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、および桂皮酸の誘導体に対して、R
12は、式VおよびVIで示される特定の構造とされる:
【0035】
Cおよびdは、独立して、0、1または2でありうる。R
1は、18までの炭素原子を含む直鎖および分岐の、アルキルおよびアルキルアリール基から選択される。
【0036】
ジフェノールモノマーを製造する方法は、共同所有された米国特許第5,587,507号および5,670,602号で開示されており、双方の開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。好適なデスアミノチロシル−チロシンエステルとしては、メチル、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチルおよびベンジルエステルがある。本発明においては、デスアミノチロシル−チロシンメチルエステルをDTMとし、デスアミノチロシル−チロシンエチルエステルをDTEとし、デスアミノチロシル−チロシル−チロシンベンジルエステルをDTBnとし、デスアミノチロシル−チロシンヘキシルエステルをDTHとし、デスアミノチロシル−チロシンオクチルエステルをDTOなどとする。本発明において、デスアミノチロシル−チロシン遊離酸をDTとする。特定のターポリマーに対して本明細書で用いられる簡易表記としては、ポリ(DTE−co−y% DT−co−z% PEGカーボネート)およびポリ(DTM−co−y% DT−co−z% PEG
1Kカーボネート)(この際、yおよびzのような変数は、ポリマー中のコモノマーのモル%を指す)を含む。
【0037】
本発明のランダムブロックコポリマーは、米国特許第5,658,995号によって開示される方法によって準備することができ、この開示もまた、参照によって本明細書に組み込まれる。遊離カルボン酸基を有するモノマーユニットは、ベンジルエステル(この際、ベンジルエステルは、米国特許第6,120,491号によって開示される方法にしたがって、パラジウム触媒水素化によって置換される)として、または、tert−ブチルエステル(この際、tert−ブチル基は、開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20060034769号によって開示される方法によって脱保護される)として準備される。
【0038】
本発明にしたがったランダムブロックコポリマーは、約20,000および約400,000、好ましくは約100,000の間の重量平均分子量を有する。ブロックコポリマーの数平均分子量は、好ましくは約50,000を超える。分子量決定は、さらに補正することなくポリスチレン標準に対するGPCによって測定される。
【0039】
本発明の組成物中に用いられるのに適した追加の生体適合性ジフェノールポリマーとしては、例えば、米国特許公開第20060034769号および第20050106119号に記載されているポリカーボネートおよびポリアリレート、‘769および‘119文献ならびに米国特許第5,912,225号および第6,238,687号のリン系ポリマー、国際出願PCT/US07/81571号のN−置換ポリマーが挙げられ、全ての内容は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
本明細書で用いられるとき、実施形態によるが、「水不溶性」という用語は、溶質1部に対してある量以上溶媒を必要とする物質を指す。一実施形態では、「水不溶性」という用語は、溶質1部に対して溶媒を10,000部以上必要とする物質を指す。他の実施形態では、「水不溶性」という用語は、溶質1部に対して溶媒を5,000部以上必要とする物質を指す。さらに他の実施形態では、「水不溶性」という用語は、溶質1部に対して溶媒を1,000部以上必要とする物質を指す。他の実施形態では、「水不溶性」という用語は、溶質1部に対して溶媒を100部以上必要とする物質を指す。溶媒としては、水または水溶液が挙げられる。
【0041】
水不溶性薬剤の適切な種類としては、ペプチド、エイコサノイド(例えば、プロスタサイクリンおよびプロスタグランジン)、抗炎症剤、自律神経薬(例えば、β遮断薬、α遮断薬、βアゴニスト、およびαアゴニスト)、生物製剤、遺伝子治療薬(例えば、ウイルスベクター)、抗感染薬(例えば、抗真菌剤、抗生物質、および抗ウイルス剤)、レチノイド、RNAi、光感作薬、ステロイド、混合薬物、免疫調節薬、化学療法剤、Gタンパク質共役型受容体アンタゴニスト、受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤、成長ホルモン阻害剤、インテグリン阻害剤、Sdfl/CXCR4経路阻害剤、およびnACh受容体アンタゴニストが挙げられる。好ましくは、水不溶性薬剤は、ペプチドである。ペプチドの例としては、タンパク新生(proteinogenic)および非−タンパク新生(non−proteinogenic)のアミノ酸が挙げられる。一実施形態では、ペプチドは環状ペプチドである。好適な環状ペプチドはボクロスポリン(ISA247、Isotechnika社、アルバータ、カナダ)である。経口製剤としてのボクロスポリンは、現在、非感染性、特発性ブドウ膜炎の治療用にフェーズIIIの開発段階である。好ましくは、水不溶性薬剤は、組成物の約0.5重量%から約80重量%の量で存在する。
【0042】
任意で、組成物はさらに約70重量%まで、好ましくは約5および約50重量%の間で、一以上の追加の構成成分を含む。適切な追加成分としては、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンのようなポリピロリドン、ポリアクリル酸のような水溶性ポリアクリレート、ポリ(ヒドロキシメチルメタクリレート)、などのようなポリマー;ポリ(L−乳酸)(PLLA)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)、ポリ無水物、ポリカプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリホスファゼンおよびポリリン酸エステルから選ばれる生分解性ポリマーならびに生分解性ポリマーの混合物;ソルビトール、ソルビトール誘導体(例えばSPAN)およびポリソルベート;ポロゲン、酸化防止剤、可塑剤、浸透促進剤、他の界面活性剤、などが挙げられる。好ましくは、任意の追加成分は、ポリ(アルキレンオキシド)、ソルビトール誘導体(例えば、SPAN)、およびポリソルベートから選ばれる。好適なポリ(アルキレンオキシド)は、ポリエチレングリコール(PEG)である。PEGの好適なグレードとしては、PEG1KからPEG35Kが挙げられる。
【0043】
一実施形態では、本開示の生体適合性分解性ポリマードラッグデリバリー組成物は、式ポリ(DTR−co−y% DT−co−z% PEGカーボネート)(この際、yは、約1モルから約75モル、好ましくは約2モルから約60モル、またはより好ましくは約3モルから約25モルであり、zは約1モルから約40モル、好ましくは約2モルから約30モル、より好ましくは約3モルから約25モル、またはより好ましくは約4モルから約20モルである)を有するターポリマーと混合されたボクロスポリンを含む。一実施形態では、組成物はPLGAのような追加の成分とさらに混合される。一実施形態では、組成物に対するPLGAの添加は、少なくとも2ヶ月の間、インビトロでボクロスポリンのほぼ0次の放出をもたらす。
【0044】
本発明の組成物は、インプラントからの薬剤の実質的0次放出が適当と考えられる疾患を治療するために用いることができる。適切な治療形態としては、特発性ブドウ膜炎、角膜移植、ドライアイ症候群、加齢性黄斑変性症(AMD、wetおよびdry)、糖尿病性眼疾患、眼瞼炎、緑内障、高眼圧症、術後の眼痛および炎症、後眼部血管新生(PSNV)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、サイトメガロウイルス性網膜炎(CMV)、眼内炎、脈絡膜新生血管膜(CNVM)、血管閉塞性疾患、アレルギー性眼疾患、腫瘍、網膜色素変性、眼感染症、強膜炎、眼瞼下垂症、縮瞳、眼痛、散瞳、神経痛、加齢(例えば、筋弛緩および他の美的産物)、瘢痕性眼表面疾患、眼感染症、炎症性眼疾患、眼表面疾患、角膜疾患、網膜疾患、全身性疾患の眼症状発現、遺伝性目疾患、眼腫瘍、および眼内圧上昇のような疾患の治療のための眼インプラントが挙げられる。
【0045】
治療方法としては、薬剤を必要とする患者への薬剤の全身および局所運搬の双方が挙げられる。治療形態の例としては、インプラント、涙点プラグ、コンタクトレンズ、フィルム、粘膜付着製剤、in−situ形成ゲル/フィルム(ゾルからゲル、限定されるものではないが、温度、pH、およびイオン誘導ゲル化が挙げられる)、軟膏、ゲル、イオントフォレシス製剤および懸濁(例えば、注入用ミクロ−およびナノ−粒子溶液)が挙げられる。患者への投与に適した物理的形状の例としては、錠剤、ロッド、中空ロッド、ミクロスフェア、ナノスフェア、繊維マット、繊維およびフィルムが挙げられる。眼疾患の場合、局所治療として、本発明の組成物を目に接触させることが挙げられる。例えば、薬剤も含む上述したいずれかの治療形態を眼組織に埋め込むこともできるし、患者の目の表面に直接適用、すなわち、局所的、眼周囲注入、または硝子体内に眼組織へと挿入することもできる。全身療法としては、眼疾患の治療用に薬剤が目へと全身的に運搬されるように、目の近辺で本発明の組成物を患者に接触させることが挙げられる。全身投与用の治療剤型の例としては、皮膚パッチ、皮下埋め込み、ゲル、および軟膏が挙げられる。
【0046】
患者に薬剤の全身的または局所的運搬を提供するために他の治療剤型へと本発明の組成物を容易に適応させることもできる。他の治療剤型としては、例えば、皮膚パッチ、皮下インプラント、軟膏、およびゲルが挙げられる。
【0047】
本発明の組成物は、例えば、紡糸、エレクトロスピニング、溶媒キャスト、射出成形、熱成形、押出成形、シート押出成形、インフレーションフィルム押出成形、圧縮成形などのどんな適切な方法によってもドラッグデリバリーを目的として品物に加工することができる。
【0048】
一実施形態では、ポリマー、薬剤、および存在する場合には任意の成分を、ポリマー、薬剤、および任意成分の均一溶液を形成することができる有機溶媒系に同時に溶解させ、溶液を溶媒キャストし、次いで溶媒を蒸発させて、均一で均質なポリマー、薬剤、および任意成分の混合物を残すことによって、インプラントを製造することができる。典型的な溶媒としては、メタノール、メチレンクロライド、エタノール、エチレングリコール、グリセロール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトン、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、クロロフォルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、および水から選ばれる一以上の溶媒が挙げられる。個々の薬剤およびポリマー成分は、溶媒のうちの少なくとも一に少なくとも1g/lの溶解度を有する必要がある。溶媒は、ポリマー、薬剤および任意成分を溶解する前に予め混合してもよい。あるいは、ポリマー薬剤、または任意成分を、最も溶解する個々の溶媒中に溶解させ、その後、溶液を集めて、ポリマー薬剤および任意成分が溶解している溶媒系を形成させてもよい。
【0049】
一実施形態によれば、ポリマー、薬剤、および任意成分は、好ましくは約1および約30重量%の間のレベルで混合溶媒中に溶解させるべきである。他の実施形態によれば、濃度は、約5および約20重量%の間である。さらに他の実施形態によれば、濃度は、約5および約10重量%の間である。
【0050】
種々の有機溶媒中における本発明で使用を意図されたポリマー薬剤、および任意成分の比溶解度は、公知の化学的特性である。薬剤、ポリマー、および任意成分がそれぞれの濃度で均質な溶液を形成している有機溶媒系の選択は、過度の実験を要することなく、容易に決定される。
【0051】
簡単に述べると、各成分の既知の溶解プロファイルを使って、個々の溶媒の単純な混合物を最初に考慮する。例えば、薬剤がアセトン中である溶解性をもち、ポリマーがメタノールに溶解し、任意成分がメチレンクロライドに溶解する場合、アセトン、メタノール、およびメチレンクロライドの混合物が、均質溶液で3成分全てが溶解できる溶媒系の開発に対する始めの出発点であろう。次に、水素結合効果、極性効果、および一般的な溶媒効果を考慮する。(the CRC Handbook of Physics and Chemistryのような広範囲の溶媒情報源中にリストされているような)既知の溶解度パラメーターの調査もまた、3つの溶質全ての適切な溶媒混合物を見出す助けとなる。異なる溶質に対する複合溶媒混合物の同定は、多数の薬剤および化粧品製品の製剤において既知のタスクであり、当業者によれば容易に遂行されうる。
【0052】
非水性溶媒中での薬剤の溶解性によって、薬剤、ポリマーおよび任意成分の均一で均質な混合物は、共沈によって形成されうる。用いられうる沈殿の既知の方法としては、単一エマルジョン(水中油)、二重エマルジョン−溶媒抽出(水中油中水)、油中油沈殿、油中油中水沈殿、無水懸濁(固体−油−水または固体−油−油)、コアセルベーション、噴霧乾燥、などが挙げられる。沈殿方法は、薬剤が有機溶媒に非常によく溶ける場合には適切ではない。
【0053】
薬剤−ポリマーマトリックスは、残余の溶媒を除去するために乾燥し、次いで既知の方法(例えば、紡糸、エレクトロスピニング、溶媒キャスト、射出成形、熱成形など)で加工して、多種の有用な品物を製造することができる。ドラッグデリバリー装置を作るために、薬剤およびポリマーの熱安定性に依存して、押出成形、シート押出成形、インフレーションフィルム押出成形、圧縮成形、射出成形、熱成形、噴霧乾燥、注入可能な粒子またはマイクロスフェア懸濁などのような従来のポリマー成形技術によって、製品を形作ることができる。
【0054】
本発明の組成物を患者の目に接触させることによって、必要とする患者に対して眼疾患を治療するための方法もまた提供する。薬剤および眼疾患の例示は上述した。該方法は、局所的に、または全身的に患者へ薬剤を運搬することを含む。患者の目に接触させる技術の例としては、患者の涙管に接触させる、および/または組成物を局所に、眼周囲に、または硝子体内に投与することが挙げられる。
【0055】
また、(a)ペンダントカルボン酸基を有するチロシン由来のジフェノール化合物モノマーユニット、ペンダントカルボン酸エステル基を有するチロシン由来のジフェノール化合物モノマーユニット、およびポリ(アルキレンオキシド)コポリマーブロックを含むポリマーと水不溶性薬剤を混合する、ならびに(b)該混合物を用いてドラッグデリバリー製品を形成し、この際(i)組成物は組成物の約0.5重量%から約80重量%の薬剤負荷を含み、(ii)組成物中の薬剤重量%に対するポリマー中の各モノマーユニットのモルパーセントが、生理学的条件下でドラッグデリバリーの持続放出相の間、組成物から薬剤が実質的0次放出するために有効である;生体適合性分解性ポリマー組成物の製造方法も示す。一実施形態では、薬剤負荷は約15重量%から約75重量%である。他の実施形態では、薬剤負荷は、約30重量%から約50重量%である。組成物を製造する際に用いられるポリマーのガラス転移温度(Tg)が低いと、高い薬物負荷(例えば、組成物の約15重量から約80重量%)を有する組成物を熱加工(例えば、押出しおよび上で列挙した他の技術)することができる。
【0056】
下記で説明する非限定的例は、本発明のある形態を説明するものである。
【実施例】
【0057】
実施例1−溶媒キャスト
ポリ(スベリン酸DTH)50mgおよびボクロスポリン22mgを1mlのメチレンクロライド中に溶解した。溶液をテフロン皿中でキャストし、溶媒をオーバーナイト室温で蒸発させた。半乾燥したフィルムを最低でも48時間40℃で真空オーブン中に静置した。乾燥したフィルムからおおよそ6mmのディスクをパンチし、試験前に重量を測った。
【0058】
実施例2−圧縮成形
表1に記した量を用いて、メチレンクロライド[c]ml中に、ポリマー[a]グラムおよびボクロスポリン[b]グラムを溶解させて、試験サンプルを準備した。
【0059】
【表1-1】
【0060】
【表1-2】
【0061】
溶液をテフロン皿中でキャストし、溶媒をオーバーナイト室温で蒸発させた。半乾燥したフィルムを最低でも48時間40℃で真空オーブン中に静置した。(付着を避けるために)パーチメント紙が裏打ちされたステンレス鋼板の間に、薬剤が負荷されたポリマーをプレスすることによって、乾燥したフィルムを[度 摂氏](表I)で圧縮成形した。200μm厚さのシムをサンプルの最終的な厚さを調整するためにスペーサーとして用いた。全加熱時間は10分であった。おおよそ6mmのディスクを圧縮成形したフィルムからパンチし、試験前に重量を測った。
【0062】
実施例3−動的薬物放出(KDR)テスト
実施例2で製造したテストサンプルを37℃、pH7.4の初期リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に浸した。特定の時間間隔で、サンプルを緩衝溶液から出し、新しい37℃のPBSに移した。初期PBS溶液に対して、等体積のアセトニトリルを添加し、混合物を激しく振とうした。紫外線(UV)検出器がついた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて混合物の一定量を分析した。移動相Aは、0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルからなり、移動相Bは、0.1%トリフルオロ酢酸を含むHPLC水からなる。分析は、開始50:50の混合物(体積比)および終止90:10の混合物(体積比)でAおよびBの勾配を使って行った。時間に対する相対ピーク強度から得られる放出された薬剤に対する曲線下面積(AUC)は、HPLCソフトウェアによって計算した。アセトニトリル希釈係数に対する補正の後、対応する薬剤濃度を標準曲線から得た。
【0063】
種々のポリカーボネート製剤からのボクロスポリンの累積的分画放出を
図1に示した。ポリマーからの薬剤放出を高めるためにDTおよび相対的に高いレベルのPEGの間で相乗関係があり、一方ポリマー中の薬剤保持はPEG非存在下のDT存在に関連がある。
【0064】
実施例4−ポリマー浸食テスト
実施例2で準備したテストサンプルを37℃、pH7.4の初期リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に浸した。特定の時間間隔で、サンプルを緩衝溶液から出し、新しい37℃のPBSに移した。初期PBS溶液に対して、0.5N水酸化ナトリウムを添加し、混合物を室温で4時間維持した。4時間後、0.5Nの塩酸を添加し、混合物を室温で30分間維持した。溶液を凍結し、凍結乾燥し、次いでアセトニトリル:HPLC水:メタノール(25:50:25、体積比)中で再懸濁し、分析前に0.45ミクロンテフロンフィルターでろ過した。混合物の一定量を紫外線(UV)検出器および蒸発光散乱検出器がついた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析した。移動相Aは0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルからなり、移動相Bは、0.1%トリフルオロ酢酸を含むHPLC水からなる。分析は、開始50:50の混合物(体積比)および終止90:10の混合物(体積比)でAおよびBの勾配を使って行った。時間に対する相対ピーク強度から得られる溶解モノマーのAUCは、HPLCソフトウェアによって計算した。対応するモノマー濃度は、濃度因子の補正後、標準曲線から得た。緩衝液に溶解したモノマーの重量として浸食を計算した。
【0065】
ボクロスポリンを含むいくつかのポリカーボネートディスクの浸食(フラクションの質量放出)プロファイルを
図2に示す。DT存在下、または非存在下の、PEGのレベルが比較的高いポリマーが、比較的高い質量放出を示す。
【0066】
実施例5−分子量(Mw)決定
実施例2で準備したテストサンプルを37℃でpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に浸した。特定の時間間隔でサンプルを緩衝液から出し、洗い、乾燥させた。0.1%トリフルオロ酢酸を含むジメチルホルムアミドに乾燥したサンプルを溶解した。屈折率(RI)検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いてこの混合物の一定量を分析した。移動相は0.1%トリフルオロ酢酸を含むDMFである。カラム上の保持時間をポリスチレン標準に対する重量平均分子量(Mw)を計算するために用いた。ポリマーの分子量における損失は、初期分子量からの相違として計算した。
【0067】
ボクロスポリンを含むいくつかのポリカーボネートディスクの分画分子量(Mw)損失を
図3に示す。DTおよび比較的高いレベルのPEGを含むポリマー組成物が、最も早い分子量の減少を示す。
【0068】
実施例6−ポリアリレート研究
5つのベースポリアリレートに対して動的薬物放出のテストを行った:前述の実施例におけるように、ポリ(コハク酸DTE)、ポリ(セバシン酸DTE)、ポリ(スベリン酸DTH)、ポリ(コハク酸DTD)、およびポリ(アジピン酸DTO)。
図4に示すように、ポリアリレートが(a)初期バースト相および(b)保持実質的0次日放出からなる二相性の放出を示した。これらの結果に基づいて、カルボキシル化されたポリアリレート、(例えば、ポリ(DTR二塩基酸−co−y% DT二塩基酸−co−z% PEGlK)またはポリ(DTR−co−y% DT−co−z% PEGlK二塩基酸))が、ポリ(DTE−co−y% DT−co−z% PEGlKカーボネート)ターポリマーのサブファミリーに対して示されるのと同様の、動的薬剤放出プロファイル、分子量分解、およびポリマー浸食を示すことを当業者であれば期待するであろう。
【0069】
実施例7−ポリ(DTE−co−12% DT−co−24% PEGlKカーボネート)の動的薬剤放出(Kinetic drug release)(KDR)テスト
ポリ(DTE−co−12% DT−co−24% PEG
1Kカーボネート)0.89グラムおよびボクロスポリン0.38グラムをメチレンクロライド7.5mlに溶解させた。溶液をテフロン皿中でキャストし、溶媒をオーバーナイト室温で蒸発させた。半乾燥のフィルムを最低でも48時間40℃で真空オーブン中に静置した。(付着を避けるために)パーチメント紙が裏打ちされたステンレス鋼板の間に、薬剤が負荷されたポリマーをプレスすることによって、乾燥したフィルムを60℃で圧縮成形した。200μm厚さのシムをサンプルの最終的な厚さを調整するためにスペーサーとして用いた。全加熱時間は10分であった。おおよそ6mmのディスクを圧縮成形したフィルムからパンチし、試験前に重量を測った。このサンプルからの動的薬剤放出テストは、実施例3と同様に行った。ポリマーマトリクスからの薬剤の平均日放出を
図5に示すが、ポリカーボネート組成物中のPEG含量が増加することによってどのように日薬剤放出が増加しうるかということを示している。ポリ(DTE−co−12% DT−co−18% PEG
1Kカーボネート)からの動的薬剤放出も比較のために
図5にプロットした。両サンプルともボクロスポリン30%(重量)負荷である。ポリ(DTE−co−12% DT−co−24% PEG
1Kカーボネート)マトリクスからおおよそ1ヶ月間の期間が延びた放出が観察された。
【0070】
実施例8−圧縮成形
表IIに記した量を用いて、メチレンクロライド[c]ml中に、ポリマー[a]グラムおよびボクロスポリン[b]グラムを溶解させて、試験サンプルを準備した。
【0071】
【表2】
【0072】
溶液をテフロン皿中でキャストし、溶媒をオーバーナイト室温で蒸発させた。半乾燥のフィルムをおおよそ48時間室温で窒素下乾燥させた。(付着を避けるために)パーチメント紙が裏打ちされたステンレス鋼板の間に、薬剤が負荷されたポリマーをプレスすることによって、乾燥したフィルムを[度 摂氏](表II)で圧縮成形した。360μm厚さのシムをサンプルの最終的な厚さを調整するためにスペーサーとして用いた。全加熱時間は5分であった。おおよそ6mmのディスクを圧縮成形したフィルムからパンチし、試験前に重量を測った。
【0073】
実施例9−動的薬剤放出(KDR)テスト
実施例8で準備したテストサンプルを37℃でpH7.4の初期リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に浸した。特定の時間間隔でサンプルを緩衝液から出し、新しい37℃のPBSに移した。初期PBS溶液に対して等体積のアセトニトリルを添加し、混合物を激しく振とうさせた。紫外線(UV)検出器を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて混合物の一定量を分析した。移動相Aは0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルからなり、移動相Bは、0.1%トリフルオロ酢酸を含むHPLC水からなる。分析は、開始70:30の混合物(体積比)および終止75:25の混合物(体積比)でAおよびBの勾配を使って行った。時間に対する相対ピーク強度から得られる放出された薬剤に対する曲線下面積(AUC)は、HPLCソフトウェアによって計算した。アセトニトリル希釈係数に対する補正の後、対応する薬剤濃度を標準曲線から得た。種々のポリカーボネート製剤からのボクロスポリン(voclosporine)の累積的分画放出を
図6に示したが、これは、DTM、DT、およびPEGを含むポリカーボネートポリマー組成物中の多様性によって、いかに累積的薬剤放出が調節されるかを示している。
【0074】
実施例10−圧縮成形
テストサンプルは、p(DTE−co−12% DT−co−24%PEGlK カーボネート)1.99グラム、PLGA2.01グラム、およびボクロスポリン0.70グラムをメチレンクロライド60ml中に溶解させることによって準備した。溶液をテフロン皿中でキャストし、溶媒をオーバーナイト室温で蒸発させた。半乾燥したフィルムを窒素下室温で約48時間乾燥させた。(付着を避けるために)パーチメント紙が裏打ちされたステンレス鋼板の間に、薬剤が負荷されたポリマーをプレスすることによって、乾燥したフィルムを80℃で圧縮成形した。360μm厚さのシムをサンプルの最終的な厚さを調整するためにスペーサーとして用いた。全加熱時間は5分であった。おおよそ6mmのディスクを圧縮成形したフィルムからパンチし、試験前に重量を測った。
【0075】
実施例11−動的薬剤放出(KDR)テスト
実施例10で製造したテストサンプルを37℃、pH7.4の初期リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に浸した。特定の時間間隔で、サンプルを緩衝溶液から出し、新しい37℃のPBSに移した。最初のPBS溶液に対して、等体積のアセトニトリルを添加し、混合物を激しく振とうした。紫外線(UV)検出器を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて混合物の一定量を分析した。移動相Aは、0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルからなり、移動相Bは、0.1%トリフルオロ酢酸を含むHPLC水からなる。分析は、開始70:30の混合物(体積比)および終止75:25の混合物(体積比)でAおよびBの勾配を使って行った。時間に対する相対ピーク強度から得られる放出された薬剤に対する曲線下面積(AUC)は、HPLCソフトウェアによって計算した。アセトニトリル希釈係数に対する補正の後、対応する薬剤濃度を標準曲線から得た。製剤に混合されたポリカーボネート−PLGAからのボクロスポリン(voclosporine)の累積的分画放出を
図7に示したが、これは、体温で2ヶ月を超える期間、薬剤のボクロスポリンのインビトロ放出がほぼ0次であることを示している。別に試験された混合物中の各ポリマーは、この時間間隔にわたってほぼ0次の放出は示さない。
【0076】
好適な実施形態の説明は、特許請求の範囲で規定される本発明を限定するものではなく、説明するものとして考慮されるべきである。容易に認識されるように、上述した特徴の多数の組み合わせが特許請求の範囲に記載されている本発明から逸脱することなく利用されうる。そのような改変は、本発明の精神および範囲から逸脱するものとしてみなされるものではなく、すべてのかような改変が、下記特許請求の範囲の範囲内に含まれるものとされる。