(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係るレンズ集合体(ウェハレンズ)1は、硬化した紫外線硬化樹脂等の透明な樹脂材料等で構成されており、
図1で示すように、レンズ部(要部)3と周辺部5とを備えて構成されている。
【0021】
レンズ部3は、製品もしくは半製品になる部位であり、製品もしくは半製品としての機能を発揮する。周辺部5は、レンズ部3とつながっていてレンズ部3とともに一体成形される部位である。また、周辺部5が、製品もしくは半製品としての機能を発揮することはほとんど無い。さらに、レンズ集合体1が成形された後、周辺部5の総てがレンズ部3といっしょに使用される場合もあるし、周辺部5の一部がレンズ部3といっしょに使用される場合もあるし、周辺部5がレンズ部3から切り離される場合もある。
【0022】
さらに説明すると、レンズ集合体1は、平板状の本体部7と球冠状の複数の凹部9と球冠状の複数の凸部11とを備えている。本体部7は、たとえば、円板状に形成されている。各凹凸部9,11(
図4(a)で示す型M1,M2で形成されたパターン)は、本体部7の厚さ方向の両面で、所定の間隔をあけて設けられている。
【0023】
レンズ集合体1(本体部7)をこの厚さ方向から見ると、本体部7の厚さ方向の一方の面(
図1(b)では上面)に設けられている各凹部9それぞれの中心
の位置と、本体部7の厚さ方向の他方の面(
図1(b)では下面)に設けられている各凸部11それぞれの中心の位置とは、お互いに一致している(
図1(a)等参照)。
【0024】
このように構成されているレンズ集合体1は、たとえば、1つの凹部9とこれに対向する1つの凸部11とを備えた複数のレンズ部3と、1つの周辺部5とに分けられる。そして、周辺部5から分けられた各レンズ部3は、これにCCDやCMOSセンサ等の撮像素子を設けることで、たとえば携帯電話のカメラ部に使用される。
【0025】
レンズ部3や周辺部5の形状についてさらに説明すると、1つのレンズ部3は、
図1(a)で示すレンズ集合体1の1つの任意の凹部9を示す小さな円を、
図1(a)の紙面に垂直な方向に移動したときに得られる軌跡で、レンズ集合体1を切断して得られるメニスカス凸レンズの形状になっている。
【0026】
周辺部5は、
図1(a)に示すレンズ集合体1において、総てのレンズ部3を取り除いた形状になっている(本体部7に多数の円形な貫通孔が形成された形状になっている)。
【0027】
上記説明では、レンズ部3の外周を凹部9や凸部11の外周と一致させているが(レンズ部3の外径と凹部9の外径と凸部11の外径とをお互いに一致させているが)、凹部9の外径と凸部11の外径とが異なっていてもよいし、レンズ部3の外径が、凹部9の外径や凸部11の外径とが異なっていてもよい。
【0028】
図1(a)等では、凹凸部9,11の数を少なく描いている。実際には、本体部7の外径は、6インチから8インチ程度であり、凹凸部9,11は、数百個から数千個設けられている。
【0029】
図1に示すレンズ集合体1では、本体部7に凹凸部9,11が形成されているが、
図2で示すように、本体部7の厚さ方向の一方の面に複数の凸部11Aを設け、本体部7の厚さ方向の他方の面に複数の球冠状の凸部11Bを設けた構成であってもよいし、本体部7の厚さ方向の両面に複数の凹部を設けた構成であってもよいし(図示せず)、本体部7の厚さ方向の一方の面にのみ凹部もしくは凸部を設けた構成であってもよい(図示せず)。
【0030】
そして、レンズ部3として、メニスカス凸レンズだけでなく、両凸レンズ、平凸レンズ、メニスカス凹レンズ、両凹レンズ、平凹レンズを得るようにしてもよい。
【0031】
成形材料として、紫外線硬化樹脂の代わりに、所定の波長の電磁波の照射で硬化する樹脂等の材料を掲げることができるが、ここでは、紫外線硬化樹脂を例に掲げて説明する。
【0032】
レンズ集合体1は、上述したように、レンズ部3と周辺部5とを備えており、紫外線硬化樹脂を硬化することで形成されている。
【0033】
そして、詳しくは後述するが、レンズ部3の硬化が周辺部5の硬化よりも先に終了することで、未硬化の周辺部5からレンズ部3に向けて未硬化の紫外線硬化樹脂が僅かに流れ込み(周辺部5になる部分に存在する未硬化の紫外線硬化樹脂がレンズ部3に向けて流れ込み)、レンズ集合体1では周辺部5にひけが発生している。
【0034】
なお、上述した未硬化の紫外線硬化樹脂の流れ込みは、レンズ部3が硬化するときの紫外線硬化樹脂の体積の僅かな減少で発生するのである。また、上述した流れ込みが発生することで、周辺部5にはひけや空洞が発生しているが、レンズ部3にひけや空洞が発生していることはない。
【0035】
次に、レンズ集合体1の成形方法(製造方法)について、
図4〜
図6を参照しつつ説明する。
【0036】
レンズ集合体1は、たとえば型(上型M1と下型M2)を用いて成形されるようになっている。型M1,M2は、石英ガラス等の紫外線を透過する材料で構成されている。型M1,M2には、レンズ部3と周辺部5とを成形するための成形パターンが形成されており、型M1,M2に形成されている成形パターンとは反転した形状のパターンが、レンズ集合体1に形成されるようになっている(レンズ集合体1に凹部9と凸部11とが形成されるようになっている)。
【0037】
まず、上型M1が下型M2から離れている状態で、未硬化の紫外線硬化樹脂13を下型M2に供給する(
図4(a)参照;紫外線硬化樹脂供給工程)。
【0038】
続いて、
図5で示すように、上型M1と下型M2との間の距離が所定の距離L1になるまで、上型M1を下型M2に対して相対的に近づける(型移動位置決め工程)。この状態で、上型M1と下型M2との間の空間(紫外線硬化樹脂13で満たされている空間)の形状が、レンズ集合体1の形状になる。
【0039】
続いて、上型と下型とを通して、紫外線硬化樹脂13に紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂13を硬化させる(紫外線硬化樹脂硬化工程)。
【0040】
続いて、
図6で示すように、上型M1を硬化した紫外線硬化樹脂13(レンズ集合体1)から離し、レンズ集合体1を下型M2から離して、レンズ集合体1を得る(離型工程)。
【0041】
ここで、レンズ集合体1の成形方法についてさらに説明する。前記紫外線硬化樹脂硬化工程では、たとえば、レンズ部3(レンズ部3になる未硬化の紫外線硬化樹脂13)に照射される紫外線の強度を、周辺部5(周辺部5になる未硬化の紫外線硬化樹脂13)に照射される紫外線の強度よりも大きくして、レンズ部3の硬化を、周辺部5の硬化よりも先に終了させている。
【0042】
レンズ集合体1におけるレンズ部3と周辺部5との硬化の態様について、例を掲げてより詳しく説明すると、たとえば、
図3(a)〜(e)で示す態様を掲げることができる。なお、
図3の横軸は、時刻tの経過を示している。
【0043】
図3(a)に示す態様では、時刻t0で、未硬化の紫外線硬化樹脂13への紫外線の照射が開始される。この照射を続けることで、時刻t11で、レンズ集合体1のレンズ部3が硬化し始める。続いて、時刻t12で、レンズ集合体1のレンズ部3の硬化が終了するとともに、レンズ集合体1の周辺部5が硬化し始める。続いて、時刻t13で、レンズ集合体1の周辺部5の硬化が終了し、レンズ集合体1が成形される。この後、紫外線の照射を終了する。
【0044】
図3(b)に示す態様では、時刻t0で、未硬化の紫外線硬化樹脂13への紫外線の照射が開始される。この照射を続けることで、時刻t21で、レンズ集合体1のレンズ部3が硬化し始める。続いて、時刻t22で、レンズ集合体1の周辺部5が硬化し始める。続いて、時刻t23で、レンズ集合体1のレンズ部3の硬化が終了する。続いて、時刻t24で、レンズ集合体1の周辺部5の硬化が終了し、レンズ集合体1が成形される。この後、紫外線の照射を終了する。
【0045】
図3(c)に示す態様では、時刻t0で、未硬化の紫外線硬化樹脂13への紫外線の照射が開始される。この照射を続けることで、時刻t31で、レンズ集合体1のレンズ部3が硬化し始める。続いて、時刻t32で、レンズ集合体1のレンズ部3の硬化が終了する。続いて、時刻t33で、レンズ集合体1の周辺部5が硬化し始める。続いて、時刻t34で、レンズ集合体1の周辺部5の硬化が終了し、レンズ集合体1が成形される。この後、紫外線の照射を終了する。
【0046】
図3(d)に示す態様では、時刻t0で、未硬化の紫外線硬化樹脂13への紫外線の照射が開始される。この照射を続けることで、時刻t41で、レンズ集合体1の周辺部5が硬化し始める。続いて、時刻t42で、レンズ集合体1のレンズ部3が硬化し始める。続いて、時刻t43でレンズ集合体1のレンズ部3の硬化が終了する。続いて、時刻t44で、レンズ集合体1の周辺部5の硬化が終了する。この後、紫外線の照射を終了し、レンズ集合体1が成形される。
【0047】
図3(e)に示す態様では、時刻t0で、未硬化の紫外線硬化樹脂13への紫外線の照射が開始される。この照射を続けることで、時刻t51で、レンズ集合体1のレンズ部3と周辺部5とが硬化し始める。続いて、時刻t52で、レンズ集合体1のレンズ部3の硬化が終了する。続いて、時刻t53で、レンズ集合体1の周辺部5の硬化が終了し、レンズ集合体1が成形される。この後、紫外線の照射を終了する。
【0048】
なお、
図3(b),(d),(e)で示す態様では、レンズ集合体1のレンズ部3の硬化時期の一部とレンズ集合体1の周辺部5の硬化時期の一部とがお互いに重なっているが、レンズ部3の硬化が終了するまでは、レンズ部3と接する周辺部5の部位が完全に硬化しておらず、レンズ部3が硬化するときに生ずる紫外線硬化樹脂13の体積の変化に応じて、レンズ部3と周辺部5との間で液体状もしくは流動体状の紫外線硬化樹脂13の行き来があるものとする。たとえば、液体状の紫外線硬化樹脂13が硬化するときにこの体積が減少する場合には、未硬化の液体状の紫外線硬化樹脂13が、周辺部5からレンズ部3に向かって、レンズ部3の体積の減少分だけ流れ込む
ようになっている。
【0049】
ここで、照射する紫外線の強度を変えてレンズ部3の硬化を周辺部5の硬化よりも先に終了させる場合の態様について、例を掲げてさらに説明する。
【0050】
図5に示す態様では、下型M2の一部に遮光膜15を一体的に設けることで、紫外線の透過率を変え、紫外線硬化樹脂13に照射する紫外線の強度を変えている。
【0051】
すなわち、下型M2の上面には、平面状部M3と複数の凹部(レンズ集合体1の凸部11を形成するための凹部)M4とが形成されているが、遮光膜15は、平面状部M3の全面に設けられている。
【0052】
遮光膜15は、たとえば、クロム等の金属の薄い膜で構成されており、真空蒸着等によって下型M2に一体的に設けられている。遮光膜15における紫外線の透過率は、遮光膜15によって変えられている。たとえば、遮光膜15として、金属等の薄膜を採用した場合には、紫外線の透過率は0%になる(紫外線は透過しないようになる)。
【0053】
したがって、下型M2では、レンズ集合体1のレンズ部3(レンズ部3になる紫外線硬化樹脂13)に接する成形パターンの面の部位(下型M2の凹部)M4における紫外線の透過率が、周辺部5(周辺部5になる紫外線硬化樹脂13)に接する成形パターンの面の部位(下型M2の凹部)M4における紫外線の透過率よりも、高くなっている。
【0054】
なお、紫外線は、下型M2と上型M1を通してレンズ部3(レンズ部3になる紫外線硬化樹脂13)と周辺部5(周辺部5になる紫外線硬化樹脂13)とに照射されるようになっている。
【0055】
遮光膜15は、
図5で示す紫外線発生装置(下型M2の下方に設けられている紫外線発生装置)17が発し紫外線硬化樹脂13に向かって照射される紫外線を、前述したように完全に遮るようになっている。したがって、紫外線発生装置17が発した紫外線は、レンズ部3(レンズ部3になる紫外線硬化樹脂13)にのみ照射されるようになっている。
【0056】
なお、遮光膜15が、紫外線発生装置17が発した紫外線の一部を遮るもの(詳しくは、
図7等を用いて後述)であってもよい。この場合、紫外線発生装置17が発した紫外線は、レンズ部3(レンズ部3になる紫外線硬化樹脂13)と周辺部5(周辺部5になる紫外線硬化樹脂13)とに照射されるが、レンズ部3に照射され
る紫外線の強度が、周辺部5に照射されて紫外線の強度よりも強くなる。
【0057】
また、もしも遮光膜15が存在しなければ、レンズ部3と周辺部5とで構成されるレンズ集合体1(紫外線硬化樹脂13)の全体に、ほぼ均一な強度の紫外線が連続して照射されるようになっているものとする。
【0058】
上型M1の下面には、平面状部M5と複数の凸部(レンズ集合体1の凹部9を形成するための凸部)M6とが形成されているが、遮光膜は設けられていない。
【0059】
したがって、
図5で示す紫外線発生装置(上型M1の上方に設けられている紫外線発生装置)19が発した紫外線は、上型M1を通って、レンズ集合体1(レンズ集合体1になる紫外線硬化樹脂13の全体)に、均一
な強度で照射されるようになっている。
【0060】
これにより、下型M2の遮光膜15が紫外線を完全に遮るものである場合には、レンズ集合体1の周辺部5には、上方の紫外線発生装置19が発した紫外線のみが照射されるようになっており、レンズ集合体1のレンズ部3には、下方の紫外線発生装置17と上方の紫外線発生装置19とが発した紫外線が照射されるようになっている。
【0061】
そして、レンズ集合体1の周辺部5に照射される紫外線の強度が、レンズ集合体1のレンズ部3に照射される紫外線の強度よりも弱くなっており、レンズ部3の硬化のほうが早く終了するようになっている。
【0062】
なお、上記説明では、下型M2にのみ遮光膜15を設けているが、下型M2に遮光膜15を設けることに変えてもしくは加えて上型M1(上型M1の平面状部M5)に遮光膜を設けてもよい。下型M2と上型M1とに遮光膜を設けた場合には、少なくとも一方の遮光膜は、完全に紫外線を遮るのではなく、紫外線の一部を遮る構成になっているものとする。
【0063】
ここで、
図4〜
図6で示す下型M2についてさらに詳しく説明する。
【0064】
下型M2は、紫外線を透過する材料で平板状に形成された本体部M7と、要部用成形パターンM4と、周辺部用成形パターン
M3と、遮光膜15とを備えて構成されている。
【0065】
要部用成形パターンM4は、レンズ部3を成形するためのものであり、本体部M7の厚さ方向の一方の面に形成されている。周辺部用成形パターンM3は、周辺部5を成形するためのものであり、要部用成形パターンM4に隣接して、本体部M7の厚さ方向の一方の面に形成されている。遮光膜15は、周辺部用成形パターンM3の表面に設けられている。
【0066】
ここで、下型M2の製造方法について説明する。
【0067】
まず、
図8(a)で示すように、石英ガラスで構成された平板状の素材を用意する。この平板状の素材の厚さ方向の一方の面のたとえば全面に、
図8(b)で示すように、真空蒸着等によって、クロムの薄膜15を設ける。
【0068】
続いて、クロムの薄膜15を設けた面に、
図8(c)で示すように、凹部M4を形成する。凹部M4の形成は、たとえば、切削加工によってなされる。凹部M4が形成された部では、クロムの薄膜は除去されている。
【0069】
上型M1は、紫外線を透過する材料で平板状に形成された本体部M8と、要部用成形パターンM6と、周辺部用成形パターンM5とを備えて構成されている。
【0070】
要部用成形パターンM6は、レンズ部3を成形するためのものであり、本体部M8の厚さ方向の一方の面に形成されている。周辺部用成形パターンM5は、周辺部5を成形するためのものであり、要部用成形パターンM6に隣接して、本体部M8の厚さ方向の一方の面に形成されている。
【0071】
ここで、上型M1の製造方法について説明する。
【0072】
まず、石英ガラスで構成された平板状の素材を用意する。この平板状の素材の厚さ方向の一方の面に、たとえば、切削加工によって、凸部M6を形成する。なお、下型M2の形状をしたものをマスタ型として使用して、成形材料で上型M1を成形してもよい。
【0073】
レンズ集合体1は、前述したように、たとえば、複数のレンズ部3を備えており、これらのレンズ部3が周辺部5を介してお互いにつながっていることで(複数のレンズ部3が周辺部5を介してつながっていることで)レンズ集合体1が一体成形されている。
【0074】
ところで、上記説明では、上型M1の上方と下型M2の下方の両側から紫外線硬化樹脂13に紫外線を照射して、レンズ集合体1を成形しているが、各型M1,M2のうちの一方の側(たとえば下型M2の下方)からのみ、紫外線硬化樹脂13に向けて紫外線を照射してもよい(
図7参照)。
【0075】
図7で示す下型M2に形成されている遮光膜15は、紫外線を完全に遮断するものではなくて、所定の割合で紫外線を透過するものである点が、
図5に示す下型M2と異なっており、その他の点は、ほぼ同様になっている。
【0076】
すなわち、
図7で示す下型M2では、レンズ集合体1(紫外線硬化樹脂13)の周辺部5に接触する平面(下型M2の平面状部M3)に設けられている遮光膜15が、紫外線を完全に遮るものではなくて、たとえば、曇りガラスのようなもので構成されており、紫外線を弱める構成になっている(たとえば、紫外線を50%程度透過させる構成になっている。
【0077】
これにより、
図5で示す場合と同様にして、レンズ部3(レンズ部3になる紫外線硬化樹脂13)に照射される紫外線の強度が周辺部5(周辺部5なる紫外線硬化樹脂13)に照射される紫外線の強度よりも大きくなり、レンズ部3の硬化が周辺部5の硬化よりも早く終了するようになっている。なお、
図7に示す態様において、上型M1が削除されていてもよい。
【0078】
ところで、上記説明では、周辺部5に接する成形パターンの面(下型M2の平面状部M3)に遮光膜15を設けてあるが、下型M2の平面状部M3ではなくて下型M2の平面状部M3の近くに遮光膜等を設け、紫外線の透過率を変えてもよい。たとえば、
図9で示す下型M11を用いて、紫外線硬化樹脂13を成形してレンズ集合体1を得るようにしてもよい。
【0079】
図9で示す下型M11は、紫外線を透過する材料で平板状に形成された第1の本体部21と、紫外線を透過する材料で平板状に形成された第2の本体部23とを備えて構成されている。
【0080】
第2の本体部23は、第1の本体部21の厚さ方向の一方の面を覆うようにして第1の本体部21に一体的に設けられている。型M11では、第1の本体部21の厚さ方向と、第2の本体部23の厚さ方向とはお互いに一致している。また、各本体部21,23をこれらの厚さ方向から見ると、第1の本体部21と第2の本体部23とがお互いに重なっている。
【0081】
第2の本体部23には、レンズ部3を成形するための要部用成形パターン(球冠状の複数の凹部)M13が形成されている。要部用成形パターンM13は、第
2の本体部23
の面(第1の本体部21
とは反対側の面)に形成されている。
【0082】
また、第2の本体部23には、周辺部5を成形するための周辺部用成形パターン(平面状部)M15が形成されている。周辺部用成形パターンは、要部用成形パターンM13に隣接して、第2の本体部23の面(第1の本体部21とは反対側の面)に形成されている。
【0083】
さらに、第1の本体部21と第2の本体部23との間には、遮光膜15が設けられている。遮光膜15は、各本体部21,23をこれらの厚さ方向から見たときに、周辺部用成形パターンM15と重なっている。
【0084】
なお、
図9で示すものは、下型M11の構成のみが、
図5で示すものと異なっており、他のものは、
図5で示すものと同様になっている。
【0085】
ここで、
図9で示す下型M11の製造方法について説明する。
【0086】
まず、
図10(a)で示すように、石英ガラスで構成された平板状の素材(第1の本体部21)を用意する。この平板状の素材の厚さ方向の一方の面のたとえば全面に、
図10(b)で示すように、真空蒸着等によってクロムの薄膜(遮光膜)15を設ける(遮光膜設置工程)。
【0087】
続いて、
図10(c)で示すように、前記遮光膜設置工程で設けた遮光膜15の一部を除去することで、前記遮光膜設置工程で設けた遮光膜15を所定の形状に形成する(遮光膜形状形成工程:遮光膜パターン形成工程)。
【0088】
続いて、
図10(d)で示すように、前記遮光膜形状形成工程での形状に形成された遮光膜15を覆うように、第1の本体部21の厚さ方向の一方の面に未硬化の成形材料(たとえば紫外線硬化樹脂13もしくは熱硬化性樹脂等の樹脂材料等)を供給する(成形材料供給工程)。
【0089】
続いて、
図11(a)で示すように、前記成形材料供給工程で供給された紫外線硬化樹脂13を、マスタ型M21を用いて成形する(成形工程)。
【0090】
続いて、
図11(b)で示すように、マスタ型M21を硬化した紫外線硬化樹脂13から離すことで、下型M11を得る。
【0091】
なお、
図5等で示す下型M2において、この下型M2の下面に、
図11(b)等で示す遮光膜15と同様な遮光膜を設けてもよい。
【0092】
ところで、上記説明では遮光膜15が型M2に一体的に設けられているが、
図12で示すように、遮光膜が設けられていない下型M2や上型M1とは別体で構成された遮光膜(板状の遮光部材)25を用いて、遮光膜15に代えてもよい。
【0093】
なお、遮光部材25は、各型M1,M2に対して着脱自在になっているものとする。また、遮光部材25は、平面視すると
図1(a)で示
す形状になっている。ただし、
図1(a)で示す小さい複数の円が貫通孔になっている。
【0094】
レンズ集合体1によれば、レンズ部3の硬化を、周辺部5の硬化よりも先に終了させているので、レンズ部3が硬化するときに紫外線硬化樹脂13の体積が減少しても(収縮しても)、この減少した分だけ、周辺部5からレンズ部3に未硬化の紫外線硬化樹脂13が流れ、
レンズ部3に欠陥が発生することが防止される。
【0095】
また、従来のように、紫外線硬化樹脂を一旦硬化させた後に、紫外線硬化樹脂を再び供給することが無いので、レンズ集合体1の製造工程を簡素化することができる。また、紫外線硬化樹脂を再び供給することが無いので、レンズ集合体1において境界面(1回目の硬化した紫外線硬化樹脂と2回目に硬化した紫外線硬化樹脂との境界面)が形成されることがなくなり、レンズ部3の光学特性が向上する。
【0096】
また、レンズ集合体1の成形方法によれば、レンズ部3に照射される紫外線の強度を周辺部5に照射される紫外線の強度よりも大きくしているので、レンズ部3の硬化を周辺部5の硬化よりも確実に先に終了させることができる。
【0097】
また、レンズ集合体1の成形方法によれば、レンズ部3に接する成形パターンM4の面における紫外線の透過率が、周辺部5に接する成形パターンM3の面における紫外線の透過率よりも高くなっているので、簡素な構成の紫外線発生装置で、レンズ部3に照射される紫外線の強度を周辺部5に照射される紫外線の強度よりも大きくすることができる。
【0098】
また、レンズ集合体1の成形方法によれば、遮光膜15を用いて紫外線の透過を変えているので、紫外線硬化樹脂の成形に使用される型や紫外線発生装置の構成を簡素化することができる。
【0099】
また、紫外線硬化樹脂に照射される紫外線の強度を変えることに代えてもしくは加えて、次に示す態様1、態様2、態様3の少なくともいずれかの態様で、周辺部5の硬化終了時刻をレンズ部3の硬化終了時刻より遅らせてもよい。
【0100】
態様1;紫外線の照射を開始する時刻をずらす。すなわちレンズ部3への紫外線の照射を開始した後に、周辺部5への紫外線の照射を開始する。この場合、たとえば、レンズ部3と周辺部5への紫外線照射の終了時刻は同時刻とし、レンズ部3の総ての部位および周辺部5の総ての部位に照射される紫外線の強度は均一であるものとし、しかも、紫外線は連続して照射(照射の開始から照射の終了まで連続して照射)されるものとする。
【0101】
態様2;紫外線の照射を断続的にする。すなわち、レンズ部3の総ての部位および周辺部5総ての部位への紫外線の照射と非照射とをたとえば0.1秒〜1秒程度の短い時間間隔で繰り返すことで(紫外線照射のオン・オフを繰り返すことで)、レンズ部3と周辺部5とを硬化される。この場合、所定の時間あたりでは、レンズ部3へ照射される紫外線の総量(単位体積あたりの総量)が、周辺部5に照射される紫外線の総量(単位体積あたりの総量)よりも多くなっている。たとえば、レンズ部3に照射される紫外線照射オンの時間が、周辺部5へ照射される紫外線照射オンの時間よりも長くなっている。
【0102】
態様3;紫外線発生装置を移動することで、紫外線の照射位置を変える。すなわち、まず、紫外線をレンズ部3にのみ照射してレンズ部3の総てが硬化してから、紫外線を周辺部5に照射して、周辺部5硬化させる。レンズ部3が
図1で示すように多数存在する場合には、レンズ部3を1つずつ硬化させてもよいし、複数個ずつ硬化させてもよいし。総てのレンズ部3をいっしょに硬化させてもよい。
【0103】
なお、上記説明では、レンズ部3が複数設けられているレンズ集合体1を例に掲げて説明しているが、レンズ部3が1つだけになっているものを成形品として採用してもよい。また、レンズ以外のものを成形品として採用してもよい。たとえば、要部としてモスアイ構造を備えたものを採用してもよい。