(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、リンを含む被処理水のリン除去処理を行なう際、安定したリン除去性能を得るのに有効な水処理技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項にかかる本発明が構成される。
【0007】
本発明の水処理方法は、リンを含む被処理水のリン除去処理を行なう際に用いられる。この水処理方法は、第1及び第2のステップを含む。これらのステップは、所定の順番で遂行されてよいし、必要に応じて概ね同時並行で遂行されてもよい。また、各ステップを更に複数のステップに区分してもよい。
【0008】
第1のステップは、被処理水中のリンに対し加えるべき量の所定の
鉄イオンまたはアルミニウムイオンを供給するステップとされる。これにより、被処理水中のリンに対し加えるべき量の所定の
鉄イオンまたはアルミニウムイオンが実際に被処理水に供給され、供給された
鉄イオンまたはアルミニウムイオンによるリン除去処理が行なわれる。この
鉄イオンまたはアルミニウムイオンは、当該
鉄またはアルミニウムを含む合金の電解処理、当該
鉄またはアルミニウムを含む合金とイオン化傾向の異なる別金属との接触による溶解処理
等によって被処理水に供給されてもよいし、或いはイオン態として被処理水に直に供給されてもよい。ここでいう「被処理水中のリンに対し加えるべき量」として、典型的には被処理水中のリンに対する所定の
鉄イオンまたはアルミニウムイオンのモル比、重量、重量比率等を用いることができる。
【0009】
第2のステップは、被処理水に含まれるカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度が、第1のステップで供給される
鉄イオンまたはアルミニウムイオンの量と所定のリン除去基準値とに基づいて設定された基準合計濃度を上回るように当該被処理水にカルシウムイオンとマグネシウムイオンの少なくとも一方を供給するステップとされる。ここでいう「所定のリン除去基準値」として、典型的には被処理水のリン濃度としての全リンを用いることができる。これにより、被処理水中のリンに対し加えるべき
鉄イオンまたはアルミニウムイオンの量に見合ったカルシウムイオンやマグネシウムイオンが被処理水に供給される。この場合、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの
いずれか一方が供給される。なお、カルシウムイオンやマグネシウムイオンは、カルシウムイオンやマグネシウムイオンを含む合金の電解処理、カルシウムイオンやマグネシウムイオンを含む合金とイオン化傾向の異なる別金属との接触による溶解処理、塩の溶解処理等によって被処理水に供給されてもよいし、或いはイオン態として被処理水に直に供給されてもよい。
【0010】
この水処理方法によれば、所定の
鉄イオンまたはアルミニウムイオンの供給量に見合ったカルシウムイオン
もしくはマグネシウムイオンを更に供給することで、安定したリン除去性能を得ることが可能とされる。なお、この水処理方法は、典型的には一般家庭、集合住宅、商業施設、公共施設、工場等の設備から排出される生活排水や産業廃水等の浄化処理を行う水処理装置に対し好適に用いられる。
【0011】
本発明の水処理方法の更なる形態では、前述の第1のステップは、被処理水に浸漬した鉄電極
またはアルミニウム電極の電解処理によって、被処理水中のリンに対し溶出すべきモル比の鉄イオン
またはアルミニウムイオンを所定の金属イオンとして溶出させる溶出ステップとされるのが好ましい。これにより、被処理水に実際に鉄イオン
またはアルミニウムイオンが溶出され、溶出した鉄イオン
またはアルミニウムイオンによるリン除去処理が行なわれる。
また、前述の第2のステップは、被処理水に含まれるカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度が、溶出ステップで溶出される鉄イオン
またはアルミニウムイオンのモル比と所定のリン除去基準値とに基づいて設定された基準合計濃度を上回るように当該被処理水にカルシウムイオンとマグネシウムイオンの
いずれか一方を添加する添加ステップとされるのが好ましい。これにより、被処理水中のリンに対し溶出すべき鉄イオン
またはアルミニウムイオンのモル比に見合ったカルシウムイオンやマグネシウムイオンが被処理水に添加される。これにより、鉄イオン
またはアルミニウムイオンの溶出モル比に見合ったカルシウムイオンやマグネシウムイオンを更に添加することで、安定したリン除去性能を得ることが可能とされる。
【0012】
本発明の水処理方法の更なる形態では、被処理水中のリンに対し溶出すべき鉄イオン
またはアルミニウムイオンのモル比と、被処理水中のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度との相関関係を、所定のリン除去基準値に対応させて導出する導出ステップを含むのが好ましい。これにより、リン除去基準値に対応した、モル比と、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度との相関関係が導出される。また、前述の添加ステップは、被処理水のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度を検出する一方、検出した当該合計濃度が、導出ステップで導出の相関関係のモル比を規定モル比に設定したときのカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの基準合計濃度を上回るように、当該被処理水にカルシウムイオンとマグネシウムイオンの
いずれか一方を添加するステップとされるのが好ましい。これにより、処理水中のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度に係る相関関係を予め導出した上で、当該相関関係に基づいて実際の溶出ステップを行うことができる。
【0013】
本発明の水処理方法の別の形態では、被処理水中のリンに対し溶出すべき鉄イオン
またはアルミニウムイオンのモル比と、被処理水中のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度との相関関係を、複数のpH(水素イオン指数)毎に所定のリン除去基準値に対応させて導出する導出ステップを含むのが好ましい。これにより、リン除去基準値に対応した、モル比と、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度との相関関係がpH毎に導出される。また、前述の添加ステップは、被処理水のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度とpHをそれぞれ検出する一方、検出した当該合計濃度が、当該pHに対応した相関関係においてモル比を規定モル比に設定したときのカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの基準合計濃度を上回るように、当該被処理水にカルシウムイオンとマグネシウムイオンの
いずれか一方を添加するステップとされるのが好ましい。これにより、被処理水の実際のpHに対応させてカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの基準合計濃度を設定することができ、以って更に木目細かい水質管理を行うことが可能とされる。
【0014】
また本発明の水処理方法の更なる形態につき、前述の添加ステップでは、前述の導出ステップで導出の相関関係において、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの基準合計濃度を15[mg/L]以上に設定するのが好ましい。これにより、所望のリン除去性能を得ることができる。
【0015】
また本発明の水処理方法の更なる形態では、前述の所定のリン除去基準値は、被処理水のリン濃度を全リン1[mg/L]以下とするよう規定されるのが好ましい。これにより、被処理水のリン除去処理として、例えば80[%]のリン除去率の処理を安定して行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、リンを含む被処理水に鉄を溶出させてリン除去処理を行なう際、安定したリン除去性能を得ることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明における一実施の形態の水処理装置の構成等を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、一般家庭、集合住宅等から排出される原水(「排水」ないし「被処理水」ともいう)を水処理領域に受け入れて処理する水処理装置について説明するものである。
【0019】
本発明にかかる水処理装置100の概要が
図1に示される。
図1に示すように、本実施の形態の水処埋装置100は、当該水処埋装置100の躯体としての処理槽本体101を有する。この水処埋装置100は、屎尿と併せて生活雑排水(生活系の汚水)を処理する構成の水処理装置であり、「浄化槽」ないし「合併処理浄化槽」とも称呼される。
【0020】
処理槽本体101は、典型的には、いずれも半割れ状に成形された上槽及び下槽を互いに突き合わせることによって槽状とされる。この処理槽本体101は、流入管102、流出管103及びマンホール部104を備えている。流入管102は、被処理水(原水)を処理槽本体101の内部空間に導入するための開口部分として構成される。流出管103は、処理後の水が処理槽本体101の内部空間から導出するための開口部分として構成される。マンホール部104は、入槽用、内部点検用、清掃用のマンホールが形成された部位として構成される。
【0021】
なお、本明細書中では、処理槽本体101のうちのマンホール部104側が槽上方ないし槽上部として規定され、またその反対側が槽下方、槽下部ないし槽底部として規定される。また、処理槽本体101のうちの流入管102側が上流側として規定され、また流出管103側が下流側として規定される。また、マンホール部104の延在面に沿った水平方向(「槽左右方向」ともいう)と交差する方向(典型的には、直交する方向)が鉛直方向(「槽上下方向」ともいう)として規定される。
【0022】
処理槽本体101の内部収容空間は、流入管102を通じて受け入れた原水を貯留しつつ所定の水処理がなされる水貯留領域ないし水処理領域とされる。この水貯留領域には、水処理機構101aとして、嫌気濾床槽110、担体流動生物濾過槽130、処理水槽150及び消毒槽170が収容されている。この構成において、流入管102を通じて処理槽本体101内に流人した排水は、嫌気濾床槽110、担体流動生物濾過槽130、処理水槽150及び消毒槽170において順次処埋され、処理後の水は流出管103を通じて処理槽本体101外へと流出する。この場合、水処理装置100は、処理槽本体101外へと流出した水をそのまま放流する浄化槽として構成されてもよいし、或いは処理槽本体101外へと流出した水をトイレや散水用の水として再利用する水再利用装置として構成されてもよい。
【0023】
嫌気濾床槽110は、水処理機構101aのうちの最上流(第1室)の処埋領域を構成している。この嫌気濾床槽110は、被処理水中の有機汚濁物質を嫌気処理(還元)する機能、及び被処埋水の濾過処理機能を有する処理槽として構成される。この嫌気濾床槽110は、当該嫌気濾床槽110の最上流に配設された嫌気濾床槽1室111と、嫌気濾床槽1室111の直下流に配設された嫌気濾床槽2室112を含む。嫌気濾床槽1室111では、有機汚濁物質を嫌気処理する嫌気性微生物が付着する所定量の嫌気濾材C1が充填された嫌気濾床113が設けられている。この嫌気濾材C1として典型的には、平板状の濾材を好適に用いることができる。また、同様に嫌気濾床槽2室112では、所定量の嫌気濾材C2が充填された嫌気濾床116が設けられている。この嫌気濾材C2として典型的には、骨格様球状の濾材を好適に用いることができる。これら嫌気濾床113,116ではそれぞれ、被処理水の嫌気処理及び濾過処理がなされ、これによりBODの低減と汚泥物の除去が二段階で行なわれる。
【0024】
嫌気濾床槽1室111と嫌気濾床槽2室112との間には、板状部材によって形成された移流通路114が設けられている。本構成によれば、嫌気濾床槽1室111の嫌気濾床113を下向きに流れた水は、この移流通路114を押し出し流れの原理によって上向きに流れた後、移流通路114の開口部115を通じて嫌気濾床槽2室112へと流入する。
【0025】
嫌気濾床槽2室112と担体流動生物濾過槽130との間には、エア駆動式のエアリフトポンプによる移流通路117及び開口部118が設けられている。移流通路114は、嫌気濾床槽2室112の嫌気濾床116を下向きに流れた水を、エアリフトポンプの汲み上げ力によって吸入口117aから吸入し、吐出口117bから吐出することで担体流動生物濾過槽130へと移送する機能を果たす。開口部118は、担体流動生物濾過槽130の水の一部が嫌気濾床槽2室112へと返送されるのを可能とする開口部分として構成されている。
【0026】
担体流動生物濾過槽130には、被処理水中の有機汚濁物質を好気分解(好気処理)する好気性微生物が付着する所定量の担体C3が、槽内を流動できる程度に充填された担体充填領域131が設けられている。この担体充填領域131の上側境界部及び下側境界部はそれぞれ、水の通過は許容するが担体C3の通過は防止する多孔板によって規定されている。この担体C3として典型的には、粒状の中空円筒形に形成された担体を好適に用いることができる。
【0027】
この担体流動生物濾過槽130では、担体充填領域131内に散気装置(散気管)132が設けられており、また担体充填領域131の下方、すなわち散気装置132よりも下方に逆洗装置(逆洗管)133が設けられている。散気装置132は、散気運転において担体充填領域131のうち当該散気装置132よりも上方の担体C3に対し、好気処理に用いるエア(空気)を供給する構成を有する。この散気運転時のエア供給によって、散気装置132よりも上方に好気処理領域が形成され、散気装置132よりも下方に濾過処理領域が形成される。一方、逆洗装置133は、逆洗運転において担体充填領域131の担体C3全体に対し、逆洗処理を行う際に用いる通常運転時よりも多いエア(空気)を供給する構成を有する。この逆洗運転時のエア供給によって、担体充填領域131の担体C3全体が流動化し、散気運転において被濾過物を濾過した担体C3の洗浄処理が行われる。
【0028】
詳細については後述するが、この担体流動生物濾過槽130は、水に含まれるリン(リン成分)を除去するためのリン除去処理領域とされ、槽内にリン除去装置140が設けられている。このリン除去装置140は、電極装置141と、この電極装置141を制御するべく接続ケーブル144を介して電極装置141に接続された制御装置145を含む。特に、制御装置145は、電極装置141の通電量や通電時間等、後述する一対の鉄電極143,143に関する制御を行う機能を有する。また、この担体流動生物濾過槽130には、槽内の水にカルシウムイオンとマグネシウムイオンの少なくとも一方を添加可能な添加装置135が設けられている。
【0029】
担体流動生物濾過槽130において好気分解(好気処理)及びリン除去処理がなされた後の水は、槽底部に設けられた開口部134を通じて処理水槽150に移流し、当該処理水槽150にて一旦貯留される。また、この処理水槽150には、エア駆動式のエアリフトポンプによる移流通路151が設けられている。移流通路151は、処理水槽150の底部の水を、エアリフトポンプの汲み上げ力によって吸入口151aから吸入し、吐出口151bから吐出することで嫌気濾床槽110の嫌気濾床槽1室111へと返送する機能を果たす。
【0030】
処理水槽150と消毒槽170との間には、開口部152が設けられている。この開口部152は、処理水槽150の水が押し出し流れの原理によって消毒槽170へと移流するのを可能とする開口部分として構成されている。消毒槽170には、消毒処理を行うための固形消毒剤が充填された薬剤筒171が設けられている。この薬剤筒171から溶出した消毒剤によって消毒処理がなされた後の水は、流出管103を通じて処理槽本体101外へと放流される。なお、本構成に関連して、消毒槽170の下流に、更に別の槽、例えば放流用のポンプが設置された放流ポンプ槽などを設けてもよい。
【0031】
ここで、上記リン除去装置140の詳細については
図2が参照される。
図2には、
図1中のリン除去装置140の電極装置141の斜視図が示されている。電極装置141は、電極保持部142(セルベース)と、この電極保持部142に取り付け固定された一対の鉄電極143,143を含む。電極保持部142は、一対の鉄電極143,143の上部を保持する(支持する)機能を有する。この電極保持部142は、更に、作業者の手指で把持することが可能な取っ手142cを有する保持部本体142a、この保持部本体142aに内蔵される端子類(図示省略)を密閉するための密閉蓋142b等によって構成されている。これら保持部本体142a及び密閉蓋142bはともに合成樹脂材料、例えば塩化ビニル樹脂などの電気絶縁性材料によって作製されており、取っ手142cへの漏電が遮断される構成になっている。なお、担体流動生物濾過槽130の槽上部には、電極装置141を下方から支持する支持部材(図示省略)が取り付けられている。具体的には、当該支持部材は、一対の鉄電極143,143が挿入孔に個別に或いは一括して挿入された状態で電極保持部142を下方から支持する機能を果たす。これにより、作業者は電極装置141に関する種々の点検(定期点検など)を行う際、電極保持部142の取っ手142cを手で掴んで電極装置141を当該支持部材から容易に着脱できる。
【0032】
各鉄電極143は、側面視が略四角形(略長方形)の平板状に形成され、その基端において固定ボルト等によって電極保持具142側に固定されている。また、各鉄電極143は、基端から先端に向けて長尺状に延在する構成になっている。一対の鉄電極143,143は、互いに概ね平行に配置された構成であり、一方の鉄電極143と他方の鉄電極143との間の距離、すなわち電極間距離d(電極の間隔)が両鉄電極の延在方向に関しほぼ一定となるように構成されている。各鉄電極143は、典型的には鉄を含む材料によって構成される。一対の鉄電極143,143はいずれも、担体流動生物濾過槽130内の水に浸漬される電解処理用の電極とされる。
なお、水処理装置100における当該一対の鉄電極143,143の設置数、大きさ等は、被処理水の量や性状などに応じて種々変更可能である。例えば、担体流動生物濾過槽130において、一対の鉄電極143,143を必要に応じて複数組設置することもできる。
【0033】
上記構成のリン除去装置140の作動時においては、電極装置141の金属電極(
図2中の一対の鉄電極143,143)への通電によって陽極及び陰極が形成され、陽極側の鉄電極143から水中へ金属イオンとして2価の鉄イオン(Fe
2+)が溶出する。即ち、各鉄電極143は、被処理水中へ鉄イオンを供給する供給源となる。特に図示しないものの、制御装置145に極性反転回路が設けられており、当該極性反転回路によって一対の鉄電極143,143の極性を切り替えることが可能となっている。これにより、各鉄電極143が陽極あるいは陰極となり得る。溶出した2価の鉄イオン(Fe
2+)は、水中の溶存酸素によって酸化されて3価の鉄イオン(Fe
3+)となり、この3価の鉄イオン(Fe
3+)がリン酸イオン(PO
43−)と反応して、水に難溶性の金属リン酸塩となるリン酸鉄(FePO
4など)が生成される。このように、リン除去装置140を用いてリン成分を含む水を電解処理することによって、水中のリン成分は水に難溶性の金属リン酸塩として析出し除去されることとなる。
【0034】
ところで、上記構成の水処理装置100にあっては、流入する原水のリン濃度に基づいて電極装置141の鉄電極143から溶出される鉄イオンの量が調節される。具体的には、まず流入する原水のリン:鉄のモル比を1:1.5に設定してリン除去処理を行い、この場合に所望のリン除去性能が得られないときには、更に電極装置141の電流値を上げることで鉄電極143,143から溶出される金属イオンの量を増やすという調節を行う。
しかしながら、このような調節によって鉄電極143,143から溶出される金属イオンの量を大幅に(例えば、2倍程度に)増やしても、所望のリン除去性能が得られないという問題が起こり得る。
【0035】
そこで、本発明者らは、上記リン除去性能について鋭意検討した。その結果、本発明者らは、上記問題の原因が、リン濃度以外に被処理水に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンの不足であって、カルシウムイオンとマグネシウムイオンの合計濃度を好適に制御することによって、鉄イオンの溶出量の不足を補うことが可能であることを見出した。これについて具体的には、
図3及び
図4が参照される。
【0036】
図3には、所定のリン除去基準値(全リン1[mg/L]以下)に対応した、リンに対し溶出すべき鉄のモル比r[mol/mol]と、被処理水のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度c[mg/L]との相関関係(相関グラフ)が示されている。この相関関係によれば、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度cが基準合計濃度、例えば15[mg/L]を下回ると、リンに対し溶出すべき鉄のモル比r、即ち被処理水に溶出する鉄イオンの量を相当に増やしたとしても、所望のリン除去性能を安定して達成するのは難しいことが確認された。この場合の合計濃度cが本発明における「合計濃度」に相当し、またこの合計濃度cの一例である15[mg/L]の値が本発明における「基準合計濃度」に相当する。カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度cを前記の基準合計濃度付近に設定することで、カルシウムやマグネシウムを過剰に添加することなく、所望のリン除去性能を安定して達成可能であることが確認された。この場合、前記の基準合計濃度に対応したモル比r[mol/mol]は1.5とされる。
【0037】
なお、80[%]のリン除去率とは、典型的な家庭用排水のリン濃度(「全リン」ともいう)である5[mg/L]を、放流水のリン濃度の放流基準である全リン1[mg/L]に基づいて処理する場合のリン除去率として定義される。ここでいう全リンが、本発明における「リン除去基準値」に相当し、この全リンの一例である1[mg/L]の値が本発明における「所定のリン除去基準値」に相当する。
【0038】
また
図4には、所定のリン除去基準値(全リン1[mg/L]以下)に対応した、リンに対し溶出すべき鉄のモル比r[mol/mol]と、被処理水のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度c[mg/L]との相関関係(相関グラフ)が、被処理水のpH(水素イオン指数)毎に示されている。この相関関係によれば、被処理水のpHが変化した場合には、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度cがpH毎に設定可能な基準合計濃度を下回ると、リンに対し溶出すべき鉄のモル比r、即ち被処理水に溶出する鉄イオンの量を相当に増やしたとしても、所望のリン除去性能を安定して達成するのは難しいことが確認された。また、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度cを前記の基準合計濃度付近に設定することで、カルシウムイオンやマグネシウムイオンを過剰に添加することなく、且つ、所望のリン除去性能を安定して達成可能であることが確認された。pH毎の基準合計濃度に関し、典型的には、pH=4.8の場合の基準合計濃度が8[mg/L]、pH=7.0の場合の基準合計濃度が12[mg/L]、pH=7.1〜7.6の場合の基準合計濃度が15[mg/L]とされる。ここでいう基準合計濃度が、本発明における「基準合計濃度」に相当する。また、いずれのpHの場合も、前記の基準合計濃度に対応したモル比r[mol/mol]は1.5とされる。ここでいうモル比rが、本発明における「被処理水中のリンに対し加えるべき量」及び「被処理水中のリンに対し溶出すべき鉄イオンのモル比」に相当し、このモル比rの一例である1.5の値が本発明における「規定モル比」に相当する。このモル比rに代えて、鉄イオンの重量、重量比率等を用いることもできる。
【0039】
上記構成の水処理装置100では、
図3又は
図4の相関関係と、当該相関関係に基づく以下の手順を行うことによって、所望のリン除去性能を得る水処理方法が達成される。
図3の相関関係を導出するステップ及び
図4の相関関係を導出するステップが、本発明における「導出ステップ」に相当する。
【0040】
<鉄イオンの溶出ステップ>
上記モル比rを、例えば1.5に設定した場合、当該モル比に基づいて、前述のような態様でリン除去装置140を作動させる。この場合、一対の鉄電極143,143の通電量を制御装置145によって制御することで、モル比rが1.5に設定された場合に対応した鉄イオンを担体流動生物濾過槽130内の水に溶出させることができる。例えば、1.5を上回る値にモル比rを設定する場合には一対の鉄電極143,143の通電量を相対的に増やす一方、1.5を下回る値にモル比rを設定する場合には一対の鉄電極143,143の通電量を相対的に減らす制御によって対処可能である。ここでいう溶出ステップが、本発明における「第1のステップ」及び「溶出ステップ」に相当する。
【0041】
<水質の検出>
担体流動生物濾過槽130内の水の実際のカルシウムイオン濃度、マグネシウムイオン濃度及びpHは、既知の試薬、試験紙、水質分析器等を適宜に用いることによって検出可能である。使用者、点検者、維持管理業者等が現場にて簡便に水質検出を行う方法として、典型的にはPC比色法による試薬を用いてカルシウムイオン濃度を検出し、また典型的にはチタンエロー法による試薬を用いてマグネシウムイオン濃度を検出する方法を採用することができる。
【0042】
<カルシウムイオンとマグネシウムイオンの合計濃度の導出>
水質の検出によるカルシウムイオン濃度及びマグネシウムイオン濃度から、カルシウムイオンとマグネシウムイオンの合計濃度を導出することができる。なお、水の硬度を検出する試薬等を用いて担体流動生物濾過槽130内の水の硬度を検出し、当該検出結果に基づいてカルシウムイオンとマグネシウムイオンの合計濃度を導出することもできる。
【0043】
<カルシウムイオン又はマグネシウムイオンの添加>
図4の相関関係と、実際に検出された担体流動生物濾過槽130の水質とを照らし合わせることによって、担体流動生物濾過槽130内の水にカルシウムイオンやマグネシウムイオンを追加する必要があるか否かを判定することができる。例えば、担体流動生物濾過槽130内のpH=7.0の水に含まれるカルシウムイオンとマグネシウムイオンの合計濃度が、基準合計濃度である例えば12[mg/L]を下回っている場合には、当該合計濃度が基準合計濃度まで上昇するようにカルシウムイオンとマグネシウムイオンの少なくとも一方の添加を行う。一方で、カルシウムイオンとマグネシウムイオンの合計濃度が前記の基準合計濃度を上回っている場合には、カルシウムイオやマグネシウムイオンの添加を控える。前述の水質の検出、カルシウムイオンとマグネシウムイオンの合計濃度の導出、及びカルシウムイオンやマグネシウムイオンの添加に関する操作によって、本発明における「第2のステップ」及び「添加ステップ」が構築される。
【0044】
なお、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの添加後には、カルシウムイオンとマグネシウムイオンの合計濃度が基準合計濃度に達するまで、前述の水質の検出を行うのが好ましい。また、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの添加を行うか否かの判定は、担体流動生物濾過槽130の水質以外に、水処理装置100から放流される放流水のリン濃度に基づいて行うことができる。
【0045】
カルシウムイオンやマグネシウムイオンの添加に際しては、石灰岩、大理石、ドロマイト、貝殻等や、塩化カルシウムなどの易溶解性の物質を錠剤にしたもの等の固形物を、
図1中の添加装置135に収容した構成を採用することができる。その他として、炭酸Ca(サンゴ、卵殻)、酸化Ca(生石灰)、水酸化Ca(消石灰)、リン酸Ca(動物骨)、硫酸Ca(石膏)、カーバイド、炭酸Mg(マグサイト)、酸化Mg(苦土、滑石)、水酸化Mg、硫酸Mg(にがり)、石綿、蛇紋石、合金等をカルシウムイオンやマグネシウムイオンの供給源とすることもできる。これにより、添加装置135に収容した固形物(以下、「薬剤」ともいう)が担体流動生物濾過槽130内の貯留水に浸漬されることによってイオン化し、カルシウムイオンやマグネシウムイオンを添加することができる。例えばイオン添加源として石灰岩を用い、処理量1000[L/日]の水に含まれるカルシウムイオンの濃度を検出時の5[mg/L]から15[mg/L]まで上昇させる場合を考える。この場合、石灰岩のカルシウムイオン溶解量が実験から3.03[g/m
2・日](pH=7.0)であることが判っているとすると、1日あたりカルシウムイオンを10[g]添加する必要があるため、石灰岩の必要表面積が10÷3.03=3.3[m
2]となる。従って、この必要表面積が満足されるように石灰岩を破砕処理したり錠剤化処理した上で、この被処理物を担体流動生物濾過槽130内の水に浸漬することによって、所望の水質を確保することができる。なお、上記のように固形物を担体流動生物濾過槽130内の貯留水に浸漬させてイオン化する形態に代えて、当該固形物を担体流動生物濾過槽130へと流入する水に接触させてイオン化する形態、また予めイオン化された水溶液等を担体流動生物濾過槽130内の水に供給する形態等を採用することもできる。上記の固形物ないし水溶液の供給は、添加装置135のように担体流動生物濾過槽130内に常設の装置を用いてもよいし、或いは使用者、点検者、維持管理業者等が固形物ないし水溶液を担体流動生物濾過槽130内に定期的に投入してもよい。更に、担体流動生物濾過槽130以外の処理槽として、嫌気濾床槽110に添加装置135を設置してもよい。この場合、例えば嫌気濾床槽2室112の嫌気濾床116の上部領域を、添加装置135の設置領域として採用することができる。
【0046】
上記水処理方法によれば、鉄電極に起因する鉄イオンの溶出量に見合ったカルシウムイオンやマグネシウムイオンを担体流動生物濾過槽130内の水に添加することで、安定したリン除去性能を得ることが可能とされる。更に、
図4に示す相関関係を用いることで、実際の担体流動生物濾過槽130内の水のpHに対応させてカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの基準合計濃度を設定することができ、以って更に木目細かい水質管理を行うことが可能となる。この水処理方法は、リン除去性能を安定化させることによって担体流動生物濾過槽130の水質や、水処理装置100から放流される水の水質を所望の状態に管理するものであり、水処理装置100の「水質管理方法」としても定義することができる。
【0047】
上記水処理方法では特に、基準合計濃度を15[mg/L]に設定することで、特にpHが7.1〜7.6の場合に所望のリン除去性能を得ることができる。また、所定のリン除去基準値が、被処理水のリン濃度を全リン1[mg/L]以下とするよう規定されるため、被処理水のリン除去処理として、例えば80[%]のリン除去率の処理を安定して行なうことが可能となる。
【0048】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0049】
上記実施の形態の水処理方法では、
図3や
図4に示す相関関係を導出する導出ステップと、規定モル比に基づいて、担体流動生物濾過槽130内の水に浸漬した鉄電極の電解処理によって鉄イオンを溶出させる溶出ステップと、担体流動生物濾過槽130の水質検出結果と導出ステップの相関関係とに基づいて、担体流動生物濾過槽130内の水にカルシウムイオンやマグネシウムイオンを添加する添加ステップを用いる水処理方法について記載したが、本発明では、これら導出ステップ、溶出ステップ及び添加ステップに加えて、別のステップを用いる水処理方法を採用することもできる。
【0050】
また、上記実施の形態の水処理方法では、
図3や
図4に示す相関関係において、規定モル比を1.5としてカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの基準合計濃度を設定する場合について記載したが、本発明では、
図3や
図4に示す相関関係の1.5以外の規定モル比に基づいて、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの基準合計濃度を設定することもできる。
【0051】
また、上記実施の形態の水処理方法では、pH=4.8の場合の基準合計濃度を8[mg/L]、pH=7.0の場合の基準合計濃度を12[mg/L]、pH=7.1〜7.6の場合の基準合計濃度を15[mg/L]に設定する場合について記載したが、本発明では、当該基準合計濃度を必要に応じて適宜の値に変更することができる。
【0052】
また、上記実施の形態の水処理方法では、所定のリン除去基準値は、被処理水の全リンが1[mg/L]以下として規定される場合について記載したが、本発明では、放流水のリン濃度と流入水のリン濃度との関係によって定まるリン除去率に基づいて、所定のリン除去基準値を設定することもできる。
【0053】
上記実施の形態では、
図1に示すように添加装置135内の固形物(薬剤)が担体流動生物濾過槽130内の貯留水に浸漬される場合について記載したが、本発明では、添加装置135の設置態様について
図5や
図6に示すような変更例を採用することもできる。
【0054】
図5に示す変更例は、移流通路117の吐出口117b付近に薬筒受け136を設け、この薬筒受け136上に添加装置135を設置した形態とされる。この場合、添加装置135は、複数の薬剤、即ちカルシウムイオンやマグネシウムイオンの供給源を上下に積み重ねた状態で収容する。これにより、吐出口117bから吐出された水が薬筒受け136内を流れる過程で、添加装置135に収容された薬剤が当該水に接触しつつ下側から順次溶解することとなり、これによりカルシウムイオンやマグネシウムイオンを含む水が薬筒受け136から押し出し流れの原理にしたがって担体流動生物濾過槽130へと供給される。
【0055】
図6に示す変更例は、担体流動生物濾過槽130の水面よりも上方の空間部に(例えば、移流通路151の表面に)添加装置135を設置した形態とされる。この場合、添加装置135は、塩化カルシウム等、潮解性のあるカルシウム塩やマグネシウム塩を備え、空気中の水分を吸収することでカルシウムイオンやマグネシウムイオンを含む水溶液を生成するよう構成されている。添加装置135で生成したカルシウムイオンやマグネシウムイオンを含むこの水溶液が担体流動生物濾過槽130の水面に滴下されることによって、当該担体流動生物濾過槽130にカルシウムイオンやマグネシウムイオンが供給される。
【0056】
また、上記実施の形態では、担体流動生物濾過槽130の水のリン除去を鉄イオンによって用いて行う場合について記載したが、本発明では鉄イオン、アルミニウムイオン、またその他の金属イオンの中から適宜選択した金属イオンを用いることもできる。この場合、当該金属イオンは、当該金属を含む合金の電解処理、当該金属を含む合金とイオン化傾向の異なる別金属との接触による溶解処理、塩の溶解処理等によって被処理水に供給されてもよいし、或いはイオン態として被処理水に直に供給されてもよい。同様に、カルシウムイオンやマグネシウムイオンは、カルシウムやマグネシウムを含む合金の電解処理、カルシウムやマグネシウムを含む合金とイオン化傾向の異なる別金属との接触による溶解処理、塩の溶解処理等によって被処理水に供給されてもよいし、或いはイオン態として被処理水に直に供給されてもよい。この場合、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンのいずれか一方が供給されてもよいし、或いはカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの双方が供給されてもよい。
【0057】
また、上記実施の形態の水処理装置100では、水処理機構101aが、嫌気処理槽110、担体流動生物濾過槽130、処理水槽150及び消毒槽170の各処理要素によって構成される場合について記載したが、本発明では、水処理機構101a処理要素の数や種類に関しては必要に応じて種々選択が可能である。
【0058】
また、上記実施の形態では、一般家庭、集合住宅等から排出される原水を処理する水処理装置100について記載したが、本発明は、一般家庭、集合住宅以外に、商業施設、公共施設、工場等の設備から排出される原水を処理する水処理装置に対しても適用可能とされる。
【0059】
以上説明してきた実施の形態や種々の変更例の記載に基づいた場合、本発明では以下の各態様を採り得る。
【0060】
(態様1)
本発明では、「処理槽本体と、前記処理槽本体に収容され、被処理水の水処理を行なう水処理機構と、前記水処理機構のうちリン除去処理がなされるリン除去処理領域と、前記リン除去処理領域の被処理水に一対の金属電極を浸漬するリン除去装置とを備え、前記一対の金属電極の電解処理で溶出した金属イオンによって被処理水のリン除去処理がなされる構成の水処理装置であって、前記リン除去処理領域にはカルシウムイオンとマグネシウムイオンの少なくとも一方を添加可能な添加装置が設けられており、前記添加装置は、前記リン除去処理領域の被処理水のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度が、所定のリン除去基準値に対応した、被処理水中のリンに対し溶出すべき前記金属イオンのモル比と、被処理水中のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度との相関関係の前記モル比を規定モル比に設定したときのカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの基準合計濃度を上回るように、当該被処理水にカルシウムイオンやマグネシウムイオンを添加することを特徴とする水処理装置」という態様(態様1)を採り得る。この態様1によれば、金属電極に起因する金属イオンの溶出量に見合ったカルシウムイオンやマグネシウムイオンを添加することで、安定したリン除去性能を得ることが可能な水処理装置が実現される。
【0061】
(態様2)
また本発明では、「態様1に記載の水処理装置であって、前記添加装置は、前記リン除去処理領域の被処理水のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度が、前記リン除去基準値に対応した、前記モル比と、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度との複数のpHについてそれぞれ導出される相関関係において、前記モル比を前記規定モル比に設定したときのカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの前記基準合計濃度を上回るように、当該被処理水にカルシウムイオンとマグネシウムイオンの少なくとも一方を添加することを特徴とする水処理装置」という態様(態様2)を採り得る。この態様2によれば、被処理水の実際のpHに対応させてカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの基準合計濃度を設定することができ、以って木目細かい水質管理を行うことが可能な水処理装置が実現される。
【0062】
(態様3)
また本発明では、「態様1又は2に記載の水処理装置であって、前記水処理機構は、被処理水中の有機汚濁物質を嫌気処理する嫌気濾床槽と、前記嫌気濾床槽にて処理された後の水に含まれる有機汚濁物質を流動可能な担体を用いて好気分解する担体流動生物濾過槽と、前記担体流動生物濾過槽にて処理された後の水を一時的に貯留する処理水槽と、前記処理水槽の水を消毒処理する消毒槽とからなり、前記担体流動生物濾過槽が前記リン除去処理領域として構成されていることを特徴とする水処理装置」という態様(態様3)を採り得る。この態様3によれば、嫌気濾床槽、担体流動生物濾過槽、処理水槽及び消毒槽からなる水処理機構を備える水処理装置において、リン除去装置が設けられた担体流動生物濾過槽にて安定したリン除去処理を行なうことが可能となる。
【0063】
(態様4)
また本発明では、「リンを含む被処理水のリン除去処理に用いる水処理方法であって、
前記被処理水中のリンに対し加えるべき量の所定の金属イオンを供給する第1のステップと、前記被処理水に含まれるカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計濃度が予め設定された基準合計濃度を上回るように当該被処理水にカルシウムイオンとマグネシウムイオンの少なくとも一方を供給する第2のステップと、を含むことを特徴とする水処理方法」という態様(態様4)を採り得る。この態様4によれば、所定の金属イオンの供給量に見合ったカルシウムイオンやマグネシウムイオンを、予め設定された基準合計濃度に基づいて更に供給することで、安定したリン除去性能を得ることが可能とされる。