(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
<第一実施の形態>
図1(A)および
図1(B)は、本発明の第一実施の形態に係るロータリダンパ1の概略構成を示す外観図および部分断面図であり、
図2は、このロータリダンパ1の部品展開図である。
【0015】
図示するように、本実施の形態に係るロータリダンパ1は、ケース11と、ケース11に対して相対的に回転可能にケース11内に収容されたロータ(回転体)12と、ケース11に充填された粘性流体(オイル、シリコン等)13と、ロータ12を粘性流体13とともにケース11内に封じ込める蓋14と、ケース11に蓋14を固定するための複数のネジ18と、を有する。また、
図1および
図2には図示していないが、このロータリダンパ1は、さらに、逆止弁15と、調圧弁16と、を有する。
【0016】
図3(A)〜(C)は、ケース11の上面図、正面図、および底面図であり、
図3(D)は、
図3(A)に示すケース11のA−A断面図である。
【0017】
図示するように、ケース11は、ケース本体112と、ケース本体112の縁部外周に形成されたフランジ部118と、を備えている。
【0018】
ケース本体112には円筒室(底付き円筒状の空間)111が形成されている。ロータ12は、円筒形状のロータ本体131とロータ本体131の外周面122に形成されたベーン124a、124bとを備え、この円筒室111の中心線110周りに回転するように(円筒室111の中心線110がロータ12の回転軸120となるように)、この円筒室111に収容される。ケース本体112の内周面113(円筒室111の側壁面113)には、ロータ本体131の外周面122と円筒室111の側壁面113との間の環状の空間を径方向に仕切るように、ロータ本体131の外周面122に向かって突出した一対の凸状の仕切り115a、115b(先端面114がロータ12の外周面122と近接する一対の凸状の仕切り115a、115b)が、円筒室111の中心線110に沿って形成されている。粘性流体13は、これらの仕切り115a、115bによって仕切られた、ロータ本体131の外周面122と円筒室111の側壁面113との間の領域(
図7における111a〜111d)に充填される。また、円筒室111の底面116には、ロータ本体131の一端部(下端部)129aを挿入するための開口部117が形成されている。
【0019】
フランジ部118には複数のネジ穴118aが形成され、フランジ部118に載置された蓋14の貫通孔143aに挿入されたネジ18が、これらのネジ穴118aに締結される。
【0020】
図4(A)〜(C)は、蓋14の上面図、正面図、および底面図である。
【0021】
図示するように、蓋14には、円筒室111の底面116の開口部117に対向する位置に、ロータ本体131の他端部(上端部129b)を挿入するための開口部141が形成されている。また、ケース11のフランジ部118のネジ穴118aに対応する位置には、それらのネジ穴118aに締結されるネジ18を挿入するための貫通孔143aが形成されている。なお、円筒室111から粘性流体13が外部に漏れないように、Oリング等のシール材を蓋14とケース11との間に介在させて密封性を高めるようにしてもよい。
【0022】
図5(A)〜(D)は、ロータ12の上面図、正面図、側面図、および底面図である。
【0023】
図示するように、ロータ本体131には、外部からの回転力をロータ12に伝達するシャフト(不図示)を挿入するための貫通孔121が、回転軸120を中心にして形成されている。そして、ロータ本体131(貫通孔121)の下端部129aは、ケース11の円筒室111の底面116に形成された開口部117に摺動可能に挿入され、ロータ本体131(貫通孔121)の上端部129bは、蓋14の開口部141に摺動可能に挿入される。なお、円筒室111から粘性流体13が外部に漏れないように、Oリング等のシール材を、ロータ本体131の端部129a、129bと開口部117、141との間に介在させて密封性を高めるようにしてもよい。
【0024】
ロータ本体131の外周面122には、先端面(円筒室111の側壁面113に対向する面)123が円筒室111の側壁面113と近接するように円筒室111の側壁面113に向かって突出した一対のベーン(回転翼)124a、124bが、円筒室111の側壁面113に沿って形成されている。ベーン124a、124bには、ベーン124a、124bの先端面123と円筒室111の側壁面113との間、ベーン124a、124bの下面(円筒室111の底面116と対向する面)125と円筒室111の底面116との間、および、ベーン124a、124bの上面(蓋14側の面)126と蓋14の下面(ケース11側の面)142との間に形成されるギャップを塞ぐためのリップシール127(
図2参照)が取り付けられている。
【0025】
図6(A)は、
図5(B)に示すロータ12のB−B断面図であり、
図6(B)は、
図5(A)のC部分の拡大図である。
【0026】
図示するように、一方のベーン124aには、このベーン124aおよび円筒室111の仕切り115aにより区切られる円筒室111内の領域111a(
図7参照)と、このベーン124aおよび円筒室111の仕切り115bにより区切られる円筒室111内の領域111b(
図7参照)とを繋ぐための流路(オリフィス)128aが、このベーン124aの一方の側面132aと他方の側面133aとを貫通するように形成されている。同様に、他方のベーン124bには、このベーン124bおよび円筒室111の仕切り115aにより区切られる円筒室111内の領域111c(
図7参照)と、ベーン124bおよび円筒室111の仕切り115bにより区切られる円筒室111内の領域111d(
図7参照)とを繋ぐための流路128bが、このベーン124bの一方の側面132bと他方の側面133bとを貫通するように形成されている。
【0027】
流路128a、128bの各々には、逆止弁15および調圧弁16が対となって内設されている。
【0028】
流路128a、128b内には、ベーン124a、124bの一方の側面132a、132bに形成された流路口1284、およびベーン124a、124bの他方の側面133a、133bに形成された流路口128よりも、径方向流路断面積の大きい隣接する3つの区間1280〜1282が、流路口1284、1285間に、軸心を流路口1284、1285の軸心からずらすようにして形成されている。具体的には、第一の流路区間1280、第一の流路区間1280よりも径方向流路断面積の大きな第二の流路区間1281、第二の流路区間1281よりも径方向流路断面積の小さな第三の流路区間1282が形成されている。
【0029】
第二の流路区間1281には、逆止弁15が粘性流体13の流れ方向にスライド自在に収容され、第三の流路区間1282には、調圧弁16が収容される。第二の流路区間1281は、第三の流路区間1282に対して、ロータ12を正転方向(本実施の形態ではα方向)に回転させた場合に、充填されている粘性流体13が加圧される領域111a、111d(
図7参照)側に隣接するように形成されている。
【0030】
逆止弁15は、第二の流路区間1281を開閉するように第二の流路区間1281内に配置された板状部材であり、ロータ12の回転方向に応じた方向に第二の流路区間1281内をスライドする。また、逆止弁15には、粘性流体13が通過する貫通孔151が形成されており、この貫通孔151が、調圧弁16によって開閉される。
【0031】
調圧弁16は、逆止弁15の貫通孔151を通過する粘性流体13の流量を調整するニードル160と、第二の流路区間1281側へニードル160を付勢するバネ等の弾性体162と、を有する。ニードル160は、逆止弁15の貫通孔151を塞ぐためのテーパ付きの栓部161と、栓部161の逆止弁15側先端部に設けられた棒状のストッパ163と、を有する。ニードル160は、ストッパ163が第二の流路区間1281側に突出するように、第三の流路区間1282側から逆止弁15の貫通孔151に挿入されている。逆止弁15が第三の流路区間1282側に移動すると、逆止弁15の貫通孔151に栓部161が挿入される。これにより、逆止弁15の貫通孔151が栓部161により塞がれる。また、弾性体162の付勢によりニードル160が第一、第二の流路区間1280、1281側へ移動すると、ストッパ163は、逆止弁15の貫通孔151を介して流路128a、128bの内壁1283に当接する。これにより、第一、第二の流路区間1280、1281側への栓部161の移動を規制する。
【0032】
このような流路128a、128bは、例えば
図6(C)に示すように、流路128a、128bの一部(一方の流路口1284、および第一、第二の流路区間1280、1281)をなす貫通孔1288をベーン124a、124bに予め形成しておき、この貫通孔1288に、逆止弁15、調圧弁16を順番に挿入し、それから、流路128a、128bの一部(他方の流路口1285、第三の流路区間1282)が形成されたブロック1289を嵌入することによって形成することができる。
【0033】
なお、ニードル160の円滑な移動を実現するために、逆止弁15の貫通孔151の径方向に対するストッパ163のガタツキを防止するガイド(例えば、貫通孔151の第一の流路区間1280側端面部に形成された3点以上の突起部)を設けてもよい。
【0034】
つぎに、ロータリダンパ1の動作原理を説明する。
図7(A)、
図7(B)、および
図8は、ロータリダンパ1の動作原理を説明するための図である。
【0035】
図7(A)および
図7(B)に示すように、ケース11に対してロータ12が正転方向(本実施の形態ではα方向)に相対的に回転した場合、逆止弁15が、第二の流路区間1281と第三の流路区間1282との境界1286まで第二の流路区間1281内をスライドする。
【0036】
ここで、ロータ12またはケース11に加えられた回転力(α方向の回転速度)が、調圧弁16の弾性体162の弾性係数により定まる所定値未満ならば、
図7(A)に示すように、弾性体162により押圧されたニードル160の栓部161が逆止弁15の貫通孔151に押し込まれたままとなり、流路128a、128bが閉口する。このため、円筒室111内において、仕切り115a、115bおよびロータ12のベーン124a、124bにより区切られる領域111a〜領域111d間の粘性流体13の移動は、仕切り115a、115bの先端面114とロータ12の外周面122との間に形成されるギャップ等を介してのみに制限される。これにより、領域111a、111d内の粘性流体13の圧力が高まって、強い制動トルクが発生する。
【0037】
ロータ12またはケース11に加えられた回転力が上述の所定値以上ならば、
図7(B)に示すように、流路128a、128bを流れようとする粘性流体13の圧力によりニードル160が第三の流路区間1282側に押し戻されて、逆止弁15の貫通孔151からニードル160の栓部161が離れ、流路128a、128bが開口する。このため、円筒室111において、切り115a、115bおよびロータ12のベーン124a、124bにより区切られる領域111a〜領域111d間の移動の制限が解除され、粘性流体13が、流路128a、128bを介して、領域111a、111dから領域111b、111cへ移動する。これにより、強い制動トルクを発生させつつも、領域111a、111d内の粘性流体13の圧力が所定値以上に高くなるのを防止できる。
【0038】
一方、
図8に示すように、ケース11に対してロータ12が逆転方向(本実施の形態ではβ方向)に相対的に回転した場合、逆止弁15が、第一の流路区間1280と第二の流路区間1281との境界1287まで第二の流路区間1281内をスライドする。
【0039】
ここで、ニードル160は、ストッパ163により第二の流路区間1281側への移動が規制されるので、ニードル160の栓部161が逆止弁15の貫通孔151に押し込まれることなく、流路128a、128bが開口する。このため、粘性流体13は、流路128a、128bを介して、領域111b、111cから領域111a、111dへ移動する。これにより、領域111b、111c内の粘性流体13の圧力が高くならずに、弱い制動トルクが発生する。
【0040】
以上、本発明の第一実施の形態を説明した。
【0041】
本実施の形態では、円筒室111内に充填された粘性流体13の流路128a、128b経由での移動を制限することにより、ロータ12またはケース11に加えられた正転方向の回転力に対して強い制動トルクを発生させるロータリダンパ1において、この回転力が所定値以上の場合に、高圧側から低圧側への粘性流体13の移動の制限を解除する調圧弁16を設けている。したがって、本実施の形態によれば、ロータ12またはケース11に想定以上の回転力が加わった場合でも、円筒室111内に充填された粘性流体13に対する圧力を所定値以下に抑えることができるので、ロータリダンパ1が破損する可能性を低くすることができる。
【0042】
また、本実施の形態では、ロータ12の一方のベーン124aに、円筒室111の仕切り115a、115bおよびこのベーン124aにより区切られる領域111a、111b間を繋ぐ流路128aを設けている。また、ロータ12の他方のベーン124bに、円筒室111の仕切り115a、115bおよびこのベーン124bにより区切られる領域111c、111d間を繋ぐ流路128bを設けている。そして、逆止弁15および調圧弁16を上述の構成とすることにより、一本の流路128a、128bのそれぞれに、逆止弁15および調圧弁16を対にして内設している。このように、本実施の形態によれば、逆止弁15および調圧弁16を、個別の流路に配置するのではなく、同じ流路128a、128bに配置するため、ロータリダンパ1の小型化が可能となる。
【0043】
なお、本実施の形態では、ロータ12のベーン124a、124bに流路128a、128bを形成し、これらの流路128a、128bに逆止弁15および調圧弁16を対にして内設したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ケース11の円筒室111の仕切り115a、115bに流路128a、128bを形成し、これらの流路128a、128bに逆止弁15および調圧弁16を対にして内設してもよい。
【0044】
<第二実施の形態>
図9(A)および
図9(B)は、本発明の第二実施の形態に係るロータリダンパ2の概略構成を示す外観図および部分断面図であり、
図10は、ロータリダンパ2の部品展開図である。
【0045】
図示するように、本実施の形態に係るロータリダンパ2は、ケース21と、ケース21に対して相対的に回転可能にケース21内に収容されたロータ(回転体)12aと、ケース21に充填された粘性流体13と、ロータ12aを粘性流体13とともにケース21内に封じ込めるための蓋14と、一対の調圧機能付き逆流防止機構22a、22bと、ケース21に蓋14を固定するための複数のネジ18と、を有する。
【0046】
ここで、粘性流体13、ネジ18および蓋14は、第一実施の形態に係るロータリダンパ1で用いたものと同様なものである。また、ロータ12aの構成は、ベーン124a、124bに流路128a、128bが形成されていない点を除き、第一実施の形態に係るロータリダンパ1で用いたロータ12と同様である。したがって、以下においては、これらについての説明を省略する。
【0047】
図11(A)〜(C)は、ケース21の上面図、正面図、および底面図であり、
図11(D)は、
図11(A)に示すケース21のD−D断面図である。
【0048】
図示するように、ケース21は、ケース本体212と、ケース本体212の縁部外周に形成されたフランジ部218と、を備えている。
【0049】
ケース本体212には円筒室(底付き円筒状の空間)211が形成されている。ロータ12aは、円筒形状のロータ本体131とロータ本体131の外周面122に形成されたベーン124a、124bとを備え、この円筒室211の中心線210周りに回転するように(円筒室211の中心線210がロータ12aの回転軸220となるように)、この円筒室211に収容される。円筒室211の底面216には、ロータ12aの一端部(下端部)129aを挿入するための開口部217が形成されている。
【0050】
ケース本体212の内周面213(円筒室211の側壁面213)には、ロータ本体131の外周面122と円筒室211の側壁面213との間の環状の空間を径方向に仕切るように、ロータ本体131の外周面122に向かって突出した一対の凸状の仕切り215a、215b(先端面114がロータ12の外周面122と近接する一対の凸状の仕切り215a、215b)が、円筒室211の中心線210に沿って形成されている。粘性流体13は、これらの仕切り215a、215bによって仕切られた、ロータ本体131の外周面122と円筒室211の側壁面213との間の領域(
図13における211a〜211d)に充填される。
【0051】
一方の仕切り215aには、仕切り215aおよびロータ12aのベーン124aにより形成される円筒室211内の領域211a(
図13参照)と、仕切り215aおよびロータ12aのベーン124bにより形成される円筒室211内の領域211c(
図13参照)とを繋ぐ溝状の流路228aが形成され、この流路228aに調圧機能付き逆流防止機構22aがスライド自在に収容される。同様に、他方の仕切り215bには、仕切り215bおよびロータ12aのベーン124bにより形成される円筒室211内の領域211d(
図13参照)と、仕切り215bおよびロータ12aのベーン124aにより形成される円筒室211内の領域211b(
図13参照)とを繋ぐ流路228bが形成され、この流路228bに調圧機能付き逆流防止機構22bがスライド自在に収容される。
【0052】
また、流路228a、228bの各々には、一部の径方向の流路幅を狭めて調圧機能付き逆流防止機構22a、22bのスライド範囲を規制するための凸部219が形成されている。
【0053】
フランジ部218には、複数のネジ穴218aが形成されており、フランジ部118に載置された蓋14の貫通孔143aに挿入されたネジ18が、これらのネジ穴218aに締結される。
【0054】
図12(A)〜(C)は、調圧機能付き逆流防止機構22a、22bの上面図、正面図、および底面図であり、
図12(D)は、
図12(C)に示す調圧機能付き逆流防止機構22a、22bのE−E断面図である。
【0055】
図示するように、調圧機能付き逆流防止機構22a、22bは、逆止弁25と、調圧弁26と、を有する。
【0056】
逆止弁25は、周方向にスライドして流路228a、228bの一方の流路口(ロータ12aを正転方向(本実施の形態ではα方向、
図13参照)に回転させた場合に、充填されている粘性流体13が加圧される領域211a、211d側の流路口229a、229b、
図13参照)を開閉する板状の弁部251と、流路228a、228b内の凸部219と連携して弁部251のスライド範囲を規制するストッパ252と、調圧弁26を保持する保持部254と、弁部251、ストッパ252および保持部254を連結する連結部255と、を有する。
【0057】
ここで、弁部251には、調圧弁26により開閉する貫通孔253が形成されている。また、保持部254およびストッパ252は、弁部251に対して、ロータ12aを正転方向(本実施の形態ではα方向、
図13参照)に回転させた場合に、充填されている粘性流体13が減圧される領域211b、211c(
図13参照)側に位置するように形成されている。また、連結部255は、ロータ12aが逆転方向(本実施の形態ではβ方向、
図14参照)に回転し、ストッパ252が仕切り215a、215b内の凸部219に当接した場合に、弁部251が流路228a、228bの流路口229a、229bから所定の間隔だけ離れる程度の長さを有する。
【0058】
調圧弁26は、逆止弁25の弁部251の貫通孔253を通過する粘性流体13の流量を調整するニードル264と、一端が逆止弁25の保持部254に固定され、他端でニードル264を領域211b、211c側へ付勢するバネ等の弾性体262と、を有する。ニードル264は、逆止弁25の弁部251の貫通孔253を塞ぐためのテーパ付きの栓部261と、栓部261の弁部251側先端部に設けられた棒状のガイド263と、を有する。ガイド263は、領域211b、211c側から弁部251の貫通孔253に挿入されており、逆止弁25の弁部251の貫通孔253に栓部261を誘導する。弾性体262の付勢によりニードル264が逆止弁25の弁部251側に移動すると、栓部261が、ガイド263に誘導されて、弁部251の貫通孔253に挿入される。これにより、逆止弁25の弁部251の貫通孔253が栓部261により塞がれる。
【0059】
なお、ニードル264の円滑な移動を実現するために、弁部251の貫通孔253の径方向に対するガイド263のガタツキを防止するガイド(例えば、貫通孔253の外側端面部に形成された3点以上の突起部)を設けてもよい。
【0060】
つぎに、ロータリダンパ2の動作原理を説明する。
図13(A)、
図13(B)および
図14は、ロータリダンパ2の動作原理を説明するための図である。
【0061】
図13(A)および
図13(B)に示すように、ケース21に対してロータ12aが正転方向(本実施の形態ではα方向)に相対的に回転した場合、調圧機能付き逆流防止機構22a、22bは、逆止弁25の弁部251が流路228a、228bの流路口229a、229bを塞ぐまで流路228a、228b内をスライドする。
【0062】
ここで、ロータ12aまたはケース21に加えられた回転力(α方向の回転速度)が、調圧弁26の弾性体262の弾性係数により定まる所定値未満ならば、
図13(A)に示すように、弾性体262により押圧されたニードル264の栓部261が弁部251の貫通孔253に押し込まれたままとなり、流路228a、228bが閉口する。このため、円筒室211内において、仕切り215a、215bおよびロータ12aのベーン124a、124bにより区切られる領域211a〜領域211d間の粘性流体13の移動は、仕切り215a、215bの先端面214とロータ本体131の外周面122との間に形成されるギャップ等を介してのみに制限される。これにより、領域211a、211d内の粘性流体13の圧力が高まって、強い制動トルクが発生する。
【0063】
ロータ12aまたはケース21に加えられた回転力が上述の所定値以上ならば、
図13(B)に示すように、流路228a、228bを流れようとする粘性流体13の圧力によりニードル264が押し戻されて、弁部251の貫通孔253からニードル264の栓部261が離れ、流路228a、228bが開口する。このため、円筒室211内において、仕切り215a、215bおよびロータ12aのベーン124a、124bにより区切られる領域211a〜領域211d間における粘性流体13の移動の制限が解除され、粘性流体13が、流路228a、228bおよび弁部251の貫通孔253を介して、領域211a、211dから領域211c、211bへ移動する。これにより、強い制動トルクを発生させつつも、領域211a、211d内の粘性流体13の圧力が所定値以上に高くなるのを防止できる。
【0064】
一方、
図14に示すように、ケース21に対してロータ12aが逆転方向(本実施の形態ではβ方向)に相対的に回転した場合、調圧機能付き逆流防止機構22a、22bは、逆止弁25のストッパ252が流路228a、228b内の凸部219に当接するまで流路228a、228b内をスライドする。これにより、弁部251は、流路228a、228bの流路口229a、229bから離れた位置まで移動し、流路228a、228bが開口する。このため、粘性流体13は、流路228a、228bを介して、領域211b、211cから領域211a、211dへ移動する。これにより、領域211b、211c内の粘性流体13の圧力が高くならずに、弱い制動トルクが発生する。
【0065】
以上、本発明の第二実施の形態を説明した。
【0066】
本実施の形態でも、上記第一実施の形態と同様、ロータ12aまたはケース21に想定以上の回転力が加わった場合に、円筒室211内に充填された粘性流体13に対する圧力を所定値以下に抑えることができるので、ロータリダンパ2が破損する可能性を低くすることができる。また、調圧弁26を逆止弁25に組み込んで調圧機能付き逆流防止機構22a、22bとすることより、逆止弁25および調圧弁26を、同じ流路228a、228b内に配置できるので、ロータリダンパ2の小型化が可能となる。
【0067】
なお、本実施の形態では、円筒室211の仕切り215a、215bに流路228a、228bを形成し、これらの流路228a、228bに調圧機能付き逆流防止機構22a、22bを内設したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ロータ12aのベーン124a、124bに流路228a、228bを形成し、これらの流路228a、228bに調圧機能付き逆流防止機構22a、22bを内設してもよい。
【0068】
<第三実施の形態>
図15(A)および
図15(B)は、本発明の第三実施の形態に係るロータリダンパ3の概略構成を示す外観図および部分断面図であり、
図16は、ロータリダンパ3の部品展開図である。
【0069】
図示するように、本実施の形態に係るロータリダンパ3は、ケース31と、ケース31に対して相対的に回転可能にケース31内に収容されたロータ(回転体)32と、ケース内31に充填された粘性流体13と、ロータ32を粘性流体13とともにケース31内に封じ込めるための蓋14と、ケース11に蓋14を固定するための複数のネジ18と、を有する。また、
図15には図示していないが、ロータリダンパ3は、さらに、逆止弁35と、調圧弁36と、を有する。
【0070】
なお、粘性流体13、ネジ18および蓋14は、第一実施の形態に係るロータリダンパ1で用いたものと同様なものである。したがって、以下においては、これらについての説明を省略する。
【0071】
図17(A)〜(C)は、ケース31の上面図、正面図、および底面図であり、
図17(D)は、
図17(A)に示すケース31のF−F断面図である。
【0072】
図示するように、ケース31は、ケース本体312と、ケース本体312の縁部外周に形成されたフランジ部318と、を備えている。
【0073】
ケース本体312には円筒室(底付き円筒状の空間)311が形成されている。ロータ32は、円筒形状のロータ本体331とロータ本体331の外周面322に形成されたベーン324a、324bとを備え、この円筒室311の中心線310周りに回転するように(円筒室311の中心線310がロータ32の回転軸320となるように)、この円筒室311に収容される。ケース本体312の内周面313(円筒室311の側壁面313)には、ロータ本体331の外周面322と円筒室311の側壁面313との間の環状の空間を径方向に仕切るように、ロータ本体331の外周面322に向かって突出した一対の凸状の仕切り315a、315b(先端面314がロータ32の側面322と近接する一対の凸状の仕切り315a、315b)が、円筒室311の中心線310に沿って形成されている。粘性流体13は、これらの仕切り315a、315bによって仕切られた、ロータ本体331の外周面322と円筒室311の側壁面313との間の領域(
図22における311a〜311d)に充填される。また、円筒室311の底面316には、ロータ本体331の一端部(下端部)329aを挿入するための開口部317が形成されている。
【0074】
また、一方の仕切り315aには、この仕切り315aおよびロータ32のベーン324aにより形成される円筒室311内の領域311a(
図22参照)と、この仕切り315aおよびロータ32のベーン324bにより形成される円筒室311内の領域311c(
図22参照)とを繋ぐ逆止弁用流路(オリフィス)338aが形成されている。同様に、他方の仕切り315bには、この仕切り315bおよびロータ32のベーン324aにより形成される円筒室311内の領域311b(
図22参照)と、この仕切り315bおよびロータ32のベーン324bにより形成される円筒室311内の領域311d(
図22参照)とを繋ぐ逆止弁用流路(オリフィス)338bが形成されている。
【0075】
図18(A)は、
図17(B)に示すケース31のG−G断面図であり、
図18(B)は、
図18(A)のH部分の拡大図である。
【0076】
図示するように、逆止弁用流路338a、338bの各々には、球状の逆止弁35が内設されている。
【0077】
逆止弁用流路338a、338bには、第一の逆止弁用流路区間3381と、第一の逆止弁用流路区間3381よりも径方向流路断面積の大きな第二の逆止弁用流路区間3382と、が形成されている。第二の逆止弁用流路区間3382は、逆止弁35の直径よりも大きな直径を有しており、第一の逆止弁用流路区間3381を開閉する逆止弁35をスライド自在に収容している。また、第二の逆止弁用流路区間3382には、逆止弁35のスライド範囲を規制するためのストッパ3383が形成されている。第一の逆止弁用流路区間3381は、第二の逆止弁用流路区間3382に対して、ロータ32を正転方向(本実施の形態ではα方向、
図22参照)に回転させた場合に、充填されている粘性流体13が減圧される領域311b、311c側に隣接するように形成されている。
【0078】
図19(A)〜(D)は、ロータ32の上面図、正面図、側面図および底面図である。
【0079】
図示するように、ロータ本体331には、外部からの回転力をロータ32に伝達するシャフト(不図示)を挿入するための貫通孔321が回転軸320を中心にして形成されている。そして、ロータ本体331(貫通孔321)の下端部329aは、ケース31の円筒室311の底面316に形成された開口部317に摺動可能に挿入され、ロータ本体331(貫通孔321)の上端部329bは、蓋14の開口部141に摺動可能に挿入される。なお、円筒室311から粘性流体13が外部に漏れないように、Oリング等のシール材を、ロータ本体331の端部329a、329bと開口部317、141との間に介在させて密封性を高めるようにしてもよい。
【0080】
また、ロータ本体331の外周面322には、先端面(円筒室311の側壁面313に対向する面)323が円筒室311の側壁面313と近接するように円筒室311の側壁面313に向かって突出した一対のベーン(回転翼)324a、324bが、ロータ32の回転軸320に沿って形成されている。ベーン324a、324bには、ベーン324a、324bの先端面323と円筒室311の側壁面313との間、ベーン324a、324bの下面(円筒室311の底面316と対向する面)325と円筒室311の底面316との間、および、ベーン324a、324bの上面(蓋14側の面)326と蓋14の下面142との間に形成されるギャップを塞ぐためのリップシール327(
図15参照)が取り付けられている。
【0081】
図20(A)は、
図19(B)に示すロータ32のI−I断面図であり、
図20(B)は、
図20(A)のJ部分の拡大図であり、
図20(C)は、流路328a、328bの製造方法を説明するための図である。
【0082】
一方のベーン324aには、ベーン324aおよび円筒室311の仕切り315aにより形成される円筒室311内の領域311a(
図22参照)と、ベーン324aおよび円筒室311の仕切り315bにより形成される円筒室311内の領域311b(
図22参照)とを繋ぐ調圧弁用流路(オリフィス)328aが形成されている。同様に、他方のベーン324bには、ベーン324bおよび円筒室311の仕切り315aにより形成される円筒室311内の領域311c(
図22参照)と、ベーン324bおよび円筒室311の仕切り315bにより形成される円筒室311内の領域311d(
図22参照)とを繋ぐ調圧弁用流路328bが形成されている。
【0083】
調圧弁用流路328a、328bの各々には、ベーン324a、324bの一方の側面332a、332bに形成された流路口3280、およびベーン324a、324bの他方の側面333a、333bに形成された流路口3281よりも、径方向流路断面積の大きい調圧弁用流路区間3282が、流路口3280、3281間に、軸心を流路口3280、3281の軸心からずらすようにして形成されている。この調圧弁用流路区間3282には、調圧弁36が収容されている。
【0084】
調圧弁36は、調圧弁用流路328a、328bの一方の流路口3280を通過する粘性流体13の流量を調整するニードル360と、ニードル360を調圧弁用流路328a、328bの一方の流路口3280側へ押圧するバネ等の弾性体362と、を有する。ここで、調圧弁用流路328a、328bの一方の流路口3280は、ロータ32を正転方向(本実施の形態ではα方向)に回転させた場合に、充填されている粘性流体13が加圧される領域311a、311b(
図22参照)側に面した流路口である。
【0085】
ニードル360は、調圧弁用流路328a、328bの一方の流路口3280を塞ぐためのテーパ付きの栓部361と、栓部361の先端に設けられたガイド363と、を有する。ガイド363は、領域311b、311c側から調圧弁用流路328a、328bの一方の流路口3280に挿入されており、調圧弁用流路328a、328bの一方の流路口3280に栓部361を誘導する。弾性体362の付勢によりニードル360が調圧弁用流路328a、328bの一方の流路口3280側に移動すると、栓部361が、ガイド363に誘導されて、調圧弁用流路328a、328bの一方の流路口3280に挿入される。これにより、調圧弁用流路328a、328bの一方の流路口3280が栓部361により塞がれる。
【0086】
調圧弁用流路328a、328bは、例えば
図20(C)に示すように、調圧弁用流路328a、328bの一部(一方の流路口3280、調圧弁用流路区間3282)をなす貫通孔3284をベーン324a、324bに予め形成しておき、この貫通孔3284に、調圧弁36を挿入し、それから、調圧弁用流路328a、328bの一部(他方の流路口3281)が形成されたブロック3285を嵌入することにより、形成することができる。
【0087】
なお、ニードル360の円滑な移動を実現するために、流路口3280の径方向に対するガイド363のガタツキを防止するガイド(例えば、流路口3280の調圧弁用流路区間3282側端面部に形成された3点以上の突起部)を設けてもよい。
【0088】
つぎに、ロータリダンパ3の動作原理を説明する。
図21〜
図23は、ロータリダンパ3の動作原理を説明するための図である。
【0089】
図21および
図22に示すように、ケース31に対してロータ32が正転方向(本実施の形態ではα方向)に相対的に回転した場合、逆止弁35が、第一の逆止弁用流路区間3381と第二の逆止弁用流路区間3382との境界まで第二の逆止弁用流路区間3382内をスライドして、第一の逆止弁用流路区間3381を塞ぐ。これにより、逆止弁用流路338a、338bが閉口する。
【0090】
ここで、ロータ32またはケース31に加えられた回転力(α方向の回転速度)が調圧弁36の弾性体362の弾性係数により定まる所定値未満ならば、
図21に示すように、弾性体362により押圧されたニードル360の栓部361が、調圧弁用流路328a、328bの一方の流路口3280に押し込まれたままとなり、調圧弁用流路328a、328bが閉口する。このため、円筒室311内において、仕切り315a、315bおよびロータ32のベーン324a、324bにより区切られる領域311a〜領域311d間の粘性流体13の移動は、仕切り315a、315bの先端面314とロータ本体331の外周面322との間に形成されるギャップ等を介してのみに制限される。これにより、領域311a、311d内の粘性流体13の圧力が高まって、強い制動トルクが発生する。
【0091】
ロータ32またはケース31に加えられた回転力が上述の所定値以上ならば、
図22に示すように、調圧弁用流路328a、328bを流れようとする粘性流体13の圧力によりニードル360が押し戻されて、ニードル360の栓部361が第一の調圧弁用流路区間3281から離れ、調圧弁用流路328a、328bが開口する。このため、調圧弁用流路328a、328b経由での粘性流体13の移動の制限が解除され、粘性流体13が、調圧弁用流路328a、328bを介して、領域311a、311dから領域311b、311cへ移動する。これにより、強い制動トルクを発生させつつも、領域311a、311d内の粘性流体13の圧力が所定値以上に高くなるのを防止できる。
【0092】
一方、
図23に示すように、ケース31に対してロータ32が逆転方向(本実施の形態ではβ方向)に相対的に回転した場合、逆止弁35は、ストッパ3383に当接するまで第二の逆止弁用流路区間3382内を領域311a、311d側にスライドする。これにより、逆止弁35が第一の逆止弁用流路区間3381から離れて、逆止弁用流路338a、338bが開口する。このため、粘性流体13は、逆止弁用流路338a、338bを介して、領域311b、311cから領域311a、311dへと移動する。これにより、領域311b、311c内の粘性流体13の圧力が高くならずに、弱い制動トルクが発生する。
【0093】
以上、本発明の第三実施の形態を説明した。
【0094】
本実施の形態でも、上記第一、第二実施の形態と同様、ロータ32に想定以上の回転力が加わった場合に、円筒室311内に充填された粘性流体13に対する圧力を所定値以下に抑えることができるので、ロータリダンパ3が破損する可能性を低くすることができる。また、調圧弁36を内設する流路328a、328bをロータ32のベーン324a、324bに形成し、逆止弁35を内設する流路338a、338bを円筒室311の仕切り315a、315bに形成しているので、これらの流路をベーン324a、324bおよび仕切り315a、315bの一方にまとめて形成する場合に比べ、ロータリダンパ3の小型化が可能となる。
【0095】
なお、本実施の形態では、円筒室311の仕切り315a、315bに逆止弁35用の流路328a、328bを形成し、ロータ32のベーン324a、324bに調圧弁36用の流路328a、328bを形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、円筒室311の仕切り315a、315bに調圧弁36用の流路を形成し、ロータ32のベーン324a、324bに逆止弁35用の流路を形成してもよい。また、ロータリダンパ3に対する小型化の要求が厳しくない場合には、これらの流路をベーン324a、324bおよび仕切り315a、315bの一方にまとめて形成してもよい。
【0096】
また、本実施の形態において、ロータ32のベーン324a、324bに取り付けられたリップシール327に逆止弁としての機能を付与することにより、逆止弁35および逆止弁用流路338a、338bを省略してもよい。すなわち、ケース31に対してロータ32が正転方向(本実施の形態ではα方向)に相対的に回転した場合、
図24(A)に示すように、ベーン324a、324bの先端面323と円筒室311の側壁面313とのギャップ38を流れる粘性流体13の圧力により、このギャップ38を塞ぐ方向に変形し、ケース31に対してロータ32が逆転方向(本実施の形態ではβ方向)に相対的に回転した場合には、
図24(B)に示すように、このギャップ38を流れる粘性流体13の圧力により、このギャップ38を開放する方向に変形するように、リップシール327の先端部3271に弾性を持たせる。このようにして、逆止弁35および逆止弁用流路338a、338bを省略することにより、より安価にロータリダンパ3を作製することができる。
【0097】
なお、上記の各実施の形態に係るロータリダンパ1〜3では、円筒室111、211、311に一対の仕切り115a、115b、215a、215b、315a、315bを設けるとともに、ロータ12、12a、32に一対のベーン124a、124b、324a、324bを設けた場合を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。円筒室に形成された仕切りおよびロータに形成されたベーンが同数であれば、1または3以上形成されていてもよい。
【0098】
また、上記の各実施の形態に係るロータリダンパ1〜3は、例えば、自動車、鉄道車両、航空機、船舶等で用いられるリクライニング機能付きの座席シートに広く適用できる。