特許第5702280号(P5702280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5702280
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】積層熱電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/30 20060101AFI20150326BHJP
   H01L 35/32 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   H01L35/30
   H01L35/32 A
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-518706(P2011-518706)
(86)(22)【出願日】2009年6月29日
(65)【公表番号】特表2011-528189(P2011-528189A)
(43)【公表日】2011年11月10日
(86)【国際出願番号】US2009003855
(87)【国際公開番号】WO2010008495
(87)【国際公開日】20100121
【審査請求日】2011年2月24日
(31)【優先権主張番号】12/172,396
(32)【優先日】2008年7月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596092698
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100104352
【弁理士】
【氏名又は名称】朝日 伸光
(74)【代理人】
【識別番号】100128657
【弁理士】
【氏名又は名称】三山 勝巳
(74)【代理人】
【識別番号】100160967
【弁理士】
【氏名又は名称】▲濱▼口 岳久
(72)【発明者】
【氏名】ホデス,マルク,エス.
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−231868(JP,A)
【文献】 米国特許第04125122(US,A)
【文献】 特公昭55−012740(JP,B2)
【文献】 特開2000−349479(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0155992(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L35/00−35/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフィンガを持っている第1の熱伝導性物体、
複数のフィンガを持っている第2の熱伝導性物体、前記複数のフィンガの少なくとも第1および第2のフィンガが同じ蒸気チャンバの一部を含み、前記第1のフィンガから第2のフィンガへ蒸気を運ぶ通路を提供するように構成され、更に前記第1の熱伝導性物体の少なくとも一つのフィンガが前記第2の熱伝導性物体の前記第1のフィンガおよび第2のフィンガと互いにかみ合うように構成され、
及び
複数の熱電モジュールを備えた装置であって、前記複数の熱電モジュールは前記第1の熱伝導性物体と第2の熱伝導性物体の間に配置され、各熱電モジュールは第1の主表面とそれに対向する第2の主表面の間にその全体が配置された少なくとも一つの半導体ペレットを有し、前記第1の主表面の一つは前記第1の熱伝導性物体の少なくとも一つのフィンガと熱的に接触し、前記第2の主表面の一つは前記第2の熱伝導性物体の前記第1のフィンガ又は前記第2のフィンガと熱的に接触している装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記第1の熱伝導性物体と熱的に接触している熱源、及び前記第2の熱伝導性物体と熱的に接触しているヒートシンクをさらに備えた装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、前記熱電モジュールが、前記熱源によって生成される熱に応答して電力を生成するように構成されている装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、前記熱電モジュールが前記第1の熱伝導性物体と第2の熱伝導性物体間で熱を運ぶように構成されている装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、前記同じ蒸気チャンバが第2の蒸気チャンバであり、前記第1の熱伝導性物体は第1の蒸気チャンバを含む装置。
【請求項6】
少なくとも1つのフィンガを持っている第1の熱伝導性物体を設けるステップ、
複数のフィンガを持っている第2の熱伝導性物体を設けるステップ、前記複数のフィンガの少なくとも第1および第2のフィンガが同じ蒸気チャンバの一部を含み、前記第1のフィンガから第2のフィンガへ蒸気を運ぶ通路を提供するように構成され、
前記第1の熱伝導性物体の少なくとも一つのフィンガが前記第2の熱伝導性物体の前記第1のフィンガおよび第2のフィンガと互いにかみ合うように前記第1の熱伝導性物体と前記第2の熱伝導性物体を構成するステップ、
及び
前記第1の熱伝導性物体と前記第2の熱伝導性物体の間に複数の熱電モジュールを配置するステップを備え、各熱電モジュールは第1の主表面とそれに対向する第2の主表面の間にその全体が配置された少なくとも一つの半導体ペレットを有し、前記第1の主表面の一つは前記第1の熱伝導性物体の少なくとも一つのフィンガと熱的に接触し、前記第2の主表面の一つは前記第2の熱伝導性物体の前記第1のフィンガ又は前記第2のフィンガと熱的に接触する、方法
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記同じ蒸気チャンバが第2の蒸気チャンバであり、前記第1の熱伝導性物体は第1の蒸気チャンバを含む方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記第1の熱伝導性物体と熱的に接触している熱源、及び前記第2の熱伝導性物体と熱的に接触しているヒートシンクをさらに配置することを含む方法。
【請求項9】
少なくとも1つのフィンガを持っている第1の熱伝導性物体、
複数のフィンガを持っている第2の熱伝導性物体、前記複数のフィンガの少なくとも第1および第2のフィンガが同じ蒸気チャンバの一部を含み、前記第1のフィンガから第2のフィンガへ蒸気を運ぶ通路を提供するように構成され、更に前記第1の熱伝導性物体の少なくとも一つのフィンガが前記第2の熱伝導性物体の前記第1のフィンガおよび第2のフィンガと互いにかみ合うように構成され、
複数の熱電モジュール、前記複数の熱電モジュールは前記第1の熱伝導性物体と第2の熱伝導性物体の間に配置され、各熱電モジュールは第1の主表面とそれに対向する第2の主表面の間にその全体が配置された少なくとも一つの半導体ペレットを有し、前記第1の主表面の一つは前記第1の熱伝導性物体の少なくとも一つのフィンガと熱的に接触し、前記第2の主表面の一つは前記第2の熱伝導性物体の前記第1のフィンガ又は前記第2のフィンガと熱的に接触し
及び
前記第1の熱伝導性物体と第2の熱伝導性物体の間の熱輸送の速度を前記複数の熱電モジュールによって制御するように構成された制御装置
を備えるシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記第1の熱伝導性物体と第2の熱伝導性物体の
うちの少なくとも1つがヒートパイプを含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概略として熱電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
熱電モジュール(TEM)は例えば物を加熱又は冷却するために使用されることがあり、又は熱源とヒートシンクの間に配置されたとき電力を発生するように使用されることがある半導体をベースにしたデバイスの1つの部類である。一般に、交互になるドーピング型の半導体ペレットが電気的に直列に、かつ熱的に並列に配列される。これらのペレットを通って電流が流れるときに、TEMの一方の側がより冷たくなり、他方がより熱くなる。逆に言えば、熱勾配の中に配置されたとき、TEMは負荷を通して電流を流すことができる。TEMは、デバイスを冷却若しくは加熱するために、又は帰還制御ループの助けを借りて動作温度を維持するために使用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願番号第12/128,478号
【特許文献2】米国特許出願番号第11/618,056号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態は、複数のフィンガを持っている第1の熱伝導性物体、及び複数のフィンガを持っている第2の熱伝導性物体を含む装置である。第1及び第2の物体は、第1の物体のフィンガが第2の物体のフィンガと互いにかみ合うように構成されている。複数の熱電モジュールの各々は第1の主表面及び対向する第2の主表面を持っている。第1の主表面は第1の物体のフィンガの1つと熱的に接触し、第2の主表面は第2の物体のフィンガの1つと熱的に接触している。
【0005】
他の実施形態は、複数のフィンガを持っている第1の熱伝導性物体及び複数のフィンガを持っている第2の熱伝導性物体を設けるステップを含む方法である。第1及び第2の物体は、第1の物体のフィンガが第2の物体のフィンガと互いにかみ合うように構成される。複数の熱電モジュールの各々は第1の主表面及び対向する第2の主表面を持っている。第1の主表面は第1の物体のフィンガの1つと熱的に接触するように構成され、第2の主表面は第2の物体のフィンガの1つと熱的に接触するように構成される。
【0006】
他の実施形態は、複数のフィンガを持っている第1の熱伝導性物体と、複数のフィンガを持っている第2の熱伝導性物体を含むシステムである。これらの物体は、第1の物体のフィンガが第2の物体のフィンガと互いにかみ合うように構成される。複数の熱電モジュールの各々は第1の主表面及び対向する第2の主表面を持っている。第1の主表面は第1の物体のフィンガの1つと熱的に接触し、第2の主表面は第2の物体のフィンガの1つと熱的に接触している。制御装置は、第1の物体と第2の物体の間の熱輸送速度を複数の熱電モジュールによって制御するように構成されている。
【0007】
様々な実施形態は、添付の図に関係して読まれるとき、下記の詳細な説明から理解される。様々な特徴は、一定の比で描かれていないことがあり、また議論をはっきりさせるために、サイズが任意に増大又は縮小されていることがある。図の様々な特徴は、それらの特徴を参照する際に、便宜上「垂直」又は「水平」のように説明されることがある。そのような説明は、自然水平線又は重力を基準にしてそのような特徴の向きを限定しない。これから、添付の図面に関連して理解される下記の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】垂直方向に積み重ねられた熱電モジュールを備える装置の例の実施形態を示す図である。
図1B】水平方向に積み重ねられた熱電モジュールを備える装置の例の実施形態を示す図である。
図2A】いくつかのフィンガを持っている2つの熱伝導性物体の位置決めを示す図である。
図2B】いくつかのフィンガを持っている2つの熱伝導性物体の位置決めを示す図である。
図2C】いくつかのフィンガを持っている2つの熱伝導性物体の位置決めを示す図である。
図3】各々蒸気チャンバを含みTEMに熱的に結合されている2つの熱伝導性物体中での作用流体及び蒸気の循環の例を示す図である。
図4】2つのフィンガの各々と熱的に接触しているTEMを示す分解組立図である。
図5】熱源によって生成された熱に応答して電力を生成するように構成されたTEM及び4つのフィンガを示す図である。
図6A】ヒートパイプ及び熱伝導性ブロックが熱伝導性物体のフィンガを形成している例の実施形態を示す図である。
図6B】ヒートパイプ及び熱伝導性ブロックが熱伝導性物体のフィンガを形成している例の実施形態を示す図である。
図6C】ヒートパイプ及び熱伝導性ブロックが熱伝導性物体のフィンガを形成している例の実施形態を示す図である。
図7】例の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
熱電モジュール(TEM)は通常、電気的に直列にかつ熱的に並列に接続された、いくつかのn型にドープされたペレットとp型にドープされたペレットから組み立てられる。外部から加えられた電位によって電子及び/又は正孔がペレットを通って流れるとき、ペレットの両端間に温度差が維持される。電流の流れに応答してTEMの一方の側がより冷たくなり他方の側がより熱くなるように、これらのペレットは、交互になる態様で互いに電気的に直列に接続される。従って、TEMはヒートポンプとして使用されることがある。TEMのペレットの両端間に熱勾配が課されたとき仕事を生じさせるために利用することができる電位が生成されるという意味で、TEMの動作は可逆的である。
【0010】
ペレットを通って電流が流れるときに、ジュール熱(IR)によって電力がペレット中で消散する。消散された電力はペレットの温度を上昇させ、ポンピング効率を低下させる。消散された電力は、また、TEMによって除去されるべき熱を増加させる。従って、一般に、より大きなポンピング電流の場合よりもより小さなポンピング電流の場合に、TEMの効率がより高くなる。しかし、ポンピング電流が小さければ小さいほど、それだけ熱伝達の速度が小さくなる。このトレードオフは通常、特定のシステム設計の要求条件に特有の設計上の妥協につながる。
【0011】
各ペレットを流れる電流が減少するようにTEMの面積を増大することによって、及び/又はペレットの熱い側と冷たい側をより高度に熱的に分離する例えば絶縁することによって、TEMの効率は向上する可能性がある。あたかもその全体が本明細書に複写されたかのように参照して本明細書に組み込まれるHodes等の米国特許出願番号第12/128,478号は、例えば蒸気チャンバのような熱伝導性基板を使用して熱源からの熱を横方向に広げる装置を開示している。横方向伝導性基板はより大きなTEMの使用を可能にし、このことは、TEMを通過する単位面積当たりの熱流束(単位熱流束)を減少させることができ、従ってTEMがより高い効率で動作することができるようになる。しかし、この手法では、冷却又は温度制御用途において、又は例えば自動車排気システムなどの廃熱再生利用用途において、回路組立基板(例えば、プリント回路基板)のより大きな面積を使用することが不可欠である可能性がある。そのような場合には、より大きな面積をTEMに与えてより高い動作効率を達成することは、法外な費用がかかり、及び/又は非現実的である可能性がある。必要とされるものは、TEMペレットを流れる電流密度を減少させ、回路組立基板のより小さな面積を費やす代替え方法である。
【0012】
TEMを積み重ねるが熱的に並列に動作させて、必要な回路組立基板の面積を減少させながらTEMを通過する単位熱流束を減少させることができるという認識から、説明される実施形態は利益を得ている。従って、TEMを水平方向ではなく基板に対して垂直方向に延ばすことによって、例えば熱生成デバイスからの熱を広げるために使用される実効面積が増大される。垂直方向の組立は、さらに下で説明されるように、熱伝導性物体を利用してTEMを熱的に並列に構成する。
【0013】
最初に図1Aを参照すると、図示されているのは、例の装置100の断面図である。装置100は熱源110及びヒートシンク120を含む。熱源110は第1の熱伝導性物体130と熱的に接触している。ヒートシンク120は第2の熱伝導性物体140と熱的に接触している。本明細書で使用されるときに、第1の要素と第2の要素の間の熱的接触は、第1の要素からの熱が、第1の要素が第2の要素と物理的に接触している面積を実質的に通って流れることを意味する。
【0014】
熱源110は熱のいかなる発生源であってもよい。いくつかの実施形態では、熱源110は、例えばマイクロプロセッサ、電力増幅器、又は大出力レーザなどの、通電されたとき熱を生成するように構成された電子デバイスである。他の実施形態では、熱源は、例えば煙突又は自動車の触媒コンバータのような廃熱発生源であることがある。装置100は、熱源110を冷却するように、熱源の温度を維持するように、又は廃熱から電力を再生するように構成されることがある。温度が維持される場合には、例えば能動帰還ループを含む制御装置が使用されることがある。さらに他の実施形態では、熱源110は、例えば、熱を放散しないが装置100によって所望の動作温度に維持されるセンサなどの受動デバイスであることがある。
【0015】
熱伝導性物体130は、フィンガ、例えばフィンガ135a、135b、135c(一括してフィンガ135と呼ばれる)を含む。熱伝導性物体140は、また、フィンガ、例えばフィンガ145a、145b、145c(一括してフィンガ145)を含む。熱伝導性物体130、140は、各々、3つのフィンガを持っているように示されているが、もっと少ない又はもっと多くのフィンガを持っている実施形態が考えられる。熱伝導性物体130、140は、図示のように同じ数のフィンガを持つことがあるが、等しくない数のフィンガを持つ実施形態は、この開示の範囲内である。フィンガ135、145は、下でより詳細に説明されるように、互いにかみ合っている。TEM150aはフィンガ135aと145aの間にある。同様に、TEM150b、150c、150d、150eは、図示のように残りのフィンガ135と145の間にある。(TEM150a、150b、150c、150d、150eは、一括してTEM150と呼ばれる。)従って、ヒートシンク150はヒートシンク120に対して垂直に積み重ねられている。スペース180はTEMか熱伝導性物体かのどちらによっても占められていない。
【0016】
熱伝導性物体によって形成される熱伝導経路とTEMによって形成される熱絶縁との組合せは、結果的に、コンパクトなスペース充填組立品になる。この熱伝導経路は、予め決められた三次元熱回路で熱を伝導して、別のやり方でこの組立品のフットプリント中に実現可能であるよりも大きなTEM表面積を、熱をポンピングするために又は廃熱を再生するために、実現するように選ぶことができる。熱源110を冷却する場合のために、この構成は、実質上、熱源110と熱的に接触している熱伝導性物体130の部分に単一蒸発器を設け、さらにTEM150と熱的に接触している熱伝導性物体140の部分に複数の凝縮器を設けている。熱が熱源110に伝達される場合には、状況は逆になり、実質上、ヒートシンク120と熱的に接触している熱伝導性物体140の部分が単一蒸発器として作用し、TEM150と熱的に接触している熱伝導性物体130の部分が複数の凝縮器として作用する。
【0017】
簡単に図2A及び2Bを参照すると、図示されているのは、互いに関連した熱伝導性物体210と熱伝導性物体220の2つの構成の透視図である。各熱伝導性物体210、220は、ただ説明の目的だけのために3つのフィンガを含む。図2Aでは、フィンガはまったく重なっていない。この場合、熱伝導性物体210のフィンガの組は熱伝導性物体220のフィンガの組と無係合である。図2Bでは、これらの物体210、220は、フィンガが少なくとも部分的に重なり合うように構成されている。この場合には、これらのフィンガは互いにかみ合っていると説明される。通常、図2Bに示されるように、これらの物体は、重複部分それゆえ一方の熱伝導性物体から他方の熱伝導性物体への熱の流れに利用可能な面積を最大限にするように構成される。図2Cは、重複部分が比較的小さい実施形態を平面図で示す。重複部分は小さいが、物体210のフィンガと物体220のフィンガは互いにかみ合っていると見なされる。この用語が本明細書で使用されるときに、どんなゼロでない重複も「互いにかみ合った」の意味の範囲内にある。重複の程度は2つの自由度を持つことに留意されたい。
【0018】
図1Aを参照すると、TEM150を通過する熱の流れは熱源110からヒートシンク120への正味の熱の流れ160をもたらす。熱源110からの少なくともいくらかの熱はTEM150a〜150eの各々を通って流れるので、熱源110からの熱が流れる実効面積はTEM150a〜150eのどれか1つの面積よりも大きく、TEMの効率は高められる。いくつかの実施形態では、TEM150は、各々、熱伝導性物体130から熱伝導性物体140に熱を運ぶように構成される。他の実施形態では、TEM150は、各々、熱伝導性物体140から熱伝導性物体130に熱を運ぶように構成される。例えば、設定された温度を維持するように熱源110を加熱することが望ましいことがある。下でさらに説明される他の実施形態では、TEM150は熱源110からの熱に応答して電力を生成するように構成される。
【0019】
熱伝導性物体130、140は、熱伝導性として一般に受け入れられる、通常は約200W/m−K以上の任意の材料から形成することができる。この物体は、熱伝導性物体130、140の表面に対して1以上の方向で熱伝導率を高めるように設計された層を含むことがある。例の材料には、例えば、アルミニウム、銅、銀及び金のような金属、Al/SiCのような複合材料、酸化ベリリウム(ベリリア)のようなセラミック、及びダイアモンド膜及び熱分解グラファイトのような炭素ベースの熱導体がある。いくつかの場合には、熱伝導率は、約400W/m−K以上である。下でさらに説明されるいくつかの場合には、熱伝導性物体130、140は、蒸気チャンバ又はヒートパイプを含むことがあり、この場合、実効熱伝導率は、少なくともいくつかの方向で約5000W/m−K以上であることがある。熱伝導性物体130、140は同じ又は異なる材料で形成されることがあり、同じ又は異なる熱伝導率特性を持っていることがあり、さらに、同じ又は異なる幾何学的形態のフィンガ135、145を持っていることがある。
【0020】
図1Bは、ヒートシンク120に対して水平方向に積み重ねられたTEM150a及び150bを備える例の装置170を示す。図示された場合には、熱伝導性物体130はただ1つのフィンガだけを持ち、熱伝導性物体140は2つのフィンガを持っている。この積層は、熱伝導性物体130及び/又は熱伝導性物体140のフィンガの数を増すことによって、水平方向に延長されることがある。いくつかの場合には、熱伝導性物体130及びTEM150a、150bは平面である。他の場合には、フィンガ145a、145bは、フィンガ135aを囲繞する単一環状構造の部分である。そのような場合には、TEM150a、150bは物理的に無係合であることがあり、又はフィンガ135aを囲繞する環状TEMの部分であることがある。環状TEMの詳細は、あたかもその全体が本明細書に複写されたかのように参照して本明細書に組み込まれる、Hodes等による米国特許出願番号第11/618,056号に開示されている。積層は、TEM150a、150bのサイズを大きくすることによって垂直方向に延長されることがある。
【0021】
装置100及び装置170では、所望の場合には、どのTEMでも随意に熱絶縁材料と取り替えることができる。例えば、1つ又はいくつかのTEM150を通過する特定の熱流束値を設計することが望ましいことがある。さらに、絶縁体を、随意に、空きスペース例えばスペース180中に配置して熱伝導性物体130、140の熱分離を高めることができる。絶縁材料の例には、発泡ポリスチレン及びエーロゲルがある。
【0022】
図3を参照すると、図示されているのは、2つの熱伝導性物体330、340を含む例の装置300である。熱伝導性物体330、340各々は、それぞれ、例えば2つのフィンガを持ち、さらに蒸気チャンバ360、365を含む。熱伝導性物体330、340のフィンガは互いにかみ合っている。熱源110は熱伝導性物体320と熱的に接触し、ヒートシンク120は熱伝導性物体340と熱的に接触している。TEM350a、350b、350c(一括してTEM350)は熱伝導性物体330のフィンガと熱伝導性物体340のフィンガの間にある。TEM350は、この図示された実施形態では、熱を熱伝導性物体330から熱伝導性物体340にポンピングするように構成されている。従って、熱伝導性物体330と接触している各TEM350の表面は、熱伝導性物体340と接触している表面よりも冷たい。後の議論のために、部分380の境界線が定められている。
【0023】
蒸気チャンバの動作は、例えば、‘478出願で説明されており、ここでは、TEM350が熱を熱伝導性物体330から熱伝導性物体340にポンピングするように構成されている場合について、熱伝導性物体330を例として使用して概要を述べる。蒸気チャンバ360は、必要な構造支持物を除いて、さもなければ空洞であるチャンバの1以上の内面を覆うウイック362を含む。ウイック362はアルコール又は水のような作用流体で濡れている。チャンバの外面が熱源と接触しているとき、接触領域の近傍の作用流体は蒸気チャンバ360の中へ蒸発し、加熱領域から遠くへ運ばれる。相変化は加熱領域から蒸発熱を運び去る。それから、蒸気はチャンバのより冷たい領域のウイック上で凝縮することがある。相変化はより冷たい領域で凝縮熱を解放する。このようにして、(例えば、被覆された内面に平行な)実効横方向熱伝導率は固体金属熱導体の熱伝導率の10X〜100Xである。5,000〜20,000W/m−Kに及ぶ熱伝導率が実現可能である。
【0024】
熱源110からの熱は熱伝導性物体330に流れる。熱源110のすぐ近くのウイック360中の作用流体は蒸発し、蒸気チャンバ360の蒸気チャンバ360空き体積の中へ入る。蒸気は蒸気チャンバ360を通ってTEM350a、350b、350cのすぐ近くの蒸気チャンバの部分まで拡散する。熱伝導性物体330に接触している各TEM350a、350b、350cの表面は熱伝導性物体340に接触している表面に比べて冷たいので、蒸気はTEM350a、350b、350cのすぐ近くのウイック362上で凝縮する。凝縮熱はTEM350a、350b、350cによって熱伝導性物体340にポンピングされる。
【0025】
熱伝導性物体340では、TEM350a、350b、350cによって運ばれた熱によって、ウイック370中の作用流体が蒸発するようになる。蒸気はチャンバ365を通って拡散し、ヒートシンク120のすぐ近くのウイック370上で凝縮する。ヒートシンク120は、例えば、空気又は液体によって冷却されて、凝縮熱を熱伝導性物体330から取り去ることができる。ヒートシンク120はTEM350よりも大きなフットプリントを持つことができる。所望なだけ大きな熱を放散する面積を実現するように、熱伝導性物体340及びヒートシンク120を構成することができるが、それはシステム設計で利用可能な面積によって制限される。
【0026】
図4を参照すると、明瞭化のために、装置300の部分380がより詳細に分解組立図で示されている。TEM350bの構造上の特徴が、また、議論の目的のために示されている。当業者はTEM構成をよく知っている。次の説明は、例示であり、TEMをどんな特定の構成にも限定する意図でない。TEM350bは、導体430によって直列の態様で接続されたn型ペレット410とp型ペレット420を含む。絶縁層440は、熱伝導性物体330のフィンガ432及び熱伝導性物体340のフィンガ434から導体430を電気的に分離し、かつ基板として作用して機械的支持を行うことができる。あらゆる現存の又は将来開発される材料及びTEMの組立技術もこの開示の範囲内である。
【0027】
TEMのサイズは、熱い側と冷たい側の熱膨張差のために、例えば一辺が約5cmなどの最大に限定されることがある。本明細書で説明される例の実施形態では、使用されるTEMの種類に許される最大よりも大きな寸法のTEMを設計が必要とするとき、適用可能な最大よりも小さな寸法のいくつかのTEMが使用されることがある。そのような実施形態では、複数のTEMの各々は、例えば熱伝導性物体330と熱伝導性物体340の両方と熱的に接触している。
【0028】
電流Iが、例えば、TEM350bの上主表面450を冷却し、かつ対向する下主表面460を温める熱勾配382を生成するように、TEM350bは構成される。これらの主表面は、TEM350bが動作しているとき運ばれる熱が通過する表面である。n型ペレット410及びp型ペレット420は、比較的小さな熱伝導率、例えば10〜20W/m−Kを持っている。従って、TEM350bは熱絶縁体として作用し、これを通過する熱流束は電流Iによって変えることができる。
【0029】
例の実施形態では、一方又は両方の熱伝導性物体330、340は、ただ一つの一体化構造を形成するようにTEM350bに接合される。言い換えれば、熱伝導性物体330は、例えば、ペレット410、420及び導体430の基板として作用する。そのような実施形態では、導体430の蒸気チャンバからの電気的分離は、例えば、薄い重合体層によって実現されることがある。蒸気チャンバとTEMの一体化についてのさらなる詳細は、あたかもその全体が本明細書に複写されたかのように参照して本明細書に組み込まれるHodes等の米国特許出願番号第12/128,478号に与えられている。
【0030】
装置300では、例えば上主表面450はフィンガ432の下表面470と熱的に接触される。同様に、下主表面460は、フィンガ434の上表面480と熱的に接触される。随意に、例えば熱グリースのような熱伝導助剤がTEM350bとフィンガ432、434の間に使用されることがある。
【0031】
図5を参照すると、TEM510a、510b、510c(一括して510)が、熱源520によって出力された熱に応答して電力を生成するように構成されている例の装置500が示されている。フィンガ530a、530bの部分は、明瞭化のために省略されている。この例の実施形態では、3つのTEMが使用されているが、例えば、一部であるフィンガ530a、530bを持つ物体の利用可能な垂直高さ及び有限な熱伝導率に従って、もっと多くのTEMが使用されることがある。熱源520からの熱は、3つのTEM510の間に分散されるので、各TEM510a、510b、510cは、より少ないTEM例えば1つのTEMが使用される場合にそうであるよりも少ない熱流束で動作する。より少ない熱流束を持つTEMの冷却効率向上と同様なやり方で、電力を生成するように構成されたTEM510は、また、より少ない熱流束でより効率的に動作する。従って、より少ないTEMが使用された場合に比べて、熱源520から利用可能なパワーのより大きな部分が電力に変換される。さらに、熱流束が減少するとき、比較的より多くの熱が、TEMを通してポンピングされるのではなく、有用な形態、例えば電力に変換される。
【0032】
発電の実施形態では、各TEM510a、510b、510cを通過する熱流束がより少ないので、TEMの2つの側の間の温度差はより大きな流束の場合に比べて減少する。従って、例えば装置500によって冷却される電気部品は、より大きな熱流束を持つ単一TEMが電力を発生するために使用される場合よりも低い温度で動作する可能性がある。言い換えれば、いくつかのTEMを通過する電気部品からの同じ全熱流束に関して、装置500は、熱流束をより多くのペレット全体に広げることによって、電気部品がより低い温度で動作できるようにする。この態様は、高温動作のために部品の寿命を縮める危険を冒すことなしに別の方法で実現可能であるよりも、電気部品によって放散される熱のより大きな部分を、電力を生成するために利用できるようにする。この態様は、熱パワー再生利用における現在の最新技術とは対照的であり、最新技術では、TEMの熱絶縁特性が原因で、通常は廃熱の比較的小さな部分が電気部品から再生されることがある。
【0033】
TEM510は、例えば負荷Rに電気的に直列に接続されて、IRワットの電力を生成することができる。前に説明されたように、熱源520は電気部品又は熱排出用ダクトであることがある。取り出された電力は、任意の所望の目的のために使用することができる。本明細書の様々な実施形態で説明されるようにTEM510を構成することで、利用可能な廃熱のより大きな部分を有用な電力に変換することが可能になる。図示されない他の実施形態では、TEM510は電気的に並列に接続される。そのような実施形態では、再生電力は、図示された直列構成よりも大きな電流及び小さな電圧で生成される。
【0034】
図6Aは、熱伝導性物体600がいくつかのヒートパイプ610a、610b、610c(一括して、ヒートパイプ610)を含む例の実施形態を示す。ヒートパイプ610は、熱伝導ブロック620a、620b、620cの中へ挿入される。この例では3つのヒートパイプ610が使用されるが、全体的なシステム要求条件によって要求され、例えばヒートパイプ610及び熱伝導ブロック620の機械的強度によって制約されるように、任意の数が使用され得る。
【0035】
作用流体及び蒸気は各ヒートパイプ610a、610b、610c中を別々に循環する。実施形態のこの態様は、熱伝導ブロック620と熱的に接触しているTEMの異なる領域からの熱の流れを調整する手段を実現する。例えば、ヒートパイプ610bは、TEMの内部領域からの熱をそれの端部から取り除くために、ヒートパイプ610a、610cよりも高速度に熱を運ぶように構成されることがある。ヒートパイプ610bは、例えば、ヒートパイプ610a、610cと異なる直径で構成されることがある。
【0036】
図6Bは、熱伝導性物体650の例の実施形態を示す。この実施形態では、熱伝導ブロック660a、660b、660c(一括して、熱伝導ブロック660)は支持部材665で接合されている。支持部材665は熱伝導性物体650を機械的に支持するのに役立つことができる。支持部材665は熱伝導ブロック660と同じ材料又は異なる材料であることがある。実施形態では、支持部材665及び熱伝導ブロック660は高熱伝導率例えば200W/m−K以上である材料の一体構造である。
【0037】
図6Cは、熱源110、2箇の熱伝導性物体600、5箇のTEM675、及びヒートシンク120を含む装置670を示す。装置670は、前に説明された装置100と同様に動作すると思われる。
【0038】
最後に、図7を参照すると、方法700の流れ図が示されている。ステップ710で、第1の熱伝導性物体及び第2の熱伝導性物体が設けられる。一方の熱伝導性物体は、少なくとも1つのフィンガを持つように構成され、他方は複数のフィンガを持つように構成される。ステップ720で、第1の熱伝導性物体及び第2の伝導性物体は、一方の熱伝導性物体のフィンガが他方の熱伝導性物体のフィンガと互いにかみ合うように互いに関連して構成される。ステップ730で、複数のTEMは、各TEMの第1の主表面が第1の熱伝導性物体と熱的に接触し、かつ対向する第2の主表面が第2の熱伝導性物体と熱的に接触するように構成される。
【0039】
他の及びさらなる追加物、削除部分、代替物及び修正物が、本発明の範囲から逸脱することなしに、説明された実施形態に加えられる可能性があることを、本発明が関連する当業者は理解するであろう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7