(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1及び第2の容量回路の間に位置する前記第1の誘導素子の第1の側の第1の点と、前記第1及び第2の容量回路の間に位置する前記第1の誘導素子の他の側の第2の点と、の間に、電気的な接続を提供するように適合される誘導素子間接続部、をさらに備え、
前記第1の誘導素子の前記第1及び第2の点は、前記第1及び第2の容量回路の双方から実質的に等しい距離に位置する、
請求項1に記載の発振器。
前記第1及び第2の容量回路内の可変キャパシタンスの量は、前記第1及び第2の共振回路の同位相モード及び別位相モードの2つの共振周波数に関連する所望の周波数レンジに基づく、請求項5に記載の発振器。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、典型的な電圧制御発振器(VCO)を例示している。電圧制御発振器(VCO)は、チューニング電圧(Vtune)に従ってその出力周波数を変化させる、可変周波数発振回路である。周波数の可変のレンジは、その特有の目的に従って決定される。VCOは、外部装置から供給され得るチューニング電圧に従って決定される周波数で発振する出力信号を生成し得る。周波数シンセサイザにおける使用のケースでは、このチューニング電圧は、既に上で説明したような位相ロックループ(PLL)の位相検出器からの出力信号に基づき得る。
【0020】
図1において、VCO10は、誘導素子11及び容量回路12を備える。VCO10の誘導素子11及び容量素子12は、併せて共振回路を形成する。VCO10の容量回路12は、チューニング電圧端子(図示せず)及び出力端子(図示せず)と共に構成されてよく、当該チューニング電圧端子を通じてチューニング電圧が受け付けられるように構成され、VCO10からの出力が当該出力端子から出力されるように構成される。
【0021】
VCO10において、誘導素子11は、金属線ループ(metal trace loop)として作製され得る。誘導素子11の金属線ループは、1つ以上の巻き(turn)を含む。誘導素子11を電子回路内で使用するために、電子接続端子15が当該金属線ループに接続され得る。誘導素子11のインダクタ値は、例えば、金属線ループの長さ、サイズ及び形状などの物理的特性によって決定され得る。当該インダクタ値は、金属線ループの物理的なサイズをより小さく作製することによって縮小され得る。誘導素子11内で小さいインダクタ値が望ましい理由は、VCO10が特定の電圧レベルに制限されることが多く、電圧の許容量に制限を有し得る容量回路12の容量素子及び電子コンポーネントが破壊されないように、電圧の揺れを低く保つ必要があるためである。但し、金属線ループのサイズが小さ過ぎれば、誘導素子11のQ値が劣化し得る。これは、逆方向に流れる電流が互いに近くなって金属線ループの巻きをまたがる電磁的結合がより大きくなるためである。この金属線ループをまたがる電磁的結合又は逆行作用は、誘導素子11のインダクタンス値を減少させ得るが、その損失はやはり誘導素子11のQ値を劣化させ得るという帰結を導き得ることは変わらない。よって、改善されたノイズ性能を伴う発振器の実現に挑むにあたり、誘導素子11の金属線ループのサイズについての制約及び制限が存在する。
【0022】
容量回路12は、電子接続端子15を通じて、誘導素子11と接続される。よって、VCO10は、並列に結合される誘導素子11及び容量回路12からなる共振回路の共振周波数で発振するように構成される。容量回路12の電子接続端子15からの反対側において、誘導素子11の仮想接地点14にて仮想的な接地を配置することができる。仮想接地点14は、ここでは、DC供給電圧(VCC)を受け付けるようにも構成され得る。容量回路12は、標準的には、例えば、チューニング電圧に従って共振回路の共振周波数をシフトさせるための可変キャパシタ(バラクタ)、並びに、VCO10内の発振を確立し及び維持するように構成される電子コンポーネントの構成、などの1つ又は複数の容量素子を含む。容量回路12の電子コンポーネントの構成は、例えば、負性抵抗コンポーネントを生成するように構成されるNPNトランジスタの十字に結合される差動ペア
といった容量回路12内のNPNトランジスタから電流Iを引き出すように構成される電流源1
3を含み得る。
【0023】
図2は、
図1に例示したVCO10の概略的な電子回路表現を示している。ここでは、誘導素子11はインダクタLによって表現され、容量回路12は可変キャパシタCによって表現されている。仮想接地点14もまた示されている。発振は共振回路、即ち
図2のLC回路内で確立されるため、電流は、可変キャパシタCの第1の側から第1のインダクタLを通じて仮想接地点14に向けて、及び仮想接地点14から第2のインダクタLを通じて可変キャパシタCの第2の側に向けて流れる。これは、
図2において実線で描かれた矢印により例示されている。そして、共振回路の固有の性質によって電流の方向を振動させることができ、それにより、電流は、可変キャパシタCの第2の側から第2のインダクタLを通じて仮想接地点14に向けて、及び仮想接地点14から第1のインダクタLを通じて可変キャパシタCの第1の側に向けて流れ得る。これは、
図2において破線の矢印により例示されている。よって、共振回路は、仮想接地点14の周辺にて、その共振周波数で前後に振動する(共振する)ことにより、電気的なエネルギーを保存することができる。
図2のLC回路の共振周波数f
Rは、式(1)に従って決定される。
【0025】
よって、可変キャパシタCの容量を変化させることにより、共振周波数f
Rは変化し得る。上述したように、VCO10は、共振回路のキャパシタンスを変化させるために受け付けられるチューニング電圧に反応する可変キャパシタ(バラクタ)を使用して、受け付けた当該チューニング電圧に従って共振回路の共振周波数f
Rをシフトさせ得る。
【0026】
しかしながら、上述したVCO10の実装に付随する欠点がある。第1に、VCO10の発振器出力の信号対雑音比は、集積回路(IC)上で実装される場合に、ある通信ネットワークアプリケーションの性能要件を充足しない。その要件は、例えば、移動体無線基地局アプリケーション又は同等のネットワーク装置若しくはノードにおける信号の所望の信号対雑音比などである。これは、集積回路(IC)上でのVCO10の実装が、個別電子コンポーネントを用いた実装よりも、誘導素子11及び容量回路12において、より高い損失及び劣化したQ値をもたらし得るためである。特定の周波数での発振を実現し、VCO10内で生じ得る損失を克服するためには、VCO10へより多くのエネルギーが入力される必要がある。しかし、これは容量回路12の電圧の制限を超える結果となり得ることから、そうした実装は実行可能ではない。
【0027】
この課題は、既に言及したように、通常の個別の電子コンポーネント、即ち抵抗、キャパシタ、インダクタなどを用いてVCO10を設計することにより解決され得る。しかしながら、個別の電子コンポーネントは、設定値を有し、よって、良好な性能を提供するために、設計される周波数帯についてVCO10を最適化するように選択されなければならない。さらに、VCO10が特定の狭い周波数帯に制限されることになる。これでは、VCO10の周波数帯の変更のために個別の電子コンポーネントの全くの再設計及び交換が必要となることから、あまり柔軟な解決策を提供しない。また、個別の電子コンポーネントを用いた電子回路の設計(又は再設計)、ハンドリング及び製造が高価なプロセスであることから、この解決策のコスト効率はあまり高くない。さらに、それは、個別の電子コンポーネントが集積回路上に実装されるコンポーネントよりも多くの物理的空間を要することから、小型化の観点からもあまり有益な解決策ではない。
【0028】
本発明の様々な実施形態の特徴によれば、これら課題を、実質的に同じ周波数にチューニングされる2つの容量回路に互いに反対側から同じ誘導素子へ同時に給電させることにより解決することができる。これにより、より低いインダクタンスを経験し得る2つの共振回路を生み出すことができ、誘導素子のQ値の劣化をもたらし得る改変を行う必要性なく、2つの回路へ供給される電流量が増加され得ることを意味する。そして、これにより、発振器の位相ノイズ性能をより大きく改善することが可能となり得る。利点をもたらす本発明の例示的な実施形態は、
図3〜
図8を参照しながら以下により詳細に説明される。また、以下の実施形態では電圧制御発振器(VCO)のみが言及されるが、同様の利点を達成するために同等の特徴を他の発振器が使用してもよいことが理解されるであろうという点にも留意すべきである。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態に係る発振器30を例示している。発振器30は、誘導素子31、第1の容量回路32A及び第2の容量回路32Bを備える。誘導素子31は、金属線ループとして作製され、1つ以上の巻きを含み得る。誘導素子31並びに第1及び第2の容量回路32A、32Bは、電子接続端子35A、35Bを含み、それらは、誘導素子31の金属線ループを第1及び第2の容量回路32A、32Bとそれぞれ電気的に接続するように構成され得る。電子接続端子35Bは、電子接続端子35Aが第1の容量回路32Aを金属線ループと接続するように構成される場所から誘導素子31上の実質的に反対側で、第2の容量回路32Bを当該金属線ループと接続するように構成される。そして、第1の容量回路32Aによって誘導素子31と共に第1の共振回路が形成され、誘導素子31及び第2の容量回路32Bによって第2の共振回路が形成される。
【0030】
なお、誘導素子31は、
図1及び
図2を参照しながら説明したVCO10の誘導素子11と同等の物理的サイズと同等のQ値とを有してよい。また、第1の容量回路32A及び第2の容量回路32Bは、共に、
図1及び
図2を参照しながら説明したVCO10の容量回路12と同一又は実質的に同様であってよい。発振器30の第1及び第2の容量回路32A、32Bは、チューニング電圧を受け付けるように構成され得るチューニング電圧端子(図示せず)、並びに発振器30の第1及び第2の共振回路の共振周波数で出力信号が出力され得る出力端子(図示せず)をも含み得る。
【0031】
第1及び第2の容量回路32A、32Bは、共に、反対側から、誘導素子31の同じ金属線ループへ給電するように構成される。当該第1及び第2の共振回路、即ち容量回路32Aを伴う誘導素子31及び容量回路32Bを伴う誘導素子31は、それぞれ、ここでは、実質的に同じ周波数にチューニングされ、即ち、同じ共振周波数にマッチングされる。また、マッチングされた第1及び第2の容量回路32A、32Bは、互いに別位相(out-of-phase)で、誘導素子31の金属線ループに給電するように、位相ロックされる。別位相との用語は、第1及び第2の容量回路32A、32Bが、それぞれ、同じタイミングで誘導素子31の反対側へ電流を供給し、同時に誘導素子の他の側への給電を振動させる(swing to feed)ように構成されるというように定義され得る。また、誘導素子31の金属線ループの実質的に互いに反対側であって、第1及び第2の容量回路32A、32Bの電子接続端子35A、35Bの双方から実質的に等しい距離にある誘導素子31の仮想接地点34に、仮想的な接地が配置され得る。仮想接地点34は、ここでは、DC供給電力(VCC)を受け付けるように構成され得る。以下のように、本実施形態の利点は、
図1〜
図2のVCO10を基準として、最もよく例示され説明される。
【0032】
以下で言及される通例として図示される例において、明瞭さのために、
図1〜
図2のVCO10は、シングルエンド型(single-ended)のインダクタンスL=200pHを有するものと仮定する。シングルエンド型のインダクタンスとの用語は、ここでは、容量回路12から見た誘導素子11のインダクタンス、即ち仮想接地点14と容量回路12を誘導素子11に接続する電子接続端子15との間の誘導素子11の一方の側のインダクタンス(即ち、誘導素子11の金属線ループの半分のインダクタンス)をいう。さらに、この通例として図示される例において発振器30の誘導素子31は、ここでは、例示の目的のために、
図1〜
図2のVCO10の誘導素子11と同じ物理的サイズ及び同じQ値を有するものと仮定する。
【0033】
発振器30のマッチングされる第1及び第2の容量回路32A、32Bは、上述したように、別位相で発振するように設定される。第1及び第2の容量回路32A、32Bは、
図1のVCO10内の誘導素子11の容量回路12と比較して、シングルエンド型となるような、誘導素子31のインダクタンスの半分のみを見込むことができる(即ち、
図4では、通例として図示される例を基準として、L
A={L/2}=100pHである)。シングルエンド型のインダクタンスは、ここでは、仮想接地点34と容量回路32A、32Bを誘導素子31に接続する電子接続端子35A、35Bとの間の誘導素子31の一方の側のインダクタンス(即ち、誘導素子31の金属線ループの4分の1のインダクタンス)である。これは、電圧を増加させる必要なく、よって電圧の制限を超えることにより第1及び第2の容量回路32A、32Bの容量素子と電子コンポーネントとを破壊し又は燃焼させる潜在的なリスクを増加させる必要なく、
図1〜
図2のVCO10内の電流源13と比較して、電流源33A、33Bが第1及び第2の容量回路32A、32Bの各々から(即ち、第1及び第2の共振回路から)2倍大きい電流(2×I)を引き出すように構成され得ることを意味する。
【0034】
結果として、
図1〜
図2のVCO10に対して2倍高い電流(2×I)を引き出し得る2つの容量回路32A、32Bが存在するため、発振器30から引き出され得る電流の総量は
図1〜
図2のVCO10に対して4倍、即ち4×Iとなる。ここでは、
図3の発振器30の誘導素子31は
図1〜
図2のVCO10内の誘導素子11と同じであり、
図3の発振器30の誘導素子31の金属線ループの物理的なサイズは
図1〜
図2のVCO10内の誘導素子と同じであるものとする。これは、誘導素子31もまたVCO10内の誘導素子11と同じQ値をも有し得ることを意味する。よって、誘導素子31のQ値が劣化することなく、又は第1及び第2の容量回路32A、32Bの電圧の制限を超過することなく、
図1〜
図2のVCO10へ給電されるよりも4倍多い電力がここで
図3の発振器30へ給電されることになる。これは、
図1〜
図2のVCO10と比較して、発振器30による出力信号内の位相ノイズを6dB改善することにつながる。なお、第1及び第2の容量回路32A、32Bが正確に同じ周波数にチューニングされると、発振器30において正確に6dBの位相ノイズの改善が達成される。ここで、同じ周波数に実質的にチューニングされる、との用語は、第1及び第2の容量回路32A、32Bが同じ周波数にチューニングされなければならないとしても、実際に第1及び第2の容量回路32A、32Bがチューニングされる周波数は全く同じにはならない可能性があることを表すために用いられる。第1及び第2の容量回路32A、32Bがチューニングされる周波数が全く同じではない場合、発振器30において達成される位相ノイズの改善は、正確に6dBではないであろう。
【0035】
図4は、
図3を参照して説明した本発明の実施形態に係る発振器30の等価電子回路表現を示している。ここでは、誘導素子31はインダクタL
Aにより表現され、第1及び第2の容量回路32A、32Bは可変キャパシタCにより表現される。仮想接地点34もまた示されている。インダクタL
Aのインダクタ値は、
図2に示したインダクタLのインダクタ値の半分とすることができる(即ち、通例としての図示される例を基準として、L
A=L/2=100pHである)。
【0036】
図4における実線及び破線の矢印は、共振回路に電流が供給された場合の発振器30内の電流の流れの方向を例示している。第1の電流は第1の可変キャパシタCからインダクタL
Aの1つを介して電子回路の右側を流れ、同時に第2の電流は第2の可変キャパシタCからインダクタL
Aの1つを介して電子回路の左側を流れ得る。それら電流は、仮想接地点34を通過し、第2のインダクタL
Aを介して反対側の可変キャパシタCに向けて流れ得る。これは、
図4において実線で描かれた矢印により例示されている。そして、共振回路の固有の性質によって電流の方向を振動させることができ、それにより、電流は、第2のインダクタL
Aを介し、仮想接地点34を通過し、及び第1のインダクタL
Aを介して、可変キャパシタCへ逆方向に流れ戻り得る。これは、
図4において破線の矢印により例示されている。このように、発振器30の等価電子回路表現は、仮想接地点34の周辺にて、その共振周波数でどのように前後に振動する(発振する)かを例示しており、可変キャパシタCの別位相での発振、即ち
図3の第1及び第2の容量回路32A、32Bが発振器30内で同時に電子回路の反対側に給電することも示している。
【0037】
図5は、本発明の他の実施形態に係る発振器50を例示している。発振器50は、
図3〜
図4を参照しながら説明した実施形態の発振器30と実質的に同じ要素を備えてよい。但し、発振器50は、追加的に、誘導素子間接続部(interconnection)51、及び同位相仮想接地点52を備える。誘導素子間接続部51は、誘導素子31の金属線ループの第1の側の第1の点と、誘導素子31の金属線ループの他の側の第2の点との間に位置する。当該第1及び第2の点は、誘導素子31上の、第1及び第2の容量回路32A、32Bの電子接続端子35A、35Bの間に位置する。さらに、第1及び第2の点は、第1の容量回路32Aの電子接続端子35A及び第2の容量回路32Bの電子接続端子35Bの双方から実質的に等しい距離に位置する。誘導素子間接続部51は、誘導素子31の金属線ループをまたいて電気的な接続を提供するように構成される。本実施形態において、ここでは、同位相仮想接地点52は、前の実施形態のような仮想接地点34の代わりに、DC供給電圧(VCC)を受け付けるように構成され、但し、発振器30が以下に説明する別位相モードで動作する場合には、仮想接地点34がDC供給電圧(VCC)を受け付けるように構成され得る
【0038】
誘導素子間接続部51は、発振器50に、デュアルモードの機能性を提供する。発振器30のこのデュアルモードの機能性は、発振器50が同位相モード又は別位相モードという2つの安定発振モードのいずれかで動作することを可能とする。第1及び第2の容量回路32A、32Bが同位相モードで動作するように設定される場合、第1及び第2の容量回路32A、32Bは、誘導素子31の同じ側に同時に電流を給電するように構成され、そして誘導素子31の他の側に向けて同時に給電を振動させ、よって、発振器50において同位相の発振を実現する。一方、第1及び第2の容量回路32A、32Bが別位相モードで動作するように設定される場合、第1及び第2の容量回路32A、32Bは、誘導素子31の反対側に同時に電流を給電するように構成され、そして誘導素子31のそれぞれ別の側に同時に給電を振動させる。
【0039】
これら2つの安定発振モードは、2つの異なる共振周波数を有することができ、それら周波数は、別々の周波数レンジに関連付けられ得る。よって、前の実施形態において言及した利点に加えて、発振器50は、より広い合計の周波数帯をカバーすることができ、及び/又は、例えば
図1〜
図2のVCOなどの他の発振器と比較して、同じ周波数レンジをカバーしつつも第1及び第2の容量回路32A、32Bにおいて必要とされる可変キャパシタンスの量を発振器50において低減させることを可能とする。
【0040】
第1の例によれば、発振器50のマッチングされた第1及び第2の容量回路32A、32Bは、別位相モードで発振するように設定され得る。この別位相モードにおいて、発振器50の第1及び第2の共振回路は、前の実施形態において説明したのと同じように動作し得る。第1及び第2の容量回路32A、32Bは、
図1〜
図2のVCO10内の誘導素子11の容量回路12と比較して、シングルエンド型となるような、誘導素子31のインダクタンスの半分のみを見込むことができる(例えば、
図6では、図示される例を基準として、L
B=L
A={L/2}=100pHである)。シングルエンド型のインダクタンスは、ここでも、仮想接地点34と容量回路32A、32Bを誘導素子31に接続する電子接続端子35A、35Bとの間の誘導素子31の一方の側のインダクタンス(即ち、誘導素子31の金属線ループの4分の1のインダクタンス)である。この別位相モードにおいて、誘導素子間接続部51は第1及び第2の共振回路には利用されず、仮想接地点34及び同位相仮想接地点52の双方が仮想的な接地(virtual ground)であると見なされてよい。
【0041】
第2の例によれば、発振器50のマッチングされた第1及び第2の容量回路32A、32Bは、同位相モードで発振するように設定され得る。この同位相モードにおいて、第1及び第2の容量回路32A、32Bは、上述したように同位相で発振することができる。第1及び第2の容量回路32A、32Bは、第1及び第2の容量回路32A、32Bが別位相で発振するように設定される第1の例と比較して、シングルエンド型となるような、より高いインダクタンスを見込むことができる。これは、この同位相モードにおいて、シングルエンド型のインダクタンスは、容量回路32A、32Bを誘導素子31に接続する電子接続端子35A、35Bと仮想接地点34との間の誘導素子の一方の側のインダクタンス(即ち、誘導素子31の金属線ループの4分の1のインダクタンス、例えば
図6では、通例として図示される例を基準として、L
B=L
A={L/2}=100pH)のみではなく、仮想接地点34と誘導素子間接続部51の中央に位置する同位相仮想接地点52との間の誘導素子間接続部52のインダクタンス(例えば、
図6におけるL
C)の2倍でもある。後者の理由は、第1及び第2の容量回路32A、32Bが同じ方向から誘導素子間接続部51に同時に給電するためである。
【0042】
上述した第1及び第2の例の双方において、第1及び第2の共振回路は、同位相モード及び別位相モードの2つの共振周波数のうちより低い方で発振することを選ぶであろう。これは、通常は同位相モードである。同位相モード及び別位相モードの共振周波数について周波数がより分離されるほど、第1及び第2の共振回路はより低い共振周波数を一層選択しがちとなる。同位相モード及び別位相モードの共振周波数が近い形で分離されている場合には、第1及び第2の共振回路は、実質的に同程度に2つのモードの任意の方で発振し易くなるであろう。よって、発振器50を、同位相又は別位相モードのいずれでも発振するように動的に制御することができる。第1及び第2の容量回路32A、32Bに同位相で発振させる際に第1及び第2の共振回路32A、32Bに感知されるインダクタンスは、第1及び第2の容量回路32A、32Bに別位相で発振させる際に第1及び第2の共振回路32A、32Bに感知されるインダクタンスよりも高い。
【0043】
図6は、
図5に例示した本発明の実施形態に係る発振器50の等価電子回路表現を示している。ここでは、誘導素子31はインダクタL
Bによって表現され、第1及び第2の容量回路32A、32Bは可変キャパシタCによって表現される。ここでは、誘導素子間接続部51は、インダクタL
Cによって表現される。同位相仮想接地点52もまた示されている。インダクタL
Bのインダクタ値は、
図2に示したインダクタLのインダクタ値の半分、即ちL
B=L
A=L/2であり得る。インダクタL
Cのインダクタ値は、実装固有であり、インダクタL
Bとの関係において選択されてよく、通例として図示される例を基準とすると、L
C≒L
Bである。
【0044】
別位相モードでは、一般的に、誘導素子間接続部51がこのモードにおいて利用されないため、インダクタL
Cを通って電流は流れず、よって、可変キャパシタCにより見込まれるシングルエンド型のインダクタンスはL
Bのみ、即ち、通例として図示される例を基準として、(
図4におけるL
Aのように)L
B=100pFであり得る。
図6において、実線及び破線で描かれた矢印は、別位相モードではなく、以下に説明される同位相モードにおける電流の方向を表している。別位相モードでは、共振回路に電流が供給される際の発振器50内の電流の方向は
図4に関連して既に説明したものと同一であってよく、
図4において実線及び破線の矢印により示されている。
【0045】
一方、同位相モードにおいて、電流は、双方の可変キャパシタCから電子回路の右側のインダクタL
Bを通り、さらに仮想接地点52を通過しながらインダクタL
Cを通り、電子回路の左側のインダクタL
Bを通ってそれぞれの可変キャパシタCに向けて流れ戻る。これは、
図6において実線で描かれた矢印により例示されている。共振回路の固有の性質によって電流の方向を振動させることができ、それにより、電流は、可変キャパシタCから電子回路の左側のインダクタL
Bを通り、仮想接地点52を通過しながらインダクタL
Cを同時に通り、電子回路の右側のインダクタL
Bを通ってそれぞれの可変キャパシタCに向けて流れ戻る。これは、
図6において破線の矢印により例示されている。これが可変キャパシタCの同位相の発振を例示しており、即ち、
図5の第1及び第2の容量回路32A、32Bは発振器50内で同時に電子回路に同じ側から給電する。可変キャパシタCにより見込まれるシングルエンド型のインダクタンスは、L
B+2L
Cとなり得る。そして、通例として図示される例を基準とすると、可変キャパシタCにより見込まれるシングルエンド型のインダクタンスは、L
B+2L
C=L
B+2・0.4・L
B=1.8・L
B=180pFとなり得る。
【0046】
図7は、本発明のさらなる実施形態に係る発振器70を例示している。発振器70は、
図3〜
図4を参照しながら説明した実施形態における発振器30、又は
図5〜
図6を参照しながら説明した実施形態における発振器50と実質的に同じ要素を備え得る。但し、追加的に、発振器70は、第2及び第3の誘導素子71A,71Bを備える。第2及び第3の誘導素子71A,71Bは、少なくとも1つの巻きを伴う金属線ループを備え得る。第2の誘導素子71Aは、第2の誘導素子71Aが第1の誘導素子31と並列に連結されるように、電子接続端子73Aを通じて第1の容量回路32Aに接続され得る。また、第3の誘導素子71Bは、第3の誘導素子71Bが第1の誘導素子31と並列に連結されるように、電子接続端子73Bを通じて第2の容量回路32Bに接続され得る。また、第1及び第2の容量回路32A、32Bの電子接続端子73A、73Bからそれぞれ反対側の第2及び第3の誘導素子71A、71Bの各々の仮想接地点72A、72Bに、仮想的な接地が配置され得る。本実施形態では、同位相仮想接地点52及び仮想接地点72A、72Bは、DC供給電圧(VCC)を受け付けるように構成され得るが、仮想接地点34は、発振器70が以下に説明するように別位相モードで動作する場合にもDC供給電圧を受け付けるように構成され得る。
【0047】
上述したように、第2及び第3の誘導素子71A、71Bを有することにより、発振器70内の第1及び第2の共振回路32A、32Bにより経験されるインダクタンスをさらに低減することができる。よって、前の実施形態において言及した利点に加えて、第1及び第2の共振回路に一層高い電流を供給し得ることになり、結果として、発振器70内の容量回路32A、32Bの電圧制限を超過することなく、ノイズ性能をさらに改善し得る。
【0048】
図8は、
図7に例示した発明の実施形態に係る発振器70の等価電子回路表現を示している。ここでは、誘導素子31はインダクタL
Dによって表現され、第1及び第2の容量回路32A、32Bは可変キャパシタCによって表現される。ここでは、誘導素子間接続部51は、インダクタL
Eによって表現され、第2及び第3の誘導素子71A、71BはインダクタL
Fによって表現される。同位相仮想接地点52並びに第2及び第3の誘導素子71A、71Bについての仮想接地点72A、72Bもまた示されている。インダクタL
Dのインダクタ値は、
図2に示したインダクタLのインダクタ値の半分、即ちL
D=L
B=L
A=L/2であり得る。インダクタL
E及びインダクタL
Fのインダクタ値は、実装固有であり、インダクタL
Dとの関係において選択されてよい。通例として図示される例を基準とすると、インダクタL
Eのインダクタ値はL
E≒0.4L
D(
図6におけるL
Cなど)として選択されてよく、インダクタL
Fのインダクタ値はL
F≒1.4L
Dとして選択されてよい。
【0049】
別位相モードでは、一般的に、誘導素子間接続部51がこのモードにおいて利用されず、よってそれは仮想的な接地とみなされ得るため、インダクタL
Eを通って電流は流れないであろう。共振回路に電力が供給される際の発振器70における電流の方向は、
図4に関連して既に説明したものと同一であってよく、
図4において実線及び破線の矢印により示されている。但し、別位相モードにおいて、電流は、第1の可変キャパシタCから電子回路の右側のインダクタL
Fの1つを通って追加的に流れつつ、第2の可変キャパシタCから電子回路の左側のインダクタL
Fの1つを通って同時に流れることができる。電流は、それぞれ仮想接地点72A、72Bを通過し、第2のインダクタL
Fを通って可変キャパシタCに向けて流れ得る。共振回路の固有の性質によって電流の方向を振動させることができ、それにより、電流は、逆方向に第2のインダクタL
Fを通って仮想接地点72A、72Bをそれぞれ通過し、電子回路のそれぞれ右側及び左側のインダクタL
Fを通って可変キャパシタCへ流れ戻り得る。これが可変キャパシタCの別位相の発振を例示しており、即ち、
図7の第1及び第2の容量回路32A、32Bは発振器70内で同時に電子回路の逆の側に給電する。可変キャパシタCにより見込まれるシングルエンド型のインダクタンスは、L
D||L
F、即ちL
Fと並列に連結されるL
Dとなり得る。通例として図示される例を基準とすると、可変キャパシタCにより見込まれるシングルエンド型のインダクタンスは、L
D||L
F=L
D||1.4L
D=100||140≒58pHとなる。
【0050】
同位相モードにおいて、共振回路に電力が供給される際の発振器70における電流の方向は、
図6に関連して既に同位相モードにより説明したものと同一であってよく、
図6において実線及び破線の矢印により示されている。電流は、追加的に、可変キャパシタCから電子回路の右側の第1のインダクタL
Fを通り、それぞれ仮想接地点72A、72Bに向けて同時に流れ、電子回路の左側の第2のインダクタL
Fを通って可変キャパシタCに向けて流れ戻り得る。共振回路の固有の性質によって電流の方向を振動させることができ、電流は、電子回路の左側の第2のインダクタL
Fを通って仮想接地点72A、72Bをそれぞれ通過し、第1のインダクタL
Fを通って可変キャパシタCへ流れ戻り得る。これが可変キャパシタCの同位相の発振を例示しており、即ち、
図7の第1及び第2の容量回路32A、32Bは発振器70内で同時に電子回路の同じ側に給電する。可変キャパシタCにより見込まれるシングルエンド型のインダクタンスは、(L
D+2L
E)||L
F、即ちL
Fと並列に連結される(L
D+2L
E)となり得る。通例として図示される例を基準とすると、可変キャパシタCにより見込まれるシングルエンド型のインダクタンスは、(L
D+2L
E)||L
F=(L
D+2・0.4・L
D)||1.4L
D=(L
D+0.8・L
D)||1.4L
D=1.8L
D||1.4L
D=180||140≒79pHとなる。
【0051】
上の説明は、本発明を実施するために現時点で予期される最良の形態についてのものである。当該説明は、限定的な意味で受け取られることを意図しておらず、ただ本発明の一般的な原理を説明する目的のためになされている。本発明の範囲は、公表される請求項を参照することによってのみ確定されるべきである。