(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記充電装置(5)は、充電中、その充電装置(5)に組み合わされる蓄電池ブロック(Eti)および前記バッテリ(1)の電圧レベルとは無関係に、不連続通電モードで動作するように構成され、この不連続通電モードにおいて、インダクタンス(L1i)からの電流が、第1および第2のスイッチ(SW1i、SW2i)のための制御信号の各期間の前にキャンセルされることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバッテリのための充電均等化システム。
前記あらかじめ定められた通電期間(t1)は、各蓄電池ブロック(Eti)に対する充電装置(5)が前記不連続通電モードで動作するように計算されていることを特徴とする、請求項4に記載のバッテリのための充電均等化システム。
前記制御装置(3)は、充電されることになる蓄電池ブロック(Eti)の端子に接続された充電装置(5)を、時間をずらしながら順次に制御するように構成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のバッテリのための充電均等化システム。
前記バッテリ(1)は、少なくとも1つの基本モジュール(9)を有しており、該少なくとも1つの基本モジュール(9)は、直列接続された複数の蓄電池ブロック(Eti)を有しており、前記充電均等化システムは、さらに、該少なくとも1つの基本モジュール(9)の端子に接続される、さらなる充電装置(5)を備え、そこで、第1のダイオード(D1i)が、前記基本モジュール(9)のアノードを介して、負極に接続され、カソードを介して、インダクタンス(L1i)の2端のうちの1つに接続され、前記第2のダイオード(D2i)がカソードを介して、前記基本モジュール(9)の正極に接続され、アノードを介して、インダクタンス(L1i,L2i)の他端に接続され、
少なくとも1つの第1制御スイッチ(SW1i)及び少なくとも1つの第2制御スイッチ(SW2i)が、前記第1の制御スイッチ(SW1i)が蓄電池の負極(N)及び第2のダイオード(D2i)のアノードに接続され、前記第2制御スイッチ(SW2i)が、蓄電池(1)の正極(P)及び第1のダイオード(D1i)のカソードに接続されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のバッテリのための充電均等化システム。
前記制御装置(3)に電圧情報を伝達するように構成された、各蓄電池の電圧を測定するための装置を備えていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のバッテリのための充電均等化システム。
【背景技術】
【0002】
電気化学蓄電池は、数ボルト程度、より詳細には、リン酸鉄を主成分とするLiイオン蓄電池において、3.3V、コバルト酸化物を主成分とするLiイオン蓄電池において、4.2Vの公称電圧を有している。この電圧が、電力を供給されるシステムの要求に比して低すぎる場合には、いくつかの単位蓄電池が直列に配置される。さらに、利用可能な容量を増やして、より高い電流および電力を供給するために、直列に組み合わされた各単位蓄電池に、並列に接続された1つ以上の単位蓄電池を並列に配置することも可能である。したがって、並列に組み合わされた複数の単位蓄電池は、蓄電池ブロックを形成する。1つの蓄電池ブロックは、少なくとも1つの単位蓄電池から成っている。所望の電圧レベルを得るために、複数の蓄電池ブロックが直列に接続される。単位蓄電池の組み合わせは、組み合わされたバッテリと呼ばれる。
【0003】
蓄電池の充電および放電は、それぞれ、その蓄電池の端子間電圧の上昇および下降に反映される。蓄電池は、電気化学的プロセスによって定められる電圧レベルに達している場合に、充電状態または放電状態にあると考えられる。いくつかの蓄電池ブロックを用いている回路においては、各蓄電池ブロックを流れる電流は、すべて同じである。したがって、各蓄電池ブロックの充電レベルおよび放電レベルは、その蓄電池ブロックの単位蓄電池の固有の特性、すなわち電解質や、電極と電解質との間のコンタクトの固有容量、および直列および並列の内部抵抗に依存する。したがって、製造上や経年変化上の差異によって、蓄電池ブロック間に電圧差が発生する可能性がある。
【0004】
Liイオン蓄電池においては、閾値電圧と呼ばれる電圧より過度に高い電圧、または過度に低い電圧になると、Liイオン蓄電池が損傷したり、破損したりする場合がある。例えばコバルト酸化物を主成分とするLiイオン蓄電池の過充電によって、熱暴走が生じ、出火する場合がある。リン酸鉄を主成分とするLiイオン蓄電池については、過充電によって、電解質の分解がもたらされる。それによって、Liイオン蓄電池の寿命が短縮され、またLiイオン蓄電池が損傷する場合がある。電圧が例えば2V未満に達するような過放電が生じると、負極が銅から成る場合には、主として、負極の電流コレクタが酸化し、したがって、Liイオン蓄電池が劣化する。したがって、充電および放電の際には、安全性と信頼性の確保のために、各蓄電池ブロックの端子間電圧の監視が必要である。いわゆる監視装置を、各蓄電池ブロックに並列に配置することによって、この機能の遂行は可能になる。
【0005】
監視装置の機能は、1つの蓄電池ブロックの電圧が閾値電圧に達したときに、バッテリの充電や放電を停止するために、各蓄電池ブロックの充電状態および放電状態を追跡して、制御回路にその情報を伝達することである。しかしながら、いくつかの蓄電池ブロックが直列に配置されているバッテリでは、最も強く充電された蓄電池ブロックが、その閾値電圧に達したときに充電が停止されると、他の蓄電池ブロックは十分に充電されていない場合がある。逆に、最も強く放電した蓄電池ブロックが、その閾値電圧に達したときに放電が停止されると、他の蓄電池ブロックは十分に放電していない場合がある。したがって、全ての蓄電池ブロックの充電状態が最良になるわけではない。これは、走行距離や駆動時間に関して高い制約を有する電気式およびハイブリッド式の走行体、および組み込みシステムへの応用において大きな問題となる。この問題を克服するために、監視装置は、一般に、充電均等化装置と組み合わされる。
【0006】
充電均等化装置の機能は、直列に接続されている複数の蓄電池ブロックを、同一の充電状態および/または放電状態にすることによって、バッテリの充電状態、したがって、走行・航続距離を最適にすることである。2つのカテゴリーの充電均等化装置、すなわち、いわゆるエネルギー散逸に基づく充電均等化装置と、いわゆるエネルギー移動に基づく充電均等化装置とが存在する。
【0007】
エネルギー散逸に基づく充電均等化装置においては、閾値電圧に達した蓄電池ブロック(1つ以上の)の充電電流をそらすことによって、蓄電池ブロックの端子間電圧が一定にされる。一変形例として、閾値電圧に達した蓄電池ブロック(1つ以上の)を放電させることによって、蓄電池ブロックの端子間電圧が一定にされる。しかしながら、そのようなエネルギー散逸に基づく充電均等化装置には、バッテリの充電に必要なエネルギーよりも多くのエネルギーを消費するという大きな欠点が存在する。実際、まだ充電が完了していない最後の蓄電池(1つ以上の)の充電を完了させるために、多数の蓄電池を放電させるか、または多数の蓄電池の充電電流をそらす必要がある。したがって、散逸エネルギーは、充電の完了に必要なエネルギーよりはるかに大きくなる場合がある。さらに、過剰エネルギーは、熱として散逸する。それは、電気式およびハイブリッド式の走行体、および組み込みシステムへの応用における、できるだけコンパクトに集積化しなければならないという制約、および蓄電池の寿命を短くしないために、温度上昇を極力避けなければならないという制約と両立しない。
【0008】
エネルギー移動に基づく充電均等化装置においては、単位蓄電池が組み合わされたバッテリ全体または補助エネルギー網と、蓄電池ブロックとの間でエネルギー交換が行なわれる。
【0009】
例えば特許文献1は、多数の出力を有し、蓄電素子として結合インダクタンスを用いる「フライバック」構造を介して、補助エネルギー網から蓄電池ブロックにエネルギーを移動させることができる充電均等化装置を開示している。このフライバック構造は、この発明に専用の特殊な部品である。したがって、このような部品のコストは、それによって満たされる機能に比して法外に高い。
【0010】
さらに、特許文献2は、蓄電池ブロックから、バッテリ全体にエネルギーを移動させることができ、蓄電素子として単位蓄電池毎のインダクタンスを用いる充電均等化装置を開示している。しかしながら、この充電均等化装置では、バッテリ全体の充電を均等化するためのエネルギー移動が、電気式およびハイブリッド式の走行体、および組み込みシステムへの応用において最適に遂行されるようにはなされていない。実際、バッテリの充電終了は、最後の蓄電池ブロックの閾値電圧への到達によって決定される。バッテリの充電を完了させるために、エネルギーが1つ以上の蓄電池ブロックから取り出されて、蓄電池ブロックの全体に戻される。このとき、完全には充電されていない蓄電池ブロック(1つ以上の)が存在する場合に、取り出されたエネルギーが、エネルギーを必要としているそれらの蓄電池ブロック(1つ以上の)に優先的に移されることはなく、また、エネルギーを取り出された蓄電池ブロック(1つ以上の)に移されることもない。したがって、この充電均等化においては、エネルギーを移された蓄電池ブロックが、過度に高電圧まで充電されないように、充電の終了時に、蓄電池ブロック全体からエネルギーを取り出す必要がある。したがって、この充電均等化の遂行には、多数のコンバータの作動が必要であるため、大きな損失が伴う。さらに、既に充電を終えた単位蓄電池には、利用されない交流電流成分や直流電流成分が流れる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面において、実質的に同一の要素には、同じ符号を付してある。
【0019】
図1は、単位蓄電池が組み合わされたバッテリ1を示している。このバッテリ1は、直列に接続されたN個の蓄電池ブロック(符号Etiを付されている)から構成されている。各蓄電池ブロックEtiは、1個の単位蓄電池、または並列に接続された、いくつかの単位蓄電池A
ijから構成されている。ここで、添え字iは、蓄電池ブロックの番号を表わしており、
図1に示す例においては、1〜Nの範囲で変化する。また添え字jは、与えられた蓄電池ブロック中の各単位蓄電池の番号を表わしており、
図1に示す例においては、1〜Mの範囲で変化する。同一の蓄電池ブロックEti中の単位蓄電池A
ijの端子は、電気接点を介して互いに接続されており、それと同様に、各蓄電池ブロックEtiも、電気接点を介して、隣接する蓄電池ブロックEtiに接続されている。
【0020】
充電均等化システム
本発明は、直列に接続された、少なくとも2つの蓄電池ブロックEtiを有する、単位蓄電池が組み合わされたバッテリ1のための充電均等化システム2を提供することを目的としている。
【0021】
この充電均等化システム2は、制御装置3、および各蓄電池ブロックEtiに対して1つずつ分配されている、同一の種類の複数の充電装置5を有している。
【0022】
各充電装置5は、各蓄電池ブロックEtiの負極端子(符号N
iが付されている)および正極端子(符号P
iが付されている)に接続されており、さらに、単位蓄電池が組み合わされたバッテリ1の正極端子(符号Pが付されている)、および負極端子(符号Nが付されている)に接続されている。充電装置5は、制御装置3によって制御される。
【0023】
図2および
図3aに示す例において、蓄電池ブロックEti(例えば
図3aにおける蓄電池ブロックEt1)と組み合わされている充電装置5は、次のものを有している。
− インダクタンスL1
i(L1
1)と、
− アノードおよびカソードが、それぞれ対応する蓄電池ブロックの負極端子N
i(N
1)、およびインダクタンスL1
i(L1
1)の第1の端に接続されている第1のダイオードD1
i(D1
1)と、
− アノードおよびカソードが、それぞれインダクタンスL1
i(L1
1)の第2の端、および同じ対応する蓄電池ブロックの正極端子P1
i(P1
1)に接続されている第2のダイオードD2
i(D2
1)と、
− ダイオードD2
i(D2
1)のアノード、およびバッテリ1の負極端子Nに接続されている第1のスイッチSW1
i(SW1
1)と、
− ダイオードD1
i(D1
1)のカソード、およびバッテリ1の正極端子Pに接続されている第2のスイッチSW2
i(SW2
1)。
【0024】
一変形実施例においては、ダイオードD1
i(D1
1)およびD2
i(D2
1)に替えて、2つの制御スイッチが用いられる。この場合には、いわゆる同期型の整流が可能になる。導通状態における部品の電圧降下の低減によって、回路の効率を上げることができる。
【0025】
この充電装置5においては、「バックブースト」タイプの場合のように、入力と出力との間に共通の基準点を設けるということがなく、また「フライバック」タイプの構成の場合のように、変圧器を用いるということがなく、充電装置5は従来技術のものと異なる。
【0026】
一変形実施例において、各蓄電池ブロックの正極端子P
iと負極端子N
iとの間にキャパシタが接続される。このキャパシタは、充電装置5からの電流リップルを取り除くように構成されている。したがって、平滑化された直流が、各蓄電池ブロックに供給される。
【0027】
さらに、バッテリの負極端子Nと正極端子Pとの間にキャパシタ(図示せず)を加えることも可能である。このキャパシタは、充電装置5によって生じる電流リップルを取り除くように構成されている。したがって、バッテリから供給される電流は平滑化される。
【0028】
充電装置5(
図2)は、連続通電モードでも不連続通電モードでも、同様に良好に作動する。
【0029】
不連続通電モードでの動作の方が、より容易に実行され、またより低コストで実現されるという利点を有しているために、好適である。実際、不連続通電モードにおいては、その定義によって、インダクタンスL1
iからの電流が、スイッチSW1
iおよびSW2
iのための制御信号の各周期の最初に0になっている。2つのスイッチSW1
iおよびSW2
iが閉じられているときに、インダクタンスL1
iに流れる電流の値は、インダクタンスL1
iの端子間に印加されている電圧、インダクタンスL1
iにエネルギーを蓄えている時間、およびインダクタンスL1
iの値から演繹することができる。
【0030】
したがって、連続通電モード(
図3b)における動作と対照的に、調整ループ13、電流の参照変数15、および電流制御装置14(例えばトランジスタで構成されたスイッチSW1
iおよびSW2
iによって、直列接続された蓄電池ブロックEtiの各々に対してパルス幅変調を行うためのチョッピング回路)と組み合わされた電流センサ12を用いる必要はない。
【0031】
さらに、不連続通電モードにおいては、パルス幅変調におけるスイッチSW1
iおよびSW2
iの制御を、通電期間を一定にする制御に替えることができる。
【0032】
制御装置3による、充電装置5の制御の例示的な一実施形態によれば、単一のクロック回路6、シフトレジスタ7、および制御スイッチまたは「AND」論理ゲート8が用いられる(
図4a、
図4b)。
【0033】
シフトレジスタ7は、各蓄電池ブロックEtiの各充電装置5のスイッチSW1
iおよびSW2
iが全て同時に閉じる(それは過度の放電電流をもたらす)ことを防止するためのものである。シフトレジスタ7の入力信号Eは、制御装置3から供給される。制御装置3は、さらに、各「AND」論理ゲート8の2つの入力のうちの1つに信号を与える。各「AND」論理ゲートの第2の入力は、シフトレジスタ7の出力に接続されている。「AND」論理ゲート8の2つの入力がハイ状態にあるときだけ、充電装置5は有効になる。
【0034】
この制御によって、全ての充電装置5が同時に制御される制御方法と異なって、制御回路によって消費される瞬間電流を最小にすることができる。さらに、この制御によって、充電装置5の同期制御に比して、バッテリ1から供給される実効電流を少なくし、したがって、バッテリ1の発熱を最小にすることができる。
【0035】
さらに、
図5に示すように、例えばほぼ100個の単位蓄電池が直列に接続されている電気自動車の場合のように、直列に接続された多数の蓄電池ブロックEtiが用いられている場合には、バッテリ1は、直列接続された複数の基本モジュール9で構成されていることがある。基本モジュール9の各々は、直列接続された、あらかじめ定められた数の蓄電池ブロックEtiを有している。一例として、基本モジュール9の各々に、直列接続された10〜12個の蓄電池ブロックが存在する。
【0036】
したがって、充電装置5のスイッチSW1
iおよびSW2
iの接続は、10〜12個の蓄電池ブロックEtiの端子に対してなされる。ダイオードおよび制御スイッチの耐圧強度は、Liイオンバッテリの技術に応じて、およそ45〜60Vの範囲に制限されている。この値は、半導体の分野における標準的な耐圧強度値である。電気自動車の場合に当てはまるように、多数の基本モジュール9の保守が、容易になる。
【0037】
一変形実施形態によれば、蓄電池ブロックEtiごとに、充電装置5が用いられることに加えて、各基本モジュール9を形成している、直列接続されたN個の蓄電池ブロックEtiごとに、同一の種類の充電装置5が用いられる。
図5は、一例として、各基本モジュール9のN個の蓄電池ブロックに対して充電装置5を接続し、3つの基本モジュール9、すなわち(3×N)個の蓄電池ブロックEtiを直列に組み合わせる場合の、この変形実施形態を示している。この変形実施形態によれば、基本モジュール9の端子への、充電装置5のスイッチSW1
iおよびSW2
iの接続は、バッテリ1の端子でなされる。この変形実施形態によれば、隣接し合うN個の蓄電池ブロック間、したがって直列に組み合わされた基本モジュール9間の、エネルギーの移動が可能になる。
【0038】
さらに、例えば自動車用の12Vのエネルギー網などの補助エネルギー網10にエネルギーを供給するように、直列接続されたN個の蓄電池ブロックの端子に、1つ以上の充電装置5を実装させることが可能である(
図6)。このとき、補助装置11が、充電装置5に結合される。またこの場合には、充電装置5のインダクタンスが、上述のエネルギー蓄積インダクタンスから結合インダクタンスL2
iに替えられる。補助装置11は、結合インダクタンスL2
iの二次側に配置されて、「フライバック」タイプの構造を形成している整流ダイオードD3、およびエネルギー蓄積キャパシタC1を備えている。補助エネルギー網10へのエネルギーの供給は、整流ダイオードD3とエネルギー蓄積キャパシタC1との間に実装されているスイッチSW3によって制御される。このスイッチSW3は、制御装置3によって制御される。
【0039】
さらに、充電均等化システム2は、各蓄電池ブロックEtiの電圧を測定して、制御装置3に電圧情報を伝達するための電圧測定装置(図示せず)を備えている場合がある。制御装置3は、この電圧情報を用いて、蓄電池ブロックEtiを充電しなければならないか否かを特定し、充電しなければならない場合には、対応する充電装置5をそのように制御することができる。
【0040】
不連続通電モードにおける、充電均等化システムの動作
次に、
図7および
図8を参照して、充電均等化システム2の動作について説明する。
【0041】
制御装置3が、蓄電池ブロックEti(以下の説明においては、図示されている例に合わせて、蓄電池ブロックEt1とする)へのエネルギー移動を制御するとき、対応する蓄電池ブロックEt1に並列である充電装置5のスイッチSW1
1およびSW2
1は、通電期間t1の間、ともに閉じられている。この通電期間t1の間の電流の循環が、
図7に破線で概略的に示されている。
【0042】
したがって、このとき、インダクタンスL1
1は、エネルギーを蓄える。インダクタンスL1
1を流れる電流iL1
1の増加率は、その端子間に印加される電圧(N個の蓄電池ブロックの電圧に等しい)に比例する(
図8)。この通電期間中、ダイオードD1
1およびD2
1は遮断状態にある。ダイオードD1
1の端子間電圧(アノード電圧−カソード電圧)は、ダイオードD1
1が接続されている蓄電池ブロックの下方に位置している蓄電池ブロック全体の電圧から、バッテリ電圧を引いた電圧に等しい。ダイオードD2
1の端子間電圧は、ダイオードD2
1が接続されている蓄電池ブロックの上方に位置している蓄電池ブロック全体の電圧から、バッテリ電圧を引いた電圧に等しい。ダイオードD1
1やD2
1の端子間電圧の逆符号は、最大でも、バッテリ電圧までである。
【0043】
通電期間t1の最後に、スイッチSW1
1およびSW2
1が同時に開かれる。インダクタンスL1
1を流れる電流iL1
1は、この瞬間に、ピーク値Ipeak(スイッチSW1
1およびSW2
1が閉じられているときに、インダクタンスの端子間に印加されている電圧に、通電期間t1を掛けて、さらにインダクタンス値で割った値に等しい)に達する。
【0044】
通電期間t1の最後から、充電装置5の動作周期Tの最後まで、スイッチSW1
1およびSW2
1は開いた状態にある。インダクタンスL1
1を流れる電流が0になるまで、ダイオードD1
1およびD2
1は導通状態にある。この段階における電流の循環が、
図7に、二点鎖線で概略的に示されている。インダクタンスL1
1を流れる電流iL1
1は、インダクタンスL1
1の端子間に印加される電圧(インダクタンスL1
1に直列である蓄電池ブロックEt
1の電圧と、2つのダイオードD1
1およびD2
1の電圧降下とを足した電圧に−1を掛けた電圧に等しい)に比例して減少する(
図7および
図8)。スイッチSW1
1の端子間電圧は、スイッチSW1
1が接続されている蓄電池ブロックの下方に位置している蓄電池ブロック全体の電圧に、スイッチSW1
1が接続されている蓄電池ブロックの電圧と、ダイオードD2
1の導通状態における電圧降下とを加えた電圧に等しい。スイッチSW2
1の端子間電圧は、スイッチSW2
1が接続されている蓄電池ブロックの上方に位置している蓄電池ブロック全体の電圧に、スイッチSW2
1が接続されている蓄電池ブロックEt1の電圧と、ダイオードD1
1の導通状態における電圧降下とを加えた電圧に等しい。スイッチSW1
1やSW2
1の端子間の直流電圧は、最大でも、バッテリ1の電圧までである。
【0045】
充電装置5の動作は、その充電装置5が接続されている蓄電池ブロックEtiに無関係に同じであり、したがって、充電装置5を、いくつかの蓄電池ブロックの充電に交互に用いることができる。
【0046】
諸元決定
数式化
図2の充電装置5の動作に関する上述の説明を数式化することによって、充電装置5の諸元が決定される。以下において、この数式化について概括する。この数式化のために、入力電圧、出力電圧(インダクタンスL1
iにとっての)を、それぞれVe、Vsで表わす。すなわち、入力電圧Veは、バッテリ1の負極端子Nと正極端子Pとの間の電圧を表わす。出力電圧Vsは、蓄電池ブロックEtiの負極端子N
iと正極端子P
iとの間の電圧を表わす。
【0047】
同一の充電装置5のスイッチSW1
iおよびSW2
iが、通電期間t1の間、閉じられていると、インダクタンスL1
iを流れる電流iL1
iは増加していく。スイッチSW1
iおよびSW2
iの導通状態における電圧降下を無視すると、インダクタンスL1
iを流れる電流iL1
i(t)は、数1で表わされる。
【数1】
【0048】
通電期間t1の終了時に、スイッチSW1
iおよびSW2
iが開かれ、インダクタンスを流れる電流iL1
iは、数2で示されるピーク値Ipeakに達する。
【数2】
【0049】
通電期間t1の終了時から、電流iL1
iが0になるまで、同一の充電装置5のダイオードD1
iおよびD2
iは導通状態にある。インダクタンスL1
iを流れる電流iL1
iは、数3にしたがって減少する。
【数3】
ここで、Vdは、ダイオードD1
iおよびD2
iの導通状態における電圧降下である。なお、この場合のtは、通電期間t1の終了時からの時間である。
【0050】
動作周期Tの最後までの、電流iL1
iが0である(ダイオードD1
iおよびD2
iは遮断状態にある)期間に対応する動作段階が、不連続通電モードを特徴付けている。
【0051】
式(2)および式(3)から、充電装置5が不連続通電モードで動作するために、通電期間t1が超過してはならない期間、すなわち最大通電期間t1
(max)を定めることができる。この最大通電期間t1
(max)は、インダクタンスを流れる電流が、動作周期Tの最後に0になると置くことによって決定され、数4で与えられる。
【数4】
最悪の場合を考えたときには、最大通電期間t1
(max)は、最大の入力電圧Veおよび最小の出力電圧Vsに対して演繹されるべきである。さらに、ダイオードD1
iおよびD2
iの電圧降下は、最悪の場合を考える際には無視することができる。
【0052】
充電装置5の出力電流は、ダイオードD1
iおよびD2
iによって導かれる電流に等しい。充電装置5の平均出力電流は、数5から計算される。
【数5】
平均出力電流Is
(avg)は、入力電圧の二乗Ve
2に比例し、出力電圧VsとダイオードD1
iおよびD2
iの電圧降下との和に反比例する。蓄電池ブロックEtiの電圧に関係なく、所望の平均出力電流を供給するためには、最大の出力電圧および最小の入力電圧を考えなければならない。
【0053】
充電されている蓄電池ブロック(1つ以上の)を流れる電流は、充電装置5の出力電流と等しくない。実際、充電装置5のインダクタンスL1
iによって蓄えられるエネルギーは、バッテリ1から供給される。したがって、インダクタンスL1
iに流れる電流は、充電されている蓄電池ブロック(1つ以上の)から供給される。したがって、充電されている蓄電池ブロック(1つ以上の)に供給される電流は、ダイオードD1
iおよびD2
iによって導かれる電流から、スイッチSW1
iおよびSW2
iを流れる電流を引いた代数差に等しい。動作している充電装置5の数がNであることを考慮すると、充電されている蓄電池ブロック(1つ以上の)の電流の平均値IEt
(avg)は、数6を用いて得られる。
【数6】
この式において、同一の動作周期Tの全体にわたって、電流は、バッテリ1から充電装置5に、さらに、充電装置5から蓄電池ブロックEtiに供給されるとみなされている。動作している充電装置5の数が、それらの充電装置5の入力に接続されている蓄電池ブロックEtiの数に等しければ、それらの蓄電池ブロックEtiの平均電流は0に等しい。
【0054】
前出の式を例証するために、2種類の充電装置5の諸元決定を考える。
【0055】
第1の充電装置は、単一の蓄電池ブロックEtiの充電を行うために用いることができ、かつ10個の蓄電池ブロックEtiの端子に接続されている充電装置5である。
【0056】
第2の充電装置は、直列の10個の蓄電池ブロックEtiの充電を行うために用いることができ、かつ100個の蓄電池ブロックEtiの端子、すなわち、各々が直列の10個の蓄電池ブロックから成る、10個の直列の組み合わせの端子に接続されている充電装置5である。
【0057】
充電装置5の緒元決定は、2つのステップ、すなわち、最初に、充電装置5が不連続通電モードで動作するように、スイッチSW1
iおよびSW2
iの通電期間t1を計算するステップ(式(4))と、次に、充電装置の出力において、所望の平均出力電流を供給するように、インダクタンスL1
iの値を計算するステップ(式(5))とに分かれる。
【0058】
2種類の充電装置5の緒元決定に用いられる仮定は、次のとおりである。
− 平均出力電流(最小、Is
(avg)):1A
− 動作周波数(F):50kHz、すなわち、T=1/F=20μs
− 単位蓄電池(リン酸鉄を主成分とするLiイオン蓄電池)の電圧:
・ 最小電圧:2.5V
・ 最大電圧:3.6V
− 導通状態におけるダイオードの電圧降下(Vd):
・ 高速ダイオード(ショットキータイプ):0.3〜0.7V
・ バイポーラダイオード:0.6〜1.0V
【0059】
2種類の充電装置5に対して、ダイオードD1
iおよびD2
iの最小の電圧降下、充電装置の最大入力電圧および最小出力電圧を用いて、最大通電期間t1
(max)が計算される。次いで、ダイオードの最大の電圧降下、および充電装置5の最小入力電圧および最大出力電圧を用いて、インダクタンスL1
iの最大値が計算される。
【0060】
単一の蓄電池ブロックEtiを充電するために用いることができる充電装置5に対して、最大通電期間t1
(max)およびインダクタンスL1
iの値が、数7のように与えられる。高速のショットキータイプのダイオードが用いられている。
【数7】
【0061】
直列の10個の蓄電池ブロックの充電を行うために用いることができる充電装置5に対して、最大通電期間t1
(max)およびインダクタンスL1
iの値が、数8のように与えられる。バイポーラダイオードが用いられている。
【数8】
【0062】
これらの例におけるインダクタンスL1
iの値は最大値である。しかしながら、システムを強健にするために、より低い値のインダクタンスが用いられることもある。
【0063】
シミュレーション
一例として、蓄電池ブロックを充電することができる、動作中の充電装置に対する2つのシミュレーション結果を示す(
図9)。
【0064】
この例において、バッテリ1は、各々が1個の単位蓄電池を有する、直列に組み合わされた10個の蓄電池ブロックで構成されている。単位蓄電池は、電圧源V
iと、それに直列な内部抵抗R
i(各単位蓄電池当り0.010オームの)とによって示されている。図を読みやすくするために、充電中の単位蓄電池の上方および下方の単位蓄電池は、それぞれ単一の電圧源およびそれに直列な単一の抵抗から成るようにまとめられている。
【0065】
充電装置5の動作周波数は任意であるが、この例においては50kHzに設定されている。
【0066】
スイッチSW1
iおよびSW2
iの通電期間は、1.631μsに設定されている。インダクタンスL1
iの値は9.1μHに設定されている(結果1を参照)。
【0067】
第1のシミュレーション
第1のシミュレーションにおいて、ほとんどの単位蓄電池は、閾値電圧2.5Vまで充電されており、1つの単位蓄電池V
7が、3.6Vの電圧まで充電されている。充電装置5は、最も高い充電電圧すなわち3.6Vを有する単位蓄電池(この例においては7番目の)に並列に接続されている。7番目の単位蓄電池より下方の蓄電池ブロックは、15Vの電圧源V
1-6および0.060オームの内部抵抗R
1-6にまとめられており、同様に、7番目の単位蓄電池より上方の蓄電池ブロックは、7.5Vの電圧源V
8-10および0.030オームの内部抵抗R
8-10にまとめられている。
【0068】
この例は、平均出力電流が1A(最小平均出力電流)でなければならない場合の極端な動作例を示している。
【0069】
図10は、シミュレーション結果を示している。このシミュレーション結果において、曲線C1はインダクタンスL1
7を流れる電流iL1
7、曲線C2はダイオードD2
7を流れる出力電流iD2
7、曲線C3は単位蓄電池V
7を流れる電流iV
7を表わしている。
【0070】
前述のように、スイッチSW1
7およびSW2
7が閉じられている通電期間t1の間、インダクタンスL1
7を流れる電流iL1
7は増加していく。この段階中、電流iL1
7は、この段階において単位蓄電池V
7から供給される電流iV
7を介して、バッテリ1から供給されることに注目されたい。通電期間t1の終了時に、この電流の値は、ピーク値Ipeak(この例においては、およそ4.6Aの)に達する。通電期間t1の終了時から、インダクタンスL1
7を流れる電流iL1
7は減少して、単位蓄電池V
7に供給される。電流iL1
7が、充電装置5の各動作周期の終了前に0になるから、この回路は不連続通電モードで動作する。
【0071】
所望のように、平均出力電流Is
7(avg)は1.0Aである。充電されている単位蓄電池の電圧値、およびバッテリの電圧値がいかなるものであれ、1Aという最小平均出力電流が得られるということは、極めて評価されるところである。
【0072】
第2のシミュレーション
第2のシミュレーションにおいて、ほとんどの単位蓄電池は、3.6Vの閾値電圧まで充電されており、1つの単位蓄電池が、2.5Vの電圧まで充電されている。充電装置5は、最も低い充電電圧すなわち2.5Vを有する単位蓄電池に並列に接続されている。この例は、充電装置5が不連続通電モードで動作しなければならない場合の極端な動作例を示している。
【0073】
図11は、シミュレーション結果を示している。このシミュレーション結果において、曲線C5はインダクタンスL1
7を流れる電流iL1
7、曲線C6はダイオードD2
7を流れる出力電流iD2
7、曲線C7は単位蓄電池V
7を流れる電流iV
7を表わしている。
【0074】
前述のように、スイッチSW1
7およびSW2
7が閉じられている通電期間t1の間、インダクタンスL1
7を流れる電流iL1
7は増加していく。通電期間t1の終了時に、電流iL1
7の値は、ピーク値Ipeak(この例においては、およそ6.1Aの)に達する。通電期間t1の終了時から、インダクタンスL1
7を流れる電流iL1
7は減少して、単位蓄電池V
7に供給される。電流iL1
7が、充電装置5の各動作周期の終了前に0になるから、この回路は不連続通電モードで動作する。不連続通電モードの動作は、充電されている単位蓄電池の電圧値、およびバッテリの電圧値の如何にかかわりなく、十分に観察される。
【0075】
平均出力電流Is
7(avg)は2.3Aである。この値は、最小値1Aを十分に上回っている。
【0076】
他のシミュレーションも行った。単位蓄電池の全電圧変動範囲(2.5〜3.6V)、およびバッテリ1の全電圧変動範囲(25〜36V)において、充電装置5は有効であった。さらに、充電装置5の位置、すなわち、充電装置5が1番目、6番目、N番目のいずれの蓄電池ブロックの端子に接続されているかにかかわりなく、充電装置5は有効であった。さらに、多数の充電装置5が並列に動作している場合にも、それらの充電装置5の動作は有効であった。直列の10個の蓄電池ブロックEtiを充電するために用いることができ、100個の蓄電池ブロックEtiの端子に接続されている充電装置5も、このアプローチによれば有効であった。