特許第5702456号(P5702456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5702456
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】無鉛ガソリン
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/06 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
   C10L1/06
【請求項の数】1
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-224317(P2013-224317)
(22)【出願日】2013年10月29日
(62)【分割の表示】特願2009-79757(P2009-79757)の分割
【原出願日】2009年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-25076(P2014-25076A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2013年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100129160
【弁理士】
【氏名又は名称】古館 久丹子
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】大塩 敦保
(72)【発明者】
【氏名】保泉 明
(72)【発明者】
【氏名】田中 重行
【審査官】 相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−152077(JP,A)
【文献】 特開平09−111261(JP,A)
【文献】 特開2006−182996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/00− 1/32
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽質接触改質ガソリン、C4留分、直留軽質ナフサ、及びアルキレートから選ばれた少なくとも1種を含み、下記(1)の性状を満たすガソリン基材と下記(2a)または(2b)の性状を満たすガソリン基材を、(3)に示す量配合した、(4)〜(14)の性状を満たすことを特徴とする無鉛ガソリン。
(1)炭素数5の炭化水素含有量が22容量%以下、炭素数5の炭化水素含有量に対する炭素数5の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比が0.60以下、炭素数6の炭化水素含有量が23容量%以下、炭素数6の炭化水素含有量に対する炭素数6の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比が0.55以下、炭素数7の炭化水素含有量が25容量%以下、炭素数7の炭化水素含有量に対する炭素数7の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比が0.40以下である、流動接触分解装置から留出する10容量%留出温度が45℃以上、90容量%留出温度が185℃以下の蒸留性状を有するガソリン基材
(2a)炭素数7以上の芳香族含有量を75容量%以上含み、かつ炭素数8の芳香族含有量が5容量%以上50容量%以下、炭素数8の芳香族炭化水素含有量に対する1,2−ジメチルベンゼン含有量の容量比が0.25以下である、接触改質装置から留出する10容量%留出温度が100℃以上、90容量%留出温度が160℃以下の蒸留性状を有するガソリン基材
(2b)炭素数7以上の芳香族含有量を75容量%以上含み、かつ炭素数8の芳香族含有量が0.1容量%以上5容量%未満、炭素数8の芳香族炭化水素含有量に対する1,2−ジメチルベンゼン含有量の容量比が0.15以下である、接触改質装置から留出する10容量%留出温度が100℃以上、90容量%留出温度が170℃以下の蒸留性状を有するガソリン基材
(3)(1)記載のガソリン基材の配合量が25容量%以上60容量%以下、かつ(2a)または(2b)記載のガソリン基材の配合量が5容量%以上40容量%以下
(4)リサーチ法オクタン価が89以上93未満
(5)モータ法オクタン価が79以上84未満
(6)15℃における密度が0.680〜0.783g/cm
(7)50容量%留出温度が75〜110℃
(8)70℃留出量が18〜40容量%
(9)リード蒸気圧が45〜93kPa
(10)ベンゼン含有量が1容量%以下
(11)硫黄分含有量が10質量ppm以下
(12)脂肪族不飽和炭化水素含有量が30容量%以下
(13)芳香族含有量が10〜40容量%
(14)下記式8で表されるオクタン価向上指数が2.5以上
オクタン価向上指数=(A−B)/C−D……(式8)
〔式8中、Aは無鉛ガソリンのリサーチ法オクタン価を示す。
Bは下記式aで表される。
B=Σ(RON(i)×VOL(i)) ………(式a)
(式a中、RON(i)はガソリン基材iのリサーチ法オクタン価、VOL(i)はガソリン基材iの配合量(容量%)を示す。ガソリン基材iは無鉛ガソリンの調合に使用したガソリン基材(2a)または(2b)以外のガソリン基材である。)
Cはガソリン基材(2a)または(2b)の配合量(容量%)を示す。
Dはガソリン基材(2a)または(2b)のリサーチ法オクタン価を示す。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用燃料としての無鉛ガソリンに関し、詳しくはガソリンのオクタン価確保の観点から特定された基材、特定された蒸留性状、及び特定された成分組成を有する無鉛ガソリンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンエンジン用燃料油としては、高オクタン価で運転性能に優れるとともに、環境性能にも優れるものが要望されるようになってきた。従来、ガソリンは、原油を接触分解装置や接触改質装置等の各種精製装置で処理することにより得られるガソリン留分の基材を、1種又は2種以上配合することにより製造されている。また、ガソリンの基材には、原油以外の資源を利用することも可能であり、GTL(Gas to Liquid)、BTL(Biomass to Liquid)、CTL(Coal to Liquid)などのFT(Fischer Tropsh)合成により得られるガソリン留分基材や、バイオマス由来の軽質な炭化水素化合物などを従来の石油精製プロセスから得られるガソリン基材と混合してガソリンを製造することができる。
【0003】
一般に、ガソリンのオクタン価は、下記式1のように、各成分のオクタン価とその成分の体積混合率を掛け合わせたものを積算して算出することができるといわれているが、実際には混合効果により、下記式2のように、オクタン価ボーナス(又はマイナス)分が付加される。
オクタン価=Σ{(成分iのオクタン価)×(成分iの体積混合率)} ………(式1)
オクタン価=Σ{(成分iのオクタン価)×(成分iの体積混合率)}+(ボーナス) ………(式2)
【0004】
オクタン価ボーナス(即ちオクタン価向上効果)については、ガソリンを構成する組成によってボーナスの付き方が変わることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1では、オクタン価ボーナスは、ガソリン中のオレフィン量や芳香族量などから算出されるとしているが、これらは米国等で販売されているようなガソリンには当てはまるものの、日本国内で販売されている配合処方のガソリンには適合していない。また、アルコール類やエーテル類はオクタン価が高く、高オクタン価基材として注目されているが、これらを配合したときのオクタン価ボーナスは、配合するベースガソリンにより変化し、その挙動について不明な点が多かった。
【0005】
最近では、原油以外の資源としてバイオマス由来のエタノール等のアルコール類やエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)等のエーテル類も利用されており、これらのアルコール類、エーテル類を混合した時のオクタン価向上効果に関する特許が出されている(例えば、特許文献1〜4参照)。これらは、アルコール類やエーテル類を混合するベースガソリンの組成(ノルマルパラフィン量、イソパラフィン量、オレフィン量、芳香族量(全て容量%))から、エタノールやETBEを混合した時のオクタン価(リサーチ法オクタン価及びモータ法オクタン価)を算出するものであって、それぞれ組成の総量からアルコール類やエーテル類のオクタン価向上効果を算出している。
また、FT合成基材を用いたときの、アルコール類やエーテル類のオクタン価挙動を記載した特許が出されている(例えば、特許文献5参照)。これは、FT合成基材の配合量を規定することで、アルコール類やエーテル類といった含酸素化合物のオクタン価向上効果がより高くなることを提供しているが、ガソリン基材の組成や成分についての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−029760号公報
【特許文献2】特開2005−029761号公報
【特許文献3】特開2005−029762号公報
【特許文献4】特開2005−029763号公報
【特許文献5】特開2007−270091号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Automotive Fuels Reference Book Second Edition,Keith Owen And Trevor Coley,Society of Automotive Engineers,Inc.,pp.58−60(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記文献はいずれもアルコール類やエーテル類などをガソリンへ配合したときのオクタン価向上効果に関するものであり、アルコール類やエーテル類などの含酸素系基材を配合しないガソリンに関しては、オクタン価向上効果に関する特許や知見が乏しいのが現状である。
【0009】
本発明の目的は、上記のような状況に鑑み、含酸素系基材を除く様々なガソリン基材を組み合わせてガソリンを製造するときに、これらガソリン基材を混合することによるオクタン価向上効果を最も高めるために、ガソリン基材中の組成及び成分の比率を最適化させることで、オクタン価を効率よく確保できる無鉛ガソリンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ガソリンに配合する基材として、流動床接触分解装置及び接触改質装置から留出する各特定の組成、性状のガソリン基材を特定量配合する場合に、各ガソリン基材配合によるオクタン価向上効果を最も高めることができ、オクタン価を効率よく確保できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、軽質接触改質ガソリン、C4留分、直留軽質ナフサ、及びアルキレートから選ばれた少なくとも1種を含み、下記(1)の性状を満たすガソリン基材および下記(2a)または(2b)の性状を満たすガソリン基材を、(3)に示す量配合した、(4)〜(14)の性状を満たすことを特徴とする無鉛ガソリンを提供するものである。
(1)炭素数5の炭化水素含有量が22容量%以下、炭素数5の炭化水素含有量に対する炭素数5の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比が0.60以下、炭素数6の炭化水素含有量が23容量%以下、炭素数6の炭化水素含有量に対する炭素数6の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比が0.55以下、炭素数7の炭化水素含有量が25容量%以下、炭素数7の炭化水素含有量に対する炭素数7の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比が0.40以下である、流動床接触分解装置から留出する10容量%留出温度が45℃以上、90容量%留出温度が185℃以下の蒸留性状を有するガソリン基材
(2a)炭素数7以上の芳香族含有量を75容量%以上含み、かつ炭素数8の芳香族含有量が5容量%以上50容量%以下、炭素数8の芳香族炭化水素含有量に対する1,2−ジメチルベンゼン含有量の容量比が0.25以下である、接触改質装置から留出する10容量%留出温度が100℃以上、90容量%留出温度が160℃以下の蒸留性状を有するガソリン基材
(2b)炭素数7以上の芳香族含有量を75容量%以上含み、かつ炭素数8の芳香族含有量が0.1容量%以上5容量%未満、炭素数8の芳香族炭化水素含有量に対する1,2ージメチルベンゼン含有量の容量比が0.15以下である、接触改質装置から留出する10容量%留出温度が100℃以上、90容量%留出温度が170℃以下の蒸留性状を有するガソリン基材
(3)(1)記載のガソリン基材の配合量が25容量%以上60容量%以下、かつ(2a)または(2b)記載のガソリン基材の配合量が5容量%以上40容量%以下
(4)リサーチ法オクタン価が89以上93未満
(5)モータ法オクタン価が79以上84未満
(6)15℃における密度が0.680〜0.783g/cm
(7)50容量%留出温度が75〜110℃
(8)70℃留出量が18〜40容量%
(9)リード蒸気圧が45〜93kPa
(10)ベンゼン含有量が1容量%以下
(11)硫黄分含有量が10質量ppm以下
(12)脂肪族不飽和炭化水素含有量が30容量%以下
(13)芳香族含有量が10〜40容量%
(14)下記式8で表されるオクタン価向上指数が2.5以上
オクタン価向上指数=(A−B)/C−D……(式8)
〔式8中、Aは無鉛ガソリンのリサーチ法オクタン価を示す。
Bは下記式aで表される。
B=Σ(RON(i)×VOL(i)) ………(式a)
(式a中、RON(i)はガソリン基材iのリサーチ法オクタン価、VOL(i)はガソリン基材iの配合量(容量%)を示す。ガソリン基材iは無鉛ガソリンの調合に使用したガソリン基材(2a)または(2b)以外のガソリン基材である。)
Cはガソリン基材(2a)または(2b)の配合量(容量%)を示す。
Dはガソリン基材(2a)または(2b)のリサーチ法オクタン価を示す。〕
【発明の効果】
【0012】
本発明の無鉛ガソリンは、流動床接触分解装置から留出するガソリン基材と接触改質装置から留出するガソリン基材を配合したときのオクタン価向上効果を最も高めることができ、高オクタン価のガソリンを効率良く提供できる。そして、製油所における高オクタン価ガソリン製造用のガソリン基材の製造時に必要なエネルギーや温暖化ガスの排出を抑えることができる。また、本発明の無鉛ガソリンは、燃費性能や運転性能に優れたものであり、実用性能を維持しつつ大気環境の保全が図られるものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の内容を更に詳しく説明する。
本発明の無鉛ガソリンは、流動床接触分解装置から留出するガソリン基材(1)、及び接触改質装置から留出するガソリン基材(2a)または(2b)を必須基材として含む。
基材(1)のガソリン基材は、灯・軽油から常圧残油に至る石油留分、好ましくは重質軽油や減圧軽油を、従来から知られている流動接触分解法(UOP法、シェル二段式法、フレキシクラッキング法、ウルトラオルソフロー法、テキサコ法、ガルフ法、ウルトラキャットクラッキング法、RCC法、HOC法等)により、固体酸触媒(例えば、シリカアルミナにゼオライトを配合したもの等)で分解して得られた接触分解ガソリンである。
【0014】
重質な炭化水素から接触分解ガソリンを製造する流動接触分解法とは、詳しくは、流動している触媒と炭化水素油とを高温で接触させて、ガソリンや中間留分等を得るプロセスである。例えば、HYDROCARBON PROCESSING/NOVEMBER 2000の107〜110ページに、ABB Lummus Global InC.や、Kellogg Brown&Roots,Inc.、さらにはShell Global Solutions International B.V.、またStone&Webster Inc.,A Shaw Group Co./Institut Francais du Petorole.や、UOP LLC.などの様々なプロセスメーカーが提案するFCC(Fluid Catalytic Cracking)プロセスが記載されている。
【0015】
本発明で基材に用いる接触分解ガソリンを得るためには、上記のFCCプロセスを用い、ガソリンの沸点以上で沸騰する炭化水素油(炭化水素混合物)を、ゼオライトやシリカアルミナ、アルミナなどいわゆる固体酸性を示す触媒と高温で接触させればよい。商業的規模でのFCCプロセスは、通常、垂直に据え付けられたクラッキング反応器と触媒再生器との2種の容器からなるFCC装置に、固体酸性を有するFCC触媒を連続的に循環させて行う。即ち、触媒再生器から出てくる熱い再生触媒を、分解すべき炭化水素油と混合し、クラッキング反応器内を上向の方向に導く。その結果、触媒上に析出したコークによって失活した触媒を、分解生成物から分離し、ストリッピング後、触媒再生器に移す。触媒再生器に移した使用済みの触媒を、該触媒上のコークを空気燃焼による除去で再生し、再びクラッキング反応器に循環する。一方、分解生成物は、ドライガス、LPG、ガソリン留分、LCO及びHCOまたはスラリー油のような1種以上の重質留分に蒸留分離する。もちろん、これらの分解生成物の一部あるいは全部をクラッキング反応器内に再循環させて分解反応をより進めることもできる。本発明では、上記分解生成物から分離された留分の内、ガソリン留分が基材(1)の接触分解ガソリンとして用いられる。
【0016】
本発明で基材に用いる接触分解ガソリンを得るために使用する原料の重質な炭化水素としては、ガソリン沸点範囲以上で沸騰する炭化水素混合物、即ち、原油の常圧あるいは減圧蒸留で得られる軽油留分や常圧蒸留残渣油及び減圧蒸留残渣油などを意味し、もちろんコーカー軽油、溶剤脱瀝油、溶剤脱瀝アスファルト、タールサンド油、シェールオイル油、石炭液化油などをも包括するものである。更に、これらの原料炭化水素は、当業者に周知の水素化処理、即ちNi−Mo系触媒、Co−Mo系触媒、Ni−Co−Mo系触媒、Ni−W系触媒などの水素化処理触媒の存在下、高温・高圧下で水素化脱硫した水素化処理油も原料炭化水素油としてFCCプロセスに使用できることは言うまでもない。
【0017】
本発明で基材に用いる接触分解ガソリンを得るためのFCC装置におけるクラッキング反応器の運転条件としては、温度が約400〜600℃、好ましくは約450〜550℃、圧力が常圧〜5kg/cm、好ましくは常圧〜3kg/cm、触媒/原料炭化水素油の質量比が約2〜20、好ましくは約4〜15とすることが適している。
反応温度が400℃以上であれば、炭化水素油の分解反応の進行が遅くなり、分解された生成物の得られる量が低くなり経済的に不経済になることを防ぐことができる。また、600℃以下であれば、脂肪族不飽和炭化水素が多量に生成してしまい、本発明で規定するガソリン基材(1)における脂肪族不飽和炭化水素の容量比を越えてしまい、接触改質装置から留出するガソリン基材(2a)または(2b)と混合したときの所望のオクタン価向上効果が得られなくなることを防ぐことができる。圧力が5kg/cm以下であれば、分解反応がモル数の増加する反応であるために分解反応の進行が困難となり、不利となることを防ぐことができる。また、触媒/原料炭化水素油の質量比が2以上であれば、クラッキング反応器内の触媒濃度が低くなりすぎ、原料油分解の進行が低下し、不利となることを防ぐことができる。また、20以下であれば、触媒濃度を上げる効果が飽和してしまい、触媒濃度を上げる効果が得られずに同じく不経済となることを防ぐことができる。
【0018】
基材(2a)のガソリン基材は、重質の直留ナフサなどを接触改質法(プラットフォーミング法、マグナフォーミング法、アロマイジング法、レニフォーミング法、フードリフォーミング法、ウルトラフォーミング法、パワーフォーミング法等)により、水素気流中で高温・加圧下で触媒(例えば、アルミナ担体に白金やロジウムと塩素とを担持したもの等)と接触処理して得られた改質ガソリンからベンゼン留分を蒸留により取り除いた接触改質ガソリンである。
本発明で基材に用いる接触改質ガソリンを得るための接触改質装置は、固定床半再生式、サイクリック式、連続再生式等いずれの方法であってもよい。接触改質反応に使用される触媒としては、種々のものを用いることができるが、白金を0.2〜0.8質量%含有している白金/アルミナ系触媒を好ましく用いることができ、更に第2成分としてレニウム、ゲルマニウム、すず、イリジウム等が含まれるものも用いることができる。
【0019】
接触改質装置の運転条件としては、固定床半再生式の場合には、反応温度約470〜540℃、反応圧力1〜3.5MPa、水素油比76〜3000NL/L、LHSV:1〜4h−1であることが好ましい。反応温度が470℃以上であれば、得られる接触改質処理油のオクタン価を向上させることができ、540℃以下であれば、水素化分解が進行して液収率が低下することや、コークの生成により触媒活性が低下することを抑制できる。反応圧力が1MPa以上であれば、コークの生成を抑制することができる。反応圧力が3.5MPa以下であれば、脱水素環化反応が抑制されずにオクタン価の高い接触改質処理油を得ることができる。また、連続再生式の場合には、反応温度510〜530℃、反応圧力0.35〜1MPa、水素油比140〜530NL/L、LHSV:1〜4h−1であることが好ましい。反応温度が510℃以上であれば、得られる接触改質処理油のオクタン価を向上させることができ、530℃以下であれば、水素化分解が進行して液収率が低下することや、コークの生成により触媒活性が低下することを抑制できる。反応圧力が0.35MPa以上であれば、コークの生成を抑制することができる。反応圧力が1MPa以下であれば、脱水素環化反応が抑制されずにオクタン価の高い接触改質処理油を得ることができる。
【0020】
本発明の無鉛ガソリンにおける基材(2a)の接触改質ガソリンは、上記のような運転条件にて接触改質装置から得られた接触改質油を公知の技術を用いて脱ベンゼン処理を行ったときに留出する重質接触改質油留分である。例えば、蒸留法により、接触改質油を軽質接触改質油留分と粗ベンゼン留分と重質接触改質油留分に分留することにより得られる重質接触改質油留分である。
【0021】
本発明の無鉛ガソリンは、オクタン価向上効果を高めるため、特定の性状を有する流動接触分解装置から得られるガソリン基材(1)と接触改質装置から得られるガソリン基材(2a)を含有する物で構成することができるが、オクタン価向上効果は配合するガソリン基材の性状によってその向上効果が変わるため、ガソリン組成物を構成する基材から考えると、前記ガソリン基材(2a)の代わりに、接触改質ガソリンからキシレン留分を除いたガソリン基材(2b)を用いても同様な無鉛ガソリンを得ることができる。
【0022】
無鉛ガソリンのガソリン基材(2b)は、重質の直留ナフサなどを接触改質法(プラットフォーミング法、マグナフォーミング法、アロマイジング法、レニフォーミング法、フードリフォーミング法、ウルトラフォーミング法、パワーフォーミング法等)により、水素気流中で高温・加圧下で触媒(例えば、アルミナ担体に白金やロジウムと塩素とを担持したもの等)と接触処理して得られた改質ガソリンからベンゼン留分、キシレン留分を取り除いた後の接触改質ガソリンである。
【0023】
無鉛ガソリンにおけるガソリン基材(2b)の接触改質ガソリンは、接触改質装置から得られた接触改質油を公知の技術を用いて脱ベンゼン処理を行ったときに留出する重質接触改質油留分を、更に公知の技術を用いて脱キシレン処理を行ったときに留出する炭素数7の芳香族分が主成分である留分と炭素数9の芳香族分が主成分である留分を混合した留分である。例えば、蒸留法により、接触改質油を軽質接触改質油留分と粗ベンゼン留分と重質接触改質油留分に分留し、さらにこの重質接触改質油留分を蒸留法や抽出法といった手法により、炭素数7の芳香族留分とキシレン留分と炭素数9の芳香族留分に分留することにより得られる留分である。
【0024】
流動床接触分解装置から留出するガソリン基材と接触改質装置から留出するガソリン基材を混合して製造する無鉛ガソリンのオクタン価向上効果は、配合するこれらガソリン基材中の組成や成分によって変化する。本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、オクタン価向上効果を高めるためには、ガソリン基材として用いる基材のうち、前述に説明した流動床接触分解装置から留出するガソリン基材(1)と接触改質装置から留出するガソリン基材(2a)または(2b)の組成及び成分などを、下記に記載の範囲に規定、選択することで、これらガソリン基材を混合したときの無鉛ガソリンのオクタン価向上効果を最も高くすることができることがわかった。
【0025】
即ち、本発明の無鉛ガソリンにおける流動床接触分解装置から留出するガソリン基材(1)の炭素数5の炭化水素含有量は22容量%以下、好ましくは20容量%以下、下限は好ましくは5容量%である。また、炭素数6の炭化水素含有量は23容量%以下、好ましくは21容量%以下、下限は好ましくは5容量%である。炭素数5の炭化水素含有量が22容量%以下、炭素数6の炭化水素含有量は23容量%以下ならば、接触分解ガソリンのオクタン価を維持しつつ、蒸気圧を抑えることができ、得られる本無鉛ガソリンの大気環境に及ぼす蒸発ガスを低減することができる。
【0026】
また、炭素数5の炭化水素含有量に対する炭素数5の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比は0.60以下、好ましくは0.50以下、下限は好ましくは0.15である。また、炭素数6の炭化水素含有量に対する炭素数6の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比は0.55以下、好ましくは0.45以下、下限は好ましくは0.15である。炭素数5の炭化水素含有量に対する炭素数5の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比が0.60以下、炭素数6の炭化水素含有量に対する炭素数6の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比は0.55以下ならば、接触分解ガソリン基材と接触改質ガソリン基材を混合した無鉛ガソリンのオクタン価向上効果を抑制する働きのある炭素数5及び炭素数6の脂肪族不飽和炭化水素含有量を抑えることができるため、無鉛ガソリンのオクタン価向上効果を高めることができ、高オクタン価のガソリンを効率良く得ることができる。また、脂肪族不飽和炭化水素含有量を抑えることで接触分解ガソリンや得られる無鉛ガソリンの酸化安定性も向上することができる。
【0027】
更に、本発明の無鉛ガソリンにおける流動床接触分解装置から留出するガソリン基材(1)の炭素数7の炭化水素含有量が25容量%以下、好ましくは23容量%以下、下限は好ましくは1容量%である。また、炭素数7の炭化水素含有量に対する炭素数7の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比は0.40以下、好ましくは0.35以下、下限は好ましくは0.1である。
【0028】
更に、本発明の無鉛ガソリンにおける流動床接触分解装置から留出するガソリン基材(1)の10容量%留出温度(T10)は45℃以上、90容量%留出温度(T90)は185℃以下、好ましくは10容量%留出温度が50℃以上、90容量%留出温度が183℃以下、より好ましくは10容量%留出温度が52℃以上、90容量%留出温度が180℃以下である。10容量%留出温度が45℃以上、90容量%留出温度が185℃以下ならば、接触分解ガソリンのオクタン価を高く維持することができるため、高オクタンな無鉛ガソリンを効率良く製造することができ、更に該ガソリン基材を用いて製造した無鉛ガソリンは運転性やエンジン清浄性に優れた性能を有するため好ましい。
【0029】
本発明の無鉛ガソリンにおける接触改質装置から留出するガソリン基材(2a)の炭素数7以上の芳香族含有量は75容量%以上、好ましくは80容量%以上であり、かつ炭素数8の芳香族含有量が5容量%以上50容量%以下である。また、炭素数8の芳香族炭化水素含有量に対する1,2ージメチルベンゼン含有量の容量比が0.25以下、好ましくは0.23以下、下限は好ましくは0.05である。炭素数7以上の芳香族含有量は75容量%以上、炭素数8の芳香族炭化水素含有量に対する1,2ージメチルベンゼン含有量の容量比が0.25以下ならば、運転性を維持しつつ、くすぶり性の悪化を防止し、エンジン内デポジット量の増加を防ぎ、排出ガス中の有害成分の増加を抑制できる。
【0030】
無鉛ガソリンにおける接触改質装置から留出するガソリン基材(2b)の炭素数7以上の芳香族含有量は75容量%以上、好ましくは80容量%以上であり、かつ炭素数8の芳香族含有量が0.1容量%以上5容量%未満、好ましくは0.1〜4.8容量%である。また、炭素数8の芳香族炭化水素含有量に対する1,2ージメチルベンゼン含有量の容量比が0.15以下、好ましくは0.14以下、下限は好ましくは0.05である。炭素数7以上の芳香族含有量は75容量%以上、炭素数8の芳香族炭化水素含有量に対する1,2ージメチルベンゼン含有量の容量比が0.15以下ならば、運転性を維持しつつ、くすぶり性の悪化を防止し、エンジン内デポジット量の増加を防ぎ、排出ガス中の有害成分の増加を抑制できる。
【0031】
本発明の無鉛ガソリンにおける接触改質装置から留出するガソリン基材(2a)の10容量%留出温度は100℃以上、90容量%留出温度は160℃以下であり、好ましくは10容量%留出温度が105℃以上、90容量%留出温度が155℃以下である。10容量%留出温度が100℃以上、90容量%留出温度が160℃以下ならば、接触改質ガソリンの重質化を防止できるとともに、運転性を維持しつつ、排出ガス中の有害成分の増加及びエンジン清浄性の悪化を防止できる。
【0032】
また、無鉛ガソリンにおける接触改質装置から留出するガソリン基材(2b)の10容量%留出温度は100℃以上、90容量%留出温度は170℃以下であり、好ましくは10容量%留出温度が105℃以上、90容量%留出温度が165℃以下である。10容量%留出温度が100℃以上、90容量%留出温度が170℃以下ならば、接触改質ガソリンの重質化を防止できるとともに、運転性を維持しつつ、排出ガス中の有害成分の増加及びエンジン清浄性の悪化を防止できる。
【0033】
更に、本発明の無鉛ガソリンは、流動床接触分解装置から留出するガソリン基材(1)の配合量が25容量%以上60容量%以下、好ましくは30容量%以上60容量%以下、かつ接触改質装置から留出するガソリン基材(2a)または(2b)の配合量が5容量%以上40容量%以下、好ましくは10容量%以上35容量%以下である。ガソリン基材(1)の配合量が25容量%以上60容量%以下、かつガソリン基材(2a)または(2b)の配合量が5容量%以上40容量%以下ならば、運転性を維持しつつ、排出ガス中の有害成分の増加及びエンジン清浄性の悪化を防止できる。また、無鉛ガソリンの酸化安定性の低下を防ぐことができる。
【0034】
上記ガソリン基材(1)、ガソリン基材(2a)または(2b)などを配合してなる本発明の無鉛ガソリンは、リサーチ法オクタン価(RON)が89以上93未満、好ましくは89〜92、モータ法オクタン価(MON)が79以上84未満、好ましくは79〜83である。リサーチ法オクタン価が89以上ならば、高い運転性能を維持することが可能となり、モータ法オクタン価が79以上であれば高速走行時のアンチノック性の低下を防止することができる。なお、このリサーチ法オクタン価及びモータ法オクタン価は、JIS K 2280に準拠して測定した値である。
【0035】
式1のように、ガソリンのオクタン価は、各成分のオクタン価とその成分の体積混合率を掛け合わせたものを積算して算出することができる。すなわち、式1を用いると、最終組成物である無鉛ガソリンのリサーチ法オクタン価Aは、下記B、C、Dにより以下の式3で算出される。
A=CD+B ………(式3)
〔式3中、Aは無鉛ガソリンのリサーチ法オクタン価、Bは混合ベース基材の計算オクタン価、即ち上記ガソリン基材(2a)または(2b)の接触改質ガソリン以外の無鉛ガソリン調合に使用したガソリン基材のリサーチ法オクタン価とその容量混合割合の積を合算した計算オクタン価で、下記式aで表され、
B=Σ(RON(i)×VOL(i)) ………(式a)
(式a中、RON(i)はガソリン基材iのリサーチ法オクタン価、VOL(i)はガソリン基材iの容量混合割合を示す。)
Cは上記ガソリン基材(2a)または(2b)の接触改質ガソリンの容量混合割合、Dは上記ガソリン基材(2a)または(2b)の接触改質ガソリンのリサーチ法オクタン価を示す。〕
【0036】
本発明は、(1)記載の基材および(2a)または(2b)記載の基材を用いて無鉛ガソリンを調製することにより、オクタン価ボーナスを効果的に生じさせ、式3で計算した場合の(2a)または(2b)記載の基材のオクタン価を見かけ上、高めるものであり、その差分をXとすると、式3は式4となる。
A=C(D+X)+B ………(式4)
式4を変形すると式5〜7となる。
A−B=C(D+X) ………(式5)
(A−B)/C=D+X ………(式6)
(A−B)/C−D=X ………(式7)
式7における差分Xがオクタン価向上効果を示しており、このXの値がある一定値(2.5)上になると、オクタン価向上効果が十分引き出されていることを示している。
すなわち、本発明の無鉛ガソリンは、下記式8で表されるオクタン価向上指数が2.5以上、好ましくは2.8以上であることが好ましい。
(A−B)/C−D≧2.5 ……(式8)
ガソリン基材(2b)場合、オクタン価ボーナス指数(Ob)は2以上、好ましくは2.3以上である。
【0037】
前記オクタン価向上指数が2.5以上であれば、流動床接触分解装置から留出するガソリン基材(1)と接触改質装置から留出するガソリン基材(2a)または(2b)を構成基材とする無鉛ガソリンのオクタン価向上効果を十分に得ることができ、高オクタン価な無鉛ガソリンを効率良く提供することができる。その結果、無鉛ガソリン製造に使用する各種ガソリン基材のオクタン価を低く調整することができ、製油所における高オクタン価ガソリン製造用のガソリン基材の製造時に必要なエネルギーや温暖化ガスの排出を押えることができる。
なお、このオクタン価向上指数は、JIS K 2280「オクタン価及びセタン価試験方法」により測定された、無鉛ガソリン及び各ガソリン基材のリサーチ法オクタン価及び接触改質装置から留出するガソリン基材(2a)または(2b)の容量混合割合から算出した値である。
【0038】
更に、本発明の無鉛ガソリンは、以下のような性状を有している。
密度が0.680〜0.783g/cm、好ましくは0.685〜0.770g/cmである。この密度が0.680g/cm以上とすることで良好な燃費を確保することができる。また、密度を0.783g/cm以下とすることで高密度の芳香族分を低減でき、排出ガスによる大気への芳香族排出量を低減することができる。なお、この密度は、JIS K 2249に準拠して測定した値である。
【0039】
50容量%留出温度(T50)が75〜110℃、好ましくは75〜105℃であり、70℃留出量(E70)が18〜40容量%、好ましくは20〜38容量%である。50容量%留出温度及び70℃留出量が上記範囲内であれば、始動性、運転性、加速性に不具合が生じる場合を防ぐことができる。なお、これらの蒸留性状はJIS K 2254に準拠して測定した値である。
【0040】
リード蒸気圧が45〜93kPa、好ましくは50〜90kPaである。リード蒸気圧を93kPa以下にすることによって蒸発ガスの量を少なくすることができ、45kPa以上とすることで低温始動性、暖気性の低下を防ぐことができる。なお、このリード蒸気圧は、JIS K 2258に準拠して測定した値である。
【0041】
ベンゼン含有量が1容量%以下、好ましくは0.8容量%以下である。このベンゼン含有量が1容量%以下であれば、大気中のベンゼン濃度の増加を防止し、環境汚染を低減できる可能性がある。なお、このベンゼン含有量は、石油学会法JPI−5S−33−90(ガスクロマトグラフ法)に準拠して測定した値である。
【0042】
硫黄分含有量が10質量ppm以下、好ましくは8質量ppm以下である。この硫黄分含有量が10質量ppm以下であれば、排出ガス浄化触媒の能力低下を防止し、排出ガス中のNOx、CO、THCの濃度上昇を防止できる可能性がある。なお、この硫黄分含有量は、JIS K 2541に準拠して測定した値である。
【0043】
芳香族含有量が10〜40容量%、好ましくは15〜40容量%である。この芳香族含有量が40容量%以下であれば、排出ガス中の有害成分の増加を防ぐことができる。なお、この芳香族分含有量は、石油学会法JPI−5S−33−90(ガスクロマトグラフ法)に準拠して測定した値である。
【0044】
脂肪族不飽和炭化水素含有量が30容量%以下、好ましくは2容量%以上25容量%以下である。この脂肪族不飽和炭化水素含有量が30容量%以下であれば、酸化安定性の低下を防ぐことができる。なお、脂肪族不飽和炭化水素含有量は、石油学会法 JPI−5S−33−90(ガスクロマトグラフ法)に準拠して測定した値である。
【0045】
本発明の無鉛ガソリンの製造は、上記ガソリン基材(1)、及びガソリン基材(2a)または(2b)を必須基材として配合すること以外は特に制限はなく、得られる無鉛ガソリンの性状が上記本発明に規定する性状を満たす限りにおいて、必要に応じて、上記必須基材以外の従来からガソリンの基材に用いられている各種基材(但し、含酸素系基材を除く)を、その性状に応じて配合量を適宜選択して用いて本発明の無鉛ガソリンを製造することができる。
【0046】
上記必須基材以外の基材として、下記のような各種留分が挙げられる。
(a)重質の直留ナフサなどを接触改質法により、水素気流中で高温・加圧下で触媒と接触処理して得られた改質ガソリンを蒸留により、軽質留分、ベンゼン留分、重質留分に分けた内の軽質留分(脱ベンゼン軽質接触改質ガソリン)。
(b)原油を常圧蒸留した直留ナフサを軽質留分と重質留分に分けた内の軽質留分を脱硫処理して得られた脱硫直留軽質ナフサ。
(c)イソブタンと低級オレフィン(ブテン、プロピレン等)を原料として、酸触媒(硫酸、フッ化水素、塩化アルミニウム等)の存在下で反応させて得られるアルキレート。 (d)原油や粗油等の常圧蒸留時、改質ガソリン製造時、あるいは分解ガソリン製造時等に蒸留して得られるブタン、ブテン類を主成分としたC4留分。
(e)直鎖の低級パラフィン系炭化水素の異性化によって得られるアイソメレート、あるいはアイソメレートを精密蒸留して得られるイソペンタン等。
【0047】
本発明の無鉛ガソリンには、ポリエーテルアミン、ポリアルキルアミン、ポリイソブテンアミン、コハク酸イミド等の清浄剤を添加することができる。添加量は50〜1000質量ppmが適当であり、好ましくは100〜500質量ppmである。添加量が50質量ppm以上ならば吸気バルブデポジットの増加を防ぐことができ、1000質量ppm以下ならば燃焼室デポジットの増加を防ぐことができる。清浄剤を上記一定量添加すれば、上記本発明で用いる接触改質ガソリンのエンジン内デポジットの生成抑制効果と相まって、燃焼室デポジットの生成を一層効果的に抑制することができる。
【0048】
本発明の無鉛ガソリンには、更に必要に応じて、各種の添加剤を適宜配合することができる。この添加剤としては、フェノール系、アミン系等の酸化防止剤、チオアミド化合物等の金属不活性剤、有機リン系化合物等の表面着火防止剤、多価アルコール及びそのエーテル等の氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属やアルカリ土類金属塩、高級アルコールの硫酸エステル等の助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等の帯電防止剤、アルケニル琥珀酸エステル等の錆止め剤、及びアゾ染料等の着色剤等、公知の燃料添加剤が挙げられる。これらを1種又は数種組み合わせて添加することができる。これら燃料添加剤の添加量は任意であるが、通常、その合計添加量を0.1質量%以下とすることが好ましい。
【実施例】
【0049】
以下に本発明の内容を実施例及び比較例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0050】
(実施例1〜3、比較例1〜3)
表1に示す性状の軽質接触改質ガソリン、重質接触改質ガソリン、接触分解ガソリン、直留軽質ナフサ、アルキレート、及びC4留分を表2に示す配合比で配合することにより、表2に示す性状の無鉛ガソリンを得た。
なお、表1において、重質接触改質ガソリン1は本発明に規定するガソリン基材(2a)の性状を満たすものであり、重質接触改質ガソリン2はそれを逸脱するものであり、また、接触分解ガソリン1は本発明に規定するガソリン基材(1)の性状を満たすものであり、接触分解ガソリン2はそれを逸脱するものである。
【0051】
〔オクタン価向上指数〕
実施例1〜3及び比較例1〜3の無鉛ガソリンについて、重質接触改質ガソリン基材、及び無鉛ガソリンのリサーチ法オクタン価を測定して、下記式9で表されるオクタン価向上指数を算出した。
オクタン価向上指数=(A−B)/C−D ………(式9)
〔式9中、Aは無鉛ガソリンのリサーチ法オクタン価、Bは混合ベース基材の計算オクタン価、即ち上記ガソリン基材(2a)の接触改質ガソリン以外の無鉛ガソリン調合に使用したガソリン基材のリサーチ法オクタン価とその容量混合割合の積を合算した計算オクタン価で、下記式aで表され、
B=Σ(RON(i)×VOL(i)) ………(式a)
(式a中、RON(i)はガソリン基材iのリサーチ法オクタン価、VOL(i)はガソリン基材iの容量混合割合を示す。)
Cは上記ガソリン基材(2a)の接触改質ガソリンの容量混合割合、Dは上記ガソリン基材(2a)の接触改質ガソリンのリサーチ法オクタン価を示す。〕
オクタン価向上指数の算出結果を表2に示す。表1中、1,2DMBは、1,2−ジメチルベンゼンを示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
実施例1〜3の無鉛ガソリンは、いずれも本発明で規定する基材(1)、(2a)の組成及び成分の容量及び容量比を満足する接触分解ガソリン及び接触改質ガソリンを混合しており、比較例1〜3で得られた、本発明で規定する基材(1)、(2a)の組成及び成分の容量及び容量比を満足していない接触分解ガソリン及び接触改質ガソリンを混合して調製した無鉛ガソリンと比較して、オクタン価向上指数が2.5以上となり、オクタン価向上効果が増大していることがわかった。
【0055】
以上の結果から、本発明の無鉛ガソリンは、流動床接触分解装置から留出するガソリン基材と接触改質装置から留出するガソリン基材を混合し得られる無鉛ガソリンのオクタン価向上効果が最も高められており、高オクタン価のガソリンを効率良く提供でき、製油所における高オクタン価ガソリン製造用のガソリン基材の製造時に必要なエネルギーや温暖化ガスの排出を抑制できることがわかった。
【0056】
(実施例4〜6、比較例4〜6)
以下に実施例4〜6、比較例4〜6を記載する。
これらの実施例では表3に示す性状の軽質接触改質ガソリン、脱キシレン重質接触改質ガソリン、接触分解ガソリン、直留軽質ナフサ、アルキレート、C4留分を表4に示す配合比で配合することにより、表4に示す性状の無鉛ガソリンを得た。
なお、表3において、脱キシレン重質接触改質ガソリン1、2は、ガソリン基材(2b)の性状を満たすものであり、脱キシレン重質接触改質ガソリン3はそれを逸脱するものであり、また、接触分解ガソリン1は別発明に規定するガソリン基材(1)の性状を満たすものであり、接触分解ガソリン2はそれを逸脱するものである。
〔オクタン価向上指数〕
実施例4〜6及び比較例4〜6の無鉛ガソリンについて、脱キシレン重質接触改質ガソリン基材、及び無鉛ガソリンのリサーチ法オクタン価を測定して、実施例1などと同様にオクタン価向上指数を算出した。
オクタン価向上指数の算出結果を表4に示す。表3中、1,2DMBは1.2−ジメチルベンゼンを示す。
実施例4〜6と比較例4〜6を比較すると、オクタン価ボーナス指数が2.0以上となり、オクタン価向上効果が増大していることがわかる。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】