特許第5702783号(P5702783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5702783
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】ファンブレード用振動減衰シム
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/34 20060101AFI20150326BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20150326BHJP
   F01D 5/16 20060101ALI20150326BHJP
   F01D 5/30 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   F04D29/34 F
   F04D29/66 M
   F01D5/16
   F01D5/30
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-524210(P2012-524210)
(86)(22)【出願日】2010年8月9日
(65)【公表番号】特表2013-501883(P2013-501883A)
(43)【公表日】2013年1月17日
(86)【国際出願番号】EP2010061534
(87)【国際公開番号】WO2011018425
(87)【国際公開日】20110217
【審査請求日】2013年7月31日
(31)【優先権主張番号】0955625
(32)【優先日】2009年8月11日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】スネクマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビルツ,ロラン
(72)【発明者】
【氏名】マロワ,フアブリス
(72)【発明者】
【氏名】ルゲザ,パトリツク・ジヤン−ルイ
(72)【発明者】
【氏名】トラン,ジユリアン
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−121473(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02038959(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/34
F01D 5/16
F01D 5/30
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンブレード(6)のプラットフォーム(12)とファンディスク(2)の間に挿入されることが意図された振動減衰シム(10)であって、ファンブレードのプラットフォームと接触状態にある少なくとも1枚のプレート(16a、16b)が取り付けられた半径方向外面(18)と、前記ディスク(2)に面することが意図された上流側表面(22)および位置合わせの切断部(26)によって上流側表面から分離された下流側表面(24)によって形成された半径方向内面(20)であって、前記上流側表面が、前記下流側表面に対して内部に向かって半径方向に位置している、半径方向内面(20)とを有する、振動減衰シム(10)において、
前記上流側表面(22)が、内部に向かって半径方向に突出し、その上流側端部(22a)からいくらかの距離のところから始まる突出ゾーン(101)を有し、
半径方向内面(20)の前記上流側表面(22)が、上流側端部(22a)から始まる凹部(103)によって開始し、次いで、内側に向かって半径方向に位置合わせされた位置合わせの切断部(105)に突きあたり、前記位置合わせの切断部(105)が、突出ゾーン(101)を始めることを特徴とする、振動減衰シム(10)。
【請求項2】
位置合わせの前記切断部(26)に対してそれぞれ下流側および上流側に配置された、ファンブレードのプラットフォームと接触状態にある上流側プレート(16a)、およびファンブレードのプラットフォームと接触状態にある下流側プレート(16b)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の減衰シム。
【請求項3】
前記突出ゾーン(101)が、前記上流側接触プレート(16a)に対して半径方向内側に位置していることを特徴とする、請求項2に記載の減衰シム。
【請求項4】
軸方向の停止プレート(34)が取り付けられた半径方向により高い部分を有する下流側端面(36)を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の減衰シム。
【請求項5】
前記突出ゾーン(101)が、半径方向内面(20)の前記上流側表面(22)の約40から70%にわたって軸方向に延びることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の減衰シム。
【請求項6】
位置合わせの前記切断部(26)が、軸方向に下流方向に開口する1つまたは複数の凹部(40)を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の減衰シム。
【請求項7】
ファンディスク(2)およびディスク上に組み立てられた複数のファンブレード(6)を含む航空機のターボ機械用ファン(1)であって、各々のブレードが、プラットフォーム(12)と、前記プラットフォームとディスクの間に挿入された、請求項1から6のいずれかに記載の少なくとも1つの振動減衰シム(10)とを有する、ファン(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、航空機のターボ機械用、好ましくはターボジェット用のファンに関する。より詳細には、本発明は、ブレードのプラットフォームとファンディスクの間に挿入された振動減衰シムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から知られているタージェット用ファン1が、図1に示されている。図1は、ファンの回転軸である長手方向軸4上に中心が置かれたディスク2を提示している。ファンブレード6は、ディスクの周囲に従来の形で組み立てられ、軸4の周りに定間隔で分散される。
【0003】
加えて、各々のブレード6に関連して、振動減衰シム10が、ブレードのプラットフォーム12とディスク2の周囲の間に半径方向に挿入される。全体的に、このシムは、ファンブレードの振動レベルを低減するように設計された接触プレート16a、16bが取り付けられたエラストマー製ブロック14の形態をとる。
【0004】
より詳細には、シム10は、プラットフォーム12と接触状態にある2枚のプレート16a、16bが取り付けられた半径方向外面18と共に、ディスク2に面する上流側表面22および位置合わせまたはレベルの切断部26によって上流側表面から分離された下流側表面24によって形成された半径方向内面20を有する。この点に関して、以下の説明ではすべて、「上流側」および「下流側」という用語は、矢印5によって図示された、ファンによって生成された推力方向に対して考えられなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半径方向内面20上では、上流側表面22は、下流側表面24に対して内部に向かって半径方向に位置している。上流側表面22は、それが位置する向かい側のディスク2の横断中央平面上に中心が置かれている。それとは逆に、下流側表面24は、ディスクと一体品を形成する取り付けフランジ28に対して垂直にかつそれに面し、外部に向かって半径方向に突出して位置している。このフランジ28は、軸方向端部のシム30のボルト締めによる組み立てを可能にして、振動減衰シム10が後方に向かって逃げることを防止する。この点に関して、シム30は、シム10上に配置された軸方向の停止プレート34を押し付ける半径方向の外部スカート32を、下流側端面36の半径方向の上側部分の領域内に有することに留意されたい。図1から明確に示されるように、端部プレート34はまた、下流側表面24にわたって伸張され、したがって逆L字の形状のセクションを得る。接触プレート16a、16bと同様に、停止プレートは、好ましくは金属から作製される。
【0006】
加えて、各々のフランジ28は、ディスク2の半径方向の歯23と一体品を形成するように設計され、この場合これらの歯23は、互いに対して円周方向に離間されており、互いの間に、ブレード6の基部を収容することが意図された凹部を画定する。
【0007】
下流側端面36の半径方向の内部分を構成すると考えられるシム10の位置合わせの切断部26では、軸方向に開口する1つまたは複数の凹部40が存在し、その各々は、フランジ28上の停止シム30の組み立てに使用されるボルト42の一部分を収容する。
【0008】
加えて、下流側に面して半径方向に位置合わせされた表面に相当する位置合わせの切断部26は、プラットフォームと接触状態にある上流側プレート16aおよびこの同じプラットフォームと接触状態にある下流側プレート16bそれぞれが両側に位置する境界部を構成することに留意されたい。
【0009】
最後に、上流側表面および下流側表面22、24は各々、ほぼ平坦であり、またはディスク2のプロファイルをたどるように内部に向かってわずかに凸状であることが留意されたい。この点に関して、各々のシム10は、ほんの数度に過ぎない傾斜セクターにわたって延びることができる。
【0010】
ファンの正常作動中、遠心効果は、図1に示されるように、減衰シム20をブレード6のプラットフォーム12の下部上に押し付けることを可能にする。プレート16a、16bをプラットフォームの対応する部分と接触させることによる遠心力の復元は、ブレードの振動レベルを低減することを可能にする。
【0011】
それとは逆に、風(風車)による自転モードでは、この遠心力はほとんど存在しないということが、ロータの上流側に向かうブレード6のチッピングと相まって、プラットフォーム12とディスクの周囲の間の空間を増大させ、これは、シム10の望ましくない移動を招くことがある。そのような移動は、図2では図示されており、減衰シム10の前方へのチッピングとして、したがって、上流側表面22の上流側端部22aと、この場合、シム10が配置される向かい側の歯23の半径方向外面23aによって構成されたディスク2の周囲との間の初期遊隙の低減として示している。
【0012】
シム10によって保持された良好でない位置は、早期の摩耗および破れ、また接触状態にある部分のそのような摩耗および破れも招く恐れがある。より詳細には、シム10の前方向のチッピングの常習的な結果は、軸方向の停止プレート34とその関連する停止シム30との間の接触の損失、および上流側の接触プレート16aとプラットフォームのその関連する部分との間の接触の損失である。次いで、極めて大きな強さの接触が、下流側接触プレート16bと、プラットフォームのその関連する部分との間に、また上流側表面22の上流側端部または畝部22aとディスク2との間にも存在し、その結果、これは、上記で述べられた早期の摩耗および破れのリスクとなる。
【0013】
したがって、本発明の目的は、従来技術の実施形態に比べ、上記で述べられた欠点に対する解決策を少なくとも部分的に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これを達成するために、本発明の目的は、ファンブレードのプラットフォームとファンディスクの間に挿入されることが意図された振動減衰シムであり、この場合前記シムは、ファンブレードのプラットフォームと接触状態にある少なくとも1枚のプレートが取り付けられた半径方向外面と、前記ディスクに面することが意図された上流側表面および位置合わせの切断部によって上流側表面から分離された下流側表面によって形成された半径方向内面であって、この場合前記上流側表面は、前記下流側表面に対して内部に向かって半径方向に位置している、半径方向内面とを有する。本発明によれば、前記上流側表面は、内部に向かって半径方向に突出し、その上流側端部からいくらかの距離のところから始まるゾーンを有する。
【0015】
この突出ゾーンの存在は、上記で説明されたシムのチッピングの大きさを制限することを可能にするが、それというのも、このゾーンは、不十分な遠心力により、減衰シムの半径方向外面をプラットフォームに押し付けることができないとき、ゾーンを止めることができるディスクの周囲のできる限り近くに位置するためである。加えて、シムのチッピングの大きさの制限は、突出ゾーンの下流側配置の結果である。
【0016】
シムのチッピングのこの制限は、とりわけ、軸方向の停止プレートとその関連する停止シムとの間の接触を維持することを可能にする。
【0017】
加えて、シムが前方向に限定的にチッピングした後、突出ゾーンの上流側畝部とディスクの間に接触が生じるとき、この畝部は低い角度を有し、その摩耗および破れを抑える。実際、この低い角度は、畝部とディスクの間の実質的な接触表面と同義であり、シムの早期の摩耗および破れのリスクを抑える。
【0018】
加えて、上流側表面の上流側端部からいくらかの距離のところにあり、位置合わせの切断部から上流側にある突出ゾーンの位置は、シムが完全に不均衡にならないことを可能にし、これは、その重心が、ほぼ平坦な上流側表面を有する従来技術の減衰シムと同じ領域内に存在し得ることを意味することが留意されたい。
【0019】
減衰シムは、好ましくは、位置合わせの前記切断部に対してそれぞれ下流側および上流側に配置された、ファンブレードのプラットフォームと接触状態にある上流側プレート、およびファンブレードのプラットフォームと接触状態にある下流側プレートを含む。
【0020】
前記突出ゾーンは、好ましくは、前記上流側接触プレートに対して半径方向に垂直に位置している。
【0021】
減衰シムは、好ましくは、軸方向の停止プレートが取り付けられた半径方向により高い部分である下流側端面を含む。
【0022】
前記突出ゾーンは、好ましくは、半径方向内面の前記上流側表面の約40から70%にわたって軸方向に延びる。
【0023】
位置合わせの前記切断部は、好ましくは、軸方向に下流方向に開口する1つまたは複数の凹部を含む。
【0024】
本発明の別の目的は、ファンディスクおよびディスク上に組み立てられた複数のファンブレードを含む航空機のターボ機械のファンであり、この場合、各々のブレードは、プラットフォームと、前記プラットフォームとディスクの間に挿入された、上記で説明された少なくとも1つの振動減衰シムとを有する。単一の振動減衰シムが、好ましくは所与のファンブレードの下方に配置される。
【0025】
本発明の他の利点および特徴は、以下の非制限的に詳述される開示において明らかになるであろう。
【0026】
本説明は、以下の添付された図を参照してなされる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】従来技術から知られている航空機ターボジェットのファンを表す図である。
図2】従来技術から知られている航空機ターボジェットのファンを表す図である。
図3】本発明の好ましい実施形態による航空機ターボジェットのファンを表す図である。
図4図3のファンに嵌められた振動減衰シムのある視点からの斜視図である。
図5図3のファンに嵌められた振動減衰シムの異なる視点からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図3および図4を参照すれば、本発明の好ましい実施形態による航空機ターボジェットのファン1が、見られ得る。このファンは、振動減衰シム10の上流側表面22の形状によってのみ図1および図2を参照して説明されたものとは異なる。さらには、図では、同じ番号符号を有する要素は、同一または類似の要素である。
【0029】
したがって、位置合わせの切断部26から上流側に配置された上流側表面22は、もはや従来技術のように平坦またはわずかな凸状のものではなく、内部に向かって半径方向に突出し、その上流側端部22aからいくらかの距離のところで始まるゾーン101を有する。
【0030】
その結果、半径方向内面20の上流側表面22は、上流側端部または畝部22aから始まる凹部103によって開始し、次いで突出ゾーン101を始める、内側に向かって半径方向に位置合わせされた位置合わせの切断部105に突きあたる。突出ゾーン101は、位置合わせの切断部26まで下流側に延ばされる。
【0031】
凹部103および突出部ゾーン101各々は、ディスク2に対向してほぼ平坦な表面、またはこのディスクのプロファイルをたどるように内部に向かってわずかに凸状である表面を有する。したがって、これらは、ディスク2から異なる距離のところで、シムの円周方向に沿って各々が均一に延ばされ、ゾーン101は、これらの2つのうちディスクに近い方のものである。突出ゾーン101は、好ましくは、上流側表面22の約40から70%にわたって軸方向に延び、上流側接触プレート16aに対して垂直に半径方向に位置する。
【0032】
図3に示されるように、シム10の限定された前方向のチッピングの後、突出ゾーン101の上流側畝部107と歯23の外部半径方向表面23aによって構成されたディスク2の周囲との間に接触が起こるとき、この畝部107は、低い角度を有して、その摩耗および破れを抑える。加えて、ここでも、不十分な遠心力により、シム10の半径方向外面18をプラットフォーム12に対して押し付けることができないときに遭遇する同じ状況では、シム10のチッピングを抑えることはまた、軸方向の停止プレート34とその停止シム30の間の接触を維持することを可能にする。
【0033】
ここでも図3に図示されたこの形状では、上流側表面22の上流側端部22aと歯23の半径方向外面23aの間には接触は生み出されず、それにより、エラストマー製ブロック14のこの特有の場所には早期の摩耗および破れは生じ得ない。
【0034】
当然ながら、さまざまな改変が、当業者によって、単に非限定的な例として説明されてきた本発明に加えられてよい。
図1
図2
図3
図4
図5