(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
いくつかの例示的な実施形態に関する以下の詳述では、本明細書の一部を構成する添付の図面について説明しており、本発明を実施できる特定の好適な実施形態を例示的に示している。これらの実施形態は、当該技術分野における当業者が本発明を実施できる程度に十分詳細に記載しており、他の実施形態が利用可能であって、本発明の精神または範囲を逸脱することなく、論理構造的、機械的、電気的および化学的な変更が可能であることを理解されたい。当業者が本明細書に記載した実施形態を実施可能とするのに必要ない細部説明を避けるため、当業者に既知の特定の情報を説明から省略する場合がある。従って、以下の詳述は限定の意味として捉えるべきではなく、例示的な実施形態の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0012】
本明細書で使用する用語「減圧(reduced pressure)」は一般に、治療を受けている組織部位の周囲圧力よりも低い圧力を意味する。殆どの場合、この減圧は患者がいる場所の大気圧よりも低くなるであろう。代替的には、この減圧は、組織部位における組織と対応する静水圧より低くてもよい。用語「真空(vacuum)」および「負圧(negative pressure)」は、組織部位にかかる圧力について説明するのに使用する場合もあるが、組織部位にかかる実際の減圧は、完全真空に通常対応する減圧よりも著しく低い場合がある。減圧は最初に、組織部位の領域に流体の流れを発生させることがある。組織部位の周りの静水圧が所望の減圧に近付くにつれてこの流れは弱まり、減圧が保持される。特に指示がない限り、本明細書に明記された圧力の値はゲージ圧である。同様に、減圧の増加は通常、絶対圧力の低下を意味し、減圧の低下は通常、絶対圧力の増加を意味する。
【0013】
本明細書で使用する用語「組織部位」は、任意の細胞上または内部に位置する創傷または異常を意味しており、骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱、または靱帯を含むが、それらに限定はされない。用語「組織部位」はさらに、必ずしも創傷または異常がある必要はなく、更なる組織の成長を加えて促進することが望ましい領域である任意の組織領域を意味する場合がある。例えば、減圧組織治療を特定の組織領域に使用して、捕集して別の組織位置に移植することができる更なる組織を成長させてもよい。
【0014】
減圧治療システムは、多くの場合、急性または長期療養を受ける患者に見られる大きくて非常に滲出しやすい創傷、ならびに減圧を適用しない治療では簡単に影響を受けない他の重度の創傷に適用される。容量が小さく、生じる滲出液が少ない低重度の創傷は通常、減圧治療の代わりに改良型被覆材を用いて治療されてきた。しかしながら、創傷治療は、たとえ小さくて重症でない創傷にも減圧治療を利用することによって改善することができる。
【0015】
現在、減圧治療の使用は、システム要素を監視して変更するために必要とされる労働力、治療を管理する医療関係者を訓練する必要性、および治療費のため、低重度の創傷に対して実施可能または手頃な選択肢であるとはみなされない。例えば、現行の減圧治療システムは複雑なため、特殊な知識が殆どあるいは全くない人の能力では、このような治療を自身または他者に行う行為を制限してしまう。現行の減圧治療システムのサイズもまた、治療システムおよび治療を受ける人間の運動性を損なってしまう。例えば、現行の減圧治療システムは、組織部位からの滲出液または他の液体を保存する別個のキャニスタを使用する必要がある。現行の減圧治療システムはさらに、通常は各治療後に使い捨てできず、治療に用いる減圧をかけるために電気部品または他の動力装置を必要とする。
【0016】
減圧治療は通常、病院またはモニタ医療の環境において使用されるが、このような従来の環境以外の外来および他の患者に減圧治療を行うことが有用となりうる多くの状況がある。従来の減圧システムは電動減圧ポンプを具えており、患者は治療中、比較的静止した状態でいる必要がある。サイズが小さく、手動動作ができ、必要に応じて治療を受けている患者が再動作できる携帯用ポンプが必要である。
【0017】
図1および
図2を参照すると、例示的な実施形態による減圧治療システム100は、患者の組織部位108に配置された減圧被覆材104を具えている。減圧被覆材104は、導管112によって減圧源110と流体連結されている。この導管112は、管アダプタ116を介して、減圧被覆材104と流体連通していてもよい。
図1に例示する実施形態では、減圧源110は、本明細書に記載する圧力調整ポンプのような手動ポンプである。他の実施例では、減圧源110は圧力調整機能を具えていてもよいが、電気モータで駆動する減圧ポンプまたは真空ポンプによって、選択された減圧まで最初に充填または再充填されてもよい。さらに他の実施形態では、減圧源110は、病院や他の医療施設において利用できる吸盤ポートによって、選択された減圧に充填してもよい。
【0018】
減圧源110は減圧治療ユニット(図示せず)内に収容されるか、併用して使用することができ、これはさらに、減圧治療を組織部位108に適用するのに更に役立つセンサ、処理ユニット、警報表示器、メモリ、データベース、ソフトウェア、画面ユニット、およびユーザインタフェースを具えていてもよい。一実施例では、センサまたはスイッチ(図示せず)を減圧源110またはその近くに配置して、減圧源110によって生成された供給圧を測定してもよい。センサは、減圧源110によって供給される減圧を監視および制御する処理ユニットと通信することができる。減圧被覆材104および組織部位108に減圧を送達すると、組織部位からの滲出液の排水を維持し、組織部位周辺の組織への血流を高め、組織部位に微小歪みを生みだすことによって、新しい組織成長が促進される。
【0019】
減圧被覆材104は、組織部位108に配置されるよう構成された分配マニホールド120と、組織部位108周辺の減圧被覆材104を密閉するシール層122とを具えている。カバー124、またはドレープは分配マニホールド120およびシール層の上に配置され、組織部位においてカバー124下に減圧を維持する。このカバー124は、組織部位の外周を超えて延在していてもよく、カバー124上に接着剤または結合剤を具えてカバーを組織部位と隣接する組織に固定するようにしてもよい。一実施形態では、カバー124上に位置する接着剤をシール層122の代わりに用いることができるが、シール層122をカバー124の接着剤と共に用いて、組織部位108におけるカバー124の密閉を高めてもよい。他の実施形態では、シール層122をカバー124上に位置する接着剤の代わりに用いてもよい。
【0020】
減圧被覆材104の分配マニホールド120は、組織部位108と接触するように構成されている。分配マニホールド120は、減圧被覆材104によって治療されている組織部位108と部分的または完全に接触する場合がある。組織部位108が創傷の場合、分配マニホールド120は部分的または完全に創傷を塞いでもよい。
【0021】
分配マニホールド120は、実施する治療の種類または組織部位108の種類またはサイズといった様々な要因に応じて、任意のサイズ、形状、または厚さにすることができる。例えば、分配マニホールド120のサイズおよび形状を使用者がカスタマイズして、組織部位108の特定部分を覆う、あるいは組織部位108を塞ぐか部分的に塞ぐことができる。
図3に図示する分配マニホールド120は矩形形状をしているが、分配マニホールド120は円形、長円形、多角形、不揃いな形状または任意の他の形状といった形状であってもよい。
【0022】
例示的な一実施形態では、分配マニホールド120は発泡材料であり、分配マニホールド120が組織部位108またはその近くと接触している場合に、組織部位108に減圧を分配する。この発泡材料は、疎水性または親水性の何れかであってもよい。非制限的な一実施例では、分配マニホールド120は、テキサス州サンアントニオのKinetic Concepts社から入手可能なGranuFoam(登録商標)被覆材といった、開放セル、網状ポリウレタン発泡体である。
【0023】
分配マニホールド120が親水性材料で作られた実施例では、分配マニホールド120はさらに、組織部位108から流体を吸い上げながら、マニホールドとして組織部位108に減圧を供給し続けるように機能する。分配マニホールド120の吸い上げ特性は、毛細管流動または他の吸い上げ機構によって組織部位108から流体を排出させる。親水性発泡体の例は、テキサス州サンアントニオのKinetic Concepts社から入手可能なV.A.C.WhiteFoam(登録商標)被覆材といった、ポリビニルアルコールの開放セル発泡体である。他の親水性発泡体は、ポリエーテルで作られたものを含んでもよい。親水性特性を示す場合ある他の発泡体は、親水性を呈するように処理またはコーティングされた疎水性発泡体を含む。
【0024】
分配マニホールド120はさらに、減圧被覆材104を介して減圧をかけた場合、組織部位108における肉芽組織を促進させることがある。例えば、分配マニホールド120の任意または総ての面は、分配マニホールド120を介して減圧がかかると組織部位108に微小歪みおよび応力を生じる、不均一な、粗い、またはぎざぎざした形状をしていてもよい。これらの微小歪みおよび応力は、新しい組織の成長を増大させることが明らかにされている。
【0025】
一実施形態では、分配マニホールド120は、圧被覆材104を使用した後に患者の身体から除去する必要のない生体吸収性材料で構成されてもよい。適切な生体吸収性材料はポリ乳酸(PLA)とポリグリコール酸(PGA)の高分子混合物を含んでもよいが、これらに限定はされない。高分子混合物はさらに、ポリカーボネート、ポリフマル酸、およびカプロラクトンを含んでもよいが、これらに限定はされない。分配マニホールド120はさらに、新しいセル成長用のスキャフォールドとして機能してもよく、あるいはスキャフォールド材料を分配マニホールド120と共に使用してセル成長を促進させてもよい。スキャフォールドは、セルの成長、またはセル成長用の鋳型を提供する三次元多孔質構造といった組織の形成を高めるか促進するために用いられる物質または構造である。スキャフォールド材料の実例は、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、コーラルハイドロキシアパタイト、炭酸塩、または加工した同種移植片材料を含む。
【0026】
図3および
図4を参照すると、減圧治療装置150、減圧ポンプ、または減圧源が概略的に示されており、通路156、または導管によって調整チャンバ158と流体連結されたチャージチャンバ154を具えている。調整部材162は、通路156と動作可能に連結されており、チャージチャンバ154と調整チャンバ158との間の流体連通を選択的に可能にするか防いでいる。
図3および
図4に示す実施形態では、調整部材162は、調整チャンバ158内に配置されたピストン164を具えている。調整部材162はさらに調整ばね166を具えており、
図3に図示するように、開放位置に向かってピストン164にバイアスをかける。開放位置では、ピストン164が通路156を介する流体連通を可能にする。閉鎖位置(
図4参照)では、ピストン164は、通路156を介する流体連通を防ぐか、少なくとも著しく減少させる。
【0027】
前述のように、チャージチャンバ154は、通路156によって調整チャンバ158と流体連通している。チャージチャンバ154は、チャージチャンバ154に減圧を導入するための吸入口170を具えていてもよく、あるいは以下に説明するように、チャージチャンバ154は、ピストン駆動または他の装置と動作可能に連結して、チャージチャンバ154に減圧を充填してもよい。チャージチャンバ154は、手動、または代替的に電気または他の手段で動力供給される装置から減圧を受けるのに十分適している。
【0028】
調整チャンバ158は、導管172によって被覆材174と流体連通している。一実施形態では、導管172および被覆材174は、導管112および被覆材104と類似していてもよい。減圧治療が被覆材174および組織部位に適用される場合、望ましい治療圧力とほぼ等しい減圧を被覆材174に送達することが望ましい。これを実現するため、チャージチャンバ154は、周囲圧力よりも低い第1の圧力を蓄積する。調整チャンバ158は、周囲圧力よりもまた低い第2の圧力を蓄積する。チャージチャンバ154内に蓄積された第1の圧力は、調整チャンバ158内に蓄積された第2の圧力よりも低い。
【0029】
第2の圧力が望ましい治療圧力よりも低いか等しい場合、ピストンの反作用力は、ピストン164上の調整ばね166よってかけられたバイアス力を越えることができる。ピストンの反作用力は、ピストン164の対向面にわたる圧力差によってもたらされる。ピストン164の第1の側面176では、減圧治療装置150周辺の周囲圧力(例えば、大気圧)がピストン164に作用する。ピストン164の第2の側面178では、調整チャンバ158内の第2の圧力がピストンに作用する。第2の圧力が周囲圧力よりも低いため、反作用力が調整ばね166のバイアス力に抵抗してピストン164の第1の側面176上に作用する。調整チャンバ158内の第2の圧力が望ましい治療圧力よりも低いか等しい場合、ピストン164は閉鎖位置に移動してその状態に留まる。
【0030】
調整チャンバ158内の第2の圧力が望ましい治療圧力よりも高くなる(すなわち上回る)場合、被覆材174または減圧治療装置150内において流体が漏れることがあるため、調整ばね166によってピストン164に開放位置まで戻るバイアスがかけられる。開放位置では、チャージチャンバ154と調整チャンバ158との間の流体連通が可能となる。チャージチャンバ154内の第1の圧力が調整チャンバ158内の第2の圧力よりも低いため、調整チャンバ158内の第2の圧力は、ピストン164が再び閉鎖位置に移動して望ましい治療圧力に達する時点まで降下する。
【0031】
一実施形態では、チャージチャンバ154内に蓄積された第1の圧力は、約−150mmHgであり、望ましい治療圧力は約−125mmHgである。
【0032】
図5および
図6を参照すると、チャージチャンバ154と同様のチャージチャンバ182を充填するピストン駆動装置180が設けられている。ピストン駆動装置180は、チャージチャンバ182内に配置されたピストン184を具えている。このピストン184は、圧縮位置(
図5参照)と拡張位置(
図6参照)との間を往復運動することができる。ピストンばね188または他のバイアス部材は、ピストン184内に動作可能に連結されており、拡張位置に向かってピストン184にバイアスをかける。
【0033】
チャージチャンバ182を充填するため、ピストン184が圧縮位置に移動する。チャージチャンバ182の体積が減少するにつれて、シール190または他のバルブ部材によって、チャージチャンバ182内の流体がチャージチャンバ182を出ることが可能となる。ピストン184が圧縮位置まで移動した後、ピストンばね188はピストン184を拡張位置まで戻そうとする。チャージチャンバ182の体積が増加するにつれて、シール190は、流体がシール190を越えてチャージチャンバ182に入るのを防ぎ、チャージチャンバ182内に圧力低下をもたらす。ピストン184が完全に拡張位置まで移動した後、ピストン184を再び圧縮位置まで移動させて、チャージチャンバ182に減圧を再充填してもよい。
【0034】
ピストン駆動装置180は、使用者が手動で圧縮するピストン184であってもよい。代替的には、ピストン184は電気、水力または空気圧式アクチュエータによって動作してもよい。本明細書に記載した総てのチャージチャンバについて、手動または電力手段によってチャージチャンバに減圧を供給できることに注意されたい。
【0035】
図7および
図8を参照すると、例示的な実施形態による減圧治療装置、または減圧源211は、第1または外側シリンダ215、および第2または内側シリンダ219を有する手動ポンプである。第1のシリンダ215は、閉鎖端部および開放端部を有する通路223(
図9参照)を具えている。この通路223は、実質的に円筒形の壁によって規定することができる。通路223は、第1のシリンダ215の開放端部を介して第2のシリンダ219を摺動するように受けており、第2のシリンダ219は拡張位置と圧縮位置との間を可動する。第1および第2のシリンダは実質的に円筒の形状を有するように図示しているが、シリンダの形状はこの装置の動作を可能にする任意の他の形状であってもよい。
【0036】
拡張位置では、減圧源211は開放されており、減圧を能動的に送達または供給しない。圧縮位置では、減圧源211は準備または充填されており、減圧源211は減圧を送達することができる。出口227が第2のシリンダ219上に設けられ、送達管135と同様の送達管または他の導管と流体連通するように構成されており、これにより減圧源211によって生成された減圧を組織部位に供給することができる。
【0037】
図9乃至
図11を参照すると、減圧源211はさらに、シリンダリング229と、ピストン231と、シール235とを具えている。シリンダリング229は第1のシリンダ215の開放端部に配置され、第2のシリンダ219と外接している。シリンダリング229によって、第1のシリンダ215の開放端部における第1のシリンダ215と第2のシリンダ219との間の広い隙間がなくなる。減圧源211が組み立てられると、ピストン231およびシール235は、第1のシリンダ215の通路223内に摺動するよう収容される。ピストン231およびシール235の双方は第2のシリンダ219と第1のシリンダ215の閉鎖端部との間の通路223内に位置し、シール235は第2のシリンダ219とピストン231との間に位置する。
【0038】
更に具体的に
図11を参照すると、第1のシリンダ215は、第1のシリンダ215の閉鎖端部から通路223内に延在する突起部239を具えている。ピストンばね243または他のバイアス部材は通路223内に位置しており、突起部239によってピストンばね243の一端が収容される。この突起部239は、通路223内のピストンばね243の横方向運動を減少させる。ピストンばね243の反対側の端部は、ピストン231に抵抗するよう収容されている。ピストンばね243は、拡張位置に向かって、ピストン231、シール235、および第2のシリンダ219にバイアスをかける。
【0039】
再び
図9乃至
図11と、さらに
図12および
図13を参照すると、ピストン231は、外床部253によって連結された外壁247と内壁251とを具えている。環状部255が外壁247と内壁251との間に規定されており、複数の放射支持部259が外壁247と内壁251との間の環状部255内に配置されている。この放射支持部259は、ピストン231に更なる剛性をもたらし、さらに環状部255があること、ならびに環状部255内の放射支持部259のサイズおよび間隔により、環状部を具えていない単層ピストンと比較してピストン231の重量が減少する。しかしながら、何れのピストン設計が本明細書に記載の減圧源に適しているかは自明である。
【0040】
複数のガイド263がピストン231に配置されており、一実施形態では、ガイド263の1つは各放射支持部259に配置される。本明細書に更に詳しく記載するように、ガイド263は、シール235および第2のシリンダ219を基準としてピストン231を配置するように機能する。ガイド263はさらに、くさび嵌合による手段でピストン231を第2のシリンダ219に固定するように機能する。
【0041】
ピストン231はさらに内ボール267を具えており、これは内壁251および内床部271によって規定されている。一実施形態では、内床部271は、
図11に図示するように2段または複数段であってもよいが、内床部271は1段および/またはほぼ平坦であってもよい。凹部273が内床部271の下に規定されるように内床部271を配置して、ピストンばね243の一端を収容してもよい(
図11および
図13参照)。調整通路275は内床部271を貫通している。調整通路275に近い内ボール267内に弁座279を配置することができ、これにより、調整通路275を介する流体連通は、弁座279とバルブ本体とを選択的に係合することによって、選択的に制御することができる(
図15を参照して更に詳しく記載する)。
【0042】
壁283はピストン231の環状部255に位置しており、チャネル287が壁283と内ボール267との間を流体連結している。チャネル287によって、壁283と内ボール267との間の流体連通が可能となる。
【0043】
図9乃至
図11、さらに
図14および
図15を参照すると、シール235は、スカート部295によって囲まれた中央部291を具えている。複数の誘導開口部299が中央部291内に位置しており、減圧源211が組み立てられると、ピストン231のガイド263を受ける。連絡開口部301が中央部291内に同様に配置されており、一実施形態では、連絡開口部301は、誘導開口部299のようにシールの中心から等距離に放射状に間隔を置いている。連絡開口部301によって、シール235の中央部291を介して、組み立てられたピストン231のくぼみ283との流体連通が可能となる。
【0044】
シール235のスカート部295は、軸方向および中央部291から外側へ半径方向に延在している。
図11に示すように、半径方向に外側へ延在しているスカート部295は、第1のシリンダ215の内面305と係合しており、シール235を通過する一方向の流体連通を可能にする。換言すると、流体の流れがピストン231が配置されたシール235側からシール235の反対側に向けられている場合、シール235のスカート部295によって、流体がスカート部295を通過して流れることができるようになる。しかしながら、スカート部295は、逆方向へ流体が流れるのを実質的に防ぐ。シールのスカート部がスカート部295を通る流体連通を効率的に制御する一方で、例えば逆止弁または他のバルブといったバルブ部材を用いて、この機能を実施してもよい。
【0045】
図11および
図15にさらに詳細に図示するように、バルブ本体303はシール235の中央部291に位置している。多くの種類、形状およびサイズのバルブ本体を用いることができるが、バルブ本体303は頂点309を有する円錐形であってもよく、ピストン231の弁座279を密閉して係合するように構成されている。バルブ本体303はシール235の一体部分として図示されているが、バルブ本体303は代替的にシール235から分離する要素であって、弁座279と係合するように作られてもよい。
【0046】
一実施形態では、シール235およびバルブ本体303の双方はエラストマ材料で作られ、医療グレードのシリコーンを含んでもよいが、これに限定はされない。多くの異なる材料を用いてシール235およびバルブ本体303を構成、形成、または作ることができ、弾性材料を用いて、スカート部295と内面305およびバルブ本体303と弁座279の密閉特性を向上させることが好ましい。
【0047】
図11をより具体的に参照すると、調整ばね307が設けられており、ピストン231および弁座279から離れる方向へバルブ本体303にバイアスをかける。調整ばね307の一端は、ピストン231の内ボール267内の弁座279周囲と同心円上に配置することができ、調整ばね307の別の端部はバルブ本体303周囲に配置することができる。調整ばね307によって与えられたバイアス力は、調整通路275を介する流体連通が可能となる開放位置に向かってバルブ本体303を押す。一実施形態では、ばね307が開放位置に向かってバルブ本体303にバイアスをかける場合、シールが柔軟なため、シール235の中央部291のみが上方に移動する(
図20参照)。他の実施形態では、
図20Aに図示するように、ばね307のバイアス力がシール235全体を開放位置に向かって移動させてもよい。
【0048】
再び
図9乃至
図11、さらに
図16および
図17を参照すると、第2のシリンダ219は、第1の収納部311と第2の収納部315とを具えている。第1の収納部311は、第1の収納部311の開放端部の近くに位置する開口部323を有する外殻319を具えている。床部327は、開放端部と反対側の第1の収納部311の端部に外殻319と一体的に形成するか、連結されてもよい。通路331は、床部327の中央に配置することができる。ボス333は、第1の収納部311と一体的に形成するか、連結されている。ボス333は出口227を具えており、開口部323と物理的に位置合わせして、送達管を出口227と流体連通できるようにする。一実施形態では、ボス333は90度の流体継手であり、出口227が第1の収納部311内に位置する導管335と流体連通できるようにする。導管335は外殻の材料と同一または同様の材料で作られた剛性の導管であってもよく、または代替的な一実施形態では、導管335は弾性であってもよい。
【0049】
より具体的に
図17を参照すると、複数の誘導開口部337が第1の収納部311の床部327内に位置している。減圧源211が組み立てられると、誘導開口部337はピストン231のガイド263を受けて、確実に第2のシリンダ219がピストン231に位置合わせされた状態となるようにする。ガイド263と誘導開口部337との間のくさび嵌合は、ピストン231と第2のシリンダ219との相対位置を固定するように補助する。しかしながら、ピストン231および第2のシリンダ219を代替的な手段によって固定できるということは、容易に明らかである。接続開口部338もまた床部327内に位置しており、床部327を介して導管335との流体連通を可能にする。
【0050】
第2の収納部315は、ガイド343と一体的または連結された端部キャップ339を具えていてもよい。互いに、端部キャップ339およびガイド343は第1の収納部311の外殻319と摺動するように係合し、実質的に閉じた第2のシリンダ219を作り出す(様々な開口部および通路を除く)。第2のシリンダ219は少ない要素で構成することができる一方で、第1の収納部311および第2の収納部315があることにより、第2のシリンダ219内へのアクセスが簡単にできるようになり、さらに、減圧源211を簡単に組み立てることができるようになる。第1の収納部311および第2の収納部315を摺動しながら係合することに関する更なる利点を以下に更に詳しく説明する。
【0051】
シャフト347は端部キャップ339から延在しており、端部キャップ339と反対側に係合端部349を具えている。第2のシリンダ219が組み立てられると、シャフトは第2のシリンダ219の縦軸とほぼ同軸であってもよく、第1の収納部311の床部327の通路331を通って延在する。ばね351の一端が第1の収納部311の床部327を支え、ばね351の別の端部がシャフト347または第2の収納部315の別の部分を支えるように、ばね351が第2のシリンダ219内に配置される。ばね351は、シャフト347の係合端部349がシール235またはバルブ本体303を支えていない開放位置(
図11におけるシャフト347の位置参照)に向かって、シャフト347および第2の収納部315の他の部分にバイアスをかける。第1および第2の収納部311、315の間の摺動関係および係合によって、使用者は(ばね351のバイアス力に反する)第2の収納部に力をかけて、第2の収納部315を係合位置に移動させることができるようになる。係合位置では、シャフト347の係合端部349がバルブ本体303の上のシール235を圧迫し(
図18参照)、弁座279に反してバルブ本体303を押しつけ、その結果、調整通路275を介する流体連通を防ぐ。
【0052】
減圧源211が組み立てられると、
図11に図示するように、チャージチャンバ355は、第1のシリンダ215内のピストン231の下に規定される。調整チャンバ359は、シール235の下のピストン231の内ボール267内に規定されている。調整通路275は、バルブ本体303の位置に応じて、チャージチャンバ355と調整チャンバ359との間の選択的な流体連通を可能にする。調整チャンバ359は、チャネル287を介してピストン231のくぼみ283と流体連通している。このくぼみ283は、シール235の接続開口部301および第1の収納部311の接続開口部338と位置合わせされ、くぼみ283と、導管335および第2のシリンダ219の出口227との間の流体連通が可能となる。
【0053】
調整通路275はピストン231内に位置するように図示しているが、調整通路275は、第1のシリンダ215の壁を貫通して進んでいてもよい。調整通路275は、チャンバ間の流体連通を可能にするために適している任意の導管であってもよい。
【0054】
動作中、減圧源211は、減圧治療システム100(
図1参照)の構成要素と同様の他の減圧治療システムの要素と共に使用することができる。減圧源211の出口227は、組織部位に流体連結送された送達管または他の導管と連結するように構成されている。流体キャニスタを減圧源211と一体化することができるが、一実施形態では、減圧源211は内部チャンバ内に創傷滲出液または他の流体を収集するように意図していない。一実施形態では、減圧源211を滲出が少ない創傷で用いるか、外部キャニスタまたは吸収性被覆材といった代替的な収集システムを用いて流体を収集してもよい。
【0055】
図11および
図18を参照すると、減圧源211の拡張位置(
図11参照)および圧縮位置(
図18参照)を図示している。拡張位置では、減圧源211は「充填」されておらず、従って、出口227に減圧を送達することができない。減圧源211を準備するため、減圧源211が圧縮位置にくるように、使用者が第2のシリンダ219を手動で第1のシリンダ215内に圧縮する。使用者が第2のシリンダ219にかける力は、ピストンばね243がもたらすバイアス力より大きくなくてはならない。第2のシリンダ219を第1のシリンダ215内に圧縮し、第1のシリンダ215の閉鎖端部に向かって移動させるにつれて、使用者が第2のシリンダ219にかけている力もシール235およびピストン231に移動する。第2のシリンダ219、シール235、およびピストン231が圧縮位置に移動すると、チャージチャンバ355の体積が減少する。チャージチャンバ355の体積が減少するにつれて、チャージチャンバ355内の圧力は上昇するが、チャージチャンバ355内の空気および他の気体は、チャージチャンバ355内の圧力が上昇することによって、シール235のスカート部295を通って出ていくことができるようになる。
【0056】
使用者が第2のシリンダ219上にかけている圧縮力を開放すると、ピストンばね243によってピストン231にかかっているバイアス力が、ピストン231、シール235、および第2のシリンダ219を拡張位置に向かって移動させる。この運動が起こると、チャージチャンバ355の体積が増加する。シール235のスカート部295は一方向流れのみを可能にするため、空気および他の気体は、スカート部295を通ってチャージチャンバ355に入ることができない。体積が増加したため、チャージチャンバ355内に圧力の低下(すなわち、減圧の発生)が起こる。チャージチャンバ355内に発生する減圧量は、ピストンばね243のばね係数およびシール235の完全性に依存する。一実施形態では、組織部位に供給する減圧量よりも大きい減圧(すなわち、低い絶対圧力)が発生することが望ましい。例えば、125mmHgの減圧を組織部位にかけることが望ましい場合、150mmHgの減圧に充填されたチャージチャンバ355を有することが望ましいことがある。
【0057】
調整チャンバ359を用いて、出口227および組織部位に送達する望ましい治療圧力を発生させる。チャージチャンバ355内の減圧が調整チャンバ359内の減圧よりも大きい場合、および調整チャンバ359の減圧が望ましい治療圧力よりも低い場合、シール235にかかる上向きの力(シール235に下向きにかかっている大気圧に反して、調整チャンバ359内の絶対圧力の増加および調整ばね307のバイアス力の双方によってかけられている)がバルブ本体303を開放位置まで移動させて(
図20参照)、これにより、チャージチャンバ355と調整チャンバ359との間の流体連通が可能となる。シール235上の大気圧と釣り合っている調整チャンバ359内の減圧が、調整ばね307のバイアス力を打ち消し、バルブ本体を閉鎖位置(
図19参照)に移動させる程度まで十分に、チャージチャンバ355は調整チャンバ359に減圧を充填し続ける(すなわち、調整チャンバ359内の絶対圧力が低下し続ける)。調整チャンバ359が望ましい治療圧力に充填された場合、この圧力は前述のように出口まで送達されてもよい。
【0058】
治療のために減圧源211が送達管および組織部位に最初に連結されるとき、第2のシリンダ219を第1のシリンダ215内に複数回にわたって圧縮する必要があることがある。各圧縮ストロークが終了するにつれて、チャージチャンバ355内に発生する減圧は、管内および組織部位における圧力が望ましい治療圧力に近付き始めるまで、送達管および組織部位から空気および任意の他の気体を取り除く。
【0059】
1またはそれ以上の圧縮によって減圧源211が準備されると、チャージチャンバ355の外に押し出された空気および他の陽圧の気体がシール235のスカート部295を通って押し出され、調整チャンバ359には入らないということが重要である。調整チャンバ359に流れる陽圧の気体は送達管および組織部位に移動することができ、後に組織部位にかけられる減圧を打ち消してしまう。陽圧の気体が調整チャンバ359に入るのを防ぐため、シャフト347は、シール235およびバルブ本体303と係合するように作られる。第2のシリンダ219が第1のシリンダ215内に圧縮されるにつれて、第2の収納部315が第1の収納部311と相対的に移動して、これにより、シャフト347がバルブ本体303に力をかけてバルブ本体303を閉鎖位置に保持する。圧縮全体にわたって、または減圧源211の充填ストロークの間、シャフト347は係合した状態にあるため、チャージチャンバ355内の空気はシール235を通って排気され、調整チャンバ359内には入らない。
【0060】
第1のシリンダ215、第2のシリンダ219、ピストン231、およびシール235を具える減圧源211を円筒形として本明細書に記載してきたが、これらの要素の総ては任意のサイズおよび形状とすることができることは容易に明らかである。さらに、弁座279およびバルブ本体303の相対位置は、バルブ本体303が弁座279の下に位置するように逆であってもよい。
【0061】
図21および
図22を参照すると、減圧治療システム511は、組織部位517に配置された被覆材515に減圧を送達する減圧治療装置513を具えている。この減圧治療装置は、第1の柔軟ブラダ521と、第2の柔軟ブラダ523とを具える。柔軟ブラダ521、523は、例えばシリコーンポリマ、ゴムのようなエラストマ材料、または別のエラストマ材料で作ることが好ましい。第1の柔軟ブラダ521は圧縮性チャンバ527を具えており、その中にはバイアス部材529が配置されている。第2の柔軟ブラダ523はチャージチャンバ535を具えており、その中にはバイアス部材537が配置されている。バイアス部材529、537は、チャンバ527、535がつぶれにくいようにバイアス力をもたらす任意の装置であってもよい。一実施形態では、バイアス部材529、537は、チャンバ527、535内またはこれを介して流体が流れることができるが、チャンバが減圧治療装置513周辺の周囲圧力よりも低い圧力に曝された場合につぶれにくい多孔質発泡体でもよい。
【0062】
第1の柔軟ブラダ521は一方向弁541を具えており、使用者が第1の柔軟ブラダ521を圧縮した場合に、圧縮性チャンバ527から空気を排除することができる。圧縮性チャンバ527内のバイアス部材529が、第1の柔軟ブラダ521を拡張位置に戻るように移動させようとするにつれて、一方向弁541は、一方向弁541を介して圧縮性チャンバ527に流体が入るのを防ぐか、著しく減少させる。代わりに、流体は、第1の柔軟ブラダ521と第2の柔軟ブラダ523との間に位置する一方向弁551を介して圧縮性チャンバ527に入る。この流体は、チャージチャンバ535から圧縮性チャンバ527内に吸い出され、チャージチャンバ535内に減圧を作り出す。第1の柔軟ブラダ521を圧縮して複数回にわたって拡張することができ、チャージチャンバ535内に所望の減圧量を作り出す。一実施形態では、チャージチャンバ535内のバイアス部材537は多孔質発泡体であって、圧縮性チャンバ527内に配置されたバイアス部材529より更につぶれにくい。この構成はチャージチャンバ535をつぶれにくくすることができ、これにより、さらに大きい減圧をチャージチャンバ535内に蓄積できる。
【0063】
チャージチャンバ535は、被覆材515と流体連通するように配置され、減圧を組織部位517に送達する。調整部材561がチャージチャンバ535と組織部位517との間に配置され、チャージチャンバ535によって組織部位517に送達される圧力を調整する。調整部材561は、本明細書に記載の他の調整弁と類似していてもよく、あるいは、圧力を調整できる任意の他の種類の調整弁または装置であってもよい。一実施形態では、チャージチャンバ535内の圧力が周囲圧力よりも低く、組織部位517に送達される望ましい治療圧力よりも低いことが望ましい。調整部材561は、組織部位517に送達される圧力が望ましい治療圧力よりも確実に低くならないようにする。組織517にかかる圧力が望ましい治療圧力を超え始めた(すなわち更に減圧が必要とされる)場合、調整弁が開いてチャージチャンバ535と組織部位517との間の流体連通が可能となる。
【0064】
図21および
図22に示す実施形態では、減圧治療装置は、本明細書に記載した他の実施形態の幾つかの態様と類似するチャージチャンバを有しているように記載されている。明確に規定された調整チャンバは特定の実施形態には記載していないが、調整圧力を維持する被覆材515内、または調整部材561を被覆材515に流体連結している流体導管内に調整チャンバが存在する。
【0065】
図23を参照すると、本明細書に記載した調整チャンバのような調整チャンバ内における時間に対する圧力の変化を示すグラフを示している。調整チャンバを再充填するチャージチャンバの機能によって、減圧源の動作中に調整チャンバ内の圧力を望ましい治療圧力から少し変化させることが可能となる。
【0066】
著しい利点を有する発明を示していることは、前述から明らかである。本発明は、その形状の幾つかのみを示しているが、限定するものではなく、その精神を超えることなく様々な変更および改変が可能である。