特許第5702860号(P5702860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5702860
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】グリースを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 177/00 20060101AFI20150326BHJP
   C10M 115/08 20060101ALN20150326BHJP
   C10M 117/02 20060101ALN20150326BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20150326BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20150326BHJP
   C10N 10/06 20060101ALN20150326BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20150326BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20150326BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20150326BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20150326BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20150326BHJP
   C10N 70/00 20060101ALN20150326BHJP
【FI】
   C10M177/00
   !C10M115/08
   !C10M117/02
   C10N10:02
   C10N10:04
   C10N10:06
   C10N20:00 A
   C10N20:00 Z
   C10N30:00 Z
   C10N30:08
   C10N40:02
   C10N50:10
   C10N70:00
【請求項の数】28
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-521952(P2013-521952)
(86)(22)【出願日】2011年7月27日
(65)【公表番号】特表2013-535546(P2013-535546A)
(43)【公表日】2013年9月12日
(86)【国際出願番号】US2011045602
(87)【国際公開番号】WO2012015966
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2013年5月24日
(31)【優先権主張番号】12/847,072
(32)【優先日】2010年7月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/073,793
(32)【優先日】2011年3月28日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、デイヴィッド、エス.
(72)【発明者】
【氏名】アバーナシー、スーザン、エム.
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−190996(JP,A)
【文献】 特開平04−093205(JP,A)
【文献】 特開2008−231310(JP,A)
【文献】 特開2008−163216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00−177/00
C10N10/00−80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第一潤滑基油及び少なくとも1つのアミンから成る第一混合物と、第二潤滑基油及び少なくとも1つのイソシアネートから成る第二混合物を調製すること;
b)当該第一混合物及び当該第二混合物を高流速衝撃条件及び高圧力下に混合帯中で一緒に混合して、それにより、当該少なくとも1つのアミン及び少なくとも1つのイソシアネートを反応させ、反応生成物を当該第一及び当該第二潤滑基油の全体にわたって分散させ、そして、当該第一及び当該第二混合物の各々を、直径0.030インチ(0.0762センチメートル)未満のオリフィスを通して混合帯に導入して、そして、当該反応及び分散は、同時に起こって、グリース生成物を形成すること;及び、
c)当該グリース生成物を混合帯から直接回収し、当該グリース生成物が、500°F(260℃)より大きい滴点及び100ちょう度点以下のP(60)〜P(100,000)ちょう度値の変化を示すこと、
を含む、グリースを調製する方法であって、
使用される高圧力が、500〜8000psi(3.447×10〜5.516×10ニュートン/平方メートル)の範囲内にあり、
使用される流速が、5〜1000g(0.1764〜35.27オンス)/秒の範囲内にある、前記方法。
【請求項2】
オリフィスの直径が0.020インチ(0.0508センチメートル)以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
当該第一及び第二潤滑基油が同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
当該第一混合物及び当該第二混合物が異なるオリフィスを通過する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
当該混合帯が、反応射出成形装置中にある、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
混合時間が10.0秒未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
混合時間が0.5秒未満である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アミン類の混合物を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
イソシアネート化合物類の混合物を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
アリールイソシアネート又はアルキルイソシアネートを使用し、アミン類の当該混合物が、アルキルアミン類、アルケニルアミン類、アルキレンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、シクロアルキレンアミン類、又はシクロアルキルアミン類を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
アリールイソシアネート又はアルキルイソシアネートが、トルエンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ビス(ジフェニルジイソシアネート)及びポリイソシアネート及びそれらの混合物から成る群から選択され、そして、
アミン類が、ブチルアミン、オレイルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ドデセニルアミン、ヘキサデセニルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキシレンジアミン、ドデシレンジアミン、オクチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチレンジアニリン、メチルアニリン、アニリン、アルキル化アニリン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミン、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程c)で回収されたグリース生成物が、反応生成物として調製された尿素増粘剤を少なくとも20重量%含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
追加の潤滑基油を工程c)のグリース生成物に添加して、尿素増粘剤を12重量%含むグリース生成物を調製することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第一混合物及び第二混合物を一緒に混合する時に、触媒又は開始剤が存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
物理的性質増強添加剤を工程c)のグリース生成物に添加することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
潤滑基油と混合した増粘剤の反応剤を、直径0.030インチ(0.0762センチメートル)未満のオリフィスに通過させて反応させて、グリースの全体にわたって分散した増粘剤を含むグリースを形成し、当該グリースは、500°F(260℃)より大きい滴点、350ちょう度点以下のP(100,000)値、100点以下のP(60)〜P(100,000)ちょう度値の変化を有し、当該反応及び分散は、同時に起こって、グリースを形成し、当該グリースを反応から直接回収すること、
を含む、グリースを調製する方法。
【請求項17】
第一潤滑基油及び少なくとも1つのアミンから成る第一混合物を、第二潤滑基油及び少なくとも1つのイソシアネートから成る第二混合物と反応させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第一潤滑基油及び少なくとも1つの金属水酸化物から成る第一混合物を、第二潤滑基油及び少なくとも1つの油脂から成る第二混合物と反応させる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
金属水酸化物が、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、及びそれらの混合物から成る群から選択され、少なくとも1つの油脂が、脂肪酸及び脂肪酸エステルから成る群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
当該混合物の1つが、サリチル酸、アゼライン酸又はセバシン酸を含む錯化剤を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
錯化剤を含む混合物を、当該反応にも添加する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
使用される圧力が、500〜8000psi(3.447×10〜5.516×10ニュートン/平方メートル)の範囲内にある、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
使用される流速が、5〜1000g(0.1764〜35.27オンス)/秒の範囲内にある、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
混合時間が10.0秒未満である、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
混合時間が0.5秒未満である、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
滴点が530°F(273℃)より大きい、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
P(60)〜P(100,000)ちょう度値の変化が60点以下である、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
グリースを連続ベースで調製する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
技術分野
我々は、グリース、一形態では尿素官能基を有する増粘剤で増粘したグリースを調製する方法を提供する。一形態では、本発明は、増粘剤を形成する反応及びグリースの同時混合をもたらすために高圧力及び高流速衝撃を使用してグリースを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
グリース製造技術は、過去10年で顕著な変化がなかった。現在の能力は、標準的なケトル手順、バッチプロセス、及びリチウム及びリチウム錯体グリースのために使用される連続グリース製造法の使用の周辺に集中する。グリースフォーミュラの合成の複雑さを低減するのに役立つグリースの新規な製造技術が必要とされている。新規なプロセスがグリースフォーミュラに所望の物理的特性も与えるならば特に、より効果的で効率的な製造プロセスがいつも望まれている。1つのそのような重要な特性は、「ノイズ」であり、他は、機械的安定性及び高温耐性である。
【0003】
深溝玉軸受を滑らかにするために使用されるグリースの静かな運転特性(ノイズ)は、軸受製造業者が工場充填グリースを選択する上で、ますます重要になってきた。歴史的には、軸受製造業者は、より静かな機械にとって成長した需要として可聴音としてそれ自体を明白に示した軸受振動にますます関心を持ってきた。軸受は、本質的にノイズがより少なくなるより細かい許容範囲に機械加工された時には、それらを滑らかにするために使用されるグリースのノイズ貢献がますます明白になった。その結果、主要な軸受製造業者は、軸受ノイズへのグリースの貢献の測定を可能とする計測器を独立に開発した。更に、汚染物質の存在に対する軸受寿命の相関は、グリースノイズ試験への更に増大した関心を促進した。なぜなら、グリースノイズは汚染物質の存在にいつも相関し、したがって軸受寿命を短くすることが、しばしば前提とされているからである。グリースのノイズ特性を知ることは、滑らかにされた軸受の寿命を予知可能とする十分な情報を提供しない、ということにほとんどのグリース製造業者は同意するであろうが、それにもかかわらず、ノイズ試験は、玉軸受グリースの全体の品質を評価するためにますます使用されている。したがって、彼らが軸受製造業にグリースを供給し続けるべきであるならば、グリース製造業者は、グリースノイズ品質を決定する様々な方法に及びそれらの生成物のノイズ品質に関心を持っていなければならない。
【0004】
グリースノイズ試験は、過去26年間にわたって多数の刊行物の主題であったけれども、なんの標準的な試験計器、試験軸受、又は試験プロトコルも、この間に、グリース供給業者や軸受製造業者によって採用されてこなかった。実際、多種多様の専用のグリースノイズ試験方法が、特に軸受製造業において現在使用されており、そこでは、各主要の軸受製造業者が、自分自身専用の計測及び方法を開発してきた。更に、各方法は、それを使用する会社に競争力を提供すると、その提案者によって考えられている。
【0005】
上記理由で、グリースの静かな運転(ノイズ)特性を試験することは、問題であった。本来は、それと一緒にパックされた軸受の感触によるグリースのバッチの運転特性の評価を可能とするマニュアル試験が、発展した。軸受自体のノイズ品質が改善すると、ますます低いレベルの軸受振動を検出可能とすることが必要になった。その結果、Chevron Research(Richmond,Calif.)は、修正した軸受振動レベル試験機(アンデロンメーター)を使用してグリースノイズを試験することを開始し、また、グリースノイズに関する作業変数及び添加物の効果を注意深く検討することを開始した。軸受振動品質を評価するために本来は開発されたアンデロンメーターは、その回転の機能として軸受の外輪の半径方向偏位を測定する。実際、アンデロン(anderon)という名称は、「半径方向偏位の角度導関数」(”angular derivative of the radial displacement”)の頭字語である。物理用語では、アンデロンは、変位距離/回転単位として表現される。
【0006】
外輪と接触しているセンサーヘッドは、軸受振動を検出する。センサーシグナルは、増幅され、そして、可聴音周波数の範囲をスパンする3個の周波数帯にフィルターされる:
低: 50−300Hz
中: 300−1,800Hz
高: 1,800−10,000Hz
【0007】
グリースに起因する振動(ノイズ)は、中間及び高周波数帯で検出され得る。Chevronグリースノイズ試験の最も早いバージョンでは、1分間の運転中に中間帯で記録された最も高く記録された振動スパイクを5個の軸受で平均し、平均値は、グリースアンデロン値として報告された。
【0008】
Chevronは、後に、ノイズパルス計数能力を追加してその試験計器を洗練した。パルス計数機は、あまりにも速くて帯形記録計で記録できないトランシェントの検出を可能にする。試験中、各帯のシグナルレベルが対応する計器上に表示されて帯形記録計上に記録され、その一方で、パルス計数機は、設定限界振幅レベルよりも上で起る振動トランシェントの数に比例した数字を検出して表示する。各試験運転の最後に、中間帯パルス計数機読取りが記録されて、中間帯シグナルの帯形記録が考察される。チャート上の最初の5秒は始動ノイズとして無視され、残りの55秒間に記録された最も高い振幅ピーク(スパイク)アンデロン値を記録する。5個の軸受で記録された結果は、平均され、アンデロンスパイク値/パルス計数として報告される。
【0009】
異なるグリース組成物は、可聴ノイズ及び軸受振動の量に影響を与える。グリースノイズは、グリース中の粒子の存在によるものである。グリース製造中に粒子サイズを制御するのに役立つプロセス技術が存在するが、ノイズ特性を更に改善するより良好な技術が依然として望まれている。
【0010】
潤滑グリースの高温耐性は、その滴点によって決定され得る。グリースの滴点は、例えば、標準試験方法のASTM D2265−06によって、一般的に測定される。潤滑グリースの滴点は、増粘剤が基油をもはや保持できない温度である。潤滑基油がもはや保持されることができない理由のいくつかは、当該油が非常に薄くなってそれが増粘剤によって保持されない、又は増粘剤が溶解したということである。試験では、グリースは一般的にカップ中に配置されて加熱される。滴点は、油の第一滴がカップの低い開口部分から落下する時の温度である。この特性は、高温度環境にかけられるべきグリースにとって非常に重要である。
【0011】
グリースの機械的安定特性も重要である。機械的安定性は、連続機械的運転中のグリースの濃度の変化に耐える能力に関する情報を提供する。機械的安定性を測定するために使用する標準試験方法は、ASTM D217−10である。非混和P(0)、60ストロークスP(60)及び100,000ストロークスP(100,000)でのちょう度値は、グリースの機械的安定性に関する良好な見識を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
グリース用の新規な有効でかつ効率的な製造プロセスのサーチを続ける。例えばポリ尿素系グリースである、良好な高温耐性及び機械的安定性を示すグリース、又は低いノイズグリースをもそのようなプロセスが製造するならば、特別な利益が現実化するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
概要
高流速衝撃及び高圧力下にグリースの成分を一緒に混合することを含むグリース組成物を調製する方法が提供される。衝撃は、非常に充分な混合を生み出す高流速でお互いに向かう試薬の強制流を伴う。試薬の流れが強制される混合チャンバーは、直径が0.030インチ(0.0762センチメートル)未満、典型的には直径が0.020インチ(0.0508センチメートル)以下のオーダー、のオリフィスサイズを有するであろう。混合の滞留時間は一般的に10秒以下であり、完全な反応で増粘剤を形成する。一形態では、滞留時間は1秒以下である。したがって、プロセスは全く効率的である。グリースを調製する方法は、バッチ式、又は連続グリース製造装置の一部であってもよい。小さいオリフィスサイズと一緒に高圧力及び高流速衝撃の使用により、グリースの全体にわたって増粘剤のほぼ完全な反応及び分散にもなる。分散は、伝統的なバッチ法で得られるものよりも全く有効である。
【0014】
一形態では、混合及び反応は反応射出成形装置中で起る。得られたグリース組成物は、極端に低いノイズグリースであり、尿素増粘剤粒子が実質的にない。
【0015】
一形態では、本プロセスにしたがって、アミン/潤滑基油混合物を、イソシアネート/潤滑基油混合物と混合する。その結果は、グリース生成物の全体にわたって完全に分散した尿素系増粘剤を形成する完全な反応である。
【0016】
他の要因の中で、潤滑基油中で、増粘剤反応剤、例えば、アミン及びイソシアネートを混合及び反応させるために高圧力/高流速衝撃手順を、混合チャンバーへの直径0.030インチ(0.0762センチメートル)未満の入口オリフィスと共に使用する時、基グリース生成物が効率的にかつ有効に得られることが発見された。一般的に、反応射出成形装置を使用し得る。混合/反応時間は非常に短く、10秒以下であり、一形態では1秒以下であり、短時間で調製される多量の生成物となる高効率的なプロセスとなり得る。得られた生成物は、プロセスの有効性について言えば、際だったノイズ特性、及び/又は良好な高温耐性及び改善された機械的安定性を持つ基グリースである。同時に、増粘剤反応剤、例えば、アミンとイソシアネートの反応を通じて増粘剤、例えば、尿素増粘剤が調製され、当該増粘剤は潤滑基油の全体にわたって分散されて基グリースを形成する。分散はとても有効であり、グリースの更なる処理やミリングは一般的に必要でない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、2500PSI(1.724e+007ニュートン/平方メートル)ショット圧力でRIM法を使用して製造されたグリースの顕微鏡写真である。
【0018】
図2図2は、1700PSI(1.172e+007ニュートン/平方メートル)ショット圧力でRIM法を使用して製造されたグリースの顕微鏡写真である。
【0019】
図3図3は、1000PSI(6.895e+006ニュートン/平方メートル)ショット圧力でRIM法を使用して製造されたグリースの顕微鏡写真である。
【0020】
図4図4は、従来のラボ法を使用して製造されたグリースの顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
形態の詳細な説明
一形態では、我々は、低いノイズ特性、及び/又は高温耐性及び改善された機械的安定性を有するグリースを調製する方法を提供する。当該方法は、高流速衝撃条件及び高圧力下に、潤滑剤基油及び増粘剤を形成する反応をする反応剤を含む、グリースの成分を一緒に混合することを含む。圧力は、500〜8000psi(3.447e+006〜5.516e+007ニュートン/平方メートル)という広い範囲をとり得る。一形態では、圧力は500〜4000psi(3.447e+006〜2.758e+007ニュートン/平方メートル)の範囲をとり得るのであり、他の形態では1000〜3500psi(6.895e+006〜2.413e+007ニュートン/平方メートル)又は1200〜3000psi(8.274e+006〜2.068e+007ニュートン/平方メートル)の範囲をとり得る。高流速衝撃は、5〜1000g(0.1764〜35.27オンス)/秒の速度で反応剤溶液が一緒に混合されるようなものである。一般的に、反応チャンバー中での滞留時間、すなわち、混合時間は、しばしば10秒未満であり、一形態では1.0秒未満である。他の形態は、0.5秒未満、そしてしばしば0.3秒未満の滞留時間又は混合時間を使用する。反応チャンバーの中への入口用オリフィスは、直径が0.030インチ(0.0762センチメートル)未満、典型的には直径が0.020インチ(0.0508センチメートル)未満である。そのような小さいオリフィスの使用はより高い混合圧力を提供することが発見され、そして、良好な混合、反応及びグリースの均一性となることが発見された。異なるサイズを有する異なるオリフィスを、多種の混合物用に使用できる。
【0022】
一形態では、反応及び混合は、反応射出成形装置(RIM)中で起る。そのような装置は周知であり、2つの溶液を衝突させて高流速衝撃条件及び高圧力下で混合させる能力を提供する。
【0023】
当該プロセスは、反応生成物の分散となる同時の混合及び反応を伴う。増粘剤反応剤の均質混合は、増粘剤を形成する反応となる。増粘剤は潤滑基油の全体にわたって均一に分散されて基グリース生成物を形成する。200倍に拡大して一般的に何の粒子も見られない。この基グリースは、例えば20〜50重量%である20重量%以上の尿素増粘剤を含有する濃縮物であってもよい。濃縮物として、最終グリース生成物を調製する際に取り扱うこと又は最終生成物が調製される場所にそれを輸送することは、より容易である。最終グリース生成物は、0.5〜25重量%又は11〜14重量%の増粘剤を含み得る。20%以上の増粘剤の濃縮物を使用すると、所望の濃度を得るために、潤滑基油の量の調整及び混合を単に伴うであろう。
【0024】
グリースを製造する際に、少なくとも2つの混合物が形成されて混合される。各混合物は潤滑基油及び増粘剤反応剤の1つを含む。例えば、尿素グリースを調製する上で、第一混合物は、潤滑基油及び少なくとも1つのアミンから成るアミン混合物である。1つよりも多いアミンを使用し得る。尿素増粘剤を調製する際に、いかなる適切なアミン又はアミン類の混合物を使用し得る。アミン/潤滑基油の混合物中のアミンの量は、一般的に混合物の5〜30重量%である。第二混合物は、潤滑基油及び少なくとも1つのイソシアネートから成る。1つよりも多いイソシアネートを使用し得る。尿素増粘剤を調製する際に、いかなる適切なイソシアネート化合物又は化合物の混合物を使用し得る。イソシアネート/潤滑基油の混合物中のイソシアネートの量は、一般的に混合物の約5〜30重量%の範囲内にある。
【0025】
その後、グリースの潤滑基油及び増粘剤反応剤を含有する当該2つの混合物を、高流速衝撃条件及び高圧力下に、例えば反応射出成形(RIM)装置中の、反応チャンバーに送る。各混合物の入口用に使用されるオリフィスは、直径が0.030インチ(0.0762センチメートル)未満、及び一形態では直径が0.020インチ(0.0508センチメートル)未満である。オリフィスは、同じサイズでも異なるサイズでもよい。当該増粘剤反応剤は反応して、グリースの全体にわたって有効に分散している増粘剤を形成する。当該反応及び分散は、ほぼ同時に起り、一般的に非常に完全であり更なる処理は不要である。
【0026】
本方法で調製されたグリースの顕微鏡画像は、増粘剤材料の大断片のない滑らかなグリースを示している。一般的に、本グリースは、200倍までに拡大して見て粒子がほとんどない。したがって、グリースを調製するための非常に有効で効率的な方法を提供する一方で、低いノイズ特性を有する改善されたグリースも得られる。
【0027】
ノイズ特性はアンデロンでしばしば測定される。ミクロインチ/ラジアンで記録されたアンデロンは、その回転の機能として軸受の外輪の半径方向偏位の検出に対応する。アンデロン値は、Sugawara Laboratoriesによって製造されているようなアンデロンメーター又は軸受振動レベル試験機を用いて測定される。これは、軸受ノイズ試験用に用いる標準計器である。当該試験では、中間帯(すなわち、300〜1,800Hz)で記録された最も高く記録された振動スパイク値が、5個の軸受での1分間運転の間に、各1分間運転の最初の5秒を無視して、記録される。1運転よりも多く実施され、各運転での最も高い値(すなわち、最も多くノイズのある時点)を平均してアンデロン値として報告する。本グリースは4アンデロンよりも高いスパイクを一般的には記録しない。
【0028】
本グリースは、その滴点によって測定されるような優れた高温耐性も示し得る。本方法によって調製されたグリースの滴点は、500°F(260℃)よりしばしば大きく、他の形態では530°F(276℃)より大きい。
【0029】
調製されたグリースの機械的安定性も改善されることが発見された。この特性は、グリースの混和ちょう度値、特にP(100,000)において見られることができる。この混和ちょう度値P(100,000)は350ちょう度点以下であることができる。P(60)〜P(100,000)ちょう度値の最小の変化は、良好な機械的特性を語ってもいる。調製された本グリースは、100ちょう度点以下、他の形態では60ちょう度点以下のP(60)〜P(100,000)ちょう度値の変化を示すことができる。
【0030】
混合されるべきグリースの成分は、潤滑剤基油、及び増粘剤を形成する反応をする反応剤を含む。上述したように、増粘剤を形成する反応剤は、潤滑剤基油及び少なくとも1つの反応剤を含む異なる混合物中に含まれる。製造される増粘剤のタイプは、単純石鹸、複合石鹸、ポリ尿素、ポリジメチルシロキサン、ポリプロピレン、及び他のポリマーを含む。石鹸グリースはけん化反応によって形成され、それらは現在では製造されるすべてのグリースの90%より多い。単純石鹸増粘剤にとって、反応剤は金属水酸化物及び1以上の油脂を含む。複合石鹸増粘剤にとって、反応剤は、例えばサリチル酸、アゼライン酸、又はセバシン酸などの錯化剤として機能する単鎖酸を更に含む。金属水酸化物の例は、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、及び水酸化アルミニウムである。金属水酸化物は、水酸化リチウム及び水酸化カルシウムの混合物などの混合物であってもよい。油脂は、典型的には、トリグリセリド又はメチルエステルなどの脂肪酸エステル又は脂肪酸である。適切な脂肪酸の例は、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸である。油脂は、起源が植物や動物であってもよい。ポリ尿素グリースにとって、増粘剤を形成する反応をする反応剤はアミン及びイソシアネートを含む。
【0031】
一形態では、ポリ尿素増粘剤を調製するために、アミン類及びイソシアネート化合物が使用される。具体的なアミン類及びイソシアネート化合物の例は、以下に提示される。以下の定義は、化合物を記載するのに使用されるであろう。
【0032】
「アルキルアミン」は、アミンNHRに言及し、しかも、Rは、6〜25個の炭素原子などの1〜35個の炭素原子の直鎖状飽和一価炭化水素基であるか、又は、3〜30個の炭素原子の分岐飽和一価炭化水素ラジカルである。アルキルアミン類の例には、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンなどが含まれるが、それらに限定されない。
【0033】
「アルケニルアミン」は、アミンNHRに言及し、しかも、Rは、2〜25個の炭素原子などの2〜35個の炭素原子の直鎖状不飽和一価炭化水素基であるか、又は、3〜30個の炭素原子の分岐不飽和一価炭化水素基であり、しかも、当該直鎖状不飽和一価炭化水素基及び当該分岐不飽和一価炭化水素基は、少なくとも1つの二重結合(−−C=C−−)を含有する。アルケニルアミン類の例には、アリルアミン、2−ブテニルアミン、2−プロペニルアミン、3−ペンチルアミン、オレイルアミン、ドデセニルアミン、ヘキサデセニルアミンなどが含まれるが、それらに限定されない。
【0034】
「アルキレンジアミンは、ジアミンNH−R−NHに言及し、しかも、Rは、2〜25個の炭素原子などの1〜35個の炭素原子の直鎖状飽和二価炭化水素基であるか、又は、3〜35個の炭素原子の分岐飽和二価炭化水素基である。アルキレンジアミン類の例には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキシレンジアミン、ドデシレンジアミン、オクチレンジアミンなどが含まれるが、それらに限定されない。
【0035】
「ポリオキシアルキレンジアミン」は、ジアミンNH−R−NHに言及し、しかも、Rは、ポリオキシアルキレン基である。ポリオキシアルキレンは、2〜25個の炭素原子などの2〜35個の炭素原子の二価繰り返しエーテル基である。ポリオキシアルキレンジアミン類の例には、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミンなどが含まれるが、それらに限定されない。
【0036】
「シクロアルキレンジアミン」は、シクロアルキル基に言及し、しかも、シクロアルキルの2個の炭素原子は、アミノ基(−NH)で置換されている。「シクロアルキル基」は、3〜10個の環状原子の環状飽和炭化水素基に言及する。シクロアルキレンジアミン基の代表例には、シクロプロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンなどが含まれるが、それらに限定されない。
【0037】
「シクロアルキルアミン」は、シクロアルキルの1個の炭素原子がアミノ基(−NH)で置換されているシクロアルキル基に言及する。「シクロアルキル基」は、3〜10個の環状原子の環状飽和炭化水素基に言及する。シクロアルキルアミン基の代表例には、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘプチルアミン、及びシクロオクチルアミンなどが含まれるが、それらに限定されない。
【0038】
「アリール含有ジイソシアネート」は、アリール機能性を含有するジイソシアネートに言及する。「アリール」は、6〜14個の環状原子の一価単環式又は二環式芳香族炭素環式基に言及する。例には、フェニル、トルエニル、ナフチル及びアントリルが含まれるが、それらに限定されない。酸素、窒素又は硫黄から独立に選択される1個又は2個のヘテロ原子を場合により含有し、残りの環状原子が炭素でありその1又は2個の炭素原子が場合によりカルボニルで置換されている、5−、6−、又は7員単環式非芳香族環に、当該アリール環は、場合により融合していてもよい。融合環を持つ代表的なアリール基には、2,5−ジヒドロ−ベンゾ[b]オキセピン、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキサン、クロマン、イソクロマン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、1,3−ジヒドロイソベンゾフラン、ベンゾ[1,3]ジオキソール、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2,3−ジヒドロ−1H−インドール、2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール、ベンズイミダゾール−2−オン、2−H−ベンゾオキサゾール−2−オン等が含まれるが、それらに限定されない。当該アリールは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシ、シアノ、ニトロ、及びチオアルキルから成る群から選択される1〜3個の置換基で場合により置換されていてもよい。酸素、窒素又は硫黄から独立に選択される1個又は2個のヘテロ原子を場合により含有し、残りの環状原子が炭素でありその1又は2個の炭素原子が場合によりカルボニルで置換されている、5−、6−、又は7員単環式非芳香族環に、当該アリール環は、場合により融合していてもよい。アリール含有ジイソシアネートの例には、トルエンジイソシアネート、メチレンビス(フェニルイソシアネート)、フェニレンジイソシアネート、ビス(ジフェニルイソシアネート)等が含まれるが、それらに限定されない。
【0039】
「アルキルジイソシアネート」は、アルキル機能性を含有するジイソシアネートに言及する。「アルキル」は、6〜25個の炭素原子などの1〜35個の炭素原子の直鎖状飽和一価炭化水素基、又は、3〜30個の炭素原子の分岐飽和一価炭化水素ラジカルに言及する。アルキルジイソシアネートの例にはヘキサンジイソシアネート等が含まれるが、それらに限定されない。
【0040】
ジイソシアネートは、2個のイソシアネート基(O=C=N−−)を含有する化合物に言及する。
【0041】
ポリイソシアネートは、2個より多いイソシアネート基(O=C=N−−−)を含有する化合物に言及する。
【0042】
ポリ尿素は、2以上の尿素基を含有する化合物に言及する。
【0043】
アミン化合物の中で、使用されるべきものは、アルキルアミン又はアルケニルアミン;アルキレンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、又はシクロアルキレンジアミン;及びシクロアルキルアミンである。
【0044】
使用されるべきアルキルアミン及びアルケニルアミンの例には、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、ドデセニルアミン、及びヘキサデセニルアミンが含まれるが、それらに限定されない。
【0045】
使用されるべきアルキレンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、又はシクロアルキレンジアミンの例には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキシレンジアミン、ドデシレンジアミン、オクチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、及びシクロヘキサンジアミンが含まれるが、それらに限定されない。
【0046】
使用されるべきシクロアルキルアミンの例には、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、及びシクロオクチルアミンが含まれるが、それらに限定されない。
【0047】
使用できる当該イソシアネートは、前述のアミン類と反応してジ尿素又はポリ尿素を製造するためのいかなる適切なイソシアネートであり得る。使用されるべきアリール含有ジイソシアネート又はアルキルジイソシアネートの例には、ヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(フェニルイソシアネート)、フェニレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート及びビス(ジフェニルイソシアネート)が含まれるが、それらに限定されない。
【0048】
1つの特定の形態では、使用されるべき当該化合物は、イソシアネート化合物として、トルエンジイソシアネート(約80%の2,4異性体及び20%の2,6異性体)(1);及びアミン化合物の混合物として、オレイルアミン(9−オクタデセン−1−アミン)(2)、エチレンジアミン(3)、及びシクロヘキシルアミン(4)である。
【0049】
トルエンジイソシアネート(1)(CAS Number:26471−62−5)が、Bayer(Pittsburgh,Pa.)及びDow Chemical(Midland,Mich.)などの製造供給元から市販されている。トルエンジイソシアネートは、接着剤被覆製造、エラストマー製造、及びフレキシブルかつ硬質フォーム製造などの産業で使用され、そして、溶媒で薄肉化した内装クリア仕上げ及び合成樹脂及びゴム接着剤において使用される。
【0050】
トルエンジイソシアネートは異性体の混合物であってもよい。一形態では、当該混合物は、約80%の2,4異性体及び20%の2,6異性体から成るであろう。
【0051】
オレイルアミン(2)(CAS Number:112−90−3)は、Akzo−Novel(Chicago,Ill.)などの製造供給元から市販されている。オレイルアミンは、腐食防止剤として使用でき、そして、エアゾールヘアスプレーで使用される。
【0052】
エチレンジアミン(3)(CAS Number:107−15−3)は、Dow Chemical(Midland,Mich.)などの製造供給元から市販されている。エチレンジアミンは、プリント配線板製造などの産業で使用されており、腐食防止剤、溶接又ははんだ付における中間フラックス、錯化剤、又はポリエーテルポリオール及びポリアルケングルコール用のプロセスレギュレーターとして使用でき、そして、ペンキ及びワニスリムーバーにおいて使用される。
【0053】
シクロヘキシルアミン(4)(CAS Number:108−91−8)は、J.T.Baker(Phillipsburg,N.J.)などの製造供給元から市販されている。シクロヘキシルアミンは、腐食防止剤として使用できる。
【0054】
他の特定の形態では、使用されるイソシアネート化合物は、メチレンジフェニルジイソシアネート、及びアミン類の混合物である。
【0055】
使用される潤滑剤基油は、群I、II、III、IV、及びVの潤滑剤基油及びそれらの混合物から選択され得る。潤滑剤基油は、フィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油など合成潤滑剤基油、及び、合成及び非合成の潤滑剤基油の混合物を含む。硫黄含有量、飽和物含有量、及び粘度指数を使用する、API Interchange Guidelines(API Publication 1509)で定義されている潤滑剤基油の仕様は、以下の表Iに示されている:
【表1】

【0056】
群Iの潤滑剤基油を製造する設備は、典型的に溶媒を使用して、より低い粘度指数(VI)成分を抽出してクルードのVIを所望の仕様に増加させる。これらの溶媒は、典型的にフェノール又はフルフラールである。溶媒抽出は、90%未満の飽和物及び300ppmより多い硫黄を持つ生成物を与える。世界中の潤滑油製造の大部分は、群Iのカテゴリーにある。
【0057】
群IIの潤滑剤基油を製造する設備は、水素化分解や厳しい水素化処理などの水素化プロセシングを典型的に使用して、クルードオイルのVIを仕様値に増加させる。水素化プロセシングの使用は、典型的に、飽和物含有量を90超に増加させ、硫黄を300ppm未満に減少させる。世界中の潤滑剤基油製造の約10%は、群IIのカテゴリーにあり、U.S.製造の約30%は、群IIである。
【0058】
群IIIの潤滑剤基油を製造する設備は、ワックス異性化技術を典型的に使用して、非常に高いVI生成物を製造する。出発フィードは、硫黄をほとんど含有せずすべて飽和物を含むワックス又はワックス状減圧軽油(VGO)であるので、群IIIの生成物は、90超の飽和物含有量及び300ppm未満の硫黄含有量を有する。フィッシャー・トロプシュワックスが、群IIIの潤滑剤基油を製造するためのワックス異性化プロセスにとって理想的なフィードである。世界の潤滑油供給のほんの少量が群IIIのカテゴリーにある。
【0059】
群IVの潤滑剤基油は、ノルマルアルファオレフィンのオリゴマー化から誘導され、ポリアルファオレフィン(PAO)潤滑剤基油と呼ばれる。
【0060】
群Vの潤滑剤基油は、他のすべてである。この群は、80未満のVI値を持つ潤滑剤基油、ハロゲン化潤滑剤基油、シリコン潤滑油、及び合成エステルを含む。この用途の目的として、群Vの潤滑剤基油は、合成エステル及びシリコン潤滑油を排除する。群Vの潤滑剤基油は、群I及びIIの潤滑剤基油を製造するのに使用されるものと同じプロセスだがより厳しくない条件下で、石油から典型的に調製される。
【0061】
合成潤滑剤基油は、API Interchange Guidelinesを満たすが、C10未満で沸騰するオレフィンのオリゴマー化、ノルマルアルファオレフィンオリゴマー化、エチレンオリゴマー化、又はフィッシャー・トロプシュ合成によって調製される。この用途の目的として、合成潤滑剤基油は、合成エステル及びシリコン潤滑油を排除する。
【0062】
高流速衝撃条件及び高圧力を使用する上で本プロセスは、混合物中に開始剤又は触媒をも組み込ませる。グリース増粘剤を形成する反応を促進するのに有効ないかなる適切な触媒又は開始剤も使用できる。当該触媒又は開始剤は、他のグリース成分と同じ時にRIM装置の混合チャンバーの中に導入され得る。あるいは、他の形態では、当該触媒又は開始剤は、少なくとも1つの潤滑油基油混合物中に、例えば、片方、又は、両方のアミン/潤滑基油及びイソシアネート/潤滑基油混合物中に存在し得る。これらの開始剤又は触媒は、形成された増粘剤の所望の物理的特性、例えば増粘剤の密度、を増強し得る。一形態では、開始剤又は触媒は、アミン類、ポリオール、アルコール、水又は他の活性プロトン源などの活性水素成分を含む。
【0063】
グリースの性能を増強する添加剤は、反応が完結した後に、調製されたグリースに添加してもよい。一般的に、添加剤は、混合チャンバーの下流に添加し得る。いかなる公知のグリース添加剤も、増強されるべき特定の特性に依存して、添加し得る。
【0064】
本プロセスによって調製されたグリースは、形成されたままの機械的安定性、高温耐性及び低ノイズなどの優れた特性を示す。グリースの均一性も、例えばミリングなどの後処理などの更なる処理がしばしば不要となるほど、十分である。本プロセスは、広範囲の又はいかなる後処理の必要さえなしに、最も効率的で有効なやり方で優れたグリースを提供する。本方法は、バッチ式プロセスで、又はグリースを製造する連続法の一部として、使用できる。
【0065】
以下の例は、グリースを調製する方法を更に例証するのを助ける。
【0066】
比較例1
テーブルトップミキサーを利用する従来のベンチトッププロセスを使用して、尿素系グリースを調製した。グリースは、以下のように調製した。
【0067】
アミン類及びジイソシアネートを1.4対1の重量比で600SUS基油を含有するケトルに組合せ、加熱及び混合した。
【0068】
内容物は直ちに増粘した。混合物を攪拌しながら250°F〜320°Fの温度で1時間加熱した。次に、混合物を、200°Fに冷却させ、その温度で、混合物を3ロールミルに通過させた。グリースをその後室温まで一晩中冷却した。
【0069】
実施例1
上記の比較例1に続いて、アミン類及びジイソシアネート重量比を1.4対1に保持し混合して潤滑基油の存在下に反応させて、RIM装置を使用して尿素グリースを合成した。槽1の中にジイソシアネート及びオイルが存在し、そして槽2の中にアミン類及びオイルが存在するように、RIM装置中の各槽に別個の混合物を収納した。槽1及び槽2の混合物を、1000PSI(6.895e+006ニュートン/平方メートル)、1700PSI(1.172e+007ニュートン/平方メートル)、及び2500PSI(1.724e+007ニュートン/平方メートル)の変動ショット圧力でRIM装置の混合チャンバーの内部で一緒に反応させ、そこでは、グリースが形成されてその後、保持容器中に移動させた。槽からRIM装置の混合チャンバーへの各混合物用の入口オリフィスは、直径が約0.014インチ(約0.03556センチメートル)であった。
【表2】
【0070】
グリースの顕微鏡画像を取ったので、図1〜4に示す。倍率は、光学顕微鏡で200xで取った。
【0071】
実施例2
アミン類及びジイソシアネート重量比を1.4対1に保持し混合して潤滑基油の存在下に反応させて、実施例1で使用されたRIM装置を使用して尿素グリースを合成した。槽1の中にジイソシアネート及びオイルが存在し、そして槽2の中にアミン類及びオイルが存在するように、RIM装置中の各槽に別個の混合物を収納した。槽1及び槽2の混合物を、2500PSI(1.724e+007ニュートン/平方メートル)でRIM装置の混合チャンバーの内部で一緒に反応させた。その後、添加物をシステム中に分散させて、その後、生成物を一晩中冷却させた。得られたグリースの特性を以下に示す。
【0072】
比較例2
パイロットスケールミキサーを利用する従来のケトルバッチプロセスを使用して、尿素系グリースを調製した。グリースを以下のように調製した。
アミン類及びジイソシアネートを1.4対1の重量比で600SUS基油を含有するケトルに組合せ、加熱及び混合した。
【0073】
内容物は直ちに増粘し始めた。混合物を攪拌しながら250°F(121℃)〜320°F(160℃)の温度で1時間加熱した。次に、混合物を、200°F(93℃)に冷却させ、その温度で、添加物をシステム中に混合し、その後、一晩中冷却した。
【0074】
【表3】
【0075】
RIMプロセスのショット圧力を変化させると、顕微鏡写真はすべて非常に同様であり、それらは滑らかで非常に透明であり、増粘剤材料の何の大断片も示していないことに、当業者は注目するであろう。それに対し、ラボベンチトップ法は増粘剤成分の大断片を示している。RIMプロセスは伝統的なバッチ法よりもより有効に増粘剤を分散させ、これもまたノイズ特性及び振動における利益を有していることが、1つの利益である。アンデロンメーター特性は、ベンチトップ法に対してRIMシナリオでの優れた結果を示している。アンデロンメーター値は、グリースの振動特性を示している。本プロセスで調製された低いノイズグリースは、4アンデロンより大きいスパイクがないことを一般的に示している。更に、本製造法は、ポリ尿素を製造するための従来の方法よりも効率的である。
【0076】
実施例1のRIM製造グリースは、滴点543°F(283℃)を示し、それに対して、バッチ法で調製された滴点は比較例1では489°F(253℃)と測定された。実施例2では、RIMプロセスで調製されたグリース試料は滴点503°F(261℃)を有していたが、それに対して、従来法を使用した類似のシステムは、比較例2では滴点485°F(251℃)を持つグリースを与えた。本プロセスによって調製されたグリースの滴点は、しばしば500°F(260℃)より大きく、より多くの特定の形態では530°F(276℃)より大きい。滴点は、加熱に起因して流動のその最初の滴下をグリースシステムが失う温度であり、トップ操作温度条件を決定するための一般的なやり方として使用され得る。グリースの滴点は、例えば、標準試験方法のASTM D2265−06によって、一般的に測定される。
【0077】
RIM製造グリースの強化された高耐熱性に加えて、本プロセスは、グリースの改善された機械的安定特性をも与える。機械的安定性は、機械的運転中の濃度変化に耐えるグリース試料の能力に関する情報を与える。グリースの運転は、種々の技術を使用して達成され得る。P(0)非混和ちょう度値、P(60)混和ちょう度値、及びP(100,000)混和ちょう度値を測定するために標準試験法ASTM D217−10が使用された。RIM製造の実施例2は、比較例2の従来技術で製造した試料と比べた時の改善された機械的安定性を例証する。実施例2は、100,000ダブルストローク後に334ちょう度点に柔らかくなり、P(60)値からは56ちょう度点の変化である。比較すると、非RIM製造の比較例2は、そのP(60)値から149ちょう度点の変化を示しており、同じ機械的安定性試験で最終的に410に柔らかくなったグリースを提供する。したがって、実施例2は、比較例2よりも、その最終P(100,000)値及びP(60)からP(100,000)へのちょう度値のその変化の両方によって示されるように、より良好な機械的安定性を示す。一般的に、本プロセスは、約350ちょう度点以下のP(100,000)値を有するグリースを提供する。P(60)からP(100,000)値へのちょう度値の変化も、一般的に100点以下であり、他の形態では60点以下である。
【0078】
本発明の精神と範囲から離れることなく本発明の種々の変更および修正をすることができることは当業者に明らかである。他の目的及び利点は前述の記載の検討から当業者に明らかになるであろう。
図1
図2
図3
図4